説明

シアニン化合物、該化合物を用いた光学記録材料、及び光学記録媒体

【課題】 より光学記録用途に適した熱挙動を示す新規なシアニン化合物、、これを含有する光学記録材料、及び該光学記録材料を用いた光学記録媒体を提供する。
【解決手段】 下記式(I)で表されるシアニン化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なシアニン化合物、該シアニン化合物を含有してなる光学記録材料、及び該光学記録材料を用いた光学記録媒体に関する。該シアニン化合物は、光学要素として有用であり、レーザ光により記録及び再生がなされる光学記録媒体の記録層に用いる光学記録材料に特に適しているほか、画像表示装置の光学フィルターに用いる光吸収剤としても用いることができる。
【背景技術】
【0002】
500〜700nmの範囲に強度の大きい吸収を有する化合物、特に極大吸収(λmax)が550〜620nmにある化合物は、DVD−R等の光学記録媒体の光学記録層や、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、蛍光表示管、電界放射型ディスプレイ等の画像表示装置の光学フィルターの光学要素として用いられている。
【0003】
上記の光学要素としては、感度が高いインドール環を有するシアニン化合物が数多く検討されている。該シアニン化合物は、特にDVD−Rに代表される光学記録媒体の記録要素として、記録の高速化に対応できるメリットがあるので報告例が多く、例えば下記特許文献1〜5に報告されている。また、特許文献6には、インドール骨格3位にベンジル基を導入したシアニン化合物が記載されている。
しかしながら、従来のシアニン系化合物は、熱分解特性に問題がある。高速記録がなされる光学記録媒体の記録要素としては、分解温度が低いものが適合するが、報告されている上記のシアニン系化合物は、この点で充分な特性を有しているものではなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平10−278426号公報
【特許文献2】特開平11−227331号公報
【特許文献3】特開平11−277904号公報
【特許文献4】特表2001−506933号公報
【特許文献5】特開2002−52829号公報
【特許文献6】特開2003−231359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、より光学記録用途に適した熱挙動を示す新規なシアニン化合物、、これを含有する光学記録材料、及び該光学記録材料を用いた光学記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、高速記録に対応できる感度を実現するには熱分解挙動の適正化及び吸収波長の適正化が有効と考え、検討を重ねた結果、特定の分子構造を有するシアニン系化合物が、上記課題を解決し得ることを知見した。
【0007】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、下記一般式(I)で表される化合物を提供するものである。
また、本発明は、基体上に光学記録層が形成された光学記録媒体の該光学記録層に用いられる、上記シアニン化合物を含有してなる光学記録材料を提供するものである。
また、本発明は、基体上に、上記光学記録材料からなる薄膜を形成した光学記録媒体を提供するものである。
【0008】
【化1】

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より光学記録用途に適した熱挙動を示す新規なシアニン化合物、これを含有する光学記録材料、及び該光学記録材料を用いた光学記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
上記一般式(I)で表される本発明のシアニン化合物は、特定の部位に、置換基を有してもよいベンジル基を有する新規化合物であり、DVD−R用途の光学記録材料に用いられる他のシアニン系化合物よりも、分解温度が低く、吸収波長が適正であるという特徴を有するものである。
【0011】
上記一般式(I)において、環A及び環Bで表される置換基を有してもよいベンゼン環又はナフタレン環の置換基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン基;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル等のアルキル基;フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル等のアリール基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、第二ブトキシ、第三ブトキシ等のアルコキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、第二ブチルチオ、第三ブチルチオ等のアルキルチオ基;ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0012】
上記一般式(I)において、R1又はR2で表される炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル等が挙げられる。
【0013】
R1又はR2で表される基のうち、少なくとも1つは置換基を有してもよいベンジル基である。該ベンジル基が有してもよい置換基の数は1又は2である。該置換基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン基;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル等のアルキル基;これらのアルキル基のハロゲン置換体:メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、第二ブトキシ、第三ブトキシ等のアルコキシ基;これらのアルコキシ基のハロゲン置換体;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、第二ブチルチオ、第三ブチルチオ等のアルキルチオ基;ニトロ基;シアノ基;水酸基等が挙げられるが、この置換基が大きいと、シアニン化合物のモル吸光係数が小さくなり、感度に影響を及ぼす場合があるので、置換基を有するベンジル基としては、下記一般式(II)で表されるものが好ましい。
【0014】
【化2】

【0015】
上記一般式(II)において、X1で表されるハロゲン基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチルが挙げられ、炭素原子数1〜4のハロゲン置換アルキル基としては、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、パーフルオロエチル、パーフルオロプロピル、パーフルオロブチル等が挙げられ、炭素原子数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、第二ブトキシ、第三ブトキシ等が挙げられ、炭素原子数1〜4のハロゲン置換アルコキシ基としては、クロロメチルオキシ、ジクロロメチルオキシ、トリクロロメチルオキシ、ブロモメチルオキシ、ジブロモメチルオキシ、トリブロモメチルオキシ、フルオロメチルオキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、パーフルオロエチルオキシ、パーフルオロプロピルオキシ、パーフルオロブチルオキシ等が挙げられる。
【0016】
上記一般式(I)におけるY1又はY2で表される炭素原子数1〜30の有機基としては、特に制限を受けず、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ペプタデシル、オクタデシル等のアルキル基;ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ぺンタデセニル、1−フェニルプロペン−3−イル等のアルケニル基;フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−第三ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−オクチルフェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、4−ステアリルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ第三ブチルフェニル、シクロヘキシルフェニル等のアルキルアリール基;ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン−2−イル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等のアリールアルキル基;これらの炭化水素基がエーテル結合及び/又はチオエーテル結合で中断されたもの、例えば、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、2−ブトキシエチル、メトキシエトキシエチル、メトキシエトキシエトキシエチル、3−メトキシブチル、2−フェノキシエチル、2−メチルチオエチル、2−フェニルチオエチルが挙げられ、更にこれらの基は、アルコキシ基、アルケニル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
【0017】
上記のY1及びY2は、置換基であるこれらの基が大きいと、シアニン化合物のモル吸光係数が小さくなり、感度に影響を及ぼす場合があるので、炭素原子数1〜8の炭化水素基が好ましく、炭素原子数1〜8のアルキル基がより好ましい。
【0018】
尚、XがNYである場合、Yで表される炭素原子数1〜30の有機基は、上記のY1及びY2と同様である。
【0019】
上記一般式(I)において、Zで表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0020】
また、上記一般式(I)において、Anm-で表されるアニオンとしては、例えば、一価のものとして、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、フッ素アニオン等のハロゲンアニオン;過塩素酸アニオン、塩素酸アニオン、チオシアン酸アニオン、六フッ化リンアニオン、六フッ化アンチモンアニオン、四フッ化ホウ素アニオン等の無機系アニオン;ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ジフェニルアミン−4−スルホン酸アニオン、2−アミノ−4−メチル−5−クロロベンゼンスルホン酸アニオン、2−アミノ−5−ニトロベンゼンスルホン酸アニオン等の有機スルホン酸アニオン;オクチルリン酸アニオン、ドデシルリン酸アニオン、オクタデシルリン酸アニオン、フェニルリン酸アニオン、ノニルフェニルリン酸アニオン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸アニオン等の有機リン酸系アニオン等が挙げられ、二価のものとして、例えば、ベンゼンジスルホン酸アニオン、ナフタレンジスルホン酸アニオン等が挙げられる。また、励起状態にある活性分子を脱励起させる(クエンチングさせる)機能を有するクエンチャーアニオンや、シクロペンタジエニル環にカルボキシル基、ホスホン酸基、スルホン酸基等のアニオン性基を有するフェロセン、ルテオセン等のメタロセン化合物アニオン等も必要に応じて用いることができる。
【0021】
上記のクエンチャーアニオンとしては、例えば、下記一般式(A)又は(B)で表されるもの、特開昭60−234892号公報、特開平5−43814号公報、特開平6−239028号公報、特開平9−309886号公報、特開平10−45767号公報等に記載されたようなアニオンが挙げられる。
【0022】
【化3】

【0023】
前記一般式(I)で表される本発明のシアニン化合物の具体例としては、下記化合物No.1〜27が挙げられる。なお、以下の例示では、アニオンを省いたシアニンカチオンで示している。
【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
【化6】

【0027】
上記のシアニン化合物の中でも、光学記録材料としての熱挙動が一層良好であるので、置換基を有してもよいベンジル基が結合するインドール骨格を構成する環(上記一般式(I)における環A)がナフタレン環であるもの(例えば、化合物No.1〜12、19〜22、24〜27)、特にインドール環のe面にベンゼン環が縮合したもの(例えば、化合物No.1〜4、7〜12、19〜22、25〜27);上記一般式(I)における環Bがベンゼン環であるもの(例えば、化合物No.1〜18、20、21、23〜27)が好ましく、上記環Aがナフタレン環であり且つ上記環Bがベンゼン環であるもの(例えば、化合物No.1〜12、20、21、24〜27)がより好ましい。これは、置換基を有してもよいベンジル基とベンゾインドール環との立体障害による環構造の歪が、より大きくなることに起因すると考察される。
【0028】
前記一般式(I)で表される本発明のシアニン化合物は、その製造法によって制限を受けるものではない。該シアニン化合物は、例えば、中間体である2−メチルチアゾリウム塩誘導体と2−メチルインドール4級塩誘導体とを、N,N’−ジフェニルホルムアミジン等のブリッジ剤と反応させることで得られる。また、置換基を有してもよいベンジル基は、中間体である2−メチルインドール4級塩誘導体を得る過程において導入でき、アリールヒドラジン誘導体を出発物質にして、置換基X1を有してもよいフェニル基を4位に有する2−ブタノン誘導体によりインドール環を形成する時に導入してもよく、インドール環にハロゲン化メチルベンゼン誘導体を反応させて導入してもよい。Y1又はY2は、アリールアミン誘導体又はインドール環のNHと反応するY1−D又はY2−D(Dは塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン基;フェニルスルホニルオキシ、4−メチルフェニルスルホニルオキシ、4−クロロフェニルスルホニルオキシ等のスルホニルオキシ基)により導入できる。なお、置換基X1を有してもよいフェニル基を4位に有する2−ブタノン誘導体は、アセトンと置換基X1を有してもよいベンズアルデヒドとを反応させることで容易に得られる。本発明のシアニン化合物を得る具体的な方法の一例としては、下記〔化7〕で表されるルートが挙げられる。
【0029】
【化7】

【0030】
本発明のシアニン化合物は、光学要素として機能するものであり、光学記録媒体の光学記録層に特に好適である。本発明のシアニン化合物を含有する光学記録層は、本発明のシアニン化合物を含有する光学記録材料を用いて、基体上に薄膜として形成される。尚、本発明の光学記録材料は、本発明のシアニン化合物そのもの、並びに本発明のシアニン化合物と後述する有機溶媒及び/又は各種化合物との混合物を包含する。
【0031】
本発明の光学記録材料を用いた光学記録媒体の光学記録層の形成方法については特に制限を受けない。一般には、メタノール、エタノール等の低級アルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルジグリコール等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル類;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類;2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ化アルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;メチレンジクロライド、ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類等の有機溶媒に本発明のシアニン化合物及び必要に応じて後述の各種化合物を溶解した溶液を、基体上に、スピンコート、スプレー、ディッピング等で塗布する湿式塗布法が用いられる。その他の方法としては、蒸着法、スパッタリング法等が挙げられる。
【0032】
本発明の光学記録材料を用いて形成される上記光学記録層の厚さは、通常、0.001〜10μであり、好ましくは0.01〜5μの範囲が適当である。
【0033】
また、本発明の光学記録材料を光学記録媒体の光学記録層に含有させる際、該光学記録層における本発明のシアニン化合物の含有量は、好ましくは50〜100質量%である。このようなシアニン化合物含有量の光学記録層を形成するために、本発明の光学記録材料は、本発明のシアニン化合物を、本発明の光学記録材料に含まれる固形分基準で50〜100質量%含有するのが好ましい。
【0034】
また、上記光学記録層は、本発明のシアニン化合物のほかに、必要に応じて、他のシアニン系化合物、アゾ系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィン系化合物等の光学記録層に用いられる化合物;ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート等の樹脂類;界面活性剤;帯電防止剤;滑剤;難燃剤;ヒンダードアミン等のラジカル捕捉剤;フェロセン誘導体等のピット形成促進剤;分散剤;酸化防止剤;架橋剤;耐光性付与剤等を含有してもよい。さらに、上記光学記録層は、一重項酸素等のクエンチャーとして、芳香族ニトロソ化合物、アミニウム化合物、イミニウム化合物、ビスイミニウム化合物、遷移金属キレート化合物等を含有してもよい。
これらの各種化合物は、上記光学記録層において好ましくは0〜50質量%の範囲で使用される。そのためには、本発明の光学記録材料において、これらの各種化合物の含有量は、本発明の光学記録材料に含まれる固形分基準で0〜50質量%とするのが好ましい。
【0035】
上記光学記録層を設層する上記基体の材質は、書き込み(記録)光及び読み出し(再生)光に対して実質的に透明なものであれば特に制限はなく、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等の樹脂、ガラス等が用いられる。また、その形状は、用途に応じ、テープ、ドラム、ベルト、ディスク等の任意の形状とすることができる。
【0036】
また、上記光学記録層上に、金、銀、アルミニウム、銅等を用いて、蒸着法あるいはスパッタリング法により反射膜を形成することもできるし、アクリル樹脂、紫外線硬化性樹脂等による保護層を形成することもできる。
【0037】
本発明の光学記録材料は、記録及び再生に半導体レーザを用いる光学記録媒体に好適であり、特に高速記録タイプのDVD−R等の光ディスクに好適である。
【実施例】
【0038】
以下、実施例及び評価例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
【0039】
[実施例1]化合物No.2の六フッ化リン塩製造
反応フラスコに、下記〔化8〕に示すインドール誘導体A2.9g(0.005mol)、下記〔化9〕に示す合成ルートから得られた中間体B2.0g(0.005mol)、及びピリジン4.2g(0.05mol)を仕込み、40℃に昇温し、均一になるように攪拌した。無水酢酸0.8g(0.0075mol)を滴下して4時間反応させた。冷却の後、クロロホルム40g/水30gで洗浄を2回行い、次いで、六フッ化リンカリウム3g(0.015mol)水溶液で2回塩交換を行った後、水洗を2回行った。エバポレーターにて脱溶媒した後、メタノール35gにて晶析を行った。ろ過、メタノール洗浄、真空乾燥により、灰色固体2.6g(収率 74%)を得た。得られた灰色固体は、分析の結果、目的物(化合物No.2の六フッ化リン塩)であることが確認された。分析結果を以下に示す。
【0040】
【化8】

【0041】
【化9】

【0042】
分析結果
・光学特性(クロロホルム、1.01×10-6モル/リットル)
λmax;584nm、ε;1.2×105
・吸熱温度(窒素中にて10℃/分の昇温条件でのTG/DTA測定による吸熱ピークトップ)
213.1℃
・分子量(TOF−マススペクトル分析)
660.7
1H−NMR(溶媒;DMSO)
図1に1H−NMRスペクトルを示す。
【0043】
〔実施例2〕化合物No.8の六フッ化リン塩の製造
反応フラスコに、上記インドール誘導体A16.5g、下記〔化10〕に示す中間体C8.7g(0.03mol)、及びピリジン47.4g(0.6mol)を仕込み攪拌した。室温にて無水酢酸4.6g(0.045mol)を滴下して、15時間反応させた。クロロホルム150g/水100gで洗浄を2回行った後、六フッ化リンカリウム5.5g(0.03mol)水溶液で塩交換を1回行ない、次いで水洗を2回行った。エバポレーターにて脱溶媒してクルード体を得た。得られたクルード体をカラム精製し(酢酸エチル:ヘキサン=1.5:1、原点メタノール抽出)、濃縮により紫色固体1.8gを得た。更に、ジメチルアセトアミド/メタノールにより再晶析を行い、紫色固体1.3g(収率7%)を得た。得られた紫色固体は、分析の結果、目的物(化合物No.8の六フッ化リン塩)であることが確認された。分析結果を以下に示す。
【0044】
【化10】

【0045】
分析結果
・光学特性(クロロホルム、9.81×10-6モル/リットル)
λmax;547nm、ε;1.14×105
・吸熱温度(窒素中にて10℃/分の昇温条件でのTG/DTA測定による吸熱ピークトップ)
218.4℃
・分子量(TOF−マススペクトル分析)
616.6
1H−NMR(溶媒;DMSO)
図2に1H−NMRスペクトルを示す。
【0046】
[評価例1]
上記実施例で得た化合物No.2及び8並びに以下の〔化11〕に示す比較化合物1について、窒素気流中での示差熱分析を行い、熱分解温度を測定した。熱分解温度は、窒素中にて10℃/分の昇温条件によるDTAの発熱ピークトップの温度とした。結果を表1に示す。
【0047】
【化11】

【0048】
【表1】

【0049】
上記表1の結果より、本発明のシアニン化合物は、熱分解温度が低いことが確認できた。このことは、本発明のシアニン化合物は、光学記録材料として高速記録に適することを示している。
【0050】
〔実施例3〕
化合物No.2の六フッ化リン塩を、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールに濃度1質量%となるように溶解して、光学記録材料を得た。チタンキレート化合物(T−50:日本曹達社製)を塗布した後、加水分解して下地層(0.01μ)を設けた直径12cmのポリカーボネートディスク基板上に、上記光学記録材料をスピンコーティング法にて塗布し(回転数2000rpmで1分間の回転塗布)、光学記録媒体を得た。この光学記録媒体について、透過光UVスペクトルの測定を行ったところ、λmaxは598nmであり、上記光学記録材料は、DVD−R用の光学記録材料として適するものであることが確認できた。
【0051】
〔実施例4〕
化合物No.2の六フッ化リン塩に代えて化合物No.8の六フッ化リン塩を用いた以外は、実施例3と同様にして、光学記録材料を作製し、該光学記録材料を用いて光学記録媒体を得た。この光学記録媒体について、透過光UVスペクトルの測定を行ったところ、λmaxは558nmであり、上記光学記録材料は、DVD−R用の光学記録材料として適するものであることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1−a】図1−aは、実施例1において得られた化合物No.2の六フッ化リン塩の1H−NMRスペクトルである。
【図1−b】図1−bは、図1−aの部分拡大図である。
【図1−c】図1−cは、図1−aの部分拡大図である。
【図2−a】図2−aは、実施例2において得られた化合物No.8の六フッ化リン塩の1H−NMRスペクトルである。
【図2−b】図2−bは、図2−aの部分拡大図である。
【図2−c】図2−cは、図2−aの部分拡大図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるシアニン化合物。
【化1】

【請求項2】
上記一般式(I)における環Bがベンゼン環である請求項1記載のシアニン化合物。
【請求項3】
上記一般式(I)におけるXがSである請求項1又は2記載のシアニン化合物。
【請求項4】
上記一般式(I)におけるXがOである請求項1又は2記載のシアニン化合物。
【請求項5】
上記一般式(I)における環Aがナフタレン環である請求項1〜4のいずれかに記載のシアニン化合物。
【請求項6】
上記一般式(I)におけるY1及びY2が炭素原子数1〜8のアルキル基である請求項1〜5のいずれかに記載のシアニン化合物。
【請求項7】
上記一般式(I)におけるR1及びR2のいずれかがメチル基である請求項1〜6のいずれかに記載のシアニン化合物。
【請求項8】
基体上に光学記録層が形成された光学記録媒体の該光学記録層に用いられる、請求項1〜7のいずれかに記載のシアニン化合物を含有してなる光学記録材料。
【請求項9】
基体上に、請求項8記載の光学記録材料からなる薄膜を形成した光学記録媒体。

【図1−a】
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【図1−b】
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【図1−c】
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【図2−a】
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【図2−b】
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【図2−c】
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【公開番号】特開2006−151823(P2006−151823A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340485(P2004−340485)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000000387)旭電化工業株式会社 (987)
【Fターム(参考)】