説明

シェル及びコアを有する内張り要素

本発明は、タイヤのためのセクタ化モールドの一セクタの支持ユニットに取り付けられるようになった成形要素であって、成形要素がタイヤのトレッドの一部上にパターンを形成するようになっている、成形要素において、成形要素は、内容積部を画定する外側シェル(30)と、シェル内に設けられた内部コア(34)とを有することを特徴とする成形要素に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ加硫モールドの分野、特にセグメント化形式のモールドに関する。
【背景技術】
【0002】
セグメント化モールドは、互いに結合されると、疑似ドーナツ形のモールドキャビティを画定する多くの別々の部品から成る。具体的に言えば、セグメント化モールドは、タイヤのサイドウォールを成形する2つの側方シェルと、シェル相互間に位置していて、タイヤトレッドを成形する数個の周辺セグメントとを有している。これら部品の全ては、選択された機構体により、適当な作動シーケンスで互いに結合される。生タイヤは、正確なアーキテクチャ及び幾何学的寸法形状を得るために、モールドにしっかりと押し付けられ、これに当てた状態で保持されなければならない。
【0003】
トレッドのパターンを形成するため、モールドのセグメントは、セグメントの半径方向内面から突き出た要素を有し、これら要素は、タイヤトレッド上に成形されるべきパターンのネガを形成する。
【0004】
単一のモールドを用いて種々の形状のトレッドパターンを備えたタイヤを製造することができるようにするため、例えば、欧州特許第0523958号明細書(特許文献1)には、モールドのセグメントを多数の要素、即ち、タイヤのトレッドの全体的曲率を定める全体的形状を備えた支持ブロック及び支持ブロックに取り付けられると共にタイヤトレッドのパターンを形成するよう設計された複数個の内張り要素で構成する公知の方法が記載されている。
【0005】
この特許文献に記載されている内張り要素は、成形、例えばスチールの成形により製作される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第0523958号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、内張り要素は、製造するのに費用が高く、嵩張った重い要素である。
【0008】
本発明の目的は、特に、より経済的な内張り要素を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため、本発明は、タイヤのためのセグメント化モールドの一セグメントの支持ブロックに取り付けられるようになった内張り要素であって、内張り要素がタイヤトレッドの一部上にパターンを形成するようになっている、内張り要素において、内張り要素は、内容積部を画定する外側シェルと、シェル内に設けられていて、タイヤを成型するときにシェルに作用する機械的力に耐えるコアとを有し、シェルとコアは、レーザ焼結によって一体に作られ、コアは、仕切りの網状組織を有することを特徴とする内張り要素を提案する。
【0010】
内張り要素の外面だけがタイヤトレッドのパターンの成形に関与するので、内張り要素の内側構造体は、要素の外側構造体とは異なっている場合がある。したがって、本発明は、先行技術の場合のように中実ではなく、シェル及びコアを有する内張り要素の設計を提案する。
【0011】
シェル及びコアの製造について互いに異なる構造体を選択することが可能である。ただし、内張り要素のこれら2つの部品が互いに異なる要件を満たさなければならないことを条件とし、即ち、トレッドパターンの表面状態が正確であるようにするためにシェルは比較的滑らかであることが重要であり、これに対し、コアは、タイヤの成型に起因して生じる機械的応力に耐えるほど十分強固でなければならない。
【0012】
本発明の内張り要素の特定の構造により、コアは、このコアが受ける応力に適合可能である。仕切りの凹状組織を使用することにより、タイヤの成型に起因して生じる機械的応力に耐えるのに十分な構造的強度を備えたコアを製作することが可能である。コアの強度は、これら応力に合わせて設定されており、それにより、強度に関して一義的に必要であり且つ十分な特性を備えた組立体を製造することが可能である。本発明の組立体のコアの強度は、過度に大きくはなく、このために、組立体の製造は容易になると共に簡単になる。
【0013】
シェルとコアは、一体に形成され、このことは、シェルとコアが一材料で作られ、或いは、換言すると、この場合にはレーザ焼結により同種の材料から作られることを意味している。
【0014】
内張り要素は、レーザ焼結と通称されている選択的レーザ溶融によって作られる。物品は、粉末の選択的溶融により作られ、層の重ね合わせによって構成される。また、この焼結法の名称は、SLM(selective laser melting:選択的レーザ溶融)と略記される。部品を製造するこの方法の利点は、部品の形状をコンピュータによりモデル化することができ、そして部品をこのモデル化に基づいて焼結により容易に製作できるということにある。レーザは、部品のモデルを備えたコンピュータによって制御でき、次に、部品を粉末の重ね合わせ層の順次焼結により製造することができる。この方法は、モールドライナの製造に特に適している。というのは、この方法を用いると、小さな内張り要素、例えばストリップ又はバンドを製造することができるからである。
【0015】
このレーザ焼結作業を互いに重ね合わされた材料の層に対して順次実施することにより、内張り要素を所望の形状で製造することができる。任意所与の層の表面上に位置する領域を形成するためには、レーザは、表面全体を走査しなければならず、これには、或る程度の時間が必要である。しかしながら、焼結の目的は、任意所与の層に疑似直線状である領域、例えば垂直仕切りを形成することにある場合、製造されるべき直線状要素の長さに沿ってレーザにより粉末を走査する必要がある。したがって、明らかなこととして、レーザ焼結による表面要素の形成には、直線状要素の形成よりも長い時間が必要になる。
【0016】
仕切りの形状及び配置状態は、様々であって良い。例えば、仕切りの網状組織は、二次元形状、例えばハニカム、菱形、三角形又は正方形の真っ直ぐであっても良く又は湾曲していても良い所定の配置状態で又は三次元の形状、例えば立方体の形状、ピラミッド形又はダイヤモンド形等の形状の所定の配置状態で形作られる。上述したように、中実面に対するレーザ走査により中実材料を形成する場合よりも直線の曲線又は小さな構造体に沿うレーザ走査による仕切りの網状組織を形成する場合の方が迅速である。変形例として、コアの構造体も又、構造的組立体を形成するために相互に連結された支持バーの網状組織を用いることにより形成できる。内張り要素をレーザ焼結により製造しようとする場合、このライナがシェル及びコアを有していればレーザ焼結は特に有用である。というのは、これにより、中実内張り要素と比較して時間の相当な節約が得られるからである。
【0017】
本発明の他のオプションとしての特徴は次の通りである。
シェルは、中実材料で作られる。これにより、シェルは、タイヤのトレッドパターンの正確な成形に必要な剛性及び表面状態を有するようになる。
シェルの厚さは、0.25ミリメートルから2ミリメートルの範囲にある。
シェルは、このシェルにより画定された内容積部が密閉されるように形作られている。この場合、コアの仕切り相互間に残存する粉末を取り除くことは、不可能になる。これは、モールド要素の熱伝導率を高めるという利点を有する。また、この形態により、仕切りがなく、しかも、シェルの密閉容積部内に存在する押し固め状態の粉末がそれ自体、必要且つ十分な機械的剛性をシェルに与えることができるコアを形成することが可能である。
コアの仕切りの厚さは、0.05ミリメートルから1ミリメートルの範囲にある。
‐コアは、相互に連結された支持バーの網状組織により形成される。
【0018】
本発明は又、上述した内張り要素を製造する方法であって、順次レーザ焼結を所与の方向に重ね合わされた材料の層に対して実施することを特徴とする方法を提案する。
【0019】
この方法で用いられる材料は、例えば、金属粉末であるのが良い。
本発明は、例示として与えられているに過ぎず、図面を参照して行なわれる以下の説明からより明確に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】タイヤ加硫モールドの一セグメントの分解組立て斜視図であり、セグメントが本発明の複数個の内張り要素を有している状態を示す図である。
【図2】図1の図と同一の図であり、一セグメントを示す図である。
【図3】図1のセグメントの内張り要素の詳細斜視図である。
【図4】図3に示された要素の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1及び図2は、タイヤの加硫のためのセグメント化モールドのセグメント10を示している。セグメント化モールド(図示せず)は、加硫されるべきタイヤのトレッドの全体的形状を定めるよう筒体の形態に周方向に分布して配置された複数個のセグメントを有する。
【0022】
図1では、セグメント10を構成する種々の要素が分解組立て図の形態で示されており、図2では、セグメントは、セグメント10の全ての要素が互いに組み立てられた状態で示されている。
【0023】
セグメント10は、支持ブロック12及び成型されるべきタイヤのトレッドの一部のパターンを形成するようになった内張り要素16の組14を有している。
【0024】
内張り要素16の組14は、図2に示されているように、セグメント12の半径方向内側の表面18に取り付けられるようになっている。
【0025】
組14は、種々の形式の内張り要素16で構成され、例えば、組14は、タイヤに対して実質的に周方向に差し向けられると共にトレッドの表面に設けられる溝を形成するようになったストリップ20又は各々が周方向に差し向けられたバンド24及びタイヤに対して軸方向に差し向けられた1組のブレード26を備えた櫛状部22を有するのが良い。ブレード26は、タイヤトレッドの縁部に溝を形成するようになっている。
【0026】
櫛状部22の詳細が図3に示されている。
【0027】
図4は、図3に示されたバンド24とブレード26の組立体の断面図である。
【0028】
図3に示された内張り要素16は、内容積部32を画定する外側シェル30及び内容積部32を占めている内側コア34を有していることが理解できる。
【0029】
外側シェル30は、中実材料で作られ、内側コア34は、正方形を形成するよう配置された仕切り36の網状組織から成っている。
【0030】
コアを形成している網状組織に属する仕切り36相互間には空のスペースが残されている。
【0031】
シェルの内部は、主として、コア34の仕切り36により分離された空のスペースから成る。
【0032】
セグメント10の内張り要素16は、内張り要素16のシェル30とコア34が一体に作られるように金属粉末の層の選択的レーザ焼結法により作られている。
【0033】
この内張り要素の製作にあたり、壁のレーザ焼結に必要な時間は、壁の厚さにつれて長くなる。これは、レーザにより走査されるべき金属粉末層の表面積が壁の厚さにつれて増大するからである。したがって、明らかなこととして、仕切りの網状組織の形態をしたコア34の製造は、コアが中実である場合よりも迅速である。
【0034】
シェル34の厚さは、例えば、0.25〜2ミリメートルの範囲で様々であって良く、それにより、その概観は、滑らかであり且つ汚れのないトレッドのタイヤパターンを形成するために比較的滑らかであるようになる。コア34の仕切り36の厚さは、0.05ミリメートルから1ミリメートルの範囲で様々であって良い。これは、コア34が内張り要素16の全体的剛性を提供するようになっており、その結果、その表面状態が完全である必要がないからである。
【0035】
さらに、レーザ焼結によりコアの仕切りの網状組織を形成することが特に有利であることに注目されるべきである。というのは、この方法により、網状組織の隙間の中に金属粉末が残るからである。この金属粉末の存在により、内張り要素16の熱伝導率を増大させることができ、タイヤの加硫中における内張り要素の熱的挙動が改善される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのためのセグメント化モールドの一セグメントの支持ブロック(12)に取り付けられるようになった内張り要素(14)であって、前記内張り要素(14)がタイヤトレッドの一部上にパターンを形成するようになっている、内張り要素(14)において、
前記内張り要素(14)は、内容積部(32)を画定する外側シェル(30)と、前記シェル内に設けられていて、前記タイヤを成型するときに前記シェルに作用する機械的力に耐えるコア(34)とを有し、前記シェル(30)と前記コア(34)は、レーザ焼結によって一体に作られ、前記コア(34)は、仕切り(36)の網状組織を有する、
ことを特徴とする内張り要素(14)。
【請求項2】
前記シェル(30)の厚さは、0.25ミリメートルから2ミリメートルの範囲にある、
請求項1記載の内張り要素(14)。
【請求項3】
前記シェル(30)は、前記シェルにより画定された前記内容積部(32)が密閉されるように形作られている、
請求項1又は2記載の内張り要素(14)。
【請求項4】
前記仕切り(36)の網状組織は、ハニカム、菱形、三角形又は正方形の形に作られている、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の内張り要素(14)。
【請求項5】
前記仕切り(36)の厚さは、0.05ミリメートルから1ミリメートルの範囲内にある、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の内張り要素(14)。
【請求項6】
前記コアは、相互に連結された支持バーの網状組織により形成されている、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の内張り要素(14)。
【請求項7】
前記コア(34)の前記仕切り(36)相互間の空間は、金属粉末で占められている、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の内張り要素(14)。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の内張り要素(14)を製造する方法であって、前記方法は、所与の方向に重ね合わされた材料の層の順次レーザ焼結方法である、
ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−512070(P2012−512070A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541558(P2011−541558)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052569
【国際公開番号】WO2010/076503
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】