シリアル式記録装置及び記録媒体の給送方法
【課題】最終行の記録終了後、記録手段が停止する前に、後続媒体の給送を開始できるシリアル式記録装置及び記録媒体の給送方法を提供する。
【解決手段】最終行の印字終了時に、給紙条件判定と目標位置判定とを行う。給紙条件判定では、最終行印字時における用紙(先行用紙)の搬送位置が、後続用紙の給紙が可能な位置にある給紙条件が成立するか否かを判定する。目標位置判定では、CRモータ16の駆動により移動するキャリッジの目標停止位置が、ASFモータ23の動力伝達先として給紙装置が選択される切換位置に切換保持装置を切り換えできる位置であるという目標位置条件が成立するかどうかを判定する。給紙条件と目標位置条件が共に成立すると、CRモータ16の停止を待たず、PFモータ27及びASFモータ23を駆動させて給紙動作を開始する。
【解決手段】最終行の印字終了時に、給紙条件判定と目標位置判定とを行う。給紙条件判定では、最終行印字時における用紙(先行用紙)の搬送位置が、後続用紙の給紙が可能な位置にある給紙条件が成立するか否かを判定する。目標位置判定では、CRモータ16の駆動により移動するキャリッジの目標停止位置が、ASFモータ23の動力伝達先として給紙装置が選択される切換位置に切換保持装置を切り換えできる位置であるという目標位置条件が成立するかどうかを判定する。給紙条件と目標位置条件が共に成立すると、CRモータ16の停止を待たず、PFモータ27及びASFモータ23を駆動させて給紙動作を開始する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動給紙装置を備えたシリアル式プリンタ等のシリアル式記録装置において、先行する記録媒体の記録終了後に、後続の記録媒体を給送する制御を行うシリアル式記録装置及び記録媒体の給送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ等の記録装置には、記録を施すターゲットとなる用紙を自動で給紙する自動給紙装置を備えるものがある。自動給紙装置では、先行用紙の印刷が終了すると、その先行用紙が排紙された後、あるいは先行用紙が排紙し終わるより少し前のタイミングで、後続用紙の給紙が開始されるようになっている。
【0003】
ところで、シリアル式記録装置では、キャリッジに設けられた記録ヘッドが用紙に対してインク滴を吐出しながら主走査方向へ一回移動することで一行(一ラスタライン)の記録を行う印字動作と、用紙を副走査方向に所定ピッチ分紙送りする搬送動作とが交互に行われることで、用紙への印刷が進められる(例えば特許文献1、2等)。
【0004】
また、例えば特許文献1、2に記載のシリアル式記録装置では、印刷処理時間短縮を図るため、紙送り動作とキャリッジ動作とを一部重複するタイミングで実施させる重ね合わせ制御が行われる(例えば特許文献1、2等)。この重ね合わせ制御は、まず、1パス分の印字動作が終了すると紙送りモータ(PFモータ)を起動させて紙送りを行う。その後、PFモータの駆動が終了する前に所定のタイミングでキャリッジモータ(CRモータ)を起動させてキャリッジの移動を開始させる。これにより、紙送りの途中からキャリッジが加速され、紙送り終了とほぼ同時にキャリッジの定速域で行われる印字動作を開始することができる。従って、紙送り終了後にCRモータを起動させる構成に比べ、印刷処理時間を短縮できる。
【0005】
また、自動給紙装置と、記録ヘッド用のメンテナンス装置の吸引ポンプとの間で一つの動力源(電動モータ)を共有し、その動力伝達先をキャリッジの移動位置に応じて切り換え可能な動力伝達切換装置を備えたシリアル式記録装置も知られている。(例えば特許文献3)
また、インクジェット式記録装置では、記録ヘッドのノズルの目詰まりを防ぐために、ノズル内の増粘したインクを定期的に吐出してノズル内のインクをリフレッシュするフラッシングが行われる。このフラッシング時のインク滴は、通常、記録ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス装置のキャップ内へ吐出されるようになっている。そして、フラッシングによりキャップ内に溜まった廃インクをそのまま放置すると、キャップの配管等が詰まる虞があるため、キャップ内に吐出された廃インクが一定量を超えると、キャップに連通する吸引ポンプを駆動して、キャップ内に溜まった廃インクを吸引除去する空吸引が行われるようになっている(例えば特許文献3、4等)。
【特許文献1】特開2001−232882号公報
【特許文献2】特開2006−212923号公報
【特許文献3】特開2007−90761号公報(段落0078〜0080等)
【特許文献4】特開2007−90761号公報(段落0078〜0080等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、紙送りとキャリッジ動作とを一部動作タイミングを重ね合わせた制御は行われているものの、シリアル式記録装置においては、ラインプリンタやページプリンタの印刷速度に比べて遅く、特に高速印刷時の印刷速度を速くしたい要求が従来よりある。
【0007】
ところで、先行用紙への印刷終了後、直ちに後続用紙の給紙を行って、給紙を行うタイミングを早く図ることも、印刷速度の高速化において無視できない。
最終行の印刷を終了した後、次に後続用紙の給紙を行うか、空吸引を行うかは、キャリッジの停止位置から判断することができる。すなわち、例えば、特許文献3に記載されたような動力伝達切換装置を備えたプリンタでは、キャリッジの停止位置に応じてモータの動力の切り換え位置が決まる。このため、コントローラは、最終行の印刷終了後、キャリッジの停止位置を確認して、その停止位置に基づいて給紙動作を行うか、空吸引を行うかを判断する必要がある。従って、キャリッジが停止するまで給紙を開始できないという問題があった。もちろん、この種の問題は、動力伝達切換装置を備えていない構成の場合でも、給紙時のキャリッジの停止位置と、空吸引を行うときのキャリッジの停止位置とが異なる場合も、同様の問題が発生する。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、最終行の記録終了後、記録手段が停止する前に、後続媒体の給送を開始できるシリアル式記録装置及び記録媒体の給送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、記録媒体を給送する給送手段と、給送された記録媒体に記録を施す記録手段と、記録を行わせるために前記記録手段を移動させる移動手段と、記録媒体を前記記録手段の移動方向と交差する方向に搬送する搬送手段と、前記記録手段、前記移動手段、前記搬送手段及び前記給送手段を制御する制御手段と、前記記録媒体に対する最終行の記録を行うために移動する前記記録手段の目標停止位置が、後続の記録媒体の給送が可能な給送可能領域にある目標位置条件を満たすか否かを判定する目標位置判定手段とを備え、前記制御手段は、前記目標停止位置が前記給送可能領域にあれば、前記記録手段が最終行の記録を終えた後かつ当該最終行の記録のための移動を停止する前に、前記給送手段による後続媒体の給送動作を開始させることを要旨とする。
【0010】
これによれば、記録手段の目標停止位置が給送可能領域にあれば、記録手段が最終行の記録を終えた後かつ当該最終行の記録のための移動を停止する前に、給送手段による後続媒体の給送動作を開始させる。このため、先行の記録媒体の記録終了後、移動する記録手段の停止を待つことなく、直ちに給送を開始できるので、記録のスループット向上に寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第一実施形態)
以下、本発明を具体化した第一実施形態を図1〜図10に従って説明する。図1は、記録装置の基本構成を示す斜視図である。
【0012】
図1に示すように、シリアル式記録装置としてのインクジェット式プリンタ(以下、単にプリンタ11という)は、有底長四角箱状の本体フレーム12を備える。本体フレーム12の同図における左右側壁間には所定長さを有するガイド軸13が架設されている。ガイド軸13にはキャリッジ14が挿通されてガイド軸13の軸方向に移動可能に設けられている。キャリッジ14の背面側一箇所は、本体フレーム12の内側背面側に主走査方向Xに張設された状態で回転可能に支持された無端状のタイミングベルト15に固定されている。キャリッジ14はタイミングベルト15を介してキャリッジモータ(以下、CRモータ16と称す)の駆動軸と動力伝達可能に連結されている。CRモータ16が駆動されると、タイミングベルト15が回転駆動され、このタイミングベルト15の回転駆動によって、キャリッジ14は主走査方向Xに往復移動する。
【0013】
キャリッジ14の下部には、インクジェット式の記録ヘッド17が設けられており、この記録ヘッド17の下面は、液体としてのインクを噴射する複数列のノズルが開口するノズル形成面17a(図2参照)となっている。本体フレーム12内の記録ヘッド17と対向する位置には、記録ヘッド17のノズル形成面17aと用紙Pとの間隔を規定するプラテン18が設けられている。また、キャリッジ14の上部には、記録ヘッド17にインクを供給するブラックのインクカートリッジ19、および例えばシアン、マゼンタ、イエローの3色のインクが個別に収容されたカラー用のインクカートリッジ20が着脱可能に装填されている。これら各インクカートリッジ19,20より記録ヘッド17に対してインクが供給される。インクカートリッジ19,20からインクが供給される記録ヘッド17は、ノズル形成面17aの各ノズルからインクを噴射(吐出)可能となっている。
【0014】
プリンタ11の背面側には、多数の用紙Pを積重できる給紙トレイ21を有し、給紙トレイ21に積重された多数枚の用紙Pのうち最上位の1枚のみを分離して副走査方向Y下流側に給紙する自動給紙装置(ASF)であるリア給紙装置22が設けられている。リア給紙装置22は給紙モータ(以下、ASFモータ23と称す)を備えている。リア給紙装置22は、給紙ローラ22A(図2参照)を備え、給紙ローラ22AがASFモータ23により回転駆動されることで給紙トレイ21上に積載された用紙群のうち最上位の一枚が給紙される。また、プリンタ11の前側下部には、給紙カセット24を備えたフロント給紙装置25が設けられている。フロント給紙装置25は、給紙カセット24に収容された用紙の最上位面に当接するピックアップローラ(図示せず)が、ASFモータ23の駆動により回転駆動されることにより最上位の用紙が後方側へ搬送され、その後、反転ガイド板(図示せず)に沿って反転され、リア給紙装置22と共通の用紙搬送路へ供給される構成となっている。
【0015】
また、本体フレーム12の図1における右側下部には、紙送りモータ(以下、PFモータ27と称す)が配設されている。PFモータ27の駆動により用紙搬送経路上において記録ヘッド17を前後に挟んだ位置にそれぞれ設けられた紙送りローラ28及び排紙ローラ29(いずれも図2参照)が回転駆動されて、用紙Pが副走査方向Yに搬送される。そして、キャリッジ14を主走査方向Xに往復動させながら記録ヘッド17のノズル形成面17aから用紙Pにインクを吐出する印字動作と、用紙Pを副走査方向Yに所定の搬送量で搬送する紙送り動作とを交互に繰り返すことで、用紙Pに記録(印刷)が施される。
【0016】
また、本体フレーム12内には、ガイド軸13に沿ってリニアエンコーダ30が設けられている。リニアエンコーダ30は、キャリッジ14の移動距離に比例する数のパルスを出力し、プリンタ11ではその出力パルスを検出して把握されるキャリッジ14の移動位置、移動速度及び移動方向に基づいて、キャリッジ14の速度制御及び位置制御が行われる。
【0017】
本実施形態のプリンタ11には、キャリッジ14を上下方向に移動させることで記録ヘッド17とプラテン18との間隔(プラテンギャップ)を調整可能な自動プラテンギャップ調整装置(APG装置31と称す)が装備されている。APG装置31はASFモータ23により駆動される。ASFモータ23は、プリンタ11がホストコンピュータ等から取得した用紙種類の情報から特定される紙厚に応じた適切なプラテンギャップが確保されるように駆動制御され、記録ヘッド17と用紙Pとの間隔(ペーパーギャップ)が所定の値に確保される構成となっている。本実施形態におけるAPG装置31は、ASFモータ23の駆動により図示しないカム機構を介してガイド軸13の高さ位置を調整することで、キャリッジ14の高さ調整を行う。
【0018】
図1においてキャリッジ14の移動経路上の同図における右端部は、キャリッジ14が記録を行わない待機時に配置されるホーム位置(ホームポジション)となっており、このホーム位置に配置されたキャリッジ14の直下に相当する位置には、記録ヘッド17のクリーニング等を行うメンテナンス装置33が配設されている。メンテナンス装置33は、記録ヘッド17のノズル内のインクが増粘等することを防止する蓋体として機能する略四角形状のキャップ34と、ノズル形成面17a(図2参照)を払拭するためのワイパ35と、キャップ34に負圧を付与するように駆動される吸引ポンプ36とを備えている。
【0019】
キャリッジ14がホーム位置に移動して記録ヘッド17がキャップ34の直上に位置した状態で、ASFモータ23が駆動されて、キャリッジ14が例えば最下降位置まで下降することで、記録ヘッド17のノズル形成面17aがキャップ34に密着してノズルが封止されるようになっている。
【0020】
キャップ34は、上記のノズル開口の乾燥を防ぐ目的の蓋体機能(キャッピング機能)の他、記録ヘッド17のノズル形成面17aをキャップしてその封止された空間に吸引ポンプ36からの負圧を与えて記録ヘッド17よりインクを強制的に吸引排出させる液体吸引手段の一部としての機能も備えている。キャップ34は、キャリッジ14がホーム位置に配置された際に記録ヘッド17と干渉しない下降位置と、記録ヘッド17のノズル形成面17aにノズルを囲むように当接するキャッピング位置との間を昇降可能に設けられている。キャップ34の昇降機構は、例えばキャリッジ14がホーム位置に到達する直前にキャリッジ14がレバーを押すことでバネの付勢に抗してキャップを載置するスライダが上昇し、キャリッジ14がホーム位置から退避すると、バネの付勢力によりキャップ34が下降する機械的昇降機構や、モータにより昇降駆動される電動式昇降機構などを採用できる。電動式昇降機構の場合は、例えばPFモータ27の動力を利用できる。
【0021】
吸引ポンプ36は、ASFモータ23により回転駆動される。吸引ポンプ36は例えばチューブポンプからなるが、ギヤポンプ、ベローズ式ポンプ、ダイヤフラム式ポンプ等も採用できる。
【0022】
また、ワイパ35はキャップ34の印刷領域側に隣接して位置し、記録ヘッド17の吸引動作終了後、キャリッジ14がホーム位置から印刷領域側へ移動する過程で、ノズル形成面17aがワイパ35に摺接することにより、ノズル形成面17aをワイピングする。
【0023】
プラテン18のホーム位置と反対側となる端部(図1における左端部)上面には、記録ヘッド17のノズルから印刷とは関係のないインク滴を吐出するフラッシング用の貫通孔38が開口している。本例では、フラッシングは、印刷中における所定時期に端部へ異動して貫通孔38又はキャップ34内へインク滴を吐出することで行われる。プラテン18の下側には、主走査方向Xに長く延びた四角箱状の廃液タンク39が配置され、その内部には多孔質部材よりなるインク吸収材が収容されている。クリーニング時にノズルからキャップ34を介して吸引された廃インクや、フラッシング時に貫通孔38又はキャップ34内へ吐出されたインク滴は、廃液タンク39内に回収されるようになっている。
【0024】
プリンタ11は、キャリッジ14がホーム位置に到達する手前で係合することで操作されるように構成される切換保持装置40を備えている。前述のように、ASFモータ23を共通の動力源とする、リア給紙装置22、フロント給紙装置25、APG装置31、メンテナンス装置33の吸引ポンプ36へのASFモータ23の動力の伝達先の切り換えは、切換保持装置40により行われる。
【0025】
図3は、プリンタの要部平面図である。図3において、キャリッジ14が同図における右端側に移動して記録ヘッド17とキャップ34とが上下方向(同図では紙面垂直方向)に一致した一点鎖線で示す位置が、キャリッジ14のホーム位置HPとなっている。
【0026】
リニアエンコーダ30は、一定ピッチ(例えば1/180インチ(=1/180ラ2.54cm))毎に多数のスリットが形成されたテープ状の符号板30aと、キャリッジ14に設けられた発光素子と受光素子とを有するセンサ30bとを備え、キャリッジ14が移動するときに発光素子から出射されてスリットを透過した光を受光素子が受光することで、センサ30bが検出パルスを出力する構成である。後述する図6に示すコントローラ60は、リニアエンコーダ30から入力した検出パルス(A相とB相の90度位相のずれた2つのパルス)の例えばパルスエッジを計数して、ホーム位置HPを原点とするキャリッジ14の位置を求める。このため、プリンタ11における主走査方向Xの位置は、キャリッジ14の位置を管理するコントローラ60内のCRカウンタ83(図6参照)の計数値により管理可能となっている。なお、本実施形態では、キャリッジ14の移動位置を、ホーム位置HP側を「1桁側」、反ホーム位置側を「80桁側」と称する。
【0027】
図3に示すように、キャリッジ14の移動位置の原点であるホーム位置Oと、印刷対象領域(Xo〜Xend)の左端位置との中間位置には、切換位置としてのDZ位置が設定されている。印刷対象領域(Xo〜Xend)の両側に、キャリッジ14が印刷時の目標速度に到達するまでに必要な加速領域又は減速領域を加えた全領域が、キャリッジ14が印刷中に移動しうる最大範囲となる。DZ位置は、「印刷領域」のうち最もホーム位置側(1桁側)の限界位置に相当する。
【0028】
図3における右下に示しように、記録ヘッド17のノズル形成面17aには複数本(例えば4本)のノズル列17bが用紙搬送方向Y方向に沿って配列されている。各ノズル列17bは、例えばY方向に沿って千鳥配置された例えば180個のノズル群より構成されている。記録ヘッド17の複数本のノズル列17bのうち、最も80桁側に位置するノズル列17bがDZ位置に一致するときのキャリッジ位置が、キャリッジ14がDZ位置に配置されたときである。切換保持装置40は、キャリッジ14がホーム位置へ到達する手前の移動過程で係合して押し込み操作可能なレバー式の動力切換部材55を備え、キャリッジ14がDZ位置とホーム位置HPとの間を1桁側へ移動する途中で切換保持装置40の動力切換部材55を操作することで、切換保持装置40は切り換えられる。キャリッジ14がDZ位置以上(DZ位置を含むこれより80桁側の範囲)の位置にあるとき(つまり印刷領域(給送可能領域)内にあるとき)、切換保持装置40は、ASFモータ23の動力伝達先として、リア給紙装置22及びフロント給紙装置25を選択する第1切換位置に配置される。一方、キャリッジ14がホーム位置にあるときは、切換保持装置40は、ASFモータ23の動力伝達先として、APG装置31及び吸引ポンプ36を選択する第2切換位置に配置される。
【0029】
給紙トレイ21は、ホーム位置HP側の端部に延出形成された固定ガイド21aと、用紙Pの幅に合わせて幅方向(主走査方向X)にスライド可能に設けられた可動ガイド21bとを有している。印刷中における用紙Pの幅方向(X方向)の位置は、二つのガイド21a,21bにより規定され、用紙Pの幅方向におけるホーム位置HP側(1桁側)の紙端は、固定ガイド21aの内側面の位置で規定される。この1桁側の紙端位置は、固定ガイド21aがプリンタ11に固定されたものであることから、用紙Pの用紙サイズにかかわらず常に一定であり、CRカウンタ83の計数値換算値で表現すると、ホーム位置HP(原点O)から所定距離の位置Xoで表される。また、用紙Pの幅(X方向の幅)をCRカウンタ83の計数値換算値で表現した値をPwidthとすると、反ホーム位置側(80桁側)の紙端位置は、値Xend(=Xo+Pwidth)と表される。
【0030】
また、プラテン18は、主走査方向Xに所定の間隔を開けて突設された複数のリブ18aを有し、上面においてリブ18aを除く領域にはインク吸収材42の表面が露出している。用紙Pはリブ18a上を摺動するため、用紙Pの裏面がインク吸収材42に触れて汚れることはない。
【0031】
また、リア給紙装置22は、給紙ローラ22Aを備え、この給紙ローラ22Aは切換保持装置40を介して伝達されるASFモータ23の駆動力に基づき回転駆動され、給紙時には給紙トレイ21にセットされた用紙Pのうち最上位の一枚のみ給紙する。また、用紙Pの給紙経路上における記録ヘッド17より上流側の位置には紙検出センサ43が設けられ、給紙される用紙Pの先端が紙検出センサ43により検知されるように構成されている。
【0032】
また、プリンタ11には、用紙Pを副走査方向Yに搬送する紙送りローラ28は、搬送駆動ローラ28Aと搬送従動ローラ28Bからなる。一方、印刷実行後の用紙Pを排紙する手段である排紙ローラ29は、排紙駆動ローラ29Aと排紙従動ローラ29Bとからなる。搬送駆動ローラ28Aおよび排紙駆動ローラ29Aは、PFモータ27(図1参照)の駆動力により回転し、記録実行後の用紙Pを副走査方向Yに搬送および排紙する。なお、本実施形態では、PFモータ27、搬送駆動ローラ28A、搬送従動ローラ28B、排紙駆動ローラ29Aおよび排紙従動ローラ29B等により、搬送手段が構成される。
【0033】
図2は、給紙装置(ASF)および搬送装置(PF)を側面から見た模式図である。ASFモータ23とPFモータ27とが別個に設けられているので、先行用紙P1の搬送中においても、後続用紙P2を給紙を進めることができ、用紙P1,P2の間隔を狭くして、用紙P1の印刷終了後、直ちに後続用紙P2の印字開始を行うことができる。
【0034】
給紙ローラ22Aと紙送りローラ28との間には、紙検出センサ43が設けられている。 給紙された用紙P1の先端が紙送りローラ28間を通って、ノズル群のうち搬送方向最上流に位置するノズル(最上流ノズルと称す)の位置であるヘッド基準位置Hに一致する位置まで用紙P1を搬送すると、搬送位置を管理するカウンタがリセットされる。図3において、記録ヘッド17の最上流ノズル位置がヘッド基準位置Hである。ヘッド基準位置H(最上流ノズル)〜紙送りローラニップ点間の距離が「La」、紙送りローラニップ点〜紙検出センサ43間の距離が「Lb」、紙検出センサ43〜給紙ローラニップ点(給紙ローラ22Aとリタードローラ22Bとのニップ点)間の距離が「Lc」となっている。
【0035】
よって、用紙の先端からのヘッド基準位置Hに対向する位置までの距離Nxがカウンタに示される。そして、用紙長Psizeから(La+Lb+Lc−Ld)を減算した値(Psize−La−Lb−Lc+Ld)に達すると、ASFモータ23の駆動を一時停止後、カウンタの値がLgap分進んで、値(Psize−La−Lb−Lc+Ld+Lgap)に達すると、ASFモータ23を再駆動し、その後、間隔Lgapを確保した状態で、用紙P1の搬送と用紙P2の給紙とを同時並行に進めるようにしている。
【0036】
本実施形態では、用紙P1の位置を、ヘッド基準位置Hと対向する用紙上の位置で管理しているので、用紙P1の後端から距離(La+Lb+Lc−Ld)だけ搬送方向下流側の位置がヘッド基準位置Hに到達したとき、用紙の後端がページ間制御位置Gに位置することになるページ間制御位置Ngに用紙が達したと判断する。ここで、「Nx」は、用紙P1の先端がヘッド基準位置Hに達した位置からの用紙P1の紙送り量を示す。
【0037】
本実施形態では、用紙P1の先端がヘッド基準位置Hに達したときからの用紙の搬送距離(紙送り量)をPFカウンタ84(図6参照)で計数し、この計数値で用紙P1の位置を管理している。PFカウンタ84の計数値である紙送り量Nxが(Psize−(La+Lb+Lc−Ld))である値Ngに達したことをもって、用紙P1がページ間制御位置Ngに達したと判断する。
【0038】
頭出し位置は、用紙上の印刷開始位置を決めている余白(トップマージン)や縁なし印刷などのレイアウト条件に応じて決まり、カウンタの値が頭出し位置に達すると、印字が開始される。
【0039】
本実施形態では、給紙された用紙が頭出しされるまでの用紙搬送が「給紙動作」、頭出しされた用紙の印刷が終わるまでの用紙搬送が「紙送り動作」、印刷が終わった用紙の後端が紙検出センサ43に検知されなくなるまでの用紙搬送が「排紙動作」として定義されている。なお、印刷が終わった時点で既に用紙後端が紙検出センサ43に検知されなくなる位置まで用紙の搬送が進んでいる場合は、その用紙に対する排紙動作は行われず、後続用紙P2の給紙動作が行われ、この給紙動作に伴い連動して排紙ローラ29が回転することで先行用紙P1の排紙が行われる。
【0040】
用紙P1,P2間に規定の隙間が確保されることで、その後、隙間によって紙検出センサ43がオフしてから、後続用紙P2の先端を検知してオンするので、この後続用紙P2を紙検出センサ43により検知することができる。よって、紙検出センサ43により検知された位置を基準とし、該基準の位置から所定の距離を搬送して行われる後続用紙P2の頭出しが可能になる。
【0041】
図4は、切換保持装置40を主走査方向から見た側面図、図5は切換保持装置40の平面図を示す。
図4に示すように、切換保持装置40は、リア給紙装置22とフロント給紙装置25とに動力を伝達する第1被伝達歯車51と、この第1被伝達歯車51に対して主走査方向と直交する方向に所定距離を置いて配置されるとともにメンテナンス装置33とAPG装置31とに動力を伝達する第2被伝達歯車52とを備える。ASFモータ23によって常時回転駆動される動力伝達歯車53が、第1被伝達歯車51と噛合した状態において、第1被伝達歯車51の正転/逆転を切り換えることによって、図示しない遊星歯車機構により、リア給紙装置22を駆動するか、フロント給紙装置25を駆動するかの選択が可能となっている。同様に、動力伝達歯車53が第2被伝達歯車52と噛合した状態において、第2被伝達歯車52の正転/逆転を切り換えることによって、図示しない遊星歯車機構により、メンテナンス装置33(吸引ポンプ36)を駆動するか、APG装置31を駆動するかの選択が可能となっている。
【0042】
切換保持装置40は、キャリッジ14に押されることで切り換え操作される。キャリッジ14が印刷領域(DZ位置を含む)に位置し、動力切換部材55と非係合状態のときには、動力伝達歯車53は第1被伝達歯車51と噛合する第1噛合位置に配置され、キャリッジ14がDZ位置よりも1桁側に位置し、切換保持装置40と係合するときには、動力伝達歯車53は第2被伝達歯車52と噛合する第2噛合位置に配置される。切換保持装置40は、図4及び図5に示す動力切換部材55と、第1拘束部材56と、本体フレーム12と、コイルばね57(図5に示す)と、更に図4に示すレバー部材58とを備えて構成されている。
【0043】
動力切換部材55は、主走査方向に平行な揺動軸55aを中心に揺動可能に設けられ、その上端部には被拘束部55bが一体的に形成されるとともに、その下端部はレバー部材58と連結されている。
【0044】
第1拘束部材56は主走査方向にスライド可能に設けられるとともに、コイルばね57によって80桁側(図5の左方向)に付勢されている。第1拘束部材56は、被拘束部55bと係合可能な拘束部56aと、キャリッジ14の側面における第1キャリッジ係合部14aと係合可能な第1被係合部56dとが一体的に形成されている。
【0045】
レバー部材58は主走査方向に平行な揺動軸58aを中心に揺動可能に設けられており、その揺動軸58aから所定距離離間した場所に、主走査方向に平行な回転軸を中心に回転する動力伝達歯車53が軸支されている。一方、ASFモータ23によって常時回転駆動される太陽歯車59がその回転軸を揺動軸58aと共通にするよう設けられ、且つ動力伝達歯車53と噛合するよう設けられている。従って動力伝達歯車53は遊星歯車として、太陽歯車59の周囲を遊星運動することにより、第1被伝達歯車51と噛合する第1噛合位置と、第2被伝達歯車52と噛合する第2噛合位置との間を変位するようになっている。
【0046】
そして、動力切換部材55の下端部と連結された図4に示すレバー部材58は、動力切換部材55が揺動軸55aを中心に揺動動作すると、これに応じて揺動動作を行い、これによって動力伝達歯車53が遊星運動を行うこととなる。
【0047】
図4及び図5は、動力切換部材55がキャリッジ14と非係合状態にある様子を示している。この状態では、動力切換部材55の被拘束部55bが、第1拘束部材56の拘束部56aと、第2拘束部としての本体フレーム12とによって挟持された状態にあり、動力切換部材55は、動力伝達歯車53が第1被伝達歯車51と噛合する第1噛合位置に保持された状態に拘束される。従って、この状態(キャリッジ14と切換保持装置40との非係合状態)で、動力伝達歯車53が正転方向に駆動されれば、リア給紙装置22が駆動され、逆転方向に駆動されれば、フロント給紙装置25が駆動される。
【0048】
また、図5に示す状態からキャリッジ14が1桁側(図5における右方向)に移動してくると、第1キャリッジ係合部14aが第1被係合部56dを押すことで、第1拘束部材56がキャリッジ14とともに1桁側に移動を開始する。これにより、第1拘束面56bが被拘束部55bから離間して、第1拘束面56bと本体フレーム12とによる被拘束部55bの拘束状態が一時的に解除される。
【0049】
続いて、キャリッジ14が更に1桁側に移動すると、第3拘束部材14bが被拘束部55bの傾斜面55cを押し退けることで、動力切換部材55が揺動動作を開始し、これにより、動力伝達歯車53と第1被伝達歯車51との噛合状態が解除され、さらにその後、動力伝達歯車53が第2被伝達歯車52と噛合する第2噛合位置に変位する。この状態では、第3拘束部材14bと拘束部56aの第2拘束面56cとによって被拘束部55bが挟持された状態となり、動力切換部材55は揺動不能状態に再び拘束された状態に置かれる。従って、この状態では、動力伝達歯車53が正転方向に駆動されれば、メンテナンス装置33の吸引ポンプ36が駆動され、逆転方向に駆動されれば、APG装置31が駆動される。
【0050】
図6は、プリンタ11の電気的構成を示す概略構成図である。プリンタ11は、コントローラ60、インターフェイス(以下、I/P61と記す)、CRモータ16、ASFモータ23、PFモータ27、リニアエンコーダ30、紙検出センサ43、ロータリエンコーダ62、PFモータ駆動回路63、ASFモータ駆動回路64、CRモータ駆動回路65、及びヘッド駆動回路66等を備える。
【0051】
コントローラ60は、I/F61を介してホスト装置90(例えばパーソナルコンピュータ等)から印刷データを受信する。コントローラ60は、バッファ67、主制御部68、シーケンス制御部69を備える。主制御部68は、ホスト装置90からI/F61を介して取り込んだ印刷データ中のコマンドを解釈し、コマンドの指示に従ってシーケンス制御部69に紙送り要求及び印字要求を含む各種要求を行う。主制御部68は、印刷データのうちコマンド以外のラスタデータ(ビットマップデータ)をシーケンス制御部69(詳しくは印字コントロール部72)に送る。
【0052】
シーケンス制御部69は、主制御部68から受け付けた要求に基づき、給紙動作、印字動作・紙送り動作、排紙動作を行わせるべく、予め決められたシーケンスに従ってPFモータ駆動回路63、ASFモータ駆動回路64、CRモータ駆動回路65及びヘッド駆動回路66に駆動信号を出力する。シーケンス制御部69は、各モータ駆動回路63,64を介してASFモータ23及びPFモータ27を駆動制御するモータコントロール部71、ヘッド駆動回路66を介して記録ヘッド17を駆動制御する印字コントロール部72、メンテナンス系の作動時期を管理するフラッシングカウンタ73及びクリーニングタイマ74等を備える。
【0053】
モータコントロール部71は、CRモータ16やPFモータ27の起動及び走行スケジュール(駆動スケジュール)を設定し、キャリッジ14の駆動途中から用紙Pの搬送を開始したり、用紙Pの搬送途中からキャリッジ14の駆動を開始したりして、印字動作と搬送動作とを印刷に影響しない範囲で一部重ね合わせる重ね合わせ制御などを含むモータ駆動制御を行う。また、本実施形態では、一枚の用紙P(先行用紙P1)の印字動作終了時、すなわち最終行の印字動作(インク滴吐出動作)が終了すれば、キャリッジ14が目標停止位置まで移動して停止するのを待つことなく、キャリッジ14が停止するまでの移動途中で、後続用紙P2の給紙を開始する。
【0054】
印字コントロール部72は、印字スケジュールを設定して、記録ヘッド17を駆動制御する。また、印字コントロール部72は、記録ヘッド17からインク滴を噴射(ファイア)する噴射時期などを決めるために必要な各種演算処理、さらにインク滴の噴射を許可する印字領域(図7,図8におけるハッチング領域)を決める処理を行う。
【0055】
モータコントロール部71は、紙送り実行部76、給紙実行部77、給紙条件判定部78、目標位置判定部79、排紙実行部80、キャリッジ制御部(以下、CR制御部81と称す)、空吸引判定部82、キャリッジカウンタ(以下、CRカウンタ83と称す)、紙送り量カウンタ(以下、PFカウンタ84と称す)、及び吸引実行部85とを備えている。
【0056】
紙送り実行部76は、PFモータ駆動回路63を介してPFモータ27を駆動することにより、用紙Pの紙送りを行う。
給紙実行部77は、ASFモータ駆動回路64を介してASFモータ23を駆動することにより、リア給紙装置22及びフロント給紙装置25を選択的に駆動させる。この給紙は、キャリッジ14がDZ位置以上(80桁側)の位置である印刷領域(給送可能領域)内にあるとき、つまり、切換保持装置40において動力伝達歯車53が第1被伝達歯車51と噛合する第1噛合位置にあるときに行われる。
【0057】
給紙条件判定部78は、現在印刷中の用紙の最終行(最終走査)の印刷を終えた際に、そのときの用紙(先行用紙P1)の搬送位置が、後続用紙P2を給紙することが可能な位置、すなわち、先行用紙P1がページ間制御位置に達している(Nx=Ng)という、「給紙条件」を満たすか否かを判断する。給紙条件を満たせば、先行用紙P1と後続用紙P2との間に必要な間隔Lgapを確保できるので、給紙動作を開始しても差し支えない。しかし、給紙条件不成立の場合は、先行用紙の後端が、まだ位置Gに達しておらず、先行用紙P1を位置Gまで排紙した後でないと給紙は開始できない。
【0058】
目標位置判定部79は、現在印刷中の用紙の最終行(最終走査)を印刷するキャリッジ14(つまり記録ヘッド17)の目標停止位置が、DZ位置以上(80桁側)の位置である印刷領域内であるか、印刷領域外(DZ位置よりも1桁側)であるかを判断する。つまり、キャリッジ14の目標停止位置が、切換保持装置40の動力伝達歯車が第1噛合位置に配置される位置か、第2噛合位置に配置される位置であるか否かを判断する。
【0059】
排紙実行部80は、排紙を行う際に起動され、PFモータ駆動回路63を介してPFモータ27を駆動制御することで、印刷を終了した先行用紙P1の排紙処理を実行する。なお、給紙条件判定部78が給紙条件を満たさないと判断したときに、排紙実行部80は起動される。
【0060】
CR制御部81は、印刷時にCRモータ駆動回路65を介してCRモータ16を駆動制御する。CR制御部81によりCRモータ16が駆動されることで、キャリッジ14が主走査方向Xに移動してその移動過程で記録ヘッド17のノズルからインク滴が吐出されることにより用紙への印字が行われる。なお、キャリッジ14のフラッシング時におけるフラッシング位置への移動や、空吸引時や印刷終了時、クリーニング実施時のホーム位置への移動も制御する。
【0061】
空吸引判定部82は、フラッシングカウンタ73の計数値に基づき空吸引を行うべき空吸引実施時期に達したか否かを判断する。ここで、フラッシングカウンタ73は、印刷動作中に主走査方向両端部に位置するホーム位置側のキャップ34内へ、印刷とは関係のないインク滴を吐出してノズル内の増粘したインクを排出してノズル目詰まりを回避するために行われるフラッシングの回数を計数する。なお、反ホーム位置側の貫通孔38内へもフラッシングのためインク滴は吐出されるが、フラッシングカウンタ73は、キャップ34内へインク滴が吐出される際のフラッシングの回数のみを計数する。
【0062】
キャップ34にフラッシングによる廃インクが所定量溜まった段階で、キャップ34内に溜まった廃インクを吸引ポンプ36で吸引して廃液タンク39へ排出する。この所定量溜まったことを、フラッシングカウンタ73が計数するフラッシング回数から判断するようにしており、この判断を空吸引判定部82が行っている。
【0063】
なお、クリーニングタイマ74は、前回のクリーニング実施時からの経過時間を計時しており、この経過時間が所定値に到達すると、記録ヘッド17のクリーニングを行う。クリーニングは、キャリッジ14がホーム位置に配置され、上昇したキャップ34を記録ヘッド17のノズル形成面17aに当接させたキャッピング状態の下、吸引ポンプ36を駆動してキャップ34内に負圧を導入することで行われる。このクリーニングにより、ノズルからインクが強制的に吸引排出され、ノズル内の増粘インクやインク中に含まれる気泡や紙粉等が除去される。
【0064】
吸引実行部85は、空吸引やクリーニングの実施時に、ASFモータ駆動回路64を介してASFモータ23を駆動制御することで、吸引ポンプ36を駆動させる。つまり、空吸引実施時には、空吸引判定部82が空吸引を行うべき時期に達したと判断したときに、CR制御部81によるキャリッジ14のホーム位置への移動のためのCRモータ16の駆動と協働して、吸引実行部85が、キャッピング完了のタイミングでASFモータ23の正転駆動を開始することで、吸引ポンプ36を駆動させる。
【0065】
CRカウンタ83は、キャリッジ駆動時に、リニアエンコーダ30から入力する90度位相のずれた2つのパルス信号ES1,ES2のエッジを計数する。CRカウンタ83は、キャリッジ14がホーム位置から80桁側へ向かって往動するときに計数値をインクリメントし、キャリッジ14がホーム位置(1桁側)へ向かって復動するときに計数値をデクリメントすることで、ホーム位置を原点とするキャリッジ14の移動位置を管理する。
【0066】
PFカウンタ84は、ロータリエンコーダ62から入力するパルス信号ES3,ES4のエッジを計数することで、用紙Pの搬送位置に応じた計数値を管理する。詳しくは、PFカウンタ84は、紙検出センサ43が用紙Pの先端を検知した時にリセットされ、その後、用紙Pの先端がヘッド基準位置H(図2に示す)に達すると、再リセットされる。この再リセット後の計数値は、用紙の先端がヘッド基準位置Hに達したときを原点とする用紙の搬送位置を示す。この計数値は、図2に示すNxに相当し、計数値Nxが値Ng以上であることをもって、先行用紙P1の後端が、位置Gに既に達している給紙条件成立であることを把握できる。なお、ロータリエンコーダ62は、図6に示すように、PFモータ27と動力伝達可能に連結された軸部(例えば紙送りローラ28Aの軸部)の端部に固定された符号板62aと、その符号板62aのスリットを透過した光を受光して90度位相のずれた2つのパルス信号ES3,ES4を出力するセンサ62bとを有する。
【0067】
給紙実行部77は、PFカウンタ84の計数値Nxが、先行用紙P1が位置Gに達したときの値Ngに達すると、ASFモータ23の駆動を停止させ、その後、PFモータ27が、ページ間に開けるべき間隔Lgapに相当する駆動量だけ駆動されると、再びASFモータ23の駆動を開始する。このため、先行用紙P1を搬送しながら、間隔Lgapを後続用紙P2の給紙も徐々に進められる。
【0068】
また、モータコントロール部71は、キャリッジ駆動時に、リニアエンコーダ30から入力するパルス信号ES1,ES2のうち一方のパルスが立ち上がりエッジ検出時に他方のパルスのレベルがハイかロウかを判断することにより、キャリッジ14の移動方向を把握する。また、モータコントロール部71は、パルス信号ES1,ES2のパルス周期を計時してその逆数によりキャリッジ14の移動速度を取得する。
【0069】
図7及び図8は、最終行の印字動作から次の動作に移行する際における、CRモータ16、PFモータ27及びASFモータ23の動作を示すタイミングチャートである。図7は、最終行の印字終了時に用紙が既に給紙条件が成立する搬送位置まで搬送されているときのタイミングチャートであり、図8は、最終行の印刷終了時に用紙がまだ給紙条件が成立する搬送位置に達していないときのタイミングチャートである。
【0070】
図7においてハッチングを施した範囲が、インク滴が吐出されて印字が行われる印字動作の期間(印字領域)を示す。図7に示すように、最終行の印字動作終了時に、給紙条件判定部78が給紙条件成立と判定し、かつ目標位置判定部79がキャリッジ14の目標停止位置が印刷領域(DZ位置を含む)内にあると判定すれば、給紙動作に移行する。つまり、印字動作(インク滴吐出)終了後、キャリッジ14が停止する前に、給紙動作に移行し、PFモータ27とASFモータ23とが駆動される。図7では、PFモータ27の起動に少し遅れてASFモータ23が起動されているが、これは例えば給紙動作開始時に、先行用紙P1の後端が丁度位置G(図2参照)にあるとき(Nx=Ng)など、ページ間の間隔Lgapを確保するための処理の例である。もちろん、給紙動作開始時に既にLgapが確保されている場合(Nx≧Ng+Lgap)は、PFモータ27と同時にASFモータ23が駆動されることになる。
【0071】
このようにキャリッジ14の停止を待たずして給紙動作を開始できるので、給紙動作を早期に開始して印刷スループットの向上に寄与できる。例えばキャリッジ14の停止を待ってその停止位置が印刷領域内であることを確認してから、給紙動作を開始する構成であると、実際にキャリッジ14が停止するまで、給紙動作を開始できない。これに対し、本実施形態では、目標停止位置をみて判断する方法なので、停止前でもその判断ができるため、キャリッジ14の停止前の移動中に給紙動作を開始することが可能となる。
【0072】
なお、給紙条件判定とは、排紙動作を行うことなく、直ちに給紙動作を行ってよいかどうかを判定する処理である。先行用紙P1の後端が位置Gに達していない場合は、まず先行用紙P1をその後端が位置G(Nx=Ng)に達するまで搬送する排紙処理を行う。そして、排紙処理終了後、給紙動作を開始するが、このときページ間の間隔Lgapを確保するために、PFモータ27の起動に遅れてASFモータ23を起動させる。
【0073】
また、目標位置判定とは、たとえ給紙条件が成立したとしても、キャリッジ14の目標停止位置がDZ位置よりも1桁側にあって、切換保持装置40がASFモータ23の動力伝達先をAPG装置31及び吸引ポンプ36を選択する第2切換位置にあるときは、ASFモータ23を駆動しても給紙装置22又は25を駆動させることができない。このため、目標停止位置が、切換保持装置40を給紙装置へ動力を伝達可能な第1切換位置に配置しうる印刷領域内にあるかどうかについても判定している。
【0074】
また、図8に示すように、印字動作が終了し、給紙条件が成立するか否かを判定しても、先行用紙P1の後端が位置G(Nx=Ng)に達しておらず、印刷条件不成立の場合は、まず先行用紙P1の後端が位置Gに達するまで先行用紙P1を搬送(排紙)する必要がある。そのため排紙動作に移行し、PFモータ27が起動されることで、先行用紙P1の後端が位置G(Nx=Ng)に達するまで先行用紙P1の排紙が行われる。そして、先行用紙P1の後端が位置Gに達した後、原則、給紙動作に移行し、ページ間の間隔Lgapを確保するためにPFモータ27の起動に少し遅れてASFモータ23が起動される。
【0075】
本実施形態では、フラッシングカウンタ73が計数する前回の空吸引実施時からのフラッシング回数が所定回数に達すると、排紙動作のときに定期空吸引を行うようにしている。排紙動作に移行すると、空吸引判定部82が、フラッシングカウンタ73の計数値から把握される前回の定期空吸引時から実施されたフラッシング回数に基づき定期空吸引を行うべきかどうかを判断する。なお、フラッシングは、印刷中において例えば5秒〜1分の範囲内の所定時間毎に実行され、キャップ34へのフラッシングが実行される度にフラッシングカウンタ73はインクリメントされる。また、給紙条件と目標位置条件が共に成立し、かつフラッシング実施時期に達したときは、キャリッジ14は印刷領域内の目標停止位置で停止した後、移動方向を反転させ、80桁側の貫通孔38と対応する位置まで移動し、貫通孔38に対してフラッシングを行うようにしている。
【0076】
図8の例では、キャリッジ14が目標停止位置(例えば印刷領域内の位置など、ホーム位置の手前)にて停止後、CRモータ16を再起動してキャリッジ14をホーム位置へ移動させる。キャリッジ14がDZ位置を過ぎた辺りで動力切換部材55を押し込み操作することで、切換保持装置40が第2切換位置に切り換わる。この状態で、吸引実行部85がASFモータ23を正転駆動させると、吸引ポンプ36が駆動されて、キャップ34内に及んだ負圧によりキャップ34内に溜まった廃インクが吸引ポンプ36を介して廃液タンク39へ排出される。フラッシングカウンタ73はこの定期空吸引の終了後にリセットされる。この例のように定期空吸引が行われるときは、先行用紙P1の後端が位置Gに達して排紙が終わるか、吸引ポンプ36が駆動停止するかのどちらか遅い方までが排紙動作期間となる。
【0077】
こうして排紙動作が終わると(この例では吸引ポンプ36の駆動が停止すると)、給紙動作に移行する。給紙動作に移行すると、まず目標位置判定部79が目標停止位置を判定する。定期空吸引終了直後は、キャリッジ14はホーム位置にある。このような停止中の場合は、前回移動したときの目標停止位置、すなわち現在位置が目標停止位置になる。目標位置判定において、目標停止位置(ホーム位置)が、DZ位置より1桁側であると判定された場合、PFモータ27を駆動してキャリッジ14を切換保持装置40を第1切換位置へ切換可能なDZ位置へ移動させる。キャリッジ14がホーム位置を離れてDZ位置へ至る途中で、キャリッジ14による動力切換部材55への押し込み操作が解除され、コイルばね57の復元力によって切換保持装置40は第1切換位置に切り換わる。そして、キャリッジ14がDZ位置に到達すると、切換保持装置40が第1切換位置にある状態の下、ASFモータ23とPFモータ27とが共に駆動され、先行用紙P1の排出と後続用紙P2の給紙が行われる。
【0078】
なお、図8の例では、排紙動作に移行したときに開始された先行用紙P1の排紙は、その排紙が完了していないときには、給紙動作に移行しても、キャリッジ14がDZ位置に到達するまでは継続させている。これに対し、給紙動作の開始(ポンプ駆動停止)に合わせてPFモータ27の駆動を一旦停止させ、給紙動作開始時にPFモータ27が再駆動されて残りの排紙が行われるようにしてもよい。
【0079】
また、先行用紙P1が排紙された後、給紙された後続用紙P2の頭出し(印刷開始位置への搬送)のため、引き続きPFモータ27は駆動される。なお、図8では、キャリッジ14がDZ位置へ到達した段階で、先行用紙P1の後端が位置Gに達してPFモータ27の駆動を停止させた例であり、この場合は、ページ間の間隔Lgapが既に確保されているので、PFモータ27とASFモータ23は同時に駆動開始されている。
【0080】
図9は、シーケンス制御部69が主制御部68の指示に基づいて実行する印刷処理のフローチャートを示す。以下、印刷処理について図9に従って説明する。
例えばホスト装置90から印刷データを受信すると、主制御部68はその印刷データに基づきシーケンス制御部69に対して印刷処理を開始する旨の指示を出す。シーケンス制御部69は、まず最初の用紙Pを給紙する給紙動作を実行する(S10)。すなわち、給紙実行部77がASFモータ23を駆動させて給紙装置22,25のうち選択されている一方から給紙する。
【0081】
次にPFモータ27を駆動し、給紙された用紙Pを紙送りする(S20)。給紙後最初の紙送りは、用紙Pの頭出しであり、紙検出センサ43が用紙Pの先端を検出した位置から頭出し量に応じた計数値をPFカウンタ84が計数し終えると、PFモータ27の駆動を停止する。
【0082】
ステップS40では、1ページ分の印刷が全て完了したか否かを判断し、まだ印刷すべき行が残っていればS20に戻り、S20の紙送りと、S30の印刷とを繰り返し、1行ずつ印刷を進める。
【0083】
そして、1ページの印刷を完了すると(S40で肯定判定)、次のステップS50において、給紙条件成立か否かを判定する。給紙条件不成立のときは排紙処理に移行し(ステップS60)、給紙条件成立時は給紙処理に移行する(ステップS100)。
【0084】
排紙処理に移行した場合は、PFモータ27を駆動させて先行用紙P1の排紙を行う(S60)。そして、次のステップS70において、定期空吸引を行うべきか否かを判断する。すなわち、フラッシングカウンタ73の計数値に基づき前回の空吸引実施時からのフラッシング回数が所定回数以上の場合に空吸引判定部82が定期空吸引を行うべきと判定する。このステップS70で肯定判定の場合、CR制御部81がCRモータ16を駆動させ、キャリッジ14をホーム位置へ移動させる。一方、否定判定の場合は、給紙処理へ移行する(S100)。
【0085】
ホーム位置へ移動するキャリッジ14はDZ位置を過ぎた辺りで切換保持装置40の動力切換部材55を押し込んでこれを第1切換位置に切り換える。キャリッジ14のホーム位置への移動後、空吸引動作が行われる(S90)。つまり、ASFモータ23を正転駆動することで、吸引ポンプ36が駆動し、キャップ34内の廃インクが吸引除去される。定期空吸引が終わると、給紙処理に移行する。
【0086】
ステップS100の給紙処理では、給紙実行部77が図10に示す給紙処理ルーチンを実行する。まずステップS210において、キャリッジ14の目標停止位置がDZ位置より1桁側であるか否かを判断する。DZ位置より1桁側であれば、ステップS220に進んで、キャリッジ14をDZ位置まで駆動させる。この処理は、図8において、定期空吸引後に給紙動作に移行して、キャリッジ14をホーム位置からDZ位置へ移動させる処理に相当する。一方、目標停止位置がDZ位置より1桁側ではない場合、つまり印刷領域内にある場合は、ステップS230に進んで、ASFモータ23を駆動させて用紙Pを給紙するとともに、PFモータ27を駆動させて用紙Pを搬送する。この場合、先行用紙P1がまだ排紙されず残っていれば、PFモータ27の駆動により、後続用紙P2の給紙動作と共に先行用紙P1が排紙される。先行用紙P1が既に残っていない場合は、ASFモータ23の駆動により給紙された後続用紙P2が、PFモータ27の駆動により紙送りローラ28にニップされて搬送され、頭出しされる。
【0087】
以上、詳述したように第一実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)最終行の印字動作が終了すると(1ページの印刷終了時)、給紙条件が成立するか否かを判断して、給紙条件が成立していれば、直ちに給紙を開始するので、キャリッジ14が停止する前に後続用紙P2の給紙を開始することができる。
【0088】
(2)給紙条件が成立すると、キャリッジ14の目標停止位置を調べ、目標停止位置が印刷領域(≧DZ)内、すなわち切換保持装置40がASFモータ23の動力伝達先を給紙装置22,25とする切換え位置に配置されるキャリッジ位置にあれば、ASFモータ23を駆動させたときにキャリッジ停止後も継続して給紙可能と判定できる。このため、キャリッジ停止時に切換保持装置40が第1切換位置(給紙位置)に切り換えられると判定できたときに限り、キャリッジ停止前に事前に給紙動作を開始することができる。
【0089】
(3)給紙条件成立の判定と、目標停止位置の判定とにより、両方が成り立つ場合に給紙動作を実行する。よって、給紙可能なときを適切に判定して、キャリッジ停止前に事前に給紙動作を開始させることができる。
【0090】
(4)排紙動作の過程で空吸引を終了した後、停止中のキャリッジ14の目標停止位置(つまり前回移動した際の目標停止位置である現在位置)を調べ、その目標停止位置(現在位置)がホーム位置であることをもって、キャリッジ14をホーム位置からDZ位置へ移動させる。よって、空吸引後に次の給紙処理を行う位置であるDZ位置への移動も、目標停止位置の確認により行うことができる。
【0091】
(5)また、切換保持装置40は、キャリッジ14が動力切換部材55を操作しない位置(つまり印刷領域内の位置)にあるときに、コイルばね57の付勢により給紙装置22,25と動力伝達可能な第1切換位置(給紙位置)に切り換えられた状態にある。よって、キャリッジ14が最終行の記録のための移動を停止する位置が印刷領域内であれば、キャリッジ14が停止するまで待つことなく、事前に給紙動作を開始できる。
【0092】
(6)空吸引を排紙動作中に限り実施する構成としたので、例えば、最終行の印字動作
終了後直ちに給紙を開始できるときには、空吸引よりも給紙動作を優先させるため、印刷スループットを向上できる。例えばフラッシングカウンタ73の計数値が所定回数以上という空吸引実施条件が成立した場合に、必ず空吸引を実施する構成とすると、空吸引動作の所要時間分遅れて給紙動作が開始され、印刷スループットが低下することになるが、本実施形態によれば、このような空吸引実施条件成立時における給紙動作の開始遅れを回避できる。
【0093】
(第二実施形態)
図11に示すタイミングチャートに従って説明する。前記第一実施形態では、最終行の印字動作終了後におけるキャリッジ14の停止位置が印刷領域内であったが、この第二実施形態では、最終行印字後に次に定期空吸引を行うべきときであれば、最終行の印字動作時におけるキャリッジ14の目標停止位置をホーム位置に設定する例である。よって、最終行の印字動作終了後は、そのままキャリッジ14がホーム位置まで移動して停止する構成となっている。
【0094】
図11に示すように、最終行の印字動作が終了すると、給紙条件判定を行い、給紙条件が成立すれば、次に目標位置判定を行う。目標停止位置がホーム位置(すなわち切換保持装置40がASFモータ23の動力伝達先を給紙装置22,25を選択しない第2切換位置に配置されうるキャリッジ位置)に設定されているので、仮に給紙条件が成立しても、排紙処理に移行する。なお、給紙条件が成立し、かつ目標停止位置が印刷領域内であると判定した場合は、給紙動作に移行する。
【0095】
この第2実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(7)定期空吸引を行うときには、最終行の印字動作時の目標停止位置をホーム位置としているので、最終行の印字動作終了後、途中で止まることなく、キャリッジ14を空吸引を行うべきホーム位置HPまで移動させることができる。このため、空吸引を早期に開始できる。例えば先行用紙P1の排紙よりも空吸引の方が遅く終了する場合でも、空吸引が早期に開始された分、早く終了するので、その分、後続用紙P2の給紙を早期に開始できる。
【0096】
(8)最終行の印字動作終了後に、キャリッジ14の目標停止位置を調べて、目標停止位置に到達する前に、排紙動作とすべきか給紙動作とすべきかを判定することができる。よって、最終行の印字動作終了後、目標停止位置から給紙動作をすべきと判定されれば、キャリッジ14が停止する前に事前に給紙動作を開始できる。この結果、キャリッジ14の停止を待って確認した停止位置が給紙可能な位置であるかどうかを判断してから給紙動作を開始する構成に比べ、給紙動作を早期に開始することができる。
【0097】
なお、実施形態は、上記に限定されるものではなく、以下のように変更してもよい。
(変形例1)前記第一実施形態では、給紙条件判定を行った後、給紙条件成立時のみ目標位置判定を行ったが、目標位置判定を先に行い、目標位置条件成立時のみ給紙条件判定を行う構成も採用できる。
【0098】
(変形例2)切換手段としての切換保持装置40は、必須ではない。例えば、メンテナンス装置33が、給紙装置のASFモータ23(動力源)と別個の電動モータ(動力源)で駆動される構成も採用できる。この構成であっても、給紙条件及び目標位置条件が共に成立したときに、早期に給紙できる。しかも、前記各条件の一方でも不成立の場合は、排紙を行うべきとき、かつ時期管理手段による実施時期に達しているときに、空吸引を実施できる。よって、前記第一及び第二実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0099】
(変形例3)給紙条件が成立したときにも、空吸引実施時期であれば、給紙よりも空吸引を優先させる構成も採用できる。この場合、給紙条件が成立しても、空吸引判定部82が空吸引実施時期に達したと判定した場合は、CR制御部81はキャリッジ14をホーム位置へ移動させるようにCRモータ16を駆動する。
【0100】
(変形例4)前記各実施形態及び変形例2、3において、空吸引に替えて、フラッシングを実施してもよい。この構成によれば、給紙条件成立かつ目標位置条件成立時に、印字動作終了後直ちに給紙動作を開始でき、前記各条件の少なくとも一方が不成立で排紙を行う必要があるときには、ホーム位置でキャップ34内にインク滴を吐出するフラッシングを行うことができる。
【0101】
(変形例5)前記実施形態では、切換保持装置(切換手段)によって、動力源の動力伝達先を、2つの給紙装置、メンテナンス装置(吸引ポンプ)、プラテンギャップ調整装置(APG装置)の中から選択切り換えできる構成であり、他の手段として、メンテナンス装置と、APG装置の2つの手段を含む構成であるが、このうち一方のみでもよい。その一方の他の手段がメンテナンス装置であれば、前記実施形態と同様の効果が得られる。またその一方の他の手段がAPG装置であれば、先行用紙から後続用紙へのページ切り換え時に、紙厚が変更されないときは、目標停止位置を記録領域内に設定し、紙厚が変更されるときには、目標停止位置をホーム位置に設定する。そして、キャリッジ14がホーム位置に停止した後、ASFモータ23を逆転駆動させてプラテンギャップを調整する。
【0102】
(変形例6)写真印刷や縁無し印刷などのように、1ページの印刷終了時(最終行の印字動作終了時)に、必ず給紙条件が成立する前提の印刷処理(記録処理)においては、あえて給紙条件を判定することなく、目標位置判定のみ実施しても構わない。
【0103】
(変形例7)給紙条件判定や目標位置判定は、最終行の印字終了後に実施することに限定されない。判定後に開始すべき給紙動作が、最終行の印字動作終了後かつキャリッジ停止前に実施できるタイミングであればよい。例えば、判定のタイミングは、最終行の印字開始前、最終行の印字中、最終行の印字終了後におけるキャリッジの減速中でもよい。
【0104】
(変形例8)シリアル式記録装置は、インクジェット式プリンタに限定されない。ドットインパクトプリンタや、熱転写式プリンタにも採用できる。
(変形例9)流体噴射方式のシリアル式記録装置は、インクジェット式プリンタに限定されない。インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体、流体として流して噴射できる固体(例えばトナー等を含む粉粒体)を含む)を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、さらに光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。なお、これらの各装置のように、噴射した流体を基板等の記録媒体上に着弾させて形成した所定パターン(配線パターン、電極パターン、画素パターン、エッチングパターン、配列パターンを含む)を描く記録も、本明細書では記録装置の記録に含まれる。なお、「流体」とは、気体のみからなる流体を含まない概念であり、例えば液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、粉粒体、流状体などが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】第一実施形態におけるプリンタの概略構成を示す斜視図。
【図2】搬送系を示す模式側面図。
【図3】プリンタの模式平面図。
【図4】切換保持装置の側面図。
【図5】切換保持装置の平面図。
【図6】プリンタの電気的構成を示すブロック図。
【図7】印字動作後に給紙動作を行う際の制御タイミングチャート。
【図8】印字動作後に排紙動作を行う際の制御タイミングチャート。
【図9】印刷処理を示すフローチャート。
【図10】給紙処理を示すフローチャート。
【図11】第二実施形態において印字動作後に排紙動作を行う際の制御タイミングチャート。
【符号の説明】
【0106】
11…シリアル式の記録装置としてのプリンタ、13…ガイド軸、14…記録手段を構成するキャリッジ、15…移動手段を構成するタイミングベルト、16…移動手段を構成するCRモータ、17…記録手段を構成する記録ヘッド、22…給送手段を構成するリア給紙装置、23…動力源としてのASFモータ、25…給送手段を構成するフロント給紙装置、27…搬送手段を構成するPFモータ、28…搬送手段を構成する紙送りローラ、29…搬送手段を構成する排紙ローラ、30…リニアエンコーダ、31…APG装置、33…メンテナンス手段としてのメンテナンス装置、34…廃液受容手段としてのキャップ、36…吸引ポンプ、40…切換手段としての切換保持装置、60…コントローラ、62…ロータリエンコーダ、63…PFモータ駆動回路、64…ASFモータ駆動回路、65…CRモータ駆動回路、66…ヘッド駆動回路、68…制御手段を構成する主制御部、69…制御手段を構成するシーケンス制御部、71…モータコントロール部、72…印字コントロール部、73…時期管理手段としてのフラッシングカウンタ、74…クリーニングタイマ、76…制御手段を構成する紙送り実行部、77…制御手段を構成する給紙実行部、78…給送条件判定手段としての給紙条件判定部、79…目標位置判定手段としての目標位置判定部、80…制御手段を構成する排紙実行部、81…制御手段を構成するCR制御部、82…空吸引判定部、83…CRカウンタ、84…PFカウンタ、85…吸引実行部、P…記録媒体としての用紙、P1…先行する記録媒体としての先行用紙、P2…後続の記録媒体としての後続用紙。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動給紙装置を備えたシリアル式プリンタ等のシリアル式記録装置において、先行する記録媒体の記録終了後に、後続の記録媒体を給送する制御を行うシリアル式記録装置及び記録媒体の給送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ等の記録装置には、記録を施すターゲットとなる用紙を自動で給紙する自動給紙装置を備えるものがある。自動給紙装置では、先行用紙の印刷が終了すると、その先行用紙が排紙された後、あるいは先行用紙が排紙し終わるより少し前のタイミングで、後続用紙の給紙が開始されるようになっている。
【0003】
ところで、シリアル式記録装置では、キャリッジに設けられた記録ヘッドが用紙に対してインク滴を吐出しながら主走査方向へ一回移動することで一行(一ラスタライン)の記録を行う印字動作と、用紙を副走査方向に所定ピッチ分紙送りする搬送動作とが交互に行われることで、用紙への印刷が進められる(例えば特許文献1、2等)。
【0004】
また、例えば特許文献1、2に記載のシリアル式記録装置では、印刷処理時間短縮を図るため、紙送り動作とキャリッジ動作とを一部重複するタイミングで実施させる重ね合わせ制御が行われる(例えば特許文献1、2等)。この重ね合わせ制御は、まず、1パス分の印字動作が終了すると紙送りモータ(PFモータ)を起動させて紙送りを行う。その後、PFモータの駆動が終了する前に所定のタイミングでキャリッジモータ(CRモータ)を起動させてキャリッジの移動を開始させる。これにより、紙送りの途中からキャリッジが加速され、紙送り終了とほぼ同時にキャリッジの定速域で行われる印字動作を開始することができる。従って、紙送り終了後にCRモータを起動させる構成に比べ、印刷処理時間を短縮できる。
【0005】
また、自動給紙装置と、記録ヘッド用のメンテナンス装置の吸引ポンプとの間で一つの動力源(電動モータ)を共有し、その動力伝達先をキャリッジの移動位置に応じて切り換え可能な動力伝達切換装置を備えたシリアル式記録装置も知られている。(例えば特許文献3)
また、インクジェット式記録装置では、記録ヘッドのノズルの目詰まりを防ぐために、ノズル内の増粘したインクを定期的に吐出してノズル内のインクをリフレッシュするフラッシングが行われる。このフラッシング時のインク滴は、通常、記録ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス装置のキャップ内へ吐出されるようになっている。そして、フラッシングによりキャップ内に溜まった廃インクをそのまま放置すると、キャップの配管等が詰まる虞があるため、キャップ内に吐出された廃インクが一定量を超えると、キャップに連通する吸引ポンプを駆動して、キャップ内に溜まった廃インクを吸引除去する空吸引が行われるようになっている(例えば特許文献3、4等)。
【特許文献1】特開2001−232882号公報
【特許文献2】特開2006−212923号公報
【特許文献3】特開2007−90761号公報(段落0078〜0080等)
【特許文献4】特開2007−90761号公報(段落0078〜0080等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、紙送りとキャリッジ動作とを一部動作タイミングを重ね合わせた制御は行われているものの、シリアル式記録装置においては、ラインプリンタやページプリンタの印刷速度に比べて遅く、特に高速印刷時の印刷速度を速くしたい要求が従来よりある。
【0007】
ところで、先行用紙への印刷終了後、直ちに後続用紙の給紙を行って、給紙を行うタイミングを早く図ることも、印刷速度の高速化において無視できない。
最終行の印刷を終了した後、次に後続用紙の給紙を行うか、空吸引を行うかは、キャリッジの停止位置から判断することができる。すなわち、例えば、特許文献3に記載されたような動力伝達切換装置を備えたプリンタでは、キャリッジの停止位置に応じてモータの動力の切り換え位置が決まる。このため、コントローラは、最終行の印刷終了後、キャリッジの停止位置を確認して、その停止位置に基づいて給紙動作を行うか、空吸引を行うかを判断する必要がある。従って、キャリッジが停止するまで給紙を開始できないという問題があった。もちろん、この種の問題は、動力伝達切換装置を備えていない構成の場合でも、給紙時のキャリッジの停止位置と、空吸引を行うときのキャリッジの停止位置とが異なる場合も、同様の問題が発生する。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、最終行の記録終了後、記録手段が停止する前に、後続媒体の給送を開始できるシリアル式記録装置及び記録媒体の給送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、記録媒体を給送する給送手段と、給送された記録媒体に記録を施す記録手段と、記録を行わせるために前記記録手段を移動させる移動手段と、記録媒体を前記記録手段の移動方向と交差する方向に搬送する搬送手段と、前記記録手段、前記移動手段、前記搬送手段及び前記給送手段を制御する制御手段と、前記記録媒体に対する最終行の記録を行うために移動する前記記録手段の目標停止位置が、後続の記録媒体の給送が可能な給送可能領域にある目標位置条件を満たすか否かを判定する目標位置判定手段とを備え、前記制御手段は、前記目標停止位置が前記給送可能領域にあれば、前記記録手段が最終行の記録を終えた後かつ当該最終行の記録のための移動を停止する前に、前記給送手段による後続媒体の給送動作を開始させることを要旨とする。
【0010】
これによれば、記録手段の目標停止位置が給送可能領域にあれば、記録手段が最終行の記録を終えた後かつ当該最終行の記録のための移動を停止する前に、給送手段による後続媒体の給送動作を開始させる。このため、先行の記録媒体の記録終了後、移動する記録手段の停止を待つことなく、直ちに給送を開始できるので、記録のスループット向上に寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第一実施形態)
以下、本発明を具体化した第一実施形態を図1〜図10に従って説明する。図1は、記録装置の基本構成を示す斜視図である。
【0012】
図1に示すように、シリアル式記録装置としてのインクジェット式プリンタ(以下、単にプリンタ11という)は、有底長四角箱状の本体フレーム12を備える。本体フレーム12の同図における左右側壁間には所定長さを有するガイド軸13が架設されている。ガイド軸13にはキャリッジ14が挿通されてガイド軸13の軸方向に移動可能に設けられている。キャリッジ14の背面側一箇所は、本体フレーム12の内側背面側に主走査方向Xに張設された状態で回転可能に支持された無端状のタイミングベルト15に固定されている。キャリッジ14はタイミングベルト15を介してキャリッジモータ(以下、CRモータ16と称す)の駆動軸と動力伝達可能に連結されている。CRモータ16が駆動されると、タイミングベルト15が回転駆動され、このタイミングベルト15の回転駆動によって、キャリッジ14は主走査方向Xに往復移動する。
【0013】
キャリッジ14の下部には、インクジェット式の記録ヘッド17が設けられており、この記録ヘッド17の下面は、液体としてのインクを噴射する複数列のノズルが開口するノズル形成面17a(図2参照)となっている。本体フレーム12内の記録ヘッド17と対向する位置には、記録ヘッド17のノズル形成面17aと用紙Pとの間隔を規定するプラテン18が設けられている。また、キャリッジ14の上部には、記録ヘッド17にインクを供給するブラックのインクカートリッジ19、および例えばシアン、マゼンタ、イエローの3色のインクが個別に収容されたカラー用のインクカートリッジ20が着脱可能に装填されている。これら各インクカートリッジ19,20より記録ヘッド17に対してインクが供給される。インクカートリッジ19,20からインクが供給される記録ヘッド17は、ノズル形成面17aの各ノズルからインクを噴射(吐出)可能となっている。
【0014】
プリンタ11の背面側には、多数の用紙Pを積重できる給紙トレイ21を有し、給紙トレイ21に積重された多数枚の用紙Pのうち最上位の1枚のみを分離して副走査方向Y下流側に給紙する自動給紙装置(ASF)であるリア給紙装置22が設けられている。リア給紙装置22は給紙モータ(以下、ASFモータ23と称す)を備えている。リア給紙装置22は、給紙ローラ22A(図2参照)を備え、給紙ローラ22AがASFモータ23により回転駆動されることで給紙トレイ21上に積載された用紙群のうち最上位の一枚が給紙される。また、プリンタ11の前側下部には、給紙カセット24を備えたフロント給紙装置25が設けられている。フロント給紙装置25は、給紙カセット24に収容された用紙の最上位面に当接するピックアップローラ(図示せず)が、ASFモータ23の駆動により回転駆動されることにより最上位の用紙が後方側へ搬送され、その後、反転ガイド板(図示せず)に沿って反転され、リア給紙装置22と共通の用紙搬送路へ供給される構成となっている。
【0015】
また、本体フレーム12の図1における右側下部には、紙送りモータ(以下、PFモータ27と称す)が配設されている。PFモータ27の駆動により用紙搬送経路上において記録ヘッド17を前後に挟んだ位置にそれぞれ設けられた紙送りローラ28及び排紙ローラ29(いずれも図2参照)が回転駆動されて、用紙Pが副走査方向Yに搬送される。そして、キャリッジ14を主走査方向Xに往復動させながら記録ヘッド17のノズル形成面17aから用紙Pにインクを吐出する印字動作と、用紙Pを副走査方向Yに所定の搬送量で搬送する紙送り動作とを交互に繰り返すことで、用紙Pに記録(印刷)が施される。
【0016】
また、本体フレーム12内には、ガイド軸13に沿ってリニアエンコーダ30が設けられている。リニアエンコーダ30は、キャリッジ14の移動距離に比例する数のパルスを出力し、プリンタ11ではその出力パルスを検出して把握されるキャリッジ14の移動位置、移動速度及び移動方向に基づいて、キャリッジ14の速度制御及び位置制御が行われる。
【0017】
本実施形態のプリンタ11には、キャリッジ14を上下方向に移動させることで記録ヘッド17とプラテン18との間隔(プラテンギャップ)を調整可能な自動プラテンギャップ調整装置(APG装置31と称す)が装備されている。APG装置31はASFモータ23により駆動される。ASFモータ23は、プリンタ11がホストコンピュータ等から取得した用紙種類の情報から特定される紙厚に応じた適切なプラテンギャップが確保されるように駆動制御され、記録ヘッド17と用紙Pとの間隔(ペーパーギャップ)が所定の値に確保される構成となっている。本実施形態におけるAPG装置31は、ASFモータ23の駆動により図示しないカム機構を介してガイド軸13の高さ位置を調整することで、キャリッジ14の高さ調整を行う。
【0018】
図1においてキャリッジ14の移動経路上の同図における右端部は、キャリッジ14が記録を行わない待機時に配置されるホーム位置(ホームポジション)となっており、このホーム位置に配置されたキャリッジ14の直下に相当する位置には、記録ヘッド17のクリーニング等を行うメンテナンス装置33が配設されている。メンテナンス装置33は、記録ヘッド17のノズル内のインクが増粘等することを防止する蓋体として機能する略四角形状のキャップ34と、ノズル形成面17a(図2参照)を払拭するためのワイパ35と、キャップ34に負圧を付与するように駆動される吸引ポンプ36とを備えている。
【0019】
キャリッジ14がホーム位置に移動して記録ヘッド17がキャップ34の直上に位置した状態で、ASFモータ23が駆動されて、キャリッジ14が例えば最下降位置まで下降することで、記録ヘッド17のノズル形成面17aがキャップ34に密着してノズルが封止されるようになっている。
【0020】
キャップ34は、上記のノズル開口の乾燥を防ぐ目的の蓋体機能(キャッピング機能)の他、記録ヘッド17のノズル形成面17aをキャップしてその封止された空間に吸引ポンプ36からの負圧を与えて記録ヘッド17よりインクを強制的に吸引排出させる液体吸引手段の一部としての機能も備えている。キャップ34は、キャリッジ14がホーム位置に配置された際に記録ヘッド17と干渉しない下降位置と、記録ヘッド17のノズル形成面17aにノズルを囲むように当接するキャッピング位置との間を昇降可能に設けられている。キャップ34の昇降機構は、例えばキャリッジ14がホーム位置に到達する直前にキャリッジ14がレバーを押すことでバネの付勢に抗してキャップを載置するスライダが上昇し、キャリッジ14がホーム位置から退避すると、バネの付勢力によりキャップ34が下降する機械的昇降機構や、モータにより昇降駆動される電動式昇降機構などを採用できる。電動式昇降機構の場合は、例えばPFモータ27の動力を利用できる。
【0021】
吸引ポンプ36は、ASFモータ23により回転駆動される。吸引ポンプ36は例えばチューブポンプからなるが、ギヤポンプ、ベローズ式ポンプ、ダイヤフラム式ポンプ等も採用できる。
【0022】
また、ワイパ35はキャップ34の印刷領域側に隣接して位置し、記録ヘッド17の吸引動作終了後、キャリッジ14がホーム位置から印刷領域側へ移動する過程で、ノズル形成面17aがワイパ35に摺接することにより、ノズル形成面17aをワイピングする。
【0023】
プラテン18のホーム位置と反対側となる端部(図1における左端部)上面には、記録ヘッド17のノズルから印刷とは関係のないインク滴を吐出するフラッシング用の貫通孔38が開口している。本例では、フラッシングは、印刷中における所定時期に端部へ異動して貫通孔38又はキャップ34内へインク滴を吐出することで行われる。プラテン18の下側には、主走査方向Xに長く延びた四角箱状の廃液タンク39が配置され、その内部には多孔質部材よりなるインク吸収材が収容されている。クリーニング時にノズルからキャップ34を介して吸引された廃インクや、フラッシング時に貫通孔38又はキャップ34内へ吐出されたインク滴は、廃液タンク39内に回収されるようになっている。
【0024】
プリンタ11は、キャリッジ14がホーム位置に到達する手前で係合することで操作されるように構成される切換保持装置40を備えている。前述のように、ASFモータ23を共通の動力源とする、リア給紙装置22、フロント給紙装置25、APG装置31、メンテナンス装置33の吸引ポンプ36へのASFモータ23の動力の伝達先の切り換えは、切換保持装置40により行われる。
【0025】
図3は、プリンタの要部平面図である。図3において、キャリッジ14が同図における右端側に移動して記録ヘッド17とキャップ34とが上下方向(同図では紙面垂直方向)に一致した一点鎖線で示す位置が、キャリッジ14のホーム位置HPとなっている。
【0026】
リニアエンコーダ30は、一定ピッチ(例えば1/180インチ(=1/180ラ2.54cm))毎に多数のスリットが形成されたテープ状の符号板30aと、キャリッジ14に設けられた発光素子と受光素子とを有するセンサ30bとを備え、キャリッジ14が移動するときに発光素子から出射されてスリットを透過した光を受光素子が受光することで、センサ30bが検出パルスを出力する構成である。後述する図6に示すコントローラ60は、リニアエンコーダ30から入力した検出パルス(A相とB相の90度位相のずれた2つのパルス)の例えばパルスエッジを計数して、ホーム位置HPを原点とするキャリッジ14の位置を求める。このため、プリンタ11における主走査方向Xの位置は、キャリッジ14の位置を管理するコントローラ60内のCRカウンタ83(図6参照)の計数値により管理可能となっている。なお、本実施形態では、キャリッジ14の移動位置を、ホーム位置HP側を「1桁側」、反ホーム位置側を「80桁側」と称する。
【0027】
図3に示すように、キャリッジ14の移動位置の原点であるホーム位置Oと、印刷対象領域(Xo〜Xend)の左端位置との中間位置には、切換位置としてのDZ位置が設定されている。印刷対象領域(Xo〜Xend)の両側に、キャリッジ14が印刷時の目標速度に到達するまでに必要な加速領域又は減速領域を加えた全領域が、キャリッジ14が印刷中に移動しうる最大範囲となる。DZ位置は、「印刷領域」のうち最もホーム位置側(1桁側)の限界位置に相当する。
【0028】
図3における右下に示しように、記録ヘッド17のノズル形成面17aには複数本(例えば4本)のノズル列17bが用紙搬送方向Y方向に沿って配列されている。各ノズル列17bは、例えばY方向に沿って千鳥配置された例えば180個のノズル群より構成されている。記録ヘッド17の複数本のノズル列17bのうち、最も80桁側に位置するノズル列17bがDZ位置に一致するときのキャリッジ位置が、キャリッジ14がDZ位置に配置されたときである。切換保持装置40は、キャリッジ14がホーム位置へ到達する手前の移動過程で係合して押し込み操作可能なレバー式の動力切換部材55を備え、キャリッジ14がDZ位置とホーム位置HPとの間を1桁側へ移動する途中で切換保持装置40の動力切換部材55を操作することで、切換保持装置40は切り換えられる。キャリッジ14がDZ位置以上(DZ位置を含むこれより80桁側の範囲)の位置にあるとき(つまり印刷領域(給送可能領域)内にあるとき)、切換保持装置40は、ASFモータ23の動力伝達先として、リア給紙装置22及びフロント給紙装置25を選択する第1切換位置に配置される。一方、キャリッジ14がホーム位置にあるときは、切換保持装置40は、ASFモータ23の動力伝達先として、APG装置31及び吸引ポンプ36を選択する第2切換位置に配置される。
【0029】
給紙トレイ21は、ホーム位置HP側の端部に延出形成された固定ガイド21aと、用紙Pの幅に合わせて幅方向(主走査方向X)にスライド可能に設けられた可動ガイド21bとを有している。印刷中における用紙Pの幅方向(X方向)の位置は、二つのガイド21a,21bにより規定され、用紙Pの幅方向におけるホーム位置HP側(1桁側)の紙端は、固定ガイド21aの内側面の位置で規定される。この1桁側の紙端位置は、固定ガイド21aがプリンタ11に固定されたものであることから、用紙Pの用紙サイズにかかわらず常に一定であり、CRカウンタ83の計数値換算値で表現すると、ホーム位置HP(原点O)から所定距離の位置Xoで表される。また、用紙Pの幅(X方向の幅)をCRカウンタ83の計数値換算値で表現した値をPwidthとすると、反ホーム位置側(80桁側)の紙端位置は、値Xend(=Xo+Pwidth)と表される。
【0030】
また、プラテン18は、主走査方向Xに所定の間隔を開けて突設された複数のリブ18aを有し、上面においてリブ18aを除く領域にはインク吸収材42の表面が露出している。用紙Pはリブ18a上を摺動するため、用紙Pの裏面がインク吸収材42に触れて汚れることはない。
【0031】
また、リア給紙装置22は、給紙ローラ22Aを備え、この給紙ローラ22Aは切換保持装置40を介して伝達されるASFモータ23の駆動力に基づき回転駆動され、給紙時には給紙トレイ21にセットされた用紙Pのうち最上位の一枚のみ給紙する。また、用紙Pの給紙経路上における記録ヘッド17より上流側の位置には紙検出センサ43が設けられ、給紙される用紙Pの先端が紙検出センサ43により検知されるように構成されている。
【0032】
また、プリンタ11には、用紙Pを副走査方向Yに搬送する紙送りローラ28は、搬送駆動ローラ28Aと搬送従動ローラ28Bからなる。一方、印刷実行後の用紙Pを排紙する手段である排紙ローラ29は、排紙駆動ローラ29Aと排紙従動ローラ29Bとからなる。搬送駆動ローラ28Aおよび排紙駆動ローラ29Aは、PFモータ27(図1参照)の駆動力により回転し、記録実行後の用紙Pを副走査方向Yに搬送および排紙する。なお、本実施形態では、PFモータ27、搬送駆動ローラ28A、搬送従動ローラ28B、排紙駆動ローラ29Aおよび排紙従動ローラ29B等により、搬送手段が構成される。
【0033】
図2は、給紙装置(ASF)および搬送装置(PF)を側面から見た模式図である。ASFモータ23とPFモータ27とが別個に設けられているので、先行用紙P1の搬送中においても、後続用紙P2を給紙を進めることができ、用紙P1,P2の間隔を狭くして、用紙P1の印刷終了後、直ちに後続用紙P2の印字開始を行うことができる。
【0034】
給紙ローラ22Aと紙送りローラ28との間には、紙検出センサ43が設けられている。 給紙された用紙P1の先端が紙送りローラ28間を通って、ノズル群のうち搬送方向最上流に位置するノズル(最上流ノズルと称す)の位置であるヘッド基準位置Hに一致する位置まで用紙P1を搬送すると、搬送位置を管理するカウンタがリセットされる。図3において、記録ヘッド17の最上流ノズル位置がヘッド基準位置Hである。ヘッド基準位置H(最上流ノズル)〜紙送りローラニップ点間の距離が「La」、紙送りローラニップ点〜紙検出センサ43間の距離が「Lb」、紙検出センサ43〜給紙ローラニップ点(給紙ローラ22Aとリタードローラ22Bとのニップ点)間の距離が「Lc」となっている。
【0035】
よって、用紙の先端からのヘッド基準位置Hに対向する位置までの距離Nxがカウンタに示される。そして、用紙長Psizeから(La+Lb+Lc−Ld)を減算した値(Psize−La−Lb−Lc+Ld)に達すると、ASFモータ23の駆動を一時停止後、カウンタの値がLgap分進んで、値(Psize−La−Lb−Lc+Ld+Lgap)に達すると、ASFモータ23を再駆動し、その後、間隔Lgapを確保した状態で、用紙P1の搬送と用紙P2の給紙とを同時並行に進めるようにしている。
【0036】
本実施形態では、用紙P1の位置を、ヘッド基準位置Hと対向する用紙上の位置で管理しているので、用紙P1の後端から距離(La+Lb+Lc−Ld)だけ搬送方向下流側の位置がヘッド基準位置Hに到達したとき、用紙の後端がページ間制御位置Gに位置することになるページ間制御位置Ngに用紙が達したと判断する。ここで、「Nx」は、用紙P1の先端がヘッド基準位置Hに達した位置からの用紙P1の紙送り量を示す。
【0037】
本実施形態では、用紙P1の先端がヘッド基準位置Hに達したときからの用紙の搬送距離(紙送り量)をPFカウンタ84(図6参照)で計数し、この計数値で用紙P1の位置を管理している。PFカウンタ84の計数値である紙送り量Nxが(Psize−(La+Lb+Lc−Ld))である値Ngに達したことをもって、用紙P1がページ間制御位置Ngに達したと判断する。
【0038】
頭出し位置は、用紙上の印刷開始位置を決めている余白(トップマージン)や縁なし印刷などのレイアウト条件に応じて決まり、カウンタの値が頭出し位置に達すると、印字が開始される。
【0039】
本実施形態では、給紙された用紙が頭出しされるまでの用紙搬送が「給紙動作」、頭出しされた用紙の印刷が終わるまでの用紙搬送が「紙送り動作」、印刷が終わった用紙の後端が紙検出センサ43に検知されなくなるまでの用紙搬送が「排紙動作」として定義されている。なお、印刷が終わった時点で既に用紙後端が紙検出センサ43に検知されなくなる位置まで用紙の搬送が進んでいる場合は、その用紙に対する排紙動作は行われず、後続用紙P2の給紙動作が行われ、この給紙動作に伴い連動して排紙ローラ29が回転することで先行用紙P1の排紙が行われる。
【0040】
用紙P1,P2間に規定の隙間が確保されることで、その後、隙間によって紙検出センサ43がオフしてから、後続用紙P2の先端を検知してオンするので、この後続用紙P2を紙検出センサ43により検知することができる。よって、紙検出センサ43により検知された位置を基準とし、該基準の位置から所定の距離を搬送して行われる後続用紙P2の頭出しが可能になる。
【0041】
図4は、切換保持装置40を主走査方向から見た側面図、図5は切換保持装置40の平面図を示す。
図4に示すように、切換保持装置40は、リア給紙装置22とフロント給紙装置25とに動力を伝達する第1被伝達歯車51と、この第1被伝達歯車51に対して主走査方向と直交する方向に所定距離を置いて配置されるとともにメンテナンス装置33とAPG装置31とに動力を伝達する第2被伝達歯車52とを備える。ASFモータ23によって常時回転駆動される動力伝達歯車53が、第1被伝達歯車51と噛合した状態において、第1被伝達歯車51の正転/逆転を切り換えることによって、図示しない遊星歯車機構により、リア給紙装置22を駆動するか、フロント給紙装置25を駆動するかの選択が可能となっている。同様に、動力伝達歯車53が第2被伝達歯車52と噛合した状態において、第2被伝達歯車52の正転/逆転を切り換えることによって、図示しない遊星歯車機構により、メンテナンス装置33(吸引ポンプ36)を駆動するか、APG装置31を駆動するかの選択が可能となっている。
【0042】
切換保持装置40は、キャリッジ14に押されることで切り換え操作される。キャリッジ14が印刷領域(DZ位置を含む)に位置し、動力切換部材55と非係合状態のときには、動力伝達歯車53は第1被伝達歯車51と噛合する第1噛合位置に配置され、キャリッジ14がDZ位置よりも1桁側に位置し、切換保持装置40と係合するときには、動力伝達歯車53は第2被伝達歯車52と噛合する第2噛合位置に配置される。切換保持装置40は、図4及び図5に示す動力切換部材55と、第1拘束部材56と、本体フレーム12と、コイルばね57(図5に示す)と、更に図4に示すレバー部材58とを備えて構成されている。
【0043】
動力切換部材55は、主走査方向に平行な揺動軸55aを中心に揺動可能に設けられ、その上端部には被拘束部55bが一体的に形成されるとともに、その下端部はレバー部材58と連結されている。
【0044】
第1拘束部材56は主走査方向にスライド可能に設けられるとともに、コイルばね57によって80桁側(図5の左方向)に付勢されている。第1拘束部材56は、被拘束部55bと係合可能な拘束部56aと、キャリッジ14の側面における第1キャリッジ係合部14aと係合可能な第1被係合部56dとが一体的に形成されている。
【0045】
レバー部材58は主走査方向に平行な揺動軸58aを中心に揺動可能に設けられており、その揺動軸58aから所定距離離間した場所に、主走査方向に平行な回転軸を中心に回転する動力伝達歯車53が軸支されている。一方、ASFモータ23によって常時回転駆動される太陽歯車59がその回転軸を揺動軸58aと共通にするよう設けられ、且つ動力伝達歯車53と噛合するよう設けられている。従って動力伝達歯車53は遊星歯車として、太陽歯車59の周囲を遊星運動することにより、第1被伝達歯車51と噛合する第1噛合位置と、第2被伝達歯車52と噛合する第2噛合位置との間を変位するようになっている。
【0046】
そして、動力切換部材55の下端部と連結された図4に示すレバー部材58は、動力切換部材55が揺動軸55aを中心に揺動動作すると、これに応じて揺動動作を行い、これによって動力伝達歯車53が遊星運動を行うこととなる。
【0047】
図4及び図5は、動力切換部材55がキャリッジ14と非係合状態にある様子を示している。この状態では、動力切換部材55の被拘束部55bが、第1拘束部材56の拘束部56aと、第2拘束部としての本体フレーム12とによって挟持された状態にあり、動力切換部材55は、動力伝達歯車53が第1被伝達歯車51と噛合する第1噛合位置に保持された状態に拘束される。従って、この状態(キャリッジ14と切換保持装置40との非係合状態)で、動力伝達歯車53が正転方向に駆動されれば、リア給紙装置22が駆動され、逆転方向に駆動されれば、フロント給紙装置25が駆動される。
【0048】
また、図5に示す状態からキャリッジ14が1桁側(図5における右方向)に移動してくると、第1キャリッジ係合部14aが第1被係合部56dを押すことで、第1拘束部材56がキャリッジ14とともに1桁側に移動を開始する。これにより、第1拘束面56bが被拘束部55bから離間して、第1拘束面56bと本体フレーム12とによる被拘束部55bの拘束状態が一時的に解除される。
【0049】
続いて、キャリッジ14が更に1桁側に移動すると、第3拘束部材14bが被拘束部55bの傾斜面55cを押し退けることで、動力切換部材55が揺動動作を開始し、これにより、動力伝達歯車53と第1被伝達歯車51との噛合状態が解除され、さらにその後、動力伝達歯車53が第2被伝達歯車52と噛合する第2噛合位置に変位する。この状態では、第3拘束部材14bと拘束部56aの第2拘束面56cとによって被拘束部55bが挟持された状態となり、動力切換部材55は揺動不能状態に再び拘束された状態に置かれる。従って、この状態では、動力伝達歯車53が正転方向に駆動されれば、メンテナンス装置33の吸引ポンプ36が駆動され、逆転方向に駆動されれば、APG装置31が駆動される。
【0050】
図6は、プリンタ11の電気的構成を示す概略構成図である。プリンタ11は、コントローラ60、インターフェイス(以下、I/P61と記す)、CRモータ16、ASFモータ23、PFモータ27、リニアエンコーダ30、紙検出センサ43、ロータリエンコーダ62、PFモータ駆動回路63、ASFモータ駆動回路64、CRモータ駆動回路65、及びヘッド駆動回路66等を備える。
【0051】
コントローラ60は、I/F61を介してホスト装置90(例えばパーソナルコンピュータ等)から印刷データを受信する。コントローラ60は、バッファ67、主制御部68、シーケンス制御部69を備える。主制御部68は、ホスト装置90からI/F61を介して取り込んだ印刷データ中のコマンドを解釈し、コマンドの指示に従ってシーケンス制御部69に紙送り要求及び印字要求を含む各種要求を行う。主制御部68は、印刷データのうちコマンド以外のラスタデータ(ビットマップデータ)をシーケンス制御部69(詳しくは印字コントロール部72)に送る。
【0052】
シーケンス制御部69は、主制御部68から受け付けた要求に基づき、給紙動作、印字動作・紙送り動作、排紙動作を行わせるべく、予め決められたシーケンスに従ってPFモータ駆動回路63、ASFモータ駆動回路64、CRモータ駆動回路65及びヘッド駆動回路66に駆動信号を出力する。シーケンス制御部69は、各モータ駆動回路63,64を介してASFモータ23及びPFモータ27を駆動制御するモータコントロール部71、ヘッド駆動回路66を介して記録ヘッド17を駆動制御する印字コントロール部72、メンテナンス系の作動時期を管理するフラッシングカウンタ73及びクリーニングタイマ74等を備える。
【0053】
モータコントロール部71は、CRモータ16やPFモータ27の起動及び走行スケジュール(駆動スケジュール)を設定し、キャリッジ14の駆動途中から用紙Pの搬送を開始したり、用紙Pの搬送途中からキャリッジ14の駆動を開始したりして、印字動作と搬送動作とを印刷に影響しない範囲で一部重ね合わせる重ね合わせ制御などを含むモータ駆動制御を行う。また、本実施形態では、一枚の用紙P(先行用紙P1)の印字動作終了時、すなわち最終行の印字動作(インク滴吐出動作)が終了すれば、キャリッジ14が目標停止位置まで移動して停止するのを待つことなく、キャリッジ14が停止するまでの移動途中で、後続用紙P2の給紙を開始する。
【0054】
印字コントロール部72は、印字スケジュールを設定して、記録ヘッド17を駆動制御する。また、印字コントロール部72は、記録ヘッド17からインク滴を噴射(ファイア)する噴射時期などを決めるために必要な各種演算処理、さらにインク滴の噴射を許可する印字領域(図7,図8におけるハッチング領域)を決める処理を行う。
【0055】
モータコントロール部71は、紙送り実行部76、給紙実行部77、給紙条件判定部78、目標位置判定部79、排紙実行部80、キャリッジ制御部(以下、CR制御部81と称す)、空吸引判定部82、キャリッジカウンタ(以下、CRカウンタ83と称す)、紙送り量カウンタ(以下、PFカウンタ84と称す)、及び吸引実行部85とを備えている。
【0056】
紙送り実行部76は、PFモータ駆動回路63を介してPFモータ27を駆動することにより、用紙Pの紙送りを行う。
給紙実行部77は、ASFモータ駆動回路64を介してASFモータ23を駆動することにより、リア給紙装置22及びフロント給紙装置25を選択的に駆動させる。この給紙は、キャリッジ14がDZ位置以上(80桁側)の位置である印刷領域(給送可能領域)内にあるとき、つまり、切換保持装置40において動力伝達歯車53が第1被伝達歯車51と噛合する第1噛合位置にあるときに行われる。
【0057】
給紙条件判定部78は、現在印刷中の用紙の最終行(最終走査)の印刷を終えた際に、そのときの用紙(先行用紙P1)の搬送位置が、後続用紙P2を給紙することが可能な位置、すなわち、先行用紙P1がページ間制御位置に達している(Nx=Ng)という、「給紙条件」を満たすか否かを判断する。給紙条件を満たせば、先行用紙P1と後続用紙P2との間に必要な間隔Lgapを確保できるので、給紙動作を開始しても差し支えない。しかし、給紙条件不成立の場合は、先行用紙の後端が、まだ位置Gに達しておらず、先行用紙P1を位置Gまで排紙した後でないと給紙は開始できない。
【0058】
目標位置判定部79は、現在印刷中の用紙の最終行(最終走査)を印刷するキャリッジ14(つまり記録ヘッド17)の目標停止位置が、DZ位置以上(80桁側)の位置である印刷領域内であるか、印刷領域外(DZ位置よりも1桁側)であるかを判断する。つまり、キャリッジ14の目標停止位置が、切換保持装置40の動力伝達歯車が第1噛合位置に配置される位置か、第2噛合位置に配置される位置であるか否かを判断する。
【0059】
排紙実行部80は、排紙を行う際に起動され、PFモータ駆動回路63を介してPFモータ27を駆動制御することで、印刷を終了した先行用紙P1の排紙処理を実行する。なお、給紙条件判定部78が給紙条件を満たさないと判断したときに、排紙実行部80は起動される。
【0060】
CR制御部81は、印刷時にCRモータ駆動回路65を介してCRモータ16を駆動制御する。CR制御部81によりCRモータ16が駆動されることで、キャリッジ14が主走査方向Xに移動してその移動過程で記録ヘッド17のノズルからインク滴が吐出されることにより用紙への印字が行われる。なお、キャリッジ14のフラッシング時におけるフラッシング位置への移動や、空吸引時や印刷終了時、クリーニング実施時のホーム位置への移動も制御する。
【0061】
空吸引判定部82は、フラッシングカウンタ73の計数値に基づき空吸引を行うべき空吸引実施時期に達したか否かを判断する。ここで、フラッシングカウンタ73は、印刷動作中に主走査方向両端部に位置するホーム位置側のキャップ34内へ、印刷とは関係のないインク滴を吐出してノズル内の増粘したインクを排出してノズル目詰まりを回避するために行われるフラッシングの回数を計数する。なお、反ホーム位置側の貫通孔38内へもフラッシングのためインク滴は吐出されるが、フラッシングカウンタ73は、キャップ34内へインク滴が吐出される際のフラッシングの回数のみを計数する。
【0062】
キャップ34にフラッシングによる廃インクが所定量溜まった段階で、キャップ34内に溜まった廃インクを吸引ポンプ36で吸引して廃液タンク39へ排出する。この所定量溜まったことを、フラッシングカウンタ73が計数するフラッシング回数から判断するようにしており、この判断を空吸引判定部82が行っている。
【0063】
なお、クリーニングタイマ74は、前回のクリーニング実施時からの経過時間を計時しており、この経過時間が所定値に到達すると、記録ヘッド17のクリーニングを行う。クリーニングは、キャリッジ14がホーム位置に配置され、上昇したキャップ34を記録ヘッド17のノズル形成面17aに当接させたキャッピング状態の下、吸引ポンプ36を駆動してキャップ34内に負圧を導入することで行われる。このクリーニングにより、ノズルからインクが強制的に吸引排出され、ノズル内の増粘インクやインク中に含まれる気泡や紙粉等が除去される。
【0064】
吸引実行部85は、空吸引やクリーニングの実施時に、ASFモータ駆動回路64を介してASFモータ23を駆動制御することで、吸引ポンプ36を駆動させる。つまり、空吸引実施時には、空吸引判定部82が空吸引を行うべき時期に達したと判断したときに、CR制御部81によるキャリッジ14のホーム位置への移動のためのCRモータ16の駆動と協働して、吸引実行部85が、キャッピング完了のタイミングでASFモータ23の正転駆動を開始することで、吸引ポンプ36を駆動させる。
【0065】
CRカウンタ83は、キャリッジ駆動時に、リニアエンコーダ30から入力する90度位相のずれた2つのパルス信号ES1,ES2のエッジを計数する。CRカウンタ83は、キャリッジ14がホーム位置から80桁側へ向かって往動するときに計数値をインクリメントし、キャリッジ14がホーム位置(1桁側)へ向かって復動するときに計数値をデクリメントすることで、ホーム位置を原点とするキャリッジ14の移動位置を管理する。
【0066】
PFカウンタ84は、ロータリエンコーダ62から入力するパルス信号ES3,ES4のエッジを計数することで、用紙Pの搬送位置に応じた計数値を管理する。詳しくは、PFカウンタ84は、紙検出センサ43が用紙Pの先端を検知した時にリセットされ、その後、用紙Pの先端がヘッド基準位置H(図2に示す)に達すると、再リセットされる。この再リセット後の計数値は、用紙の先端がヘッド基準位置Hに達したときを原点とする用紙の搬送位置を示す。この計数値は、図2に示すNxに相当し、計数値Nxが値Ng以上であることをもって、先行用紙P1の後端が、位置Gに既に達している給紙条件成立であることを把握できる。なお、ロータリエンコーダ62は、図6に示すように、PFモータ27と動力伝達可能に連結された軸部(例えば紙送りローラ28Aの軸部)の端部に固定された符号板62aと、その符号板62aのスリットを透過した光を受光して90度位相のずれた2つのパルス信号ES3,ES4を出力するセンサ62bとを有する。
【0067】
給紙実行部77は、PFカウンタ84の計数値Nxが、先行用紙P1が位置Gに達したときの値Ngに達すると、ASFモータ23の駆動を停止させ、その後、PFモータ27が、ページ間に開けるべき間隔Lgapに相当する駆動量だけ駆動されると、再びASFモータ23の駆動を開始する。このため、先行用紙P1を搬送しながら、間隔Lgapを後続用紙P2の給紙も徐々に進められる。
【0068】
また、モータコントロール部71は、キャリッジ駆動時に、リニアエンコーダ30から入力するパルス信号ES1,ES2のうち一方のパルスが立ち上がりエッジ検出時に他方のパルスのレベルがハイかロウかを判断することにより、キャリッジ14の移動方向を把握する。また、モータコントロール部71は、パルス信号ES1,ES2のパルス周期を計時してその逆数によりキャリッジ14の移動速度を取得する。
【0069】
図7及び図8は、最終行の印字動作から次の動作に移行する際における、CRモータ16、PFモータ27及びASFモータ23の動作を示すタイミングチャートである。図7は、最終行の印字終了時に用紙が既に給紙条件が成立する搬送位置まで搬送されているときのタイミングチャートであり、図8は、最終行の印刷終了時に用紙がまだ給紙条件が成立する搬送位置に達していないときのタイミングチャートである。
【0070】
図7においてハッチングを施した範囲が、インク滴が吐出されて印字が行われる印字動作の期間(印字領域)を示す。図7に示すように、最終行の印字動作終了時に、給紙条件判定部78が給紙条件成立と判定し、かつ目標位置判定部79がキャリッジ14の目標停止位置が印刷領域(DZ位置を含む)内にあると判定すれば、給紙動作に移行する。つまり、印字動作(インク滴吐出)終了後、キャリッジ14が停止する前に、給紙動作に移行し、PFモータ27とASFモータ23とが駆動される。図7では、PFモータ27の起動に少し遅れてASFモータ23が起動されているが、これは例えば給紙動作開始時に、先行用紙P1の後端が丁度位置G(図2参照)にあるとき(Nx=Ng)など、ページ間の間隔Lgapを確保するための処理の例である。もちろん、給紙動作開始時に既にLgapが確保されている場合(Nx≧Ng+Lgap)は、PFモータ27と同時にASFモータ23が駆動されることになる。
【0071】
このようにキャリッジ14の停止を待たずして給紙動作を開始できるので、給紙動作を早期に開始して印刷スループットの向上に寄与できる。例えばキャリッジ14の停止を待ってその停止位置が印刷領域内であることを確認してから、給紙動作を開始する構成であると、実際にキャリッジ14が停止するまで、給紙動作を開始できない。これに対し、本実施形態では、目標停止位置をみて判断する方法なので、停止前でもその判断ができるため、キャリッジ14の停止前の移動中に給紙動作を開始することが可能となる。
【0072】
なお、給紙条件判定とは、排紙動作を行うことなく、直ちに給紙動作を行ってよいかどうかを判定する処理である。先行用紙P1の後端が位置Gに達していない場合は、まず先行用紙P1をその後端が位置G(Nx=Ng)に達するまで搬送する排紙処理を行う。そして、排紙処理終了後、給紙動作を開始するが、このときページ間の間隔Lgapを確保するために、PFモータ27の起動に遅れてASFモータ23を起動させる。
【0073】
また、目標位置判定とは、たとえ給紙条件が成立したとしても、キャリッジ14の目標停止位置がDZ位置よりも1桁側にあって、切換保持装置40がASFモータ23の動力伝達先をAPG装置31及び吸引ポンプ36を選択する第2切換位置にあるときは、ASFモータ23を駆動しても給紙装置22又は25を駆動させることができない。このため、目標停止位置が、切換保持装置40を給紙装置へ動力を伝達可能な第1切換位置に配置しうる印刷領域内にあるかどうかについても判定している。
【0074】
また、図8に示すように、印字動作が終了し、給紙条件が成立するか否かを判定しても、先行用紙P1の後端が位置G(Nx=Ng)に達しておらず、印刷条件不成立の場合は、まず先行用紙P1の後端が位置Gに達するまで先行用紙P1を搬送(排紙)する必要がある。そのため排紙動作に移行し、PFモータ27が起動されることで、先行用紙P1の後端が位置G(Nx=Ng)に達するまで先行用紙P1の排紙が行われる。そして、先行用紙P1の後端が位置Gに達した後、原則、給紙動作に移行し、ページ間の間隔Lgapを確保するためにPFモータ27の起動に少し遅れてASFモータ23が起動される。
【0075】
本実施形態では、フラッシングカウンタ73が計数する前回の空吸引実施時からのフラッシング回数が所定回数に達すると、排紙動作のときに定期空吸引を行うようにしている。排紙動作に移行すると、空吸引判定部82が、フラッシングカウンタ73の計数値から把握される前回の定期空吸引時から実施されたフラッシング回数に基づき定期空吸引を行うべきかどうかを判断する。なお、フラッシングは、印刷中において例えば5秒〜1分の範囲内の所定時間毎に実行され、キャップ34へのフラッシングが実行される度にフラッシングカウンタ73はインクリメントされる。また、給紙条件と目標位置条件が共に成立し、かつフラッシング実施時期に達したときは、キャリッジ14は印刷領域内の目標停止位置で停止した後、移動方向を反転させ、80桁側の貫通孔38と対応する位置まで移動し、貫通孔38に対してフラッシングを行うようにしている。
【0076】
図8の例では、キャリッジ14が目標停止位置(例えば印刷領域内の位置など、ホーム位置の手前)にて停止後、CRモータ16を再起動してキャリッジ14をホーム位置へ移動させる。キャリッジ14がDZ位置を過ぎた辺りで動力切換部材55を押し込み操作することで、切換保持装置40が第2切換位置に切り換わる。この状態で、吸引実行部85がASFモータ23を正転駆動させると、吸引ポンプ36が駆動されて、キャップ34内に及んだ負圧によりキャップ34内に溜まった廃インクが吸引ポンプ36を介して廃液タンク39へ排出される。フラッシングカウンタ73はこの定期空吸引の終了後にリセットされる。この例のように定期空吸引が行われるときは、先行用紙P1の後端が位置Gに達して排紙が終わるか、吸引ポンプ36が駆動停止するかのどちらか遅い方までが排紙動作期間となる。
【0077】
こうして排紙動作が終わると(この例では吸引ポンプ36の駆動が停止すると)、給紙動作に移行する。給紙動作に移行すると、まず目標位置判定部79が目標停止位置を判定する。定期空吸引終了直後は、キャリッジ14はホーム位置にある。このような停止中の場合は、前回移動したときの目標停止位置、すなわち現在位置が目標停止位置になる。目標位置判定において、目標停止位置(ホーム位置)が、DZ位置より1桁側であると判定された場合、PFモータ27を駆動してキャリッジ14を切換保持装置40を第1切換位置へ切換可能なDZ位置へ移動させる。キャリッジ14がホーム位置を離れてDZ位置へ至る途中で、キャリッジ14による動力切換部材55への押し込み操作が解除され、コイルばね57の復元力によって切換保持装置40は第1切換位置に切り換わる。そして、キャリッジ14がDZ位置に到達すると、切換保持装置40が第1切換位置にある状態の下、ASFモータ23とPFモータ27とが共に駆動され、先行用紙P1の排出と後続用紙P2の給紙が行われる。
【0078】
なお、図8の例では、排紙動作に移行したときに開始された先行用紙P1の排紙は、その排紙が完了していないときには、給紙動作に移行しても、キャリッジ14がDZ位置に到達するまでは継続させている。これに対し、給紙動作の開始(ポンプ駆動停止)に合わせてPFモータ27の駆動を一旦停止させ、給紙動作開始時にPFモータ27が再駆動されて残りの排紙が行われるようにしてもよい。
【0079】
また、先行用紙P1が排紙された後、給紙された後続用紙P2の頭出し(印刷開始位置への搬送)のため、引き続きPFモータ27は駆動される。なお、図8では、キャリッジ14がDZ位置へ到達した段階で、先行用紙P1の後端が位置Gに達してPFモータ27の駆動を停止させた例であり、この場合は、ページ間の間隔Lgapが既に確保されているので、PFモータ27とASFモータ23は同時に駆動開始されている。
【0080】
図9は、シーケンス制御部69が主制御部68の指示に基づいて実行する印刷処理のフローチャートを示す。以下、印刷処理について図9に従って説明する。
例えばホスト装置90から印刷データを受信すると、主制御部68はその印刷データに基づきシーケンス制御部69に対して印刷処理を開始する旨の指示を出す。シーケンス制御部69は、まず最初の用紙Pを給紙する給紙動作を実行する(S10)。すなわち、給紙実行部77がASFモータ23を駆動させて給紙装置22,25のうち選択されている一方から給紙する。
【0081】
次にPFモータ27を駆動し、給紙された用紙Pを紙送りする(S20)。給紙後最初の紙送りは、用紙Pの頭出しであり、紙検出センサ43が用紙Pの先端を検出した位置から頭出し量に応じた計数値をPFカウンタ84が計数し終えると、PFモータ27の駆動を停止する。
【0082】
ステップS40では、1ページ分の印刷が全て完了したか否かを判断し、まだ印刷すべき行が残っていればS20に戻り、S20の紙送りと、S30の印刷とを繰り返し、1行ずつ印刷を進める。
【0083】
そして、1ページの印刷を完了すると(S40で肯定判定)、次のステップS50において、給紙条件成立か否かを判定する。給紙条件不成立のときは排紙処理に移行し(ステップS60)、給紙条件成立時は給紙処理に移行する(ステップS100)。
【0084】
排紙処理に移行した場合は、PFモータ27を駆動させて先行用紙P1の排紙を行う(S60)。そして、次のステップS70において、定期空吸引を行うべきか否かを判断する。すなわち、フラッシングカウンタ73の計数値に基づき前回の空吸引実施時からのフラッシング回数が所定回数以上の場合に空吸引判定部82が定期空吸引を行うべきと判定する。このステップS70で肯定判定の場合、CR制御部81がCRモータ16を駆動させ、キャリッジ14をホーム位置へ移動させる。一方、否定判定の場合は、給紙処理へ移行する(S100)。
【0085】
ホーム位置へ移動するキャリッジ14はDZ位置を過ぎた辺りで切換保持装置40の動力切換部材55を押し込んでこれを第1切換位置に切り換える。キャリッジ14のホーム位置への移動後、空吸引動作が行われる(S90)。つまり、ASFモータ23を正転駆動することで、吸引ポンプ36が駆動し、キャップ34内の廃インクが吸引除去される。定期空吸引が終わると、給紙処理に移行する。
【0086】
ステップS100の給紙処理では、給紙実行部77が図10に示す給紙処理ルーチンを実行する。まずステップS210において、キャリッジ14の目標停止位置がDZ位置より1桁側であるか否かを判断する。DZ位置より1桁側であれば、ステップS220に進んで、キャリッジ14をDZ位置まで駆動させる。この処理は、図8において、定期空吸引後に給紙動作に移行して、キャリッジ14をホーム位置からDZ位置へ移動させる処理に相当する。一方、目標停止位置がDZ位置より1桁側ではない場合、つまり印刷領域内にある場合は、ステップS230に進んで、ASFモータ23を駆動させて用紙Pを給紙するとともに、PFモータ27を駆動させて用紙Pを搬送する。この場合、先行用紙P1がまだ排紙されず残っていれば、PFモータ27の駆動により、後続用紙P2の給紙動作と共に先行用紙P1が排紙される。先行用紙P1が既に残っていない場合は、ASFモータ23の駆動により給紙された後続用紙P2が、PFモータ27の駆動により紙送りローラ28にニップされて搬送され、頭出しされる。
【0087】
以上、詳述したように第一実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)最終行の印字動作が終了すると(1ページの印刷終了時)、給紙条件が成立するか否かを判断して、給紙条件が成立していれば、直ちに給紙を開始するので、キャリッジ14が停止する前に後続用紙P2の給紙を開始することができる。
【0088】
(2)給紙条件が成立すると、キャリッジ14の目標停止位置を調べ、目標停止位置が印刷領域(≧DZ)内、すなわち切換保持装置40がASFモータ23の動力伝達先を給紙装置22,25とする切換え位置に配置されるキャリッジ位置にあれば、ASFモータ23を駆動させたときにキャリッジ停止後も継続して給紙可能と判定できる。このため、キャリッジ停止時に切換保持装置40が第1切換位置(給紙位置)に切り換えられると判定できたときに限り、キャリッジ停止前に事前に給紙動作を開始することができる。
【0089】
(3)給紙条件成立の判定と、目標停止位置の判定とにより、両方が成り立つ場合に給紙動作を実行する。よって、給紙可能なときを適切に判定して、キャリッジ停止前に事前に給紙動作を開始させることができる。
【0090】
(4)排紙動作の過程で空吸引を終了した後、停止中のキャリッジ14の目標停止位置(つまり前回移動した際の目標停止位置である現在位置)を調べ、その目標停止位置(現在位置)がホーム位置であることをもって、キャリッジ14をホーム位置からDZ位置へ移動させる。よって、空吸引後に次の給紙処理を行う位置であるDZ位置への移動も、目標停止位置の確認により行うことができる。
【0091】
(5)また、切換保持装置40は、キャリッジ14が動力切換部材55を操作しない位置(つまり印刷領域内の位置)にあるときに、コイルばね57の付勢により給紙装置22,25と動力伝達可能な第1切換位置(給紙位置)に切り換えられた状態にある。よって、キャリッジ14が最終行の記録のための移動を停止する位置が印刷領域内であれば、キャリッジ14が停止するまで待つことなく、事前に給紙動作を開始できる。
【0092】
(6)空吸引を排紙動作中に限り実施する構成としたので、例えば、最終行の印字動作
終了後直ちに給紙を開始できるときには、空吸引よりも給紙動作を優先させるため、印刷スループットを向上できる。例えばフラッシングカウンタ73の計数値が所定回数以上という空吸引実施条件が成立した場合に、必ず空吸引を実施する構成とすると、空吸引動作の所要時間分遅れて給紙動作が開始され、印刷スループットが低下することになるが、本実施形態によれば、このような空吸引実施条件成立時における給紙動作の開始遅れを回避できる。
【0093】
(第二実施形態)
図11に示すタイミングチャートに従って説明する。前記第一実施形態では、最終行の印字動作終了後におけるキャリッジ14の停止位置が印刷領域内であったが、この第二実施形態では、最終行印字後に次に定期空吸引を行うべきときであれば、最終行の印字動作時におけるキャリッジ14の目標停止位置をホーム位置に設定する例である。よって、最終行の印字動作終了後は、そのままキャリッジ14がホーム位置まで移動して停止する構成となっている。
【0094】
図11に示すように、最終行の印字動作が終了すると、給紙条件判定を行い、給紙条件が成立すれば、次に目標位置判定を行う。目標停止位置がホーム位置(すなわち切換保持装置40がASFモータ23の動力伝達先を給紙装置22,25を選択しない第2切換位置に配置されうるキャリッジ位置)に設定されているので、仮に給紙条件が成立しても、排紙処理に移行する。なお、給紙条件が成立し、かつ目標停止位置が印刷領域内であると判定した場合は、給紙動作に移行する。
【0095】
この第2実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(7)定期空吸引を行うときには、最終行の印字動作時の目標停止位置をホーム位置としているので、最終行の印字動作終了後、途中で止まることなく、キャリッジ14を空吸引を行うべきホーム位置HPまで移動させることができる。このため、空吸引を早期に開始できる。例えば先行用紙P1の排紙よりも空吸引の方が遅く終了する場合でも、空吸引が早期に開始された分、早く終了するので、その分、後続用紙P2の給紙を早期に開始できる。
【0096】
(8)最終行の印字動作終了後に、キャリッジ14の目標停止位置を調べて、目標停止位置に到達する前に、排紙動作とすべきか給紙動作とすべきかを判定することができる。よって、最終行の印字動作終了後、目標停止位置から給紙動作をすべきと判定されれば、キャリッジ14が停止する前に事前に給紙動作を開始できる。この結果、キャリッジ14の停止を待って確認した停止位置が給紙可能な位置であるかどうかを判断してから給紙動作を開始する構成に比べ、給紙動作を早期に開始することができる。
【0097】
なお、実施形態は、上記に限定されるものではなく、以下のように変更してもよい。
(変形例1)前記第一実施形態では、給紙条件判定を行った後、給紙条件成立時のみ目標位置判定を行ったが、目標位置判定を先に行い、目標位置条件成立時のみ給紙条件判定を行う構成も採用できる。
【0098】
(変形例2)切換手段としての切換保持装置40は、必須ではない。例えば、メンテナンス装置33が、給紙装置のASFモータ23(動力源)と別個の電動モータ(動力源)で駆動される構成も採用できる。この構成であっても、給紙条件及び目標位置条件が共に成立したときに、早期に給紙できる。しかも、前記各条件の一方でも不成立の場合は、排紙を行うべきとき、かつ時期管理手段による実施時期に達しているときに、空吸引を実施できる。よって、前記第一及び第二実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0099】
(変形例3)給紙条件が成立したときにも、空吸引実施時期であれば、給紙よりも空吸引を優先させる構成も採用できる。この場合、給紙条件が成立しても、空吸引判定部82が空吸引実施時期に達したと判定した場合は、CR制御部81はキャリッジ14をホーム位置へ移動させるようにCRモータ16を駆動する。
【0100】
(変形例4)前記各実施形態及び変形例2、3において、空吸引に替えて、フラッシングを実施してもよい。この構成によれば、給紙条件成立かつ目標位置条件成立時に、印字動作終了後直ちに給紙動作を開始でき、前記各条件の少なくとも一方が不成立で排紙を行う必要があるときには、ホーム位置でキャップ34内にインク滴を吐出するフラッシングを行うことができる。
【0101】
(変形例5)前記実施形態では、切換保持装置(切換手段)によって、動力源の動力伝達先を、2つの給紙装置、メンテナンス装置(吸引ポンプ)、プラテンギャップ調整装置(APG装置)の中から選択切り換えできる構成であり、他の手段として、メンテナンス装置と、APG装置の2つの手段を含む構成であるが、このうち一方のみでもよい。その一方の他の手段がメンテナンス装置であれば、前記実施形態と同様の効果が得られる。またその一方の他の手段がAPG装置であれば、先行用紙から後続用紙へのページ切り換え時に、紙厚が変更されないときは、目標停止位置を記録領域内に設定し、紙厚が変更されるときには、目標停止位置をホーム位置に設定する。そして、キャリッジ14がホーム位置に停止した後、ASFモータ23を逆転駆動させてプラテンギャップを調整する。
【0102】
(変形例6)写真印刷や縁無し印刷などのように、1ページの印刷終了時(最終行の印字動作終了時)に、必ず給紙条件が成立する前提の印刷処理(記録処理)においては、あえて給紙条件を判定することなく、目標位置判定のみ実施しても構わない。
【0103】
(変形例7)給紙条件判定や目標位置判定は、最終行の印字終了後に実施することに限定されない。判定後に開始すべき給紙動作が、最終行の印字動作終了後かつキャリッジ停止前に実施できるタイミングであればよい。例えば、判定のタイミングは、最終行の印字開始前、最終行の印字中、最終行の印字終了後におけるキャリッジの減速中でもよい。
【0104】
(変形例8)シリアル式記録装置は、インクジェット式プリンタに限定されない。ドットインパクトプリンタや、熱転写式プリンタにも採用できる。
(変形例9)流体噴射方式のシリアル式記録装置は、インクジェット式プリンタに限定されない。インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体、流体として流して噴射できる固体(例えばトナー等を含む粉粒体)を含む)を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、さらに光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。なお、これらの各装置のように、噴射した流体を基板等の記録媒体上に着弾させて形成した所定パターン(配線パターン、電極パターン、画素パターン、エッチングパターン、配列パターンを含む)を描く記録も、本明細書では記録装置の記録に含まれる。なお、「流体」とは、気体のみからなる流体を含まない概念であり、例えば液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、粉粒体、流状体などが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】第一実施形態におけるプリンタの概略構成を示す斜視図。
【図2】搬送系を示す模式側面図。
【図3】プリンタの模式平面図。
【図4】切換保持装置の側面図。
【図5】切換保持装置の平面図。
【図6】プリンタの電気的構成を示すブロック図。
【図7】印字動作後に給紙動作を行う際の制御タイミングチャート。
【図8】印字動作後に排紙動作を行う際の制御タイミングチャート。
【図9】印刷処理を示すフローチャート。
【図10】給紙処理を示すフローチャート。
【図11】第二実施形態において印字動作後に排紙動作を行う際の制御タイミングチャート。
【符号の説明】
【0106】
11…シリアル式の記録装置としてのプリンタ、13…ガイド軸、14…記録手段を構成するキャリッジ、15…移動手段を構成するタイミングベルト、16…移動手段を構成するCRモータ、17…記録手段を構成する記録ヘッド、22…給送手段を構成するリア給紙装置、23…動力源としてのASFモータ、25…給送手段を構成するフロント給紙装置、27…搬送手段を構成するPFモータ、28…搬送手段を構成する紙送りローラ、29…搬送手段を構成する排紙ローラ、30…リニアエンコーダ、31…APG装置、33…メンテナンス手段としてのメンテナンス装置、34…廃液受容手段としてのキャップ、36…吸引ポンプ、40…切換手段としての切換保持装置、60…コントローラ、62…ロータリエンコーダ、63…PFモータ駆動回路、64…ASFモータ駆動回路、65…CRモータ駆動回路、66…ヘッド駆動回路、68…制御手段を構成する主制御部、69…制御手段を構成するシーケンス制御部、71…モータコントロール部、72…印字コントロール部、73…時期管理手段としてのフラッシングカウンタ、74…クリーニングタイマ、76…制御手段を構成する紙送り実行部、77…制御手段を構成する給紙実行部、78…給送条件判定手段としての給紙条件判定部、79…目標位置判定手段としての目標位置判定部、80…制御手段を構成する排紙実行部、81…制御手段を構成するCR制御部、82…空吸引判定部、83…CRカウンタ、84…PFカウンタ、85…吸引実行部、P…記録媒体としての用紙、P1…先行する記録媒体としての先行用紙、P2…後続の記録媒体としての後続用紙。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を給送する給送手段と、
給送された記録媒体に記録を施す記録手段と、
記録を行わせるために前記記録手段を移動させる移動手段と、
記録媒体を前記記録手段の移動方向と交差する方向に搬送する搬送手段と、
前記記録手段、前記移動手段、前記搬送手段及び前記給送手段を制御する制御手段と、
前記記録媒体に対する最終行の記録を行うために移動する前記記録手段の目標停止位置が、後続の記録媒体の給送が可能な給送可能領域にある目標位置条件を満たすか否かを判定する目標位置判定手段とを備え、
前記制御手段は、前記目標停止位置が前記給送可能領域にあれば、前記記録手段が最終行の記録を終えた後かつ当該最終行の記録のための移動を停止する前に、前記給送手段による後続媒体の給送動作を開始させることを特徴とするシリアル式記録装置。
【請求項2】
前記記録手段が前記最終行の記録を施すときの前記記録媒体の搬送位置が、当該記録媒体を排出しなくても後続の記録媒体の給送が可能な領域にある給送条件を満たすか否かを判定する給送条件判定手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記目標位置条件と前記給送条件の両方を満たしたときに、前記記録手段が最終行の記録を終えた後かつ当該最終行の記録のための移動を停止する前に、前記給送手段による後続媒体の給送動作を開始させることを特徴とする請求項1に記載のシリアル式記録装置。
【請求項3】
前記給送手段の動力源は、当該給送手段と他の手段との間で共有され、
前記記録手段の移動位置に応じて接続が切り換えられるとともに前記給送手段と前記他の手段との間で前記動力源の動力伝達先を切り換える切換手段をさらに備え、
前記目標位置判定手段は、前記記録手段の目標停止位置が、前記動力源の動力伝達先として前記給送手段を選択する前記切換手段の切換位置であることをもって前記目標位置条件を満たすとすることを特徴とする請求項2に記載のシリアル式記録装置。
【請求項4】
前記切換手段は、前記記録手段が記録を行うときの移動範囲である記録領域内にあるうちは、前記動力源の動力伝達先として前記給送手段を選択する前記切換位置に配置されるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載のシリアル式記録装置。
【請求項5】
前記他の手段は、前記記録手段をメンテナンスするメンテナンス手段を少なくとも含み、
前記メンテナンス手段は、前記記録手段のノズルから吐出される液体を受け止める廃液受容手段を備え、
前記制御手段は、前記記録手段の最終行記録終了後における移動過程で前記給送動作を開始させないときは、前記記録手段を目標停止位置まで移動させて、前記記録手段から前記廃液受容手段へ廃液を吐出するフラッシング、又は、前記廃液受容手段に溜まった廃液を吸引除去する空吸引を実施させることを特徴とする請求項3又は4に記載のシリアル式記録装置。
【請求項6】
前記フラッシング又は前記空吸引を実施する実施時期を管理する時期管理手段を更に備え、
前記制御手段は、前記記録手段の最終行記録終了後における移動過程で前記給送動作を開始させないとき、前記実施時期に達していれば、前記記録手段を前記目標停止位置まで移動させて、前記フラッシング又は前記空吸引を実施させることを特徴とする請求項5に記載のシリアル式記録装置。
【請求項7】
前記切換手段は、前記記録手段が前記目標位置条件を満たさないときの目標停止位置に配置された際、前記動力源の動力伝達先として前記メンテナンス手段を選択するように構成され、
前記制御手段は、前記記録手段の最終行記録終了後における移動過程で前記給送動作を開始させないときは、前記記録手段を目標停止位置まで移動させた後、前記動力源を駆動させて前記メンテナンス手段を駆動させることで前記空吸引を実施することを特徴とする請求項5又は6に記載のシリアル式記録装置。
【請求項8】
先行する記録媒体の記録手段による記録が終了すると、後続の記録媒体の給送を行う記録媒体の給送方法であって、
前記先行する記録媒体に対する最終行の記録を行うために移動する前記記録手段の目標停止位置が、後続の記録媒体の給送が可能な給送可能領域にある目標位置条件を満たすか否かを判定する目標位置判定ステップと、
前記目標位置条件を満たせば、前記記録手段が最終行の記録を終えた後かつ当該最終行の記録のための移動を停止する前に、給送手段による後続の記録媒体の給送動作を開始させる給送開始ステップと、
前記目標位置条件を満たさなければ、前記記録手段による最終行の記録を終了した後に前記先行する記録媒体の排出処理を前記後続の記録媒体の給送よりも先に行う媒体排出ステップと
を備えたことを特徴とする記録媒体の給送方法。
【請求項1】
記録媒体を給送する給送手段と、
給送された記録媒体に記録を施す記録手段と、
記録を行わせるために前記記録手段を移動させる移動手段と、
記録媒体を前記記録手段の移動方向と交差する方向に搬送する搬送手段と、
前記記録手段、前記移動手段、前記搬送手段及び前記給送手段を制御する制御手段と、
前記記録媒体に対する最終行の記録を行うために移動する前記記録手段の目標停止位置が、後続の記録媒体の給送が可能な給送可能領域にある目標位置条件を満たすか否かを判定する目標位置判定手段とを備え、
前記制御手段は、前記目標停止位置が前記給送可能領域にあれば、前記記録手段が最終行の記録を終えた後かつ当該最終行の記録のための移動を停止する前に、前記給送手段による後続媒体の給送動作を開始させることを特徴とするシリアル式記録装置。
【請求項2】
前記記録手段が前記最終行の記録を施すときの前記記録媒体の搬送位置が、当該記録媒体を排出しなくても後続の記録媒体の給送が可能な領域にある給送条件を満たすか否かを判定する給送条件判定手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記目標位置条件と前記給送条件の両方を満たしたときに、前記記録手段が最終行の記録を終えた後かつ当該最終行の記録のための移動を停止する前に、前記給送手段による後続媒体の給送動作を開始させることを特徴とする請求項1に記載のシリアル式記録装置。
【請求項3】
前記給送手段の動力源は、当該給送手段と他の手段との間で共有され、
前記記録手段の移動位置に応じて接続が切り換えられるとともに前記給送手段と前記他の手段との間で前記動力源の動力伝達先を切り換える切換手段をさらに備え、
前記目標位置判定手段は、前記記録手段の目標停止位置が、前記動力源の動力伝達先として前記給送手段を選択する前記切換手段の切換位置であることをもって前記目標位置条件を満たすとすることを特徴とする請求項2に記載のシリアル式記録装置。
【請求項4】
前記切換手段は、前記記録手段が記録を行うときの移動範囲である記録領域内にあるうちは、前記動力源の動力伝達先として前記給送手段を選択する前記切換位置に配置されるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載のシリアル式記録装置。
【請求項5】
前記他の手段は、前記記録手段をメンテナンスするメンテナンス手段を少なくとも含み、
前記メンテナンス手段は、前記記録手段のノズルから吐出される液体を受け止める廃液受容手段を備え、
前記制御手段は、前記記録手段の最終行記録終了後における移動過程で前記給送動作を開始させないときは、前記記録手段を目標停止位置まで移動させて、前記記録手段から前記廃液受容手段へ廃液を吐出するフラッシング、又は、前記廃液受容手段に溜まった廃液を吸引除去する空吸引を実施させることを特徴とする請求項3又は4に記載のシリアル式記録装置。
【請求項6】
前記フラッシング又は前記空吸引を実施する実施時期を管理する時期管理手段を更に備え、
前記制御手段は、前記記録手段の最終行記録終了後における移動過程で前記給送動作を開始させないとき、前記実施時期に達していれば、前記記録手段を前記目標停止位置まで移動させて、前記フラッシング又は前記空吸引を実施させることを特徴とする請求項5に記載のシリアル式記録装置。
【請求項7】
前記切換手段は、前記記録手段が前記目標位置条件を満たさないときの目標停止位置に配置された際、前記動力源の動力伝達先として前記メンテナンス手段を選択するように構成され、
前記制御手段は、前記記録手段の最終行記録終了後における移動過程で前記給送動作を開始させないときは、前記記録手段を目標停止位置まで移動させた後、前記動力源を駆動させて前記メンテナンス手段を駆動させることで前記空吸引を実施することを特徴とする請求項5又は6に記載のシリアル式記録装置。
【請求項8】
先行する記録媒体の記録手段による記録が終了すると、後続の記録媒体の給送を行う記録媒体の給送方法であって、
前記先行する記録媒体に対する最終行の記録を行うために移動する前記記録手段の目標停止位置が、後続の記録媒体の給送が可能な給送可能領域にある目標位置条件を満たすか否かを判定する目標位置判定ステップと、
前記目標位置条件を満たせば、前記記録手段が最終行の記録を終えた後かつ当該最終行の記録のための移動を停止する前に、給送手段による後続の記録媒体の給送動作を開始させる給送開始ステップと、
前記目標位置条件を満たさなければ、前記記録手段による最終行の記録を終了した後に前記先行する記録媒体の排出処理を前記後続の記録媒体の給送よりも先に行う媒体排出ステップと
を備えたことを特徴とする記録媒体の給送方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−56728(P2009−56728A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226713(P2007−226713)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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