説明

シクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンの製造方法

【課題】シクロアルカンを良好な転化率で酸化して、シクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを良好な選択率で製造しうる方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも1種の遷移金属を含有し、かつアミン及び/又はアンモニアで接触処理されているメソポーラスシリカの存在下に、シクロアルカンを酸素で酸化することを特徴とするシクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンの製造方法。好ましくは、前記金属を含む化合物、ケイ素化合物、構造規定剤及び水を混合し、得られた結晶をアミン及び/又はアンモニアで接触処理した後、焼成することによりメソポーラスシリカを調製し、このメソポーラスシリカの存在下に、シクロアルカンを酸素で酸化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロアルカンを酸素で酸化して、シクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロアルカンを酸素で酸化してシクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを製造する方法において、ある種の金属元素を含有するメソポーラスシリカを触媒として用いて、上記酸化反応を行う方法が検討されている。例えば、金を含有するメソポーラスシリカ(非特許文献1)や、コバルトを含有するメソポーラスシリカ(非特許文献2)、クロムやバナジウムを含有するメソポーラスシリカ(特許文献1)を用いる方法が知られている。
【0003】
【特許文献1】国際公開第00/03963号パンフレット
【非特許文献1】アプライド・キャタリシス・A:ジェネラル(Applied Catalysis A: General)、(オランダ)、2005年、第280巻、p.175−180
【非特許文献2】コリアン・ジャーナル・オブ・ケミカル・エンジニアリング(Korean Journal of Chemical Engineering)、(韓国)、1998年、第15巻、p.510−515
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、触媒の活性や選択性、すなわちシクロアルカンの転化率やシクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンの選択率の点で、満足できないことがある。そこで、本発明の目的は、シクロアルカンを良好な転化率で酸化して、シクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを良好な選択率で製造しうる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、少なくとも1種の遷移金属を含有し、かつアミン及び/又はアンモニアで接触処理されているメソポーラスシリカの存在下に、上記酸化反応を行うことにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、少なくとも1種の遷移金属を含有し、かつアミン及び/又はアンモニアで接触処理されているメソポーラスシリカの存在下に、シクロアルカンを酸素で酸化することを特徴とするシクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シクロアルカンを良好な転化率で酸化して、シクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを良好な選択率で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明ではシクロアルカンを原料に用い、これを所定のメソポーラスシリカの存在下に酸素(分子状酸素)で酸化して、対応するシクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを製造する。
【0009】
原料のシクロアルカンとしては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、シクロオクタデカンのような、単環式で環上に置換基を有しないシクロアルカンの他、デカリンやアダマンタンのような多環式のシクロアルカン、メチルシクロペンタンやメチルシクロヘキサンのような環上に置換基を有するシクロアルカン等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0010】
酸素源には通常、酸素含有ガスが用いられる。この酸素含有ガスは、例えば、空気であってもよいし、純酸素であってもよいし、空気又は純酸素を、窒素、アルゴン、ヘリウムのような不活性ガスで希釈したものであってもよい。また、空気に純酸素を添加した酸素富化空気を使用することもできる。
【0011】
本発明では、少なくとも1種の遷移金属を含有し、かつアミン及び/又はアンモニアで接触処理されているメソポーラスシリカの存在下で上記酸化反応を行う。かかるメソポーラスシリカを用いることにより、シクロアルカンを良好な転化率で酸化して、シクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンを良好な選択率で製造することができる。
【0012】
メソポーラスシリカに含有される金属は、遷移金属であり、好ましくは、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ルテニウム、パラジウムが挙げられる。中でもコバルトがより好ましい。これら金属は、必要に応じて2種類以上を使用してもよい。金属の含有率は、メソポーラスシリカに対する重量比で表して、通常0.01〜20%であり、好ましくは0.05〜10%であり、さらに好ましくは0.1〜5%である。
【0013】
メソポーラスシリカは、通常2〜50nmのほぼ均一な大きさの細孔を有する、所謂メソポーラス構造を有するものであり、その表面積は通常600〜1500m/g程度である。また、上記金属は、メソポーラス構造を構成するシリカ骨格中に組み込まれていてもよく、上記細孔中に組み込まれていてもよく、シリカ骨格表面に担持されていてもよい。かかるメソポーラスシリカの種類として、例えば、MCM−41型、MCM−48型、FSM−16型、SBA−15型、HMS型等が挙げられ、中でも、MCM−41型が好ましい。尚、メソポーラス構造の有無は、XRD(X線回折)測定における2θ=0.2〜4.0°のピークの有無で確認することができる。
【0014】
次に、本発明におけるメソポーラスシリカの調製法について説明する。本発明では、ケイ素化合物、構造規定剤及び水を混合し、得られた結晶(メソポーラス構造を有するシリカ)をアミン及び/又はアンモニアで接触処理した後、焼成して所望のメソポーラスシリカを調製する。メソポーラス構造を有するシリカは、非特許文献2や、ネイチャー(Nature)、(米国)、1992年、第359巻、p.710−712等に記載された公知の方法に準じて調製することができ、例えば、テトラアルコキシシランのようなケイ素化合物、四級アンモニウム塩のような構造規定剤、及び水を混合し、必要に応じて該混合物を熱処理して結晶を得、これをろ過、乾燥することにより調製することができる。本発明では、遷移金属を含む化合物(以下、金属化合物ということがある。)をメソポーラスシリカに含有させるべく、該金属化合物を、ケイ素化合物、構造規定剤及び水と共に混合してもよく、上記結晶に担持させてもよく、また、アミン及び/又はアンモニアの接触処理により得られる結晶に担持させてもよい。中でも、上記金属化合物をケイ素化合物、構造規定剤及び水と共に混合するのが好ましい。
【0015】
ケイ素化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランのようなテトラアルコキシシラン等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。中でも、テトラエトキシシランが好ましい。
【0016】
構造規定剤としては、例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘプタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミドのような炭素数19〜21のアルキルトリメチルアンモニウムブロミド;ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘプタデシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリドのような炭素数19〜21のアルキルトリメチルアンモニウムクロリド;ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘプタデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクタデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシドのような炭素数19〜21のアルキルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。中でも、アルキルトリメチルアンモニウムブロミドが好ましく、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドがより好ましい。
【0017】
また、ケイ素化合物、構造規定剤及び水を混合する際、これらと共にアンモニアやアルコールを混合しておくと、粒子径のより小さいメソポーラスシリカを得ることができるため、好ましい。かかるアンモニアは、液状のものでも、ガス状のものでもよい。また、アンモニア水として用いてもよい。かかるアルコールは、通常、炭素数1〜6程度の脂肪族アルコールであることができ、その具体例として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等が挙げられる。また、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。中でも、エタノールが好ましい。
【0018】
構造規定剤の使用量は、ケイ素化合物1モルに対し、通常0.1〜1.0モル、好ましくは0.2〜0.5モルである。また水の使用量は、テトラアルコキシシラン1重量部に対し、通常5〜30重量部、好ましくは10〜15重量部である。
【0019】
ケイ素化合物、構造規定剤及び水の混合温度は、通常20〜200℃、好ましくは20〜150℃である。また、混合時間は、通常0.1〜400時間、好ましくは1〜200時間である。
【0020】
かくしてメソポーラス構造を有するシリカの結晶を得ることができる。本発明では、この結晶をアミン及び/又はアンモニアで接触処理した後、焼成する。かかる接触処理を行った後、焼成することにより、細孔のより大きいメソポーラスシリカを調製することができる。尚、かかる接触処理は、ケイ素化合物、構造規定剤及び水を混合して得られた懸濁液をろ過した後、乾燥して得られる結晶について行うのが好ましい。
【0021】
ここでいうアミンは、通常、炭素数1〜20程度のアルキル基が結合した1級、2級又は3級アミンであることができ、中でも3級アミンが好ましく、ジメチルデシルアミンのようなジメチルアルキルアミンやトリアルキルアミンがより好ましい。
【0022】
アミン及び/又はアンモニアは、そのまま接触処理に用いてもよく、水溶液として用いてもよい。アミン及び/又はアンモニアの使用量は、接触処理前の結晶100重量部に対して、通常1〜1500重量部、好ましくは5〜300重量部、さらに好ましくは10〜150重量部である。かかる接触処理の温度は、通常0〜300℃、好ましくは30〜250℃であり、接触処理の時間は、通常0.1〜2000時間、好ましくは1〜200時間である。
【0023】
本発明では、接触処理した後、通常、ろ過、乾燥し、次いで焼成する。かかる乾燥は、通常、空気雰囲気下で行われ、乾燥温度は40〜120℃程度であり、乾燥時間は2〜24時間程度である。また、上記焼成は、通常、空気雰囲気下で行われ、焼成温度は通常450〜650℃、好ましくは500〜600℃であり、焼成時間は通常4〜12時間、好ましくは6〜10時間である。
【0024】
本発明のメソポーラスシリカは少なくとも1種の遷移金属を含有するものであり、かかる金属を含有させるには、上述したとおり、上記金属化合物を、ケイ素化合物、構造規定剤及び水と共に混合してもよく、ケイ素化合物、構造規定剤及び水を混合して得られる結晶に担持させてもよく、また、アミン及び/又はアンモニアの接触処理により得られる結晶に担持させてもよい。具体的には、(1)ケイ素化合物、構造規定剤及び水を混合する際、あわせて上記金属のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩、オキソ酸塩、水酸化物のような該金属化合物を添加する方法や、(2)ケイ素化合物、構造規定剤及び水を混合して得られる結晶又は上記接触処理により得られる結晶に該金属化合物の溶液を含浸させる方法や、(3)ケイ素化合物、構造規定剤及び水を混合して得られる結晶又は上記接触処理により得られる結晶を、該金属化合物の溶液に浸漬して、該金属化合物を該結晶に吸着させたり、該金属化合物の金属カチオンを該結晶のカチオンとイオン交換したりする方法等が挙げられる。かかる金属化合物の使用量は、上述した金属の含有率となるように適宜調整される。
【0025】
上記遷移金属の原料としては、例えば、臭化バナジウム、塩化バナジウム、フッ化バナジウム、ナフテン酸バナジウムのようなバナジウム化合物、塩化クロム、硝酸クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、ナフテン酸クロムのようなクロム化合物、臭化マンガン、塩化マンガン、フッ化マンガン、硝酸マンガン、硫酸アンモニウムマンガン、硫酸マンガン、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガンのようなマンガン化合物、臭化鉄、塩化鉄、フッ化鉄、硝酸鉄、硫酸鉄、酢酸鉄、ナフテン酸鉄のような鉄化合物、臭化コバルト、塩化コバルト、フッ化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト、ナフテン酸コバルト、水酸化コバルトのようなコバルト化合物、臭化ルテニウム、塩化ルテニウムのようなルテニウム化合物、臭化パラジウム、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、水酸化パラジウムのようなパラジウム化合物を用いることができ、中でも、コバルト化合物が好ましい。
【0026】
また、本発明では、上記焼成後、さらに有機ケイ素化合物で接触処理するとより効果的である。かかる有機ケイ素化合物は、メソポーラスシリカと反応してその表面に結合可能なものであるのが好ましく、典型的には次の式(I)で示すことができる。
【0027】
Si(R1)x(R2)4-x (I)
【0028】
(式中、R1はアルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子を表し、R2はアルコキシ基、アルキル基、アリル基、アリール基又はアラルキル基を表し、xは1〜3の数を表す。)
【0029】
ここで、R1及びR2で表されるアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられ、R2で表されるアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。また、R2で表されるアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基等が挙げられ、R2で表されるアラルキル基の例としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0030】
式(1)で示される有機ケイ素化合物としては、中でもトリアルコキシアルキルシランや、テトラアルコキシシランがより好ましく用いられる。
【0031】
有機ケイ素化合物による接触処理方法としては、例えば、有機ケイ素化合物を含む液体に、上記焼成後の結晶(メソポーラスシリカ)を浸漬する方法や、上記焼成後の結晶(メソポーラスシリカ)に、有機ケイ素化合物を含む気体を接触させる方法等が挙げられる。
【0032】
有機ケイ素化合物の使用量は、該化合物による接触処理前のシリカ100重量部に対し、通常1〜10000重量部、好ましくは5〜2000重量部、さらに好ましくは10〜1500重量部である。
【0033】
有機ケイ素化合物による接触処理の温度は、通常0〜300℃、好ましくは30〜250℃である。また、該接触処理の時間は、通常0.1〜50時間、好ましくは1〜20時間である。
【0034】
かくして、所望のメソポーラスシリカを得ることができる。そして、このメソポーラスシリカの存在下に、シクロアルカンを酸素で酸化する。該酸化反応におけるメソポーラスシリカの使用量は、シクロアルカン100重量部に対し、通常0.0001〜50重量部、好ましくは0.001〜10重量部である。
【0035】
酸化反応の温度は通常0〜200℃、好ましくは50〜170℃であり、該反応の圧力は通常0.01〜10MPa、好ましくは0.1〜2MPaである。該反応の溶媒は必要に応じて用いることができ、例えば、アセトニトリルやベンゾニトリルのようなニトリル溶媒、酢酸やプロピオン酸のようなカルボン酸溶媒等を用いることができる。
【0036】
酸化反応後の後処理操作については、特に限定されないが、例えば、反応混合物を濾過して触媒を分離した後、水洗し、次いで蒸留する方法等が挙げられる。反応混合物中に原料のシクロアルカンに対応するシクロアルキルヒドロペルオキシドが含まれる場合、アルカリ処理や還元処理等により、目的とするシクロアルカノールやシクロアルカノンに変換することができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。尚、反応液中のシクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール及びシクロヘキシルヒドロペルオキシドの分析はガスクロマトグラフィーにより行い、この分析結果から、シクロヘキサンの転化率、並びにシクロヘキサノン、シクロヘキサノール及びシクロヘキシルヒドロペルオキシドの各選択率を算出した。
【0038】
また、本実施例中、メソポーラス構造を有するシリカ(結晶)の細孔分布は、液体窒素温度(77K)での容量法吸着等温線のBJH解析より求めた。その測定方法は以下のとおりである。
【0039】
ガラス製試料管(容積4ml、管内径6mm)を日本ベル社製BELPREP−vacIIにセットして真空排気した後、風袋計量し、続いて粉体試料約0.05gを試料管に充填し、再度BELPREP−vacIIにて試料管を150℃3時間真空前処理した後、再度試料管を計量し、風袋重量を差し引くことで真の粉体試料量を求めた。次に真空前処理後の試料管を日本ベル社製BELPREP−miniにセットし、各試料管に固有の容積(死容積)を測定し、続いて窒素の飽和蒸気圧を測定した後、吸着平衡圧の測定を行った。これらの操作を吸着平衡圧力と初圧の比である相対圧が0.99まで繰り返し、吸着等温線を得た。細孔分布は、シリンダー状細孔を仮定した上で窒素ガスの毛管凝縮を利用するBarrett−Joyner−Halenda(BJH)の理論から細孔径と細孔容積を算出し、細孔径に対する細孔容積の変化量をプロットして導出した。
【0040】
実施例1
(A)メソポーラス構造を有するシリカの調製
ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(和光純薬株式会社製)17.59g、水327.11g、エタノール(和光純薬株式会社製)106.94g、テトラエトキシシラン(オルトケイ酸エチル、和光純薬株式会社製)33.76g、25%アンモニア水(和光純薬株式会社製)119.34g、及び酢酸コバルト(II)四水和物(和光純薬株式会社製)0.0418gを1Lビーカーに入れ、室温で2時間攪拌した後、ろ過し、ろ残を水で洗浄した後、100℃で12時間乾燥して、結晶Aを得た。
【0041】
(B)アミンによる接触処理、及び焼成
実施例1(A)で得られた結晶A4.27g、ジメチルデシルアミン(東京化成工業株式会社製)及び超純水87.82gを300mlビーカーに入れ、25℃で50分間攪拌した。その後、200mlオートクレーブに移し、120℃で4日間静置した。得られた混合物をろ過し、ろ残を水で洗浄した後、100℃で12時間乾燥した。その後、空気流通下、550℃で7時間焼成して結晶Bを得た。この結晶Bについて、上述した方法により細孔分布を求めたところ、6〜8nmの細孔の存在を示すピークが観測された。その細孔分布を図1に示す。尚、図1の縦軸は細孔容積の変化量(dVp/ddp)を、横軸は細孔径(dp[nm])を表す。
【0042】
(C)トリメトキシプロピルシランによる接触処理
実施例1(B)で得られた結晶B1.0g及びトリメトキシプロピルシラン(東京化成工業株式会社製)10.0gをフラスコに入れ、窒素雰囲気下、90℃で7.5時間攪拌した。得られた混合物を室温まで冷却した後、エタノールを加えて攪拌し、次いでろ過した。ろ残をエタノールで洗浄した後、0.1Torr(13Pa)にて40℃で1時間乾燥し、さらに100℃で乾燥してメソポーラスシリカXを得た。
【0043】
(D)反応評価
1Lオートクレーブに、シクロヘキサン278g(3.3モル)及び実施例1(C)で得られたメソポーラスシリカX1.0gを入れ、室温にて系内を窒素で0.93MPaまで昇圧した後、140℃に昇温し、次いで、酸素濃度15容量%のガスの流通下、7時間反応を行った。
【0044】
反応開始から3時間の時点で、シクロヘキサンの転化率は6.2%であり、シクロヘキサノンの選択率は30.6%、シクロヘキサノールの選択率は44.3%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド選択率は8.7%であった(合計選択率83.6%)。また、反応開始から5時間の時点で、シクロヘキサンの転化率は8.5%であり、シクロヘキサノンの選択率は34.3%、シクロヘキサノールの選択率は40.1%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド選択率は7.6%であった(合計選択率82.0%)。また、反応開始から7時間の時点(終了時)で、シクロヘキサンの転化率は10.7%であり、シクロヘキサノンの選択率は37.4%、シクロヘキサノールの選択率は36.7%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド選択率は6.2%であった(合計選択率80.3%)。
【0045】
比較例1
(E)メソポーラス構造を有するシリカの調製
ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(和光純薬株式会社製)17.59g、水327.11g、エタノール(和光純薬株式会社製)106.94g、テトラエトキシシラン(オルトケイ酸エチル、和光純薬株式会社製)33.76g、25%アンモニア水(和光純薬株式会社製)119.34g、及び酢酸コバルト(II)四水和物(和光純薬株式会社製)0.0418gを1Lビーカーに入れ、室温で2時間攪拌した後、ろ過し、ろ残を水で洗浄した後、100℃で12時間乾燥し、次いで、空気流通下、550℃で7時間焼成して結晶Eを得た。この結晶Eについて、上述した方法により細孔分布を求めたところ、2〜3nmの細孔の存在を示すピークが観測された。その細孔分布を図2に示す。尚、図2の縦軸は細孔容積の変化量(dVp/ddp)を、横軸は細孔径(dp[nm])を表す。
【0046】
(F)トリメトキシプロピルシランによる接触処理
比較例1(E)で得られた結晶E1.0g及びトリメトキシプロピルシラン(東京化成工業株式会社製)10.0gをフラスコに入れ、窒素雰囲気下、90℃で7.5時間攪拌した。得られた混合物を室温まで冷却した後、エタノールを加えて攪拌し、次いでろ過した。ろ残をエタノールで洗浄した後、0.1Torr(13Pa)にて40℃で1時間乾燥し、さらに100℃で乾燥してメソポーラスシリカYを得た。
【0047】
(G)反応評価
実施例1(C)で得られたメソポーラスシリカXに代えて、比較例1(F)で得られたメソポーラスシリカYを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0048】
反応開始から3時間の時点で、シクロヘキサンの転化率は6.0%であり、シクロヘキサノンの選択率は31.8%、シクロヘキサノールの選択率は41.6%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド選択率は8.7%であった(合計選択率82.1%)。また、反応開始から5時間の時点で、シクロヘキサンの転化率は7.6%であり、シクロヘキサノンの選択率は35.1%、シクロヘキサノールの選択率は40.9%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド選択率は4.1%であった(合計選択率80.1%)。また、反応開始から7時間の時点(終了時)で、シクロヘキサンの転化率は10.0%であり、シクロヘキサノンの選択率は37.2%、シクロヘキサノールの選択率は36.3%、シクロヘキシルヒドロペルオキシド選択率は4.2%であった(合計選択率77.7%)。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1(C)で得られたメソポーラスシリカXの細孔分布である。
【図2】比較例1(F)で得られたメソポーラスシリカYの細孔分布である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の遷移金属を含有し、かつアミン及び/又はアンモニアで接触処理されているメソポーラスシリカの存在下に、シクロアルカンを酸素で酸化することを特徴とするシクロアルカノール及び/又はシクロアルカノンの製造方法。
【請求項2】
前記金属を含む化合物、ケイ素化合物、構造規定剤及び水を混合して得られた結晶をアミン及び/又はアンモニアで接触処理した後、焼成することによりメソポーラスシリカを調製し、このメソポーラスシリカの存在下に、シクロアルカンを酸素で酸化する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記焼成後、さらに式(I)
Si(R1)x(R2)4-x (I)
(式中、R1はアルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子を表し、R2はアルコキシ基、アルキル基、アリル基、アリール基又はアラルキル基を表し、xは1〜3の数を表す。)
で示される有機ケイ素化合物で接触処理することによりメソポーラスシリカを調製し、このメソポーラスシリカの存在下に、シクロアルカンを酸素で酸化する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記メソポーラスシリカがMCM−41型である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記金属が、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ルテニウム及びパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記金属がコバルトである請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
シクロアルカンがシクロヘキサンである請求項1〜6のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−227653(P2009−227653A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238226(P2008−238226)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】