説明

シクロオクト−(エン−)イル誘導体の香料としての使用

本発明は、式(I)で表される置換シクロオクテン類、式中XおよびRは明細書に定義されている、に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田園の(agrestic)、自然の、および花の、緑の、木の香りの調子(odour note)を有する置換シクロオクテン類、それらの製造、およびそれらを含む香料組成物に関する。
【0002】
置換シクロオクテン類は文献に記載されており、例えば、独国特許出願公開第19814913A1号は、収穫されたばかりの新鮮なポテトの匂いに類似すると表現される香りの調子を有する、シクロオクト−4−エンアルデヒド(1)等のシクロオクテンアルデヒド類を開示している。
【化1】

【0003】
シクロオクト−4−エンアルデヒド(1)により与えられる香りの調子は、香料産業において好ましいものであるが、新しい化合物に対しては常に、香りの調子を増強または改良し、あるいは新しい香りの調子を与えるという要求が伴う。
【0004】
驚くべきことに、我々は構造が(1)に類似する一置換シクロオクテン類を発見したが、それらは田園のおよびツヨン(thujone)様の、ならびに花の、緑の、木の香りの調子として記載される、性質の異なる香りの調子を有する。
【0005】
第1の側面において、本発明は式Iで表される化合物の香料としての使用に関する。
【化2】

式中、Xはカルボニルまたは−(CHOH)−であり;および
Rはメチルもしくはエチル、またはi−プロピル、n−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、sec−ペンチル、およびtert−ペンチル等の直線状もしくは分枝状のCからCのアルキル;あるいは
Rはビニルまたはプロペン−1−イル、プロペン−2−イル、アリル、ブト−1−エン−1−イル、ブト−2−エン−1−イル、ブト−3−エン−1−イル、ペンテニル等の直線状もしくは分枝状のCからCのアルケニルであり;および
点線は場合によって1つの二重結合を示す。
【0006】
本発明による化合物は、1つまたは2つ以上のキラル中心を含有していてもよく、立体異性体の混合物として存在していても、あるいは異性体の純粋な形態として分割されていてもよい。立体異性体の分割はこれらの化合物の製造および精製を複雑にするので、これらの化合物は、単に経済的な理由から混合物として使用するのが好ましい。しかし、個々の立体異性体の調製を所望するのであれば、当該技術分野において知られている方法、例えば分取HPLCおよびGC、または立体選択的合成によって行うことができる。
【0007】
式Iで表される化合物は、好ましくは1−シクロオクト−3−エニルエタノン、1−シクロオクト−3−エニルプロパン−1−オン、1−シクロオクト−3−エニル−2−メチルプロパン−1−オン、1−シクロオクト−3−エニルプロパン−1−オール、1−シクロオクト−4−エニルエタノン、1−シクロオクト−2−エニルエタノン、1−シクロオクト−2−エニルエタノール、1−シクロオクト−1−エニルエタノン、1−シクロオクチルプロパノン、1−シクロオクチル−2−メチルプロパノン、および1−シクロオクチル−2−メチルプロパノールである。
【0008】
特に好ましくは、C−3の位置に二重結合を有する式Iで表される化合物、すなわち、1−シクロオクト−3−エニルエタノン、1−シクロオクト−3−エニルプロパン−1−オン、1−シクロオクト−3−エニル−2−メチルプロパン−1−オン、および1−シクロオクト−3−エニルプロパン−1−オール等のC−3とC−4の間の点線を伴う結合が二重結合であり、C−1とC−2、C−2とC−3、およびC−4とC−5の間の結合がそれぞれ単結合である、式Iで表される化合物である。
【0009】
式Iで表される化合物に関して用いられる、「場合によって1つの二重結合」を有する化合物は、C−1とC−2の間の点線を伴う結合が二重結合を表し、かつC−2とC−3、C−3とC−4およびC−4とC−5の間の結合がそれぞれ単結合を表すか、C−2とC−3の間の点線を伴う結合が二重結合を表し、かつC−1とC−2、C−3とC−4およびC−4とC−5の間の結合がそれぞれ単結合を表すか、C−3とC−4の間の点線を伴う結合が二重結合を表し、かつC−1とC−2、C−2とC−3およびC−4とC−5の間の結合がそれぞれ単結合を表すか、C−4とC−5の間の点線を伴う結合が二重結合を表し、かつC−1とC−2、C−2とC−3およびC−3とC−4の間の結合がそれぞれ単結合を表すか、C−1とC−2、C−2とC−3、C−3とC−4およびC−4とC−5の間の結合がそれぞれ単結合を表す、式Iで表される化合物である。
【0010】
本発明による化合物は単独で用いても、エッセンシャルオイル、アルコール、アルデヒドおよびケトン、エーテルおよびアセタール、エステルおよびラクトン、大環状化合物および複素環式化合物等の流通している広範囲の天然物質および合成分子から選ばれる既知の香料分子と組み合わせて、および/または香料組成物において香料とともに便宜上用いる1種または2種以上の成分または添加剤、例えば当該技術分野で一般に用いられる担体材料および他の補助剤との混合物で用いてもよい。
【0011】
以下のリストは、本発明の化合物と組合せることができる既知の香料分子の例を含有する。天然物質:ツリーモス(tree moss)アブソリュート、メボウキ油(basil oil)、トロピカルフルーツオイル(ベルガモット油、マンダリン油等)、mastixアブソリュート、マートル(myrtle)油、パルマローザ油、パッチュリ油、プチグレン油、ワームウッド油、ラベンダー油、ローズ油、ジャスミン油、イランイラン油。
アルコール:ファルネソール、ゲラニオール、リナロール、ネロール、フェニルエチルアルコール、ロジノール、桂皮アルコール、(Z)−ヘキシ−3−エン−1−オール((Z)-hex-3-en-1-ol)、メントール、α−テルピネオール。
アルデヒド:シトラール、α−ヘキシルシンナムアルデヒド、リリヤル(Lilial)、メチリオノン(methylionone)、ベルベノン、ヌートカトン(nootkatone)、ゲラニルアセトン(geranylacetone)。
エステル:アリルフェノキシアセテート、ベンジルサリシレート、シンナミルプロピオネート、シトロネリルアセテート、デシルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルブチレート、エチルアセトアセテート、シス−3−ヘキセニルイソブチレート、シス−3−ヘキセニルサリシレート、リナリルアセテート、メチルジヒドロジャスモネート(methyl dihydrojasmonate)、スチラリルプロピオネート、ベチベリルアセテート、ベンジルアセテート、ゲラニルアセテート。
ラクトン:γ−ウンデカラクトン、δ−デカラクトン、ペンタデカノライド、12−オキサヘキサデカノライド。
アセタール:ビリディン(フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール)。
香水にしばしば用いる他の成分:インドール、p−メンタ−8−チオール−3−オン、メチルオイゲノール、オイゲノール、アネトール。
【0012】
式Iで表される単一の化合物は、それ自身の特性において香りの調子を増強または改良するのに対し、二重結合による異性体の混合物は香りの拡散を一層増強する。したがって、本発明の別の側面は、A)式Icで表される化合物、およびB)式Iaで表される化合物、式Ibで表される化合物、および式Idで表される化合物から選ばれる少なくとも1つ化合物の混合物を含有する香料組成物に関する。ここで、XおよびRは上記の定義と同義であり、R=R’=R’’=R’’’およびX=X’=X’’=X’’’である。
【化3】

【0013】
特に好ましくは、式Iaで表される化合物、式Icで表される化合物、および式Idで表される化合物を含有する混合物である。好ましい混合物は、すべての二重結合異性体の合計質量、即ち、式Ia+Ib+Ic+Id=100質量%で表される化合物の量に基づいて少なくとも50質量%の式Icで表される化合物を含有する。
【0014】
本発明の化合物は、広範囲の香料製品(fragrance applications)、例えば上質および機能性香料の分野において使用することができる。該化合物は特別の用途ならびに他の香料成分の性質および量に応じて広い範囲の量を使用することができ、例えばその用途において約0.001から約20質量%で使用することができる。ある態様においては、化合物は生地の軟化剤に約0.001から0.05質量%で使用することができる。別の態様においては、本発明の化合物はアルコール溶液中に約0.1から20質量%、より好ましくは約0.1から5質量%で使用することができる。しかし、熟練した調香士はより低いまたはより高い濃度によっても効果を達成することができ、あるいは新しい調和を創造することができるため、これらの値は本発明を限定するものと考えるべきではない。
【0015】
本発明の化合物は、単に本発明の化合物を直接混合することによって、または香料製品に使用する化合物を含有する香料組成物によって香料製品に用いることができる。また、それらは包括材料、例えばポリマー、カプセル、マイクロカプセルおよびナノカプセル、リポソーム、前駆体、塗膜形成物、吸収剤によって、前段階において、例えば炭素またはゼオライト、環状オリゴ糖およびそれらの混合物を用いて包括することにより、包括された形態で加え、その後、製品と混合することができる。
【0016】
したがって、本発明はまた、式Iで表される化合物を直接混合することにより、または式Iで表される化合物を含有する香料組成物を混合することにより、香料成分として式Iで表される化合物を組み込むこと、それらは次いで従来の技術および方法を用いて香料製品に混合してもよい、を含む香料製品の製造方法を提供する。
【0017】
本明細書で用いる「香料製品」は、上質の香料、例えば香水およびオーデトワレ(Eau de Toilette);家庭用品、例えば食器洗い機用の洗剤、表面洗浄剤(surface cleaner);洗濯用品、例えば柔軟剤、漂白剤、洗剤;ボディケア用品、例えばシャンプー、シャワー用ジェル;および化粧品、例えば消臭芳香剤、バニシングクリーム等の着臭剤を含む任意の製品を意味する。この製品リストは例示であって、これに限定されるものではない。
【0018】
いくつかの化合物は文献に記載されているが、他は記載されておらず新規である。したがって、本発明の他の側面は、式Iで表される化合物を提供することである。
【化4】

式中、Xはカルボニルまたは−(CHOH)−であり;および
Rはメチルもしくはエチル、またはi−プロピル、n−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、sec−ペンチル、およびtert−ペンチル等の直線状もしくは分枝状のCからCのアルキル;あるいは
Rはビニルまたはプロペン−1−イル、プロペン−2−イル、アリル、ブト−1−エン−1−イル、ブト−2−エン−1−イル、ブト−3−エン−1−イル、ペンテニル等の直線状もしくは分枝状のCからCのアルケニルであり;および
点線は場合によって1つの二重結合を示し;
ただし、
Xがカルボニルであり、かつC−1とC−2、C−2とC−3、およびC−3とC−4の間の点線を伴う結合の1つが二重結合であるとき、Rはメチルまたはエチルではなく;
Xがカルボニルであり、かつC−2とC−3の間の点線を伴う結合が二重結合であるとき、Rはi−プロピルではなく;
Xがカルボニルであり、かつC−3とC−4の間の点線を伴う結合が二重結合であるとき、Rはメチルまたはエチルではなく;
Xがカルボニルであり、かつC−1とC−2、C−2とC−3、C−3とC−4およびC−4とC−5の間の点線を伴うすべての結合がそれぞれ単結合を示すとき、Rはメチルまたはエチルではなく;
Xが−(CHOH)−のとき、Rはメチルではなく;および
Xが−(CHOH)−であり、かつC−2とC−3の間の点線を伴う結合が二重結合であるとき、Rはエチルではない。
【0019】
C−3とC−4の間の点線を伴う結合が二重結合である式Iで表される化合物、即ち、置換シクロオクト−3−エン類は、オレフィンと該当する置換されたカルボン酸との反応により調製することができる。この反応は当業者によく知られており、例えばSchellhammer(Methoden der Organischen Chemie (Houben-Weyl), 1973, Band VII/2a, 447〜460頁)により記載され、参照文献の形態により本明細書に組み込まれる。該当する置換されたカルボン酸を用いたシクロオクテンのアシル化から出発し、スキーム1に示すように、得られたケトン(2)を還元することにより、さらに式Iで表される化合物を得ることができる。
【0020】
スキーム1:
【化5】

【0021】
C−2とC−3の間の点線を伴う結合が二重結合である式Iで表される化合物、即ち、置換シクロオクト−2−エン類は、シクロオクテンを選択的にブロム化し、得られた3−ブロモ−シクロオクテンに、該当するアルデヒドR−CHOを、当業者に知られているグリニャール型の反応条件下で付加することにより調製することができる。得られたアルコール(3)を、スキーム2に示すように酸化することにより、さらに式Iで表される化合物を得ることができる。
【0022】
スキーム2:
【化6】

【0023】
C−4とC−5の間の点線を伴う結合が二重結合である式Iで表される化合物、即ち、
置換シクロオクト−4−エン類は、シクロオクタ−1,5−ジエンから出発し、酸性条件下で選択的にブロム化し、得られた5−ブロモ−シクロオクテンに、該当するアルデヒドR−CHOをグリニャール条件下で付加し、得られたアルコールを酸化することによりさらに式Iで表される化合物を得ることができる。
【0024】
C−1とC−2の間の点線を伴う結合が二重結合である式Iで表される化合物、即ち、
置換シクロオクト−1−エン類は、アルカリ条件下での該当するアルキンとシクロオクタノンとの反応、それに続く酸性条件下でのRupe転位により調製することができる。
【0025】
また、式Iで表される化合物の二重結合の異性体の混合物、即ち、置換シクロオクト−1−エン類、3−エン類および4−エン類の混合物はシクロオクテンにアルカン酸クロライド(alkanoic acid chloride)を付加し、次いで得られたクロロ−シクロオクチルアルカノンを当業者に知られている条件下で脱塩化水素することにより調製することができる。
さらに詳細な反応条件を例において記載する。
以下、一連の限定的でない例により本発明を具体的に説明する。
【0026】
例1:1−シクロオクト−3−エニルエタノン
シクロオクテン(300g,2.73mol)に無水酢酸(556g,5.45mol)および塩化亜鉛(30g,0.22mol)を加えた。反応混合物を30分以内に90〜95℃に加熱し、その温度で7.5時間撹拌し、60℃に冷却し、注意しながら10分以内に水(400ml)で処理した。得られた混合物を100℃で3時間加熱し、25℃に冷却し、ヘキサン(3×300ml)で抽出した。有機相を併せて飽和NaCl水溶液(800ml)、飽和NaHCO水溶液(800ml)、飽和NaCl水溶液(400ml)で洗浄し、乾燥(NaSO)した。溶媒を蒸発させて375gの粗生成物を得、短経路(short-path)Vigreuxカラムにより真空下で蒸留した。40〜50℃/100mbarで未反応のシクロオクテン(65g,21.7%)を回収した後、110℃/24mbarの蒸留画分(144g)を集め、ミクロ蒸留カラム(20×1.5cm、3×3mmのロールドワイヤーネットを充填した)を用いて再蒸留し、110gの1−シクロオクト−3−エニルエタノン(反応したシクロオクテンに基づいて34%、109℃/20mbar)を無色オイルとして得た。
【0027】
【表1】

香気の説明:田園の、ヨモギ(armoise)、ニガヨモギ(wormwood)、ツヨン、野生の。
【0028】
例2:1−シクロオクト−3−エニルプロパン−1−オン
シクロオクテン(150g,1.36mol)、無水プロピオン酸(354g,2.72mol)および臭化亜鉛(30.6g,0.14mol)から例1の実験方法により収率27%で得た。沸点60℃/80mbar。
【0029】
【表2】

香気の説明:果物のような、バナナ、マンジュギク。
【0030】
例3:1−シクロオクト−3−エニル−2−メチルプロパン−1−オン
シクロオクテン(150g,1.36mol)、無水イソブチル酸(430.3g,2.72mol)および臭化亜鉛(30.6g,0.14mol)から例1の合成方法により収率33%で得た。沸点85℃/80mbar。
【0031】
【表3】

香気の説明:果物のような、緑の。
【0032】
例4:1−シクロオクト−3−エニルプロパン−1−オール
1−シクロオクト−3−エニルプロパン−1−オン(84.0g,0.5mol)を、エタノール(330ml)中に水素化ホウ素ナトリウム(11.9g,0.3mol)を含有する溶液に0℃(氷浴)で徐々に加え、室温で4時間撹拌を続けた。反応混合物を氷冷した2NのHCl(500ml)中に注ぎ、MTBE(2×200ml)で抽出した。食塩水(3×200ml)で洗浄した後、乾燥(MgSO)し、溶媒を蒸発させ、黄色がかった油状残渣(86.6g)を20cmのWidmerカラムで蒸留(66〜80℃/0.7〜0.8mbar)し、69.2gの1−シクロオクト−3−エニルプロパン−1−オール(無色オイル、収率68%)を得た。このものは、90%<が1−シクロオクト−3−エニルプロパン−1−オールの2つのジアステレオマーからなる1:1のラセミ体混合物により構成されていた。分析試料をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/MTBE 3:1)により精製した。
【0033】
【表4】

香気の説明:キンゴウカン、ミモザ、緑の、コケ、野生の、森、脂肪。
【0034】
例5:1−シクロオクト−4−エニルエタノン
ジエチルエーテル中に5−ブロモ−シクロオクテン(5g,26mmol;1,5−シクロオクタジエンをAcOH中でHBrで処理することにより調製される)を含有する溶液をマグネシウム(0.7g,29mmol,1.1当量)に加えた。得られた溶液を5℃に冷却し、ジエチルエーテル(10ml)中にアセトアルデヒド(5ml,89ミリモル、3.4当量)を含有する溶液を滴下して処理した。得られた混合物を20℃で3時間撹拌し、2MのHClで処理し、ジエチルエーテルで抽出した。有機相をNaHCO、NHClおよびNaCl溶液で順次洗浄し、乾燥(NaSO)し、溶媒を真空下で蒸発させた。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/EtO 10:1)により精製し、1.2gの1−シクロオクト−4−エニルエタノンを得た(30%)。
【0035】
【表5】

香気の説明:青葉、クロベ(thuja)油、ヨモギ、果物のような。
【0036】
例6:1−シクロオクト−2−エニルエタノールおよび1−シクロオクト−2−エニルエタノン
−50℃で、ジエチルエーテル(100ml)中に3−ブロモ−シクロオクテン(4.2g,22mmol;シクロオクテンとN−ブロモスクシンイミドとの反応により調製される)およびチタン(IV)イソプロポキシド(7.2ml,24mmol,1.1当量)を含有する溶液を2Mのイソプロピルマグネシウムクロライドを含むジエチルエーテル溶液(49mmol,2.2当量)で処理した。得られた混合物を−50℃で1.5時間撹拌し、アセトアルデヒド(1ml,18mmol,0.8当量)で処理し、−40℃で1時間撹拌し、2MのHCl水溶液で処理した。MTBE(2×100ml)で抽出した後、有機相を水(2×200ml)およびNaCl水溶液(200ml)で洗浄、乾燥(MgSO)し、粗生成物(4.4g)をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/MTBE 6:1)により精製し、0.7gの1−シクロオクト−2−エニルエタノールを得た(26%)。
【0037】
【表6】

香気の説明:緑の、土の、果物のような、新鮮な。
【0038】
0℃で、ジクロロメタン(20ml)中に1−シクロオクト−2−エニルエタノール(1.4g,9mmol)を含有する溶液をピリジニウムクロロクロメート(2.35g,11mmol)を含有するジクロロメタン(30ml)中に加えた。得られた混合物を20℃で3.5時間撹拌し、Celite(登録商標)を通してろ過した。ろ液を濃縮し、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/EtO 6:1)により精製し、0.7gの1−シクロオクト−2−エニルエタノンを得た(55%)。
【0039】
【表7】

香気の説明:緑の、クロベ油、ニガヨモギ、果物のような。
【0040】
例7:1−シクロオクト−2−エニルエタノン
35℃で、THF(500ml)中にリチウムアセチリド−エチレンジアミン(50g,0.49mol)を含有する溶液をTHF(100ml)中にシクロオクタノン(51.4g,0.41mol)を含有する溶液により徐々に処理(反応温度≦35℃)した。得られた混合物を20℃で4時間、45℃で15時間撹拌し、5℃に冷却し、飽和NHCl水溶液(250ml)で処理し、3MのHCl水溶液で洗浄した。EtOで抽出した後、有機相を水、飽和NaCO水溶液で洗浄し、乾燥(NaSO)し、濃縮して1−エチニルシクロオクタノール(66.6g)を得た。粗製1−エチニルシクロオクタノール(65g)を含むギ酸(130ml)溶液を80℃で2.5時間加熱した。得られた混合物をEtO中に移し、水、5MのNaOH、水、飽和NHCl水溶液で洗浄し、乾燥(NaSO)し、濃縮して56gの粗生成物を得た。画分(8g)をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/EtO 95:5→9:1)により精製し、4.1gの1−シクロオクト−2−エニルエタノンを得た。
【0041】
MS (EI): 152 (43), 137 (31), 123 (15), 109 (48), 81 (21), 67 (67), 55 (23), 43 (100).
香気の説明:果物のような、甘い、アニス、ハッカの、テルピネオール、樟脳の。
【0042】
例8:1−シクロオクチルプロパノン
エタノール(20ml)中に1−シクロオクト−3−エニルプロパン−1−オン(1.5g、9mmol)を含有する溶液を10%パラジウムを担持するチャコール(0.09g)により室温で処理し、得られた懸濁液を20barsで40分間水素化した。Celite(登録商標)を通してろ過した後、真空下で濃縮し、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/EtO 19:1)により精製し、0.78gの1−シクロオクチルプロパノンを得た(52%)。
【0043】
【表8】

香気の説明:果物のような、緑の。
【0044】
例9:1−シクロオクチルエタノン
1−シクロオクト−3−エニルエタノンから例8の合成方法により49%の収率で得た。沸点154℃/120mbar。
【0045】
【表9】

香気の説明:田園の、樟脳の、ヨモギ、ツヨン様、土の、木の。
【0046】
例10:1−シクロオクチル−2−メチルプロパノン
エタノール(50ml)中に1−シクロオクト−3−エニル−2−メチルプロパノン(5.0g,28mmol)を含有する溶液を10%パラジウムを担持するチャコール(0.2g)により室温で処理し、得られた懸濁液を20barsで60分間水素化した。Celite(登録商標)を通してろ過した後、真空下で濃縮し、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/EtO 19:1)により精製し、0.9gの1−シクロオクチル−2−メチルプロパノンを得た(43%)。
【0047】
【表10】

香気の説明:花の、果物のような、芳香性の(balsamic)。
【0048】
例11:1−シクロオクチル−2−メチルプロパノール
メタノール(30ml)中に水素化ホウ素ナトリウム(0.29g,8mmol)を含有する懸濁液を、メタノール(20ml)中に1−シクロオクチル−2−メチルプロパノン(2.0g,11mmol)を含有する溶液で室温にて処理した。得られた混合物を20℃で20時間撹拌し、2MのHCl水溶液(50ml)中に注ぎ、MTBE(2×80ml)で抽出した。有機相を水(100ml)、飽和NaCl水溶液(100ml)で洗浄し、乾燥(MgSO)した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/EtO 7:1)により精製し、1.7gの1−シクロオクチル−2−メチルプロパノールを得た(81%)。
【0049】
【表11】

香気の説明:花の、木の、バラのような、果物のような。
【0050】
例12:石鹸用の香料組成物
【表12】

【表13】

*香料成分インデックス2002. Givaudan S. A.
【0051】
A)1−シクロオクト−3−エニルエタノンを香料組成物に添加することにより、全体の香気の拡散を顕著に増大させ、石鹸としての優れた基剤を提供する。1−シクロオクト−3−エニルエタノンは、オゾン、キュウリの基調を有するヨモギ油の範囲に、洗練された田園の調子を加える。それはまた、より多くの木の調和を与える。
【0052】
B)1−シクロオクト−3−エニルエタノン、1−シクロオクト−3−エニルエタノンおよび1−シクロオクト−3−エニルエタノンを約60:30:10の重量部の比により構成した混合物を香料組成物に添加することにより、同様の強さの、ヨモギ油/ニガヨモギの範囲の、より甘くなくかつより新鮮な田園の調子を与え、例Aに比べ拡散率を高めた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

式中、Xはカルボニルまたは−(CHOH)−であり;および
Rはメチルもしくはエチル、または直線状もしくは分枝状のCからCのアルキル;あるいは
Rはビニルまたは直線状もしくは分枝状のCからCのアルケニルであり;および
点線は場合によって1つの二重結合を示す、
で表される化合物の香料としての使用。
【請求項2】
1−シクロオクト−3−エニルエタノン、1−シクロオクト−3−エニルプロパン−1−オン、1−シクロオクト−3−エニル−2−メチルプロパン−1−オン、1−シクロオクト−3−エニルプロパン−1−オール、1−シクロオクト−4−エニルエタノン、1−シクロオクト−2−エニルエタノン、1−シクロオクト−2−エニルエタノール、1−シクロオクト−1−エニルエタノン、1−シクロオクチルプロパノン、1−シクロオクチルエタノネン、1−シクロオクチル−2−メチルプロパノン、および1−シクロオクチル−2−メチルプロパノールから選ばれた請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項3】
香料製品における、請求項1または2に記載の化合物の使用。
【請求項4】
請求項1または2に記載の化合物、あるいはそれらの混合物を含有する、香料製品。
【請求項5】
香料製品が香水、家庭用品、洗濯用品、ボディケア用品または化粧品である、請求項4に記載の香料製品。
【請求項6】
A)式Icで表される化合物;および
B)式Ia、IbおよびIdで表される化合物から選ばれた少なくとも1つの化合物
【化2】

式中、Xはカルボニルまたは−(CHOH)−であり;および
Rはメチルもしくはエチル、または直線状もしくは分枝状のCからCのアルキル;あるいは
Rはビニルまたは直線状もしくは分枝状のCからCのアルケニルであり;かつ
R=R’=R’’=R’’’およびX=X’=X’’=X’’’である、
の混合物を含む香料組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の式Iで表される化合物を組み込む工程を含む、香料製品の製造方法。
【請求項8】
式I
【化3】

式中、Xはカルボニルまたは−(CHOH)−であり;および
Rはメチルもしくはエチル、または直線状もしくは分枝状のCからCのアルキル;あるいは
Rはビニルまたは直線状もしくは分枝状のCからCのアルケニルであり;および
点線は場合によって1つの二重結合を示し;
ただし、
Xがカルボニルであり、かつC−1とC−2、C−2とC−3、およびC−3とC−4の間の点線を伴う結合の1つが二重結合であるとき、Rはメチルまたはエチルではなく;
Xがカルボニルであり、かつC−2とC−3の間の点線を伴う結合が二重結合であるとき、Rはi−プロピルではなく;
Xがカルボニルであり、かつC−3とC−4の間の点線を伴う結合が二重結合であるとき、Rはメチルまたはエチルではなく;
Xがカルボニルであり、かつC−1とC−2、C−2とC−3、C−3とC−4およびC−4とC−5の間の点線を伴うすべての結合がそれぞれ単結合を示すとき、Rはメチルまたはエチルではなく;
Xが−(CHOH)−のとき、Rはメチルではなく;および
Xが−(CHOH)−であり、かつC−2とC−3の間の点線を伴う結合が二重結合であるとき、Rはエチルではない、
で表される化合物。
【請求項9】
1−シクロオクト−3−エニル−2−メチルプロパン−1−オン、1−シクロオクト−3−エニルプロパン−1−オール、1−シクロオクト−4−エニルエタノン、1−シクロオクチル−2−メチルプロパノン、および1−シクロオクチル−2−メチルプロパノールから選ばれた化合物。

【公表番号】特表2006−512470(P2006−512470A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501260(P2005−501260)
【出願日】平成15年10月8日(2003.10.8)
【国際出願番号】PCT/CH2003/000660
【国際公開番号】WO2004/035017
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】