説明

シフトレバー

【課題】変速時におけるシフト方向のフィーリングを改善するシフトレバーを提供すること。
【解決手段】シフトレバー1は、シフトノブ2と、シフトノブ2のシフト方向に面する両側面に配され、シフト方向への操作時における荷重変動の感触を減少させる錘4と、錘4とシフトノブ2の間に介在され、錘4の変動を吸収する弾性材料5と、を備える。シフトレバー1は、シフトノブ2と錘4との間に、シフト方向への操作時に錘4が変位できるようなクリアランス6を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニュアルトランスミッションのシフトレバーに関し、特に、マニュアルトランスミッションの自動車用のシフトレバーに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、マニュアルトランスミッションにおける変速は、縦横に走った溝に沿ってシフトレバーを移動させることによって行われる。例えば、一般的な自動車のマニュアルトランスミッションにおいては、ニュートラルの位置から所望のギアの縦溝の入口までシフトレバーを横方向(セレクト方向)に移動させた後、縦方向(シフト方向)にシフトレバーを移動させて変速が実施される。
【0003】
このとき、変速時にシフトレバーから伝達される荷重変動は、操作者のシフトフィーリングに大きく影響する。例えば、特許文献1に記載のシフトノブにおいては、セレクト方向の操作時にダイレクト感を残しながら、シフト方向の操作時に発生する衝撃を吸収し、突き当たり感を解消するために、シフトノブを、シフト方向を前後方向として、シフトノブの後側位置から上端位置を経過して前側位置まで前後方向に延びる前後方向部分と、前後方向部分によって左右位置に分割される一対の横方向部分とに分けたとき、前後方向部分のうち少なくとも後方側の剛性を横方向部分の剛性に比して柔らかい設定としている。
【特許文献1】特許3917430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下の分析は、本発明の観点から与えられる。
【0005】
変速時における荷重変動は、通常、シフト方向とセレクト方向とで大きく異なっている。図7〜図9にシフト方向とセレクト方向におけるシフトレバーのストロークに対する荷重変動の概念図を示す。セレクト方向の場合、図7に示すように、シフトレバーから操作者へ伝達される荷重に大きな変動はない。一方、シフト方向の場合、図8に示すように、静シフト力、同期力、押し分け力、及び2段入り力が、シフトレバーから操作者へ伝達される荷重に作用し、図9に示すように、これらの力の合力が、操作者が感じる荷重となる。したがって、シフト方向へのシフトレバーの移動では、セレクト方向とは異なり、大きな荷重変動が生じ、操作者は変速時にスムーズなフィーリングを感じることができない。
【0006】
特許文献1に記載のシフトノブにおいては、シフト方向とセレクト方向の剛性に差をつけ、シフト方向の荷重変動を減衰させてはいるが、十分な効果を得るには至らない。
【0007】
本発明の目的は、変速時におけるシフト方向のフィーリングを改善するシフトレバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1視点によれば、マニュアルトランスミッションにおけるシフトレバーを提供する。シフトレバーは、シフトノブと、シフトノブのシフト方向に面する両側面に配され、シフト方向への操作時における荷重変動の感触を錘の慣性により減少させる錘と、錘とシフトノブの間に介在され、錘の変動を吸収する弾性材料と、を備える。シフトレバーは、シフトノブと錘との間に、シフト方向への操作時に錘が変位できるようなクリアランスを有する。
【0009】
上記第1視点の好ましい形態によれば、シフトノブは、シフト方向に面する両側面に凹部を有する。錘及び弾性材料の少なくとも一部は凹部に配される。
【0010】
上記第1視点の好ましい形態によれば、シフトノブは、シフト方向に面する両側面に溝部を有する。錘及び弾性材料の少なくとも一部は溝部に配される。
【0011】
上記第1視点の好ましい形態によれば、シフトノブは、セレクト方向に面する両側面に突起部を有する。錘の形状は、コの字状ないしUの字状である。弾性材料は、錘の両端と突起部のシフト方向に面する面との間に介在されている。
【0012】
上記第1視点の好ましい形態によれば、シフトノブは主として樹脂から形成される。錘は主として金属から形成される。弾性材料は主としてゴムから形成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以下の効果のうち少なくとも1つを有する。
【0014】
本発明によれば、操作者は、シフト方向へのシフトレバーの操作において、シフトレバーから伝わる大きな荷重変動を受けることなく、より滑らかなフィーリング(操作感)を得ることができる。また、セレクト方向へのシフトレバーの操作における滑らかなフィーリングには影響を及ぼさない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の第1実施形態に係るシフトレバーについて説明する。図1に、本発明の第1実施形態に係るシフトレバーの概略平面図を示す。図2に、図1のII−II線における概略断面図を示す。図3に、図2のIII−III線における概略断面図を示す。
【0016】
マニュアルトランスミッションにおけるシフトレバー1は、レバー3と、レバー3を操作するためのシフトノブ2と、を備える。シフトノブ2は、シフト方向に面する両側面に錘4及び弾性材料5を備える。錘4は、その慣性により、シフト方向への操作時にシフトレバー1から操作者に伝達する荷重変動を操作者に感じさせないようにする。また、弾性材料5は、シフト方向への操作時に錘4の変動を吸収し、荷重変動を減衰させる作用を有する。
【0017】
第1実施形態においては、シフトノブ2は、シフト方向に面する両側面に、弾性材料5及び錘4を配するための凹部2aを有する。凹部2aの底面は、シフト方向に面している。弾性材料5は、凹部2aの底部に配され、錘4は、弾性材料5の外側に固定されている。シフトノブ2と錘4との間には、シフト方向への操作時に錘4が変位できるように、クリアランス6が形成されている。シフトノブ2と弾性材料5との間には、弾性材料5が減衰作用を発揮できるのであればクリアランスを形成しなくてもよいし、減衰作用をより大きくしたいのであれば図2に示すようにクリアランス6を形成してもよい。クリアランス6は、錘4によるガタ感が生じないような大きさにすると好ましく、例えば0.05mm〜0.10mmとすることができる。
【0018】
錘4の重さ及び大きさは、シフト方向への操作時に、変速時の荷重変動の大きさやシフトノブ2の大きさに応じて、操作者が良い操作感(例えば滑らかさ)を感じるように設定する。例えば、錘4としては、シフトノブ2が樹脂である場合、比重が5〜7倍のもの、例えば鉄等の金属を使用することができる。
【0019】
弾性材料5は、シフト方向への操作時の荷重変動や錘4の移動による荷重を吸収できるような材質及び大きさにすると好ましい。例えば、弾性材料5としては、ゴム材料(天然ゴム等)を使用することができる。弾性材料5としてゴムを使用した場合、その硬さは、例えば30Hs〜50Hsにすることができる。
【0020】
次に、本発明のシフトノブの作用について説明する。変速する際、操作者は、まずシフトレバーをセレクト方向(通常、横方向)に操作して、所望のギアの前(縦溝の入口)まで移動させる。このとき、セレクト方向の操作には大きな荷重変動がない(操作感は滑らかである)ので、シフトレバーの操作感を変化させる必要はない。次に、操作者は、シフトレバーをシフト方向(通常、縦方向)に操作して、所望のギアに入れる。このとき、図9に示すような荷重変動がシフトレバーに伝達されることになるが、本発明のシフトレバーにおいては、シフトレバーの操作時に錘が慣性により操作方向(シフト方向)に変位しようとする。これにより、シフトレバーに伝達された荷重変動を操作者は感じないで済むことになる。また、錘が変位しようとしても、弾性材料が錘の変動を減衰させるので、操作者は錘の変位による衝撃を受けることなく、滑らかな操作感を得ることができる。
【0021】
次に、本発明の第2実施形態に係るシフトレバーについて説明する。図4に、本発明の第2実施形態に係るシフトレバーのシフト方向に沿った概略断面図を示す。図5に、図4のV−V線における概略断面図を示す。第1実施形態に係るシフトレバーにおいては、シフトノブに弾性材料及び錘を配するための凹部を形成したが、第2実施形態に係るシフトレバー21おいては、シフト方向に面するシフトノブ22の両側面に、溝部22aを形成する。溝部22aの底面は、シフト方向に面している。弾性材料25は、溝部22aの低面に配され、錘24は、弾性材料25の外側に固定される。この他の形態は、第1実施形態と同様である。
【0022】
次に、本発明の第3実施形態に係るシフトレバーについて説明する。図6に本発明の第3実施形態に係るシフトレバーの概略断面図を示す。第3実施形態に係るシフトレバー31においては、シフトノブ32は、セレクト方向に面する両側面において突出する突起部32aを有する。弾性材料35は、両突起部32aのシフト方向に面する両面(計4箇所)に配されている。錘34は、コの字ないしUの字状になっており、その両端において弾性材料35に固定され、シフト方向に面するシフトノブ32の両側面に配されている。錘34とシフトノブ32のシフト方向に面する面との間には、錘34がシフト方向に変位できるように、クリアランス36が形成されている。この他の形態は、第1実施形態と同様である。
【0023】
本発明のシフトレバーは、上記実施形態に基づいて説明されているが、上記実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内において、かつ本発明の基本的技術思想に基づいて、上記実施形態に対し種々の変形、変更及び改良を含むことができることはいうまでもない。また、本発明の請求の範囲の枠内において、種々の開示要素の多様な組み合わせ・置換ないし選択が可能である。
【0024】
本発明のさらなる課題、目的及び展開形態は、請求の範囲を含む本発明の全開示事項からも明らかにされる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のシフトレバーは、シフト方向とセレクト方向の操作を必要とするマニュアルトランスミッションに適用することができ、例えば自動車のマニュアルトランスミッションのシフトレバーとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係るシフトレバーの概略平面図。
【図2】図1のII−II線における概略断面図。
【図3】図2のIII−III線における概略断面図。
【図4】本発明の第2実施形態に係るシフトレバーのシフト方向に沿った概略断面図。
【図5】図4のV−V線における概略断面図。
【図6】本発明の第3実施形態に係るシフトレバーの概略断面図。
【図7】セレクト方向におけるシフトレバーのストロークに対する荷重変動の概念図。
【図8】シフト方向におけるシフトレバーのストロークに対する荷重変動の概念図。
【図9】図8に示す各力の合力によって示す、シフトレバーのストロークに対する荷重変動の概念図。
【符号の説明】
【0027】
1,21,31 シフトレバー
2,22,32 シフトノブ
2a 凹部
22a 溝部
32a 突起部
3,23 レバー
4,24,34 錘
5,25,35 弾性材料
6,26,36 クリアランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニュアルトランスミッションにおけるシフトレバーであって、
シフトノブと、
前記シフトノブのシフト方向に面する両側面に配され、シフト方向への操作時における荷重変動の感触を減少させる錘と、
前記錘と前記シフトノブの間に介在され、前記錘の変動を吸収する弾性材料と、を備え、
前記シフトノブと前記錘との間に、シフト方向への操作時に前記錘が変位できるようなクリアランスを有することを特徴とするシフトレバー。
【請求項2】
前記シフトノブは、シフト方向に面する両側面に凹部を有し、
前記錘及び前記弾性材料の少なくとも一部は前記凹部に配されることを特徴とする請求項1に記載のシフトレバー。
【請求項3】
前記シフトノブは、シフト方向に面する両側面に溝部を有し、
前記錘及び前記弾性材料の少なくとも一部は前記溝部に配されることを特徴とする請求項1に記載のシフトレバー。
【請求項4】
前記シフトノブは、セレクト方向に面する両側面に突起部を有し、
前記錘の形状は、コの字状ないしUの字状であり、
前記弾性材料は、前記錘の両端と前記突起部のシフト方向に面する面との間に介在されていることを特徴とする請求項1に記載のシフトレバー。
【請求項5】
前記シフトノブは主として樹脂から形成され、
前記錘は主として金属から形成され、
前記弾性材料は主としてゴムから形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のシフトレバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−49329(P2010−49329A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210689(P2008−210689)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(592058315)アイシン・エーアイ株式会社 (490)
【Fターム(参考)】