説明

シナカルセトおよびその塩を合成する方法

シナカルセト、シナカルセト誘導体、およびその塩を調製する方法を本明細書において開示する。前記の開示された方法によってシナカルセトが調製される、シナカルセトの多形、シナカルセトの組成物、およびシナカルセトを投与することによって対象を処置する方法も本明細書に開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、カルシウム擬態薬であるシナカルセトおよびその塩の合成プロセスおよび中間体、シナカルセトの多形、その組成物、ならびに該組成物を使用して高カルシウム血症に罹患している対象を処置する方法に向けられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
センシパー(Sensipar)(登録商標)(シナカルセト)は、N-[1-(R)-(-)-(1-ナフチル)エチル]-3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1-アミノプロパン塩酸塩という化学名を有し、実験式C22H22F3N・HClを有し、下記の構造式を有する、カルシウム擬態薬である。

塩酸塩の分子量は393.9g/molであり、遊離塩基は357.4g/molである。分子中には1つのキラル中心が存在し(*で記す)、R鏡像異性体がより優勢な鏡像異性体である。
【0003】
シナカルセト塩酸塩は、センシパー(登録商標)およびミンパラ(Mimpara)(登録商標)として市販されている。このカルシウム擬態薬は、細胞外カルシウムによる活性化に対するカルシウム感知受容体の感受性を増加させるために使用されている。このカルシウム擬態薬は、続発性副甲状腺機能亢進症を有する透析中の慢性腎疾患の患者の処置、および副甲状腺癌の患者における高カルシウム血症の処置において治療上有効であることがわかった。今日、慢性腎疾患(CKD)の腎透析患者は米国だけで300,000名を超える。副甲状腺ホルモン(PTH)レベルの増加ならびに異常なカルシウムおよびリンの代謝に付随する進行性疾患である続発性副甲状腺機能亢進症(HPT)に、これらの患者のほぼ全員が罹患している。軽度のHPTを有する典型的な患者では、血清インタクト副甲状腺ホルモン(iPTH)レベルは300〜500pg/mlであり、中程度のHPTを有する患者は500〜800pg/mlのiPTHを有し、重度のHPTを有する患者は800pg/mlを超えるiPTHを有する。正常なiPTHレベルは約250pg/mlの範囲内にあるはずである。ヒトにおける正常なカルシウムレベルの下限は約8.4mg/dLである。HPTは、CKDの過程で早期に発症することがあり、腎機能が減退するに従って進行し続ける。未処置の続発性HPTは、異常なカルシウムおよびリンのレベルによって特徴づけられ、かつ重大な心血管罹患率を含む重大な結果に付随している。
【0004】
増加したPTHは破骨細胞の活性を刺激し、それによって皮質骨の吸収および骨髄線維症が生じる。センシパー(登録商標)は、続発性HPTの患者における、進行性の骨疾患、および不規則なミネラル代謝の全身的な結果を予防するために血中のPTH、カルシウム、およびリンのレベルを低減させるという著しい医学的必要性を満たす最初の処置薬である。制御されていない続発性HPTを伴う透析中のCKD患者におけるPTHレベルの減少は、骨特異性アルカリホスファターゼ(BALP)、骨代謝回転および骨線維症に対して肯定的な効果を有することがわかった。
【0005】
PTHの分泌は、副甲状腺の細胞表面上のカルシウム感知受容体の作用を通じて調節される。センシパー(登録商標)は、細胞外カルシウムに対するこのカルシウム感知受容体の感受性を増加させることでPTHレベルを直接低減させる。PTHの減少は血清カルシウムレベルの同時的低下に付随している。
【0006】
センシパー(登録商標)によって、開業医はカルシウム-リン生成物を低減させながらPTHを減少させることができ、これは米国腎臓財団(National Kidney Foundation)のKidney Disease Outcomes Quality Initiative(K/DOQI)の慢性腎疾患における骨代謝および骨疾患に関する臨床診療ガイドラインと一致している。それが開発される前は、続発性HPTの患者について唯一利用可能な医療用の処置薬は、カルシウムおよび/またはリンのレベルを上昇させることがあるリン吸着剤およびビタミンDステロールであった。そのような上昇は、処置の中断を必要とし、PTHの不十分な制御を導くことが多いと考えられる。
【0007】
センシパー(登録商標)が、カルシウム感知受容体に直接作用するその独特の作用機序による続発性HPTの優れた標的化処置を提供するということは、現在広く受け入れられている。センシパー(登録商標)は、続発性HPTに罹患している透析患者を支援する重要な新しい手段を提供するという、伝統的な治療薬に対する著しい向上を提供する。それは、副甲状腺癌による高カルシウム血症の患者におけるカルシウムレベルを低減させることにも成功している。副甲状腺癌の患者は、PTHの過剰分泌をもたらす副甲状腺の稀で重大ながんを有する。したがって、副甲状腺癌は原発性HPTの一形態である。この疾患は、血中カルシウムレベルの上昇によって併発される。高いカルシウムレベルは、不安症、うつ病、悪心、嘔吐、骨折、腎結石、およびいくつかの場合では昏睡を導くことがある。副甲状腺の外科的除去はこの疾患の唯一の治癒的な治療であるが、すべての場合で成功するわけではない。センシパー(登録商標)は、副甲状腺癌の患者における高いカルシウムレベルを減少させることがわかった。
【0008】
シナカルセト、シナカルセト誘導体、およびその塩のための合成プロセスの必要性が存在する。
【発明の概要】
【0009】
概要
本開示は、シナカルセト、シナカルセト誘導体、およびその塩の合成のためのプロセスおよび中間体に向けられる。各種態様ではシナカルセト塩が調製される。特定のクラスの態様ではシナカルセト塩酸塩が調製される。
【0010】
したがって、本発明の一局面は、アリル位アミノ化を使用してシナカルセトを調製する方法を提供する。本方法は、(a)クロスメタセシス(cross-metathesis)を可能にする条件下で式(I)の化合物と式(II)の化合物とを混合することで式(III)の化合物を生成する工程:

(式中、各R1は同一または異なっており、水素、C1〜C6アルキル、OC1〜C6アルキル、アリール、O-アリール、ヘテロアリール、およびO-ヘテロアリールからなる群より選択される); (b)アリル位アミノ化を可能にする条件下で化合物(III)と1-(1-ナフチル)エチルアミンまたはその塩とを混合することで式(IV)の化合物を生成する工程:

; ならびに(c)還元を可能にする条件下で化合物(IV)を還元することでシナカルセトまたはその塩を生成する工程を含む。各種態様では、クロスメタセシスを可能にする条件は、RuまたはMo触媒の存在下で該クロスメタセシスを行うことを含み得る。各種態様では、アリル位アミノ化を可能にする条件は、Pd、Ru、Ir、Rh、Pt、またはNi触媒の存在下で該アリル位アミノ化を行うことを含み得る。各種態様では、還元を可能にする条件は、還元剤(例えば水素、水素化物など)およびPd、Ni、Pt、Rh、Ir、またはRu触媒の存在下で該還元を行うことを含み得る。
【0011】
別の局面では、シナカルセトまたはその塩を調製する方法は、(a)アリル位アミノ化を可能にする条件下で式(V)の化合物と1-(1-ナフチル)エチルアミンとを混合することで式(IV)の化合物を生成する工程:

(式中、R2は水素、C1〜C6アルキル、アリール、ヘテロアリール、C(O)C1〜C6アルキル、C(O)アリール、C(O)ヘテロアリール、およびC(O)OC1〜C6アルキルからなる群より選択される); ならびに(b)還元を可能にする条件下で化合物(IV)を還元することでシナカルセトまたはその塩を生成する工程を含む。各種態様では、アリル位アミノ化を可能にする条件は、Pd触媒の存在下で該アリル位アミノ化を行うことを含み得る。各種態様では、還元を可能にする条件は、還元剤(例えば水素、水素化物など)およびPd、Ni、Pt、Rh、Ru、またはIr触媒の存在下で該還元を行うことを含み得る。各種態様では、式(V)の化合物は、3-トリフルオロメチル-ベンズアルデヒドとビニル試薬とを混合することで式(V)の化合物を形成する工程を含む方法を経由して調製することができる。特定の態様では、ビニル試薬はビニルリチウム、ホウ酸ビニル、ボロン酸ビニル、ハロゲン化ビニル亜鉛、ジビニル亜鉛、またはハロゲン化ビニルマグネシウムである。
【0012】
別の局面では、シナカルセトまたはその塩を調製する方法は、(a)式(VI)の化合物の形成を可能にする条件下で、R2が水素である式(V)の化合物と1-(1-ナフチル)エチルイソシアネートとを混合する工程:

;
(b)C-OからC-Nへの転位を可能にする条件下で化合物(VI)と触媒とを混合することで式(IV)の化合物を形成する工程:

; および(c)還元を可能にする条件下で化合物(IV)を還元することでシナカルセトまたはその塩を生成する工程を含む。各種態様では、C-OからC-Nへの転位を可能にする条件は、Pd、Ru、Ni、Ir、Rh、Hg、Au、およびPtからなる群より選択される金属触媒の存在下でC-OからC-Nへの該転位を行うことを含み得る。各種態様では、還元を可能にする条件は、還元剤(例えば水素、水素化物など)およびPd、Ni、Ir、Pt、Rh、Ru、またはIr触媒の存在下で該還元を行うことを含み得る。
【0013】
別の局面では、シナカルセトまたはその塩を調製する方法は、(a)アミド結合形成を可能にする条件下で3-トリフルオロメチル-ケイ皮酸と1-(1-ナフチル)エチルアミンとを混合することで式(VIIB)の化合物を形成する工程:

; および(b)還元を可能にする条件下で化合物(VIIB)を還元することでシナカルセトまたはその塩を形成する工程を含む。各種態様では、アミド結合形成を可能にする条件は、ペプチドカップリング剤の存在下で該アミド結合形成を行うことを含み得る。特定の態様では、ペプチドカップリング剤は塩素化剤(例えば塩化オキサリル、塩化チオニル、または三塩化リン)、混合無水物、DIC、DCC、EDCI、CDI、HOBt、HOAt、ペンタフルオロフェノール、HBTU、HATU、および向山試薬であり得る。各種態様では、還元を可能にする条件は、還元剤(例えば水素、水素化物など)およびPd、Ni、Ir、Pt、Rh、Ru、またはIr触媒の存在下で該還元を行うことを含み得る。各種態様では、還元はボランまたは水素化アルミニウムリチウムの存在下であり得る。ある種の態様では、還元条件は二重結合とアミド結合との両方を還元する上で十分なものであり、一方、ある種の他の態様では、二重結合およびアミド結合をいずれかの順序で還元するために2つの異なる還元条件が使用される。
【0014】
さらに別の局面では、シナカルセトまたはその塩を調製する方法は、(a)化合物(VIII)と化合物(IX)とのカップリングを促進する条件下で式(VIII)の化合物と式(IX)の化合物とを混合することで化合物(X)を形成する工程:

(式中、Xは塩素、臭素、ヨウ素、OSO2C6H4CH3、OSO2CH3、OSO2CF3、OSO2C4F9、およびN2+からなる群より選択され、Rは水素、ベンジル、置換ベンジル、BOC、CBZ、およびアセテートからなる群より選択される); ならびに(b)還元を可能にする条件下で化合物(XI)を還元することでシナカルセト、シナカルセト誘導体、またはその塩を形成する工程を含む。各種態様では、化合物(VIII)と化合物(IX)とのカップリングを促進する条件は、PdまたはNi触媒の存在下で該カップリングを行うことを含み得る。各種態様では、還元を可能にする条件は、還元剤(例えば水素、水素化物など)およびPd、Ni、Ir、Pt、Rh、Ru、またはIr触媒の存在下で該還元を行うことを含み得る。Rが水素ではない態様では、本方法は、シナカルセト誘導体を脱保護することでシナカルセトまたはその塩を形成する工程を任意でさらに含む。
【0015】
さらに別の局面では、シナカルセト、その誘導体、またはその塩を調製する方法は、(a)化合物(VIII)と化合物(XI)とのカップリングを促進する条件下で式(VIII)の化合物と式(XI)の化合物とを混合することで化合物(XII)を形成する工程:

(式中、Xは塩素、臭素、ヨウ素、OSO2C6H4CH3、OSO2CH3、OSO2CF3、OSO2C4F9、およびN2+からなる群より選択され、Rは水素、ベンジル、BOC、CBZ、およびアセテートからなる群より選択される); (b)還元を可能にする条件下で化合物(XII)を還元することでシナカルセト、シナカルセト誘導体、またはその塩を形成する工程を含む。各種態様では、化合物(VIII)と化合物(XI)とのカップリングを促進する条件は、Pd触媒またはRu触媒の存在下で該カップリングを行うことを含み得る。各種態様では、還元を可能にする条件は、還元剤(例えば水素、水素化物など)およびPd、Ni、Ir、Pt、Rh、Ru、またはIr触媒の存在下で該還元を行うことを含み得る。Rが水素ではない態様では、本方法は、シナカルセト誘導体を脱保護することでシナカルセトまたはその塩を形成する工程を任意でさらに含む。
【0016】
さらに別の局面では、シナカルセトまたはその塩を調製する方法は、還元を可能にする条件下で式(XIII)の化合物を還元することでシナカルセトまたはその塩を形成する工程:

(式中、Rは水素、ベンジル、置換ベンジル、BOC、Cbz、およびアセテートからなる群より選択される)を含む。各種態様では、本方法は、(i)化合物(VIII)とプロピオル酸またはそのエステルとのカップリングを可能にする条件下で式(VIII)の化合物とプロピオル酸またはそのエステルとを混合することで式(XIV)の化合物を形成する工程:

(式中、Xは塩素、臭素、ヨウ素、OSO2C6H4CH3、OSO2CH3、OSO2CF3、OSO2C4F9、およびN2+からなる群より選択され、R1は水素、C1〜C6アルキル、およびアリールからなる群より選択される); ならびに(ii)アミド結合形成を可能にする条件下で化合物(XIV)と1-(1-ナフチル)エチルアミンまたはその塩とを混合することで式(XIII)の化合物を形成する工程をさらに含み得る。特定のクラスの態様では、化合物(VIII)とプロピオル酸またはそのエステルとのカップリングを可能にする条件は、Pd触媒の存在下で該カップリングを行うことを含み得る。各種態様では、本方法は、式(VIII)の化合物と式(XV)の化合物とのカップリングを可能にする条件下で式(VIII)の化合物と式(XV)の化合物とを混合することで式(XIII)の化合物を形成する工程:

(式中、Xは塩素、臭素、ヨウ素、OSO2C6H4CH3、OSO2CH3、OSO2CF3、OSO2C4F9、およびN2+からなる群より選択される)をさらに含む。特定のクラスの態様では、式(VIII)の化合物と式(XV)の化合物とのカップリングを可能にする条件は、Pd触媒の存在下で該カップリングを行うことを含み得る。各種態様では、本方法は、3-トリフルオロメチル-フェニルアセチレンと1-(1-ナフチル)エチルイソシアネートとのカップリングを可能にする条件下で3-トリフルオロメチル-フェニルアセチレンと1-(1-ナフチル)エチルイソシアネートとを混合することで、RがHである式(XIII)の化合物を形成する工程を含む。特定のクラスの態様では、3-トリフルオロメチル-フェニルアセチレンと1-(1-ナフチル)エチルイソシアネートとのカップリングを可能にする条件は、塩基の存在下で該カップリングを行うことを含み得る。RがHではない態様では、本方法は、シナカルセト誘導体を脱保護することでシナカルセトまたはその塩を形成する工程を任意でさらに含む。
【0017】
別の局面では、シナカルセト、その誘導体、またはその塩を調製する方法は、還元を可能にする条件下で式(XVI)の化合物を還元することでシナカルセト、シナカルセト誘導体、またはその塩を形成する工程:

(式中、Rは水素、ベンジル、置換ベンジル、BOC、Cbz、およびアセテートからなる群より選択される)を含む。各種態様では、本方法は、化合物(VIII)と化合物(XVII)とのカップリングを可能にする条件下で式(VIII)の化合物と式(XVII)の化合物とを混合することで化合物(XVI)を形成する工程:

(式中、Xは塩素、臭素、ヨウ素、OSO2C6H4CH3、OSO2CH3、OSO2CF3、OSO2C4F9、およびN2+からなる群より選択される)をさらに含む。特定のクラスの態様では、式(VIII)と式(XVII)とのカップリングを可能にする条件は、Pd触媒の存在下で該カップリングを行うことを含み得る。Rが水素ではない態様では、本方法は、シナカルセト誘導体を脱保護することでシナカルセトまたはその塩を形成する工程を任意でさらに含む。
【0018】
さらに別の局面では、シナカルセトまたはその塩を調製する方法は、(a)クロスメタセシスを可能にする条件下で式(I)の化合物と式(XVIII)の化合物とを混合することで式(IV)の化合物を生成する工程:

(式中、各R1は同一または異なっており、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択される); ならびに(b)還元を可能にする条件下で化合物(IV)を還元することでシナカルセトまたはその塩を生成する工程を含む。各種態様では、クロスメタセシスを可能にする条件は、Ru触媒の存在下で該クロスメタセシスを行うことを含み得る。各種態様では、各R1は水素およびメチルから選択される。各種態様では、工程(b)における還元を可能にする条件は、還元剤(例えば水素、水素化物など)およびPd、Ni、Ir、Pt、Rh、Ru、またはIr触媒の存在下で該還元を行うことを含み得る。
【0019】
さらに別の局面では、シナカルセトまたはその塩を調製する方法は、(a)クロスメタセシスを可能にする条件下で式(I)の化合物と式(XIX)の化合物とを混合することで式(VIIB)の化合物を生成する工程:

(式中、各R1は同一または異なっており、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択される); ならびに(b)還元を可能にする条件下で化合物(VIIB)を還元することでシナカルセトまたはその塩を生成する工程を含む。各種態様では、クロスメタセシスを可能にする条件は、Ru触媒の存在下で該クロスメタセシスを行うことを含み得る。各種態様では、各R1は水素およびメチルから選択される。各種態様では、工程(b)における還元を可能にする条件は、還元剤(例えば水素、水素化物など)およびPd、Ni、Ir、Pt、Rh、Ru、またはIr触媒の存在下で該還元を行うことを含み得る。
【0020】
別の局面では、シナカルセトまたはその塩を調製する方法は、(a)ヒドロホルミル化を可能にする条件下で3-(トリフルオロメチル)スチレン、一酸化炭素、および水素を混合することで3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパナールを生成する工程; (b)イミン形成を可能にする条件下で3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパナールと1-(1-ナフチル)エチルアミンとを混合することで式(XX)の化合物を形成する工程:

; ならびに(c)還元を可能にする条件下で式(XX)の化合物を還元することでシナカルセトまたはその塩を生成する工程を含む。各種態様では、ヒドロホルミル化を可能にする条件は、Rh、Co、またはPt触媒の存在下で該ヒドロホルミル化を行うことを含み得る。各種態様では、イミン形成を可能にする条件は、酸の存在下で該イミン形成を行うことを含み得る。各種態様では、還元を可能にする条件は、還元剤(例えば水素、水素化物など)およびPd、Ni、Ir、Pt、Rh、Ru、もしくはIr触媒の存在下または水素化アルミニウムリチウムなどの水素化物源の存在下で該還元を行うことを含み得る。
【0021】
別の局面では、シナカルセトまたはその塩を調製する方法は、(a)化合物(VIIIA)と化合物(XIA)とのカップリングを促進する条件下で式(VIIIA)の化合物と式(XIA)の化合物とを混合することで式(XII)の化合物を形成する工程:

(式中、X'はB(OH)2、Si(OR3)3、Sn(R3)3、およびTi(OR3)3からなる群より選択され、R3は同一または異なっており、水素およびC1-6アルキルからなる群より独立して選択される); ならびに(b)還元を可能にする条件下で化合物(VII)を還元することでシナカルセトまたはその塩を形成する工程を含む。各種態様では、化合物(VIIIA)と化合物(XIA)とのカップリングを促進する条件は、RhまたはPd触媒の存在下で該カップリングを行うことを含み得る。各種態様では、還元を可能にする条件は、還元剤の存在下で該還元を行うことを含み得る。特定のクラスの態様では、還元剤は水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ホウ素リチウム(LiBH4)、水素化ホウ素カルシウム(Ca(BH4)2)、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、またはBH3とTHF、Et3N、もしくはMe2Sとの錯体を含み得る。
【0022】
さらに別の局面では、シナカルセトまたはその塩を調製する方法は、ヒドロホルミル化、イミン形成、および還元(ヒドロアミノメチル化)を可能にする条件下で3-(トリフルオロメチル)スチレン、一酸化炭素、水素、および1-(1-ナフチル)エチルアミンを混合することでシナカルセトまたはその塩を生成する工程を含む。各種態様では、ヒドロホルミル化、イミン形成、および還元を可能にする条件は、RhまたはCo触媒の存在下で該ヒドロホルミル化、該イミン形成、および該還元を行うことを含み得る。
【0023】
さらに別の局面では、シナカルセトまたはその塩を調製する方法は、ヒドロホウ素化およびC-Nカップリングを可能にする条件下で1-(3-トリフルオロメチルフェニル)-2-プロペン、ボラン、およびN-クロロ-1-(1-ナフチル)エチルアミンを混合することでシナカルセトまたはその塩を形成する工程を含む。各種態様では、還元を可能にする条件は、塩基の存在下で該還元を行うことを含み得る。
【0024】
特定のクラスの態様では、本明細書に開示されているプロセスはシナカルセト塩酸塩を提供することができる。各種態様では、本明細書に開示されているプロセスは、約

である回折角2θでのピークを有する粉末X線粉末回折(XRPD)パターンを有するシナカルセト塩酸塩を提供することができる。各種態様では、XRPDパターンは、

からなる群より選択される少なくとも1つの回折角2θピークをさらに含み得る。各種の他の態様では、本発明の結晶多形は、約

に少なくとも回折角2θピークを含むXRPDパターンを有する。さらに他の態様では、本結晶多形は、約

に回折角2θピークを含むXRPDパターンを有する。特定の一態様では、前記の開示された方法を経由して生成されるシナカルセト塩酸塩は多形IIIである。
【0025】
別の局面では、前記の開示された方法のいずれかを経由して調製されるシナカルセト塩酸塩の組成物が開示される。本組成物はシナカルセト塩酸塩および薬学的に許容される担体を含み得る。
【0026】
さらに別の局面では、高カルシウム血症に罹患している対象を処置する方法は、治療有効量のシナカルセトまたはその塩を含む本明細書に開示されている組成物を該対象に投与する段階を含む。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
本開示を通じて「シナカルセト」とまとめて呼ばれるシナカルセト、シナカルセト誘導体、またはその塩の調製のための合成プロセスが本明細書に開示される。
【0028】
本明細書に開示されている化合物、中間体、および多形は単離または精製された形態であり得る。そのような形態としては、液体クロマトグラフィー、元素分析、質量分析、核磁気共鳴、ガスクロマトグラフィーなどのうち1つまたは複数などの分析プロセスでの測定により、重量比で少なくとも約80%純粋であるものが挙げられる。他の単離または精製された形態としては、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、および少なくとも約99%を挙げることができる。
【0029】
各種の合成プロセスを下記で詳細に論じる。
【0030】
アリル位アミノ化経路
シナカルセトは、アリル位アミノ化を使用して、2つの合成経路を経由して調製することができる。1つの経路では、クロスメタセシス条件下で3-トリフルオロメチル-スチレン誘導体(式(I)の化合物)が2-ブテンジオールエステル誘導体(式(II)の化合物)と反応することで式(III)の化合物を形成する。(スキーム1、工程(1a)を参照)。次に、式(III)の中間体化合物は、1-(1-ナフチル)エチルアミンとのアリル位アミノ化を経験することで式(IV)の化合物を提供する(スキーム1、工程(1b))。次に、適切な条件下で化合物(IV)を還元することでシナカルセトまたはその塩を形成することができる(スキーム1、工程(1c))。

【0031】
式(I)、(II)、および(III)の化合物について、R1は独立して水素、C1〜C6アルキル、OC1〜C6アルキル、アリール、O-アリール、ヘテロアリール、またはO-ヘテロアリールであり得る。各種態様では、式(III)の化合物は、工程(1b)の条件に供される際にC1-6アルキルのR1を有する。
【0032】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、直鎖状および分岐状炭化水素基を意味し、その非限定的な例としてはメチル、エチル、ならびに直鎖状および分岐状プロピル基およびブチル基が挙げられる。
【0033】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、単環式または多環式芳香族基、好ましくは単環式または二環式芳香族基、例えばフェニルまたはナフチルを意味する。特記なき場合、アリール基は非置換でもよく、ハロ、アルキル、アルケニル、OCF3、NO2、CN、NC、OH、アルコキシ、アミノ、CO2H、CO2アルキル、アリール、およびヘテロアリールから例えば独立して選択される1個または複数、特に1〜4個の基で置換されていてもよい。例示的なアリール基としては、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、クロロフェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル、トリフルオロメチルフェニル、ニトロフェニル、2,4-メトキシクロロフェニルなどが挙げられるが、それに限定されない。
【0034】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、1個または2個の芳香環を含有し、かつ芳香環中に少なくとも1個の窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を含有する、単環式または二環式の環系を意味する。特記なき場合、ヘテロアリール基は非置換でもよく、ハロ、アルキル、アルケニル、OCF3、NO2、CN、NC、OH、アルコキシ、アミノ、CO2H、CO2アルキル、アリール、およびヘテロアリールから例えば選択される1個または複数、好ましくは1〜4個の置換基で置換されていてもよい。ヘテロアリール基の例としては、チエニル、フリル、ピリジル、オキサゾリル、キノリル、チオフェニル、イソキノリル、インドリル、トリアジニル、トリアゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、チアゾリル、およびチアジアゾリルが挙げられるが、それに限定されない。
【0035】
クロスメタセシス(工程(1a))を可能にする条件は、オレフィンメタセシスを触媒することが可能なルテニウム系錯体およびモリブデン系錯体を使用することを含む。クロスメタセシス触媒としては、グラブス触媒およびシュロック触媒が挙げられるが、それに限定されない。想定される具体的な触媒としては、[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムおよび[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ[[2-(1-メチルエトキシ)フェニル]メチレンルテニウムが挙げられる。本明細書に開示されている方法において使用できる他の触媒としては、米国特許第

号に記載されているものが挙げられる。
【0036】
アリル位アミノ化(工程(1b))を可能にする条件は、遷移金属触媒の存在下での反応を含む。想定される具体的な触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどであるがそれに限定されないPd-ホスフィン錯体が挙げられる。アリル位アミノ化に使用される遷移金属触媒の遷移金属は、典型的にはNi、Mo、Pt、Co、Ru、Rh、Ir、Mn、V、Cr、Ag、Fe、Cu、またはPdである。遷移金属触媒の配位子は、それを通じて配位子が遷移金属に配位する配位原子を含有する。配位原子は、典型的にはN、P、またはS、場合によってはOまたはCである。配位子の例としては、シクロオクタジエン、シクロヘプタトリエン、CO、C7H8、およびClが挙げられるが、それに限定されない。遷移金属触媒の例としては、Pd触媒、Ni(COD)2、Mo(CO)3(C7H8)、Pt(PPh3)4、RhCl(PPh3)2、およびCoCl2が挙げられるが、それに限定されない。Pd触媒が、アリル位アミノ化反応において使用される一般に好ましい遷移金属触媒である。アリル位アミノ化用の好適な窒素保護基の例としては、C6H2-3,4,5-(OMe)3、ベンズヒドリル、PNP(p-ニトロフェニル)、Boc、およびPMP(p-メトキシフェニル)が挙げられるが、それに限定されない。他の好適な窒素保護基はWuts et al., Greene's Protective Groups in Organic Synthesis, 4th ed., (Wiley Interscience: Hoboken, NJ) 2007に見ることができる。
【0037】
アリル位アミノ化用の好適な有機溶媒としては、ヘキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロエタン、トルエン、酢酸エチル、メチルt-ブチルエーテル、ジエチルエーテル、またはその混合物が挙げられるが、それに限定されない。アリル位アミノ化反応は塩基の存在下で任意で行ってもよい。好適な塩基の例としては、トリエチルアミンおよびジイソプロピルエチルアミンが挙げられるが、それに限定されない。
【0038】
アリル位アミノ化を可能にする他の条件は、下記の特許または特許公報に開示されているものである: 米国特許第7173157号; 米国特許第7071357号; 国際公開公報第2002/040491号; および米国特許出願公開第20060199728号。
【0039】
二重結合の還元(例えば工程(1c))を可能にする条件は、水素源および任意で触媒を使用する水素化を含む。接触還元は、極性溶媒中、例えばメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール中および水中、ならびに酢酸などの有機酸、またはその混合物中で行うことができる。水素雰囲気下での還元反応に使用される触媒は、例えばパラジウム、白金、ラネーニッケルなどである。水素源は典型的には水素ガスであるが、二重結合を単結合に還元することを可能にする何らかの他の試薬であり得る。
【0040】
アリル位アミノ化を経由するシナカルセトの合成用の第2の経路では、下記のスキーム2に示すように、式(V)の化合物はアリル位アミノ化を経験することで式(IV)の化合物を形成し、アリル位アミノ化および還元の前にトリフルオロメチルベンズアルデヒドはビニル試薬と反応する。工程(2b)および(2c)は、工程(1b)および(1c)について先に記載のように生じ得る。

本明細書に記載の方法の各種態様では、式(V)の化合物は、3-トリフルオロメチルベンズアルデヒドとビニル求核試薬とを混合し(工程(2a))、得られたビニルアルコールを公知の技術を使用して任意で修飾し、R2がC1-6アルキル、C(O)C1-6アルキル、C(O)OC1-6アルキル、またはC(O)OC1-6アルキレンアリールであり得るエーテル、エステル、または炭酸塩にすることによって調製される。特定の態様では、R2は水素、アセテート、Boc、またはCO2Meであり得る。ビニル試薬による求核攻撃を可能にする条件は、典型的には無水である。特定の一態様では、ビニルリチウムと3-トリフルオロメチルベンズアルデヒドとを混合することで、R2が水素である式(V)の化合物を形成する。あるいは、塩化ビニルとマグネシウム金属とを(任意でヨウ素の存在下で)混合することで塩化ビニルマグネシウムを形成し、次にこれと3-トリフルオロメチルベンズアルデヒドとを混合することでR2が水素である式(V)の化合物を形成することによって、化合物(V)を調製することができる。次に、この中間体を任意で修飾することでR2がアセテート、Boc、またはCO2Meである式(V)の化合物を得た後、式(V)の化合物をアリル位アミノ化条件に供する。
【0041】
C-OからC-Nへの転位
あるいは、C-OからC-Nへの転位を使用してシナカルセトを調製することもできる。スキーム3において概説するこの合成アプローチでは、R2が水素である式(V)の化合物と1-(1-ナフチル)エチルイソシアネートまたは塩化1-(1-ナフチル)エチルカルバモイルなどの試薬とを適切な条件下で混合することで式(VI)の化合物を形成する(工程3a)。次に、C-OからC-Nへの転位を可能にする条件下で式(VI)の化合物と触媒とを混合することで式(IV)の化合物を形成することができる(工程3b)。引き続き、工程(1c)について先に記載のように、式(IV)の化合物は水素化を経験することでシナカルセトを形成することができる(工程(3c))。

【0042】
式(VI)の化合物の形成(工程(3a))を可能にする条件は、Kim et al, Synlett, 3:261-262 (1998)に記載のような金属触媒の存在下での混合を含み得る。各種態様では、工程(3a)は、金属アルコキシド、アルキルリチウム、金属水酸化物などの塩基の存在下で生じる。
【0043】
C-OからC-Nへの転位を可能にする条件は、式(VI)の化合物と、C-OからC-Nへの転位を容易にする金属触媒とを接触させることを含む。そのような金属触媒としてはPd、Ru、Ni、Hg、Au、Ir、Rh、およびPtが挙げられる(Mellegaard-Waetzig, et al., Synlett, 18:2759-2762 (2005)を参照)。C-OからC-Nへの転位に関して想定される具体的な条件としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムまたは塩化(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム四量体の存在下での反応が挙げられる。
【0044】
ペプチドカップリング
あるいは、ペプチドカップリング法を使用してシナカルセトを調製することもできる。3-トリフルオロメチルケイ皮酸または3-トリフルオロメチルジヒドロケイ皮酸から出発するそのような合成経路を下記のスキーム4において概説する。

【0045】
ペプチドカップリング(例えば工程(4a))は様々な条件下で生じ得る。典型的には、酸または活性化酸とアミンとの混合は、塩化メチレン、THF、DMF、DMSO、酢酸エチルなどの相溶性有機溶媒中で生じる。アミンとカルボン酸との間のアミド結合の形成を容易にするカップリング試薬を利用することができる。好ましいカップリング薬としては、DCC、DIC、O-ベンゾトリアゾリル-1-イル-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU); O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル-1,1,3,3-ビス(テトラメチレンウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HApyU)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-ビス(ペンタメチレン)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HApipU)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,3-ジメチル-1,3-トリメチレンウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HAMTU)、ベンゾトリアゾリル-イル-1,1,3,3-ビス(テトラメチレンウロニウムテトラフルオロボレート)(TBTU)、TFFH、または、そのままで酸塩化物、混合無水物、EZDQ、カルボン酸のペンタフルオロフェニルエステルもしくはスクシンイミドエステルなどの活性エステルを形成する試薬が挙げられる。
【0046】
式(VIIB)の化合物のシナカルセトへの還元について、二重結合およびカルボニルのメチレン部分への還元が、同一条件または別個の条件下で同時または連続的に生じ得る。各種態様では、部分還元中間体−例えば、二重結合を最初に還元することによる式(VIIA)の中間体化合物の形成、またはカルボニルを最初に還元することによる式(IV)の化合物の形成−を単離した後、後続の還元によってシナカルセトを形成し、一方、他の態様では、部分還元中間体を引き続いて完全に還元することで単離および/または精製することなくシナカルセトを形成する。カルボニルのメチレン部分への還元は、式(VIIB)または式(VIIA)の化合物と還元剤とを混合することで実現することができる。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ホウ素リチウム(LiBH4)、水素化ホウ素カルシウム(Ca(BH4)2)、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、またはBH3とTHF、Et3N、もしくはMe2Sとの錯体などの金属水素化物が挙げられるが、それに限定されない。式(VII)の化合物の二重結合の還元は、工程(1c)について先に記載の条件下で生じ得る。
【0047】
ヘックカップリング
シナカルセトは、ハロゲン化アリールと適切な対応する化合物とのカップリングによって調製することができる。ヘック、薗頭、鈴木、檜山、およびスティルカップリングはいずれも、シナカルセトの調製用の合成経路として想定される。ヘックカップリングでは、スキーム5に示すように、式(VIII)の化合物と式(IX)のアリルアミン化合物または式(XI)のアクリルアミド化合物とを、この2つの化合物のカップリングを可能にする条件下で反応させることで、式(X)の化合物または式(XII)の化合物をそれぞれ形成する。式(VIII)の化合物について、Xはハロゲン(例えばF、Cl、Br、またはI)であってもよく、トリフレート(OSO2CF3)、トシル(OSO2C6H4CH3)、メシル(OSO2CH3)、ノナフレート(OSO2C4F9)、またはヘック、薗頭、鈴木、檜山、もしくはスティルカップリングに適合する任意の他の官能基であってもよい。

【0048】
式(IX)、(XI)、(X)、および(XII)の化合物は、水素、ベンジル、置換ベンジル、BOC、Cbz、およびアセテートより選択されるRを独立して有することができる。Rは、該化合物が供される各種反応条件に適合する任意のアミン保護基であり得る。好適なR基(例えばアミンまたはアミド保護基)としてはGreene's Protective Groups in Organic Synthesis, 4th ed (2007)に開示されているものが挙げられる。
【0049】
式(VIII)の化合物とアリルアミン(IX)またはアクリルアミド(XI)との間のヘックカップリングを可能にする条件は、遷移金属触媒の存在下での混合を含む。典型的には、遷移金属触媒はPdまたはRuを含む。具体的なPd触媒としてはPd(OAc)2、PdCl2、Pd(dba)3、およびPd(P(PAr3)4)(ここでArは置換もしくは非置換フェニル、またはBINAPもしくはdpppなどの連結ビフェニルホスフィンである)が挙げられる。具体的なRu触媒としては[RuCl2(p-シメン)]2が挙げられるが、それに限定されない。典型的には、DMF、メタノール、アセトニトリル、またはその混合物などの極性有機溶媒が使用される。温度を任意で上昇させて、式(X)または(XII)の化合物の形成を援助することができる。さらに、塩基を加えることでヘック反応を容易にすることもできる。塩基としては、トリエチルアミンもしくはジイソプロピルエチルアミンなどのアミン塩基、または金属炭酸塩(例えば炭酸カリウム)、または金属酢酸塩(例えば酢酸ナトリウム)が挙げられる。
【0050】
工程(5b)の還元は、工程(1c)および/または工程4(b)について先に記載の条件下で行うことができる。
【0051】
アルキン還元
シナカルセトの合成に向けての代替経路を下記のスキーム6において概説する。それは、式(XIII)または式(XVI)のアルキン化合物の還元によってシナカルセトまたはシナカルセト誘導体を形成することを包含する。式(XIII)または(XVI)の化合物について、Rは水素、ベンジル、置換ベンジル、Cbz、BOC、およびアセテート、または該化合物が供される反応条件に適合する任意のアミン保護基であり得る。好適なアミン保護基としてはGreene's Protective Groups in Organic Synthesis, 4th ed (2007)に開示されているものが挙げられるが、それに限定されない。

【0052】
工程(6a)の還元条件は、工程(1c)、(4b)、または(5b)について先に記載のものであり得る。工程(4b)および(5b)と同様に、式(XIII)または(XVI)のアルキン化合物の還元は段階的に実現することができ、各逐次還元中間体は後続の還元の前に単離される。例えば、式(XIII)の化合物について、アルキン結合の還元前に、該化合物のカルボニル部分をメチレン部分に還元することで(式(XVI)の化合物を形成する)ことができる。アルキン結合を最初にアルケンに還元することで(式(IV)の化合物を形成し)、そのまま単離し、次にアルキル基に還元することでシナカルセトを形成することができる。あるいは、式(XIII)のアルキン化合物を最初にアルケンに還元することで(式(VIIB)の化合物を形成し)、そのまま単離し、次にアルキル基に還元することで(式(VIIA)の化合物を形成する)ことができ、次にカルボニル部分を還元することでシナカルセトまたはシナカルセト誘導体を形成することができる。
【0053】
各種態様では、式(XIII)の化合物はシナカルセトへの還元前に調製される。スキーム6A〜6Dでは、式(XIII)または(XVI)の化合物の調製用のいくつかの経路を概説する。

【0054】
工程(6Aa)または(6Ba)のカップリングは遷移金属触媒の存在下で行うことができる。そのような触媒としては、1つまたは複数のホスフィン配位子を任意で有するPdCl2触媒、および銅塩(例えばCuI)などの助触媒が挙げられる。無機塩基またはアミン塩基を使用することで式(VIII)の化合物と(XV)プロピオル酸またはエステルとのカップリングを容易にすることもできる。そのような塩基としては、Et3N、金属炭酸塩(例えばCs2CO3)、および金属炭酸水素塩(例えばNaHCO3)が挙げられる。マイクロ波エネルギーに対する露出および/または50℃を超えての加熱を含む他の条件を使用することができる。
【0055】
工程(6Ab)は、工程(4a)について先に記載のペプチド結合形成に関する同様の条件を使用して行うことができる。

【0056】
あるいは、3-トリフルオロメチルフェニルアセチレンと1-(1-ナフチル)エチルイソシアネートとを反応させることで式(XIII)の化合物を調製することができる。各種態様では、3-トリフルオロメチルフェニルアセチレンとn-ブチルリチウムまたはグリニャール試薬などの塩基とを混合することで脱プロトン化アセチリドを形成する。次に、スキーム6Cに示すように、アセチリドとイソシアネートとを混合することで、Rが水素である式(XIII)の化合物を形成する。本明細書に記載の方法に適用可能な、アミドを形成するためのイソシアネートカップリングに好適な他の条件としては、Debrabander et al., Tetrahedron, 60:9635 (2004)に記載のものが挙げられる。
【0057】
各種態様では、式(XVI)の化合物はスキーム6Dにおいて概説するように調製される。式(VIII)の化合物と式(XVII)の化合物の間の薗頭カップリングである工程(6Da)は、式(XVI)の化合物を提供することができる。薗頭カップリング用の条件は工程(6Aa)または(6Ba)について先に記載の通りである。Rは、水素、C1-6アルキル、または薗頭カップリング条件に対して安定な、Boc、Fmoc、もしくはCbz基などの窒素保護基であり得る。窒素用の好適な保護基はGreene's Protective Groups in Organic Synthesis, 4th ed (2007)において詳細に論じられている。

【0058】
クロスメタセシス
シナカルセトは、下記のスキーム7に示すように、式(IV)の化合物を形成するための式(I)の化合物と式(XVIII)の化合物とのクロスメタセシスを経由して調製することができる。R1は水素およびC1-6アルキルより独立して選択される。クロスメタセシス工程(7a)用の条件は工程(1a)について先に記載の通りであり、式(IV)の化合物からシナカルセトを形成するための条件は工程(3c)について先に記載されている。

【0059】
ヒドロホルミル化
シナカルセトは、下記のスキーム8に示すように、ヒドロホルミル化を使用して調製することができる。各種態様では、3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパナールを調製し(工程(8a))、次に1-(1-ナフチル)エチルアミンと混合することでイミン(XX)を形成し(工程(8b))、これを還元することでシナカルセトを形成することができる(工程(8c))。ヒドロホルミル化条件は、金属触媒の存在下での水素ガスと一酸化炭素との混合物に対する露出を含み得る。典型的には、金属はコバルトまたはロジウム触媒である。該触媒中の配位子の例としては、ホスフィン(PR3、RC6H5、n-C4H9)、ホスフィンオキシド(O=P(C6H5)3)、亜リン酸エステル、アミン、アミド、およびイソニトリルを挙げることができる。本明細書に記載の方法に適用可能なヒドロホルミル化に好適な他の条件としては、米国特許第4,148,830号; 第4,717,775号; 第4,769,498号、および国際公開公報第03/078444号に記載のものが挙げられる。式(XX)の化合物の還元は、工程(1c)について先に概説した条件を使用して達成してもよく、水素化ホウ素ナトリウム、(トリアセトキシ水素化ホウ素)ナトリウム、(シアノ水素化ホウ素)ナトリウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、または水素化アルミニウムリチウムなどの水素化物還元剤を用いる還元によって達成してもよい。

【0060】
各種態様では、下記のスキーム8Aに示すように、3-トリフルオロメチルスチレン、水素、一酸化炭素、および1-(1-ナフチル)エチルアミンをすべて一緒に混合することで、式(XX)の中間体化合物を単離することなくシナカルセトを形成する。工程(8Aa)の条件は、一酸化炭素および水素の高圧下、[Rh(cod)2]BF4、およびXantphosなどのホスフィン配位子の存在下で基材を加熱することである。ヒドロアミノメチル化に好適な他の条件は、Ahmed et al., J. Am. Chem. Soc. 125:10311 (2003)およびBriggs, et al. Org. Lett., 7:4795 (2005)に記載されている。

【0061】
アクリルアミドカップリング
各種態様では、下記のスキーム9に示すようにシナカルセトを合成することができる。化合物(VIIIA)と化合物(XIA)とのカップリングは、ロジウム触媒の存在下で化合物(VIIIA)と化合物(XIA)とを混合することで化合物(VII)を形成することによって達成することができる。次に、化合物(VII)を還元することでシナカルセトまたはその塩を形成することができる。

【0062】
化合物(VIIIA)について、X'はB(OH)2、Si(OR3)3、Sn(R3)3、およびTi(OR3)3であり得るものであり、R3は同一または異なっており、水素およびC1-6アルキルからなる群より独立して選択される。
【0063】
化合物(VIIIA)と化合物(XIA)とのカップリングを促進する条件は、ロジウムまたはパラジウム触媒の存在下での該化合物の混合を含み得る。ロジウム触媒は、例えばロジウム(I)触媒であり得る。具体的なRh触媒としてはRh(acac)(CO)2、Rh(acac)(C2H4)2、またはRh(acac)が挙げられるが、それに限定されない。具体的なPd触媒としては、ビピリジン、1,10-フェナントロリン、およびビスオキサゾリンなどの窒素配位子に配位可能なPd(OAc)2が挙げられる。特定のクラスの態様では、Rh触媒は、PPh3、PCy3、BINAP、diop、chiraphos、MeO-mop、iPr-phox、またはbppfaなどのリン配位子に配位可能である。他の条件としては、Sakuma, et al., J. Org. Chem., 66:8944-8946 (2001)、Hayashi, et al., Chem. Rev., 103:2829-2844 (2003)、Lautens, et al., Synthesis, 12:2006-2014 (2004)、およびLu, et al., J. Org. Chem., 70:9651-9653 (2005)に開示されているものが挙げられる。
【0064】
還元を可能にする条件は、還元剤の存在下で該還元を行うことを含み得る。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化ホウ素リチウム(LiBH4)、水素化ホウ素カルシウム(Ca(BH4)2)、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、またはBH3とTHF、Et3N、もしくはMe2Sとの錯体などの金属水素化物が挙げられるが、それに限定されない。
【0065】
ヒドロホウ素化
各種態様では、下記のスキーム10に示すようにシナカルセトを合成することができる。1-(3-トリフルオロメチルフェニル)-2-プロペンのヒドロホウ素化は、アリルベンゼンとボランとを混合することで達成される。次に、N-クロロ-1-(1-ナフチル)エチルアミンを混合物に加えることでシナカルセトを形成する。

【0066】
工程(10a)用のヒドロホウ素化条件としては、Kabalka et al., J. Org. Chem, 49:1656 (1984)に開示されているものなどのヒドロホウ素化条件が挙げられる。BH3以外のボランを使用できる。想定される他のボランとしては、ジシクロヘキシルボラン、ジイソプロピルボラン、ジシアミル(disiamyl)ボラン、9-ボラビシクロ[3.3.l]ノナン(「9-BBN」)などのヒドロホウ素化試薬R2BHが挙げられるが、それに限定されない。ヒドロホウ素化は、Miyaura er al. Chem. Reviews, 2457 2483 (1995)において一般的に論じられている。
【0067】
シナカルセト塩
シナカルセトは、本明細書に開示されている方法のうち1つまたは複数によって作製し、薬学的に許容される塩(例えば酸付加塩)およびその錯体として調合することもできる。薬学的に許容される塩とは、それらが投与される濃度で無毒の塩のことである。そのような塩の調製は、シナカルセトの物理的特性を、それがその生理学的効果を発揮することを妨げることなく改変することによって薬理学的使用を容易にすることができる。物理的性質の有用な改変としては、融点を低減させることで経粘膜投与を容易にすること、および溶解度を増加させることでより高濃度の薬物の投与を容易にすることが挙げられる。
【0068】
薬学的に許容される塩としては、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、スルファミン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、およびキナ酸塩を含有するものなどの酸付加塩が挙げられる。(例えば国際公開公報第92/020642号を参照。)薬学的に許容される塩は、塩酸、硫酸、リン酸、スルファミン酸、酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、マロン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、およびキナ酸などの酸から得ることができる。好ましい態様では、塩は塩酸塩である。
【0069】
薬学的に許容される塩は標準的技術によって調製することができる。例えば、化合物の遊離塩基形を、適切な酸を含有する水溶液または水-アルコール溶液などの好適な溶媒に溶解し、次に溶液を蒸発させることで単離する。別の例では、遊離塩基と酸とを有機溶媒中で反応させることで塩を調製する。
【0070】
シナカルセトの多形
シナカルセトHClの3つの別個の結晶形が現在知られており、本明細書では形態I、II、およびIIIと呼ぶものとし、「多形」と呼ぶことができる。形態IIが調製されたが、室温では不安定であった。シナカルセトの意図される用途は治療上活性な医薬品としてのものであるため、この化合物の安定でかつ薬学的に許容される形態が好ましい態様である。
【0071】
多形性は、同一の化学式を維持しながら異なる結晶形に結晶化する化合物の能力として特徴づけることができる。所与の原薬の結晶多形は、その原薬の任意の他の結晶多形と、同一の方法で互いに結合する同一原子を含有するという点で化学的に同一であるが、安定性、溶解度、融点、容積密度、流動性、バイオアベイラビリティなどの1つまたは複数の物理的性質に影響を与えることがあるその結晶形において異なる。したがって、「多形」という用語は、別の結晶形とは異なるが、同一の化学式を共有する、ある物質の結晶形を意味するように使用される。
【0072】
本発明は精製されたシナカルセト塩酸塩の多形IIIの単離された組成物を特に想定しているが、単離、精製された多形IIIが例えば多形IまたはIIと混合されている組成物を当業者が調製することができるということが想定される。
【0073】
さらに、本発明で使用される組成物において、本明細書に記載の多形IIIをカルシウム擬態薬として使用される別の薬剤との組み合わせで含む薬学的組成物または他の治療用組成物を当業者が調製することができるということを理解すべきである。そのような組み合わせ治療薬組成物は、所望の治療性、寛解性、阻害性、または予防性のPTH低減効果またはカルシウム低減効果を生成するカルシウム模倣組み合わせ治療薬として組み合わせ効果を有するように使用することができる。
【0074】
本発明の治療用の態様では、対象が低カルシウム血症になることを回避するために、組成物を投与することができ、また組成物の効果が日常的にモニターされ、したがって、血清カルシウムレベルが7.8mg/dL未満に低減されることは回避されるはずである。他の態様では、対象におけるPTHレベルを低減させるためにカルシウム模倣治療薬が投与され、PTHレベルは約250pg/mlのレベルに低減される。しかしながら、PTHレベルが150pg/ml未満に低減されることを回避するように治療薬をモニターおよび調整すべきである。したがって、PTHレベルを約200pg/ml〜約300pg/mlの範囲に低減させかつ維持するように治療薬を設計することが好ましい。
【0075】
したがって、典型的な処置レジメンでは、対象において約150pg/ml〜約300pg/mlのPTHレベルを実現するために多形IIIの一日量が投与されるということが想定される。したがって、各種態様では、対象について、約5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、または30mgの剤形を毎日投与する治療レジメンを開始する。組成物の投与の前後に対象におけるPTHレベルをモニターする。多形の用量は、約200pg/ml〜約300pg/mlのPTHのレベルを維持するという所望の治療効果を用量が有するレベルまで増加させることができる。対象におけるPTHレベルが300pg/mlよりも高いことがわかっている場合、投与する多形の用量を増加させることができる。PTHのレベルが200pg/mlまたは約200pg/mlであることがわかっている場合、多形の用量を維持するかまたは低減させることができる。PTHのレベルが200pg/ml未満であることがわかっている場合、多形の用量を低減させるべきである。PTH濃度をモニターすることができ、患者のPTHレベルが再度300pg/ml以上に達する場合に多形投与レジメンを再開することができる。同様に、多形IIIでの処置に応答して血清カルシウムレベルをモニターすることができ、したがって血清カルシウムレベルは、約8.4mg/dLである血清カルシウムの正常レベルの下限以上に維持することができる。多形での処置によって約7.8mg/dL〜約8.4mg/dLの間の範囲に血清カルシウムレベルが低下することを血液検査が示す場合、多形の用量を低下させ、かつ/またはカルシウム含有リン吸着剤および/もしくはビタミンDステロールと組み合わせるべきである。カルシウムレベルが7.5mg/dL未満になる場合、カルシウム模倣治療薬を中止すべきであり、かつ/または、ビタミンDステロールおよび/もしくはカルシウム含有リン吸着剤の量を、血清カルシウムレベルが再度8.4mg/dLを超えるまで増加させるべきである。
【0076】
本明細書で使用する「非晶質」という用語は、サンプルのX線粉末回折(XRPD)パターンにおいて、明確なピークを欠いているかまたはブロードな「ハロ」の特徴を有するサンプルを意味する。「非晶質」という用語は、結晶含有量が少なすぎるためにXRPDまたは他の回折技術によって識別可能なパターンを与えることができない材料を意味することもある。ガラス状材料は非晶質であると想定される。非晶質材料は、真の結晶格子を有さず、結果として真のというよりはガラス状の固体であり、非常に粘稠性の非結晶液体に技術的に類似している。ガラスは、真の固体というよりは準固体の非晶質材料として記述する方がよいことがある。したがって、非晶質材料は準固体のガラス状材料を意味することがある。溶媒の急速な蒸発によって行われることが多い、溶液からの化合物の析出には、化合物の非晶形が好ましいということが知られている。
【0077】
本明細書で使用する「ブロード」または「広幅化した」という用語は、XRPD、核磁気共鳴(NMR)分光法、および赤外(IR)分光法の線を含むスペクトル線(ピーク)を記述するために使用されており、ベースラインスペクトルの線幅に関する相対的な用語である。多くの場合、ベースラインスペクトルは、溶媒組成ならびに温度および圧力などの性質を含む物理的および化学的条件の所与のセットから直接得られる、特定の化合物の操作されていない結晶(下記に定義)形のそれであり、例えば、粉砕前の結晶材料に対する粉砕または微粉砕された結晶材料のXRPDスペクトルを記述するものである。線の広幅化は、化合物の化学的部分の配向のランダム性の増加を示すものであり、したがって非晶質含有量の増加を示すものである。異なる結晶化条件を経由して得られる結晶材料間で比較を行う場合、広幅化は、広幅化したスペクトル線を有するサンプル、または場合によっては同一ではないが同様のスペクトルを有する結晶の混合物のいずれかの、非晶質含有量の増加を示すものである。
【0078】
薬剤の特定の結晶形は結晶の熱力学的安定性に影響する。特定種類の存在する結晶の形態に応じて、特定の化合物を含有する様々な量の非晶質固体材料が存在する。そのような非晶質固体材料は、結晶材料を含む、最初の結晶化の副生成物および/または結晶の分解生成物として存在し得る。したがって、本明細書で使用する「結晶性の」は、材料が識別可能な回折パターンを有する限りにおいて異なる程度の非晶質含有量を想定している。多くの場合、結晶材料の非晶質含有量はこの材料の粉砕または微粉砕によって増加させることができ、この粉砕または微粉砕は、粉砕されていない結晶材料に対する回折スペクトル線および他のスペクトル線の広幅化によって証明される。十分な粉砕および/または微粉砕によって、XRPDまたは他の特定の結晶スペクトルが識別不可能になり得る程度まで、未粉砕の結晶材料に対して線を広幅化することができ、これによりこの材料は実質的に非晶質になるか、またはかろうじて識別可能になり、これを準非晶質と称することがある。
【0079】
本明細書で使用する「痕跡(trace)」という用語は、本明細書で使用する物理的および化学的検出方法によって検出可能な量を意味する。例えば、水、結晶化溶媒、およびシナカルセトの非晶形はいずれも、痕跡量の形態III中に、サンプルまたはその生物活性のXRPD、NMR、またはIRスペクトル測定に著しく影響を与えることのないように存在し得る。
【0080】
いくつかの例では、多形は結晶性の非水和物、一水和物、または半水和物であり得る。非晶質の多形は、溶媒和したシナカルセトから溶媒を急速に蒸発させることによって、または本明細書に記載されている各種の結晶性の非晶形のいずれかを粉砕するか、微粉砕するか、そうでなければ物理的に加圧もしくは研磨することによって誘導することができる。有機化合物を析出および結晶化させるための一般的方法を任意のシナカルセト多形の調製に適用することができる。これらの一般的方法は合成有機化学および薬学的調剤の分野の当業者に公知であり、例えばJ. March, "Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms and Structure," 4th Ed. (New York: Wiley-Interscience, 1992)に記載されている。
【0081】
特定のクラスの態様では、形態IIIは「コールドフィンガー昇華」を使用して調製される。昇華とは、液体になることなく、固体状態からガス状態にまたはガス状態から固体状態に化合物が直接変換されることについて使用される用語である。このプロセスを行うための装置は、昇華される化合物が配置される部分、および、この部分の上側にある、精製された材料が収集されるクーラー部を典型的に有する。典型的には、化合物は、コールドフィンガーと呼ばれる冷蔵された部品上で加熱および収集され、したがって、「コールドフィンガー」は、昇華実験において使用される冷蔵されたチューブの慣用名である。シナカルセトの形態IIIの調製においては、固体の形態Iはフラスコ中で真空下、ガス状態まで加熱され、結晶の形態IIIは、フラスコ中に挿入されるコールドフィンガーの表面上に蓄積される。通常、コールドフィンガーを冷却するには冷却用水またはドライアイスを使用する。多形IIIは下記のようにして得ることができる。形態Iの昇華によって形態IIIが形成される。コールドフィンガー昇華装置を使用して、実験室規模で形態I材料上で昇華を行った。装置をシリコーン油中に浸漬し、コールドフィンガーを水冷した。系を真空下で封止した。最終固体を集めるまで真空を開放しなかった。固体を光学顕微鏡法を通じて観察し、XRPD分析によって特性決定した。
【0082】
別の特定のクラスの他の態様では、溶融急冷した非晶質材料から形態IIIを調製する。このプロセスでは、形態Iを約190〜200℃で溶融させる。次にそれを冷浴(ドライアイス+アセトン)中で少なくとも15分間急冷する。次にその材料を微粉末に粉砕し、次にそれを90℃で約3.5時間加熱することで形態IIIを生成する。
【0083】
シナカルセトの形態IIIは準安定な形態である。様々な溶媒系および結晶化方法を利用したが、短距離秩序材料はXRPD分析によって観察した。毛細管スクリーン中で観察されたXRPDパターンは、いずれも最初の形態IIIの結晶について観察されたパターンと同様であった。光学顕微鏡法および後続のXRPD分析によって決定される通り、選択された毛細管のさらなる熱処理は異なる材料を生成しないようであった。
【0084】
構造決定に好適なシナカルセトの形態IIIの結晶を、形態Iの固体のコールドフィンガー昇華によって得た。形態IIIの結晶構造は、非対称単位中に2つのシナカルセトHCl分子を含有する。2つの分子間の相違は、トリフルオロメチル基を含有する芳香環が約180°回転しているということである。形態IIIの分子は、層状の充填モチーフを有し、一次元の水素結合相互作用を通じて結びついている。
【0085】
非晶質サンプルの調製を、いくつかの技術、すなわち結晶Iの固体の溶融/急冷、噴霧乾燥、さらには低温粉砕を通じて試みた。3つの技術はいずれも非晶質材料を与え、次にそれを形態IIIの調製に使用することができた。結晶材料と短距離秩序材料との間の関係を決定するために、低温粉砕、溶融/急冷、および噴霧乾燥した材料をXRPDによって分析したが、可変温度XRPDによって分析することもできた。溶融/急冷技術および噴霧乾燥技術を使用して作製される非晶質材料から純粋な形態IIIを容易に調製した。低温粉砕技術は形態Iと形態IIIとの混合物を与える傾向がある。
【0086】
先に記した通り、形態IIIを調製する1つの方法は、溶融急冷した非晶質材料を使用するものである。溶融/急冷した非晶質材料を調製するために、形態Iを190〜200℃で溶融させる。次にそれを氷浴(ドライアイス+アセトン)中で少なくとも15分間急冷する。このプロセスによって非晶質材料が生成され、次にそれを形態IIIの調製に使用することができる。
【0087】
低温粉砕手順では、形態Iを液体窒素下で約40分間凍結破砕する。このことによって非晶質材料が生成され、次にそれを形態IIIの調製に使用することができる。この非晶形を90℃で3.5時間加熱することで形態IIIを調製する。この手順は形態Iと形態IIIとの混合物を与える傾向がある。
【0088】
非晶質材料を調製するための別の例示的手順では、噴霧乾燥を使用することができる。例示的な噴霧乾燥技術では、トルエン溶媒中の10mg/mL形態I溶液を噴霧乾燥させ、下記の表に示す条件下で収集した。
【0089】
(表)

【0090】
次に、噴霧乾燥技術により得た非晶質材料を、先に論じたようにやはり形態IIIの調製に使用し、例えば90℃で3.5時間加熱する。
【0091】
X線粉末回折分析を、Cu Kα放射線を使用するShimadzu XRD-6000 X線粉末回折計を使用して行った。この機器はロングファインフォーカスX線管を備えている。管の電圧およびアンペア数をそれぞれ40kVおよび40mAに設定した。発散スリットおよび散乱スリットを1°に設定し、受光スリットを0.15mmに設定した。回折した放射線をNaIシンチレーション検出器によって検出した。2.5°から40°2θまでの3°/分(0.4秒/0.02°ステップ)でのθ-2θ連続走査を使用した。機器のアラインメントを検査するためにケイ素標準物質を分析した。XRD-6000 v. 4.1を使用してデータを収集および分析した。サンプルを分析用に、ケイ素インサート付きのアルミニウムホルダー中にそれらを配置することで調製した。
【0092】
また、X線粉末回折分析を、120°の2θ範囲を有するCPS(湾曲位置敏感型)検出器を備えたInel XRG-3000回折計を使用して行った。約4°2θで出発するCu-Kα放射線を使用して、0.03°2θの分解能でリアルタイムデータを収集した。管の電圧およびアンペア数をそれぞれ40kVおよび30mAに設定した。モノクロメータースリットを160μm単位で5mm(または2mm)に設定した。パターンを2.5°2θから40°2θまで表示する。サンプルを分析用に、直径1.0mmのガラス毛細管中にそれらを充填することで調製した。各毛細管を、データ取得中に該毛細管の旋回を可能にするように電動化されているゴニオメータヘッド上に搭載した。サンプルを5分間分析した。ケイ素参照標準物質を使用して機器の較正を行った。
【0093】
また、X線粉末回折分析を、調製された毛細管について、Bruker D-8 Discover回折計およびBrukerのGeneral Area Diffraction Detection System(GADDS, v. 4.1.14)を使用して行った。Cu Kα放射線の入射束を、ファインフォーカス管(40kV, 40mA)、Gobelミラー、および0.5mm二重ピンホールコリメータを使用して生成した。平行移動ステージに固定された毛細管ホルダー上に毛細管を位置づけた。ビデオカメラおよびレーザーを使用することで、入射束を横断するように対象となる領域を位置づけた。20°の一定の検出器角(2θ)を使用して伝送モードでサンプルを分析した。入射束を、毛細管の法線曲面に対して10°で走査し、分析中に毛細管の長さに沿って±1.0mmでラスター化した。入射束の走査およびラスター化によって、配向統計を最適化し、回折信号を最大化する。回折パターンを、サンプルから14.94cmに位置するHi-Star面積検出器を使用して100秒内で収集し、GADDSを使用して処理した。回折パターンのGADDS画像の強度を、0.04°2θのステップサイズを使用して、約2°2θから37°2θまでおよび-163°χから-17°χまで積分した。積分されたパターンは回折強度を2θの関数として表示する。
【0094】
可変温度XRPD(VT-XRPD)を、Anton Paar HTK 1200高温ステージを備えたShimadzu XRD-6000 X線粉末回折計上で行った。サンプルをセラミックホルダー中に充填し、3°/分(0.4秒/0.02°ステップ)で2.5°から40°2θまで分析した。各実験についてランプ速度および保持時間を変動させることができ、そのような変動は、X線粉末回折計設備を操作する分野の当業者には公知である。機器のアラインメントを検査するためにケイ素標準物質を分析した。バニリンおよびスルファピリジン標準物質を使用して温度の較正を行った。XRD-6000 v. 4.1を使用してデータを収集および分析した。VT-XRPDを、受け取ったままの近距離秩序材料、および、溶融物の急冷および低温粉砕を通じて調製された材料について行った。
【0095】
示差走査熱分析(DSC)を、結晶材料について、TA Instruments示差走査熱量計2920または他の同様の機器を使用して行うこともできる。サンプルをアルミニウムDSCパンの中に配置し、重量を正確に記録した。パンを蓋で覆い、次にクリンプした。そのような分析では、サンプルセルを25℃で平衡化し、窒素パージ下10℃/分の速度で加熱した。結晶材料を典型的には350℃に加熱し、最高転移温度を記す。
【0096】
熱重量(TG)分析を、結晶材料について、TA Instruments 2950熱重量分析計または他の同様の機器を使用して行うことができる。サンプルをアルミニウムサンプルパンの中に配置し、TG炉に挿入する。炉を最初に25℃で平衡化し、次に窒素下10℃/分の速度で最終温度350℃まで加熱する。ニッケルおよびAlumel(商標)を較正用標準物質として使用できる。
【0097】
FT-ラマンスペクトルを多形IIIについてFT-Raman 960分光計(Thermo Nicolet)または他の同様の機器上で取得することもできる。この分光計は1064nmの励起波長を使用する。約0.7WのNd:YVO4レーザー出力を使用してサンプルを照射する。ラマンスペクトルをヒ化インジウムガリウム(InGaAs)検出器によって測定する。サンプルを分析用に、ガラス管内にこの材料を配置し、アクセサリ中の金でコーティングされた管ホルダー内にこの管を位置づけることによって調製する。サンプル走査(例えば典型的には約250回のサンプル走査)を、3600cm-1から98cm-1まで、4cm-1のスペクトル分解能で、Happ-Genzelアポダイゼーションを使用して収集する。硫黄およびシクロヘキサンを使用して波長の較正を行った。
【0098】
NMR分析では、溶液1H核磁気共鳴(NMR)スペクトルを、周囲温度で、Varian UNITYINOVA-400または他の同様な分光計を例えば使用して、399.804MHzの1Hラーモア周波数で取得することができる。サンプルをDMSO-d6に溶解させる。7.8μ秒の1Hパルス幅、2.50秒の取得時間、走査間の5秒の遅延、32000個のデータ点での6400Hzのスペクトル幅、および40回の同時追加される走査を用いてスペクトルを取得する。自由誘導減衰(FID)を、Varian VNMR 6.1Cソフトウェアを使用して、65536個の点、および信号対ノイズ比を改善するための0.2Hzの指数関数的線広幅化係数で処理する。不完全に重水素化されたDMSOからの残留ピークは、典型的には約2.50ppmで見られる。スペクトルは、内部参照を、例えば0.0ppmでの内部テトラメチルシラン(TMS)を参照することができる。
【0099】
5.0倍対物レンズ、交差偏光子、および一次赤色補償板付きのLeica DM LP偏光顕微鏡(または他の同様の機器)、ならびに0.8倍〜10倍対物レンズ付き、交差偏光子および一次赤色補償板付きまたは無しのLeica立体鏡を例えば用いて行う光学顕微鏡法を使用して、結晶材料を特性決定することもできる。バイアルもしくはガラスマイクロビーカー中、またはカバーガラスもしくはガラススライド(多くの場合1滴の凍結保護物質PARATONE-Nを伴う)上でサンプルを眺めることができる。
【0100】
シナカルセトを使用する薬学的組成物および治療薬
本開示は、前記の多形を使用する薬学的組成物および製剤をさらに提供する。本薬学的組成物および製剤は、経口、注射、および/または吸入を含む各種形態の投与に適応される。本開示はまた、シナカルセト塩酸塩の多形を作製するための方法、シナカルセト塩酸塩の多形の薬学的製剤を製造する方法、ならびに、例えばHPT、副甲状腺癌、および他の高カルシウム血症関連状態などの各種疾患を処置する方法も提供する。
【0101】
「有効な」または「治療上有効な」は、カルシウム擬態薬として有効であり、したがってセンシパー(登録商標)の所望の治療性、寛解性、阻害性、または予防性の効果を生成する、本発明の化合物の多形または組成物を記述するように意図されている。各種態様におけるカルシウム模倣性、治療性、寛解性、阻害性、または予防性の効果のレベルまたは程度は、センシパー(登録商標)を使用する場合に見られるそれと同一かまたはそれより優れているが、そのような効果のレベルまたは程度は、その効果が任意のカルシウム擬態薬の非存在下で見られる効果よりも大きいかまたは優れている限り、センシパー(登録商標)について観察されるそれに満たないことがある。「効果」は、高カルシウム血症患者における血清カルシウムレベルの低減、PTHレベルの低減、または血清リンレベルの低減などの生化学的な生理効果であり得る。あるいは、「効果」は、血清カルシウムレベル、PTHレベルなどの治療的低減を実現した結果として観察されるもの、例えば、CKDの症状の寛解、カルシウムレベルの増大に付随する症状の低下(例えば不安症、うつ病、悪心、嘔吐、骨折、腎結石、血管または軟部組織の石灰化の低減、およびいくつかの場合では昏睡の可能性の低下)であり得る。
【0102】
一局面では、本発明の多形の形態IIIは、カルシウム受容体活性を調節可能であり、また、カルシウム受容体の1つまたは複数の活性を調節することで行うことができる疾患または状態の処置において使用される。先に記したように、Ca2+レベルは厳密に制御され、したがってCa2+レベルは血液凝固、神経および筋肉の興奮性、ならびに適切な骨形成などの各種プロセスを制御する。例えば、細胞外Ca2+は、副甲状腺細胞からの副甲状腺ホルモンの分泌を阻害し、破骨細胞による骨吸収を阻害し、C細胞からのカルシトニンの分泌を刺激する。一局面では、シナカルセトによって処置される疾患または状態を、異常なカルシウム恒常性などの異常な骨およびミネラルの恒常性によって特徴づけることができる。異常なカルシウム恒常性は、下記の活性のうち1つまたは複数によって特徴づけられる: (1)血清カルシウムの異常な増加または低下; (2)カルシウムの尿中排泄の異常な増加または低下; (3)例えば骨ミネラル密度測定によって評価される、骨カルシウムレベルの異常な増加または低下; (4) 食事性カルシウムの異常吸収; (5)副甲状腺ホルモンおよびカルシトニンなどの血清カルシウムレベルに影響を与えるメッセンジャーの産生および/または放出の異常な増加または低下; ならびに(6)血清カルシウムレベルに影響を与えるメッセンジャーによって誘発される応答の異常な変化。カルシウム恒常性のこれらの異なる局面の異常な増加または低下は、母集団において生じるそれに関するものであり、一般的には疾患または状態に付随している。
【0103】
患部細胞に基づいて処置または予防され得る具体的な疾患または状態としては、中枢神経系のそれ、例えば、発作、脳卒中、頭部外傷、脊椎損傷、心停止もしくは新生児窮迫におけるような低酸素誘導性神経細胞損傷、てんかん、アルツハイマー病、ハンチントン病、およびパーキンソン病などの神経変性疾患、認知症、筋緊張、うつ病、不安症、パニック障害、強迫性障害、外傷後ストレス障害、統合失調症、向精神薬悪性症候群、ならびにトゥレット症候群; 腎臓による過剰な水再吸収を包含する疾患、例えば、ADH不適合分泌症候群(SIADH)、肝硬変、うっ血性心不全、およびネフローゼ; 高血圧; カチオン性抗生物質(例えばアミノグリコシド抗生物質)からの腎毒性の予防および/または低下; ならびに自己免疫疾患および臓器移植拒絶反応も挙げられる。さらに、骨およびミネラル関連障害(Coe and Favus, Disorders of Bone and Mineral Metabolism, Raven Press, 1990に記載のような)、腎疾患、内分泌疾患、がん、循環器疾患、神経疾患、および妊娠に付随する疾患も処置することができる。
【0104】
ある種の態様では、本組成物は、異常な皮膚細胞の増殖を減少させることによる乾癬の処置または寛解に有用である。他の態様では、本組成物を、バソプレシン(ADH)不適合分泌症候群などのバソプレシン過剰状態における水分保持を減少させるために使用することができる。多形IIIは、(a)レニン分泌を減少させること、および/または(b)血管平滑筋によるPTHrP(PTH関連ペプチド)などの血管拡張物質の産生を刺激することによる高血圧の処置に有用であり得る。血小板の凝集性を増加させるために多形の形態IIIを使用することができるということも想定され、このことは血小板数が少ない場合に有用であり得る。カルシウムは結腸細胞および乳腺細胞の分化を促進するということも知られており、したがって、多形の形態IIIが結腸がんまたは乳がんの危険性を減少させると予測することができる。カルシウム擬態薬として、シナカルセトの形態IIIは、高カルシウム血症障害の治療における有用なカルシウム低下作用を有すると予測される。破骨細胞に対するカルシウム擬態薬の阻害効果、および、カルシウム低下性のペプチドであるカルシトニンの分泌に対するそれらの刺激によって、それらは高カルシウム血症およびその症状の治療において有用になる。また、シナカルセトの形態IIIは、カルシウム受容体を活性化することで低カルシウム血症の症状を改善する。さらに、カルシウムは近位尿細管における1,25-ジヒドロキシビタミンDの形成を抑制するものであり、このビタミンD代謝物は、腎結石患者において頻繁に過剰産生され、彼らの高カルシウム尿症の一因となる。シナカルセトの形態IIIなどのカルシウム擬態薬による1,25-ジヒドロキシビタミンD形成の抑制は、カルシウム腎結石疾患の処置に有用であると予測される。
【0105】
シナカルセトの形態IIIの治療用調製物はヒト対象の処置において使用される可能性が高いが、獣医学的処置も想定されるということを理解すべきであり、他の霊長類、ブタ、ウシ、および家禽などの家畜; ならびにウマ、イヌ、およびネコなどのスポーツ用動物およびペットを処置するために本組成物を使用することができる。
【0106】
シナカルセト関連組成物を使用するためのさらなる方法および組成物、ならびにそのような組成物によって処置される疾患については、当業者は米国特許第6,011,068号; 第6,031,003号; 第6,211,244号; 第6,313,146号を参照する。
【0107】
本明細書において引用されるすべての特許、刊行物、および参考文献は参照により本明細書に完全に組み入れられる。本開示と組み入れられた特許、刊行物、および参考文献との間に矛盾が生じる際には、本開示が制御すべきである。
【0108】
実施例
本発明を下記の実施例によってさらに説明するが、それを本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【0109】
実施例1
アリル位アミノ化

(R)-(1-ナフチル)エチルアミン(257mg、1.5mmol)および3-トリフルオロメチルシンナミルアセテート(244mg、1mmol)を15mLフラスコに供給した。テトラヒドロフラン(THF、2mL)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(58mg、5mol%)を加え、フラスコを窒素でパージした。反応混合物を室温で16時間攪拌した。溶媒を真空下で蒸発させ、残渣をジクロロメタン(10mL)に溶解させた。有機相を飽和炭酸水素ナトリウム(5mL)で洗浄し、水相をジクロロメタン(5mL)で逆抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発乾固した。ジクロロメタン:メタノール(50:1)を溶離液として使用するシリカゲル上のクロマトグラフィーによって、所望の(R)-(1-ナフタレン-1-イル-エチル)-[(E)-3-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-アリル}-アミン(294mg、254nmでのHPLC純度98.1%、未補正収率83%)を得た。生成物には多少のトリフェニルホスフィンが混入していた。ジアルキル化生成物も副生成物として形成された。
【0110】
また、この反応を分岐酢酸アリルを用いて行った。非最適化条件下では、HPLCは40%のN-モノアルキル化生成物および54.7%のN,N-ジアルキル化生成物を示した。

次に、メタノール中、パラジウム炭素および水素ガスの存在下で、アリルアミンをシナカルセトに還元した。アリルアミン(ジデヒドロ-センシパー(登録商標))(252mg、0.709mmol)、パラジウム(木炭に対して10重量%、25mg)、およびメタノール(5mL)を15mLフラスコに供給した。反応混合物を水素雰囲気下14時間攪拌した。反応混合物をセライト(登録商標)のプラグを通じて濾過し、次に濃縮した。ジクロロメタン:メタノール(20:1)を溶離液として使用するシリカゲル上のクロマトグラフィーによってシナカルセト(229mg、254nmでのHPLCによる純度89.3%、未補正収率90%)を得た。生成物には多少のトリフェニルホスフィンが混入していた。
【0111】
代わりに、(R)-(+)-1-(1-ナフチル)エチルアミンと1-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-プロプ-2-エン-1-オールとの間のクロスカップリング反応によってシナカルセトを合成した。1-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-プロプ-2-エン-1-オールは下記の通り合成した。

氷/水浴の上で0〜5℃に冷却した、臭化ビニルマグネシウム(2.2当量; 37.9mmol; 37.9mL)の1.0M THF溶液に、3-(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド(1.0当量; 17.23mmol; 2.29mL)を2分間かけて加えた。15分後に冷浴を除去し、反応液を室温で2時間攪拌した。反応液を塩化アンモニウム水溶液で反応停止した。溶媒を真空中で除去した。水層をジクロロメタン20mLで3回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を真空中で除去した。3.17g単離; 黄色液体として、収率91%。生成物の同一性を1H NMR

によって確認した。
【0112】
次に、1-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-プロプ-2-エン-1-オールを(R)-(+)-1-(1-ナフチル)エチルアミンと反応させることでシナカルセトを合成した。代表的な方法では、1-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-プロプ-2-エン-1-オール(1.0当量; 1.0mmol; 202.17mg)および(R)-(+)-1-(1-ナフチル)エチルアミン(1.5当量; 1.5mmol; 0.241mL)のジオキサン溶液(5mL)に触媒Pt(cod)Cl2(1.0mol%; 3.7mg)および配位子DPEphos(2mol5; 10.8mg)を供給した。反応混合物を窒素雰囲気下15時間還流させた後、それを水で希釈し、続いて酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した。溶媒を真空中で除去して得た黄色油状物を、ジクロロメタン/メタノール(49:1)を用いるシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。収率: 159mg単離; 黄色油状物として44%。生成物の同一性をLC/MSによって確認した。(M+1): 356.4

【0113】
実施例2
ペプチドカップリング
一代替態様では、本発明は、適切なアミンと予め活性化したカルボン酸との間の反応によってシナカルセトを合成するための方法論を提供する。

【0114】
窒素の不活性雰囲気中で、(R)-(+)-1-(1-ナフチル)エチルアミン(1.1当量; 23.4mmol; 4g)およびトリエチルアミン(1.1当量; 23.4mmol; 3.26mL)のトルエン(100mL)中攪拌溶液にtrans-3-トリフルオロメチルシンナモイルクロリド(1.0当量; 21.3mmol; 5g)を加えることによって反応を開始した。室温で2時間攪拌後、水(100mL)を加えて、粗生成物を白色固体として析出させた。固体を濾過し、真空オーブン中で終夜55℃で乾燥させた。収率: 82%; 6.49g。(E)-N-((R)-1-ナフタレン-1-イル-エチル)-3-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-アクリルアミドの同一性を1H NMR(400MHz、CDCl3)および高分解能質量分析によって確認した。

【0115】
上記方法の変形では、カップリング反応中にカルボン酸をそのままで活性化することができる。例えば、酢酸エチル(EtOAc 10mL)中の1,1'-カルボニルジイミダゾール(1.3当量; 3.0mmol; 0.49g)を使用して3-(トリフルオロメチル)-ケイ皮酸(1.0当量; 2.3mmol; 0.5g)を活性化した。室温で3時間攪拌後、(R)-(+)-1-(1-ナフチル)エチルアミン(1.2当量; 2.78mmol; 0.45mL)の溶液を加えた。反応混合物を室温でさらに1時間攪拌し、カップリング反応の進行をLC/MSによってモニターした。粗溶液の収率は14%であり、生成物の同一性をRRTおよびLC/MSによって確認した。(M+1): 370.0.

【0116】
炭素-炭素二重結合およびアミド基の還元を、ボランを還元剤として使用して行った。

【0117】
(E)-N-((R)-1-ナフタレン-1-イル-エチル)-3-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-アクリルアミド(1.0当量; 0.27mmol; 100mg)のトルエン(1mL)中懸濁液に、トルエン中2.0M溶液としてのボラン-硫化メチル錯体(1.5当量; 0.44mmol; 0.22mL)を加えた。反応液を窒素雰囲気下50℃に3時間加熱した後、冷却し、2.5N HCl(1mL)を加えた。酸を加えた後に引き続き反応混合物を50℃で1時間加熱し、続いて冷却した反応混合物を高速液体クロマトグラフィー-質量分析検出によって分析して、所望の飽和生成物を得た。溶液収率: 93%。同一性をRRTおよびLC/MSによって確認した。(M+1): 358.4.
【0118】
あるいは、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)などの水素化物供与体を還元剤として使用することもできる。

【0119】
したがって、DCM中1.0M溶液としての水素化ジイソブチルアルミニウム(4.25当量; 5.75mmol; 5.75mL)を、シリンジを経由して(E)-N-((R)-1-ナフタレン-1-イル-エチル)-3-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-アクリルアミド(1.0当量; 1.36mmol; 0.5g)のトルエン(10mL)中攪拌懸濁液に不活性窒素雰囲気下で加えた。反応の進行をHPLCによって周期的にモニターしながら、反応液を50℃に90分間加熱した。溶液収率: 60%。同一性をRRTおよびLC/MSによって確認した。(M+1): 358.4
【0120】
さらに別の変形では、(E)-N-((R)-1-ナフタレン-1-イル-エチル)-3-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-アクリルアミドの二重結合およびアミドカルボニルの還元を段階的に行う。カルボニル基またはアルケン二重結合のいずれかを最初に還元することができる。例えば、アルケン二重結合の還元を金属触媒の存在下での水素化によって実現する。

【0121】
(E)-N-((R)-1-ナフタレン-1-イル-エチル)-3-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-アクリルアミド(1.0当量; 0.67mmol; 250mg)およびPd/C 10重量%(25mg)の懸濁液を、メタノールとトルエンとの混合物(7mL/1mL)中で攪拌した。反応フラスコを排気し、水素で満たしたバルーンを(3回)使用して再度満たした。反応混合物を室温で攪拌し、反応の進行を高速液体クロマトグラフィーを使用してモニターした。90分後、反応混合物をセライトベッドの上で濾過し、濾液から溶媒を真空中で除去した。得られた固体を真空オーブンを使用して終夜45℃で乾燥させた。単離収率: 91.2%(229mg)。アミドの同一性を1H NMRおよび質量分析

によって確認した。
【0122】
次に、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、または水素化カルシウムなどの水素化物供与体を還元剤として使用して、単離されたアミドを対応する飽和類似体(メチレン部分)に還元する。
【0123】
実施例3
金属によって触媒されるクロスカップリング反応
シナカルセトは、適切に置換されたハロゲン化アリールとN-((R)-1-ナフタレン-1-イル-エチル)-アクリルアミドとの間の、金属によって触媒されるカップリング反応を経由して合成することができる。(R)-(+)-1-(1-ナフチル)エチルアミン(2.50g、14.6mmol、1.0当量)およびトリエチルアミン(1.2当量; 17.5mmol; 1.77g)のトルエン(50ml)中氷冷溶液にシリンジを経由して塩化アクリロイル(1.2当量; 17.5mmol; 1.58g)を加えることでアクリルアミドを合成した。塩化アクリロイルの添加が完了後、反応混合物を室温に暖めた。室温で1時間攪拌後、反応混合物に水(50mL)を加えることで反応液を反応停止した。析出した粗生成物を濾過し、真空中で乾燥させた。粗収率: 79%; 3.1g。生成物の同一性を1H NMRおよびLC/MS

によって確認した。

【0124】
アクリルアミドと1-ブロモ-3-(トリフルオロメチル)ベンゼンとを、金属によって触媒されるクロスカップリング条件を使用して反応させることでシナカルセトを合成した。一態様では、N-((R)-1-ナフタレン-1-イル-エチル)-アクリルアミド(1.0当量; 0.44mmol; 100mg)、酢酸パラジウム(II)(5mol%; 4.9mg)、トリ-o-トリルホスフィン(0.1当量; 0.44mmol; 13.4mg)をアセトニトリル(25mL)中に懸濁させた。この懸濁液にシリンジを経由して1-ブロモ-3-(トリフルオロメチル)ベンゼン(1.0当量; 0.44mmol; 99mg)およびトリエチルアミン(30当量; 13.2mmol; 1.8mL)を加えた。反応液を16時間還流加熱して(E)-N-((R)-1-ナフタレン-1-イル-エチル)-3-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-アクリルアミドを生成物として得た。溶液収率: 79%。同一性をRRTおよびLC/MSによって確認した。(M+1): 370.4

【0125】
シナカルセトを合成するための代替的なクロスカップリング戦略は、触媒としての氷酢酸(2mL)中酢酸パラジウム(II)(5mol%; 11.2mg)および2,2-ジピリジル(10mol%; 15.6mg)の存在下での3-(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸(3.0当量; 3mmol; 0.57g)とN-((R)-1-ナフタレン-1-イル-エチル)-アクリルアミド(1.0当量; 1.0mmol; 225mg)との反応を包含する。反応は、混合物を窒素雰囲気下40℃で3日間加熱することで行った。反応の終わりに、定量分析用に粗混合物をメスフラスコ中でメタノールで希釈した。溶液収率: 9.1%。同一性をRRT、LCMSによって確認した。(M+1): 370.4

【0126】
実施例4
アルキン還元
本発明はまた、別の態様において、アルキン前駆体の還元を経由してシナカルセトを合成するための代替経路を提供する。アリールアセチレンと適切に置換されたイソシアネートとを反応させることで前駆体を得る。例えば、3-エチニル-α,α,α-トリフルオロトルエン(0.73mL; 5.06mmol; 2.0当量)の無水THF(20mL)中溶液を-78℃に冷却した(アセトン/ドライアイス浴)。次に、n-BuLi(1.6M、2.69mL; 4.30mmol; 1.7当量)のヘキサン溶液を加え、反応混合物を-78℃で30分間攪拌した。次に、(R)-1-(1-イソシアネートエチル)ナフタレン(1.0当量; 2.53mmol; 0.447mL)のTHF中溶液を反応混合物に加え、これを-78℃でさらに30分間攪拌した。塩化アンモニウム水溶液を有機混合物に加えることで反応を停止させた。有機層を水で繰り返し抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を真空中で除去して3-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-プロピン酸((R)-1-ナフタレン-1-イル-エチル)-アミドを生成物として得た。830mg単離、収率89.2%。生成物の同一性を1H NMRおよび高分解能質量分析

によって確認した。

【0127】
アルキン-アミド前駆体を還元することでシナカルセトを得る。一態様では、金属によって触媒される水素化によりアルキンを還元した。具体的には、二つ口丸底フラスコ中の3-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-プロピン酸((R)-1-ナフタレン-1-イル-エチル)-アミド(1.0当量; 0.68mmol; 250mg)のメタノール溶液(7mL)にPd/C 10重量%(28mg)を加えた。反応フラスコを排気し、水素で満たしたバルーンを(3回)使用して再度満たした後、水素の陽圧下、室温で反応混合物を攪拌した。反応の進行をHPLCおよびLC/MSでモニターし、1時間後にアルキン基の還元が完了した。セライトベッドの上で反応混合物を濾過することで反応を停止させ、溶媒を除去して、得られた固体を真空中45℃で終夜乾燥させた。生成物の同一性を1H NMRおよびLC/MSによって確認した。定量的収量の生成物を得た(224mg)。


【0128】
一代替態様では、ジボランを還元剤として使用した。したがって、3-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-プロピン酸((R)-1-ナフタレン-1-イル-エチル)-アミド(1.0当量; 0.27mmol; 100.8mg)のトルエン(2mL)中攪拌懸濁液に、トルエン中2.0M溶液としてのボラン-硫化メチル錯体(2.5当量; 0.68mmol; 0.34mL)を窒素下で加えた。反応液を50℃に7時間加熱し、HCl(1mL)およびMeOH(1mL)の1N溶液を使用して反応停止した。反応停止した反応混合物を90℃で4時間再加熱した後、溶媒を真空中で除去した。得られた残渣をMeOHで希釈し、LC/MSおよびRRTを使用して分析することで最終生成物の同一性を確認した。溶液収率: 22%、LC/MS (M+1): 358.4

【0129】
実施例5
ヒドロホルミル化
さらに別の態様では、ヒドロホルミル化反応を経由してシナカルセトを合成した。

【0130】
したがって、高圧ステンレス鋼反応容器(ChemScan Reactor System)に、トルエンとメタノールとの混合物(1:1; 4mL)中の3-(トリフルオロメチル)スチレン(2.0当量; 3.5mmol; 0.520mL)、(R)-(+)-1-(1-ナフチル)エチルアミン(1.0当量; 1.75mmol; 0.281mL)、Xantphos(4mol%; 40.5mg)、および[Rh(cod)2]BF4(1mol%; 7.1mg)を加えた。容器を合成ガス(CO/H2)で40バールに加圧し、125℃に8時間加熱した。反応混合物を希釈することで分析用にサンプルを調製した後、HPLCシステム上に注入した。溶液収率: 53.8%。生成物の同一性をRRTおよびLCMSによって確認した。(M+1): 358.1.
【0131】
実施例6
アルケンメタセシス
本発明はさらに、スチレン類似体とアクリルアミド誘導体との間の、金属によって触媒されるアルケンメタセシス反応に基づく、シナカルセトのための合成方法論を提供する。したがって、トルエン(0.5mL)中の3-(トリフルオロメチル)スチレン(1.0当量; 0.44mmol; 0.065mL)、N-((R)-1-ナフタレン-1-イル-エチル)-アクリルアミド(1.0当量; 0.44mmol; 100mg)、および第2世代グラブス触媒(15mol%; 56mg)を、冷却管を備えた10mLフラスコに加えた。混合物を不活性雰囲気下85℃で7時間攪拌した。溶媒を真空中で除去し、残渣をメスフラスコ中でメタノールで希釈した。生成物の同一性をRRTおよびLC/MSによって確認した。(M+1): 370.4. クロマトグラムに対する溶液収率パーセントは6.9%であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)クロスメタセシス(cross-metathesis)を可能にする条件下で式(I)の化合物と式(II)の化合物とを混合することで式(III)の化合物を生成する工程:

式中、各R1は同一または異なっており、水素、C1〜C6アルキル、OC1〜C6アルキル、アリール、O-アリール、ヘテロアリール、およびO-ヘテロアリールからなる群より選択される;
(b)アリル位アミノ化を可能にする条件下で化合物(III)と1-(1-ナフチル)エチルアミンとを混合することで式(IV)の化合物を生成する工程:

; ならびに
(c)還元を可能にする条件下で化合物(IV)を還元することでシナカルセトまたはその塩を生成する工程
を含む、シナカルセトまたはその塩の調製のための方法。
【請求項2】
工程(a)におけるクロスメタセシスを可能にする条件が、Ru触媒の存在下で該クロスメタセシスを行うことを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(b)におけるアリル位アミノ化を可能にする条件が、Pd、Ru、Ir、Pt、Rh、またはNi触媒の存在下で該アリル位アミノ化を行うことを含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
工程(c)における還元を可能にする条件が、水素およびPd、Ni、Ir、Pt、Rh、またはRu触媒の存在下で該還元を行うことを含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
その生成物がシナカルセト塩酸塩である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
(a)アリル位アミノ化を可能にする条件下で式(V)の化合物と1-(1-ナフチル)エチルアミンとを混合することで式(IV)の化合物を生成する工程:

式中、R2は水素、C1〜C6アルキル、アリール、ヘテロアリール、C(O)C1〜C6アルキル、C(O)アリール、C(O)ヘテロアリール、およびC(O)OC1〜C6アルキルからなる群より選択される; ならびに
(b)還元を可能にする条件下で化合物(IV)を還元することでシナカルセトまたはその塩を生成する工程
を含む、シナカルセトまたはその塩の調製のための方法。
【請求項7】
3-トリフルオロメチル-ベンズアルデヒドとビニル試薬とを混合することで式(V)の化合物を形成する工程をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
ビニル試薬がビニルリチウムおよび塩化ビニルマグネシウムからなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
工程(a)におけるアリル位アミノ化を可能にする条件が、Pd触媒の存在下で該アリル位アミノ化を行うことを含む、請求項6〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
工程(b)における還元を可能にする条件が、水素およびPd、Ru、Ir、Pt、Rh、またはNi触媒の存在下で該還元を行うことを含む、請求項6〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
その生成物がシナカルセト塩酸塩である、請求項6〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
(a)式(VI)の化合物の形成を可能にする条件下で、R2が水素である式(V)の化合物と1-(1-ナフチル)エチルイソシアネートとを混合する工程:

;
(b)C-OからC-Nへの転位を可能にする条件下で化合物(VI)と触媒とを混合することで式(IV)の化合物を形成する工程:

; ならびに
(c)還元を可能にする条件下で化合物(IV)を還元することでシナカルセトまたはその塩を生成する工程
を含む、シナカルセトまたはその塩の調製のための方法。
【請求項13】
工程(b)におけるC-OからC-Nへの転位を可能にする条件が、Pd、Ru、Ni、Ir、Rh、Hg、Au、およびPtからなる群より選択される金属触媒の存在下でC-OからC-Nへの該転位を行うことを含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
工程(c)における還元を可能にする条件が、水素およびPd、Ni、Pt、Rh、Ru、またはIr触媒の存在下で該還元を行うことを含む、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
その生成物がシナカルセト塩酸塩である、請求項12〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
(a)アミド結合形成を可能にする条件下で3-トリフルオロメチル-ケイ皮酸と1-(1-ナフチル)エチルアミンとを混合することで式(VIIB)の化合物を形成する工程:

; および
(b)還元を可能にする条件下で化合物(VIIB)を還元することでシナカルセトまたはその塩を形成する工程
を含む、シナカルセトまたはその塩の調製のための方法。
【請求項17】
アミド結合形成を可能にする条件が、ペプチドカップリング剤の存在下で該アミド結合形成を行うことを含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
ペプチドカップリング剤が塩素化剤、混合無水物、DIC、DCC、EDCI、CDI、HOBt、HOAt、ペンタフルオロフェノール、HBTU、HATU、および向山試薬からなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
還元を可能にする条件が(a)水素およびPd、Ni、Ir、Pt、Rh、Ru、もしくはIr触媒の存在下で該還元を行うこと、(b)ボランもしくは水素化アルミニウムリチウムの存在下で該還元を行うこと、または(c)その組み合わせを含む、請求項16〜18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
その生成物がシナカルセト塩酸塩である、請求項16〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
(a)ペプチドカップリング剤の存在下で3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパン酸と1-(1-ナフチル)エチルアミンとを混合することで式(VIII)の化合物を形成する工程:

; および
(b)還元を可能にする条件下で化合物(VIIA)を還元することでシナカルセトまたはその塩を形成する工程
を含む、シナカルセトまたはその塩の調製のための方法。
【請求項22】
ペプチドカップリング剤が塩素化剤、混合無水物、DIC、DCC、EDCI、CDI、HOBt、HOAt、ペンタフルオロフェノール、HBTU、HATU、および向山試薬からなる群より選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
還元を可能にする条件が、水素およびPd、Ni、Ir、Pt、Rh、Ru、またはIr触媒の存在下で該還元を行うことを含む、請求項21〜22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
その生成物がシナカルセト塩酸塩である、請求項21〜23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
(a)化合物(VIII)と化合物(IX)とのカップリングを促進する条件下で式(VIII)の化合物と式(IX)の化合物とを混合することで化合物(X)を形成する工程:

式中、Xは塩素、臭素、ヨウ素、OSO2C6H4CH3、OSO2CH3、OSO2CF3、OSO2C4F9、およびN2+からなる群より選択され、Rは水素、ベンジル、置換ベンジル、BOC、Cbz、およびアセテートからなる群より選択される; ならびに
(b)還元を可能にする条件下で化合物(XI)を還元することでシナカルセト、シナカルセト誘導体、またはその塩を形成する工程
を含む、シナカルセト、シナカルセト誘導体、またはその塩の調製のための方法。
【請求項26】
化合物(VIII)と化合物(IX)とのカップリングを促進する条件が、PdまたはNi触媒の存在下で該カップリングを行うことを含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
還元を可能にする条件が、水素およびPd、Ni、Ir、Pt、Rh、Ru、またはIr触媒の存在下で該還元を行うことを含む、請求項25または26記載の方法。
【請求項28】
その生成物がシナカルセト塩酸塩である、請求項25〜27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
(a)化合物(VIII)と化合物(XI)とのカップリングを促進する条件下で式(VIII)の化合物と式(XI)の化合物とを混合することで化合物(XII)を形成する工程:

式中、Xは塩素、臭素、ヨウ素、OSO2C6H4CH3、OSO2CH3、OSO2CF3、OSO2C4F9、およびN2+からなる群より選択され、Rは水素、ベンジル、置換ベンジル、BOC、CBZ、およびアセテートからなる群より選択される; ならびに
(b)還元を可能にする条件下で化合物(XIII)を還元することでシナカルセト、シナカルセト誘導体、またはその塩を形成する工程
を含む、シナカルセト、シナカルセト誘導体、またはその塩の調製のための方法。
【請求項30】
化合物(VIII)と化合物(XI)とのカップリングを促進する条件が、Pd触媒またはRu触媒の存在下で該カップリングを行うことを含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
還元を可能にする条件が(a)水素およびPd、Ni、Ir、Pt、Rh、Ru、もしくはIr触媒の存在下で該還元を行うこと、(b)ボランもしくは水素化アルミニウムリチウムの存在下で該還元を行うこと、または(c)その組み合わせを含む、請求項29または30記載の方法。
【請求項32】
その生成物がシナカルセト塩酸塩である、請求項29〜31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
還元を可能にする条件下で式(XIII)の化合物を還元することでシナカルセトまたはその塩を形成する工程を含む、シナカルセト、シナカルセト誘導体、またはその塩の調製のための方法:

式中、Rは水素、ベンジル、置換ベンジル、BOC、CBZ、およびアセテートからなる群より選択される。
【請求項34】
(i)化合物(VIII)とプロピオル酸またはそのエステルとのカップリングを可能にする条件下で式(VIII)の化合物とプロピオル酸またはそのエステルとを混合することで式(XIV)の化合物を形成する工程:

式中、Xは塩素、臭素、ヨウ素、OSO2C6H4CH3、OSO2CH3、OSO2CF3、OSO2C4F9、およびN2+からなる群より選択され、R1は水素、C1〜C6アルキル、およびアリールからなる群より選択される; ならびに
(ii)アミド結合形成を可能にする条件下で化合物(XIV)と1-(1-ナフチル)エチルアミンとを混合することで式(XIII)の化合物を形成する工程
をさらに含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
化合物(VIII)とプロピオル酸またはそのエステルとのカップリングを可能にする条件が、Pd触媒の存在下で該カップリングを行うことを含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
式(VIII)の化合物と式(XV)の化合物とのカップリングを可能にする条件下で式(VIII)の化合物と式(XV)の化合物とを混合することで式(XIII)の化合物を形成する工程をさらに含む、請求項33記載の方法:

式中、Xは塩素、臭素、ヨウ素、OSO2C6H4CH3、OSO2CH3、OSO2CF3、OSO2C4F9、およびN2+からなる群より選択される。
【請求項37】
式(VIII)の化合物と式(XV)の化合物とのカップリングを可能にする条件が、Pd触媒の存在下で該カップリングを行うことを含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
3-トリフルオロメチル-フェニルアセチレンと1-(1-ナフチル)エチルイソシアネートとのカップリングを可能にする条件下で3-トリフルオロメチル-フェニルアセチレンと1-(1-ナフチル)エチルイソシアネートとを混合することで式(XIII)の化合物を形成する工程をさらに含む、請求項33記載の方法。
【請求項39】
3-トリフルオロメチル-フェニルアセチレンと1-(1-ナフチル)エチルイソシアネートとのカップリングを可能にする条件が、塩基の存在下で該カップリングを行うことを含む、請求項38記載の方法。
【請求項40】
その生成物がシナカルセト塩酸塩である、請求項33記載の方法。
【請求項41】
還元を可能にする条件下で式(XVI)の化合物を還元することでシナカルセト、シナカルセト誘導体、またはその塩を形成する工程を含む、シナカルセト、シナカルセト誘導体、またはその塩の調製のための方法:

式中、Rは水素、ベンジル、置換ベンジル、BOC、Cbz、およびアセテートからなる群より選択される。
【請求項42】
化合物(VIII)と化合物(XVII)とのカップリングを可能にする条件下で式(VIII)の化合物と式(XVII)の化合物とを混合することで化合物(XVI)を形成する工程をさらに含む、請求項41記載の方法:

式中、Xは塩素、臭素、ヨウ素、OSO2C6H4CH3、OSO2CH3、OSO2CF3、OSO2C4F9、およびN2+からなる群より選択される。
【請求項43】
式(VIII)と式(XVII)とのカップリングを可能にする条件が、Pd触媒の存在下で該カップリングを行うことを含む、請求項42記載の方法。
【請求項44】
その生成物がシナカルセト塩酸塩である、請求項41記載の方法。
【請求項45】
(a)クロスメタセシスを可能にする条件下で式(I)の化合物と式(XVIII)の化合物とを混合することで式(IV)の化合物を生成する工程:

式中、各R1は同一または異なっており、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択される; ならびに
(b)還元を可能にする条件下で化合物(IV)を還元することでシナカルセトまたはその塩を生成する工程
を含む、シナカルセトまたはその塩の調製のための方法。
【請求項46】
クロスメタセシスを可能にする条件が、RuまたはMo触媒の存在下で該クロスメタセシスを行うことを含む、請求項45記載の方法。
【請求項47】
各R1が水素およびメチルより独立して選択される、請求項45または48記載の方法。
【請求項48】
工程(b)における還元を可能にする条件が、水素およびPd、Ni、Ir、Pt、Rh、Ru、またはIr触媒の存在下で該還元を行うことを含む、請求項45〜47のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
その生成物がシナカルセト塩酸塩である、請求項45〜48のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
(a)クロスメタセシスを可能にする条件下で式(I)の化合物と式(XIX)の化合物とを混合することで式(VIIB)の化合物を生成する工程:

式中、各R1は同一または異なっており、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択される; ならびに
(b)還元を可能にする条件下で化合物(VIIB)を還元することでシナカルセトまたはその塩を生成する工程
を含む、シナカルセトまたはその塩の調製のための方法。
【請求項51】
クロスメタセシスを可能にする条件が、RuまたはMo触媒の存在下で該クロスメタセシスを行うことを含む、請求項50記載の方法。
【請求項52】
各R1が水素およびメチルより独立して選択される、請求項50または51記載の方法。
【請求項53】
工程(b)における還元を可能にする条件が、(1)水素およびPd、Ni、Ir、Pt、Rh、Ru、またはIr触媒の存在下で該還元を行うこと、(2)ボランもしくは水素化アルミニウムリチウムの存在下で該還元を行うこと、または(3)その組み合わせを含む、請求項50〜52のいずれか一項記載の方法。
【請求項54】
その生成物がシナカルセト塩酸塩である、請求項50〜53のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
(a)ヒドロホルミル化を可能にする条件下で3-(トリフルオロメチル)スチレン、一酸化炭素、および水素を混合することで3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパナールを生成する工程;
(b)イミン形成を可能にする条件下で3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロパナールと1-(1-ナフチル)エチルアミンとを混合することで式(XX)の化合物を形成する工程:

; ならびに
(c)還元を可能にする条件下で式(XX)の化合物を還元することでシナカルセトまたはその塩を生成する工程
を含む、シナカルセトまたはその塩の調製のための方法。
【請求項56】
ヒドロホルミル化を可能にする条件が、Rh触媒の存在下で該ヒドロホルミル化を行うことを含む、請求項55記載の方法。
【請求項57】
イミン形成を可能にする条件が、酸の存在下で該イミン形成を行うことを含む、請求項55または56記載の方法。
【請求項58】
還元を可能にする条件が、水素およびPd、Ni、Ir、Pt、Rh、Ru、またはIr触媒の存在下で該還元を行うこと、または水素化アルミニウムリチウムの存在下で該還元を行うことを含む、請求項55〜57のいずれか一項記載の方法。
【請求項59】
その生成物がシナカルセト塩酸塩である、請求項55〜58のいずれか一項記載の方法。
【請求項60】
ヒドロホルミル化、イミン形成、および還元を可能にする条件下で3-(トリフルオロメチル)スチレン、一酸化炭素、水素、および1-(1-ナフチル)エチルアミンを混合することでシナカルセトまたはその塩を生成する工程を含む、シナカルセトまたはその塩の調製のための方法。
【請求項61】
ヒドロホルミル化、イミン形成、および還元を可能にする条件が、Rh触媒の存在下で該ヒドロホルミル化、該イミン形成、および該還元を行うことを含む、請求項60記載の方法。
【請求項62】
その生成物がシナカルセト塩酸塩である、請求項60または61記載の方法。
【請求項63】
還元を可能にする条件下で1-(3-トリフルオロメチルフェニル)-2-プロペン、ボラン、およびN-クロロ-1-(1-ナフチル)エチルアミンを混合することでシナカルセトまたはその塩を形成する工程を含む、シナカルセトまたはその塩の調製のための方法。
【請求項64】
その生成物がシナカルセト塩酸塩である、請求項63記載の方法。
【請求項65】
(a)式(VIIIA)の化合物と式(XIA)の化合物とのカップリングを促進する条件下で式(VIIIA)の化合物と式(XIA)の化合物とを混合することで式(VII)の化合物を形成する工程:

式中、X'はB(OH)2、Si(OR3)3、Sn(R3)3、およびTi(OR3)3からなる群より選択され、R3は同一または異なっており、水素およびC1-6アルキルからなる群より独立して選択される; ならびに
(b)還元を可能にする条件下で式(VII)の化合物を還元することでシナカルセトまたはその塩を形成する工程
を含む、シナカルセトまたはその塩の調製のための方法。
【請求項66】
化合物(VIIIA)と化合物(XIA)とのカップリングを促進する条件が、RhまたはPd触媒の存在下で該カップリングを行うことを含む、請求項65記載の方法。
【請求項67】
還元を可能にする条件が、還元剤の存在下で該還元を行うことを含む、請求項65または66記載の方法。
【請求項68】
還元剤が水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化アルミニウムリチウム、BH3の錯体、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項67記載の方法。
【請求項69】
その生成物がシナカルセト塩酸塩である、請求項65〜68のいずれか一項記載の方法。
【請求項70】
請求項1、6、12、16、21、25、29、33、41、45、50、55、60、63、および65のいずれか一項記載の方法によって生成されるシナカルセトまたはその塩。
【請求項71】


である回折角2θでのピークを有する粉末X線粉末回折(XRPD)パターンを有する、請求項70記載のシナカルセトまたはその塩。
【請求項72】
XRPDパターンが、

からなる群より選択される少なくとも1つの回折角2θピークをさらに含む、請求項71記載のシナカルセトまたはその塩。
【請求項73】


に少なくとも回折角2θピークを含むXRPDパターンを有する、請求項71記載のシナカルセトまたはその塩。
【請求項74】
XRPDパターンが約

に回折角2θピークを含む、請求項71記載のシナカルセトまたはその塩。
【請求項75】
シナカルセトが塩酸塩であり、かつ多形IIIである、請求項71記載のシナカルセト。
【請求項76】
請求項70〜75のいずれか一項記載のシナカルセトまたはその塩および薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項77】
高カルシウム血症に罹患している対象を処置する方法であって、治療有効量のシナカルセトまたはその塩を含む請求項76記載の組成物を該対象に投与する段階を含む方法。
【請求項78】
式(IV):

の化合物。
【請求項79】
式(VI):

の化合物。
【請求項80】
式(VIIB):

の化合物。
【請求項81】
式(XIII)の化合物:

式中、Rは水素である。
【請求項82】
式(XVI)の化合物:

式中、Rは水素である。
【請求項83】
式(XX):

の化合物。

【公表番号】特表2010−530428(P2010−530428A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513242(P2010−513242)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/007621
【国際公開番号】WO2009/002427
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(508311215)アムゲン インコーポレイティッド (2)
【Fターム(参考)】