説明

サーモスタット装置

【課題】 車両(エンジン等)に取付けられるサーモスタット装置を、必要最小限の部品点数による簡単型構造で構成し、またその組立性等も向上させる。
【解決手段】 第1の冷却液流路2Bと、第2の冷却液流路2Dと、これら第1および第2の冷却液流路と連通するサーモスタット収容部とを有するケーシング2と、サーモスタット収容部に連通する第3の冷却液流路2Cを有すると共に、前記サーモスタット収容部を覆う蓋体3と、サーモスタット収容部を流れる冷却液の温度変化に応じて進退するサーモエレメント10hを有するサーモスタット10を備える。サーモスタット収容部内に臨んで設けられ冷却液温度を検出する温度センサ20を備え、この温度センサを内設したセンサ取付部21を、蓋体内方端に一体的に設けるとともに、該蓋体の外方端に温度センサから外部に引き出されるリード接続部25を一体的に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の冷却装置に関し、サーモスタット装置に関し、特にエンジンブロック等のエンジン構成部材に埋設されることなく、一つの部品として、例えばエンジン近傍の所定の場所に取り付けられるサーモスタット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在市販されている車両の内燃機関の冷却システムは、冷却液を媒体とする水冷方式によりエンジンを冷却するものが大半を占め、この水冷方式の冷却システムは、四輪車用のエンジンの他、広く二輪車用のエンジンにも供されている。
【0003】
前記水冷方式による車両の内燃機関の冷却システムは、エンジン本体の外部にラジエータを配置し、このラジエータとエンジン本体とをラバーホース等により連結して冷却液を循環させるものであり、熱交換器の役割を担うラジエータと、このラジエータにエンジンから冷却液を強制的に圧送するウォーターポンプと、ラジエータから流れてくる、若しくはラジエータへ流れていく冷却液の温度によって、冷却液の流れを制御して適温に保つサーモスタットと、冷却液の循環流路を形成するラバーホース等とから構成されている。そして、エンジンの発熱によるオーバーヒートを防止するとともに、一方では寒い時期のオーバークールを防止して、エンジンを常に適温に保つように機能する。
【0004】
ところで、本願出願人は、このような水冷方式に用いられる、サーモスタット装置であって、エンジンヘッド(図示せず)等の外部の所定場所に取り付けられる外部取付け型のサーモスタット装置として、サーモスタット(バルブ)を収容した一つの部品として構成されているものを、先に提案している(例えば、特許文献1等参照)。
【0005】
この従来装置では、ケーシング内にサーモエレメントを内包し、これをリターンスプリングで付勢した状態で蓋体で封止する際に、ケーシングと蓋体とをレーザ溶着にて接合固定した構造である。
【0006】
また、この種のサーモスタット装置において、サーモスタットを収容した装置内部を流れる冷却水の温度を検出する水温センサを設けた構造のものが提案されている。この従来装置では、該水温センサをばね受けフレームの取付けの際に邪魔とならないようにケーシングの内壁から突出する支持段部よりも突出しない位置に設けた構造である(例えば、特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−342767号公報
【特許文献2】特開2003−222264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記した特許文献1に示されたサーモスタット装置において、前記した特許文献2に示された水温センサを組み込むにあたって、以下に述べる問題が生じていた。
すなわち、この種従来装置では、装置全体の構造が複雑となり、構成部品点数も増え、組立も面倒となる等の問題を生じる虞れがあった。特に、水温センサを取り付けるために、ケーシングへの組込み位置などが難しく、しかも簡単に組立てて形成することが面倒かつ煩雑となるものであった。
【0009】
さらに、この種の従来装置では、装置をできるだけ簡単な構造とし、小型、コンパクト化等も達成し得ることが望まれるものであり、何らかの対策を講じることが必要とされている。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、一つの部品として車両(エンジン等)に取付けられるサーモスタット装置を、必要最小限の部品点数による簡単型構造で構成し、またその組立性等も向上させることができるサーモスタット装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係るサーモスタット装置は、第1の冷却液流路と、第2の冷却液流路と、これら第1および第2の冷却液流路と連通するサーモスタット収容部とを有するケーシングと、前記サーモスタット収容部に連通する第3の冷却液流路を有すると共に、前記サーモスタット収容部を覆う蓋体と、前記サーモスタット収容部を流れる冷却液の温度変化に応じて進退するサーモエレメントを有するサーモスタットを備え、前記サーモエレメントで第1の冷却液流路を閉塞した場合には、第3の冷却液流路、第3の冷却液流路側のサーモスタット収容部、第2の冷却液流路が連通状態となり、前記サーモエレメントが第1の冷却液流路を開放した場合には、第1の冷却液流路側のサーモスタット収容部と第2の冷却液流路を連通状態となるように構成されているサーモスタット装置において、前記サーモスタット収容部内に臨んで設けられ冷却液温度を検出する温度センサを備え、この温度センサを内設したセンサ取付部を、前記蓋体の内方端に一体的に設けるとともに、該蓋体の外方端に前記温度センサから引き出されるリード接続部を一体的に設けたことを特徴とする。
【0012】
本発明(請求項2記載の発明)に係るサーモスタット装置は、請求項1記載のサーモスタット装置において、前記センサ取付部内の温度センサは、前記サーモスタット収容部内において進退自在に設けられているサーモエレメントを付勢する圧縮コイルばねの内側に臨んで配置されることを特徴とする。
【0013】
本発明(請求項3記載の発明)に係るサーモスタット装置は、請求項1または請求項2記載のサーモスタット装置において、前記センサ取付部は金属材で形成され、このセンサ取付部の先端を前記サーモスタット収納部内に臨ませた状態で、樹脂製蓋体の内方端に一体的に設けられるとともに、このセンサ取付部の基端部と樹脂製蓋体との間からの液漏れを防ぐためのOリングとこれを係合保持するリテーナリングとを設け、このリテーナリングを、前記圧縮コイルばねのばね受けとして用いたことを特徴とする。

【0014】
発明(請求項4記載の発明)に係るサーモスタット装置は、請求項1または請求項2記載のサーモスタット装置において、前記センサ取付部は合成樹脂材で形成され、このセンサ取付部の先端を前記サーモスタット収納部内に臨ませた状態で、樹脂製蓋体の内方端に一体に形成されるとともに、このセンサ取付部の基端部外周部分にリテーナリングを設け、このリテーナリングを、前記圧縮コイルばねのばね受けとして用いたことを特徴とする。
【0015】
本発明(請求項5記載の発明)に係るサーモスタット装置は、請求項3または請求項4記載のサーモスタット装置において、前記蓋体は、そのフランジ状部の外周端部が前記ケーシングの端部の外周面と嵌合すると共に、前記蓋体の端部内周面とケーシングの上端部の外周面とがレーザ光により一体的に接合固定されるように構成されており、このレーザ光による接合固定時に、前記蓋体のフランジ部において前記圧縮コイルばねが当接する部分に対応する外側面部分のほぼ同一径部分に治具を当接させるように構成したことを特徴とする。
【0016】
本発明(請求項6記載の発明)に係るサーモスタット装置は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のサーモスタット装置において、前記第1の冷却液流路はラジエータ側冷却液流路であり、第2の冷却液流路はエンジン側冷却液流路であり、第3の冷却液流路はバイパス側冷却液流路であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明に係るサーモスタット装置によれば、ケーシング内にサーモスタットが収容されると共に、ケーシングを蓋体で覆ってユニット化しているため、エンジンブロック等のエンジン構成部材に埋設されることなく、一つの部品として車両(エンジン等)に取り付けることができる。
【0018】
さらに、本発明によれば、サーモエレメントをケーシング内に封止する蓋体に対し、冷却水温度を検出する温度センサをもつセンサ取付部を一体的に設けたことにより、全体の構成部品点数の増加を招くことなく、簡単に温度センサを設けることが可能であり、これにより簡易型構造をもち、小型、コンパクト化が図れるサーモスタット装置を得ることが可能で、しかもこのサーモスタット装置の組み付け工数なども削減し、これを容易に、しかも短時間に組み立てることができる等の利点がある。
【0019】
また、本発明によれば、サーモエレメントを付勢するリターンスプリングである圧縮コイルばねの内側に温度センサを臨ませた構造としており、サーモエレメント近傍、サーモエレメント感温部の周辺を流れた冷却水の流通経路に設置することになり、サーモエレメントの周辺の水温をモニタリングすることでサーモスタットが正常に作動しているかの故障診断機能をも兼ね備えることが可能となる。
例えば、メインバルブが全開状態で固着した場合、予想温度より高温になったり、全閉状態で固着した場合、予想より低い温度になったり、通常動作と異なる状態(故障状態)であることが診断できることとなる。
【0020】
また、本発明によれば、蓋体のフランジ状部の外周側端部がケーシングの端部の外周面と嵌合すると共に、蓋体の端部内周面とケーシングの上端部の外周面とがレーザ光により接合固定されているから、ケーシングと蓋体との一体化が容易に行える。
【0021】
さらに、本発明によれば、感温性を高めるための金属製センサ先端と樹脂製蓋体のフランジ状部との隙間に冷却水が侵入しないようにOリングを設けており、前記リターンスプリングとそのスプリングを保持するリテーナがOリングを適切に押さえ付けることが可能となり、冷却水の侵入に対するシール力が確実に確保できる。
【0022】
また、本発明によれば、センサ取付部を樹脂製で蓋体と一体に形成した場合において、センサ基端部にリテーナを設け、該リテーナを圧縮コイルばねの受けとして用いるように構成することにより、樹脂製フランジ部分に直接ばねが当接し、該フランジ部分を傷つけたりしないようにしている。
【0023】
また、本発明によれば、Oリングを付勢するリターンスプリングはサーモエレメント作動量により荷重が変化するが、リテーナにはリターンスプリングによる一定以上の付勢力が常にかかっているので、リテーナの形状を最適化することで通常採用されているようなOリング溝の機能を有する。そのため、Oリング溝を設けなくともリテーナ形状にて締め代を一定とすることができる。さらに、Oリング用溝が不要となることから、加工工数の削減を実現することができる等の利点もある。
【0024】
また、本発明構造によれば、温度センサの取付部を一体的に設けた蓋体でサーモエレメントを封止し、レーザ溶接する際に、該蓋体を治具によりチャックし押し込むことになるが、その場合には蓋体のフランジ状部の立ち上がり基部のR部分に応力がかかり、破損やゆがんだりしやすくなり、そのままの状態で溶着されてしまうと、均一な溶着面が確保できなくなり、シール力および溶着強度が得られなくなる虞れがあったが、本発明によれば、治具とフランジ状部との当接面と反対側にリターンスプリングにより付勢したリテーナが当接しているから、治具とフランジ状部の当接面応力を吸収することが可能で、これにより従来のような破損やゆがみがない構造とすることができる。
【0025】
さらに、本発明によれば、第1の冷却液流路はラジエータ側冷却液流路であり、第2の冷却液流路はエンジン側冷却液流路であり、第3の冷却液流路はバイパス側冷却液流路であるようにしているから、エンジンブロック等のエンジン構成部材に埋設されることなく、一つの部品として車両(エンジン等)に取り付けられるサーモスタット装置を簡単かつ適切に得ることができる。また、部品点数を極力少なくすると共に、組み立てが容易であり、コストの低減を図ることのできるサーモスタット装置を得ることができる。更に、長時間使用しても、暖機運転おいてラジエータ側流路とエンジン側流路とを完全に遮断できるサーモスタット装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るサーモスタット装置の一実施形態を示し、低温時の概略断面図である。
【図2】図1のサーモスタット装置において、高温時の概略断面図である。
【図3】図1のサーモスタット装置において、シール部を拡大して示す拡大断面図である。
【図4】図1のサーモスタット装置において、当接部を拡大して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1および図2は本発明に係るサーモスタット装置の一実施形態を示す。
これらの図において、符号1はサーモスタット装置であり、このサーモスタット装置1は、図示のように、エンジンヘッド(図示せず)等の外部の所定場所に取り付けられる外部取付け型のサ−モスタットであって、サーモスタット(バルブ)10を収容した一つの部品として構成されている。
【0028】
即ち、このサーモスタット装置1は、サーモスタット(バルブ)10と、前記サーモスタット(バルブ)10を収容するケーシング2と、前記ケーシング2におけるサーモスタット(バルブ)10の収容部2Aを覆う蓋体3と、サ−モスタット(バルブ)10と蓋体3との間に介装され、サーモエレメント10hを図の左方に押圧するコイルスプリング4とから構成されている。
【0029】
前記ケーシング2は、前記したようにその中央部にサーモスタット(バルブ)10を収納する収容部2Aが形成され、この収容部2Aの上端面は開口している。
また、ケーシング2の側部にはラジエータ側からの冷却液が流通する冷却液流路2Bが形成されている。このラジエータ側冷却液流路2Bは図中垂直に形成され、開口部2aを介して、前記収容部2Aと連通している。
【0030】
なお、図中2fは冷却水を充填する際に、装置内にエアが残留しないようにエア抜きを行うためのエア抜き用孔、2gはケーシング2の収納部2A内において、サーモエレメント10hが摺動自在に保持するリブである。
【0031】
さらに、ラジエータ側冷却液流路2Bの最奥部には、略垂直状態からほぼ水平方向に向かって屈曲し、前記収容部2Aの開口部の近傍には、バイパス通路側の冷却液流路2Cが図中下方に向かって開口して形成されている。
【0032】
また、このケーシング2には、前記ラジエータ側冷却液流路2Bより右方であって、ラジエータ側冷却液流路2Bの方向から90°ずれた位置にエンジン側(ウォータポンプ側)冷却液流路2Dが形成されている。
なお、このケーシング2には上下に張り出したフランジ部が形成され、このフランジ部には貫通穴が形成されている。この貫通穴は、図示しないボルトを挿通させることによって、ケーシング2をエンジンヘッド(図示せず)等に取り付けるために用いられる。
【0033】
次に、蓋体3について説明する。
この蓋体3には、前記ケーシング2の端部が嵌合するように周壁3bがフランジ状部3aの外周端に形成され、この周壁3bをケーシング2の収容部2Aの開口端外周部に嵌合させた状態でこれらの部材をレーザ光で溶着することにより、両部材が強固に結合固定されるようになっている。
【0034】
ここで、前記サーモスタット(サーモバルブ)10は、従来のサーモスタット(サーモバルブ)と同様に、その内部に膨張体であるワックス(図示せず)を内装するワックスケース、ワックスの膨張収縮を図示しないダイヤフラム等を介して外部に進退自在に突出するピストン10gを備えている。そして、このサーモスタット10は、その周囲の冷却水の温度条件に応じてピストン10gを図1のような状態と図2のような状態とに進退動作し、第1、第2、第3の冷却液流路2B,2D,2Cを適宜連通、遮断するようになっている。。
【0035】
即ち、図1に示すように、ラジエータ側冷却液流路2Bの開口部2aをサーモエレメント(弁体)10hが閉じた状態にある場合には、バイパス側冷却液流路2Cから流入した冷却液は、バイパス側に位置する収容部2Aを通ってエンジン側(ウォータポンプ側)冷却液流路2Dへ流れるように形成されている。
なお、ラジエータ側冷却液流路2Bとエンジン側(ウォータポンプ側)冷却液流路2Dとは、ラジエータ側冷却液流路2Bが閉じられた状態にあるため、非連通状態になされる。
【0036】
一方、図2に示すように、ラジエータ側冷却液流路2Bの開口部2aをサーモエレメント(弁体)10hが開いた状態にある場合には、ラジエータ側冷却液流路2Bから流入した冷却液は、開口部2a、収容部2Aを通ってエンジン側冷却液流路2Dへ流通するように形成されている。このとき、バイパス側冷却液流路3Aとエンジン側(ウォータポンプ側)冷却液流路2Dとはサーモエレメント10hの外周面によって非連通状態になされる。
【0037】
このようにサーモエレメント(弁体)10h進退動作することにより、ラジエータ側冷却液流路2Bの開口部2aの開閉制御、及びエンジン側(ウォータポンプ側)冷却液流路2Dの開閉制御がなされる。
【0038】
ここで、サーモエレメント(弁体)10hの直径は、開口部2aの直径よりも大きく、該サーモエレメント10hを摺動自在に支持するリブ2gによる内径と略同一に形成される。
なお、図1、2に示すように、エンジン側(ウォータポンプ側)冷却液流路2Dの流路全体が開放されるものではなく、その一部が開放される。したがって、開放される冷却液流路2D面積は冷却液の流量を考慮して決定する必要がある。
【0039】
本発明によれば、上述した構成によるサーモスタット装置1において、サーモスタット収容部2A内に臨んで設けられ冷却液温度を検出する温度センサ20を備え、この温度センサ20を内設したセンサ取付部21を、前記蓋体3の内方端から収容部2A内に向かって突出するように一体的に設けるとともに、該蓋体3の外方端に前記温度センサ20から引き出されるリード接続部25を一体的に設けたことを特徴とする。
【0040】
上述した構成によれば、ケーシング2内にサーモスタット10となるサーモエレメント10hが収容されると共に、ケーシング2を蓋体3で覆ってユニット化しているため、エンジンブロック等のエンジン構成部材に埋設されることなく、一つの部品として車両(エンジン等)に取り付けることができる。
【0041】
さらに、上述した構成では、サーモエレメント10hをケーシング2内に封止する蓋体3に対し、冷却水温度を検出する温度センサ20をもつセンサ取付部21を一体的に設けたことにより、全体の構成部品点数の増加を招くことなく、簡単に温度センサ20を設けることが可能であり、これにより簡易型構造をもち、小型、コンパクト化が図れるサーモスタット装置を得ることが可能で、しかもこのサーモスタット装置の組み付け工数なども削減し、これを容易に、しかも短時間に組み立てることができる等の利点がある。
【0042】
特に、この実施形態では、温度センサ20を、サーモスタット収容部2A内において進退自在に設けられているサーモエレメント10hを付勢するリターンスプリングである圧縮コイルばね4の内側に臨んで配置させている。
【0043】
したがって、温度センサ20を、サーモエレメント10h近傍、サーモエレメント10hの感温部の周辺を流れた冷却水の流通経路に設置することが可能となり、これによりサーモエレメント10hの周辺の水温を適切かつ確実にモニタリングすることでサーモスタット10が正常に作動しているかの故障診断機能をも兼ね備えることが可能となる。
【0044】
例えば、このサーモスタット装置1のメインバルブが全開状態で固着した場合に予想温度より高温になったり、全閉状態で固着した場合に予想より低い温度になったりし、その結果通常動作と異なる状態(故障状態)であることが診断できることになる。
【0045】
また、本発明によれば、図3から明らかなように、前記センサ取付部21を金属材で形成し、このセンサ取付部21の先端の温度センサ20埋設部分を前記サーモスタット収納部2A内に臨ませた状態で、樹脂製蓋体3の内方端に一体的に設けている。
そして、このような構成において、このセンサ取付部21の基端部と樹脂製蓋体3との間からの液漏れを防ぐためのOリング31とこれを係合保持するリテーナリング30とを設け、このリテーナリング30を、前記圧縮コイルばね4のばね受けとしても用いている。
【0046】
このような構成によれば、感温性を高めるための金属製センサ取付部21の基端部と樹脂製蓋体3のフランジ状部3aとの隙間に冷却水が侵入しないようにOリング31を設けており、前記リターンスプリング4とそのスプリング4を保持するリテーナ30がOリング31を適切に押さえ付けることが可能となり、冷却水の侵入に対するシール力を確実に確保できる。
【0047】
また、このような構成では、図3に示すように、Oリング31を付勢するリターンスプリング4はサーモエレメント10hの作動量により荷重が変化するが、リテーナ30にはリターンスプリング4による一定以上の付勢力が常にかかっているので、リテーナ30の形状を最適化することで通常採用されているようなOリング溝としての機能を有する。そのため、Oリング溝を設けなくともリテーナ形状にて締め代を一定とすることができる。さらに、Oリング用溝が不要となることから、加工工数の削減を実現することができる等の利点もある。
【0048】
なお、センサ取付部21を金属材ではなく、樹脂材で形成する場合もあり、このときには樹脂製のセンサ取付部21を蓋体3と一体に形成し、Oリング31は不要となるが、この場合にもセンサ取付部21の基端部にリテーナ30を設け、該リテーナ30を圧縮コイルばねの受けとして用いることにより、樹脂製フランジ3a部分に直接圧縮コイルばね4が当接し、該フランジ3a部分を傷つけたりしないようにすることができる。
【0049】
また、本発明によれば、図4に示すように、蓋体3は、そのフランジ状部3aの外周端部がケーシング2の端部の外周面と嵌合すると共に、前記蓋体3の端部内周面とケーシング2の上端部の外周面とがレーザ光により一体的に接合固定されるように構成されており、このレーザ光による接合固定時に前記蓋体3のフランジ状部3aを外方端側から治具で押圧するようにするとよい。ここで、この治具の当接部としては、前記蓋体3のフランジ状部3aにおいて前記圧縮コイルばね4が当接する部分に対応する外側面部分のほぼ同一径部分であることが望ましい。これは、たとえば前記蓋体3のフランジ状部3aの径寸法の1/2(フランジ中径)よりも外周側に位置するような設定となっている。
【0050】
そして、このような構成では、蓋体3のフランジ状部3aの外周側端部がケーシング2の端部の外周面と嵌合すると共に、蓋体3の端部内周面とケーシング2の上端部の外周面とがレーザ光により接合固定されているから、ケーシング2と蓋体3との一体化が容易に行える。
【0051】
また、本発明構造によれば、温度センサ20の取付部21を一体的に設けた蓋体3でサーモエレメント10hを封止し、レーザ溶接する際に、該蓋体3を治具によりチャックし押し込むことになるが、図4に示すように、その場合には蓋体3のフランジ状部3aの立ち上がり基部のR部分に応力がかかり、破損やゆがんだりしやすくなり、そのままの状態で溶着されてしまうと、均一な溶着面が確保できなくなり、シール力および溶着強度が得られなくなる虞れがあったが、本発明によれば、治具とフランジ状部3aとの当接面と反対側にリターンスプリング4により付勢したリテーナ30が当接しているから、治具とフランジ状部3aの当接面応力を吸収することが可能で、これにより従来のような破損やゆがみがない構造とすることができる。
【0052】
さらに、本発明によれば、第1の冷却液流路2Bはラジエータ側冷却液流路であり、第2の冷却液流路2DはWP(ウォータポンプ)側に接続されるエンジン側冷却液流路であり、第3の冷却液流路2Cはバイパス側冷却液流路である。
【0053】
このような構成では、図示しないエンジンブロック等のエンジン構成部材に埋設されることなく、一つの部品として車両(エンジン等)に取り付けられるサーモスタット装置1を簡単かつ適切に得ることができる。また、部品点数を極力少なくすると共に、組み立てが容易であり、コストの低減を図ることのできるサーモスタット装置を得ることができる。更に、長時間使用しても、暖気運転おいてラジエータ側流路とエンジン側流路とを完全に遮断できるサーモスタット装置を得ることができる。
【0054】
ここで、上述したサーモスタット装置1による組立てを説明する。
すなわち、ケーシング2に対し、サーモエレメント10h、リターンスプリング4等を組込み、Oリング31、リテーナリング30を内方端側に組み付けた蓋体3を収容部2Aの開口部を閉じるように組み付けし、その勘合させる部分をレーザ光などで溶着固定することにより、これらの部材を一体的に組み立てた一つの部品として準備することができ、所要の通路開閉動作を行えることは容易に理解されよう。
【0055】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、サーモスタット装置1を構成する各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。
たとえば本発明に係るサーモスタット装置1は、四輪車用のエンジンの他、広く二輪車用のエンジンの冷却システムに用いることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 サーモスタット装置
2 ケーシング
2A サーモスタット収容部
2B ラジエータ側冷却液流路
2C バイパス通路側の冷却液流路
2D エンジン側(WP:ウォータポンプ側)冷却液流路
2a 開口部
3 蓋体
3a フランジ状部
4 リターンスプリング(圧縮コイルばね)
10 サーモスタット
10h サーモエレメント
20 温度センサ
21 センサ取付部
25 リード接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の冷却液流路と、第2の冷却液流路と、これら第1および第2の冷却液流路と連通するサーモスタット収容部とを有するケーシングと、前記サーモスタット収容部に連通する第3の冷却液流路を有すると共に、前記サーモスタット収容部を覆う蓋体と、前記サーモスタット収容部を流れる冷却液の温度変化に応じて進退するサーモエレメントを有するサーモスタットを備え、前記サーモエレメントで第1の冷却液流路を閉塞した場合には、第3の冷却液流路、第3の冷却液流路側のサーモスタット収容部、第2の冷却液流路が連通状態となり、前記サーモエレメントが第1の冷却液流路を開放した場合には、第1の冷却液流路側のサーモスタット収容部と第2の冷却液流路を連通状態となるように構成されているサーモスタット装置において、
前記サーモスタット収容部内に臨んで設けられ冷却液温度を検出する温度センサを備え、
この温度センサを内設したセンサ取付部を、前記蓋体の内方端に一体的に設けるとともに、該蓋体の外方端に前記温度センサから引き出されるリード接続部を一体的に設けたことを特徴とするサーモスタット装置。
【請求項2】
請求項1記載のサーモスタット装置において、
前記センサ取付部内の温度センサは、前記サーモスタット収容部内において進退自在に設けられているサーモエレメントを付勢する圧縮コイルばねの内側に臨んで配置されることを特徴とするサーモスタット装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のサーモスタット装置において、
前記センサ取付部は金属材で形成され、このセンサ取付部の先端を前記サーモスタット収納部内に臨ませた状態で、樹脂製蓋体の内方端に一体的に設けられるとともに、
このセンサ取付部の基端部と樹脂製蓋体との間からの液漏れを防ぐためのOリングとこれを係合保持するリテーナリングとを設け、
このリテーナリングを、前記圧縮コイルばねのばね受けとして用いたことを特徴とするサーモスタット装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載のサーモスタット装置において、
前記センサ取付部は合成樹脂材で形成され、このセンサ取付部の先端を前記サーモスタット収納部内に臨ませた状態で、樹脂製蓋体の内方端に一体に形成されるとともに、
このセンサ取付部の基端部外周部分にリテーナリングを設け、
このリテーナリングを、前記圧縮コイルばねのばね受けとして用いたことを特徴とするサーモスタット装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4記載のサーモスタット装置において、
前記蓋体は、そのフランジ状部の外周端部が前記ケーシングの端部の外周面と嵌合すると共に、前記蓋体の端部内周面とケーシングの上端部の外周面とがレーザ光により一体的に接合固定されるように構成されており、
このレーザ光による接合固定時に、前記蓋体のフランジ部において前記圧縮コイルばねが当接する部分に対応する外側面部分のほぼ同一径部分に治具を当接させるように構成したことを特徴とするサーモスタット装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のサーモスタット装置において、
前記第1の冷却液流路はラジエータ側冷却液流路であり、
第2の冷却液流路はエンジン側冷却液流路であり、
第3の冷却液流路はバイパス側冷却液流路であることを特徴とするサーモスタット装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−169211(P2011−169211A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33041(P2010−33041)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000228741)日本サーモスタット株式会社 (52)
【Fターム(参考)】