説明

シアニン色素及び光学記録媒体

【課題】青色レ−ザ−等の短波長光によって高速且つ高密度の光情報記録・再生が可能であって、従来と異なる記録メカニズムであるLowtoHigh記録によって高密度の光情報の記録・再生が可能である光学記録媒体、及びその記録層に用いるシアニン色素を提供する。
【解決手段】下記式で示されるシアニン色素を、光学記録媒体の記録層に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は窒素原子が四級化されたアザインドレニン骨格を有する新規なシアニン色素及びそれを用いた光学記録媒体に関する。より詳しくは、青色レーザーによる記録及び再生が可能な耐久性に優れた光学記録媒体の記録層に好適に用いられる窒素原子が四級化されたアザインドレニン骨格を有する新規なシアニン色素、及びそれを用いた光学記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化時代の到来に伴い、紫外領域〜赤外領域の光を吸収する有機化合物の需要が急増している。その用途は、今や、フィルタ−用材料におけるがごとく、有機化合物が光を吸収し遮断する性質を利用する用途から、有機化合物を介して光のエネルギーを積極的に利用する情報記録、太陽光発電などの用途へと広がることとなった。
情報記録の分野では、マルチメディア時代の到来に伴い、CD−R(追記型CD)、DVD−R(追記型DVD)などに代表される光学記録媒体が脚光を浴びている。これら光学記録媒体は、光磁気記録媒体、相変化記録媒体、カルコゲン酸化物光学記録媒体、有機系光学記録媒体に大別することができる。中でも、有機色素が含有される記録層を設けた有機色素系光学記録媒体は、低コストで且つ製造も容易であるという点で、優位性を有するものと考えられている。
【0003】
有機系光学記録媒体における緊急の課題は、マルチメディア時代に対応するための更なる記録密度の高密度化と記録速度の高速化である。記録密度の高密度化のためには、記録及び再生光を短波長化することが進められている。一方、記録速度の高速化のためには、より感度の高い色素を用いることが望まれる。しかしながら、色素の高感度化は、再生信号の時間方向の揺らぎ(ジッター)の増加や、光安定性(耐光性)の低下を伴う傾向にあり、従来公知の色素では、感度、ジッター及び光安定性の全てを十分に満足することが困難となりつつある。
【0004】
近年、開発が著しい青色レーザー光等の発振波長の短いレーザー光を用いた高密度で記録再生が可能な光学記録媒体が提唱されつつある。Blu−ray Discなど、かかる青色レーザー対応の光学記録媒体に関しては幾つかの報告例があるが、記録装置や記録条件の統一がなされていない状況が続いており、望ましい光学記録媒体の像が見えにくいのが現状である。
【0005】
かかる状況下において、例えば、下記特許文献1〜4には、波長405〜430nm程度の発信波長が短いレーザー光により情報の記録・再生が可能な光学記録媒体の記録層用の有機色素が示されている。しかしながら、特許文献1〜4に記載されたような従来の青色レーザー用の有機色素では、現在求められている高密度化、高感度化による高速化に対応できず、充分な記録感度が得られにくいなどの課題があった。
【0006】
また、特許文献5〜8にはモノメチンシアニン色素を光記録材料として用いる例が記載されているが、ここで開示されているようなシアニン色素では、光学記録媒体の高密度化、高感度化への対応は十分ではない。
なお、ここで、高感度とは、レーザー波長405nm、NA(開口数)0.85において、記録線速度9.834m/秒(2X記録速度。1X記録速度は4.917m/s)を用いたときのBlu−Ray規格に準拠した記録において、記録感度が7.0mW以下であることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−105423号公報
【特許文献2】特開平11−78239号公報
【特許文献3】国際公開第2006−035554号パンフレット
【特許文献4】特開2001−301333号公報
【特許文献5】国際公開第2001−044374号パンフレット
【特許文献6】特開2006−044277号公報
【特許文献7】特開2005−297406号公報
【特許文献8】国際公開第2008−105238号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、青色レ−ザ−等の短波長光によって高速且つ高密度の光情報記録・再生が可能な光学記録媒体を提供するとともに、この光学記録媒体に好適に用いられる新規な色素を提供することに存する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討の結果、特定の構造を有するシアニン色素を光学記録媒体の記録層に用いることにより、青色レ−ザ−等の短波長光によって高速且つ高密度の光情報記録・再生が可能になり、特にLow to High記録による新たな光学記録媒体の実用化が可能になることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明の要旨は、下記式[I]で示されることを特徴とする、シアニン色素に関する(請求項1)。
【化1】

(式[I]中、
及びBは、各々独立に置換基を有してもよい芳香環を表わす。ただし、A、Bのうち少なくとも一方の芳香環には、四級化された窒素原子を含む。
及びRは、各々独立に置換基を表わす。R及び/又はRが2価の連結基として他のカチオンと結合していてもよい。
、X、X及びXは、各々独立に有機基を表わす。XとXとの組、及び/又はXとXとの組が、互いに結合して環構造を形成していてもよい。
は、水素原子又は有機基を表わす。
nは、1から正の整数pまでの各整数を表わす。
(Zは、p種の各々独立である陰イオンを表わす。ただし、少なくも該陰イオンのうち1以上は、金属錯体を含む陰イオンである。
は、nで対する各(Zの係数を各々表わし、1以上の整数である。
qは、1以上の整数を表わす。
式[I]で表わされるシアニン色素は全体として中性であり、
【数1】

を満たす。)
【0011】
このとき、上記金属錯体を含む陰イオンが、アゾ系金属錯体の陰イオンであることが好ましい(請求項2)。
【0012】
また、上記金属錯体を含む陰イオンが、式[III]で示されるアゾ系金属錯体の陰イオンであることが好ましい(請求項3)。
【化2】

(式[III]中、
、Rは、各々独立に水素原子又は置換基を有してもよい炭化水素基を表わす。
、Rは、各々独立に置換基を有してもよい炭化水素基を表わす。
21、R22は、各々独立に水素原子又は電子吸引基を表わす。
Mは、3価の金属を表わす。)
【0013】
また、上記式[I]中、X、X、X、及びXのうち少なくとも1つが、複素環又は芳香環で置換されたアルキル基であることが好ましい(請求項4)。
【0014】
本発明の別の要旨は、基板と、該基板上に形成された記録層とを少なくとも有し、該記録層が、上記請求項1〜4の何れか1項に記載のシアニン色素を含有することを特徴とする、光学記録媒体に存する(請求項5)。
【0015】
このとき、該光学記録媒体が、波長350nm以上530nm以下のレーザー光を用いて記録再生されることが好ましい(請求項6)。
【0016】
また、該光学記録媒体が、記録を行うレーザー光の波長において、情報が記録された記録部の反射率が、記録前の反射率よりも高くなることが好ましい(請求項7)。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光学記録媒体及び本発明のシアニン色素によれば、青色レ−ザ−等の短波長光によって高速且つ高密度の光情報記録・再生が可能である。また、従来と異なる記録メカニズムであるLow to High記録によって高密度の光情報の記録・再生が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る光学記録媒体の層構成の一例を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る光学記録媒体の層構成の一例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々に変更して実施することができる。
【0020】
本発明の光学記録媒体は、基板と、前記基板上に設けられ、光が照射されることにより情報の記録又は再生が可能な記録層とを有し、前記記録層が、後述の式[I]で示されるシアニン色素を含有するものである。以下の記載では、まずは本発明の光学記録媒体の記録層に含有されるシアニン色素について説明し、続いて本発明の光学記録媒体について説明する。
【0021】
[I.シアニン色素]
本発明の光学記録媒体は、その記録層に、下記式[I]で表わされるシアニン色素(以下、適宜「式[I]のシアニン色素」と略称する。)を含有する。式[I]のシアニン色素は、波長350nm〜530nmの青色光領域に適度の吸収を有するため、青色レーザー光による記録に適し、実用に耐え得る耐光性を有する色素化合物である。
【0022】
【化3】

【0023】
(式[I]中、
及びBは、各々独立に置換基を有してもよい芳香環を表わす。ただし、A、Bのうち少なくとも一方の芳香環には、四級化された窒素原子を含む。
及びRは、各々独立に置換基を表わす。R及び/又はRが2価の連結基として他のカチオンと結合していてもよい。
、X、X及びXは、各々独立に有機基を表わす。XとXとの組、及び/又はXとXとの組が、互いに結合して環構造を形成していてもよい。
は、水素原子又は有機基を表わす。
nは、1から正の整数pまでの各整数を表わす。
(Zは、p種の各々独立である陰イオンを表わす。ただし、少なくも該陰イオンのうち1以上は、金属錯体を含む陰イオンである。
は、nで対する各(Zの係数を各々表わし、1以上の整数である。
qは、1以上の整数を表わす。
式[I]で表わされるシアニン色素は全体として中性であり、
【数2】

を満たす。)
【0024】
以下、前記式[I]について説明する。
【0025】
(A、B
前記式[I]中、A及びBは各々独立に置換基を有していてもよい芳香環を表わす。ただし、A、Bのうち少なくとも一方の芳香環には、四級化された窒素原子を含む。
四級化された窒素原子を含む芳香環は、A及びBの何れであってもよく、またA及びBの双方であってもよい。中でも、A及びBの何れか一方が四級化された窒素原子を含む芳香環で、他方が4級化された窒素原子を含まない芳香環であることが好ましい。
芳香環の構造は限定されないが、環の炭素数が通常4以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは6以上、また、通常14以下、好ましくは12以下、さらに好ましくは10以下である。A及びBの具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環などが挙げられる。中でもベンゼン環が好ましい。
ここで、四級化された窒素原子を含む芳香環とは、芳香環を構成する炭素原子の1個以上が窒素原子で置き換えられ、さらにこの窒素原子のうち1個以上が四級化されている窒素原子である。四級化された窒素原子の置換位置および置換の数は限定されないが、通常1以上、また通常2個以下の窒素原子で置換された環が好ましい。四級化された窒素原子を含む芳香環の具体的な例としてはピリジン環、ピラジン環、キノリン環、イソキノリン環、ジクタムニン環などの窒素原子のうち少なくとも1個以上が四級化された芳香環が挙げられ、中でも光学記録媒体用途において好適なのはピリジン環の窒素原子が四級化された芳香環である。
【0026】
及びBの芳香環が有していてもよい置換基は限定されないが、その例としては、
メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−プロピニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、2−ペンテニル基、2−ペンテン−4−イニル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などの脂肪族炭化水素基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基などの脂環式炭化水素基;
フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ビフェニリル基などの芳香族炭化水素基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、フェノキシ基などのアルコキシ基又はアリールオキシ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、アセチル基、ベンゾイルオキシ基などのエステル基;
メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、アニリノ基、o−トリイジノ基、m−トルイジノ基、p−トルイジノ基、キシリジノ基、ジフェニルアミノ基などのアミノ基;
キノリル基、ピペリジノ基、ピリジル基、モルホリノ基などの複素環基;
フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨ−ド基などのハロゲン基;
ヒドロキシ基;カルボキシ基;スルフォン酸基;シアノ基;ニトロ基;さらには、前記例示の置換基のうち二以上の置換基を組み合わせてなる置換基;などが挙げられる。
このうち、本発明の光学記録媒体の用途においては、トリフルオロメチル基、ニトロ基、メトキシ基が好ましい。
これらの置換基は1種類が単独で置換していてもよく、また2種類以上の置換基が任意の組み合わせ、及び比率で置換していてもよい。
【0027】
及びBの芳香環が有していてもよい置換基のうち、四級化された窒素原子の置換基については、上述する置換基を有していてもよいが、特に、後述するR及びRに挙げられた脂肪族炭化水素基、及び芳香族炭化水素基と同じ基を置換基として有することが好ましい。また、これらの脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基はさらに置換基を有していてもよく、その例として、上記のA及びBの芳香環が有していてもよい置換基が挙げられる。
【0028】
(R、R
前記式[I]中、R及びRは、各々独立に置換基を表す。該置換基としては、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0029】
脂肪族炭化水素基の種類は限定されないが、その炭素数は通常1以上、好ましくは2以上、また、通常12以下、好ましくは8以下、さらに好ましくは5以下である。
脂肪族炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−プロピニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、2−ペンテニル基、2−ペンテン−4−イニル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などの脂肪族炭化水素基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基などの脂環式炭化水素基;
などが挙げられる。
【0030】
芳香族炭化水素基の種類は限定されないが、その炭素数は通常4以上、好ましくは6以上、さらに好ましくは7以上、また、通常12以下、好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。
芳香族炭化水素基としては、例えば、
フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ビフェニリル基、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
【0031】
また、これら脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、前記のA及びBが有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。これらの置換基は1種類が単独で置換していてもよく、また2種類以上の置換基が任意の組み合わせ、及び比率で置換していてもよい。
本発明の光学記録媒体の用途においては、中でも、メチル基、エチル基、および弗素置換アルキル基が好ましい。
【0032】
及び/又はRが2価の連結基として他のカチオンと結合してもよい。他のカチオンとしては、例えば、後述する式(31)〜(34)のシアニン色素において結合しているカチオンのような他のシアニン色素のカチオンが挙げられる。
及び/又はRが他のシアニン色素のカチオンと結合する場合の結合位置は限定されないが、製造コストの点から結合する他のシアニン色素の窒素原子と結合することが望ましい。
上記の他のカチオンとしては、アンモニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム等が挙げられる。
2価の連結基の鎖長は、シアニン色素の合成し易さと、有機溶剤に対するシアニン色素の溶解性の点から、炭素原子などの構成原子の数として通常1以上、好ましくは3以上、また、通常9以下、好ましくは8以下である。
なお、斯かる2価の連結基は、この発明の目的を逸脱しない範囲で、その水素原子の1又は複数が、例えば、アミノ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基などによって置換されていてもよい。これらの置換基は1種類が単独で置換していてもよく、また2種類以上の置換基が任意の組み合わせ、及び比率で置換していてもよい。
【0033】
(X、X、X、X
前記式[I]中、X、X、X及びXは、各々独立に有機基を表わす。具体例としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は不飽和炭化水素基であることが好ましい。また、XとXとの組、及び/又はXとXとの組が、互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0034】
脂肪族炭化水素基の種類は限定されないが、炭素数が通常1以上、また、通常12以下、好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。
脂肪族炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−プロピニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、2−ペンテニル基、2−ペンテン−4−イニル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などの脂肪族炭化水素基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基などの脂環式炭化水素基;
などが挙げられる。
【0035】
芳香族炭化水素基の種類は限定されないが、炭素数が通常4以上、好ましくは6以上、さらに好ましくは7以上、また、通常12以下、好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。
芳香族炭化水素基としては、例えば、
フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ビフェニリル基、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
【0036】
不飽和炭化水素基の種類としては限定されないが、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上、また、通常12以下、好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。
不飽和炭化水素基としては、例えば、アリル基、ビニル基、プロピニル基、ブチニル基、イソプロペニル基などが挙げられる。
【0037】
また、これらの脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は不飽和炭化水素基は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、前記のA及びBが有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。これらの置換基は1種類が単独で置換していてもよく、また2種類以上の置換基が任意の組み合わせ、及び比率で置換していてもよい。
本発明の光学記録媒体の用途においては、上記の置換基の中でも、アリル基が好ましい。
【0038】
本発明において、XとXとの組、及び/又はXとXとの組が、互いに結合して環構造を形成していてもよい。環構造は限定されないが、通常3員環以上、好ましくは5員環以上、また、通常7員環以下、好ましくは6員環以下である。環構造の具体例としては、例えば、シクロプロパン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロペプタン環などの飽和又は不飽和の環状構造が挙げられる。
【0039】
とXとの組、及び/又はXとXとの組が、互いに結合して環構造を形成する場合、その環構造は、置換基を有していてもよい。
置換基の種類は限定されないが、例えば、
メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−プロピニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、2−ペンテニル基、2−ペンテン−4−イニル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基;
フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基などの芳香族炭化水素基;
ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などのアリ−ルアルキル基;
が挙げられる。
【0040】
これらのアルキル基、芳香族炭化水素基、アルキルアリ−ル基には、さらに、アニリノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、アルコキシ基、シアノ基、アルキル基などが結合していてもよい。更にはこれらの置換基のうち二以上を組み合わせた置換基が挙げられる。
【0041】
本発明において、X、X、X及びXの少なくとも1つが、複素環又は芳香環で置換されたアルキル基であることが望ましい。
具体例としては、先にも挙げたベンジル基、フェネチル基の他に、フェニルブチル基、フェニルプロピル基などのフェニルアルキル基;
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基など炭素数1〜6のアルキル基の末端あるいは途中に、アズレン基、ナフタレン基などの芳香環が置換された基;
ピリジン環、キノリン環、フラン環、チオフェン環、ピペリジン環、ピロリジン環、ピロ−ル環、チアゾ−ル環、オキサゾ−ル環、イミダゾ−ル環、チアゾリン環、オキサゾリン環、イミダゾリン環などの複素環を置換基として有するアルキル基が挙げられる。
本発明の効果を得る上で支障がない限り、複素環又は芳香環を置換基とするアルキル基の炭素数に限定はないが、通常1以上、また通常2以下である。
置換基としての複素環又は芳香環の種類に限定はないが、好適な置換基はベンゼン環である。
また、置換基としての複素環又は芳香環がさらに置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、前記のA及びBが有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。これらの置換基は1種類が単独で置換していてもよく、また2種類以上の置換基が任意の組み合わせ、及び比率で置換していてもよい。
【0042】
(Y
前記式[I]中、Yは水素原子又は有機基を表わす。中でも、Yとしては水素原子(無置換)であることが好ましい。Yとしての有機基の種類は限定されず、前記X〜Xとしての有機基と同様のものが挙げられるが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基など炭素数1〜6のアルキル基や、フェニル基、ナフタレン基などの芳香環などが好ましい。
【0043】
(m(Z、p)
前記式[I]中、(Zはp種の各々独立である陰イオンを表わす。ここで(Zのnは、1から正の整数pまでの整数を表わす。従って、式[I]中の(Zとは、(Z,(Z,(Z,…(Z(p−1),(Zのp種の各陰イオンの集合を表わしている。より具体的には、例えばpが4である場合、式[I]における(Zは、(Z、(Z、(Z、(Zの4種の陰イオンの集合を表している。
次に、mは、nで対する各(Zの係数を各々表わしている。則ち、nがpの場合、mは(Zの係数を表わしている。より具体的には、例えばpが4である場合、式[I]におけるm(Zは、m(Z、m(Z、m(Z、m(Zの集合を表わしている。なお、mは、各々1以上の整数である。
【0044】
pの範囲、すなわち、陰イオンの種類は特に制限は無いが、合成上の問題から、通常1〜2種類が好ましい。
【0045】
陰イオンとしては、例えば、有機アニオンや、無機アニオン等が挙げられる。
有機または無機アニオンは限定されないが、例えば、
六弗化燐酸イオン、ハロゲンイオン、燐酸イオン、過塩素酸イオン、過沃素酸イオン、六弗化アンチモン酸イオン、六弗化錫酸イオン、硼弗化水素酸イオン、四弗硼素酸イオンなどの無機酸イオン;
チオシアン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、ベンゼンジスルフォン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、ベンゼンカルボン酸イオン、ベンゼンジカルボン酸イオン、ベンゼントリカルボン酸イオン、アルキルカルボン酸イオン、トリハロアルキルカルボン酸イオン、アルキル硫酸イオン、トリハロアルキル硫酸イオン、ニコチン酸イオンなどの有機酸イオンなどが挙げられる。
【0046】
(Zのうち、好ましい例としては、弗素原子を含む対イオンが挙げられる。例えば、六弗化燐酸イオン、硼弗化水素酸イオン、四弗硼素酸イオン、トリフルオロスルフォン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルフォン酸アニオン、ジ(トリフルオロメチルスルフォニル)イミドアニオン、ジ(2,2,2−トリフルオロエチルスルフォニル)イミドアニオン、ジ(3,3,3,−トリフルオロプロピルスルフォニル)イミドアニオン、ジ(4,4,4−トリフルオロブチルスルフォニル)イミドアニオン、ジ(ペルフルオロエチルスルフォニル)イミドアニオン、ジ(ペルフルオロプロピルスルフォニル)イミドアニオン、ジ(ペルフルオロブチルスルフォニル)イミドアニオンなどである。
【0047】
また、(Zのうち1以上は、金属錯体を含む陰イオンである。個々の金属錯体としては、例えば、アセチルアセトナートキレート系、アゾ系、サリチルアルデヒドオキシム系、ジインモニウム系、ジチオール系、ジピロメテン系、スクアリリウム系、チオカテコールキレート系、チオビスフェノレートキレート系、ビスジチオ−α−ジケトンキレート系、ビスフェニレンジチオール系、ホルマザン系の遷移金属キレートなどが挙げられる。
【0048】
(Zとして更に好ましいのは、シアニン色素全体の耐久性及び溶剤に対する溶解性の点で、アゾ系金属錯体イオンの陰イオンである。特に、長周期型周期律表(以下、単に「周期律表」ということがある。)の第5族から第12族に属する遷移元素を中心原子するアゾ系金属錯体イオンが好ましい。
上記したアゾ系金属錯体イオンにおける遷移元素としては例えば、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、亜鉛、カドニウム、水銀などが挙げられ、このうち、経済性及び生体に対する影響の点で、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、銅が好ましい。
【0049】
(Zとして好ましいアゾ金属錯体の陰イオンの例としては、下記式[II]で表わされるアゾ系金属錯体の陰イオンが挙げられる。
【化4】

(前記式[II]中、
環C及び環Dは、各々独立に、芳香族環又は複素環を表わす。但し、環C及び環Dのうち少なくとも一方の環は複素環である。
Y及びXは、各々独立に、活性水素を有する基を表わす。
Mは、3価の金属元素を表わす。
Y及びXの活性水素が脱離してアゾ系配位子が−2価の電荷を有し、このアゾ系配位子2個と+3価の電荷の金属原子1個から全体で−1価の電荷の金属錯体が形成される。)
【0050】
前記式[II]中、C及びDで表わされる環は、各々独立に芳香族環又は不飽和若しくは飽和の複素環であり、Y及びX以外の置換基を更に有していてもよい。C及びDで表わされる環の種類は特に限定されないが、例えば、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族環;ピリジン、ピリミジン、チオフェン等の不飽和複素環;メルドラム酸、バルビツール酸、ピリドン等の飽和複素環;などが挙げられる。
【0051】
前記式[II]中、Y及びXで表わされる基は、各々独立に活性水素を有する基であり、プロトンが脱離して陰電荷を有するものであればよい。Y及びXで表わされる基の種類は特に限定されないが、例えば、カルボン酸、スルホン酸、アミノ基、水酸基、アミド基、ボロン酸、リン酸などが挙げられる。また、C及びDで表される環内に前記の基が含まれていてもよい。
【0052】
前記式[II]中、Mで表わされる元素は、3価の金属元素である。Mとしては、例えば、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドニウム、水銀等が挙げられ、中でもバナジウム、マンガン、鉄、コバルト、銅等が好ましい。
【0053】
アゾ系配位子の有する基Y、X及びアゾ結合の窒素原子の一つが金属に配位すると仮定すれば、1個の金属元素に3配座の配位子を2個有する金属錯体が、6配座で安定化すると考えられる。そのため、−2価の配位子が2個と、+3価の金属が1個とからなるアゾ系金属錯体は、最も安定である。
【0054】
上記式[II]で表されるアゾ系金属錯体の陰イオンの中でも、好ましい例としては式[III]〜[VI]で表わされるものが挙げられる。
【0055】
【化5】

【0056】
【化6】

【0057】
【化7】

【0058】
【化8】

【0059】
式[III]〜[VI]において、Mは、式[II]と同様に周期律表における第5族〜第12族に属する遷移元素を表わす。
【0060】
式[III]〜[VI]においてR、R、R〜R10、R12〜R15、R18、R19は、各々独立に置換基を有していてもよい炭化水素基を表わす。炭化水素基の種類は制限されず、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、不飽和炭化水素基等が挙げられる。また、炭化水素基は、炭素数が通常1以上、また、通常6以下、好ましくは5以下の直鎖状又は分枝を有するものが好ましい。
【0061】
脂肪族炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−プロピニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、2−ペンテニル基、2−ペンテン−4−イニル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などが挙げられる。
芳香族炭化水素基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。
上記の炭化水素基における水素原子はその1又は複数が、例えばフルオロ基、クロロ基、ブロモ基などのハロゲン基のよって置換されていてもよい。
不飽和炭化水素基の例としては、アリル基、ビニル基、プロピニル基、ブチニル基、イソプロペニル基などが挙げられる。
中でも、光学記録媒体用途において好適なのは、メチル基、エチル基、ブチル基、アリル基である。
また、溶剤の種類にもよるが、本発明のシアニン色素はR、R、R〜R10、R12〜R15、R18、R19の炭素数が多くなるほど通常溶剤に対する溶解性が増大する。
【0062】
式[III]、[IV]及び[V]において、R、R、R11、R16、R17、R20は、各々独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基を表わす。炭化水素基の種類は制限されが、その炭素数は通常1以上、また、通常12以下、好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下の直鎖状又は分枝を有するものが好ましい。
【0063】
これらの基が炭化水素基である場合、その例としては、
メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−プロピニル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、2−ペンテニル基、2−ペンテン−4−イニル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などの脂肪族炭化水素基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基などの脂環式炭化水素基;
フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ビフェニリル基などの芳香族炭化水素基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、フェノキシ基などのアルコキシ基又はアリールオキシ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、アセチル基、ベンゾイルオキシ基などのエステル基;
メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、アニリノ基、o−トリイジノ基、m−トルイジノ基、p−トルイジノ基、キシリジノ基、ジフェニルアミノ基などのアミノ基;
キノリル基、ピペリジノ基、ピリジル基、モルホリノ基などの複素環基;
フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨ−ド基などのハロゲン基;
ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルフォン酸基、シアノ基、ニトロ基;
さらには、前記例示のうち二以上を組み合わせてなる置換基;等が挙げられる。
中でも光学記録媒体用途において好適なのは、ニトロ基、フルオロ基、クロロ基、トリフルオロメチル基である。
【0064】
式[III]において、R21、R22は、水素原子又は電子吸引基を表わす。ここで、電子吸引基とは、分子の特定位置の電子密度を低下させる効果を持つ置換基であって、例えば、Hammet則における置換基定数(σ値)が正値を持つ置換基や、電子状態計算を行った結果、分子の特定位置の電子密度を低下させる効果が見られる置換基などを指す。
電子吸引基の例としては、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。
特に好ましいR21、R22は、水素原子、シアノ基である。
【0065】
なお、式[III]〜[VI]で表わされるアゾ金属錯体の陰イオンにおいて、式[III]及び式[IV]における二つのニトロ基、並びに式[V]におけるR11、R16の各々がベンゼン環に結合する位置は、アゾ基に対して、オルト位、メタ位、パラ位のいずれであっても構わない。但し、ニトロ基においては、合成上の観点からメタ位が好ましい。
【0066】
(q)
前記式[I]中、qは、1以上の整数を表わす。実体的には、qは、式[I]の
【化9】

の部分に関する価数を表わしている。
ここで、式[I]で表わされる本発明のシアニン色素は全体として電気的に中性である。したがって、qの値と式[I]における陰イオン((Z)の合計の価数は等しくなる。ここで(Zの価数は1価であるため、陰イオンの合計の価数は
【数3】

となる。以上のことから、本発明のシアニン色素は全体として電気的に中性である場合、m、n、p、及びqは、
【数4】

の関係を満たす。
【0067】
(本発明のシアニン色素の好ましい例)
式[I]のシアニン色素の好ましい例としては、例えば、下記の構造式(1)〜(46)、(106)、(108)、(112)、及び(115)で表される化合物が挙げられる(なお、以下の記載では、各式で示される化合物を、その式の番号を付して「例示化合物(1)」等のように略称する場合がある。)。但し、以下の化合物はあくまでも例示であって、本発明の光学記録媒体に使用可能な式[I]のシアニン色素はこれらに限定される訳ではない。これらはいずれも溶液状態において波長350nmより長波長側の領域の波長、通常350nm以上500nm以下の紫〜青色領域に主たる吸収極大を有し、吸収極大波長における分子吸光係数も特定のアゾ金属錯体を陰イオンの組み合わせにより、5×10以上と大きいことから紫色〜青色領域の可視光を効率良く吸収することとなる。
【0068】
【化10】

【0069】
【化11】

【0070】
【化12】

【0071】
【化13】

【0072】
【化14】

【0073】
【化15】

【0074】
【化16】

【0075】
【化17】

【0076】
【化18】

【0077】
【化19】

【0078】
【化20】

【0079】
【化21】

【0080】
【化22】

【0081】
【化23】

【0082】
【化24】

【0083】
【化25】

【0084】
【化26】

【0085】
【化27】

【0086】
【化28】

【0087】
【化29】

【0088】
【化30】

【0089】
【化31】

【0090】
【化32】

【0091】
【化33】

【0092】
【化34】

【0093】
【化35】

【0094】
【化36】

【0095】
【化37】

【0096】
【化38】

【0097】
【化39】

【0098】
【化40】

【0099】
【化41】

【0100】
【化42】

【0101】
【化43】

【0102】
【化44】

【0103】
【化45】

【0104】
【化46】

【0105】
【化47】

【0106】
【化48】

【0107】
【化49】

【0108】
【化50】

【0109】
【化51】

【0110】
【化52】

【0111】
【化53】

【0112】
【化54】

【0113】
【化55】

【0114】
【化56】

【0115】
【化57】

【0116】
【化58】

【0117】
【化59】

【0118】
[2.光学記録媒体の記録層形成用色素]
本発明の光学記録媒体は、基板と、該基板上に形成された記録層とを少なくとも有し、該記録層が、本発明のシアニン色素を含有するものである。ここでは、本発明の記録層を形成するのに用いられる記録層形成用色素について説明する。
【0119】
本発明に係る記録層形成用色素は、上述のような本発明のシアニン色素を含むものである。本発明の光学記録媒体の記録層形成用色素中には、本発明のシアニン色素を1種類のみ用いてもよく、本発明のシアニン色素を2種類以上、任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
また、1種または2種以上の本発明のシアニン色素に加えて、本発明のシアニン色素以外の色素(以下、「併用色素」ということがある。)の1種または2種以上を併用してもよい。但し、併用色素を用いる場合には、本発明のシアニン色素の優れた特性を十分に発揮させる観点から、記録層形成用色素の全重量に対する本発明のシアニン色素が占める比率を、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上とすることが好ましい。
【0120】
本発明のシアニン色素と併用可能な併用色素としては、本発明の光学記録媒体に記録を行うレーザー光の波長領域に吸収を有し、照射されたレーザー光のエネルギーを吸収して、照射部分の記録層、反射層または基板に、分解、蒸発、溶解等の熱的変形を伴うピットを形成させるものが好ましい。
【0121】
また、併用色素として、CD−R向けの770〜830nmの範囲から選ばれた波長の近赤外レーザー光やDVD−R向けの620〜690nmの範囲から選ばれた赤色レーザー光での記録に適する色素を用いて、複数の波長域のレーザー光での記録に対応する光学記録材料とすることもできる。また、これらの色素の中で耐光性が良好なものを選び、本発明のシアニン色素と併用することにより、耐光性を更に向上させることが可能となる。
【0122】
併用色素としては、具体的には、含金属アゾ系色素、ベンゾフェノン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、シアニン系色素、アゾ系色素、スクアリリウム系色素、含金属インドアニリン系色素、トリアリールメタン系色素、メロシアニン系色素、アズレニウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、インドフェノール系色素、キサンテン系色素、オキサジン系色素、ピリリウム系色素等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
【0123】
本発明に係る記録層形成用色素は成膜性を向上させるためにバインダーを含有していてもよい。バインダーとしては、本発明の効果に著しい制限を与えない限り公知の何れのバインダーを用いてもよいが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ケトン系樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられる。また、これらのバインダーは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
記録層に占めるバインダーの割合が高すぎると記録感度が著しく低下する可能性があるので、バインダーを用いる量は、記録層形成用色素の全重量に対する本発明のシアニン色素が占める比率が上述の範囲になる量を用いることが好ましい。
【0124】
また、本発明に係る記録層形成用色素は、安定性や耐光性を向上させるため、一重項酸素クエンチャーや記録感度向上剤などを含有していてもよい。
【0125】
一重項酸素クエンチャーとしては、アセチルアセトナート、ビスフェニルジチオール、サリチルアルデヒドオキシム、ビスジチオ−α−ジケトン等と遷移金属とのキレート化合物などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
【0126】
記録感度向上剤としては、遷移金属等の金属が原子、イオン、クラスター等の形で化合物に含まれる金属系化合物等が挙げられ、例えばエチレンジアミン系錯体、アゾメチン系錯体、フェニルヒドロキシアミン系錯体、フェナントロリン系錯体、ジヒドロキシアゾベンゼン系錯体、ジオキシム系錯体、ニトロソアミノフェノール系錯体、ピリジルトリアジン系錯体、アセチルアセトナート系錯体、メタロセン系錯体のような有機金属化合物などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。金属原子の種類は特に限定されないが、遷移金属が好ましい。
さらに、必要に応じてレベリング剤、消泡剤等を併用することもできる。
【0127】
添加剤を用いる場合には、形成された記録層に占める本発明のシアニン色素の割合が上記の範囲内となるように、バインダーや添加剤の使用量を調整することが好ましい。
具体的に、一重項酸素クエンチャーは本発明のシアニン色素に対して、通常5重量%以上、また、通常30重量%以下用いられる。
また、記録感度向上剤は本発明のシアニン色素に対して、通常10重量%以上、また、通常30重量%以下用いられる。
2種以上の一重項酸素クエンチャーを併用する場合や、2種以上の記録感度向上剤を併用する場合には、各々、その合計が上記範囲を満たすようにする。
なお、本発明のシアニン色素の優れた特性を十分に発揮させる観点から、本発明に係る記録層には、バインダーや添加剤が使用されないことが特に好ましい。
【0128】
[3.光学記録媒体]
本発明の光学記録媒体は、基板と、該基板上に形成された記録層とを少なくとも有し、該記録層が、本発明のシアニン色素を含有するものである。
以下、本発明の光学記録媒体について、実施形態を挙げて具体的に説明するが、以下の実施形態はあくまでも説明のために挙げるものであって、本発明は以下の実施形態に制限されず、本発明の趣旨に反しない限り自由に変形して実施することが可能である。
【0129】
以下、図面を参照して本発明の光学記録媒体の実施の形態を説明する。
図1、図2は、本発明の実施の形態に係る光学記録媒体の層構成の一例を示す模式的断面図である。
【0130】
まず、本発明の第1実施形態について図1を参照して説明する。
図1に示される光学記録媒体20は、少なくとも基板21と、基板21上に積層された反射層22と、反射層22上に積層された記録層23と、記録層23上に積層されたバリア層24と、カバー層25とがこの順に積層された構造を有している。反射層22、バリア層24、カバー層25は、複数の材料からなる多層であってもよい。
【0131】
この光学記録媒体20は、カバー層25側から照射されるレーザー光により、情報の記録・再生が行われる。
このように保護層25側からレーザー光が照射される媒体を、従来のCD、DVD等の基板入射型媒体に対して、膜面入射型光学記録媒体と呼び、ブルーレイ・ディスク(BD)等の記録媒体で採用されている。
【0132】
ここで、膜面入射型の光学記録媒体20では、記録再生光ビーム28(レーザー光)のカバー層25への入射面(記録再生光ビーム28が入射する面)から遠い案内溝部31(基板21の溝部と一致)をカバー層溝間部26(in−groove)、記録再生光ビーム28が入射する面から近い案内溝間部32(基板の溝間部と一致)をカバー層溝部27(on−groove)という。
ここで、溝形状や各層の屈折率等の光学特性を制御することにより、カバー層溝間部26(in−groove)を記録トラックとする(以下、in−groove記録と記載)LtoH記録を実現することが可能となる。
【0133】
(基板21)
基板21は、膜面入射構成に用いることが出来るものであれば制限はなく、適度な加工性と剛性を有するプラスチック、金属、ガラス等を用いることができる。従来の基板面入射構成と異なり、光は基板側から入射しないため、透明性や複屈折に対する制限はない。基板は表面に案内溝を形成するものであるが、金属、ガラスでは、表面に光や熱硬化性の薄い樹脂層を設け、そこに、溝を形成することができる。この点においては、従来どおりプラスチック材料を用い、射出成型によって、基板21の形状、特に円盤状、と表面の案内溝を一挙に形成するほうが製造上は好ましい。
【0134】
射出成型できるプラスチック材料としては、従来CDやDVDで用いられたポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。
【0135】
基板の厚みとしては0.5mm〜1.2mm程度とするのが好ましい。基板厚とカバー層厚を合わせて、従来のCDやDVDと同じ1.2mmとすることが好ましい。従来のCDやDVDで使われるケ−ス等をそのまま用いることができるからである。なお、規格で基板厚を1.1mm、カバー層厚みを0.1mmとすることが、ブルーレイ・ディスクでは規定されているため、汎用性の為にはその規格に準拠することが好ましい。
【0136】
基板21にはトラッキング用の案内溝が形成されている。本実施の形態では、カバー層溝間部25が記録溝部となるトラックピッチは、CD−R、DVD−Rより高密度化を達成するためには、通常0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上、また、通常0.6μm以下、好ましくは0.4μm以下である。
【0137】
溝深さは、20nm〜100nmの範囲にあることが好ましい。溝深さは、前記範囲内で、未記録状態の記録溝部反射率、記録信号の信号特性、プッシュプル信号特性、記録層の光学特性等を考慮して適宜最適化される。
【0138】
本実施の形態では、記録溝部と記録溝間部とにおけるそれぞれの反射光の位相差による干渉を利用しているため、両方が集束光スポット内に存在することが必要である。このため、記録溝幅(カバー層溝間部の幅)は、記録再生光ビーム28の記録層面におけるスポット径(溝横断方向の直径)より小さくするのが好ましい。記録再生光波長λ=405nm、NA(開口数)=0.85の光学系で、トラックピッチを0.32μmとする場合、0.1μm〜0.2μmの範囲とするのが好ましい。これらの範囲外では、溝または溝間部の形成が困難となる場合が多い。
【0139】
案内溝の形状は、通常、矩形である。特に、後述するように記録層22を塗布により形成する場合、色素を含む溶液の溶剤がほとんど蒸発するまでの数十秒以内に、基板溝部上に、色素が選択的に溜まることが望ましい。このため、矩形溝の基板溝間の肩を丸くして色素溶液が、基板溝部に落下して溜まりやすくすることも好ましい。このような丸い肩を有する溝形状は、プラスチック基板もしくは、スタンパの表面を、プラズマやUVオゾン等に数秒から数分さらしてエッチングすることで得られる。プラズマによるエッチングでは、基板の溝部の肩(溝間部のエッジ)のようなとがった部分が選択的に削られる性質があるので、丸まった溝部の肩の形状を得るのに適している。
【0140】
案内溝は、通常は、アドレスや同期信号等の付加情報を付与するために、溝蛇行、溝深さ変調等の溝形状の変調、記録溝部あるいは記録溝間部の断続による凹凸ピット等による付加信号を有する。例えば、ブルーレイ・ディスクでは、MSK(minimum−shift−keying)とSTW(saw−tooth−wobbles)という2変調方式を用いたウォブル・アドレス方式が用いられている。
【0141】
(反射層22)
反射層22は、基板21の上に形成される。
反射層22の膜厚は、好ましくは20nm〜300nmである。
反射層22の材料としては、再生光の波長において十分高い反射率を有する材料、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、Pd等の金属を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で合金にして用いてもよい。これらの中でもAu、Al、Agは反射率が高く、反射層22の材料として好ましい。また、これらの金属を主成分とした上で、加えて他の材料を含有させてもよい。ここで「主成分」とは、含有率が50重量%以上のものをいう。
【0142】
主成分以外の材料としては、例えば、Mg、Se、Hf、V、Nb、Ru、W、Mn、Re、Fe、Co、Rh、Ir、Cu、Zn、Cd、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi、Ta、Ti、Pt、Pd、Nd等の金属および半金属を挙げることができる。これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
【0143】
中でもAgを主成分とするものは、コストが安い点、高反射率が出やすい点、後述する印刷受容層を設けた場合に地色が白く美しいものが得られる点等から、特に好ましい。例えば、AgにAu、Pd、Pt、Cu、およびNdから選ばれる1種以上を0.1原子%〜5原子%程度含有させた合金は、高反射率、高耐久性、高感度且つ低コストであり好ましい。具体的には、AgPdCu合金、AgCuAu合金、AgCuAuNd合金、AgCuNd合金等である。金属以外の材料としては、低屈折率薄膜と高屈折率薄膜を交互に積み重ねて多層膜を形成し、これを反射層22として用いることも可能である。
【0144】
反射層22を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、真空蒸着法等が挙げられる。また、基板21の上や反射層22の上あるいは下に隣接して、反射率の向上、記録特性の改善、密着性の向上等のために、公知の無機系または有機系の中間層、接着層を設けることもできる。
【0145】
(記録層23)
記録層23は、反射層22の上に形成される。本発明の光学記録媒体の記録層は、本発明のシアニン色素を含有する。記録層23には、本発明のシアニン色素以外の成分を含有していてもよい。記録層23は、上述した本発明に係る記録層形成用色素を用いて形成することができるので、該記録層形成用色素に含有されている成分が記録層23にも含有される。
【0146】
本発明に係る記録層形成用色素を用いて記録層23を形成するには、真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等の一般に行われている薄膜形成法を用いることができる。
これらのうち、量産性、コスト面からはスピンコート法が好ましいが、真空蒸着法などがより均一な厚みの記録層を得られる点で好ましい。
スピンコート法により記録層を成膜する場合、回転数は500〜5000rpmが好ましく、スピンコート後、必要に応じて、加熱または溶媒蒸気にさらす等の処理を行ってもよい。
【0147】
記録層23の膜厚は、記録方法等により適した膜厚が異なるため、特に限定されないが、通常少なくとも1nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、通常5μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは200nm以下、特に好ましくは100nm以下である。記録層の膜厚がこの下限値より大きい場合は、記録に必要な光吸収量を確保することができ、良好な感度で記録がしやすい。また、記録信号に歪みが発生しにくいため、所望の大きさの品質良好なマークを形成しやすい。記録層23の膜厚が前記の上限値より小さい場合は、再生に必要な反射光量を確保することが容易となり、その結果として良好な再生信号を得ることができる。
【0148】
記録層23をドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等により形成する場合には、まず、本発明の記録層形成用色素を製造するにあたり、本発明のシアニン色素、バインダー、一重項酸素クエンチャー、記録感度向上剤、および併用色素等を溶媒に溶解させ、塗布液を作成する。
【0149】
溶媒としては、TFPを用いることが工業面で特に好ましいが、基板を侵さない溶媒であればTFPに限定されるものではなく、ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、n−ヘキサン、n−オクタン等の鎖状炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、t−ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素系溶媒、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール(OFP)、ヘキサフルオロブタノール等のフッ素系アルキルアルコール系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル、イソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル系溶媒等を用いることもできる。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよいが、工業面からは1種を単独で用いることが好ましい。
【0150】
塗布液中の本発明の色素の濃度は、その溶媒溶解性に応じて適宜決定されるが、通常0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上で、通常10重量%以下、好ましくは3.0重量%以下とされる。塗布液中の色素濃度が過度に低いと、記録層の形成効率が悪くなる。塗布液中の色素濃度が過度に高いと成膜工程において、色素の結晶化等が発生する可能性が高くなる。
【0151】
真空蒸着法を用いる場合には、例えば、本発明のシアニン色素と、必要に応じて他の色素や各種添加剤等の記録層成分とを、真空容器内に設置されたるつぼに入れ、この真空容器内を適当な真空ポンプで10−2〜10−5Pa程度にまで排気した後、るつぼを加熱して記録層成分を蒸発させ、るつぼと向き合って置かれた基板上に蒸着させることによって、記録層を形成する。
【0152】
本発明のシアニン色素のうち特に好ましいものは、単層媒体のみならず多層媒体にも好適に用いられる。多層媒体においては各層に情報を記録する際に、記録する目的以外の層にも光が吸収、透過する現象が必ず生じるため、単層媒体よりもさらに記録感度が良い色素を用いる必要がある。本発明のシアニン色素は良好な記録感度を持つことから、多層媒体にも十分に適用可能と考えられる。
【0153】
(バリア層24)
バリア層24は、記録層23の上に形成される。
バリア層24の膜厚は、通常2nm以上、好ましくは3nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
記録層23の上に形成するバリア層24の材料は、本発明のシアニン色素をはじめとした有機色素を含有する記録層23と、同様に有機物を含有するカバー層25材料との混合、浸出を妨げるものであれば限定されない。例えば、SiO、SiN、MgF、SnO、In、ZnS等の無機物質、及びその混合物などが挙げられる。
【0154】
(カバー層25)
カバー層25は、バリア層24の上に形成される。
バリア層24の上に形成されるカバー層25は、記録再生光ビーム28に対して透明で複屈折の少ない材料が選ばれる。通常は、カバー層25は、光が侵入することから、記録再生光ビームの波長λに対して透過率70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
【0155】
カバー層25を形成する方法としては、例えば、プラスチック板(以下、「シート」ということがある。)を接着剤で貼り合せる方法(以下、「接着法」ということがある。)、若しくは、硬化性樹脂を溶液塗布後、光、放射線、または熱等で硬化膜を形成する方法(以下、「硬化膜法」ということがある。)が挙げられる。
【0156】
・接着法
接着法の具体例としては、硬化性樹脂を溶液塗布後、光、放射線、または熱等で硬化して形成する方法、又は、感圧性の接着剤をもちいてシートを貼り合わせる方法が挙げられる。
【0157】
まず、硬化性樹脂の接着剤を用いてシートを貼り合せる方法について説明する。
シートとして用いられるプラスチック基材は、ポリカーボネート、ポリオレフィン、アクリル、三酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート等である。
接着には、光、放射線、熱等で硬化する硬化性樹脂を用いる方法、感圧性の接着剤を用いる方法が挙げられる。
【0158】
硬化性樹脂を用いて接着する方法として、例えば、接着層を構成する光硬化性樹脂を適当な溶剤に溶解して塗布液を調整した後、この塗布液をバリア層24に塗布して塗布膜を形成し、塗布膜上にポリカーボネートシートを重ね合わせ、必要に応じて重ね合わせた状態で、媒体を回転させるなどして塗布液をさらに延伸展開した後、UVランプで紫外線を照射して硬化させる方法が挙げられる。
【0159】
硬化性樹脂を用いて接着する方法に用いる粘着剤(硬化性樹脂)としては、透明性、耐久性の観点から、アクリル系、メタクリレート系のポリマー粘着剤が好ましい。
より具体的には、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−オクチルアクリレートなどを主成分モノマーとし、これらの主成分モノマーを、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド誘導体、マレイン酸、ヒドロキシルエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等の極性モノマーを共重合させるものが挙げられる。
主成分モノマーの分子量調整、その短鎖成分の混合、アクリル酸による架橋点密度の調整をすることができ、ガラス転移温度Tg、タック性能(低い圧力で接触させたときに直ちに形成される接着力)、剥離強度、せん断保持力等の物性を制御することができる。
【0160】
アクリル系ポリマーの溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン等が用いられる。上記粘着剤は、さらに、ポリイソシアネート系架橋剤を含有することが好ましい。
【0161】
次に、感圧性の接着剤を用いてシートを貼り合せる方法について説明する。
この方法の具体例として、感圧性接着剤をあらかじめシートに塗布しておき、シートをバリア層24に重ね合わせた後、適度な圧力で押さえつけて圧着する方法が挙げられる。
感圧性の接着剤としては、例えば、アクリル系、メタクリレート系、ゴム系、シリコン系、ウレタン系の各ポリマーからなる粘着剤を使用できる。
【0162】
感圧性の粘着剤を、カバー層のシートの記録層側に接する表面に所定量を均一に塗布し、溶剤を乾燥させた後、記録層側表面に貼り合わせローラー等により圧力をかけて硬化させる。該粘着剤を塗布されたカバー層のシートを、記録層を形成した記録媒体表面に接着する際には、空気を巻き込んで泡を形成しないように、真空中で貼り合せるのが好ましい。
また、離型フィルム上に上記粘着剤を塗布して溶剤を乾燥した後、カバー層シートを貼り合わせ、さらに離型フィルムを剥離してカバー層シートと粘着剤層を一体化した後、記録媒体と貼りあわせてもよい。
【0163】
・硬化膜法
硬化膜法は、光、放射線、熱等で硬化する硬化性樹脂の膜をバリア層24の上に形成した後、硬化させる方法である。
塗布法によってカバー層25を形成する場合には、スピンコート法、ディップ法等が用いられるが、特に、ディスク上媒体に対してはスピンコート法を用いることが多い。塗布によるカバー層材料としては、同様に、ウレタン、エポキシ、アクリル系の樹脂等を用い、塗布後、紫外線、電子線、放射線を照射し、ラジカル重合もしくは、カチオン重合を促進して硬化する。
【0164】
前記カバー層材料としては、透明性、耐久性の観点から、アクリル系、メタクリレート系のオリゴマーおよび/またはモノマーからなる組成物が好ましい。より具体的には、例えば、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマー;n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、iso−オクチルアクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレートモノマー;等が挙げられる。またこれらの材料は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で均一に混合された組成物を用いてもよい。
【0165】
オリゴマーの分子量調整、モノマーの種類および混合量の調整により、ガラス転移温度Tg、タック性能(低い圧力で接触させたときに直ちに形成される接着力)、剥離強度、せん断保持力等の物性を制御することができる。
【0166】
(多層記録用半透明記録媒体)
本実施の形態が適用される光学記録媒体において、反射層の膜厚を薄くし、記録再生光の略50%以上が反射層を透過するような薄さにすると、いわゆる多層記録媒体が可能になる。即ち、基板上に、複数のバリア層、記録層及び反射層(以下、併せて情報層と呼ぶ)を設けた記録媒体である。
【0167】
図2は、2層の情報層を設けた光学記録媒体を説明する図である。記録再生光ビーム107(レーザー光)が入射する側の情報層(111,112,113)をL1層、奥側にある情報層(102,103,104)をL0層と呼ぶ。L1層は、透過率50%以上であることが好ましい。
L1層の半透明反射層112が、例えば、Ag合金であれば、Ag合金の膜厚を通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常50nm以下、好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下である。このような透過性の高い反射層は半透明反射層と呼ばれる。
L0層とL1層との間には、それぞれの信号の混信を防止するために、透明な中間層111が設けられる。尚、図2におけるL0層における反射層102には、前述の反射層22(図1)と同様の材料が使用できる。
【0168】
例えば、記録再生光ビーム107波長λ=405nm、NA(開口数)=0.85の光学系では、中間層111の厚みは約25μm、カバー層111の厚みは約75μm程度とされる。中間層111の厚み分布は、±2μm程度以下とするのが好ましい。
L0層、L1層それぞれに、本実施の形態が適用される光学記録媒体100における層構成の範囲において異なる層構成を用いてもよいし、同一の層構成を用いてもよい。それぞれの情報層に用いる色素を主成分とする記録層の組成や材料が異なっていても良いし、同じでもよい。
【0169】
本実施の形態においては、特に、主として位相変化を利用しているので、記録前後でL1層を透過する光量がほとんど変化しないことが期待される。これは、L1層が記録・未記録であるにかかわらず、L0層への透過光量、L0層からの反射光量がほとんど変化しないことを意味し、L1層の状態に関わらず、安定的にL0層の記録再生ができるので好ましいことである。
【0170】
(その他の層)
その他、上記説明の各層の形成前、あるいは後に、記録・再生レーザー光の入射面と反対側(通常は、基板1の下面)に、インクジェット、感熱転写等の各種プリンタ、或いは各種筆記具を用いて記入や印刷が可能な印刷受容層を設けてもよい。
【0171】
[4.光学記録媒体の記録方法]
(レーザー光)
上述のようにして得られた本発明の光学記録媒体への情報の記録は、通常、記録層に0.4〜0.6μm程度に集束したレーザー光を照射することにより行う。記録層がレーザー光のエネルギーを吸収すると、レーザー光照射部分では、分解、発熱、溶融等の熱的変形が起こり、光学的特性が変化することで、情報が記録される。
一方、記録層に記録された情報の再生を行なう際には、同じく記録層に対して(通常は、記録時と同じ方向から)、よりエネルギーの低いレーザー光を照射する。記録層において、光学的特性の変化が起きた部分(すなわち、情報が記録された部分)の反射率と、変化が起きていない部分の反射率との差を読み取ることにより、情報の再生が行なわれる。
なお、本発明の光学記録媒体においては、記録を行うレーザー光の波長において、情報が記録された記録部の反射率が、記録前の反射率よりも高くなることが好ましい。
【0172】
高密度記録のためには、記録時に使用するレーザー光の波長は短いほど好ましく、特に、本発明の光学記録媒体は、その記録層に上述した本発明のシアニン色素を含有する利点を十分に発揮させる観点から、波長350nm以上530nm以下のレーザー光を用いて記録再生されることが好ましい(以下、このようなレーザー光を用いる記録方法を適宜「本発明の光学記録媒体の記録方法」或いは単に「本発明の記録方法」という。)。
【0173】
かかるレーザー光の代表例としては、例えば、中心波長405nm、410nmなどの青色レーザー光、中心波長515nmの青緑色の高出力半導体レーザー光が挙げられる。これら以外にも(a)基本発振波長が740〜960nmの連続発振可能な半導体レーザー光、または(b)半導体レーザー光によって励起されかつ基本発振波長が740〜960nmの連続発振可能な固体レーザー光のいずれかを、第二高調波発生素子(SHG)により波長変換することによって得られる光なども挙げられる。
【0174】
上記のSHGとしては、反射対称性を欠くピエゾ素子であればいかなるものでもよいが、KDP(KHPO)、ADP(NHPO)、BNN(BaNaNb15)、KN(KNbO)、LBO(LiB)、化合物半導体などが好ましい。第二高調波の具体例としては、基本発振波長が860nmの半導体レーザーの場合は、その倍波の波長430nm、また半導体レーザー励起の固体レーザーの場合は、CrドープしたLiSrAlF結晶(基本発振波長860nm)からの倍波の波長430nmなどが挙げられる。
これらのうち、中心波長405nmの青色レーザー光を使用することが特に好ましい。
【0175】
光学記録媒体が有する吸収波長および吸光度のうち、本発明のシアニン色素のアセトニトリル中での吸収スペクトルの最大吸収波長(λmax)が380〜500nmであり、該λmaxにおけるOD係数が通常30以上、好ましくは35以上、特に好ましくは40以上であることが、膜厚の制御およびレーザーへの高感度化の面で好ましい。
【0176】
(本発明に用いる光記録装置)
本発明に用いる記録装置の基本構造は、従来の光記録装置と同様ものを用いることができる。例えば、そのフォーカスサーボ方式や、トラッキングサーボ方式は、従来公知の方式を適用できる。集束ビームの焦点位置のスポットが、カバー層溝間部に照射され、トラッキングサーボによって、該カバー層溝間部を追従するようになっていればよい。通常は、プッシュプル信号が利用されている。
【0177】
カバー層溝間部に記録を行う場合、集束された記録再生光ビームは、記録層主成分色素を昇温・発熱せしめて、変質(膨張、分解、昇華、溶融等)を起こさせる。マーク長変調記録を行う場合、記録再生光ビームのパワー(記録パワー)をマーク長に従って、強弱変調させる。なお、マーク長変調方式は、特に制限は無く、通常用いられるRun−Length−Limited符号である、EFM変調(CD)、EFM+変調(DVD)、1−7PP変調(ブルーレイ)等を適用できる。
【0178】
ただし、HtoL極性信号を前提とした記録再生系においては、LtoH記録に当たって、マークとスペースでの記録信号極性が逆になるように記録データ信号の極性を予め反転させておくことがある。こうすれば、記録後の信号は、見かけ上、HtoL極性の信号と同等にできる。
【0179】
通常は、マーク部で記録パワーを高レベルPwとし、マーク間(スペース)で低レベルPsとする。Ps/Pwは、通常0.5以下とする。Psは一回だけの照射では、記録層に上記変質を生じさせないようなパワーであり、Pwに先行して記録層を予熱したりするために利用される。公知の記録パルスストラテジーは、本発明記録方法及び記録装置においても適宜使用される。例えば、記録マーク部に対応する記録パワーPw照射時間はさらに、短い時間で断続的に照射されたり、複数のパワーレベルに変調したり、Pw照射後、Psに移行するまでの一定時間Psよりもさらに低いパワーレベルPbを照射する、等の記録ストラテジーが使用できる。
【0180】
(記録感度、記録品位)
図1または図2に記載の光学記録媒体を作成した後にレーザー波長405nm、NA=0.85のテスター(パルステック社製ODU−1000)を用い、線速度9.834m/s(2X記録速度。記録速度1Xは4.917m/s)、最短マーク長149nmでランダムパターン(1−7PP変調を使用)で記録した場合、同テスターで再生時Jitter値が7.5%以下を満たし、かつ記録最適パワーが通常7.0mW以下、好ましくは6.5mW以下であることが好ましい。
【実施例】
【0181】
本発明によるシアニン色素は諸種の方法により合成可能であるが、経済性を重視するのであれば、活性メチン基と適宜の脱離基との求核置換反応を利用する方法が好適である。以下、本発明について実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0182】
[合成例1]
式(101)で表される複素環誘導体70gと、式(102)で表されるニトロソ誘導体138gとを、無水酢酸中で1時間加熱攪拌した。反応後、水を滴下し、冷却した。析出した結晶を濾取することにより、67gの式(103)で表されるシアニン色素を得た。
式(103)のシアニン色素6gと、p−トルエンスルホン酸メチル13.2gとを反応器に仕込み、3.5時間(130℃)加熱攪拌した。反応後、ジイソプロピルエーテルを加えてデカント処理を行ない、得られたオイルにメタノールを加え、次いで過塩素酸ナトリウム水溶液を加えて結晶化させ、析出した結晶を濾取することで4.98gの式(2)の化合物を得た。
【0183】
【化60】

【0184】
【化61】

【0185】
【化62】

【0186】
【化63】

【0187】
結晶の一部をとり、熱特性として、DSC分析により融点及び分解点を測定したところ、本発明のシアニン色素は240.5℃付近に融点と区別し難い分解点を示した。
【0188】
吸光特性として、常法によりメタノール溶液における吸収スペクトルを測定したところ、本発明のシアニン色素は波長406nmに吸収極大(λmax)を示した(ε=2.71×10)。
【0189】
なお、ジメチルスルホキシド−d溶液における本合成例のシアニン色素のH−核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.6−1.8(9H、m)、2.60+3.27(3H、s)、3.35+3.76(3H、s)、3.55(2H、d)、3.81(2H、d)、4.27+4.36(3H、s)、6.36+6.81(1H、m)、6.64−6.70(2H、m)、7.01−7.13(3H、m)、7.50−7.74(4H、m)、7.86(1H、d)、8.4−8.5(2H、m)の位置にピークを示した。
【0190】
[実施例1]
合成例1で得た式(2)の化合物0.738gと、式(104)の化合物2gとを、N,N−ジメチルホルムアミド中(80℃)加熱攪拌し完溶させた。メタノールを加え,析出した結晶を濾取することにより,2.1gの式(40)の化合物(本発明のシアニン色素)を得た。
【0191】
【化64】

【0192】
【化65】

【0193】
結晶の一部をとり、熱特性として、DSC分析により融点及び分解点を測定したところ、本発明のシアニン色素は300.7℃付近に融点と区別し難い分解点を示した。
【0194】
吸光特性として、常法によりメタノール溶液における吸収スペクトルを測定したところ、本発明のシアニン色素は波長478nmに主たる吸収極大(λmax)を示した(ε=1.06×10)。
【0195】
ジメチルスルホキシド−d溶液における本実施例のシアニン色素のH−核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が0.52(12H、t)、1.6−1.8(9H、m)、2.60+3.27(3H、s)、2.91(12H、s)、3.35+3.75(3H、s)、3.55(2H、d)、3.56(8H、q)、3.81(2H、d)、4.27+4.36(3H、s)、6.36+6.81(1H、m)、6.65−6.70(2H、m)、6.89(4H、d)、7.0−7.2(3H、m)、7.50−7.74(4H、m)、7.86(1H、d)、7.98(4H、dd)、8.4−8.5(2H、m)、9.03(4H、d)の位置にピークを示した。
【0196】
・光学記録媒体の作成
厚さ1.1mm、トラックピッチ0.32μm、溝幅180nm、溝深さ45nmのポリカーボネート製の基板上に、スパッタリングにより厚さ70nmのAgBi0.2Nd0.5反射膜を設けた。次に、上述の式(40)の化合物をTFP(2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール)に対し0.7重量%の濃度となるように混合した溶液をスピンコート法で塗布し、70℃で25分乾燥させることにより、記録層を設けた。なお、空気をリファレンスとして測定した470nmでの吸光度は0.24であった。その後、この記録層の上に、Inバリア層をスパッタリングにより20nmの厚さで成膜した。さらに厚さ100μmのリンテック社製BD−R用カバーシート(Opteria)を圧着して、光学記録媒体を作製した(実施例1の光学記録媒体)。
【0197】
・光学記録媒体の評価
得られた実施例1の光学記録媒体に対し、レーザー波長405nm、NA(開口数)0.85のテスター(パルステック社製ODU−1000)を用い、線速度9.834m/s(2X記録速度。記録速度1Xは4.917m/s)、最短マーク長149nmでランダムパターン(1−7PP変調を使用)記録を行った。再生は、線速度4.917m/sとし、BD−R評価基準であるLimit Equalizer modeでJitter評価を行った。
その結果、記録メカニズムはLow To High型であり、最適記録パワーは6.0mWであった。この時の光学記録媒体のJitterは6.7%と良好な結果であった。
【0198】
[実施例2]
合成例1で得た式(2)の化合物0.5gと、式(105)の化合物0.74gとを、N,N−ジメチルホルムアミド中(80℃)で加熱攪拌し完溶させた。メタノールを加え、析出した結晶を濾取することにより、0.84gの式(106)の化合物(本発明のシアニン色素)を得た。
【0199】
【化66】

【0200】
【化67】

【0201】
【化68】

【0202】
結晶の一部をとり、熱特性として、DSC分析により融点及び分解点を測定したところ、本発明のシアニン色素は256.5℃付近に融点と分解点を示した。
【0203】
吸光特性として、常法によりメタノール溶液における吸収スペクトルを測定したところ、本発明のシアニン色素は波長389nmに主たる吸収極大(λmax)を示した(ε=5.78×10)。
【0204】
ジメチルスルホキシド−d溶液における本実施例のシアニン色素のH−核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.6−1.8(9H、m)、2.60+3.27(3H、s)、2.92(6H、s)、3.35+3.75(3H、s)、3.55(1H、d)、3.81(1H、d)、4.27+4.36(3H、s)、6.36+6.81(1H、m)、6.64−6.70(2H、m)、6.96(2H、d)、7.01−7.13(3H、m)、7.50−7.74(4H、m)、7.86(1H、d)、8.01(2H、dd)、8.4−8.5(2H、m)、8.93(2H、d)の位置にピークを示した。
【0205】
・光学記録媒体の作成
式(40)の化合物の代わりに、上述の式(106)の化合物を使用した以外は、実施例1と同様の条件で光学記録媒体を作製した(実施例2の光学記録媒体)。
【0206】
・光学記録媒体の評価
得られた実施例2の光学記録媒体に、実施例1と同様の条件で評価を行なった。この結果、記録メカニズムはLow To High型であり、最適記録パワーは5.8mWであった。この時の光学記録媒体のJitterは7.3%と、良好な結果であった。
【0207】
[実施例3]
合成例1で得た式(2)の化合物0.5gと、式(107)の化合物0.74gとを、N,N−ジメチルホルムアミドとアセトニトリルとの混合液中(80℃)で加熱攪拌し完溶させた。更にメタノールを加え、析出した結晶を濾取することにより、0.59gの式(108)の化合物(本発明のシアニン色素)を得た。
【0208】
【化69】

【0209】
【化70】

【0210】
【化71】

【0211】
結晶の一部をとり、熱特性として、DSC分析により融点及び分解点を測定したところ、本発明のシアニン色素は263.6℃付近に融点と分解点を示した。
【0212】
吸光特性として、常法によりメタノール溶液における吸収スペクトルを測定したところ、本発明のシアニン色素は波長485nmに主たる吸収極大(λmax)を示した(ε=1.09×10)。
【0213】
ジメチルスルホキシド−d溶液における本実施例のシアニン色素のH−核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.6−1.8(9H、m)、2.60+3.27(3H、s)、2.92(12H、s)、3.35+3.75(3H、s)、3.55(1H、d)、3.81(1H、d)、4.27+4.36(3H、s)、6.36+6.81(1H、m)、6.64−6.70(2H、m)、6.96(4H、d)、7.01−7.13(3H、m)、7.50−7.74(4H、m)、7.86(1H、d)、8.01(4H、dd)、8.4−8.5(2H、m)、8.93(4H、d)の位置にピークを示した。
【0214】
・光学記録媒体の作成
式(40)の化合物の代わりに、上述の式(108)の化合物を使用した以外は、実施例1と同様の条件で光学記録媒体を作製した(実施例3の光学記録媒体)。
【0215】
・光学記録媒体の評価
得られた実施例3の光学記録媒体に、実施例1と同様の条件で評価を行なった。この結果、記録メカニズムはLow To High型であり、最適記録パワーは5.4mWであった。この時の光学記録媒体のJitterは6.8%と、良好な結果であった。
【0216】
[合成例2]
式(103)で表されるシアニン色素3gと、p−トルエンスルホン酸メチル6.6gとを反応器に仕込み、5.5時間(130℃)加熱攪拌した。反応後、メタノールを加え、次いでヘキサフルオロリン酸ナトリウム水溶液を加えて冷却し、析出した結晶を濾取することで2.14gの式(3)の化合物を得た。
【0217】
【化72】

【0218】
【化73】

【0219】
結晶の一部をとり、熱特性として、DSC分析により融点及び分解点を測定したところ、本発明のシアニン色素は233.4℃付近に融点と区別し難い分解点を示した。
【0220】
吸光特性として、常法によりメタノール溶液における吸収スペクトルを測定したところ、本例のシアニン色素は波長405nmに吸収極大(λmax)を示した(ε=2.72×10)。
【0221】
ジメチルスルホキシド−d溶液における本合成例のシアニン色素のH−核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.6−1.8(9H、m)、2.60+3.27(3H、s)、3.35+3.75(3H、s)、3.55(2H、d)、3.81(2H、d)、4.26+4.36(3H、s)、6.36+6.80(1H、m)、6.64−6.71(2H、m)、7.01−7.13(3H、m)、7.50−7.73(4H、m)、7.86(1H、d)、8.4−8.5(2H、m)の位置にピークを示した。
【0222】
[実施例4]
合成例2で得た式(3)の化合物0.69gと、式(109)の化合物1gとを、N,N−ジメチルホルムアミド中(80℃)で加熱攪拌し完溶させた。メタノールを加え、析出した結晶を濾取することにより、0.63gの式(38)の化合物(本発明のシアニン色素)を得た。
【0223】
【化74】

【0224】
【化75】

【0225】
【化76】

【0226】
結晶の一部をとり、熱特性として、DSC分析により融点及び分解点を測定したところ、本発明のシアニン色素は256.4℃付近に融点と分解点を示した。
【0227】
吸光特性として、常法によりメタノール溶液における吸収スペクトルを測定したところ、本発明のシアニン色素は波長389nmに主たる吸収極大(λmax)を示した(ε=5.82×10)。
【0228】
ジメチルスルホキシド−d溶液における本実施例のシアニン色素のH−核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が0.58(6H、t)、1.6−1.8(9H、m)、2.61+3.27(3H、s)、3.36+3.75(3H、s)、3.55(2H、d)、3.61(4H、q)、3.81(2H、d)、4.27+4.36(3H、s)、6.36+6.81(1H、m)、6.64−6.71(2H、m)、6.97(2H、d)、7.0−7.2(3H、m)、7.50−7.74(4H、m)、7.86(1H、d)、8.03(2H、dd)、8.4−8.5(2H、m)、8.93(2H、d)の位置にピークを示した。
【0229】
・光学記録媒体の作成
式(40)の化合物の代わりに、上述の式(38)の化合物を使用した以外は、実施例1と同様の条件で光学記録媒体を作製した(実施例4の光学記録媒体)。
【0230】
・光学記録媒体の評価
得られた実施例4の光学記録媒体に、実施例1と同様の条件で評価を行なった。この結果、記録メカニズムはLow To High型であり、最適記録パワーは5.4mWであった。この時の光学記録媒体のJitterは7.0%と、良好な結果であった。
【0231】
[合成例3]
式(110)のシアニン色素3.22gと、p−トルエンスルホン酸メチル9.00gとを反応器に仕込み、4時間(150℃)加熱攪拌した。反応後、エタノールを加え、次いで過塩素酸ナトリウム水溶液を加えて冷却し、析出した結晶を濾取することで1.47gの式(4)の化合物を得た。
【0232】
【化77】

【0233】
【化78】

【0234】
結晶の一部をとり、熱特性として、DSC分析により融点及び分解点を測定したところ、本発明のシアニン色素は263.7℃付近に融点、分解点を示した。
【0235】
吸光特性として、常法によりメタノール溶液における吸収スペクトルを測定したところ、本発明のシアニン色素は波長402nmに吸収極大(λmax)を示した(ε=2.98×10)。
【0236】
ジメチルスルホキシド−d溶液における本合成例のシアニン色素のH−核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が1.64−1.78(12H、m)、3.32(3H、s)、3.83(3H、s)、4.40(3H、s)、6.35(1H、s)、7.72(1H、t)、8.00(1H、d)、8.07(1H、d)、8.34(1H、s)、8.49(2H、t)の位置にピークを示した。
【0237】
[実施例5]
合成例3で得た式(4)の化合物1.37gと、式(104)の化合物0.5gとを、N,N−ジメチルホルムアミド中(80℃)で加熱攪拌し完溶させた。メタノールを加え、析出した結晶を濾取することにより、1.22gの式(37)の化合物(本発明のシアニン色素)を得た。
【0238】
【化79】

【0239】
【化80】

【0240】
【化81】

【0241】
結晶の一部をとり、熱特性として、DSC分析により融点及び分解点を測定したところ、本発明のシアニン色素は297.6℃付近に融点と分解点を示した。
【0242】
吸光特性として、常法によりメタノール溶液における吸収スペクトルを測定したところ、本発明のシアニン色素は波長478nmに主たる吸収極大(λmax)を示した(ε=1.08×10)。
【0243】
ジメチルスルホキシド−d溶液における本実施例のシアニン色素のH−核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が0.52(12H、t)、1.64−1.78(12H、m)、2.91(12H、s)、3.32(3H、s)、3.57(8H、q)、3.83(3H、s)、4.40(3H、s)、6.35(1H、s)、6.89(4H、d)、7.72(1H、t)、7.98(4H、dd)、8.00(1H、d)、8.07(1H、d)、8.34(1H、s)、8.49(2H、t)、9.03(4H、d)の位置にピークを示した。
【0244】
・光学記録媒体の作成
式(40)の化合物の代わりに、上述の式(37)の化合物を使用した以外は、実施例1と同様の条件で光学記録媒体を作製した(実施例5の光学記録媒体)。
【0245】
・光学記録媒体の評価
得られた実施例5の光学記録媒体に、実施例1と同様の条件で評価を行なった。この結果、記録メカニズムはLow To High型であり、最適記録パワーは5.8mWであった。この時の光学記録媒体のJitterは7.3%と、良好な結果であった。
【0246】
[実施例6]
合成例3で得た式(4)の化合物0.59gと、式(111)の化合物1gとを、N,N−ジメチルホルムアミド中(80℃)で加熱攪拌し完溶させた。エタノールを加え、析出した結晶を濾取することにより、0.53gの式(112)の化合物(本発明のシアニン色素)を得た。
【0247】
【化82】

【0248】
【化83】

【0249】
【化84】

【0250】
結晶の一部をとり、熱特性として、DSC分析により融点及び分解点を測定したところ、本発明のシアニン色素は146.4℃付近に融点と分解点を示した。
【0251】
吸光特性として、常法によりメタノール溶液における吸収スペクトルを測定したところ、本発明のシアニン色素は波長388nmに主たる吸収極大(λmax)を示した(ε=5.65×10)。
【0252】
ジメチルスルホキシド−d溶液における本実施例のシアニン色素のH−核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が0.52(6H、t)、1.6−1.8(12H、m)、3.32(3H、s)、3.61(4H、q)、3.83(3H、s)、4.40(3H、s)、6.35(1H、s)、6.97(2H、d)、7.72(1H、t)、7.78−8.29(4H、m)、8.34(1H、s)、8.49(2H、t)、8.93(2H、d)の位置にピークを示した。
【0253】
・光学記録媒体の作成
式(40)の化合物の代わりに、上述の式(112)の化合物を使用した以外は、実施例1と同様の条件で光学記録媒体を作製した(実施例6の光学記録媒体)。
【0254】
・光学記録媒体の評価
得られた実施例6の光学記録媒体に、実施例1と同様の条件で評価を行なった。この結果、記録メカニズムはLow To High型であり、最適記録パワーは5.4mWであった。この時の光学記録媒体のJitterは7.4%と、良好な結果であった。
【0255】
[実施例7]
式(113)の化合物0.5gと、式(114)の化合物1.65gとを、アセトニトリル中で加熱攪拌した。その後、冷却し、析出した結晶を濾取することにより、1.45gの式(115)の化合物(本発明のシアニン色素)を得た。
【0256】
【化85】

【0257】
【化86】

【0258】
【化87】

【0259】
結晶の一部をとり、熱特性として、DSC分析により融点及び分解点を測定したところ、本例のシアニン色素は324.9℃付近に融点と区別し難い分解点を示した。
【0260】
吸光特性として、常法によりメタノール溶液における吸収スペクトルを測定したところ、本例のシアニン色素は波長479nmに主たる吸収極大を示した(ε=1.10×10)。
【0261】
重クロロホルム溶液における本実施例のシアニン色素のH−核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が0.45(12H、t)、0.70〜0.80(8H、m)、0.80〜0.95(8H、m)、1.60〜1.65(6H、br)、1.65〜1.80(6H、br)、2.90(12H、s)、3.29(3H、s)、3.50〜3.60(8H、m)、3.84(3H、s)、4.37(3H、s)、6.31(1H、s)、6.90(4H、d)、7.60〜7.70(3H、m)、7.84(2H、d)、7.99(4H、dd)、8.45(2H、t)、9.02(4H、d)の位置にピークを示した。
【0262】
・光学記録媒体の作成
式(40)の化合物の代わりに、上述の式(115)の化合物を使用した以外は、実施例1と同様の条件で光学記録媒体を作製した(実施例7の光学記録媒体)。
【0263】
・光学記録媒体の評価
得られた実施例7の光学記録媒体に、実施例1と同様の条件で評価を行なった。この結果、記録メカニズムはLow To High型であり、最適記録パワーは6.4mWであった。この時の光学記録媒体のJitterは8.0%と、良好な結果であった。
【0264】
[比較例1]
式(116)の化合物0.72gと、式(114)の化合物1.5gとを、アセトニトリル中で加熱攪拌し完溶させた。その後アセトニトリルを留去し、析出した結晶を濾取することにより、1.45gの式(117)の化合物を得た。
【0265】
【化88】

【0266】
【化89】

【0267】
【化90】

【0268】
結晶の一部をとり、熱特性として、DSC分析により融点及び分解点を測定したところ、本例のシアニン色素は251.9℃付近に融点と区別し難い分解点を示した。
【0269】
吸光特性として、常法によりメタノール溶液における吸収スペクトルを測定したところ、本例のシアニン色素は波長440nmに主たる吸収極大を示した(ε=6.47×10)。
【0270】
重クロロホルム溶液における本比較例のシアニン色素のH−核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が0.50(6H、t)、0.78〜0.86(4H、m)、0.94〜1.10(4H、m)、1.67(12H、s)、2.94(6H、s)、3.31(3H、s)、3.48(3H、s)、3.59〜3.66(4H、m)、5.56(1H、s)、6.83(2H、d)、7.28(1H、dd)、7.43〜7.56(4H、m)、7.76(1H、dd)、7.99(2H、dd)、8.37(1H、dd)、9.13(2H、d)の位置にピークを示した。
【0271】
・光学記録媒体の作成
式(40)の化合物の代わりに、上述の式(117)の化合物を使用した以外は、実施例1と同様の条件で光学記録媒体を作製した(比較例1の光学記録媒体)。
【0272】
・光学記録媒体の評価
得られた比較例1の光学記録媒体に、実施例1と同様の条件で評価を行なった。この結果、記録メカニズムはLow To High型であり、最適記録パワーは6.0mWであった。この時の光学記録媒体のJitterは15.7%と、実施例と比較すると良好な特性を得ることができなかった。
【0273】
[比較例2]
式(103)の化合物64gと、式(114)の化合物113.4gとを、アセトニトリル中で加熱攪拌し完溶させた。その後アセトニトリルを留去し、析出した結晶を濾取することにより、107.8gの式(118)の化合物を得た。
【0274】
【化91】

【0275】
【化92】

【0276】
【化93】

【0277】
結晶の一部をとり、熱特性として、DSC分析により融点及び分解点を測定したところ、本例のシアニン色素は238.4℃付近に融点と区別し難い分解点を示した。
【0278】
吸光特性として、常法によりメタノール溶液における吸収スペクトルを測定したところ、本例のシアニン色素は波長446nmに主たる吸収極大を示した(ε=7.08×10)。
【0279】
重クロロホルム溶液における本比較例のシアニン色素のH−核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、化学シフトδ(ppm、TMS)が0.50(6H、t)、0.79〜0.88(4H、m)、0.94〜1.01(4H、m)、1.67(3H、s)、1.69(3H、s)、1.78(3H、s)、2.93(6H、s)、3.05(6H、br)、3.26〜3.52(2H、m)、3.58〜3.66(4H、m)、5.64(1H、s)、6.69(2H、d)、6.82(2H、d)、7.05〜7.30(5H、m)、7.52〜7.55(3H、m)、7.77(1H、d)、7.99(2H、dd)、8.35(1H、d)、9.12(2H、d)の位置にピークを示した。
【0280】
・光学記録媒体の作成
式(40)の化合物の代わりに、上述の式(118)の化合物を使用した以外は、実施例1と同様の条件で光学記録媒体を作製した(比較例2の光学記録媒体)。
【0281】
・光学記録媒体の評価
得られた比較例2の光学記録媒体に、実施例1と同様の条件で評価を行なった。この結果、記録メカニズムはLow To High型であり、最適記録パワーは6.0mWであった。この時の光学記録媒体のJitterは15.9%と、実施例と比較すると良好な特性を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0282】
本発明の適用分野に制限はないが、中でも光記録媒体の分野に好適に用いることが出来る。
【符号の説明】
【0283】
20 光学記録媒体
21 基板
22 反射層
23 記録層
24 バリア層
25 カバー層
26 カバー層溝間部
27 カバー層溝部
28 記録再生光ビーム
29 対物レンズ
30 記録再生光ビームが入射する面
31 記録再生光ビームが入射する面から遠い側の案内溝部
32 記録再生光ビームが入射する面に近い側の案内溝部
100 光学記録媒体
101 基板
102 反射層
103 記録層
104 バリア層
107 記録再生光ビーム
108 対物レンズ
111 中間層
112 半透明反射層
113 記録層
114 バリア層
115 カバー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式[I]で示される
ことを特徴とする、シアニン色素。
【化1】

(式[I]中、
及びBは、各々独立に置換基を有してもよい芳香環を表わす。ただし、A、Bのうち少なくとも一方の芳香環には、四級化された窒素原子を含む。
及びRは、各々独立に置換基を表わす。R及び/又はRが2価の連結基として他のカチオンと結合していてもよい。
、X、X及びXは、各々独立に有機基を表わす。XとXとの組、及び/又はXとXとの組が、互いに結合して環構造を形成していてもよい。
は、水素原子又は有機基を表わす。
nは、1から正の整数pまでの各整数を表わす。
(Zは、p種の各々独立である陰イオンを表わす。ただし、少なくも該陰イオンのうち1以上は、金属錯体を含む陰イオンである。
は、nで対する各(Zの係数を各々表わし、1以上の整数である。
qは、1以上の整数を表わす。
式[I]で表わされるシアニン色素は全体として中性であり、
【数1】

を満たす。)
【請求項2】
上記金属錯体を含む陰イオンが、アゾ系金属錯体の陰イオンである
ことを特徴とする、請求項1記載のシアニン色素。
【請求項3】
上記金属錯体を含む陰イオンが、式[III]で示されるアゾ系金属錯体の陰イオンである
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のシアニン色素。
【化2】

[III]
(式[III]中、
、Rは、各々独立に水素原子又は置換基を有してもよい炭化水素基を表わす。
、Rは、各々独立に置換基を有してもよい炭化水素基を表わす。
21、R22は、各々独立に水素原子又は電子吸引基を表わす。
Mは、3価の金属を表わす。)
【請求項4】
上記式[I]中、X、X、X、及びXのうち少なくとも1つが、複素環又は芳香環で置換されたアルキル基である
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のシアニン色素。
【請求項5】
基板と、該基板上に形成された記録層とを少なくとも有し、該記録層が、上記請求項1〜4の何れか1項に記載のシアニン色素を含有する
ことを特徴とする、光学記録媒体。
【請求項6】
波長350nm以上530nm以下のレーザー光を用いて記録再生される
ことを特徴とする、請求項5記載の光学記録媒体。
【請求項7】
記録を行うレーザー光の波長において、情報が記録された記録部の反射率が、記録前の反射率よりも高くなる
ことを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の光学記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−57881(P2011−57881A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210122(P2009−210122)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000155908)株式会社林原生物化学研究所 (168)
【出願人】(501495237)三菱化学メディア株式会社 (105)
【Fターム(参考)】