説明

シラン官能性を有する付加化合物および亀裂抵抗性が向上した高耐引掻性塗料を含むコーティング剤

本発明は、少なくとも1つの反応性官能基G’’’を含む膜形成材料、シラン基を架橋するための触媒、非プロトン性溶媒、ならびに(a)化合物(O)の相補官能基G’’と反応する少なくとも1つの官能基G’を含む少なくとも1つのシラン(S1)と、(b)少なくとも1つの相補官能基G’’および少なくとも1つの表面活性基を含む少なくとも1つの化合物(O)との付加反応によって生成され得るシラン官能性を有する少なくとも1つの付加化合物を含むコーティング剤に関する。本発明は、また、前記コーティング剤から製造される透明被覆を有する多層ラッカー、ならびに前記多層ラッカーを製造するための方法およびその使用に関する。本発明は、さらに、塗料の硬度および/または耐引掻性を向上させるための方法におけるシラン官能性を有する付加化合物とシラン基を架橋するための触媒との混合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
(i)シラン官能性を有する少なくとも1つの付加物(A)、
(ii)シラン基を架橋するための少なくとも1つの触媒(C)、
(iii)付加物(A)と異なり、少なくとも1つの反応性官能基G’’’を有する少なくとも1つの膜形成材料(D)、および
(iv)1つ以上の非プロトン性溶媒(L)を含むコーティング剤に関する。
【0002】
先行技術
独国特許出願公開第102004050747(A1)号およびまだ未公開の独国特許出願第102005045228.0−44号には、アルコキシシラン官能性を有する付加物を含む冒頭に記載された種類のコーティング剤が開示されている。それらの文献に記載されているコーティング剤は、Si−O−Siネットワークを形成するために好適な触媒を使用して硬化される。コーティング剤の用途の1つは、OEMシステムにおける透明塗料である。それらは、非常に高度な引っ掻き抵抗性を有する塗料をもたらすが、耐候性の点、および亀裂の点、より具体的には40μmを超える比較的高膜厚においてさらなる改善をしばしば必要とする。さらなる短所は、これらのコーティング剤に断然多量に含まれるアルコキシシラン官能性を有する付加物の断然高価な価格である。
【0003】
また、米国特許第2006−0217472号には、ヒドロキシル含有結合剤、イソシアネート基を含む架橋剤、OH/NCO反応のための金属触媒を含むコーティング剤を採用し、それらにビス(3−プロピル−トリメトキシシリル)アミン等のアミノシランまたはそのイソシアネートとの反応生成物を添加することによって、ポリウレタン系塗料の耐引掻性を向上させることができることが開示されている。しかし、アミノシランを表面活性成分で改質することは、米国特許第2006−0217472号に記載されていない。
【0004】
また、まだ未公開の2006年9月15日出願の出願番号11/227,867の米国特許出願には、二量体脂肪酸ジオールとイソシアナトアルキルトリアルコキシシランとの反応生成物(I)を含むコーティング剤が開示されている。
【0005】
これらのコーティング剤を使用して得られる塗料の特定の特徴は、非常に高度に光沢性である。コーティング剤における二量体脂肪酸ジオールとイソシアナトアルキルトリアルコキシシランとの反応生成物(I)の割合が大きくなるに従って、硬度、およびメチルエチルケトンを用いた二重擦りで測定される耐溶剤性が低下する。しかし、自動車塗装の分野において、硬度および抵抗性が向上し、よって耐引掻性が向上した塗料の必要性がますます高まっている。
【0006】
国際特許出願公開第01/98393号には、アルミニウム基板に対する接着性が向上していることを特徴とし、ヒドロキシル含有結合剤およびイソシアナト含有架橋剤のみならず、必須構成成分として少なくとも2つのイソシアネート基を有し、イソシアネート官能化合物(A)と、少なくとも1つのアルコキシシラン官能基、およびイソシアネート基に対して反応性を有する少なくとも1つの基を含むカップリング試薬(X)との反応生成物であるシランオリゴマー(B)を含むコーティング剤が開示されている。同様に、国際特許出願公開第01/98393号には、表面活性成分でシランオリゴマー(B)を改質することが記載されていない。この出願では、アルミニウムと特に強固に結合するシランの既知の特性が利用されている。特に効果的な接着を達成するために、実際、使用されるシランが基板との界面で蓄積される場合は有利である。また、それが記載するコーティング剤では、シラン基を架橋するための触媒が添加されていない。
【0007】
また、国際特許出願公開第01/09260号には、少なくとも1つの反応性基を有するポリシロキサン(a)、ポリシロキサンの反応性基と反応する少なくとも1つの基を有する化合物(b)、ならびに適切であれば粒子(c)およびさらなる構成成分を含むコーティング剤が開示されている。したがって、硬化反応において、ポリシロキサンは、化合物(b)とSi−O−Siネットワークを形成しない。
【0008】
欧州特許第1204701号には、ナノ粒子と共に表面活性物質を含むことによって、塗料において表面にナノ粒子が蓄積して、塗料の部分の耐引掻性の向上をもたらすコーティング剤が記載されている。当該構造の範囲は、通常、表面上のビーズの連鎖と同様に狭い。
【0009】
しかし、粒子間相互作用が極めて強く、通常は粒子の安定性が不十分であるため、粒子が凝集して、得られた塗料の均一性および外観に悪影響が及ぼされる場合が多い。また、広い処理ウィンドウを確保するとともに、考えられる循環系における堆積を回避するために、粒子の極めて有効な安定性が必要である。
【0010】
また、国際特許出願公開第05/028550号には、表面改質添加剤(略して「SMA」と呼ばれる)でバルクポリマーを処理することによって製造された官能ポリマーが開示されている。これらの表面改質添加剤は、表面活性部分を有する官能性ブロックを有するポリマーである。これらの改質ポリマーは、未改質バルクポリマーと混和され、得られた混和物は、得られる製品または塗料の表面の特性に対して的を絞った制御を行うために、成形物もしくは同様の製品の製造または塗料の製造に使用される。しかし、架橋された後で、目標の表面特性を有する塗料を与えるコーティング剤の個々の構成成分の表面活性改質は、国際特許出願公開第05/028550号に記載されていない。
【0011】
また、国際特許出願公開第05/028550号に記載されているポリマーは、化粧品、手袋、衣服および医療機器等の殺生処理、または空気フィルタ等の殺生処理等の生物学的用途または医学的用途、ならびにチップの生体活性表面処理による診断チップの製造に採用される。
【0012】
それらの記載には、バルクポリマーが、アルコキシシラン基を有するポリマー添加剤で場合により処理されているアルコキシシラン官能表面活性成形物および塗料の記載が含まれる。それらの場合におけるアルコキシシラン基の硬化は、長時間の蒸気処理または水性酸を用いた処理による。しかし、プラスチック部品の分野において典型的であるこの処理は、自動車塗装の分野において大きな追加費用および不便さを伴うため、望ましくない。さらに、典型的には自動車塗装の分野に採用される透明コーティング材料は、一般には、必要とされる水性酸と相溶性がなく、国際特許出願公開第05/028550号に記載されている官能生塗料を自動車塗装の分野に転用するのは不可能であることを意味する。
【0013】
最後に、欧州特許第1295914号には、撥油性および撥水性が向上する効果を特徴とするコーティング剤が開示されており、これらの組成物は、アルコキシシリル官能アクリル樹脂、アルコキシシリル基および二次ジメチルポリシロキサン鎖を含むアクリル樹脂、ヒドロキシルおよびエポキシ官能アクリル樹脂、ならびに高い酸価を有するポリエステル樹脂を含む。コーティング剤が硬化されると、−Si(O−アルキル)3基と(メタ)アクリル酸アルキル樹脂のヒドロキシル基との反応の結果として、望ましくないSi−O−C節が所望のSi−O−Si節と競合して形成し得るが、Si−O−C節は、加水分解されやすく、得られる塗料の部分の耐薬品性の低下をもたらす。強力なOEM透明塗料は、可能な限り高度な耐候性を有することになるため、ポリ(メタ)アクリレートネットワークは、ポリウレタンネットワークと比較して、耐候性が低いことが問題である。
【0014】
また、遊離基重合を介して製造されたアクリレート結合剤の場合は、比較的広い分子量分布は、極めて一般的に、50質量%を有意に超える固形分を有する1K[一成分]透明コーティング材料の形成が、多大な費用および不便さを伴う場合にのみ可能であることを意味する。割合が大きくなると、コーティング材料は、高粘度であるため処理が困難になる。
【0015】
課題
したがって、本発明が取り組む課題は、高い微小押込み硬さ、および典型的にはクロックメータ試験で測定された非常に良好な乾燥耐引掻性を有する塗料をもたらすコーティング剤を提供する課題であった。本発明が取り組むさらなる課題は、高耐候性および亀裂抵抗性を有するネットワークをもたらすコーティング剤を提供する課題であった。また、有利には、該ネットワークは、ポリウレタン単位および/またはポリ尿素単位を多量に有するはずであり、Si−O−CおよびSi−N−Cの望ましくない形成が大いに抑制される。該コーティング剤は、また、典型的には自動車量産塗装の分野において課される要件を満たすはずである。したがって、該コーティング剤は、特に良好なヘイズ、すなわちヘイズ0、良好な均一性、および非常に良好な全体的な視覚的外観を示すはずである。最終的に、所望の特性が、可能な限り低コストで得られるはずである。
【0016】
課題解決
この課題は、驚いたことには、付加物(A)が、
(a)化合物(O)の相補官能基G’’と反応する少なくとも1つの官能基G’を有する少なくとも1つのシラン(S1)と、
(b)少なくとも1つの相補官能基G’’および少なくとも1つの表面活性基を有する少なくとも1つの化合物(O)との付加反応によって製造される冒頭に記載の種類のコーティング剤によって解決される。
【0017】
本発明は、また、透明被覆が本発明のコーティング剤から製造された効果付与および/または色付与性の多層塗装系を提供するとともに、この多層塗装系を製造するための方法、およびその使用を提供する。
【0018】
最後に、本発明は、また、塗料、特に多層塗装系の硬度および耐引掻性を向上させる方法であって、少なくとも一部に表面活性基を含むシラン官能性を有する付加物(A)を、好適な触媒(C)と組み合わせて、改善を必要とする塗料を製造するのに使用されるコーティング剤に添加する方法に関する。
【0019】
本発明の利点
少なくとも一部に表面活性基を含む本発明のシラン官能性を有する付加物(A)を、好適な触媒と組み合わせて、従来のコーティング剤に添加することによって、得られる塗料の耐引掻性および微小押込み硬さが極めて著しく向上すると同時に、それぞれ改質された従来のコーティング剤の対応する利点を保持することは、驚くべきことであり、予測不可能であった。次いで、本発明は、驚いたことには、40μmを超える膜厚であっても、非常に良好な耐候性および亀裂抵抗性と共に高度な微小押込み硬さを特徴とする高耐引掻性塗料をもたらすコーティング剤を製造する。さらに、該コーティング剤は、典型的には自動車量産塗装の分野において課される要件を満たす。したがって、該コーティング剤は、特に、良好なヘイズ、すなわちヘイズ0、良好な均一性、および非常に良好な全体的な視覚的外観をも有する。
【0020】
本発明に従って使用される付加物(A)を特に容易に、かつ非常に良好な再現性をもって製造することができ、特に、優先的に採用される付加物(II)は、塗装利用時に有意な毒性上または環境上の問題を引き起こさない。
【0021】
また、付加物(A)および付随する触媒(C)を少量しか添加しなくても、特性の所望の改善をもたらすのに十分である。これは、特に、シラン含有付加物が比較的高価な原料であることを鑑みれば重要である。
【0022】
本発明の詳細な説明
シラン官能性を有する付加物(A)
本発明に従って使用されるシラン官能性を有する付加物(A)は、
(a)化合物(O)の相補官能基G’’と反応する少なくとも1つの官能基G’を有する少なくとも1つのシラン(S1)と、
(b)少なくとも1つの相補官能基G’’および少なくとも1つの表面活性基を有する少なくとも1つの化合物(O)との付加反応によって製造される。
【0023】
付加反応とは、そのメカニズムが、Organikum,"Reaktionsmechanismen in der Organischen Chemie", Peter Sykes,VCH−Verlagを一例とする有機化学のテキスト等にも詳述されている種類の求核反応、求電子反応、ペリ環状反応または金属触媒付加反応を指す。
【0024】
シラン官能性を有する付加物(A)を製造するための付加反応は、特に、シラン(S1)と化合物(O)との反応に採用される。しかし、加えて、最初に、対応する付加反応によってシラン(S1)を合成し、次いで化合物(O)との反応を実施することも可能である。対応する付加反応によってシラン(S1)をin situで合成すると同時に、化合物(O)との反応を実施するのが好適である。
【0025】
シラン(S1)の官能基G’および/または化合物(O)の官能基G’’は、好ましくは、ヒドロキシル、エポキシ、イソシアネート、カルバメート、カルボキシル、無水物、アミンおよび/またはチオール基および/またはエチレン性不飽和二重結合からなる群から選択される。
【0026】
また、官能基G’およびG’’は、共にエチレン性不飽和二重結合であるのではなく、G’またはG’’の一方のみがエチレン性不飽和二重結合であるのが好適である。
【0027】
さらに、本発明のコーティング剤において、シラン基以外、特にアルコキシシラン基以外の遊離反応性基を平均50mol%未満含み、シラン基以外、特にアルコキシシラン基以外の遊離反応性基を好ましくは含まない付加物(A)を採用するのが好適である。
【0028】
したがって、特に、シラン官能性を有する付加物(A)を製造するための好適な付加反応の例としては、
(I)イソシアネート基とヒドロキシル基の反応、イソシアネート基とアミノ基の反応およびイソシアネート基とチオール基の反応;
(II)エポキシ基とカルボキシル基の反応およびエポキシ基と無水物基の反応;
(III)活性水素原子をエチレン性不飽和二重結合に含む化合物の反応(マイケル付加として公知である)、特にエチレン性不飽和二重結合に対するアミノ基の付加;および
(IV)金属触媒付加反応
が挙げられる。
【0029】
グループ(I)の反応の例としては、以下の反応:
・ イソシアネート官能化合物のアミノシランへの付加、
・ イソシアネート官能化合物のチオール官能性シランへの付加、
・ イソシアナトシランのヒドロキシ官能化合物への付加、
・ イソシアナトシランのアミン官能化合物への付加、
・ イソシアナトシランのチオール官能化合物への付加が挙げられる。
【0030】
アミン官能シランまたはチオール官能性シランのイソシアネート官能オリゴマーへの求核付加が発明上好適である。
【0031】
以降、オリゴマーは、概して平均で2〜10個の基本構造またはモノマー単位を有する化合物である。ポリマーは、対照的に、概して平均10個を超える基本構造またはモノマー単位を有する化合物である。
【0032】
グループ(II)の反応の例としては、以下の反応:
・ エポキシ官能性シランのカルボキシ官能化合物への付加、
・ エポキシ官能性シランの無水物官能化合物への付加、
・ 無水物官能シランのエポキシ官能化合物への付加が挙げられる。
【0033】
無水物官能シランのエポキシ官能化合物への付加反応の網羅的な説明が、国際特許出願公開第2006/097387号に見いだされる。
【0034】
グループ(III)の反応の例としては、以下の反応:
・ アミノシランのα、β−不飽和化合物、例えば、ジ(メタ)アクリレート等のアクリロイル−およびメタクリロイル官能化合物への付加が挙げられる。
【0035】
ここで、グループ(IV)、すなわち金属触媒付加反応の例として、ヒドロシリル化反応を挙げることができる。この種のヒドロシリル化反応に関連して、例えば、Si−H官能性を有するシランを、例えば、製品番号AB116641でABCR GmbH&Co.KGから市販されているジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン−ビニル末端コポリマー等の、C−C二重結合を含む(ポリ)オレフィンまたはシロキサンと反応させることが可能である。
【0036】
しかし、他の金属触媒付加反応、特にカップリング反応も同様に採用することができる。
【0037】
極めて一般的には、シラン(S1)として、Si−H基を含む化合物を使用することが可能である。これらの化合物をヒドロシリル化反応で化合物(O)と反応させることができる。
【0038】
Si−H基を含むこの種のシラン(S1)の例として、トリクロロシラン、メチルジクロロシランおよびジメチルクロロシランを挙げることができる。
【0039】
この種の化合物を、例えば、様々な1,2オリゴブタジエンもしくはポリブタジエン等の不飽和化合物、または二重結合を含むシロキサンとプラチナ触媒下等で反応させて、例えば、対応するシラン官能性樹脂を得ることができる。適宜、Si−H基を含むこれらのシラン(S1)を、1回の反応でメタノール等の好適なアルコールと反応させて、対応するアルコキシシランを得ることができる。
【0040】
Si−H結合を有するシランと同様に、有機官能シラン(S1)を使用することが特に好適である。使用できる有機官能シランは、1つの加水分解性基を有する、または2つもしくは3つ以上の加水分解性基を有するシランである。しかし、シランの相溶性および反応性に関しては、少なくとも3つの加水分解性基を有するシランが好適に採用される。
【0041】
極めて一般的には、発明上好適な有機官能シラン(S1)を構造式(I)で表すことができる。
【0042】
Sn−Si−R"x4-(n+x) (I)
同一または異なっていてもよい基Xは、加水分解性基である。基RSは、少なくとも1つの官能基を有する有機基、特に、1〜20個の炭素原子を有し、少なくとも1つの官能基G’を有する直鎖状および/または分枝状アルキレンまたはシクロアルキレン基、特に、1〜4個の炭素原子を有し、少なくとも1つの官能基G’を有するアルキレン基を表し;
R"は、炭素鎖が隣接していない酸素、硫黄、またはRaがアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであるNRa基で中断されていてもよいアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、好ましくは、R"は、特に1〜6個のC原子を有するアルキル基である。
構造式において、nは、1〜3、好ましくは1〜2であり、より好ましくはnは、1、xは、0〜2、好ましくは0〜1であり、より好ましくは、xは0であり、1≦n+x≦3、好ましくは1≦n+x≦2、より好ましくはn+xは1である。
【0043】
加水分解性基Xをハロゲン、特に塩素および臭素の群から、アルコキシ基の群から、アルキルカルボニル基の群から、かつアシルオキシ基の群から選択することができる。アルコキシ基が特に好適である。
【0044】
したがって、特に好適に採用されるアルコキシシランを式(II)
Sn−Si−R"x(OR)4-(n+x)(II)
[式中、
nは、1〜3、好ましくは1〜2であり、より好ましくは、nは1、xは0〜2、好ましくは0〜1であり、より好ましくは、xは0であり、1≦n+x≦3、好ましくは1≦n+x≦2、より好ましくはn+xは1であり、
R"は、炭素鎖を隣接していない酸素、硫黄、またはRaがアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであるNRa基で中断することが可能であるアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、好ましくは、R"は、特に1〜6個のC原子を有するアルキル基であり、
Sは、少なくとも1つの官能基G’を有する有機基、特には、1〜20個の炭素原子を有し、少なくとも1つの官能基G’を有する直鎖状および/または分枝状アルキレンまたはシクロアルキレン基、特に、1〜4個の炭素原子を有し、少なくとも1つの官能基G’を有するアルキレン基であり、
Rは、水素、炭素鎖が隣接していない酸素、硫黄、またはRaがアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであるNRa基で中断されていてもよいアルキルまたはシクロアルキルであり、好ましくは、Rは、特に1〜6個のC原子を有するアルキル基である]で表すことができる。
【0045】
それぞれの好適なアルコキシ基は、同じであっても異なっていてもよいが、基の構造にとって重要なことは、それらが加水分解性シラン基の反応性にどの程度影響するかということである。好ましくは、Rは、特に1〜6個のC原子を有するアルキル基である。シラン基の反応性を高める、すなわち良好な脱離基を表す基Rが特に好適である。結果として、メトキシ基は、エトキシ基より好適であり、エトキシ基は、プロポキシ基より好適である。したがって、特に好ましくは、Rは、エチルおよび/またはメチル、特にメチルである。しかし、極めて一般的には、(S1)より反応性の低いシランを採用することもできる。このような場合は、相応してより効率的な触媒によって十分な架橋密度を達成することが必要であり、あるいは相応のより高量の触媒を添加しなければならない。
【0046】
有機官能シラン(S1)上の非官能性置換基、特に基RS上の置換基もその反応性に影響を与えることができる。これは、アミン官能シランの反応性を低下させることが可能であるアミン官能基上の嵩高い置換基を例にとって例示され得る。この背景に対して、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの前にN−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランが好適である。
【0047】
極めて一般的には、シランの反応性を高める基RSは、シランの反応性を低下させる基より好適である。
【0048】
また、有機官能シランの反応性は、シラン官能性と有機官能基G’の間のスペーサの長さにも有意に影響され得る。この例として、Wackerから入手可能であり、「γ」シランの場合に存在するプロピレン基の代わりに、メチレン基がSi原子と官能基の間に存在する「α」シランを挙げることができる。これを例証するために、メタクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン(「α」シラン、例えば、Wackerの商品GENIOSIL(登録商標)XL33)が、本発明の付加物(A)の合成にメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(「γ」シラン、例えば、Wackerの商品GENIOSIL(登録商標)GF31)より好適に使用されることが確認される。
【0049】
極めて一般的には、シランの反応性を高めるスペーサは、シランの反応性を低下させるスペーサより好適である。
【0050】
シラン架橋を通じて可能な限り高い架橋密度を達成するために、採用される付加物の分子量に関して可能な限り多くのシラン基を実現することが有利である。これが確保され、特に高いネットワーク密度が固体膜に得られると、耐引掻性等の点で特に良好な特性を達成することができる。この背景に対して、分子量を実質的に顕著に増加させることなく、樹脂において特に高い官能性を実現することを可能にする有機官能シランが非常に好ましい。
【0051】
これは、2つのアミノ官能性シランを例にとって例示され得る。ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミンは、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランの前に好適である。
【0052】
シラン(S1)の反応性基G’は、好ましくは、アミン、エポキシ、無水物、イソシアネート、カルバメートおよび/またはチオール基および/またはエチレン性不飽和二重結合からなる群から選択される。
【0053】
付加物(A)の製造に特に好適である発明上好適な有機官能シランを、限定することなく、例として以下に挙げる。
【0054】
1)アミン官能シランおよびチオール官能性シラン
特にマイケル付加物に関連して、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(例えば、Wacker Chemieから商品名Geniosil(登録商標)GF93で入手可能)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(例えば、Wacker Chemieから商品名Geniosil(登録商標)GF96で入手可能)、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(例えば、Wacker Chemieから商品名Geniosil(登録商標)GF9およびGeniosil(登録商標)GF91で入手可能)、およびN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(例えば、Wacker Chemieから商品名Geniosil(登録商標)GF95で入手可能)等の一級アミノシランが使用される。
【0055】
特にイソシアネート官能化合物への付加に関連して、例えば、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)アミン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)アミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミン(Degussaから商品名Dynasylan(登録商標)1122で入手可能)、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン(Degussaから商品名Dynasylan(登録商標)1124で入手可能)、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)アミン、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(Degussaから商品名Dynasylan(登録商標)1189で入手可能)、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(Wacker Chemieから商品名Geniosil(登録商標)GF92で入手可能)、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(Degussaから商品名Dynasylan(登録商標)MTMOで入手可能)、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルメチルジエトキシシラン(Wacker Chemieから商品名Geniosil(登録商標)XL924で入手可能)、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン(Wacker Chemieから商品名Geniosil(登録商標)XL926で入手可能)およびN−フェニルアミノ−メチルトリメトキシシラン(Wacker Chemieから商品名Geniosil(登録商標)XL973)等の二級アミノシランおよびメルカプト官能性シランが使用される。
【0056】
2)エポキシ官能性シラン
エポキシ官能性シランを特にカルボン酸官能化合物または無水物官能化合物に付加するのに使用することができる。好適なエポキシ官能性シランの例は、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(Degussaから商品名Dynasylan(登録商標)GLYMOで入手可能)および3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(Degussaから商品名Dynasylan(登録商標)GLYEOで入手可能)等である。
【0057】
3)無水物官能シラン
無水物官能シランを特にエポキシ官能化合物への付加のために使用することができる。無水物官能性を有するシランの例としては、3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(Wacker Chemieから商品名Geniosil(登録商標)GF20)が挙げられる。
【0058】
4)エチレン性不飽和二重結合を有するシラン
この種のシランをマイケル反応に関連して、または金属触媒反応に関連して使用することができる。例示される当該シランは、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(例えば、Degussaから商品名Dynasylan(登録商標)MEMOで入手可能、またはWacker Chemieから商品名Geniosil(登録商標)GF31で入手可能)、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン(なかでもWacker Chemieから商品名Geniosil(登録商標)XL10で入手可能)、ビニルジメトキシメチルシラン(なかでもWacker Chemieから商品名Geniosil(登録商標)XL12で入手可能)、ビニルトリエトキシシラン(なかでもWacker Chemieから商品名Geniosil(登録商標)GF56で入手可能)、(メタクリロイルオキシメチル)メチルジメトキシシラン(なかでもWacker Chemieから商品名Geniosil(登録商標)XL32で入手可能)、メタクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン(なかでもWacker Chemieから商品名Geniosil(登録商標)XL33で入手可能)、(メタクリロイルオキシメチル)メチルジエトキシシラン(なかでもWacker Chemieから商品名Geniosil(登録商標)XL34で入手可能)およびメタクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン(なかでもWacker Chemieから商品名Geniosil(登録商標)XL36で入手可能)である。
【0059】
5)イソシアナト官能基またはカルバメート官能基を有するシラン
イソシアナト官能基またはカルバメート官能基を有するシランは、特にヒドロキシル官能化合物との反応に関連して採用される。イソシアナト官能基を有するシランの例は、例えば、出願番号11/227,867を有するまだ未公開の米国特許出願に記載されている。
【0060】
好適なイソシアナトアルキルトリアルコキシシランの例は、イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、イソシアナトプロピルトリイソプロポキシシラン、イソシアナトプロピルメチルジイソプロポキシシラン、イソシアナトネオヘキシルトリメトキシシラン、イソシアナトネオヘキシルジメトキシシラン、イソシアナトネオヘキシルジエトキシシラン、イソシアナトネオヘキシルトリエトキシシラン、イソシアナトネオヘキシルトリイソプロポキシシラン、イソシアナトネオヘキシルジイソプロポキシシラン、イソシアナトイソアミルトリメトキシシラン、イソシアナトイソアミルメチルジメトキシシラン、イソシアナトイソアミルメチルジエトキシシラン、イソシアナトイソアミルトリエトキシシラン、イソシアナトイソアミルトリイソプロポキシシランおよびイソシアナトイソアミルメチルジイソプロポキシシランである。多くのイソシアナトアルキルトリおよびジアルコキシシランが、例えば、Witco Corporation会社であるOSi Specialties,Inc.から商品名SILQUEST(登録商標)で市販されている。
【0061】
使用されるイソシアナトプロピルアルコキシシランは、好ましくは、高い純度、特に少なくとも95%の純度を有し、好ましくは、望ましくない副反応をもたらし得るエステル交換触媒等の添加剤を有さない。
【0062】
特に、(イソシアナトメチル)メチルジメトキシシラン(Wacker Chemieから商品名Geniosil(登録商標)XL42で入手可能)、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(Wacker Chemieから商品名Geniosil(登録商標)XL40)およびN−ジメトキシ(メチル)シリルメチルO−メチルカルバメート(Wacker Chemieから商品名Geniosil(登録商標)XL65で入手可能)が使用される。
【0063】
化合物(O)との反応のためのシラン成分(S1)として、少なくとも1つの官能基G’を含むこれらのモノマーシランの代わりに、またはそれらと一緒に、少なくとも1つの官能基G’および少なくとも1つのアルコキシシラン基を有する付加物を使用することも可能である。成分(S1)としての適性を有するこれらの付加物は、少なくとも1つの、特に2つ以上の官能基G’を有するシランと、シランの官能基G’と反応する少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの相補官能基G2を含む化合物(V2)との付加反応によって製造される。分子量を実質的に増加させずにアルコキシ官能性を高めるために、特に、この種の付加物がシラン成分(S1)として使用される。したがって、好ましくは、化合物(V2)は、1000未満、特に500未満の数平均分子量を有する。
【0064】
シラン(S1)として採用された付加物をin situの対応する付加反応によって合成すると同時に、1つ以上の化合物(O)との反応を実施するのが好適である。この場合の好適な付加反応は、既に上記で述べられている付加反応である。
【0065】
しかし、最初に、1つ以上の化合物(O)と、化合物(O)の官能基と反応する少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの相補官能基を含む化合物(V1)とを反応させることも考えられる。この反応は、シラン(S1)との反応の前に起こり得る。しかし、それは、in situで、すなわちシラン(S1)との反応が生じている間に同時に好適に実施される。化合物(V1)は、好ましくは、1000未満、特に500未満の数平均分子量を有する。
【0066】
この種のin situ方法に対する1つの選択肢は、イソシアネート、特にジイソシアネートまたはポリイソシアネートと、二級アミノ基またはヒドロキシル基を含む1つ以上の化合物(O)との不完全反応を包含する。次いで、残りのイソシアネート基を好適な有機官能シランと反応させることができる。この目的では、二級アミノ官能基を有するシランを使用するのが好適であるが、イソシアネートに対する反応性を有するすべての他のシランを採用することもできる。
【0067】
シラン(S1)が1つ以上の化合物(O)との付加反応で改質されていることが本発明にとって不可欠であり、化合物(O)が少なくとも1つの表面活性基を有することが重要である。ここで、表面活性基は、この基を担持する化合物(O)を空気/コーティング界面においてコーティング剤から大量に蓄積させる基を指す。
【0068】
特に、シラン(S1)より小さい表面張力を有する化合物(O)が使用される。化合物(O)の表面張力は、好ましくは、シラン(S1)の表面張力より少なくとも1mN/m、特に好ましくは少なくとも5mN/m小さいべきである。
【0069】
この表面張力の測定は、23℃の温度で行われる。表面張力を測定するのに用いられる方法は、輪環法として公知の方法であった。これは、公知のように、環状張力計を使用して、前記環が液体の相境界から引き抜かれたときにプラチナ環の周囲に作用する最大の力を測定することを含む。調査対象の液体の表面は、表面張力の測定に向けて徐々に増大され、系は、常に平衡状態にある。表面積を増大するのに必要な力が測定され、この測定値が表面張力に変換される。その方法のより詳細な解説は、書籍"Lackeigenschaften messen und steuern",G.Meichsner,Th.G.Mezger,J.Schroeder,edited by Ulrich Zorll,published by Vincentz Verlag 2003,page 96 ffに記載されている。
【0070】
化合物(O)は、好ましくは、得られた付加物(A)がコーティング剤において表面活性を有するように選択される。表面活性付加物(A)は、以降、空気/コーティング界面においてコーティング剤から大量に蓄積する付加物(A)である。
【0071】
空気/コーティング界面におけるこの付加物(A)の蓄積は、典型的には、付加物と膜形成材料(D)の一定の不相溶性の存在によって達成される。しかし、今度は、コーティング剤の部分の流れ不良を防止するために、この不溶性が大きくなりすぎてはならない。また、表面活性付加物を使用する場合は、得られるペイント塗料に対する他の物理的制限と共に、コーティングされる基板の物理的制限を考慮することが必要である。十分な相溶性に加えて、1つの特に重要な側面は、特に目標基板の湿潤性である。ジスマンによる臨界表面張力の測定法を含む方法によってこの湿潤性を推定することができる。この方法の詳細な解説は、書籍"Lackeigenschaften messen und steuern",G.Meichsner,Th.G.Mezger,J.Schroeder,edited by Ulrich Zorll,published by Vincentz Verlag 2003を含め、文献に記載されている。これに関連して、それら自体で、または他の界面活性添加剤と相互作用して、特定の目標基板の臨界表面張力を下回るそれぞれのペイント塗料の表面張力を設定することを可能にする付加物(A)が特に好ましい。
【0072】
特に好適な付加物(A)は、それら自体で、または他の界面活性添加剤と相互作用して、特定の目標基板の臨界表面張力を少なくとも5mN/m下回るそれぞれのペイント塗料の表面張力を設定することを可能にするものである。
【0073】
既に述べたように、低表面張力を有する化合物(O)として好適な化合物は、少なくとも1つの表面活性基を有する化合物である。特に、化合物(O)の表面活性基は、炭化水素基、および例えばフッ化炭化水素基、脂肪酸基およびそれらの誘導体等のそれらの誘導体からなる群、ならびにシロキサン基、および例えばフッ化シロキサン基等のそれらの誘導体から選択される。
【0074】
表面活性炭化水素基は、特に、好ましくは少なくとも5個のC原子、より好ましくは12〜36個のC原子を有し、適宜、例えばフッ素基等の対応する置換基を含むこともできる直鎖状または分枝状脂肪族鎖である。より高度な同族体に関しては、分枝状構造、または官能化の結果として室温で結晶化しない構造が好適である。
【0075】
炭化水素基と共に化合物(O)として使用される化合物の例は、特に、アルカン、アルケンおよびアルキン、ならびに加えて少なくとも1つの官能基G’’をも有するそれらの誘導体である。表面活性化合物(O)は、好ましくは、少なくとも1つのヒドロキシル、イソシアネート、エポキシ、カルボキシル、アミノおよび/またはチオール基および/またはエチレン性不飽和二重結合を有する。
【0076】
一官能構成ブロックに加えて、2以上の官能性を有する化合物(O)を使用することも可能である。
【0077】
使用される有機官能シランに対して反応性を有する、比較的小さい表面張力を有する化合物の例は、特に、それぞれ、概して少なくとも5個のC原子、好ましくは12〜36個のC原子を有する直鎖状または分枝状脂肪族鎖を有する脂肪族アルコール、脂肪酸および脂肪酸誘導体である。12〜36個のC原子を有する直鎖状および/または分枝状脂肪酸誘導体が特に好ましい。
【0078】
有機官能シランとの反応については、極めて一般的に、飽和化合物(O)が好ましい。この理由は、得られる塗料が保証しなければならない高い耐候性である。
【0079】
見込まれる当該化合物の例としては、オクタノール、ナナノール、デカノール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコールおよび相応してより高度な同族体が挙げられる。結晶化傾向が比較的小さいため、例えば、イソステアリルアルコール(例えば、Condeaから商品名Isofolで入手可能)の使用が、n−ステアリルアルコールの使用に比べて好ましい。
【0080】
二官能性出発材料の例としては、ジヒドロキシオクタンの異性体、ジヒドロキシノナンの異性体、ジヒドロキシデカンの異性体、ジヒドロキシウンデカンの異性体、および相応してより高度な同族体が挙げられる。
【0081】
飽和および/または不飽和脂肪酸の誘導体、特に、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、リノール酸、リシネン酸、リシノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、イワシ酸、α−エレオステアリン酸、α−リカン酸、α−パリナリン酸、リシノール酸およびイサノール酸およびこれらの脂肪酸の混合物の基等の、分子中5〜30個の炭素原子を有する飽和および/または不飽和脂肪酸の誘導体、および/または記載の脂肪酸の対応するヒドロキシ酸、および/またはそれらの混合物も表面活性構成ブロックとして好適である。したがって、表面活性化合物(O)として、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシラウリン酸、リシノール酸またはそれらの混合物を使用することも可能である。
【0082】
また、二量体および三量体脂肪酸の対応する基、ならびにそれらの混合物も好適である。ここで、例として二量体脂肪酸ジオールを挙げることができる。それらは、例えば、Uniqema社から商品名Pripol(登録商標)で市販されている。それらは、例えば、Karlheinz Hill,"Fats and Oils as Oleochemical Raw Materials",Pure Appl. Chem.,vol.72,no.7,pages 1255−1264(2000)、特にpage 1261に記載されているように、対応する二量体脂肪酸を還元することによって製造され得る。例えば、Uniqema North America(米国イリノイ州シカゴ)から市販されているPRIPOL2033が好適である。
【0083】
エポキシ化脂肪酸も無水物官能シランの反応パートナーとして使用できる。
【0084】
表面活性基として炭化水素基を有する対応する化合物(O)の他の例は、低表面張力のアミン官能化合物である。
【0085】
当該化合物の例として、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミンおよび相応してより高度な同族体を挙げることができる。
【0086】
一官能構成ブロックに加えて、2以上の官能性を有する化合物(O)を使用することも可能である。二官能性出発材料の例としては、ジアミノオクタンの異性体、ジアミノノナンの異性体、ジアミノデカンの異性体、ジアミノウンデカンの異性体および相応して対応するより高度な同族体が挙げられる。
【0087】
アミン官能化合物(O)に加えて、対応するメルカプト官能性誘導体を採用することも可能である。
【0088】
また、特に、化合物(O)としてイソシアネート官能性脂肪酸誘導体を採用することも可能である。ここに挙げることができる例は、例えば、二級アミン官能性を有するシランとの反応パートナーとして採用できるステアリルイソシアネートである。
【0089】
シラン官能性樹脂の部分において特に小さい表面張力を必要とする場合は、好ましくは、フッ化側鎖、特にフッ化炭化水素を有する有機物も使用される。当該化合物の例は、アミン官能シランまたはOH官能成分としての3−フルオロベンジルアルコールとのマイケル付加反応で反応させることができるフッ化側鎖を有するメタクリレートである。しかし、また、対応するシランに対して反応性を有する低表面張力の他のフッ化物を採用することも可能である。
【0090】
シランのSi−H基との反応では、様々な不飽和オリゴマーおよびポリマーを採用することも可能である。1,2ポリブタジエンおよび1,2ポリブタジエンのコポリマーが使用に特に好適である。加えて、末端二重結合を有するポリイソブチレンを採用することが可能である。また、側鎖にエチレン性不飽和二重結合を有する表面活性グラフトポリマーまたはグラフトコポリマーを使用することもできる。
【0091】
化合物(O)として、また、シロキサンまたはそれらの誘導体を採用することも可能である。
【0092】
基本的には、シラン(S1)の相補官能基G’と反応する平均で少なくとも1つの官能基G’’を有するすべてのポリシロキサンに適性がある。特に、少なくとも1つのヒドロキシル、カルボキシル、アミンおよび/またはチオール基、ビニル、イソシアネートおよび/またはエポキシ基、特にグリシジル基および/または無水物基および/またはアクリロイルおよびメタクリロイル基、特に少なくとも1つのヒドロキシル、カルボキシル、アミンおよび/またはチオール基を有するポリシロキサンが使用される。
【0093】
例えば、式(III)
【化1】

[式中、
1〜R6は、同一または異なる基であり、
1は、炭素鎖が隣接していない酸素、硫黄またはNRa基で中断されていてもよいアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキル基、あるいはフッ素置換アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキル基であり、珪素原子とフッ素置換有機基の間にエチレン基を有する構造が好ましく、
2は、炭素鎖が隣接していない酸素、硫黄またはNRa基で中断されていてもよいヒドロキシル、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキル基であり、
3およびR6は、水素、炭素鎖が隣接していない酸素、硫黄またはNRa基で中断されていてもよいアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキル基、あるいはフッ素置換アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキル基であり、珪素原子とフッ素置換有機基の間にエチレン基を有する構造が好ましく、
4およびR5は、水素、ヒドロキシル、炭素鎖が隣接していない酸素、硫黄またはNRa基で中断されていてもよいアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキル基であり、
基R2、R4およびR5の少なくとも1つは、シラン(S1)の相補官能基に対して反応性を有する官能基G’’をさらに担持し、
1は、1〜80、好ましくは3〜20であり、
2は、0〜80、好ましくは0〜10である]のポリシロキサンに適性がある。
【0094】
ここで好ましくは、官能基G’’は、それぞれ、ヒドロキシル、カルボキシル、アミンおよび/またはチオール基、ビニル、イソシアネートおよび/またはエポキシ基、特にグリシジル基および無水物基、ならびにアクリロイルおよびメタクリロイル基から選択される。
【0095】
それぞれのシロキサン鎖の分子量を変えると、得られる付加物とコーティング剤の相溶性の誘導改変が可能になる。コーティング剤との高度な相溶性を得るためには、比較的低分子量のシロキサン(O)を使用することが特に好ましい。これらのシロキサンは、例えば、米国特許出願第20040209088号の段落[0017]から[0019]にも記載されており、好適な成分として明記されている。
【0096】
基本的に、化合物(O)として採用されるシロキサンの分子量を、改質されるコーティング剤との期待される相溶性に従って改変することができる。しかし、多くの場合、低分子量は、高い相溶性を発揮する傾向があることが判明した。よって、この観点から、好適な重合度m1およびm2に反映される低分子量が好ましい。
【0097】
シロキサン鎖内のそれぞれの珪素原子上の非官能性置換基に関しても同様に、成分と改質されるコーティング剤との期待される相溶性に従って改変することが可能である。表面張力を誘導的に低下させ、それにより本発明の付加物を得るためには、非官能性基として、メチル、エチルおよびフェニル基、ならびにフッ素で部分置換されたアルキル基を使用するのが好適である。非官能性基としてメチル基を使用するのが特に好ましい。
【0098】
シロキサンの相溶性を誘導的に向上させるために、酸化エチレンまたは酸化プロピレンのオリゴマーまたはポリマーを側鎖として導入することも可能である。
【0099】
式(IV):
【化2】

[式中、
1、R4およびR5は、以上に定義されている通りであり、
mは、1〜80、好ましくは3〜20、より好ましくは5〜12である]のポリシロキサンを使用するのが好ましい。
【0100】
表面活性化合物適性を有するシロキサンの例としては、米国特許出願第20040209088号の段落[0012]から[0018]に示されている化合物が挙げられる。
【0101】
特に、上記の式(IV)のカルビノール官能シロキサンが採用される。
【0102】
化合物(O)として好適であるヒドロキシル基を有するシロキサンの例は、カルビノール末端ジメチルシロキサン−カプロラクトンブロックコポリマー(ABCR GMBH & CO.KG,Karlsruheから製品番号AB127698で市販)、カルビノール官能メチル−シロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー(ABCR GMBH & CO.KG,Karlsruheから製品番号AB127701およびAB127700で市販)、カルビノール末端ポリジメチルシロキサン(ABCR GMBH & CO.KG,Karlsruheから製品番号AB153380で市販)、モノカルビノール末端ポリジメチルシロキサン(ABCR GMBH & CO.KG,Karlsruheから製品番号AB127710およびAB109345およびAB146681およびAB146683およびAB146682で市販)、特にカルビノール官能シロキサンである。
【0103】
以下の式(V):
【化3】

[式中、
1およびR4は、以上に定義されている通りであり、メチル、エチルおよびフェニル基、ならびにフッ素および/または官能基G’’で部分置換されたアルキル基が好ましい。メチル基を非官能性基として使用するのが特に好ましく、かつ/または官能基G’’は、好ましくはヒドロキシル基である。
mは、1〜80、好ましくは3〜20、より好ましくは5〜12である]の対称構造を有する官能シロキサンが特に好ましい。
【0104】
4がヒドロキシル基を含む式(V)のシロキサンを使用するのが特に好ましい。GE Bayer Siliconesのカルビノール官能ポリシロキサンBaysilone(登録商標)OF 502を使用するのが好適である。その物質は、様々な分子量のもの、例えばBaysilone(登録商標)OF 502 6%およびBaysilone(登録商標)OF 502 3%が入手可能である。これに関連して好適なのは、より低分子量の物質Baysilon(登録商標)OF 502 6%である。
【0105】
また、式(IV)または(V)による一級または二級アミン基を有するシロキサンが特に好適に採用され、一例は、アミノプロピルメチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー(ABCR GmbH & CO.Kg,Karlsruheから製品番号AB109374およびAB109373およびAB109375で市販)である。
【0106】
本発明のコーティング剤に特に好適に採用される付加物(A)は、イソシアネート、特にジイソシアネートまたはポリイソシアネートと、二級アミン基またはヒドロキシル基を含む上記表面活性化合物1つとの不完全反応を包含するin situ方法によって得られる。次いで、残りのイソシアネート基を好適な有機官能シランと反応させることができる。この目的では、二級アミン官能基を含むシランを使用するのが好適であるが、イソシアネートに対して反応性を有するすべての他の有機官能シランを採用することもできる。
【0107】
したがって、式(VI):
−NR’’’−C(O)−N−(L−SiR’’x(OR’)3−x)n(L’−SiR’’y(OR’)3−y)m (VI)
[式中、
R’’’は、水素、炭素鎖が隣接していない酸素、硫黄、またはRaがアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであるNRa基で中断されていてもよいアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、
R’は、水素、炭素鎖が隣接していない酸素、硫黄、またはRaがアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであるNRa基で中断されていてもよいアルキルまたはシクロアルキルであり、
L、L’は、1〜20個の炭素原子、特に1〜4個のC原子を有する直鎖状および/または分枝状アルキレンまたはシクロアルキレン基であり、
R’’は、炭素鎖が隣接していない酸素、硫黄またはNRa基で中断されていてもよいアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、
nは0〜2であり、mは0〜2であり、m+nは2であり、
x、yは、0〜2である]の少なくとも1つの反応性基を含む化合物の付加物(A)としての使用が特に好適である。
【0108】
式(VI)の少なくとも1つの反応性基を含む本発明のこれらの好適な付加物(A)は、好ましくは、
−少なくとも1つのジおよび/またはポリイソシアネート(PI)と、
式(VII)
−H−N−(L−SiR’’x(OR’)3−x)n(L’−SiR’’y(OR’)3−y)m (VII)
[式中、
置換基R’、L、L’およびR’’ならびに指数n、m、xおよびyは、式(VI)について定義されている通りである]の少なくとも1つのアミノシラン、および
−少なくとも1つの表面活性化合物(O)との反応によって製造されたものである。
【0109】
特に好適なアミノシラン(VII)は、ビス(2−エチルトリメトキシシリル)−アミン、ビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミン、ビス(4−ブチルトリメトキシシリル)アミン、ビス(2−エチルトリエトキシシリル)アミン、ビス(3−プロピルトリエトキシシリル)アミンおよび/またはビス(4−ブチルトリエトキシシリル)アミンである。ビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミンが特に好適である。この種のアミノシランは、例えば、DEGUSSAから商品名DYNASILAN(登録商標)1124で、またはOSI Specialties Inc.からSilquest(登録商標)で入手可能である。
【0110】
これらの付加物(A)の製造のための好適なジおよび/またはポリイソシアネート(PI)は、それ自体公知の置換または非置換芳香族、脂肪族、脂環式および/または複素環式ジおよび/またはポリイソシアネートである。好適なジおよび/またはポリイソシアネートの例としては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4’−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニレンジイソシアネート、テトラメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン、1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2−イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン2,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート、1,4−または1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−または1,3−または1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、2,4−または2,6−ジイソシアナト1−メチルシクロヘキサン、Henkelが商品目IDDI1410で市販している種類の二量体脂肪酸から誘導されたジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、シクロブタン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン1,4−ジイソシアネート、ペルヒドロジフェニルメタン、2,4’−ジイソシアネート、4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(例えば、Bayer AGのDesmodur(登録商標)W)、テトラメチルキシルイルジイソシアネート(例えば、American CyanamidのTMXDI(登録商標))および上記ポリイソシアネートの混合物が挙げられる。好ましいポリイソシアネートは、さらに、上記ジイソシアネートのビウレット二量体およびイソシアヌル酸エステル三量体である。
【0111】
特に好適なポリイソシアネート(PI)は、ヘキサメチレン、1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、それらのビウレット二量体および/またはイソシアネート三量体である。
【0112】
本発明の別の実施形態において、ポリイソシアネート(PI)は、ポリオールと、化学量論的過剰量の上記ポリイソシアネートとを反応させることによって得られる、ウレタン構造単位を有するポリイソシアネートプレポリマーである。この種のポリイソシアネートプレポリマーは、例えば米国特許第4,598,131号に記載されている。
【0113】
特に好適な付加物(A)は、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネート、および/またはそれらのイソシアヌル酸エステル三量体と、ビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミン、および表面活性化合物(O)としての上記式(V)の少なくとも1つのヒドロキシル含有ポリシロキサンとの反応生成物である。
【0114】
ポリイソシアネートとアミノシランの反応は、好ましくは、100℃を超えない温度、好ましくは60℃を超えない温度の不活性ガス雰囲気中で行われる。
【0115】
ジおよび/またはポリイソシアネートとアミノシラン(VII)の反応において、ジおよび/またはポリイソシアネート(PI)のイソシアネート基の好ましくは少なくとも50mol%、より好ましくは少なくとも70mol%、および98mol%を超えない量、特に99mol%を超えない量が反応して、構造単位(VI)を形成した。次いで、残りのイソシアネート基を好適な表面活性化合物(O)と反応させる。しかし、最初にジおよび/またはポリイソシアネートの一部と好適な表面活性化合物(O)とを反応させ、続いてアミノシランとの反応を実施することも可能である。最後に、すべての化合物を同時に互いに反応させること(in situ方法)も可能である。
【0116】
ジおよび/またはポリイソシアネートの量およびアミノシラン(VII)の量および表面活性化合物(O)の量は、好ましくは、付加物(A)が平均50mol%未満の遊離イソシアネート基を含むように選択される。
【0117】
表面活性化合物(O)は、それぞれ溶媒を含まない付加物(A)の含量に対して、典型的には0.05質量%〜50質量%の量、好ましくは0.1質量%〜10質量%の量で使用される。
【0118】
本発明のコーティング剤に対する割合としての付加物(A)の比率は、それぞれコーティング剤の不揮発分に対して、典型的には0.1質量%〜35質量%、好ましくは0.5質量%〜15質量%、より好ましくは1質量%〜10質量%である。
【0119】
触媒(C)
−Si(OR’)3−x(y)単位を架橋するための触媒(C)として、基本的には、それ自体公知の化合物を採用することが可能である。例は、例えば、ナフテン酸スズ、安息香酸スズ、オクタン酸スズ、酪酸スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、二酢酸ジブチルスズ、酸化ジブチルスズおよびオクタン酸鉛等のルイス酸(電子欠乏化合物)である。しかし、これらの化合物の毒性に関する懸念がある。特に、シラン架橋の有効量が使用される場合は、この種の触媒は、過焼により、すなわち例えば160℃の比較的高温における架橋により、黄色化の傾向を示す。しかし、当該過焼に対する安定性は、ライン製造におけるOEM透明塗料の使用に対して不可欠である。他のより毒性的支障の小さい触媒は、アルミニウムまたは亜鉛を主成分とした、キレートリガンドを有する金属錯体であり、例は、国際特許出願公開第2006/042585(A)号、10頁、第4〜21行に記載されている触媒である。これらの触媒も過焼により強い黄色化の傾向を示すため、できるだけ本発明の調合物に使用すべきでない。
【0120】
毒性的特性および過焼試験における黄色化に関する限り、本発明ではリン酸の誘導体を主成分とした触媒が好ましい。
【0121】
したがって、特に、好ましくはアクリルホスホン酸ジエステル、環式ホスホン酸ジエステル、アクリルジホスホン酸ジエステルおよび環式ジホスホン酸ジエステルからなる群の置換ホスホン酸ジエステルおよびジホスホン酸ジエステル、ならびに好ましくはアクリルリン酸ジエステルおよび環式リン酸ジエステルからなる群の置換リン酸モノエステルおよびリン酸ジエステル、または対応するアミンブロックエステルが触媒(C)として使用される。好適なリン触媒は、例えば、まだ未公開の独国特許出願第102005045228.0−44号に記載されている。
【0122】
したがって、例えば、一般式(VIII)のアクリルホスホン酸ジエステル(C)を採用することが可能である。
【0123】
【化4】

【0124】
一般式(VIII)において、基R10およびR11は、同じまたは互いに異なっており、好ましくは同じである。
【0125】
基R10およびR11は、
−1〜20個、好ましくは2〜16個、特に2〜10個の炭素原子を有する置換および非置換アルキル、3〜20個、好ましくは3〜16個、特に3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル、および5〜20個、好ましくは6〜14個、特に6〜10個の炭素原子を有するアリール、
−含まれるアルキル、シクロアルキルおよびアリール基がそれぞれ上記の数の炭素原子を含む置換および非置換アルキルアリール、アリールアルキル、アルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールシクロアルキル、シクロアルキルアリール、アルキルシクロアルキルアリール、アルキルアリールシクロアルキル、アリールシクロアルキルアルキル、アリールアルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキルアリールおよびシクロアルキルアリールアルキル、
−酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子および珪素原子、特に酸素原子、硫黄原子および窒素原子からなる群から選択される少なくとも1つ、特に1つのヘテロ原子を含む上記の種類の置換および非置換基からなる群から選択される。
【0126】
例えば、一般式(IX)の環式ホスホン酸ジエステル(C)を採用することも可能である。
【0127】
【化5】

【0128】
一般式(IX)において、基R12およびR13は、同一または互いに異なっており、好ましくは同じである。
【0129】
基R12およびR13は、
−1〜20個、好ましくは1〜10個、特に1〜6個の炭素原子を有する置換および非置換二価アルキル、3〜20個、好ましくは3〜10個、特に3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル、および5〜20個、好ましくは6〜14個、特に6〜10個の炭素原子を有するアリール、
−含まれるアルキル、シクロアルキルおよびアリール基がそれぞれ上記の数の炭素原子を含む置換および非置換二価アルキルアリール、アリールアルキル、アルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールシクロアルキル、シクロアルキルアリール、アルキルシクロアルキルアリール、アルキルアリールシクロアルキル、アリールシクロアルキルアルキル、アリールアルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキルアリールおよびシクロアルキルアリールアルキル、
−酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子および珪素原子からなる群から選択される少なくとも1つ、特に1つのヘテロ原子を含む上記の種類の置換および非置換二価基からなる群から選択される。
【0130】
一般式(IX)において、記号Z’は、
−基R12の原子と基R13の原子との共有結合;
−酸素原子、置換、特に酸素置換および非置換硫黄原子、置換、特にアルキル置換窒素原子、置換、特に酸素置換リン原子、および置換、特にアルキルおよびアルコキシ置換珪素原子からなる群から選択される二価結合基、特に酸素原子;
−酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、珪素原子、特に、酸素原子、硫黄原子および窒素原子からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換および非置換アルキル、または1〜10個、好ましくは1〜6個、特に1〜4個の炭素原子を有するヘテロ原子のないアルキル、3〜10個、好ましくは3〜6個、特に6個の炭素原子を有するシクロアルキル、および5〜10個、特に6個の炭素原子を有するアリールからなる群から選択される二価結合基を表す。
【0131】
また、例えば、一般式(X):
(R10−O)(O)PH−O−PH(O)(O−R11) (X)
[式中、
記号は、以上に定義されている通りである]のアクリルジホスホン酸ジエステル(C)を採用することも可能である。
【0132】
最後に、例えば、一般式(XI):
【化6】

[式中、
記号は、以上に定義されている通りである]の環式ジホスホン酸ジエステル(C)を使用することも可能である。
【0133】
基R10、R11、R12およびR13の好適な置換基としては、ホスホン酸ジエステルおよびジホスホン酸ジエステル(C)の活性に悪影響を与えず、本発明による混合物における硬化反応を抑制せず、望ましくない副反応をももたらさず、毒性活性を含まないすべての基および原子が挙げられる。好適な置換基の例は、ハロゲン原子、ニトリル基またはニトロ基、好ましくはハロゲン原子、特にフッ素原子、塩素原子および臭素原子である。
【0134】
基R10、R11、R12およびR13および/または基R10およびR11は、好ましくは、フェニル、メチルおよびエチルからなる群から選択される。
【0135】
一般式(VIII)のアクリルホスホン酸ジエステル(C)、特に、一般式(VIII)のR10およびR11が、フェニル、メチルおよびエチルからなる群から選択されるものを使用するのが好ましい。一般式(VIII)の非常に好適なホスホン酸ジエステル(C)の一例は、(全面的に正確でなく)当業者によって亜リン酸ジフェニルと呼ばれることもあるホスホン酸ジフェニルである。
【0136】
好ましくはアクリルリン酸ジエステルおよび環式リン酸ジエステルからなる群の相応して置換されたリン酸モノエステルおよびリン酸ジエステルが触媒(C)として特に好適に採用される。
【0137】
これらのアクリルリン酸ジエステル(C)は、特に、一般式(XII):
【化7】

[式中、
10およびR11は、以上に定義されている通りであり、加えて、水素(部分エステル化)を表していてもよい]のアクリルリン酸ジエステル(C)からなる群から選択される。
【0138】
特に好適なリン酸エステル(C)の例は、対応するアミンブロックリン酸エステル、特にアミンブロックリン酸エチルヘキシルおよびアミンブロックリン酸フェニルである。
【0139】
リン酸エステルをブロックするのに使用されるアミンに関する限り、トリエチルアミンが特に好ましい。特定のアミンブロックリン酸触媒は、市販されている。一例として、リン酸のアミンブロック部分エステルを主成分とする特に好適な触媒としてKing Industriesが商品名Nacure4167で販売する物質を挙げることができる。
【0140】
触媒(C)は、典型的には、コーティング剤の不揮発分に対して0.1質量%〜15質量%、好ましくは0.5質量%〜5質量%の割合で採用される。
【0141】
膜形成材料(D)
膜形成材料(D)として、成分(A)のSi(OR)3基と、かつ/または適宜触媒下にて単独で、かつ/または架橋剤(VM)とネットワークノードを形成することが可能である化合物を使用することが可能である。
【0142】
膜形成材料(D)を選択する際に、好ましくは、コーティング剤が硬化されると、加水分解しやすいSi−N−Cおよび/またはSi−O−Cノードが非常に少量しか、または全く形成されないようにすべきである。
【0143】
成分(D)として、例えば、Si(OR)3基を含むオリゴマーまたはポリマーを使用することができ、その例としては、米国特許4,499,150号、同第4,499,151号または欧州特許出願公開第0571073(A)号に示されているポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0144】
好ましくは、放射線架橋性基、特にアクリレート基およびメタクリレート基からなる群、および/または熱架橋性基、特にヒドロキシル基、カルバメート基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基および無水物基からなる群、特に好ましくはアクリレートおよび/またはメタクリレート基および/またはヒドロキシル基および/またはカルバメート基から選択される少なくとも1つの反応性官能基G’’’を含む化合物が、膜形成材料として特に採用される。
【0145】
したがって、膜形成材料(D)として、1つ以上の二重結合を含むオリゴ−および/またはポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル官能(メタ)アクリルコポリマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル、アミノ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレートおよび/またはシリコーン(メタ)アクリレート、好ましくは、二重結合に加えて、カルバメート、ビウレット、アロファネート、アミド、尿素、ヒドロキシル、カルボキシルおよび/またはエポキシド基をも適宜含むことができるポリウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはポリエステル(メタ)アクリレートを採用することが可能である。
【0146】
ウレタン(メタ)アクリレートを、ジおよび/またはポリイソシアネートから、イソシアネート基に対して反応性を有する基を含む少なくとも1つの化合物から、かつイソシアネート基に対して反応性を有する基を含むと共に、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を含む少なくとも1つの化合物から、当業者に公知の方法で製造することができ、製造は、適宜高温で、任意の順序で成分を混合することによって行われる。
【0147】
特に、ウレタン(メタ)アクリレートは、最初にジまたはポリイソシアネートを導入し、次いで少なくとも1つのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートまたは他のエチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステルを添加することによりイソシアネート基の一部を最初に反応させることによって得られる。続いて、ジオール/ポリオールおよび/またはジアミン/ポリアミンおよび/またはジチオール/ポリチオールおよび/またはアルカノールアミンの群からの連鎖拡張剤を添加することにより、残りのイソシアネート基を連鎖拡張剤と反応させる。
【0148】
ウレタン(メタ)アクリレートに加えて、好適であるポリエステル(メタ)アクリレートは、基本的に、当業者に公知である。それらを様々な方法によって製造することができる。例えば、ポリエステルを合成する際に、アクリルおよび/またはメタクリル酸を酸成分として直接使用することができる。別の可能性は、ポリエステルを合成する際に、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルをアルコール成分として直接使用することである。しかし、好ましくは、ポリエステル(メタ)アクリレートは、ポリエステルのアクリル化によって製造される。例として、最初にヒドロキシル含有ポリエステルを合成し、次いでそれらをアクリルまたはメタクリル酸と反応させることが可能である。最初にカルボキシル含有ポリエステルを合成し、次いでそれらをアクリルまたはメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルと反応させることも可能である。未反応の(メタ)アクリル酸を洗浄、蒸留、または好ましくは、例えばトリフェニルホスフィン等の好適な触媒を使用する等量のモノエポキシドもしくはジエポキシド化合物との反応によって反応混合物から除去することができる。ポリエステルアクリレートの製造のさらなる詳細については、特に、独国特許出願公開第3316593(A)号および同第3836370(A)号、ならびに欧州特許出願公開54105(A)号、独国特許第2003579号および欧州特許第2866号を参照することができる。
【0149】
好適であるポリエーテル(メタ)アクリレートも同様に、基本的に当業者に公知である。それらを様々な方法によって製造することができる。例えば、アクリル酸および/またはメタクリル酸でエステル化されたヒドロキシル含有ポリエーテルを、二価および/または多価アルコールと異なる量の酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンとを周知の方法(例えば、Houben−Weyl,volume XIV,2,Makromolekulare Stoffe[Macromolecular compounds]II,(1936))に従って反応させることによって得ることができる。テトラヒドロフランまたは酸化ブチレンの重合生成物を使用することも可能である。
【0150】
また、エポキシ(メタ)アクリレートも同様に当業者に周知であるため、詳細に説明する必要がない。それらは、典型的には、アクリル酸とエポキシ樹脂、例えば、ビスフェノールAを主成分としたエポキシ樹脂、または他の商業的に慣例のエポキシ樹脂との付加反応によって製造される。
【0151】
1つ以上の結合剤(BM)および1つ以上の架橋剤(VM)で構成された混合物が膜形成成分(D)として好適に採用される。
【0152】
好適な結合剤(BM)は、架橋剤(VM)の相補反応性基と反応する反応性基を含むオリゴマーおよび/またはポリマー化合物である。ヒドロキシル基、カルバメート基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基および無水物基、特に好ましくはヒドロキシル基および/またはカルバメート基を含む化合物が、結合剤(BM)として特に採用される。
【0153】
特に、ポリウレタンおよび/またはポリ(メタ)アクリレートおよび/またはポリエステルを主成分とした結合剤(BM)が使用される。
【0154】
結合剤は、典型的には、ポリスチレン標準に対するゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される、500〜200000、特に500〜4000の数平均分子量を有する。
【0155】
OH含有結合剤のOH価は、それぞれの場合、特にDIN ENISO3629、07.1998版に従って滴定によって測定された場合に、好ましくは50〜500mg KOH/g、とくに70〜250mg KOH/gである。
【0156】
カルバメート基を含む結合剤は、典型的には、250〜700g/当量、特に250〜500g/当量の算術カルバメート当量CEMを有する。
【0157】
結合剤(BM)として、例えば、以下の成分を共重合させることによって得られる(メタ)アクリレートコポリマーが使用される。
【0158】
(a1)10質量%〜80質量%、好ましくは20質量%〜60質量%の3−ヒドロキシプロピルアクリレートもしくは3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、または2−ヒドロキシプロピルアクリレートもしくは2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、または2−ヒドロキシエチルアクリレートもしくは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、または4−ヒドロキシ−n−ブチルアクリレートもしくは4−ヒドロキシ−n−ブチルメタクリレート、またはこれらのモノマーの混合物、
(b1)0質量%〜30質量%、好ましくは0質量%〜15質量%のアクリル酸の(a1)以外のヒドロキシル含有エステルもしくはメタクリル酸のヒドロキシル含有エステル、または当該モノマーの混合物、
(c1)0質量%〜90質量%、好ましくは10質量%〜70質量%の、少なくとも4個の炭素原子をアルコール残基に有する(メタ)アクリル酸の(a1)以外および(b1)以外の脂肪族または脂環式エステル、または当該モノマーの混合物、
(d1)0質量%〜3質量%、好ましくは0質量%〜2質量%のエチレン性不飽和カルボン酸、またはエチレン性不飽和カルボン酸の混合物、および
(e1)0質量%〜50質量%、0質量%〜35質量%のビニル芳香族化合物および/または(a1)以外、(b1)以外、(c1)以外および(d1)以外のエチレン性不飽和モノマー、あるいは当該モノマーの混合物(成分(a1)、(b1)、(c1)、(d1)および(e1)の質量分率の合計は、常に100質量%である)。
【0159】
ポリウレタン系結合剤(BM)は、当業者に公知の方法で、ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートと連鎖拡張剤との反応によって製造され、連鎖拡張剤の官能性は、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基、アミノ基および/またはカルバメート基等の所望の官能基を導入することを可能にする。
【0160】
したがって、例えば、存在する遊離イソシアネート基の一部と、好ましくは、ヒドロキシル、チオールならびに一級および二級アミノ基からなる群から選択されるイソシアネート反応性基、特にヒドロキシル基を含むと共に、適宜、好ましくはカルボキシル基、カルバメート基および無水物基からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる官能基を含む化合物とをさらに反応させることが可能である。この種の好適な化合物の例は、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシプロピオン酸またはγ−ヒドロキシ酪酸およびヒドロキシプロピルカルバメートである。
【0161】
好適なジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートの例は、付加物(A)の説明に関連して既に上記で記載されている化合物である。
【0162】
架橋剤(VM)は、特に、アミノ樹脂、非ブロックポリイソシアネート、ブロックポリイソシアネート、ポリエポキシド、ポリカルボン酸、ポリ酸無水物およびポリオールからなる群から選択される。
【0163】
好適なアミノ樹脂は、典型的で公知のアミノ樹脂であり、そのメチロールおよび/またはメトキシメチル基のいくつかは、カルバメートまたはアロファネート基によって脱官能化されていてもよい。この種の架橋剤は、米国特許第4710542号および欧州特許第0245700号、ならびにB.Singh and coworkers,"Carbamylmethylated Melamines, Novel Crosslinkers for the Coatings Industry" in Advanced Organic Coatings Science and Technology Series, 1991, volume 13, pages 193 to 207の記事に記載されている。
【0164】
他の好適な架橋剤(VM)は、好ましくは成分(C)の触媒下で自らと反応するエポキシ樹脂であり、高度な耐候性を示す脂肪族エポキシ樹脂が特に好ましい。この種のエポキシ樹脂は、例えば、B. Ellis "Chemistry and Technology of Epoxy Resins"(Blackie Academic & Professional, 1993, pages 1 to 35)の論文に記載されている。
【0165】
架橋剤(VM)として、ジおよび/またはポリイソシアネートを使用するのが好適である。ブロックポリイソシアネートは、本発明のコーティング剤が一成分コーティング材料である場合に使用され、非ブロックポリイソシアネートは、それらが二成分コーティング材料である場合に使用される。
【0166】
好適なジおよび/またはポリイソシアネートは、付加物(A)に関連して上記に既に記載されているジおよび/またはポリイソシアネートである。脂肪族および/または脂環式ジおよび/またはポリイソシアネートを使用するのが好ましい。
【0167】
イソシアネートが1K(一成分)コーティング材料に使用される場合は、イソシアネートを、当業者に公知の方法で、ブロッキング剤と反応させ、ブロッキング剤の選択は、当業者が認識しているように、特に所望の硬化温度に左右される。
【0168】
概して、膜形成材料(D)は、コーティング剤の不揮発分に対して、50質量%〜99.8質量%、好ましくは80質量%〜99.4質量%、より好ましくは85質量%〜98.5質量%の割合で採用される。
【0169】
結合剤(BM)は、典型的には、コーティング剤の不揮発分に対して、1質量%〜70質量%、好ましくは10質量%〜50質量%、より好ましくは20質量%〜45質量%までの割合で採用される。
【0170】
架橋剤(VM)は、典型的には、コーティング剤の不揮発分に対して、1質量%〜70質量%、好ましくは10質量%〜60質量%、より好ましくは25質量%〜55質量%までの割合で採用される。
【0171】
溶媒(L)
コーティング剤内で他の成分に対して化学的に不活性であるとともに、コーティング剤が硬化されたときに反応しない非プロトン性溶媒が発明の成分(L)として好適である。この種の溶媒の例は、トルエン、キシレン、Solventnaphtha(登録商標)、Solvesso 100またはHydrosol(登録商標)(ARAL)等の脂肪族および/または芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトンまたはメチルアミルケトン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチルまたはエトキシプロピオン酸エチル等のエステル、エーテル、あるいは上記溶媒の混合物である。非プロトン性溶媒または溶媒混合物は、好ましくは、溶媒に対して、1質量%を超えない、より好ましくは0.5質量%を超えない水分を有する。
【0172】
さらなる構成成分
本発明のコーティング剤は、例えば書籍"Lackadditives"[Additives for Coatings] by Johan Bieleman, Wiley−VCM, Weinheim, New York, 1998に記載されている、膜形成材料(D)を架橋するための触媒、消泡剤、定着剤、基板湿潤性を向上させるための添加剤、表面平滑性を向上させるための添加剤、艶消剤、光安定剤、好ましくはUV吸収剤および/またはHALS、腐食防止剤、殺生剤、難燃剤または重合防止剤等の典型的な助剤および添加剤を典型的な量、特に、コーティング剤の全質量に対して5質量%までの量でさらに含むことができる。
【0173】
他の非架橋性表面活性物質、すなわち付加物(A)を除く表面活性物質の量が可能な限り少量に維持されている場合に、特に好適なコーティング剤が得られる。特に、これらの他の非架橋性表面活性物質の量は、それぞれコーティング剤の全質量に対して0.5質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満である。当該他の非架橋性表面活性物質の例は、特に、典型的な流れ調整添加剤等である。
【0174】
効果付与および/または色付与性の多層塗装系
本発明のコーティング剤は、装飾、保護および/または効果付与高耐引掻性塗料および塗装系として、特に、量産および補修塗装部分における輸送手段の本体またはその一部(特に、自動二輪車、バスまたは自動車等の動力車両、農業機械およびトラック等の商用車両、航空機建造および造船、ならびに内部および外部車体構造部品);建物の内装および外装;家具、窓および扉;プラスチック成形品、特にCDおよび窓;小規模工業部品、コイル、容器および包装材;大型家庭用品;フィルム;光学部品、電機部品および機械部品;ならびに中空ガラス製品および日用品に対する効果付与および/または色付与性の多層塗装系の透明被覆として著しく好適である。
【0175】
本発明のコーティング剤および塗装系、特に透明被覆は、自動車量産塗装の技術的かつ美観的に特に要求の厳しい分野に採用される。特に好ましくは、本発明のコーティング剤は、多段塗装法、特に、少なくとも1つの着色コーティング剤を塗装または未塗装基板に塗布した後、透明コーティング剤を得られた顔料着色被覆の少なくとも一部に塗布し、硬化させる方法に使用され、透明被覆は、本発明のコーティング剤から製造される。
【0176】
この方法は、特に、自動車量産塗装および/または商用車両塗装および/または内部もしくは外部車体構造部品、または造船もしくは航空機建造のための部品、または家庭用品および電気器具のための部品、またはプラスチック成形品もしくはフィルムの塗装に対する補修塗装に採用される。
【0177】
よって、少なくとも1つの顔料着色被覆、およびその上の、本発明のコーティング剤から製造された透明被覆で構成された多層塗装系が好ましい。
【0178】
この場合に採用される顔料着色被覆は、概して、物理的もしくは熱的に、かつ/または化学線によって硬化可能である水性または溶媒系着色コーティング剤を使用して製造されていてよい。
【0179】
着色コーティング剤は、典型的には、
(I)1つ以上の溶媒および/または水、
(II)1つ以上の結合剤、好ましくは1つ以上のポリウレタン樹脂および/またはアクリレート樹脂および/またはポリエステル樹脂、より好ましくは少なくとも1つのポリウレタン樹脂、
(III)望まれる場合は少なくとも1つの架橋剤、
(IV)1つ以上の顔料、特に効果顔料および/またはカラー顔料、ならびに
(V)望まれる場合は1つ以上の典型的な助剤および添加剤を含む。
【0180】
ここで好適な結合剤は、典型的には自動車工業分野における下塗に採用されるポリウレタン樹脂、アクリレート樹脂およびポリエステル樹脂であり、結合剤の特性、そして本発明の方法に対する適性は、これらの結合剤を製造するのに使用される合成成分の性質および量の選択を介して当業者に公知の方法で導かれる。
【0181】
ポリウレタン樹脂を1つ以上のポリアクリレート樹脂および/または1つ以上のポリエステル樹脂と適宜併用するのが好ましい。
【0182】
好適な着色コーティング剤(下塗材料)は、例えば、欧州特許出願公開第0692007(A)号およびその第3欄、第50行以下に引用されている文献に記載されている。
【0183】
本発明のコーティング剤を、例えば、吹付、ナイフ塗布、延展、流し込み、浸漬、含浸、散布または圧延等の任意の慣例の塗布方法によって塗布することができる。塗装される基板を静止させ、塗布機器または装置を移動させることができる。あるいは、塗装される基板、特にコイルを移動させ、塗布装置を基板に対して静止させるか、または適切な方向に移動させることができる。例えば圧縮空気吹付、無気吹付、高速回転または静電吹付塗布(ESTA)等の吹付塗布法を例えば熱空気吹付等の高温吹付塗布と適宜併用するのが好ましい。
【0184】
一定の休止時間後に、塗布された本発明のコーティング剤の硬化が行われ得る。この休止時間は、例えば、コーティング膜の均一化および脱気、または溶媒等の揮発性構成成分の蒸発に貢献する。休止時間を短縮し、かつ/または例えば尚早の完全架橋等のコーティング膜の損傷または変化が伴わなければ、高温の適用および/または湿度の低減を通じて支援することができる。
【0185】
放射線硬化性膜形成材料の場合には、硬化は、放射線、特にUV放射線を利用して、当業者に公知の方法で行われる。100〜6000、好ましくは200〜3000、より好ましくは300〜2500、特に好ましくは500〜2000mJcm-2の放射線量を使用するのが好適である。照射を酸素欠乏雰囲気下で実施することができる。「酸素欠乏」は、雰囲気の酸素含有量が空気の酸素含有量(20.95容量%)より低いことを意味する。基本的に、雰囲気は無酸素であってもよい、すなわち不活性ガスを含んでいてよい。しかし、酸素の抑制効果が存在しないため、放射線硬化が急速に加速され、恐らくは不均質性および応力を発生させ得る。したがって、雰囲気の酸素含有量を0容量%まで減少させないことが有利である。
【0186】
コーティング剤の熱硬化には方法の観点で何ら特色がなく、通風加熱炉での加熱またはIRランプを使用する照射等の典型的な公知の方法に従って行われる。この熱硬化は段階的に実施されてもよい。別の好適な硬化方法は、近赤外(NIR)線で硬化する方法である。熱硬化は、有利には、50〜200℃、より好ましくは60〜190℃、特に80〜180℃の温度で1分から5時間まで、より好ましくは2分〜2時間まで、特に3分〜90分までの時間にわたって行われる。
【0187】
本発明のコーティング剤は、いずれも高度な耐引掻性を有し、特に化学物質および気候に対する安定性を有する新たな硬化塗料、特に表面塗料、特に透明被覆、成形物、特に光学成形物、および自己支持膜を与える。特に、本発明の塗料および表面塗料、特に透明被覆を、40μmを超える膜厚であっても応力亀裂を発生させることなく製造することができる。
【0188】
したがって、本発明の硬化塗料、好ましくは色付与および/または効果付与性の多層塗装系の対応する透明被覆は、非常に良好な微小押込み硬さについて顕著である。これらの硬化塗料は、好ましくは、少なくとも90N/mm2、特に少なくとも100N/mm2、特に好ましくは少なくとも110N/mm2の微小押込み硬さを有する。この微小押込み硬さは、40μmの乾燥膜厚を有し、微小押込み硬さの測定前に140℃で22分間乾燥され、25℃で5日間保管された塗料に対して測定される。微小押込み硬さは、最大押込み力が25.6mNのFisherのFischerscope測定装置を利用してDIN EN ISO14577に従って測定される。
【0189】
本発明の硬化塗料は、特に、乾燥耐引掻性の向上について顕著である。乾燥耐引掻性は、クロックメータ試験(9μm紙グレード)を使用して測定された。これは、EN ISO105−X12のラインに沿って処理し、10回の二重擦り後の20°における光沢の低下を評価することによって行われた。本発明のコーティング剤は、塗装された自動車車体の露出部分の引掻きを防止するのにも好適である。
【0190】
塗料の硬度および/または耐引掻性を向上させる方法
本発明は、最後に、塗料、特に多層塗装系の硬度および/または耐引掻性を向上させる方法であって、改善すべき被覆を製造するのに使用されるコーティング剤に対して、シラン官能性を有する付加物(A)と、シラン基を架橋するための触媒(C)との混合物を添加することを含む方法において、付加物(A)は、
(a)化合物(O)の相補官能基G’’と反応する少なくとも1つの官能基G’を有する少なくとも1つのシラン(S1)と、
(b)少なくとも1つの相補官能基G’’および少なくとも1つの表面活性基を有する1つの化合物(O)との付加反応によって製造される方法をさらに提供する。
【0191】
本発明は、効果付与性の多層塗装系の硬度および耐引掻性を向上させる方法であって、
I.着色コーティング剤を基板に塗布すること、
II.I)で塗布したコーティング剤から膜を形成すること、
III.透明コーティング剤を、I)から形成された膜の少なくとも一部に塗布すること、および
IV.着色コーティング剤および透明コーティング剤を個別または一緒に焼成して、基板上に硬化膜を生成することを含む方法において、
透明コーティング剤は、付加物(A)と異なり、少なくとの1つの反応性官能委G’’を含む少なくとも1つの膜形成材料(D)と、シラン基を架橋するための少なくとも1つの触媒(C)と、1つ以上の非プロトン性溶媒(L)と、シラン官能性を有する上記付加物(A)とを含み、付加物(A)の少なくとも一部は、1つ以上の表面活性基を含む方法をさらに提供する。
【0192】
化学表面特性、特に表面における付加物(A)の蓄積を、蓄積を検出するための情報深さが、出口角度の変化を介して変化する光電子分光法(XPS)、またはスパッタ深さプロファイル分析を介して、かつ透過型電子顕微鏡法とEDX(エネルギー分散X線分光法)を併用して測定することができる。
【0193】
XPS測定を、例えば、型式PHI5600 LSのPhysical Electronicsの微小スポット分光計で実施することができる。X線は、常に、Mg管(1253.6keV)を使用して生成される。23.5eVのパスエネルギーを用いた光電子の検出では、Siに対しては2pレベル、Oに対しては1sレベル、Cに対しても1sレベルの結合レベルを用いて原子濃度を測定する。光電子の検出角度、すなわちサンプル表面と、電子分光計の前の電子レンズの軸との間の角度を変化させることによって、測定信号が生成される深さ(情報深さ)を変化させることができる。情報深さは、5°では約1.2nmであり、45°では約10nmである。測定部分は、45°の検出角度において800μmの直径を有し、5°において、対応する楕円状拡大を経た。表面に平行し、表面から約10μm下の薄切片をミクロトームで製造すると、材料における同等の深さでの基準値を得ることができる。
【0194】
薄切片は、対応する完全系の鋼パネルから出発して製造される。Leica Mikrosysteme、Bensheimから入手可能なRM2155型の市販の電動式回転ミクロトームを使用して、ミクロトーム切片を製造することができる。薄片に切断する前に、最初に所望の厚さが設定される。続いて、それぞれの金属パネルが固定される。実際の動作工程において、回転ミクロトームは、それぞれの金属パネルに対して操作される。
【0195】
例えば、Hysitron Inc.のTriboIndenter(登録商標)ナノインデンテーション装置を使用して、ナノインデンテーションによる局所および深さ分解で物理機械特性を測定することもできる。この試験の実験は、以下のように行われる。使用されるインプレッション体は、極端に尖った先端(半径100nm未満)を有するベルコビッチ幾何構造(開放角度142.3°)の三辺ダイヤモンドピラミッドである。次いで、このインプレッション体を、力を最大の5mNまで直線的に増大させ、押込み深さを1μm〜1.5μmとして、塗料の表面に10秒間押し込み、最大の力の下でさらに30秒間そこに保持し、次の10秒間にわたって、直線的に力を減じながら表面から離す。得られた力対押込み深さのデータ集合から、公知のOliver and Pharrのアルゴリズム(W.C. Oliver, G.M. Pharr, Journal of Materials Research.7(1992),1565,G.M.Pharr,Materials Science and Engineering A 253(1998),151参照)を用いて、局部的分解による分析材料の機械的データを求める。
【0196】
実施例
1.1.付加物(AV1)の製造
攪拌機、還流凝縮器、油加熱器および窒素導入管を備えた反応器に、456.38質量部の市販のヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌル酸エステル(Bayer AGのDesmodur N3600)を充填した。このイソシアヌル酸エステルの初期溶液に対して、815.62質量部のN,N−ビス(3−トリメトキシシリルプロパン−1−イル)アミン(DegussaのDynasylan(登録商標))を撹拌しながら徐々に添加した。その後、55℃でさらに2時間撹拌した。その後、遊離イソシアネート基は、IR分光分析によって検出されなくなった。得られた化合物(AV1)は、79%の固形分を有していた。
【0197】
1.2.表面改質付加物(A1)の製造
攪拌機、還流凝縮器、油加熱器および窒素導入管を備えた反応器に、100質量部の市販のヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌル酸エステル(Bayer AGのDesmodur N3600)を充填した。このイソシアヌル酸エステルの初期溶液に対して、15質量部のカルビノール官能シロキサン(GE−Bayer SiliconesのBaysilone(登録商標)OF502 6%)を3.75質量部の市販の芳香族溶媒Solventnaphta(登録商標)に溶解させた溶液を撹拌しながら徐々に添加した。添加後、該反応混合物を55℃に加熱し、55℃でさらに2時間撹拌した。次に、該混合物に対して172.5質量部のN,N−ビス(3−トリメトキシシリルプロパン−1−イル)アミン(DegussaのDynasylan(登録商標)1124)を徐々に撹拌しながら添加した。55℃でさらに2時間撹拌した。その後、遊離イソシアネート基は、IR分光分析によって検出されなくなった。得られた化合物(A1)は、80.8%の固形分を有していた。採用した反応物および付加物A1の表面張力を輪環法によって測定し、以下の表にまとめた。
【0198】
【表1】

【0199】
1.3.アミンブロックリン酸エステルを主成分とした触媒(C1)の製造
滴下漏斗および還流凝縮器を備えた反応器に43.2質量部のリン酸フェニルおよび39.2質量部の酢酸メトキシプロピルを充填し、この初期充填物を均質化した。続いて、冷却および撹拌しながら、温度が60℃を超えない速度で17.6質量部のトリエチルアミンを一滴ずつ添加した。トリエチルアミンの添加後に、該反応混合物を室温でさらに2時間撹拌した。得られた反応生成物は、50.0%の固形分を有していた。
【0200】
1.4.ヒドロキシル含有ポリアクリレート(PAC1)の製造
窒素で洗浄され、凝縮器が取りつけられた反応器に、30.4質量部のSolventnaphta(登録商標)を充填し、この初期充填物を撹拌しながら140℃に加熱した。これと並行して、2つの個別の供給流を製造した。供給流1は、13.9質量部のスチレン、26.7質量部のアクリル酸ブチル、15.0質量部のアクリル酸ヒドロキシエチルおよび1.4質量部のアクリル酸で構成されていた。供給流2は、5.9質量部のSolventnaphta(登録商標)および1.30質量部の過酸化物DTBP(=ジ−tert―ブチル過酸化物)で構成されていた。温度が140℃に達すると、供給流2を285分間にわたって徐々に、均一に計り入れた。供給流2の開始から15分後に、供給流1を240分間にわたって反応器に徐々に、均一に計り入れた。供給流2の計量の終了後に、反応混合物を後重合に向けて、140℃でさらに120分間撹拌した。得られた製造物の固形分は60%であり、酸価は19mg KOH/gであり、OH価は128mg KOH/g(それぞれ固体に対して)であり、粘度は23℃で9.5 dPa・sであることが判明した。
【0201】
1.5.アクリレート系流動助剤の製造
25.67質量部のスチレン、22.30質量部のアクリル酸n−ブチル、13.87質量部のアクリル酸2−ヒドロキシエチル、1.41質量部のエタクリル酸および0.870質量部のメタクリル酸ラウリル(MA−13、Degussaから入手可能)から32.02質量部のSolventnaphta(登録商標)でメタクリレートコポリマーを製造する。
【0202】
3.42質量部の酢酸ブチル中84.7質量部の得られたメタクリレートコポリマー、5.88質量部の酢酸ブチル、2.24質量部のベンジルアミンおよび1.76質量部のヘキサメチレンジイソシアネートを使用して、59%の固形分を有する尿素改質アクリレート系流動助剤を製造する。
【0203】
2.一成分(1K)透明被覆材料1から6の製造
1K透明被覆材料を製造するために、第1表に記載されている原料を示された量で順次混合し、均質化した。
【0204】
第1表 比較例V1、V2、V3およびV4および本発明の実施例1および2の1K透明被覆材料の組成
【表2】

【0205】
第1表の注
1):Luipal018 BX=BASF AGの市販の部分ブタノール−エーテル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、2:1n−ブタノール/キシレン中64〜68%
2):Desmodur PL 350=Bayerの市販の脂肪族ブロックイソシアネート、11/14 1−メトキシプロプ−2−イルアセテート/Solventnaphta(登録商標)中75%
3):11:14の割合の1−メトキシプロプ−2−イルアセテートおよびSolventnaphta(登録商標)からなる溶媒混合物
4):Byk(登録商標)310=Byk−Chemie GmbH、Weselの、キシレン中ポリエステル改質ポリジメチルシロキサンの25%濃度強の溶液を主成分とした市販の流れ調整添加剤
5):Baysilon OL 17=Borchers GmbHの市販の流れ製造添加剤
6):Tinuvin(登録商標)5941−R=Ciba Specialty Chemicals Inc.の異なる光安定剤の市販の混合物
7):Tinuvin(登録商標)292=Ciba Specialty Chemicals Incの立体阻害アミン(HALS)を主成分とした市販の光安定剤
8):Solvesso 150=市販の溶媒混合物
9):Nacure 4167=リン酸のアミンブロック部分エステルを主成分としたKing Industriesの市販の触媒
10):65%の固形分および3mg KOH/g(固体に基づく)酸価を有し、23℃の粘度が3dPa・sであるアクリレート系流れ調整剤
【0206】
3.塗料の製造
第1表に示される個々の1K透明被覆材料を、それぞれ典型的な公知の陰極析出および熱硬化電着塗料、典型的な公知の熱硬化仕上げ用塗料、および80℃で10分間初期乾燥されたBASF Coatings AGの市販の従来の黒色下塗材料の膜で塗装された金属試験パネルに塗布した。下塗膜および透明被覆膜を共に140℃で22分間硬化させた。得られた下塗は7.5μmの膜厚を有し、透明被覆は40μmの膜厚を有していた。
【0207】
4.得られた塗料の特性の調査
表面はすべて高度な光沢性および優れた外観を有していた。
【0208】
得られた表面の乾燥耐引掻性をクロックメータ試験(9μm紙グレード)によって測定した。これを、EN ISO 105−X12のラインに沿って処理し、10回の二重擦りの後で20℃にて光沢度の低下を評価した。また、Erichsen GmbH & Co.KG、Hemer−Sundwigの299/300モデルを使用して、ケーニッヒ振り子減衰を調べた。報告されている数字は、スイング数である。最大押込み力を25.6mNとして、Helmut Fischer GmbH & Co.のFischerscope測定装置を使用して、DIN 55676に従って微小押込み硬さを測定した。それらの結果を第2表に示す。
【0209】
第2表:クロックメータ試験、微小押込み硬さおよびケーニッヒ振り子減衰(スイング数)
【表3】

【0210】
それらの結果は、触媒(C)と共に表面改質付加物(A1)を添加した結果として特に乾燥耐引掻性が有意に向上すること(実施例1)を示している。非表面改質付加物(AV1)を使用した場合(実施例V2)は、対照的に、特に乾燥耐引掻性の向上がそれより有意に劣る。実施例V3は、例えば市販の流れ調整剤等の他の表面活性物質も同様に特性の向上をもたらすが、表面改質付加物(A1)を添加した場合よりも有意に劣ることを示している。付加物(A)が表面活性構造(O)を有する場合にのみ、高密度の高耐引掻性Si−O−Siネットワークを有する傾斜構造が表面に形成し、このメットワークが表面に優れた特性をもたらすことが可能になる。この種の傾斜構造を、例えば、X線光電子分光法によって、かつ透過型電子顕微鏡とEDX(エネルギー分散X線分光法)を併用して検出することができる。
【0211】
例えば、Hysitron Inc.のTriboIndenter(登録商標)ナノインデンテーション装置を使用して、ナノインデンテーションによる局所および深さ分解で物理機械特性を測定することもできる。この試験の実験は、以下のように行われる。使用されるインプレッション体は、極端に尖った先端(半径100nm未満)を有するベルコビッチ幾何構造(開放角度142.3°)の三辺ダイヤモンドピラミッドである。次いで、このインプレッション体を、力を最大の5mNまで直線的に増大させ、押込み深さを1μm〜1.5μmとして、塗料の表面に10秒間押し込み、最大の力の下でさらに30秒間そこに保持し、次の10秒間にわたって、直線的に力を減じながら表面から離す。得られた力対押込み深さのデータ集合から、公知のOliver and Pharrのアルゴリズム(W.C. Oliver, G.M. Pharr, Journal of Materials Research.7(1992),1565,G.M.Pharr,Materials Science and Engineering A 253(1998),151参照)を用いて、局部的分解による分析材料の機械的データを求める。
【0212】
触媒(C)の影響を実証するために、実施例1(=比較例V5)および比較例V2(=比較例6)の透明被覆材料を、触媒(C1)を含めずに再現し、実施例1およびV2と同様にして、塗料V5およびV6を製造し、それらの微小押込み硬さおよびクロックメータ試験による乾燥耐引掻性を測定した。それらの結果を第3表に示す。それらは、触媒(C)を含まない塗料の微小押込み硬さおよび耐引掻性が、触媒を含む対応する実施例の場合よりはるかに低いことを示している。
【0213】
第3表:比較例V5およびV6の結果
【表4】

【0214】
5.1.表面改質付加物(A2)の製造
攪拌機、還流凝縮器、油加熱器および窒素導入管を備えた反応器に、100質量部の市販のヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌル酸エステル(Bayer AGのDesmodur(登録商標) N3600)を充填した。このイソシアヌル酸エステルの初期溶液に対して、2.5質量部のカルビノール官能シロキサン(GE−Bayer SiliconesのBaysilone(登録商標)OF502 6%)を0.625質量部の市販の芳香族溶媒Solventnaphta(登録商標)に溶解させた溶液を撹拌しながら徐々に添加した。添加後、該反応混合物を55℃に加熱し、55℃でさらに2時間撹拌した。次に、該混合物に対して184質量部のN,N−ビス(3−トリメトキシシリルプロパン−1−イル)アミン(DegussaのDynasylan(登録商標)1124)を徐々に撹拌しながら添加した。55℃でさらに2時間撹拌した。その後、遊離イソシアネート基は、IR分光分析によって検出されなくなった。得られた化合物(A2)は、89%の固形分を有していた。得られた化合物(A2)の表面張力は、輪環法によって27.0mN/mであることが判明した。
【0215】
5.2.表面改質付加物(A3)の製造
攪拌機、還流凝縮器、油加熱器および窒素導入管を備えた反応器に、100質量部の市販のヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌル酸エステル(Bayer AGのDesmodur(登録商標) N3600)を充填した。このイソシアヌル酸エステルの初期溶液に対して、5質量部のカルビノール官能シロキサン(GE−Bayer SiliconesのBaysilone(登録商標)OF502 6%)を1.25質量部の市販の芳香族溶媒Solventnaphta(登録商標)に溶解させた溶液を撹拌しながら徐々に添加した。添加後、該反応混合物を55℃に加熱し、55℃でさらに2時間撹拌した。次に、該混合物に対して181質量部のN,N−ビス(3−トリメトキシシリルプロパン−1−イル)アミン(DegussaのDynasylan(登録商標)1124)を徐々に撹拌しながら添加した。55℃でさらに2時間撹拌した。その後、遊離イソシアネート基は、IR分光分析によって検出されなくなった。得られた化合物(A3)は、90%の固形分を有していた。得られた化合物(A3)の表面張力は、輪環法によって26.5mN/mであることが判明した。
【0216】
5.3.表面改質付加物(A4)の製造
攪拌機、還流凝縮器、油加熱器および窒素導入管を備えた反応器に、100質量部の市販のヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌル酸エステル(Bayer AGのDesmodur(登録商標) N3600)を充填した。このイソシアヌル酸エステルの初期溶液に対して、10質量部のカルビノール官能シロキサン(GE−Bayer SiliconesのBaysilone(登録商標)OF502 6%)を2.5質量部の市販の芳香族溶媒Solventnaphta(登録商標)に溶解させた溶液を撹拌しながら徐々に添加した。添加後、該反応混合物を55℃に加熱し、55℃でさらに2時間撹拌した。次に、該混合物に対して175質量部のN,N−ビス(3−トリメトキシシリルプロパン−1−イル)アミン(DegussaのDynasylan(登録商標)1124)を徐々に撹拌しながら添加した。55℃でさらに2時間撹拌した。その後、遊離イソシアネート基は、IR分光分析によって検出されなくなった。得られた化合物(A4)は、91%の固形分を有していた。得られた化合物(A4)の表面張力は、輪環法によって26.5mN/mであることが判明した。
【0217】
5.4.ヒドロキシル含有ポリアクリレート(PAC1)の製造
窒素で洗浄され、凝縮器が取りつけられた反応器に、17.5質量部の酢酸ペンチルを充填し、この初期充填物を撹拌しながら140℃に加熱した。これと並行して、2つの個別の供給流を製造した。供給流1は、28.58質量部のメタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、11.93質量部のメタクリル酸シクロヘキシル、14.44質量部のメタクリル酸エチルヘキシル、6.88質量部のアクリル酸エチルヘキシルおよび0.15質量部のアクリル酸で構成されていた。供給流2は、2.945質量部のSolventnaphta(登録商標)および8.06質量部の過酸化物TBPEH(=tert―ブチルヒドロ過酸化物)で構成されていた。温度が140℃に達すると、供給流2を285分間にわたって徐々に、均一に計り入れた。供給流2の開始から15分後に、供給流1を240分間にわたって反応器に徐々に、均一に計り入れた。供給流2の計量の終了後に、反応混合物を後重合に向けて、140℃でさらに120分間撹拌した。得られた製造物の固形分は65%であり、酸価は5〜7mg KOH/gであり、OH価は180mg KOH/g(それぞれ固体に基づく)であり、粘度は23℃で19.5 dPa・sであることが判明した。
【0218】
5.5.アミンブロックリン酸エステルを主成分とした触媒(C2)の製造
滴下漏斗および還流凝縮器を備えた反応器に32.4質量部のリン酸エチルヘキシルおよび50質量部の酢酸メトキシプロピルを充填し、この初期充填物を均質化した。続いて、冷却および撹拌しながら、温度が60℃を超えない速度で17.6質量部のトリエチルアミンを一滴ずつ添加した。トリエチルアミンの添加後に、該反応混合物を室温でさらに2時間撹拌した。得られた反応生成物は、50.0%の固形分を有していた。
【0219】
6.二成分(2K)透明被覆材料の製造
基礎塗料材料を製造するために、第4表に記載されている原料を示された量で順次混合し、均質化した。
【0220】
第4表:実施例3〜5および比較例V7の二成分透明被覆の組成
【表5】

【0221】
第4表の注:
Tinuvin(登録商標)5941−R=Ciba Specialty Chemicals Inc.の異なる光安定剤の市販の混合物
Tinuvin(登録商標)292=Ciba Specialty Chemicals Incの立体阻害アミン(HALS)を主成分とした市販の光安定剤
Byk(登録商標)320=Byk−Chemie GmbH、Weselのポリエーテル改質ポリメチルアルキルシロキサンの52%濃度強の溶液を主成分とした市販の流れ調整添加剤
Byk(登録商標)306=Byk−Chemie GmbH、Weselの、7/2キシレン/モノフェニルグリコール中ポリエーテル改質ポリジメチルシロキサンの12.5%濃度溶液を主成分とした市販の流れ調整添加剤
塗布の直前に、33質量部の硬化剤を100質量部の基礎塗料に添加し、得られた混合物を均質化した。使用した硬化剤は、第5表に挙げられている成分を混合し、均質化することによって製造された。
【0222】
第5表:
【表6】

【0223】
第5表の注:
Basonat(登録商標)HI 190=Solventnaphta(登録商標)と酢酸ブチルの混合物中90%のBASF AGの市販のヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌル酸エステル
Desmodur(登録商標)Z 4470=Solventnaphta(登録商標)中70%のBayer Material Science AGの市販のイソホロンジイソシアネートのイソシアヌル酸エステル
【0224】
7.塗料の製造
個々の2K透明被覆材料を、それぞれ典型的な公知の陰極析出および熱硬化電着塗料、典型的な公知の熱硬化仕上げ用塗料、および80℃で10分間初期乾燥されたBASF Coatings AGの市販の従来の黒色下塗材料の膜で塗装された金属試験パネルに塗布した。下塗膜および透明被覆膜を共に140℃で22分間硬化させた。得られた下塗は7.5μmの膜厚を有し、透明被覆は40μmの膜厚を有していた。
【0225】
8.得られた塗料の特性の調査
表面はすべて高度な光沢性および優れた外観を有していた。得られた表面の乾燥耐引掻性をクロックメータ試験(9μm紙グレード)によって測定した。これを、EN ISO 105−X12のラインに沿って処理し、10回の二重擦りの後で20℃にて光沢度の低下を評価した。
【0226】
第6表:クロックメータ試験結果
【表7】

【0227】
それらの結果は、付加物(A)から(A4)を触媒と共に添加することにより、調合物の乾燥耐引掻性を有意に向上させることができることを証明している。それらの実験は、また、表面活性付加物(A)の使用量が多いほど、効果が顕著になることを示している。
【0228】
実施例4、5およびV7の透明被覆膜を、VDA[ドイツ自動車メーカー連盟]試験シート(E)621−430 Apr 97および/またはSAE J1960 JUN89(以降、略してCAM 180試験と称する)に従って、いわゆるWON−CAM180Q/B試験で6000時間にわたってそれらの耐候性について調べた。CAM 180試験では、いずれの調査サンプルも6000時間後も亀裂を生じさせないことが判明した。6000時間後の実施例4および5の光沢度は、測定精度の範囲内で、実施例V7のサンプルの対応する光沢度と同一であった。これは、改質2K透明被覆の耐候性が良好であることを証明している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)シラン官能性を有する少なくとも1つの付加物(A)、
(ii)シラン基を架橋するための少なくとも1つの触媒(C)、
(iii)付加物(A)と異なり、少なくとも1つの反応性官能基G’’’を有する少なくとも1つの膜形成材料(D)、および
(iv)1つ以上の非プロトン性溶媒(L)を含むコーティング剤であって、
付加物(A)が、
(a)化合物(O)の相補官能基G’’と反応する少なくとも1つの官能基G’を有する少なくとも1つのシラン(S1)と、
(b)少なくとも1つの相補官能基G’’および少なくとも1つの表面活性基を有する少なくとも1つの化合物(O)との付加反応によって製造可能であることを特徴とする、コーティング剤。
【請求項2】
付加物(A)が、表面活性を有することを特徴とする、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項3】
化合物(O)が、シラン(S1)より小さい表面張力を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のコーティング剤。
【請求項4】
シラン(S1)が、少なくとも1つの加水分解性基をさらに有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載のコーティング剤。
【請求項5】
シラン(S1)の官能基G’および化合物(O)の官能基G’’が、ヒドロキシル、エポキシ、イソシアネート、カルバメート、カルボキシル、無水物、アミンおよび/またはチオール基および/またはエチレン性不飽和二重結合からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載のコーティング剤。
【請求項6】
表面活性基が、炭化水素基およびそれらの誘導体、特にフッ化炭化水素基、脂肪酸基および脂肪酸誘導体の基からなる群、ならびに非置換または置換シロキサン基、特にシロキサン基からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載のコーティング剤。
【請求項7】
シラン(S1)が、式(I)
Sn−Si−R"x4-(n+x) (I)
[式中、
Xは、同一または異なる加水分解性基であり、
Sは、少なくとも1つの官能基G’を有する有機基、特に、1〜20個の炭素原子を有し、少なくとも1つの官能基G’を有する直鎖状および/または分枝状アルキレンまたはシクロアルキレン基、特に、1〜4個の炭素原子を有し、少なくとも1つの官能基G’を有するアルキレン基であり、
R’’は、炭素鎖を隣接していない酸素、硫黄、またはRaがアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはアラルキルであるNRa基で中断することが可能であるアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、好ましくは、R"は、特に1〜6個のC原子を有するアルキル基であり、
nは、1〜3、好ましくは1〜2、より好ましくは1であり、
xは、0〜2、好ましくは0〜1、より好ましくは0であり、
1≦n+x≦3、好ましくは1≦n+x≦2、より好ましくはn+xは1である]を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載のコーティング剤。
【請求項8】
シラン(S1)が、式(II)
Sn−Si−R"x(OR)4-(n+x) (II)
[式中、
nは、1〜3、好ましくは1〜2、より好ましくは1であり、
xは、0〜2、好ましくは0〜1、より好ましくは0であり、
1≦n+x≦3、好ましくは1≦n+x≦2、より好ましくはn+xは1であり、
Rは、水素、炭素鎖を隣接していない酸素、硫黄、またはRaがアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはアラルキルであるNRa基で中断することが可能であるアルキルまたはシクロアルキルであり、好ましくは、Rは、特に1〜6個のC原子を有するアルキル基であり、R’’およびRSは、式(I)について定義されている通りである]を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載のコーティング剤。
【請求項9】
化合物(O)が、式(III)
【化1】

[式中、
1〜R6は、同一または異なる基であり、
1は、炭素鎖が隣接していない酸素、硫黄、NRa基で中断されていてもよいアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキル基、あるいはフッ素置換アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキル基であり、珪素原子とフッ素置換有機基の間にエチレン基を有する構造が好ましく、
2は、ヒドロキシル、炭素鎖が隣接していない酸素、硫黄またはNRa基で中断されていてもよいアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキル基であり、
3およびR6は、水素、炭素鎖が隣接していない酸素、硫黄またはNRa基で中断されていてもよいアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキル基、あるいはフッ素置換アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキル基であり、珪素原子とフッ素置換有機基の間にエチレン基を有する構造が好ましく、
4およびR5は、水素、ヒドロキシル、炭素鎖が隣接していない酸素、硫黄またはNRa基で中断されていてもよいアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキル基であり、
基R2、R4およびR5の少なくとも1つは、シラン(S1)の相補官能基G’に対して反応性を有する官能基G’’をさらに含み、
1は、1〜80、好ましくは3〜20であり、
2は、0〜80、好ましくは0〜10である]のシロキサンであることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載のコーティング剤。
【請求項10】
化合物(O)が、式(V)
【化2】

[式中、
1およびR4は、以上に定義されている通りであり、メチル、エチルおよびフェニル基、ならびにフッ素および/または官能基G’’で部分置換されたアルキル基が好ましく、R1は、より好ましくはメチル基であり、かつ/または官能基G’’は、好ましくはヒドロキシル基であり、
mは、1〜80、好ましくは3〜20、より好ましくは5〜12である]のシロキサンであることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載のコーティング剤。
【請求項11】
付加物(A)が、アルコキシシラン基と異なる平均50mol%未満の遊離反応性基を含む、請求項1から10までのいずれか一項に記載のコーティング剤。
【請求項12】
付加物(A)が、
式(VII)
H−N−(L−SiR’’x(OR’)3−x)n(L’−SiR’’y(OR’)3−y)m (VII)
[式中、
R’は、水素、炭素鎖を隣接していない酸素、硫黄、またはRaがアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはアラルキルであるNRa基で中断することが可能であるアルキルまたはシクロアルキルであり、
L、L’は、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状および/または分枝状アルキレンまたはシクロアルキレン基であり、
R’’は、炭素鎖を隣接していない酸素、硫黄またはNRa基で中断することが可能であるアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、
nは0〜2であり、mは0〜2であり、m+nは2であり、
x、yは、0〜2である]の少なくとも1つのアミノシランと、
少なくとも1つのジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネート(PI)、および
少なくとも1つの表面活性化合物(O)とを反応させることによって製造されたことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか一項に記載のコーティング剤。
【請求項13】
ポリイソシアネート(PI)が、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、前記ポリイソシアネートのビウレット二量体および/または前記ポリイソシアネートのイソシアヌル酸エステル三量体からなる群から選択され、かつ/または式(VII)のアミノシランは、ビス(2−エチルトリメトキシシリル)アミン、ビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミン、ビス(4−ブチルトリメトキシシリル)アミン、ビス(2−エチルトリエトキシシリル)アミン、ビス(3−プロピルトリエトキシシリル)アミンおよび/またはビス(4−ブチルトリエトキシシリル)アミンからなる群から選択され、特に、アミノシランは、ビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミンであることを特徴とする、請求項12に記載のコーティング剤。
【請求項14】
化合物(O)が、それぞれ溶媒を含まない付加物(A)の含量に対して、0.05質量%〜50質量%の量、好ましくは0.1質量%〜10質量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか一項に記載のコーティング剤。
【請求項15】
それぞれコーティング剤の不揮発分に対して、0.1質量%〜35質量%、特に0.5質量%〜15質量%の量の付加物(A)、および/または0.1質量%〜15質量%、特に0.5質量%〜5質量%の量の触媒(C)、および/または50質量%〜99.8質量%、特に80質量%〜99.4質量%の量の膜形成材料(D)を含むことを特徴とする、請求項1から14までのいずれか一項に記載のコーティング剤。
【請求項16】
触媒(C)が、リンを含有することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか一項に記載のコーティング剤。
【請求項17】
触媒(C)が、置換ホスホン酸ジエステルおよびジホスホン酸ジエステルからなる群、好ましくはアクリルホスホン酸ジエステル、環式ホスホン酸ジエステル、アクリルジホスホン酸ジエステルおよび環式ジホスホン酸ジエステルからなる群、ならびに置換リン酸モノエステルおよびリン酸ジエステルからなる群、好ましくは非環式リン酸ジエステルおよび環式リン酸ジエステルからなる群、または対応するアミンブロックエステルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項16に記載のコーティング剤。
【請求項18】
膜形成材料の官能基G’’’が、放射線架橋性基からなる群および/または熱架橋性基からなる群、特にヒドロキシル、カルバメート、エポキシ、イソシアネートおよびカルボキシル基からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか一項に記載のコーティング剤。
【請求項19】
膜形成材料(D)として、1つ以上の結合剤(BM)と1つ以上の架橋剤(M)との混合物を含み、架橋剤が、特に、アミノ樹脂、非ブロックジおよび/またはポリイソシアネート、ブロックジおよび/またはポリイソシアネート、ポリエポキシド、ポリカルボン酸、ポリ酸無水物およびポリオールからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から18までのいずれか一項に記載のコーティング剤。
【請求項20】
少なくとも1つの顔料着色被覆、およびその上に位置する透明被覆を含み、透明被覆が、請求項1から19までのいずれか一項に記載のコーティング剤から製造されたことを特徴とする、効果付与および/または色付与性の多層塗装系。
【請求項21】
硬化状態の透明被覆が、少なくとも90N/mm2、特に少なくとも100N/mm2、極めて好ましくは少なくとも110N/mm2の微小押込み硬さを有することを特徴とする、請求項20に記載の多層塗装系。
【請求項22】
請求項20または21に記載の多層塗装系を製造するための方法であって、未塗装または塗装基板を少なくとも1つの着色コーティング剤で塗装し、得られた顔料着色被覆の少なくとも一部を少なくとも1つの透明コーティング剤で塗装し、硬化を行う方法。
【請求項23】
自動車量産塗装および/または商用車両の塗装および/または補修塗装、内部または外部車体部品の塗装、造船および航空機建造のための部品の塗装、あるいは家庭用器具および電気器具のための部品、あるいはプラスチック成形品またはフィルムの塗装に採用されることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
被覆の硬さおよび/または耐引掻性を向上させる方法であって、向上すべき被覆を製造するのに使用されるコーティング剤に対して、シラン官能性を有する付加物(A)と、シラン基を架橋するための触媒(C)との混合物を添加し、付加物(A)が、
(a)化合物(O)の相補官能基G’’と反応する少なくとも1つの官能基G’を有する少なくとも1つのシラン(S1)と、
(b)少なくとも1つの相補官能基G’’および少なくとも1つの表面活性基を有する1つの化合物(O)との付加反応によって製造されることを特徴とする方法。

【公表番号】特表2010−521542(P2010−521542A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553021(P2009−553021)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000441
【国際公開番号】WO2008/110229
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】