説明

サーボ制御装置およびモーションコントロールシステム

【課題】送受信の配置の衝突が繰り返される間、モーションコントロールシステム全体の初期化が遅延する。
【解決手段】第一の通信手段106はMDI結線、第二の通信手段107はMDI−X結線とすることで、通信ケーブル4としてストレートケーブルを選択した場合、主電源を入れ、夫々のサーボ制御装置1の電源が同時に入るとき、夫々のサーボ制御装置1同士の接続において、送受信ペアの衝突が発生しないようにすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機能を具備したサーボ制御装置およびモーションコントロールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばサーボ制御のようなモーションコントロールシステムにおいて、高機能化や省線化などを目的として、マスター−スレーブ間の情報伝達に通信機能を使用することが行われてきている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8はこのようなモーションコントロールシステムの概要を示す構成図であり、コントロール装置3から通信線4を介してサーボ制御装置1は指令位置データを受け取り、この指令に従ってモータ2を駆動制御する。エンコーダ5はモータ2の現在位置を検出するもので、この現在位置が指令位置と一致するようにサーボ制御装置は閉ループ制御を行う。また、図示するように、通常は1台のコントロール装置3に対して複数台のサーボ制御装置1が接続されるケースが多く、この接続のための通信線4の構成には図示しているバス型の他に、リング型、スター型など様々な形態がある。
【0004】
マスター−スレーブ間の通信方式としてさまざまな規格が提案されており、例えばEtherCATにおいては、1台のサーボ制御装置に対して、通信物理層を2系統以上具備し、そのうち少なくとも1系統を通信上流側との接続、他の少なくとも1系統を通信下流側との接続とすることで、デイジーチェーン接続によるバス型のネットワークを構成する。
【0005】
通信物理層としては、Ethernet(登録商標)またはその拡張仕様をベースとするものが開示されており、また、通信コネクタの結線方法として、Ethernet(登録商標)においては、後述するMDI結線、および送受信の配置がMDI結線と逆のMDI−X結線の2種類が定義されている。通常、サーボ制御装置等のネットワークノードはMDI結線、ハブ等の集線装置はMDI−Xで結線されている。
【0006】
さらに、マスター−スレーブ間接続、またはスレーブ−スレーブ間接続において、Ethernet(登録商標)のストレートケーブルおよびクロスオーバーケーブルのどちらでも接続可能とするように、MDI結線とMDI−X結線とを自動的に切り替える接続切替手段を具備した通信装置が提案されている(例えば、特許文献2)。特許文献2においては、双方からリンクテストパルスの送受信により、送受信配置の衝突を検知し、接続切替手段により、MDIとMDI−Xとを切り替える。
【0007】
このとき、ケーブルとしては、ストレートケーブル、クロスオーバーケーブルのどちらを用いてもモーションコントロールシステムを構築することが可能であるが、ケーブルの外見上の区別が困難である場合が多いことと、市場での入手性の相違から、ストレートケーブルで統一することが多く行われている。
【0008】
通信物理層の実装は、専用のICとすることが多く行われており、スレーブ−スレーブ間の接続を行うモーションコントロールシステムにおいて、2系統以上の通信物理層を具備するサーボ制御装置は、すべての通信物理層は同じ仕様とすることが通常である。すなわち、同じ仕様の通信物理層ICを系統数だけ実装するか、系統数を満足するように、少なくとも1系統以上を1パッケージに内封したICを必要数実装することが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4203661号公報
【特許文献2】特開平8−154099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
同一のサーボ制御装置をスレーブとして複数台具備し、スレーブ−スレーブ間の接続を行うモーションコントロールシステムにおいては、システム立ち上げ時には、それら複数台のサーボ制御装置は、同時に電源投入されるのが通常である。このとき、MDIで通信コネクタを結線したサーボ制御装置同士は、ストレートケーブルを用いて接続した場合、送受信の配置が衝突するため、互いに接続を切り替えるが、同時に電源投入された同一のサーボ制御装置の場合、切り替えのタイミングが同時になり、再び送受信の配置が衝突する。その後、複数回の送受信の配置の衝突が発生するが、サーボ制御装置のばらつきによる送受信切り替えのタイミングの差が蓄積されることにより、最終的には送受信の配置の衝突が回避され、正しい送受信配置で接続される。しかしながら、送受信の配置の衝突が繰り返される間、モーションコントロールシステム全体の初期化が遅延するという課題を有する。なお、MDI−Xで通信コネクタを結線したサーボ制御装置同士であっても同様である。
【0011】
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ストレートケーブルのみで接続されたモーションコントロールシステムにおいて、遅延なく初期化を完了し、安定してシステム動作するモーションコントロールシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、第1の発明に係るサーボ制御装置は、モータ運動を制御するモータ制御部と、モータ制御部の信号に基づいて、モータへ電流を供給するパワーアンプ部と、通信制御を行う通信制御部と、通信上流側の装置との接続と通信を行う第一の通信手段と、通信下流側の装置との接続と通信を行う第二の通信手段と、を具備し、前記第一の通信手段は、他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルにより伝達する、送信の物理的通信信号に割り当てる第一の送信の接続手段と、他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルによって伝達する、受信の物理的通信信号に割り当てる第一の受信の接続手段と、通信制御部より送信される送信の論理的通信信号を前記送信の物理的通信信号に変換する第一の送信機能と、前記受信の物理的通信信号を、通信制御部で受信する受信の論理的通信信号に変換する第一の受信機能と、前記第一の送信の接続手段と、前記第一の送信機能とを接続し、前記第一の受信の接続手段と、前記第一の受信機能とを接続する中間接続部であり、他の通信装置との送信、受信のペアの衝突を検知し、送信、受信のペアの衝突の検知に伴い、送信、受信のペアを入れ替える第一の接続切替手段と、で構成され、前記第二の通信手段は、他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルにより伝達する、送信の物理的通信信号に割り当てる第二の送信の接続手段と、他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルによって伝達する、受信の物理的通信信号に割り当てる第二の受信の接続手段と、通信制御部より送信される送信の論理的通信信号を前記送信の物理的通信信号に変換する第二の送信機能と、前記受信の物理的通信信号を、通信制御部で受信する受信の論理的通信信号に変換する第二の受信機能と、前記第二の送信の接続手段と、前記第二の受信機能とを接続し、前記第二の受信の接続手段と、前記第二の送信機能とを接続する中間接続部であり、他の通信装置との送信、受信のペアの衝突を検知し、送信、受信のペアの衝突の検知に伴い、送信、受信のペアを入れ替える第二の接続切替手段と、で構成されることを特徴としている。
【0013】
本構成によりサーボ制御装置どうしをストレートケーブルにてデイジーチェーン接続する際、上流側のサーボ制御装置からの送受信信号は、上流側で送受信のペアを入れ替えて接続することにより、電源を同時に投入した際に送受信ペアの衝突が発生しない。
【0014】
第二の発明に係るサーボ制御装置は、モータ運動を制御するモータ制御部と、モータ制御部の信号に基づいて、モータへ電流を供給するパワーアンプ部と、通信制御を行う通信制御部と、通信上流側の装置との接続と通信を行う第一の通信手段と、通信下流側の装置との接続と通信を行う第二の通信手段と、を具備し、前記第一の通信手段は、他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルにより伝達する、送信の物理的通信信号に割り当てる第一の送信の接続手段と、他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルによって伝達する、受信の物理的通信信号に割り当てる第一の受信の接続手段と、通信制御部より送信される送信の論理的通信信号を前記送信の物理的通信信号に変換する第一の送信機能と、前記受信の物理的通信信号を、通信制御部で受信する受信の論理的通信信号に変換する第一の受信機能と、前記第一の送信の接続手段と、前記第一の受信機能とを接続し、前記第一の受信の接続手段と、前記第一の送信機能とを接続する中間接続部であり、他の通信装置との送信、受信のペアの衝突を検知し、送信、受信のペアの衝突の検知に伴い、送信、受信のペアを入れ替える第一の接続切替手段と、で構成され、前記第二の通信手段は、他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルにより伝達する、送信の物理的通信信号に割り当てる第二の送信の接続手段と、他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルによって伝達する、受信の物理的通信信号に割り当てる第二の受信の接続手段と、通信制御部より送信される送信の論理的通信信号を前記送信の物理的通信信号に変換する第二の送信機能と、前記受信の物理的通信信号を、通信制御部で受信する受信の論理的通信信号に変換する第二の受信機能と、前記第二の送信の接続手段と、前記第二の送信機能とを接続し、前記第二の受信の接続手段と、前記第二の受信機能とを接続する中間接続部であり、他の通信装置との送信、受信のペアの衝突を検知し、送信、受信のペアの衝突の検知に伴い、送信、受信のペアを入れ替える第二の接続切替手段と、で構成されることを特徴としている。
【0015】
本構成によりサーボ制御装置どうしをストレートケーブルにてデイジーチェーン接続する際、上流側のサーボ制御装置からの送受信信号は、下流側で送受信のペアを入れ替えて接続することにより、電源を同時に投入した際に送受信ペアの衝突が発生しない。
【0016】
第三の発明に係るモーションコントロールシステムは、システム全体を制御し、制御信号を送受信するマスターとしてのコントロール装置と、前記コントロール装置からの制御信号に基づき、モータに供給する電流を制御する少なくとも1台以上のサーボ制御装置と、前記各サーボ制御装置から供給される電流によって運動する少なくとも1台以上のモータと、で構成され、前記サーボ制御装置は、モータ運動を制御するモータ制御部と、モータ制御部の信号に基づいて、モータへ電流を供給するパワーアンプ部と、通信制御を行う通信制御部と、通信上流側の装置との接続と通信を行う第一の通信手段と、通信下流側の装置との接続と通信を行う第二の通信手段と、を具備し、前記第一の通信手段は、他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルにより伝達する、送信の物理的通信信号に割り当てる第一の送信の接続手段と、他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルによって伝達する、受信の物理的通信信号に割り当てる第一の受信の接続手段と、通信制御部より送信される送信の論理的通信信号を前記送信の物理的通信信号に変換する第一の送信機能と、前記受信の物理的通信信号を、通信制御部で受信する受信の論理的通信信号に変換する第一の受信機能と、前記第一の送信の接続手段と、前記第一の送信機能とを接続し、前記第一の受信の接続手段と、前記第一の受信機能とを接続する中間接続部であり、他の通信装置との送信
、受信のペアの衝突を検知し、送信、受信のペアの衝突の検知に伴い、送信、受信のペアを入れ替える第一の接続切替手段と、で構成され、前記第二の通信手段は、他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルにより伝達する、送信の物理的通信信号に割り当てる第二の送信の接続手段と、他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルによって伝達する、受信の物理的通信信号に割り当てる第二の受信の接続手段と、通信制御部より送信される送信の論理的通信信号を前記送信の物理的通信信号に変換する第二の送信機能と、前記受信の物理的通信信号を、通信制御部で受信する受信の論理的通信信号に変換する第二の受信機能と、前記第二の送信の接続手段と、前記第二の受信機能とを接続し、前記第二の受信の接続手段と、前記第二の送信機能とを接続する中間接続部であり、他の通信装置との送信、受信のペアの衝突を検知し、送信、受信のペアの衝突の検知に伴い、送信、受信のペアを入れ替える第二の接続切替手段と、で構成されることを特徴としている。
【0017】
本構成により、モーションコントロールシステムの要素であるサーボ制御装置どうしは、ストレートケーブルにてデイジーチェーン接続すれば、上流側のサーボ制御装置からの送受信信号は上流側で送受信のペアを入れ替えられるので、システム電源を投入した際に送受信ペアの衝突が発生しない。
【0018】
第四の発明に係るモーションコントロールシステムは、システム全体を制御し、制御信号を送受信するマスターとしてのコントロール装置と、前記コントロール装置からの制御信号に基づき、モータに供給する電流を制御する少なくとも1台以上のサーボ制御装置と、前記各サーボ制御装置から供給される電流によって運動する少なくとも1台以上のモータと、で構成され、前記サーボ制御装置は、モータ運動を制御するモータ制御部と、モータ制御部の信号に基づいて、モータへ電流を供給するパワーアンプ部と、通信制御を行う通信制御部と、通信上流側の装置との接続と通信を行う第一の通信手段と、通信下流側の装置との接続と通信を行う第二の通信手段と、を具備し、前記第一の通信手段は、他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルにより伝達する、送信の物理的通信信号に割り当てる第一の送信の接続手段と、他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルによって伝達する、受信の物理的通信信号に割り当てる第一の受信の接続手段と、通信制御部より送信される送信の論理的通信信号を前記送信の物理的通信信号に変換する第一の送信機能と、前記受信の物理的通信信号を、通信制御部で受信する受信の論理的通信信号に変換する第一の受信機能と、前記第一の送信の接続手段と、前記第一の受信機能とを接続し、前記第一の受信の接続手段と、前記第一の送信機能とを接続する中間接続部であり、他の通信装置との送信、受信のペアの衝突を検知し、送信、受信のペアの衝突の検知に伴い、送信、受信のペアを入れ替える第一の接続切替手段と、で構成され、前記第二の通信手段は、他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルにより伝達する、送信の物理的通信信号に割り当てる第二の送信の接続手段と、他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルによって伝達する、受信の物理的通信信号に割り当てる第二の受信の接続手段と、通信制御部より送信される送信の論理的通信信号を前記送信の物理的通信信号に変換する第二の送信機能と、前記受信の物理的通信信号を、通信制御部で受信する受信の論理的通信信号に変換する第二の受信機能と、前記第二の送信の接続手段と、前記第二の送信機能とを接続し、前記第二の受信の接続手段と、前記第二の受信機能とを接続する中間接続部であり、他の通信装置との送信、受信のペアの衝突を検知し、送信、受信のペアの衝突の検知に伴い、送信、受信のペアを入れ替える第二の接続切替手段と、で構成されることを特徴としている。
【0019】
本構成により、モーションコントロールシステムの要素であるサーボ制御装置どうしは、ストレートケーブルにてデイジーチェーン接続すれば、上流側のサーボ制御装置からの送受信信号は下流側で送受信のペアを入れ替えられるので、システム電源を投入した際に
送受信ペアの衝突が発生しない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、接続切替手段によって、ケーブル種類がストレートケーブル、クロスオーバーケーブルの如何に関わらず接続可能であるという機能は確保しつつ、特にストレートケーブルに統一してデイジーチェーン接続による配線を行った場合には、システム電源投入時に、サーボ制御装置同士の通信接続において、送受信ペアの衝突が発生しないため、通信接続が速やかに完了し、安定した起動動作を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るモーションコントロールシステムの概略図
【図2】サーボ制御装置1を構成する機能ブロックの概略図
【図3】第一の通信手段106を構成する機能ブロックの概略図
【図4】実施の形態1における、第一の通信手段106と第一のコネクタ108との結線、および第二の通信手段107と第二のコネクタ109との結線の詳細図
【図5】実施の形態1における、第一のサーボ制御装置1−1における第二の通信手段107と、第二のサーボ制御装置1−2における第一の通信手段106とを、通信ケーブル4で接続した詳細図
【図6】実施の形態2における、第一の通信手段106と第一のコネクタ108との結線、および第二の通信手段107と第二のコネクタ109との結線の詳細図
【図7】実施の形態2における、第一のサーボ制御装置1−1における第二の通信手段107と、第二のサーボ制御装置1−2における第一の通信手段106とを、通信ケーブル4で接続した詳細図
【図8】一般的なモーションコントロールシステムの概要を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るモーションコントロールシステムの概略図である。コントロール装置3は、通信ケーブル4を介して第一のサーボ制御装置1−1と接続する。第一のサーボ制御装置1−1と第二のサーボ制御装置1−2もまた、通信ケーブル4を介して接続する。以下同様、サーボ制御装置同士は、通信ケーブル4を介して互いに接続する。各サーボ制御装置には、夫々モータを接続する。モータとしては、回転運動を行う回転型のサーボモータと、直線運動を行うリニアモータとが利用可能である。サーボ制御装置とモータ間の接続としては、モータへ電流を供給するモータ線と、モータの位置あるいは速度情報をサーボ制御装置に提供するエンコーダ線とがあるが、本図では図示しない。コントロール装置3は、個々のサーボ制御装置1の動作を制御する制御信号を送受信する。
【0023】
図2は、サーボ制御装置1を構成する機能ブロックの概略図である。サーボ制御装置1は、モータの動作を制御するモータ制御部101、モータの位置あるいは速度情報を入力するエンコーダ情報入力部102、電源の入力を変換しモータへ供給する電流を発生させるパワーアンプ部103、モータへ電流を供給するモータ電流供給部104、通信の上流側と通信ケーブル4を介して接続するコネクタである第一のコネクタ108、通信の下流側と通信ケーブル4を介して接続するコネクタである第二のコネクタ109、通信の上流側との通信機能を提供する第一の通信手段106、通信の下流側との通信機能を提供する第二の通信手段107、プロトコル変換を行い、第一の通信手段106および第二の通信手段107と、モータ制御部101との情報の橋渡しを行う通信制御部105、および図示しない電源装置で構成される。
【0024】
通信制御部105で扱うプロトコルとしては、たとえばEtherCAT(登録商標)
等が提案されている。EtherCATをプロトコルとして採用する場合、通信物理層としての第一の通信手段106および第二の通信手段107の通信仕様として、Ethernet(登録商標)を採用することが可能になる。同様に、第一のコネクタ108、第二のコネクタ109として、RJ−45モジュラージャックを採用することが可能になる。
【0025】
通信ケーブル4は、Ethernet(登録商標)で利用するケーブルが使用可能であり、例えば、100BASE−TXにおけるエンハンスドカテゴリー5相当のシールド付ツイストペアケーブル(STP)がノイズ耐性の点から好適である。もちろん、通信ケーブル4の選定について、これに限定されるものではなく、カテゴリー5やカテゴリー6などのほかのカテゴリーのものや、シールドなしツイストペアケーブル(UTP)を採用することが可能であるし、また、100BASE−TXに限定することなく、たとえば10BASE−T、10BASE−5、1000BASE−TX、100BASE−FX等を採用し、夫々に好適なケーブルを選定してもよい。コネクタについても、RJ−45モジュラージャックに限定されることはなく、例えば、100BASE−FXで使用される、光通信コネクタ等であってもよい。
【0026】
図3は、第一の通信手段106を構成する機能ブロックの概略図である。第一の通信手段106は、通信制御部から送信された送信データを、物理的信号波形に変換する第一の送信部1062と、外部から受信した物理的受信波形を受信データに変換する第一の受信部1063と、送信、受信の信号波形の接続を入れ替える接続切替手段1061とで構成される。なお、ここでは、図3を用いて、第一の通信手段106を構成する機能ブロックの概略を説明したが、第二の通信手段107もまた、機能ブロックの概略は同様である。第一の通信手段106は、たとえば米国特許6175865で開示される方式に則って、通信相手との送信、受信信号が衝突したときに、接続切替手段1061によって送信信号と受信信号を入れ替え、信号の衝突を回避する機能を有する。
【0027】
図4は、本発明の実施の形態1に係るモーションコントロールシステムを構成するサーボ制御装置について、第一の通信手段106と第一のコネクタ108との結線、および第二の通信手段107と第二のコネクタ109との結線の詳細図である。ここでは、通信手段106および通信手段107の仕様としてEthernet(登録商標)、コネクタとしてRJ−45モジュラージャックを例として使用するが、これに限定されないことは、前に述べた通りである。Ethernet(登録商標)で使用するRJ−45モジュラージャックのピン配置においては、1、2ピンを一つの差動ペア、3、6ピンを他の差動ペアとしているが、その結線方法として、1、2ピンの差動ペアを送信、3、6ピンの差動ペアを受信に用いるMDI結線と、1、2ピンの差動ペアを受信、3、6ピンの差動ペアを送信に用いるMDI−X結線とが提案されている。本実施例においては、第一の通信手段106はMDI結線、第二の通信手段107はMDI−X結線とする。
【0028】
図5は、本発明の実施の形態1に係るモーションコントロールシステムを構成する第一のサーボ制御装置1−1と第二のサーボ制御装置1−2との接続について、第一のサーボ制御装置1−1における第二の通信手段107と、第二のサーボ制御装置1−2における第一の通信手段106とを、通信ケーブル4で接続した詳細図である。第一のサーボ制御装置1−1と第二のサーボ制御装置1−2との接続において、通信ケーブル4としてストレートケーブルを選択した場合、第一のサーボ制御装置における第二の通信手段107の送信ペアは、第二のサーボ制御装置1−2における第一の通信手段106の受信ペアと結線され、同様に、第一のサーボ制御装置における第二の通信手段107の受信ペアは、第二のサーボ制御装置1−2における第一の通信手段106の送信ペアと結線される。このような構成とすることで、本発明に係るモーションコントロールシステムにおいて、主電源を入れ、夫々のサーボ制御装置1の電源が同時に入るとき、夫々のサーボ制御装置1同士の接続において、送受信ペアの衝突が発生しない。そのため、接続切替手段1061ま
たは1071による送受信ペアの入れ替えを発生させる必要がなく、スムーズにシステム全体の通信接続が完了し、安定した起動動作を実現することが可能になる。
【0029】
なお、本発明の実施の形態1においては、通信制御部105で扱うプロトコルとして、EtherCATを例として用いたが、もちろんこれに限定されることはなく、MECHATROLINK III(登録商標)等を用いてもよい。
(実施の形態2)
本発明に係る実施の形態2においては、構成の多くを本発明の実施の形態1と共有するため、実施の形態1との差異のみ述べ、共有する構成の説明については割愛する。
【0030】
図6は、本発明の実施の形態2に係るモーションコントロールシステムを構成するサーボ制御装置について、第一の通信手段106と第一のコネクタ108との結線、および第二の通信手段107と第二のコネクタ109との結線の詳細図である。ここでは、通信手段106および通信手段107の仕様としてEthernet(登録商標)、コネクタとしてRJ−45モジュラージャックを例として使用するが、これに限定されないことは、前に述べた通りである。本実施例においては、第一の通信手段106はMDI−X結線、第二の通信手段107はMDI結線とする。
【0031】
図7は、本発明の実施の形態2に係るモーションコントロールシステムを構成する第一のサーボ制御装置1−1と第二のサーボ制御装置1−2の接続について、第一のサーボ制御装置1−1における第二の通信手段107と、第二のサーボ制御装置1−2における第一の通信手段106とを、通信ケーブル4で接続した詳細図である。第一のサーボ制御装置1−1と第二のサーボ制御装置1−2との接続において、通信ケーブル4としてストレートケーブルを選択した場合、第一のサーボ制御装置における第二の通信手段107の送信ペアは、第二のサーボ制御装置1−2における第一の通信手段106の受信ペアと結線され、同様に、第一のサーボ制御装置における第二の通信手段107の受信ペアは、第二のサーボ制御装置1−2における第一の通信手段106の送信ペアと結線される。このような構成とすることで、本発明に係るモーションコントロールシステムにおいて、主電源を入れ、夫々のサーボ制御装置1の電源が同時に入るとき、夫々のサーボ制御装置1同士の接続において、送受信ペアの衝突が発生しない。そのため、接続切替手段1061または1071による送受信ペアの入れ替えを発生させる必要がなく、スムーズにシステム全体の通信接続が完了し、安定した起動動作を実現することが可能になる。
【0032】
なお、本発明の実施の形態2においては、通信制御部105で扱うプロトコルとして、EtherCATを例として用いたが、もちろんこれに限定されることはなく、MECHATROLINK III(登録商標)等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 サーボ制御装置
2 モータ
3 コントロール装置
4 通信ケーブル
105 通信制御部
106 第一の通信手段
107 第二の通信手段
108 第一のコネクタ
109 第二のコネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ運動を制御するモータ制御部と、
モータ制御部の信号に基づいて、モータへ電流を供給するパワーアンプ部と、
通信制御を行う通信制御部と、
通信上流側の装置との接続と通信を行う第一の通信手段と、
通信下流側の装置との接続と通信を行う第二の通信手段と、
を具備するサーボ制御装置であって、
前記第一の通信手段は、
他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルにより伝達する、送信の物理的通信信号に割り当てる第一の送信の接続手段と、
他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルによって伝達する、受信の物理的通信信号に割り当てる第一の受信の接続手段と、
通信制御部より送信される送信の論理的通信信号を前記送信の物理的通信信号に変換する第一の送信機能と、
前記受信の物理的通信信号を、通信制御部で受信する受信の論理的通信信号に変換する第一の受信機能と、
前記第一の送信の接続手段と、前記第一の送信機能とを接続し、前記第一の受信の接続手段と、前記第一の受信機能とを接続する中間接続部であり、他の通信装置との送信、受信のペアの衝突を検知し、送信、受信のペアの衝突の検知に伴い、送信、受信のペアを入れ替える第一の接続切替手段と、
で構成され、
前記第二の通信手段は、
他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルにより伝達する、送信の物理的通信信号に割り当てる第二の送信の接続手段と、
他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルによって伝達する、受信の物理的通信信号に割り当てる第二の受信の接続手段と、
通信制御部より送信される送信の論理的通信信号を前記送信の物理的通信信号に変換する第二の送信機能と、
前記受信の物理的通信信号を、通信制御部で受信する受信の論理的通信信号に変換する第二の受信機能と、
前記第二の送信の接続手段と、前記第二の受信機能とを接続し、前記第二の受信の接続手段と、前記第二の送信機能とを接続する中間接続部であり、他の通信装置との送信、受信のペアの衝突を検知し、送信、受信のペアの衝突の検知に伴い、送信、受信のペアを入れ替える第二の接続切替手段と、
で構成されるサーボ制御装置。
【請求項2】
モータ運動を制御するモータ制御部と、
モータ制御部の信号に基づいて、モータへ電流を供給するパワーアンプ部と、
通信制御を行う通信制御部と、
通信上流側の装置との接続と通信を行う第一の通信手段と、
通信下流側の装置との接続と通信を行う第二の通信手段と、
を具備するサーボ制御装置であって、
前記第一の通信手段は、
他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルにより伝達する、送信の物理的通信信号に割り当てる第一の送信の接続手段と、
他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルによって伝達する、受信の物理的通信信号に割り当てる第一の受信の接続手段と、
通信制御部より送信される送信の論理的通信信号を前記送信の物理的通信信号に変換する第一の送信機能と、
前記受信の物理的通信信号を、通信制御部で受信する受信の論理的通信信号に変換する第一の受信機能と、
前記第一の送信の接続手段と、前記第一の受信機能とを接続し、前記第一の受信の接続手段と、前記第一の送信機能とを接続する中間接続部であり、他の通信装置との送信、受信のペアの衝突を検知し、送信、受信のペアの衝突の検知に伴い、送信、受信のペアを入れ替える第一の接続切替手段と、
で構成され、
前記第二の通信手段は、
他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルにより伝達する、送信の物理的通信信号に割り当てる第二の送信の接続手段と、
他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルによって伝達する、受信の物理的通信信号に割り当てる第二の受信の接続手段と、
通信制御部より送信される送信の論理的通信信号を前記送信の物理的通信信号に変換する第二の送信機能と、
前記受信の物理的通信信号を、通信制御部で受信する受信の論理的通信信号に変換する第二の受信機能と、
前記第二の送信の接続手段と、前記第二の送信機能とを接続し、前記第二の受信の接続手段と、前記第二の受信機能とを接続する中間接続部であり、他の通信装置との送信、受信のペアの衝突を検知し、送信、受信のペアの衝突の検知に伴い、送信、受信のペアを入れ替える第二の接続切替手段と、
で構成されるサーボ制御装置。
【請求項3】
システム全体を制御し、制御信号を送受信するマスターとしてのコントロール装置と、
前記コントロール装置からの制御信号に基づき、モータに供給する電流を制御する少なくとも1台以上のスレーブとしてのサーボ制御装置と、
前記各サーボ制御装置から供給される電流によって運動する少なくとも1台以上のモータと、
で構成されるモーションコントロールシステムであって、
前記サーボ制御装置は、
モータ運動を制御するモータ制御部と、
モータ制御部の信号に基づいて、モータへ電流を供給するパワーアンプ部と、
通信制御を行う通信制御部と、
通信上流側の装置との接続と通信を行う第一の通信手段と、
通信下流側の装置との接続と通信を行う第二の通信手段と、
を具備し、
前記第一の通信手段は、
他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルにより伝達する、送信の物理的通信信号に割り当てる第一の送信の接続手段と、
他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルによって伝達する、受信の物理的通信信号に割り当てる第一の受信の接続手段と、
通信制御部より送信される送信の論理的通信信号を前記送信の物理的通信信号に変換する第一の送信機能と、
前記受信の物理的通信信号を、通信制御部で受信する受信の論理的通信信号に変換する第一の受信機能と、
前記第一の送信の接続手段と、前記第一の送信機能とを接続し、前記第一の受信の接続手段と、前記第一の受信機能とを接続する中間接続部であり、他の通信装置との送信、受信のペアの衝突を検知し、送信、受信のペアの衝突の検知に伴い、送信、受信のペアを入れ替える第一の接続切替手段と、
で構成され、
前記第二の通信手段は、
他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルにより伝達する、送信の物理的通信信号に割り当てる第二の送信の接続手段と、
他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルによって伝達する、受信の物理的通信信号に割り当てる第二の受信の接続手段と、
通信制御部より送信される送信の論理的通信信号を前記送信の物理的通信信号に変換する第二の送信機能と、
前記受信の物理的通信信号を、通信制御部で受信する受信の論理的通信信号に変換する第二の受信機能と、
前記第二の送信の接続手段と、前記第二の受信機能とを接続し、前記第二の受信の接続手段と、前記第二の送信機能とを接続する中間接続部であり、他の通信装置との送信、受信のペアの衝突を検知し、送信、受信のペアの衝突の検知に伴い、送信、受信のペアを入れ替える第二の接続切替手段と、
で構成されるモーションコントロールシステム。
【請求項4】
システム全体を制御し、制御信号を送受信するマスターとしてのコントロール装置と、
前記コントロール装置からの制御信号に基づき、モータに供給する電流を制御する少なくとも1台以上のスレーブとしてのサーボ制御装置と、
前記各サーボ制御装置から供給される電流によって運動する少なくとも1台以上のモータと、
で構成されるモーションコントロールシステムであって、
前記サーボ制御装置は、
モータ運動を制御するモータ制御部と、
モータ制御部の信号に基づいて、モータへ電流を供給するパワーアンプ部と、
通信制御を行う通信制御部と、
通信上流側の装置との接続と通信を行う第一の通信手段と、
通信下流側の装置との接続と通信を行う第二の通信手段と、
を具備し、
前記第一の通信手段は、
他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルにより伝達する、送信の物理的通信信号に割り当てる第一の送信の接続手段と、
他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルによって伝達する、受信の物理的通信信号に割り当てる第一の受信の接続手段と、
通信制御部より送信される送信の論理的通信信号を前記送信の物理的通信信号に変換する第一の送信機能と、
前記受信の物理的通信信号を、通信制御部で受信する受信の論理的通信信号に変換する第一の受信機能と、
前記第一の送信の接続手段と、前記第一の受信機能とを接続し、前記第一の受信の接続手段と、前記第一の送信機能とを接続する中間接続部であり、他の通信装置との送信、受信のペアの衝突を検知し、送信、受信のペアの衝突の検知に伴い、送信、受信のペアを入れ替える第一の接続切替手段と、
で構成され、
前記第二の通信手段は、
他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルにより伝達する、送信の物理的通信信号に割り当てる第二の送信の接続手段と、
他の通信装置と接続するための通信ケーブルを接続する接続部であり、通信ケーブルによって伝達する、受信の物理的通信信号に割り当てる第二の受信の接続手段と、
通信制御部より送信される送信の論理的通信信号を前記送信の物理的通信信号に変換する第二の送信機能と、
前記受信の物理的通信信号を、通信制御部で受信する受信の論理的通信信号に変換する第二の受信機能と、
前記第二の送信の接続手段と、前記第二の送信機能とを接続し、前記第二の受信の接続手段と、前記第二の受信機能とを接続する中間接続部であり、他の通信装置との送信、受信のペアの衝突を検知し、送信、受信のペアの衝突の検知に伴い、送信、受信のペアを入れ替える第二の接続切替手段と、
で構成されるモーションコントロールシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−211855(P2011−211855A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78374(P2010−78374)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】