説明

シクロドデカトリエンの製造方法

【課題】触媒系および溶剤の存在下でブタジエンを三量化することにより、連続的または不連続的な方法でシクロドデカトリエンを製造する方法を提供する。
【解決手段】 − 元素の周期律表の第5主族の元素を少なくとも1種含有する化合物を触媒系に添加し、
− 触媒成分を添加する前に、溶剤が一般式HO−Rの極性成分を10〜1000ppm含有し、かつ
− 反応温度はニッケル含有触媒系の場合、140℃以下であり、かつチタン含有触媒系の場合、80℃以下である。
【効果】得られる粗シクロドデカトリエンを蒸留により単離することができ、副生成物として形成されるシクロオクタジエンを同様に粗生成物から単離することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケルおよび/またはチタンを含有する触媒系の使用下での、環式ブタジエン三量体、つまりシクロドデカトリエン−(1,5,9)(CDT)の連続的および不連続的な製造方法に関する。さらに本発明は、さらにシクロオクタジエン(COD)および/またはビニルシクロヘキセン(VCH)を反応混合物から単離することができる前記の方法を含み、この場合、有利にはニッケルを含有する触媒系を使用する。本発明はさらに、CDT対C16、C20、C24−炭化水素ならびに5000までの分子量を有するポリマーの特定の比率を有する物質混合物に関する。さらに主成分CDTおよび極めて低い割合のクロロシクロドデカトリエン(Cl−CDT)を含有する物質混合物を含む。前記の物質混合物は本発明による方法により得られる。
【背景技術】
【0002】
多数の特許および刊行物は、共役ジエン、特にブタジエンの環式二量体および三量体を製造する方法もしくは試みを記載している。
【0003】
チタン触媒の存在下でのシクロドデカトリエンの形成は、たとえばJP−A−2003064011に記載されている。この場合、四塩化チタン、4,4′−ジクロロベンゾフェノン、ジメチルスルホキシドおよびジエチルアルミニウムセスキクロリドからなる触媒系の使用下に温度40℃で反応が実施された。反応の終了後、該混合物にMeONa/MeOHを添加し、かつクエン酸三ナトリウム水溶液で洗浄し、チタンおよびアルミニウムを有機反応混合物から除去する。JP−A−02083339には、同様にDMSOを使用する類似の方法が記載されている。添加剤としての高沸点DMSOの存在は、工業的な方法にとって不利である。というのも、反応混合物からふたたび該物質を除去しなくてはならないからである。
【0004】
FR−A−1393071は、触媒系としてチタンおよびアルミニウムを用いたCDTの形成を記載している。チタン触媒としてTi(OR)4が使用され、その際、Rは脂肪族C3〜C4−アルキル基であり、アルミニウム触媒としてAIR′X2またはAIR′2Xが使用され、その際、R′は、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C18−アルキル基であるか、またはC1〜C6−シクロアルキルであるか、またはC1〜C10−アラルキル基であり、かつXは、ClまたはBrである。FR1393071に記載されている反応は、18時間の極めて長時間の反応時間を必要とし、従って工業的な適用にとって不適切である。さらに該フランス国特許文献に収率は記載されていない。
【0005】
US3,499,049には、反応混合物に水を添加することにより触媒反応によるブタジエンの三量化を促進する方法が記載されている。この方法は、不所望の副生成物の量が高すぎるという欠点を有する。特に連続的な運転の場合、US3,499,049において達成されるCDTの収率は、83%もしくは62%であり、工業的な適用にとって不十分である。
【0006】
GB928,812には同様に、分子中に半極性の二重結合を有する特殊な触媒を使用してシクロドデカトリエンを製造する方法が記載されている。この場合、DMSOを用いると最良の結果が得られているが、これはすでに記載したように、反応混合物の後処理の際の欠点につながる。
【0007】
DE1140569は、ニッケル触媒系またはコバルト触媒系による1,3−ジオレフィンの二量体および三量体の形成を開示している。該触媒系はさらに、有機金属化合物ならびに電子供与体特性を有する化合物を含有している。DE1140569による方法は、無水の溶剤を使用する必要があり、これは著しい技術的コストひいては経済的な欠点と結びついている。
【0008】
ブタジエンをシクロドデカトリエン(CDT)へと大工業的に三量化する際に、均一系触媒が使用され、その際、反応は連続的な方法で1つもしくは複数の攪拌反応器中で実施される。この場合、反応混合物の一部が連続的に反応混合物から取り出される。後処理の間、未反応の出発材料を回収し、新鮮なブタジエンと一緒に改めて循環に供給する。触媒の一部は除去の際に同様に反応混合物から除去される。このことにより反応混合物中の触媒の濃度が低下し、かつ触媒濃度を一定に維持するためには新鮮な触媒を補充しなくてはならない。
【0009】
反応器から取り出される材料の後処理の前に、取り出された触媒を分解しなくてはならない。このために多数の極性溶剤が使用される。水以外に、宇部興産株式会社はたとえば水酸化アンモニウム溶液を利用している(JP−A−05−070377、JP06−25438)。種々のアルコールを同様に利用することができる(JP−A−07−625439、JP07−625396)。特別なメタノール(JP−A−07−442496)およびメタノール/HCl(DE−A−1942729)が有利に使用される。
【0010】
触媒の分解はアセトン(JP−A−04−301345)または水中の酸化カルシウムの懸濁液(NL−A−6603264)を用いて実施することもできる。宇部興産株式会社はさらに、触媒の分解のための水を使用するとCDTの収率が低下することを報告している。
【特許文献1】JP−A−2003064011
【特許文献2】JP−A−02083339
【特許文献3】FR−A−1393071
【特許文献4】US3,499,049
【特許文献5】GB928,812
【特許文献6】DE1140569
【特許文献7】JP−A−05−070377
【特許文献8】JP06−25438
【特許文献9】JP−A−07−625439
【特許文献10】JP07−625396
【特許文献11】JP−A−07−442496
【特許文献12】DE−A−1942729
【特許文献13】JP−A−04−301345
【特許文献14】NL−A−6603264
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って前記の従来技術から出発して、本発明の課題は、高い収率および少ない量の極性副生成物を有するシクロドデカトリエン(CDT)の製造方法を提供することであった。もう1つの課題は、C8−二量体の量が少ない方法を提供することであった。もう1つの課題は最終的に、特にニッケル触媒系において、高い量のCDTとならんで、シクロオクタジエンも単離することを可能にする方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの課題および明示的に挙げられていない課題ならびにその解決方法は、以下の記載ならびに実施例および特許請求の範囲の記載から明らかになる。
【0013】
意外なことに、ニッケルおよび/またはチタンの遷移金属錯体は、ブタジエンを高い選択率でCDTへと三量化することができることが判明した。この高い選択率を達成することができるために、元素の周期律表の第5主族の元素を含有する化合物および適切な溶剤系を使用することが必要である。さらに、反応温度はニッケル触媒系の場合、140℃を下回り、かつチタン触媒系の場合、80℃を下回るべきであることが判明した。
【0014】
従って本発明の対象は、請求項1から15までにより定義され、かつ以下の記載により詳細に説明される、触媒系の存在下でブタジエンからCDTを製造する方法である。本発明の対象は特に、溶剤、ニッケルおよび/またはチタンを含有する少なくとも1種の触媒系ならびに少なくとも1種の有機金属化合物の存在下でブタジエンを粗シクロドデカトリエンへと反応させることによりシクロドデカトリエンを製造する連続的および/または不連続的な方法であり、この方法は、
− 元素の周期律表の第5主族の元素を少なくとも1種含有する化合物を触媒系に添加し、
− 触媒成分を添加する前に、溶剤が一般式HO−R(式中でRは、分枝鎖状および非分枝鎖状のC1〜C18−アルキル、C1〜C18−シクロアルキル、C1〜C18−アリール、C1〜C18−アラルキルおよびHからなる群から選択されている)の極性成分を10〜1000ppm含有し、かつ
− 反応温度はニッケル含有触媒系の場合、140℃以下であり、かつチタン含有触媒系の場合、80℃以下である
ことを特徴とする。
【0015】
同様に本発明の対象は、CDTとならんで、CODおよび/またはVCHも反応混合物から単離することができる方法である。
【0016】
さらに本発明の対象は、本発明による方法により得られる物質混合物であり、該混合物は、シクロドデカトリエン対高級オリゴマー、たとえばC16、C20、C24−炭化水素(ガスクロマトグラフィー(DB1カラム)により確認)および/または5000までの分子量を有するポリマーの比率が、10:1以上、有利には15:1以上、特に有利には20:1以上であることを特徴とする。さらに有利にはシクロドデカトリエン対高級オリゴマーの比率は、60:1以下およびとりわけ有利には50:1以下である。
【0017】
同様に本発明の対象は、粗シクロドデカトリエンおよび/または精製されたシクロドデカトリエン中のクロロシクロドデカトリエンの量が、最大で100ppm、有利には0.01〜80ppm、特に有利には0.1〜70ppm、とりわけ有利には1〜50ppmおよび1〜30ppmであることを特徴とする物質混合物である。
【0018】
これらの本発明による物質混合物は、触媒としてニッケルの場合、有利にはトランス,トランス,トランス−CDTを、および触媒としてチタンの場合、有利にはシス,トランス,トランス−CDTを含有していてよい。
【0019】
以下に記載するように、本発明による方法により、ブタジエンの三量体、特にシクロドデカトリエン−(1,5,9)(CDT)を高い選択率および高い収率で製造することが可能であり、この場合、極めて短い反応時間が必要とされる。さらに本発明による方法により、ポリマーの副生成物の量を低減することができた。従って本発明による方法は、その中でCDT対高級オリゴマーおよび/またはポリマーの比率が最適化されている生成物混合物につながる。最終的に本発明による方法は、100ppmより少ないCl−CDTの割合を有する粗CDT混合物もしくは精製されたCDTを製造するために適切である。
【0020】
特定の理論に拘束されることなく、これらの意想外で有利な効果は、周期律表の第5主族の元素を含有する化合物、触媒およびROH成分の相乗作用により説明することができる。特に周期律表の第5主族の元素を含有する化合物を添加することにより、明らかにわずかなポリマーの副生成物ならびにCl−CDTの割合が形成され、その際、同時に空時収率および反応の選択率は極めて高い。
【0021】
本発明による方法の触媒系のための出発材料は、有利には市販のニッケル(II)化合物および/またはチタン(IV)化合物である。特に有利であるのは、X=F、Cl、Br、Iまたはこれらの混合物であるTiX4である。とりわけ有利であるのはアセチルアセトナトニッケルおよび四塩化チタンである。
【0022】
反応は、ニッケルもしくはチタンに基づいて0.01〜40ミリモル/l、有利には0.05〜10ミリモル/lの触媒濃度で実施される。
【0023】
有機金属化合物は元素の周期律表の第1〜第3主族の少なくとも1種の元素、有利にはアルミニウムを一緒に含有する。特に有利であるのは、エトキシジエチルアルミニウムおよびエチルアルミニウムセスキクロリドである。
【0024】
有機金属化合物対ニッケル含有触媒の比率は、ニッケル対有機金属化合物のモル比が、1:3〜1:10、有利には1:3〜1:6であるように選択する。反応温度は140℃以下、有利には60〜140℃、特に有利には60〜120℃である。
【0025】
チタン触媒による反応の場合、チタン対有機金属化合物のモル比は、1:10〜1:60、有利には1:10〜1:40である。反応温度は80℃以下、有利には20〜80℃、特に有利には30〜75℃およびとりわけ有利には30〜70℃である。
【0026】
触媒系の一部である元素の周期律表の第5主族の元素を少なくとも1種含有する化合物は、有利には1つまたは複数の窒素原子またはリン原子を有する。特に有利であるのはアンモニア、アミン、ピリジンおよびピリドンである。とりわけ有利であるのは、アンモニアならびに第1級および第2級アミン、たとえばC1〜C8−アルキルアミンおよびジアルキルアミンである。元素の周期律表の第5主族の元素を少なくとも1種含有する化合物は、純粋な物質としてまたは有機もしくは水溶液の形で添加することができる。元素の周期律表の第5主族の元素の濃度は、有利には10〜200ppm、特に有利には10〜100ppm、とりわけ有利には10〜90ppmおよび特に30〜90ppmである。
【0027】
本発明による方法において使用される溶剤は、飽和および不飽和の溶剤、無極性の非プロトン性溶剤、脂肪族および芳香族炭化水素ならびにこれらの混合物を含む。これらのための限定的ではない例は、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、オクタン、ビニルシクロヘキセン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロオクタジエン、シクロドデカン、シクロドデカトリエンおよびこれらの混合物である。溶剤は反応の終了時または反応を連続的に実施する場合には反応の間に混合物中で有利には1〜99質量%、特に有利には5〜95質量%の濃度を有する。溶剤は、一般式HO−R(式中、Rは、分枝鎖状および非分枝鎖状のC1〜C18−アルキル、C1〜C18−シクロアルキル、C1〜C18−アリール、C1〜C18−アラルキルおよびHからなる群から選択されている)の極性成分を少量含有していなくてはならず、その際、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基の炭素原子はヘテロ原子、特にO、NまたはSにより置換されていてもよいか、もしくはその際、炭素原子はヒドロキシル基、アミノ基および/またはハロゲン原子を有していてもよい。特に有利には、Rはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチルおよびHからなる群から選択されている。有利には溶剤中に極性成分が10〜500ppmおよび15〜250ppm含有されている。
【0028】
本発明による方法は、1〜20バール、有利には1〜10バールの圧力範囲で運転することができる。運転圧力は、反応温度および/または不活性ガス、有利に窒素の圧入により調整することができる。
【0029】
本発明による方法は連続的または不連続的に運転することができ、その際、個々の成分の添加は、有利には以下の順序で行う:
− まず、極性成分を含む溶剤、次いで少なくとも1種の有機金属化合物、次いで少なくとも1種のチタンおよび/またはニッケル含有化合物、次いで周期律表の第5主族からの元素を含有する少なくとも1種の化合物、および次いでブタジエン。
【0030】
− まず、極性成分を含む溶剤、次いで少なくとも1種のチタンおよび/またはニッケル含有化合物、次いで少なくとも1種の有機金属化合物、次いで周期律表の第5主族からの元素を含有する少なくとも1種の化合物、および次いでブタジエン。
【0031】
− まず、極性成分を含む溶剤、次いで周期律表の第5主族からの元素を含有する少なくとも1種の化合物、次いで少なくとも1種のチタンおよび/またはニッケル含有化合物、次いで少なくとも1種の有機金属化合物および次いでブタジエン。
【0032】
個々の成分の添加は、時間的に遅らせて、または遅らせることなく行うことができる。すべての成分を短い時間内に添加し、かつ引き続き、反応が終了するまで、後攪拌することが可能である。しかしまた、個々の成分を長時間にわたり添加し、このことによって、より短い後攪拌時間が必要とされることも可能である。両方の実施態様の組み合わせも同様に可能である。後攪拌は有利には個々の成分が添加された温度と同じ温度で行う。有利には、温度が一定して特定の値に維持されるように、ブタジエンを添加する。反応は、ガスクロマトグラフィーによる分析によって、有利に>90%、特に有利には>95%のブタジエンが、反応するまで継続する。
【0033】
攪拌の代わりに、たとえば循環ポンプまたはその他の種類の流れ混合を用いて、当業者に公知の任意の種類の混合を適用することができる。
【0034】
本発明によるCDTもしくは本発明によるCDT含有物質混合物は、有利にはラクタム、たとえばラウリンラクタムへ、ポリアミド、たとえばポリアミド12へ、またはジカルボン酸、たとえばドデカン二酸へとさらに加工するか、または香料および難燃剤において使用することができる。
【0035】
以下の例は、本発明を詳細に説明するためのものであり、本発明を何らかの形で限定するものではない。
【実施例】
【0036】
比較例1:
3段階の攪拌反応器カスケード(反応器あたりの容量10リットル)中で、ブタジエンからシクロドデカトリエンへの反応を実施する。その際、温度を二重ジャケットの冷却によって60℃に維持する。反応器1および2は、さらに外部の冷却循環流により反応熱を除去することができる。反応器3中の圧力は、バルブを介して2〜3バールに制御され、前方に接続された反応器中の圧力はわずかに高い。定常状態で反応器1への供給流は、1,3−ブタジエン1.5kg/h、ベンゼン0.5kg/h、TiCl4(ベンゼン中に溶解)0.34g/hおよびエチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)(ベンゼン中に溶解)7.9g/hからなる。反応器1中で約15ppmの含水率が調整されるよう、ブタジエンおよびベンゼンをあらかじめ分子ふるいにより乾燥させた。カスケードの最後におけるブタジエンに関する反応率は95%を上回る。CDTへの選択率は87.2%、C8−異性体への選択率は5.4%、高級オリゴマー(C16、C20およびC24)への選択率は3%およびポリブタジエンへの選択率は4.4%である。99%以上の純度を有するCDTへの蒸留による後処理の後、生成物は250ppmの塩化物(モノクロロCDTとして結合)を含有している。
【0037】
比較例2:
試験を比較例1と同様に実施したが、ただし、水でブタジエンおよびベンゼンをコンディショニングすることによって、反応器中の水分を110ppmに調整する。カスケードの最後におけるブタジエンに関する反応率は99%を上回る。CDTへの選択率は90.2%、C8−異性体への選択率は3.9%、高級オリゴマーへの選択率は2.8%およびポリブタジエンへの選択率は3.1%である。99%以上の純度を有するCDTへの蒸留による後処理の後、生成物は230ppmの塩化物(モノクロロCDTとして結合)を含有している。
【0038】
比較例3:
試験を比較例1と同様に実施したが、ただし、水不含で作業した。別個の供給により85ppmのアンモニア含有率を調整する。カスケードの最後におけるブタジエンに関する反応率は99%を上回る。CDTへの選択率は89.8%、C8−異性体への選択率は4.6%、高級オリゴマーへの選択率は2.1%およびポリブタジエンへの選択率は3.5%である。99%以上の純度を有するCDTへの蒸留による後処理の後、生成物は60ppmの塩化物(モノクロロCDTとして結合)を含有している。
【0039】
例1(本発明による):
試験を比較例1と同様に実施したが、ただし、水でブタジエンおよびベンゼンをコンディショニングすることによって、反応器1の水分を115ppmに調整する。さらに別個の供給により80ppmのアンモニア含有率を調整する。カスケードの最後におけるブタジエンに関する反応率は99%を上回る。CDTへの選択率は93.7%、C8−異性体への選択率は2.9%、高級オリゴマーへの選択率は1.1%およびポリブタジエンへの選択率は2.3%である。99%以上の純度を有するCDTへの蒸留による後処理の後、生成物は10ppm未満の塩化物(モノクロロCDTとして結合)を含有している。
【0040】
例2(本発明による):
試験を基本的に例1と同様に実施したが、反応器1中で105ppmの水分および80ppmのアンモニア含有率を調整する。しかし運転の際に攪拌機を使用しない、つまり反応器1および2中での混合は、単にポンプ循環によって行うのみである。カスケードの最後におけるブタジエンに関する反応率は98.5%を上回る。CDTへの選択率は92.2%、C8−異性体への選択率は3.1%、高級オリゴマーへの選択率は1.7%およびポリブタジエンへの選択率は3%である。99%以上の純度を有するCDTへの蒸留による後処理の後、生成物は10ppm未満の塩化物(モノクロロCDTとして結合)を含有している。
【0041】
例3(本発明による):
試験を基本的に例1と同様に実施したが、反応器1中で120ppmの水分および75ppmのアンモニア含有率を調整する。しかし溶剤としてベンゼンの代わりに、CODとVCHとからなる混合物(50:50)を使用する。カスケードの最後におけるブタジエンに関する反応率は99%を上回る。CDTへの選択率は93.3%、C8−異性体への選択率は3.2%、高級オリゴマーへの選択率は0.9%およびポリブタジエンへの選択率は2.6%である。99%以上の純度を有するCDTへの蒸留による後処理の後、生成物は約30ppmの塩化物(モノクロロCDTとして結合)を含有している。
【0042】
例4(本発明による):
試験を基本的に例1と同様に実施したが、反応器1中で110ppmの水分および85ppmのアンモニア含有率を調整する。改善された冷却により、反応器1を46℃に、および反応器2を53℃に維持する。カスケードの最後におけるブタジエンに関する反応率は98%を上回る。CDTへの選択率は94.2%、C8−異性体への選択率は2.8%、高級オリゴマーへの選択率は1.2%およびポリブタジエンへの選択率は1.8%である。99%以上の純度を有するCDTへの蒸留による後処理の後、生成物は10ppm未満の塩化物(モノクロロCDTとして結合)を含有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤、ニッケルおよび/またはチタンを含有する触媒系少なくとも1種ならびに有機金属化合物少なくとも1種の存在下でブタジエンを粗シクロドデカトリエンへと反応させることによりシクロドデカトリエンを製造する連続的および/または不連続的な方法において、
− 元素の周期律表の第5主族の元素を少なくとも1種含有する化合物を触媒系に添加し、
− 触媒成分を添加する前に、溶剤が一般式HO−R(式中でRは、分枝鎖状および非分枝鎖状のC1〜C18−アルキル、C1〜C18−シクロアルキル、C1〜C18−アリール、C1〜C18−アラルキルおよびHからなる群から選択されている)の極性成分を10〜1000ppm含有し、かつ
− 反応温度はニッケル含有触媒系の場合、最大で140℃であり、かつチタン含有触媒系の場合、最大で80℃である
ことを特徴とする、シクロドデカトリエンを製造する連続的および/または不連続的な方法。
【請求項2】
触媒系が、アセチルアセトナトニッケルを含有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
触媒系が、TiX4(X=F、Cl、Br、Iまたはこれらの混合物)を含有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
反応を、ニッケル含有触媒系の場合には60℃〜120℃で、およびチタン含有触媒系の場合には30〜75℃で実施することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
周期律表の第5主族の元素を含有する成分が、少なくとも1つの窒素原子を含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
第1級および/または第2級および/または第3級のアミンおよび/またはアンモニアおよび/またはピリジンおよび/またはピリドンを使用することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
芳香族もしくは脂肪族の溶剤またはこれらの混合物を使用することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
触媒系が反応混合物中でニッケルまたはチタン0.01〜40ミリモル/lの濃度を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
最初に極性成分を含む溶剤、次いで少なくとも1種の有機金属化合物、次いで少なくとも1種のチタンおよび/またはニッケル含有化合物、次いで周期律表の第5主族からの元素を含有する少なくとも1種の化合物、および次いでブタジエンを添加することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
最初に極性成分を含む溶剤、次いで少なくとも1種のチタンおよび/またはニッケル含有化合物、次いで少なくとも1種の有機金属化合物、次いで周期律表の第5主族からの元素を含有する少なくとも1種の化合物、および次いでブタジエンを添加することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
有機金属化合物が、有機アルミニウム化合物であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
有機金属化合物が、エトキシジエチルアルミニウムまたはエチルアルミニウムセスキクロリドであることを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
触媒系がニッケルを含有し、かつニッケルとアルミニウムとのモル比が、1:3〜1:6であることを特徴とする、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
触媒系がチタンを含有し、かつチタンとアルミニウムとのモル比が、1:10〜1:60であることを特徴とする、請求項11または12記載の方法。
【請求項15】
シクロオクタ−1,5−ジエン(COD)および/またはビニルシクロヘキセン(VCH)を単離することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
シクロドデカトリエン対高級オリゴマーの比率が、少なくとも10:1、有利には15:1より大、特に有利には20:1より大であることを特徴とする、物質混合物。
【請求項17】
粗シクロドデカトリエン中および/または精製されたシクロドデカトリエン中のクロロシクロドデカトリエンの量が、最大で100ppm、有利には0.01〜80ppm、特に有利には0.1〜70ppm、とりわけ有利には1〜50ppmおよび1〜30ppmであることを特徴とする、物質混合物。
【請求項18】
請求項1から15までのいずれか1項記載の方法により得られる、請求項16または17記載の物質混合物。
【請求項19】
香水および/または香料を製造するための、請求項16または18記載の物質混合物の使用。
【請求項20】
ラクタム、特にラウリンラクタム、および/またはポリアミド、特にポリアミド12、および/またはジカルボン酸、特にドデカン二酸を製造するための、請求項16または18記載の物質混合物の使用。
【請求項21】
難燃剤中での請求項16または18記載の物質混合物の使用。

【公開番号】特開2007−302670(P2007−302670A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126003(P2007−126003)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(501073862)デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Bennigsenplatz 1, D−40474 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】