説明

シリコンと電極のオーミック・コンタクト形成方法と、シリコンのライフタイム測定方法とライフタイム測定ヘッド

【課題】電極とシリコンとのオーミック・コンタクトを容易に得ることができ、その電極を使用してシリコンのライフタイム測定ができ、その測定に利用できる測定ヘッドを提供する。
【解決手段】測定対象であるシリコン1に電極2A,2Bを押し当てて回転させ、シリコン1と電極2A,2Bとの接触部にオーミック・コンタクトを形成し、シリコン1にパルス光を照射し、その照射により発生する過剰キャリアにより変化する電気伝導度の時間的な変化量を測定して少数キャリアの再結合ライフタイムを測定する。電極2A,2Bをシリコン1に押し付けるシリンダと、電極2A,2Bを回転させるモータと、当該電極と電気的に導通するプローブと、シリコン1に励起エネルギーを出射する光照射部を備え、電極を押し具でシリコン1に押し付けながらモータで回転させて、電極2A,2Bとシリコン1とのオーミック・コンタクトを得られるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料、例えば、シリコン単結晶中の少数キャリアのバルク再結合ライフタイムを、直流回路を用いた光導電減衰法(以下「直流光導電減衰法」という。)により測定するためのオーミック・コンタクト形成方法と、シリコンのライフタイム測定方法と、そのライフタイム測定に用いるライフタイム測定ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶に励起エネルギーを照射する(パルス光を照射する)と過剰キャリアが発生する。過剰キャリアはシリコン単結晶の物理的特性によって決まるライフタイム後に再結合して消滅する。シリコン単結晶中の少数キャリアの再結合ライフタイムは、シリコン単結晶中の金属不純物や結晶欠陥によって低下する(少数キャリアの再結合が速くなってライフタイムが短くなる。)ため、再結合ライフタイムを測定することによりシリコン単結晶の品質を評価することができる。
【0003】
シリコン単結晶の品質評価方法として、直流光導電減衰法によるライフタイム測定方法がある。シリコン単結晶に過剰キャリアが発生するとシリコン単結晶の導電率が増加する。シリコン単結晶にオーミック・コンタクト電極を形成してその電極に直流回路から直流電圧を印加すると、過剰キャリアが発生しその密度に応じて電気伝導度が変化する。直流光導電減衰法はオーミック・コンタクト電極間の前記電気伝導度の時間変化からライフタイムを測定する方法である。
【0004】
シリコン単結晶の直流光導電減衰法によるライフタイム測定方法については、米国材料試験協会(ASTM:American Society for Testing and Materials)のASTM F28、ドイツ規格協会(DIN:Deutsches Institut fur Normung)のDIN50440、日本工業規格のJIS H 0604(シリコン単結晶の光導電減衰法)に規定されている。
【0005】
直流光導電減衰法によりライフタイムを高精度で高安定に測定するためには、試料(シリコン)と測定回路の電極との良好な接触(オーミック・コンタクト)が重要である。しかし、実際はシリコン表面に薄い酸化膜があったり、準位があったりしてバリアの高さが決まってしまう等の理由から、単に、シリコン単結晶に電極を接触させるだけではオーミック・コンタクトは得られない。そこで、前記ASTM F28、DIN50440及びJIS H 0604では、予めシリコンに次の方法により電極を形成して、オーミック・コンタクトを得て測定することを規定している。
【0006】
ASTM F28、DIN50440では、シリコンを35℃に暖め、ガリウムを擦り込んでなじませる。JIS H 0604ではインジウムを約400℃の半田ゴテを使用し擦り込んでなじませる。
【0007】
しかし、予め、試料にガリウム、インジウムなどの電極付けを行う作業は、相応の時間と工数を必要とするため測定の迅速化、自動化の面から課題がある。
【0008】
ライフタイム測定方法に関する発明として特許文献1、2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−302240号公報
【特許文献2】特開2010−192809号公報
【0010】
特許文献1はライフタイム測定方法ではあるが、パッシベーション時間の違いにより影響されずに安定的に再結合ライフタイムを測定できるようにした方法であり、特許文献2はヨウ素エタノール法による前処理方法に関する方法であり、いずれもオーミック・コンタクトの改善に関するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ガリウム、インジウムなどを使用することなく電極とシリコンのオーミック・コンタクトを得る方法と、直流光導電減衰法によるシリコンのライフタイム測定方法と、その測定に使用できる測定ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(シリコンと電極のオーミック・コンタクト形成方法)
本発明の一つは、シリコンと電極のオーミック・コンタクト形成方法であり、測定対象であるシリコンに電極を押し付け、その電極とシリコンのいずれか一方又は双方を回転させて、回転による摩擦でシリコンの表面を荒すと共に電極とシリコンとの間の界面状態を物理的に変化させて合金層とシリサイド層のいずれか一方又は双方を形成することにより、当該電極とシリコンとのオーミック・コンタクトを得る方法である。
【0013】
(シリコンのライフタイム測定方法)
本発明のシリコンのライフタイム測定方法は、シリコンに押し付けながら回転させてシリコンとオーミック・コンタクトさせた二つの電極に直流電圧を印加してシリコンに直流電流を流し、二つの電極間のシリコンにパルス光を照射し、当該パルス光の照射によりシリコン内に発生した過剰キャリアにより変化するシリコンの電気伝導度の時間的な変化量を測定することにより、シリコンの少数キャリアの再結合ライフタイムを測定方法である。
【0014】
本発明では、前記シリコンの少数キャリアの再結合ライフタイム測定後に、ライフタイム測定に使用した電極をシリコンの別の箇所に押し付け、その電極を回転させることにより、その電極とシリコンの新たなに箇所にオーミック・コンタクトを得、その電極に直流電圧を印加して、シリコンの新たな箇所の少数キャリアの再結合ライフタイムを測定することができる。
【0015】
(シリコンのライフタイム測定ヘッド)
本発明のシリコンのライフタイム測定ヘッドは、電極を挟着保持可能な電極チャックと、電極チャックを回転させる回転駆動体と、シリコン側への前記電極チャック及び回転駆動体の往復移動をガイドするリニアガイドと、電極チャックに挟着保持されている電極及び回転駆動体が前記ガイドに案内されて往復移動し、前記電極を前進時にシリコンに押し付け、後退時にシリコンから引き離す押し付け具と、電極チャックと導通するコンタクトプローブと、前記シリコンにパルス光を照射する光照射部を備え、前記押し付け具により電極をシリコンに押し付け、当該押し付け状態で回転駆動体により電極を回転させることによって電極とシリコンとのオーミック・コンタクトを得ることができ、その電極に直流電圧を印加するとシリコンに直流電流を流すことができ、光照射部から電極間のシリコンにパルス光を照射してシリコン内に過剰キャリアを発生させることができ、過剰キャリアの発生により生ずるシリコンの電気伝導度の時間的な変化量を測定することにより、シリコンの少数キャリアの再結合ライフタイムを測定可能としたものである。
【0016】
前記ライフタイム測定ヘッドは、電極チャックと押し付け具と、回転駆動体が二セット設けられ、二セットの電極チャックは互いに間隔をあけて配置されて、別々に往復移動、回転可能としてある。
【発明の効果】
【0017】
本発明のシリコンと電極のオーミック・コンタクト形成方法は、ガリウム、インジウムなどを使用する必要がないため、オーミック・コンタクトの迅速な形成が可能であり、シリコンのライフタイム測定に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0018】
本発明のシリコンのライフタイム測定方法によれば、一つのシリコンの切断面の多点に電極を押し付け直して新たなオーミック・コンタクトを得て、一つのシリコンの多点を測定することができる。
【0019】
本発明のシリコンのライフタイム測定ヘッドを使用すれば、シリコンとオーミック・コンタクトした二つの電極を使用して電極の回転、シリコンへの電極の押し付けを容易且つ確実に行うことができ、シリコンのライフタイム測定を手軽に且つ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のシリコンと電極のオーミック・コンタクト形成方法説明図。
【図2】本発明のシリコンのライフタイム測定原理図。
【図3】(a)はシリコンのライフタイム測定時の指数関数的減衰曲線図、(b)は片対数に変換した減衰曲線図。
【図4】本発明のライフタイム測定ヘッドの一例を示す前面側斜視図。
【図5】(a)は図4のライフタイム測定ヘッドの背面側斜視図、(b)は同ヘッドの底面側斜視図。
【図6】(a)は図4のライフタイム測定ヘッドの正面側斜視図、(b)は同ヘッドの底面側斜視図。
【図7】本発明のシリコンのライフタイム測定構成図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[シリコンと電極のオーミック・コンタクト形成方法の実施形態]
本発明のシリコンと電極のオーミック・コンタクト形成方法の実施形態の一例を図面に基づいて説明する。図1、図2は試料1がシリコン単結晶のシリコンインゴットの場合である。図1に示すオーミック・コンタクト形成方法は、棒状又はパイプ状の二本の電極2A、2Bを、測定対象であるシリコンインゴット1の端面に押し付けながら回転させ、電極2A、2Bとシリコンインゴット1との接触部分に合金層又はシリサイド層を形成して、シリコンインゴット1と電極2A、2Bをオーミック・コンタクトする方法である。
【0022】
電極2A、2Bはパイプ状のものでも中実(棒状)のものでもよく、その材質も各種金属とすることができる。一例として図1に示す電極2A、2Bは直径6mm程度のアルミパイプであり、両電極2A、2Bの間隔を40mm程度としてある。電極2A、2Bの太さはこれより太くても細くてもよく、両電極2A、2Bの間隔はこれより広くすることも狭くすることもできる。
【0023】
電極2A、2Bの回転は例えばモータにより行うことができ、押し付けは例えば押し具により行うことができる。電極2A、2Bの回転速度や押し付け力は任意に選択可能であるが、回転速度30/秒程度、押し付け力20N程度とすると、回転時間数秒程度でオーミック・コンタクトが得られる。
【0024】
本発明ではシリコンインゴット1と電極2A、2Bの回転及び押し付けは相対的に行えばよく、シリコンインゴット1を電極2A、2Bに押し付けながら回転させることも、シリコンインゴット1と電極2A、2Bを互いに押し付けながら両者を回転させることもできる。この場合、双方の回転方向は逆方向への回転でも同方向への回転でも良い。
【0025】
[シリコンのライフタイム測定方法の実施形態]
本発明のシリコンのライフタイム測定方法の実施形態の一例として、シリコンインゴット1のライフタイムを測定する場合について図2の測定原理図を参照して説明する。シリコンインゴット1は単結晶が均一な組成を持ち、抵抗率が1Ω・cm以上のものが好ましい。このライフタイム測定方法は、前記オーミック・コンタクト形成方法によりシリコンインゴット1と電極2A、2Bのオーミック・コンタクトを得てから、既存の直流光導電減衰法により行うことができる。
【0026】
本発明のシリコンのライフタイム測定方法の一例を図1〜図3に基づいて以下に説明する。
(1)前記したオーミック・コンタクト形成方法により、シリコンインゴット1と電極2A、2Bとのオーミック・コンタクトを得たら、電極2A、2Bの回転を停止させ、押し付けは継続する。
(2)前記電極2A、2Bに直流電源3から直列抵抗Rを通して直流電圧(例えば20V)を印加して、シリコンインゴット1に直流電流を流す。流す直流電流の極性を切り替えて電極2A、2B間の電圧を測定し、電極2A、2Bの接触に整流性がないことを確認する。
(3)両電極2A、2B間のシリコンインゴット1に励起エネルギー(パルス光)を照射する。パルス光には例えばパルス発振器4から発振されるパルス信号に基づいてレーザー光源(例えば、YAGレーザー)5から発生されるパルス光を使用することができる。パルス光としては、例えば、波長1064nm、パルス幅約30μS、パルス出力最大5mj程度が適する。パルス光は減衰器(NDフィルタ−)7を通すことにより強度を制御してシリコンインゴット1に照射することができる。図2に示す減衰器7はYAGレーザー5で発生したパルス光を数個のNDフィルター7により、測定するシリコンインゴットに合わせた強度に調整できるようにしてある。
(4)パルス光の照射によりシリコンインゴット1に過剰キャリア(正孔又は電子)が発生すると、シリコンインゴット1の電気伝導度が過剰キャリアの濃度に応じて変化する。電気伝導度は時間経過に伴って指数関数的に減衰する(図3(a))。本発明では、過剰キャリアの発生による電気伝導度の変化量を測定し、その減衰曲線の時定数により少数キャリアの再結合ライフタイムを測定する。
(5)パルス光の照射による二つの電極2A、2B間の変化電圧を増幅器8で増幅し、デジタルオシロスコープ(以下単に「オシロスコープ」という。)9で観測し、その観測データを電子計算機(例えば、パーソナルコンピュータ:PC)10で処理して少数キャリアの再結合ライフタイムを得ることができる。前記増幅器8には既存のオペアンプなどを用いることができる。
【0027】
図3(a)に示すEXPOTENTIAL DECAY PART(指数関数的減衰部分)の信号電圧ΔVが1/e(=0.367)に減衰する時間(減衰時間)τF'を読み取ってPRIMARY MODE LIFETIME(一次モードライフタイム)の近似値とする。次に、指数関数的減衰曲線をSEMI-LOGARITHMIC SCALE InΔV=U(t)(片対数目盛に変換した減衰曲線:図3(b))に変換すると、LINEAR PLOT(直線状のプロット)が得られる。この直線の傾斜からτFを算出する。1/eの減衰時間τF'を求めたTIME AREA(時間領域)がSEMI-LOGARITHMIC(片対数)のSTRAIGHT LINE PART(直線部分)のTIME AREA(時間領域)に含まれている場合は、τF'とτFは一致する。
【0028】
[シリコンのライフタイム測定ヘッド]
本発明のシリコンのライフタイム測定に使用するライフタイム測定ヘッド(以下「測定ヘッド」という。)の一例を図4〜図6に基づいて説明する。この測定ヘッドは二本の電極2A、2Bを別々に挟着可能な二つの電極チャック20A、20Bと、夫々の電極チャック20A、20Bを別々に回転させる二つの回転駆動体21A、21Bと、夫々の電極チャック20A、20Bをシリコンインゴット1(図2)に別々に押し付ける押し具22A、22B(図5(a)、(b))と、二つの電極2A、2B間のシリコンインゴット1に励起エネルギー光を照射する光照射部(パルス光照射部)23(図4)を備えている。
【0029】
夫々の電極チャック20A、20Bは、対向配置された二つの挟着片24A、24Bがエア式或いは油圧式の開閉機構により横方向に開閉され、開いた二つの挟着片24A、24B間に電極2A、2Bを差し込んでから二つの挟着片24A、24Bを閉じると両挟着片24A、24B間に電極2A、2Bが挟着保持され、二つの挟着片24A、24Bを開くと電極2A、2Bの挟着が解放されるようにしてある。夫々の電極チャック20A、20Bの回転軸25A、25B(図5(b))は背面側に突出しており、夫々の回転軸25A、25Bに回転輪26A、26B(図5(b))が取付けられている。前記した二つの電極チャック20A、20Bはブロック状のチャック取付け体27A、27B(図5(b))に取付けられている。
【0030】
前記回転駆動体21A、21Bにはモータが使用されている。モータ21A、21Bは板状のモータ取付け体28A、28B(図4、図5(a))に取付けられて夫々の電極チャック20A、20Bの外側に配置され、モータ21A、21Bの回転軸29A、29B(図5(b))及びその回転軸29A、29Bに取付けられたプ―リ30A、30B(図5(a)、(b))が電極チャック20A、20Bの背面側に向けて配置されている。このプーリ30A、30Bと電極チャック20A、20Bの回転輪26A、26Bとにベルト31A、31B(図5(a)、(b))が掛けられ、モータ21A、21Bの回転によりプーリ30A、30Bが回転するとベルト31A、31Bが回転して、電極チャック20A、20Bの回転輪26A、26Bが回転し、電極チャック20A、20Bが回転するようにしてある。モータ21A、21Bは正・逆回転の切り替えが可能であり、回転を切り替えることによって電極チャック20A、20Bに挟着保持された電極2A、2Bの回転方向を切り替えることができる。ベルト31A、31Bにはタイミングベルトを使用すると回転制御が容易になる。この場合、モータのプーリ30A、30Bと電極チャック20A、20Bの回転輪26A、26Bもタイミングベルトが噛み合う凹凸を備えたものとする。
【0031】
前記した押し具22A、22Bにはエアシリンダ(図5(a)、(b))が使用されている。押し具22A、22Bは縦向きの肉厚板状の支持材32に取付けられており、この押し具22A、22Bには外部のエア駆動部(エア回路)が連結されて、エア回路からのエアの給排により板状の支持材32の前方に突出しているエアシリンダ22A、22Bのピストンが前進、後退するようにしてある。押し具22A、22Bには油圧シリンダを使用することもできる。その場合はエア回路を油圧回路とする。
【0032】
前記二つのチャック取付け体27A、27B(図5(b))とモータ取付け体28A、28B(図4)は図6(a)に示す別体の移動体33A、33Bに取付けられている。この移動体33A、33Bは、縦向き板状の支持材32から前方に突設されている横向きのブロック状の基体34の底面に取付けられている二本の角棒状のリニアガイド35A、35Bに嵌合されて、前記押し具22A、22Bのピストンが前方に押されるとリニアガイド35A、35Bにガイドされて前進移動し、そのピストンにより後方に引き戻されると後退してリニアガイド35A、35Bにガイドされて後退移動するようにしてある。この前進移動により移動体33A、33Bに取付けてある電極チャック20A、20B及びモータ21A、21Bが前進して電極チャック20A、20Bに挟着保持されている電極2A、2Bがシリコンインゴット1に押し付けられ、後退移動により電極2A、2Bがシリコンインゴット1から引き離される。
【0033】
前記電極2A、2Bの背面側には二本のコンタクトプローブ36A、36B(図5(a))が突設されている。コンタクトプローブ36A、36Bは電極2A、2Bに直流電圧を印加するための直流電源3(図2)を接続するためのものである。
【0034】
前記二つの電極チャック20A、20Bの間には光照射部23(図4)が設けられている。光照射部23はオーミック・コンタクトされた二つの電極2A、2B間のシリコンインゴット1に励起エネルギー光を照射するためのものであり、パルス光出口23a(図4)が電極チャック20A、20Bの間に設けられ、光ファイバ接続部23b(図5(a))が縦向きの板状の支持材32の背面に突設されている。光ファイバ接続部23bには外部のYAGレーザー5(図2)を接続して、YAGレーザー5から出射されるパルス光が入射され、そのパルス光が前記パルス光出口23a(図4)から出射して、シリコンインゴット1に照射されるようにしてある。
【0035】
図示したモータ21A、21B、押し具22A、22Bは二つの電極2A、2B用に別々に備えられ、夫々の電極2A、2Bを別々にシリコンインゴット1に押し付けたり、回転させたりすることができるようにしてあるが、可能であれば一つを二つの電極2A、2Bに共用とすることもできる。
【0036】
[直流電源]
前記直流電源3(図2)はシリコンインゴット1に電流を供給するための直流安定化電源である。電圧は0〜30Vの範囲で任意に設定できるようにしてあるが、20V程度に設定して使用するのが好ましい。
【0037】
[ライフタイム測定ヘッドを使用したライフタイム測定]
前記したライフタイム測定ヘッドを使用して、直流光導電減衰法によりシリコンインゴット1のライフタイムを測定する場合は次のようにして行うことができる。
【0038】
(1)前記測定ヘッドの二つの電極チャック20A、20Bの夫々の二つの挟着片24A、24B間に電極2A、2Bを挟んで保持させる。
【0039】
(2)前記電極チャック20A、20Bを押し具22A、22Bにより前進移動させてワークターンテーブル(図示しない)にセットされているシリコンインゴット1側に押し付ける。
【0040】
(3)前記電極チャック20A、20Bをモータ21A、21Bにより回転させて、電極2A、2Bとシリコンインゴット1のオーミック・コンタクトを得る。オーミック・コンタクトを得たら、電極チャック20A、20Bの回転を停止させ、シリコンインゴット1への電極2A、2Bの前記押し付けを保持する。
【0041】
(4)前記状態で、前記した本発明のライフタイム測定方法により、測定ヘッドのコンタクトプローブ36A、36B(図5(a))に直流電圧を印加し、電極2A、2Bからシリコンインゴット1に直流電流を流し、電極2A、2Bの間のシリコンインゴット1にパルス光を照射してシリコンインゴット1のライフタイムを測定する。測定ヘッドのコンタクトプローブ36A、36B(図5(a))に直流電圧を印加する場合は、図7に示すように、DC電源3からプローブエレクトロニクス40を介して直流電圧を印加することができる。プローブエレクトロニクス40はシリコンインゴット1に直流電圧を印加してライフタイム波形を検出するための直列抵抗R(図2)及びOFFSET VOLTAGE(オフセット電圧)とライフタイムを分離するOFFSET CENCELLER(オフセット除去器)を備えている。この場合、インストールメントユニット41(図7)によりプローブエレクトロニクス40の直列抵抗、増幅器8(図2)の利得の切り替えをパソコン10の制御信号に従って行うと共に、両電極2A、2B間の電圧及び動作状態をランプ表示することができる。
【0042】
(5)電極2A、2Bがオーミック・コンタクトされたシリコンインゴット1に光照射部23(図5)からパルス光を照射する場合、オプティカルコントローラ42(図7)でYAGレーザー5、減衰器7及びバックライトBLの制御を行うと共にそれらの動作状態を表示することもできる。図7の電源装置43はYAGレーザー5の電源装置である。図7のバックライトBLは、ライフタイム測定信号の減衰曲線が長く尾を引いてBASE LINE(基線)に戻らない場合に、シリコンインゴット1をハロゲンランプで照光してTRAP EFFECT(トラップ効果)を消して測定できるようにするものである。
【0043】
(6)前記オーミック・コンタクトの位置でのライフタイム測定が終了したら、押し具22A、22Bを引き戻して、電極2A、2Bをシリコンインゴット1から引き離す。
【0044】
(7)引き離した状態で、シリコンインゴット1がセットされているワークターンテーブルをX軸、Y軸、Z軸のいずれか一又は二以上の方向に移動させて、シリコンインゴット1の位置を変える。
【0045】
(8)前記位置変更後、押し具22A、22Bにより電極チャック20A、20Bを前進させて、電極チャック20A、20Bに挟着保持されている電極2A、2Bをシリコンインゴット1の別の箇所に押し付け、電極チャック20A、20Bをモータ21A、21Bにより回転させてその押し付け箇所で電極2A、2Bとシリコンインゴット1のオーミック・コンタクトを得る。オーミック・コンタクトを得たら電極チャック20A、20Bの回転を停止させ、シリコンインゴット1への電極2A、2Bの前記押し付けを保持する。
【0046】
(9)前記状態で、前記測定時と同様にコンタクトプローブ36A、36Bに直流電圧を印加し、シリコンインゴット1にパルス光を照射してシリコンインゴット1のライフタイムを測定する。
【0047】
前記押し付け箇所での測定終了後、ワークターンテーブルをX軸、Y軸、Z軸のいずれか一又は二以上の方向に移動させて、ワークターンテーブルにセットされているシリコンインゴット1の位置を変え、電極2A、2Bとシリコンインゴット1のオーミック・コンタクトの位置を変えて次の測定を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のシリコンと電極のオーミック・コンタクト形成方法、シリコンのライフタイム測定方法、シリコンのライフタイム測定ヘッドは、電極と他の物体、例えば、シリコンウェーハとオーミック・コンタクトを得て各種測定を行う場合にも利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 シリコンインゴット(試料)
2A、2B 電極
3 直流電源
4 パルス発振器
5 YAGレーザー
7 減衰器(NDフィルター)
8 増幅器
9 オシロスコープ
10 電子計算機(パソコン)
20A、20B 電極チャック
21A、21B 回転駆動体(モータ)
22A、22B 押し具(エアシリンダ)
23 光照射部
23a パルス光出口
23b 光ファイバ接続部
24A、24B 挟着片
25A、25B 電極チャックの回転軸
26A、26B 回転輪
27A、27B チャック取付け体
28A、28B モータ取付け体
29A、29B モータの回転軸
30A、30B プーリ
31A、31B ベルト
32 板状の支持材
33A、33B 移動体
34 基体
35A、35B リニアガイド
36A、36B コンタクトプローブ
40 プローブエレクトロニクス
41 インストールメントユニット
42 オプティカルコントローラ
43 YAGレーザー用電源装置
R 直列抵抗
BL バックライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象であるシリコンに電極を押し付け、その電極とシリコンのいずれか一方又は双方を回転させて、当該電極とシリコンとのオーミック・コンタクト得ることを特徴とするシリコンと電極のオーミック・コンタクト形成方法。
【請求項2】
測定対象であるシリコンに電極を押し付け、その電極とシリコンとのいずれか一方又は双方を回転させて、当該シリコンと電極の接触部に合金層とシリサイド層のいずれか一方又は双方を形成して、当該接触部にオーミック・コンタクトを得ることを特徴とするシリコンと電極のオーミック・コンタクト形成方法。
【請求項3】
測定対象であるシリコン内の少数キャリアの再結合ライフタイムの測定方法において、シリコンに押し付けながら回転させてシリコンとオーミック・コンタクトさせた電極に直流電圧を印加してシリコンに直流電流を流し、電極間のシリコンにパルス光を照射し、当該パルス光の照射によりシリコン内に発生した過剰キャリアによって変化するシリコンの電気伝導度の時間的な変化量を測定することにより、シリコンの少数キャリアの再結合ライフタイムを測定することを特徴とするシリコンのライフタイム測定方法。
【請求項4】
請求項3記載のシリコンのライフタイム測定方法において、
シリコンの少数キャリアの再結合ライフタイム測定後に、シリコンへの電極の押し付け箇所を変えることにより、その電極とシリコンとに新たなオーミック・コンタクトを得、その電極に直流電圧を印加してシリコンの新たな箇所の少数キャリアの再結合ライフタイムを測定することを特徴とするシリコンのライフタイム測定方法。
【請求項5】
シリコンのライフタイム測定に使用される測定ヘッドにおいて、
電極を挟着保持可能な電極チャックと、電極チャックを回転させる回転駆動体と、シリコン側への前記電極チャック及び回転駆動体の往復移動をガイドするリニアガイドと、電極チャックに挟着保持されている電極及び回転駆動体を前記ガイドにガイドさせて往復移動させることができ、前記電極を前進時にシリコンに押し付け、後退時にシリコンから引き離す押し付け具と、電極チャックと導通するコンタクトプローブと、前記シリコンにパルス光を照射する光照射部を備え、前記押し付け具により電極をシリコンに押し付け、当該押し付け状態で回転駆動体により電極を回転させることによって電極とシリコンのオーミック・コンタクトを得ることができ、その電極に直流電圧を印加するとシリコンに直流電流を流すことができ、光照射部から電極間のシリコンにパルス光を照射してシリコン内に過剰キャリアを発生させることができ、過剰キャリアの発生により生ずるシリコンの電気伝導度の時間的な変化量を測定することにより、シリコンの少数キャリアの再結合ライフタイムを測定可能としたことを特徴とするシリコンのライフタイム測定ヘッド。
【請求項6】
請求項5記載のシリコンのライフタイム測定ヘッドにおいて、
電極チャックと、押し付け具と、回転駆動体を二セット備え、二セットの電極チャックは互いに間隔をあけて配置されて別々に往復移動、回転可能であることを特徴とするシリコンのライフタイム測定ヘッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−77682(P2013−77682A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216273(P2011−216273)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(592177096)ナプソン株式会社 (6)
【Fターム(参考)】