シリコンドリフト型X線検出器
【課題】 エネルギー分散型X線分光器に用いられるシリコンドリフト型検出器においてバックグランドを低減する。
【解決手段】 X線検出素子1と電気接続するための電極端子板2とペルチェ素子3との間にペルチェ素子3を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の小さな元素を主成分とする第1遮蔽体5と、ペルチェ素子3を構成する材料よりも原子番号の大きな元素を主成分とする第2遮蔽体6を備えることにより、X線検出素子1を透過したX線によってペルチェ素子3から発生する二次X線がX線検出素子1に入射する量を減少させる。
【解決手段】 X線検出素子1と電気接続するための電極端子板2とペルチェ素子3との間にペルチェ素子3を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の小さな元素を主成分とする第1遮蔽体5と、ペルチェ素子3を構成する材料よりも原子番号の大きな元素を主成分とする第2遮蔽体6を備えることにより、X線検出素子1を透過したX線によってペルチェ素子3から発生する二次X線がX線検出素子1に入射する量を減少させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過電子顕微鏡(TEM)、走査電子顕微鏡(SEM)、蛍光X線分析装置(XRF)等に搭載されるエネルギー分散型X線分光器(EDS)においてX線を検出するために用いられるX線検出器に係わり、特にシリコンドリフト型X線検出器(SDD)において検出するX線のバックグランドを低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からEDSに用いられている半導体X線検出器として、図9に示すようなシリコン(Si)にリチウム(Li)をドープしたPIN型検出器が有る。図9の半導体素子は逆バイアスが印加されたPINダイオードであり、一方の電極には電界効果トランジスタ(FET)のゲートが接続されている。試料から発生したX線がPIN半導体に入射すると、X線量子のエネルギーに応じた数のイオン対が生成される。半導体に印加されている逆バイアス電圧により、生成したイオン対は分離して電子なだれを生じ、電極に引き寄せられる。FETのゲート電極の電位が変化することにより、PINダイオードに入射したX線量子のエネルギーに比例した大きさの電流変化信号が取り出される。なお、PIN型検出器でX線を検出するときは、PINダイオード部とFETを液体窒素で冷却する必要がある。
【0003】
PIN型検出器に対し、SDDはX線の高計数率測定を可能にするために比較的新しく開発されたX線検出器であり、PIN型検出器とは大きく異なる構造を有している。ここでは、図5を参照しながら、SDDについて簡単に説明する。図5はSDDのX線検出素子の概略構造図である。断面の構造を見やすいように、一部を切り欠いた図としている。
【0004】
検出すべきX線はカソード(C)側(紙面下方)からX線検出素子に入射する。PIN型検出器におけるFETは別体として配線接続されているが、SDDにおけるFETは図5に示すようにX線検出素子の後面上に形成されている。すなわち、FETの電極はそれぞれ内側から、ドレイン(D)、ゲート(G)、ソース(S)の順にX線検出素子上に配置されている。
【0005】
X線の高計数率測定を可能にするためには、X線検出素子に入射したX線によって作られるイオン対が電気的に取り出される時間(時定数)を出来るだけ短縮する必要がある。時定数を小さくするためにはX線検出素子の寄生静電容量を小さくしなければならない。SDDは、X線検出素子のアノード(A)を小さくすること及びFETをX線検出素子に統合配置することにより寄生静電容量を小さくしている。しかし、アノードを小さくするだけでは、X線入射によって生じた電子をアノードにうまく導くことが出来ない。そのため、図5に示すように、「フィールドストリップ」と呼ばれる多段のリング状電極(実際の装置ではもっと多くのリングを形成する)を設け、アノードに近い内側のリングから外側に向かって段々に負電位のバイアスを与えるようにしている。電子はフィールドストリップにかけられた段階的な電界に沿って移動し、アノードに集中して流れ込む。アノードはFETのゲート電極に接続されている。FETのゲート電極の電位が変化することにより、SDDに入射したX線量子のエネルギーに比例した大きさの電流変化信号が取り出される。
【0006】
X線検出素子の厚みを増加させるに従い、フィールドストリップにかける逆バイアス電圧をそれだけ高くする必要がある。しかし、この電圧をあまり高くすると、X線検出素子の収納容器内を高真空に保つなどの厳しい保護条件を満たす必要がある。そのため性能との兼ね合いでX線検出素子の厚みは0.5mm程度と、PIN型検出器に比べて薄く作られている。
【0007】
SDDは通常ペルチェ素子を使用した電子冷却を行なう。液体窒素によらずペルチェ素子による冷却を行なうだけで、PIN型X線検出器と同等のエネルギー分解能が得られること、またペルチェ素子による冷却機構を含む検出器全体の小型化と軽量化により装置への装着が容易であることもSDDの特徴である。
【0008】
図3に、ペルチェ素子を取り付けたSDDの部分外観図を示す。図4は、図3に示すSDDの断面図である。1はX線検出素子、1aはX線検出素子1の後面上に統合配置されたFET、2はX線検出素子1とFET1aに電気接続するための電気配線が施された電極端子板、3はペルチェ素子、4は後部熱伝導体である。電極端子板2は開口部2aを持つ枠状であり、X線検出素子1の周辺部で接触し、保持するようになっている。従って、FETが配置されたX線検出素子1の後面とペルチェ素子3との間には隙間がある。X線検出素子1を短時間で冷却できるように、ペルチェ素子3は電極端子板2を介してX線検出素子1になるべく近接するように取り付けられている。
【0009】
特許文献1の特開2006−119141号公報には、SDDの電荷−電圧変換率の率依存変化を補正する技術が開示されている。また、特許文献2の特開2005−308632号公報には、PIN型半導体検出器の冷却にペルチェ素子を使用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−119141号公報
【特許文献2】特開2005−308632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したようにSDDのX線検出素子の厚みは0.5mm程度であり、従来のSi(Li)半導体素子に比べてかなり薄く作られている。そのため、検出器に入射したX線のうち、X線検出素子を透過してX線検出素子の後方に取り付けられているペルチェ素子に到達する割合が多くなる。ペルチェ素子を構成する材料には原子番号の高い元素を多く含む材料が使用されているため、ペルチェ素子からは比較的高いエネルギーの二次X線が発生する。この二次X線が後面からX線検出素子に入射し検出されることによりバックグランドが増加するという問題がある。
【0012】
またこれとは別に、X線検出素子に近接してペルチェ素子を取り付けることによる問題点もある。ペルチェ素子には直流の大電流が流れている。この電流が磁場を発生する。また近傍に磁性部品があると複雑な磁界となる。この直流電流に変動や雑音が重畳するとさらに複雑になる。TEMやSEMに装着されるX線検出器は、観測しようとするX線の検出感度をあげるため、電子線が当たる測定試料のできるだけ近い位置に配置される。しかし、図3、図4に示すように、X線検出素子を冷却するためのペルチェ素子も試料の近傍に近づくことになるので、試料に照射される電子線はペルチェ素子の発生する磁界による影響を受け、電子顕微鏡の性能に悪影響を与えるという問題がある。この問題はSDDをXRFに装着する場合は特に問題となることは無い。しかし、電子線を試料に照射して該試料から発生する特性X線を分光検出することによって試料の分析を行なうTEMやSEMなどの電子線装置に装着する場合は大きな問題である。以下に説明するように、この問題は特にTEMにSDDを装着した場合においてより顕著にあらわれる。
【0013】
図6はTEMにEDSを装着して分析を行なうときの模式図である。上側対物レンズ磁極と下側対物レンズ磁極との間には電子線を集束するための極めて強い磁場が発生している。電子線照射により試料から発生するX線を出来るだけ多く検出するにはEDSを出来るだけ試料に近づける必要がある。しかしEDSを試料に近づけようとすると、EDSの先端はこの磁場により近づく状態となる。もしEDSがSDDタイプのX線検出器であれば、冷却用のペルチェ素子から発生する磁場がTEMの対物レンズの磁場を乱し、電子線に悪影響を与えることになる。
【0014】
一方、図7と図8はSEMにEDSを装着して分析を行なうときの模式図である。図7はアウトレンズ型対物レンズを有するSEMの場合、図8はセミインレンズ型対物レンズを有するSEMの場合である。アウトレンズ型対物レンズの場合は、EDSが配置される近傍まで対物レンズの磁場が漏れる事はない。セミインレンズ型対物レンズは試料面まで対物レンズの磁場を漏らすようにして電子線を細く絞るようにするタイプの対物レンズである。しかし、試料面にまで磁場を漏らして使用する場合は、高分解能を得ることが目的であり、このときの対物レンズ下面と試料面との距離は極めて小さい。従って、この漏れ磁場に影響を与えるほど試料にEDSを近づけることは出来ない。よって、SEMに取り付けるEDSがSDDであっても、TEMに取り付けた場合に比べると、ペルチェ素子から発生する磁場の影響は少ない。
【0015】
即ち、SDDの半導体素子が薄いことによる問題はTEMとSEMに取り付けた場合に共通の問題であり、ペルチェ素子から発生する磁場の問題はTEMに取り付けた場合の問題である。
【0016】
本発明は上記した問題を解決するためになされたものであって、その目的は、SDDの半導体素子を透過したX線が冷却用のペルチェ素子の構成元素を励起して二次的に発生するX線を抑制することによりバックグランドを低減することである。また、もうひとつの目的は、SDDをTEMに装着した場合に、試料に照射する電子線が冷却用のペルチェ素子から発生する磁場の影響を受けないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の問題を解決するために、
請求項1に記載の発明は、電子線又は電磁波を試料に照射して該試料から発生する特性X線を分光検出することにより該試料の分析を行なうX線分析装置に装着されるエネルギー分散型X線分光器に用いられるX線検出器であって、
X線を検出するための固体半導体からなるX線検出素子と、
前記X線検出素子にとりつけられ、前記X線検出素子を外部回路と電気接続するための接続端子を備えた電極端子板と、
前記電極端子板を介して熱的に接続して前記X線検出素子を冷却するペルチェ素子とからなるシリコンドリフト型X線検出器において、
前記X線検出素子と前記ペルチェ素子との間に前記ペルチェ素子を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の小さな元素を主成分とする第1遮蔽体を備え、
前記X線検出素子を透過して前記ペルチェ素子に到達するX線の線量を前記第1遮蔽体により減少させるようにしたことを特徴とする。
【0018】
また請求項2に記載の発明は、前記第1遮蔽体と前記ペルチェ素子との間に、前記ペルチェ素子を構成する材料よりも原子番号の大きな元素を主成分とする第2遮蔽体をさらに備え、
前記X線検出素子を透過して前記ペルチェ素子に到達したX線により前記ペルチェ素子から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させるようにしたことを特徴とする。
【0019】
また請求項3に記載の発明は、前記第1遮蔽体は窒化硼素又はベリリア磁器から成ることを特徴とする。
【0020】
また請求項4に記載の発明は、前記第2遮蔽体は金箔から成ることを特徴とする。
【0021】
また請求項5に記載の発明は、電子線を試料に照射して該試料から発生する特性X線を分光検出することにより該試料の分析を行なう電子線装置に装着されるエネルギー分散型X線分光器に用いられるX線検出器であって、
X線を検出するための固体半導体からなるX線検出素子と、
前記X線検出素子にとりつけられ、前記X線検出素子を外部回路と電気接続するための接続端子を備えた電極端子板と、
前記電極端子板を介して熱的に接続して前記X線検出素子を冷却するペルチェ素子とからなるシリコンドリフト型X線検出器において、
前記電極端子板と前記ペルチェ素子との間に熱伝導体を備え、
前記熱伝導体の長さは、前記ペルチェ素子が発生する磁場が前記電子線装置の電子線に影響を及ぼさないように前記ペルチェ素子を前記X線検出素子から遠ざけておくのに必要な距離に基づいて定められることを特徴とする。
【0022】
また請求項6に記載の発明は、前記電極端子板と前記熱伝導体との間に前記熱伝導体を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の小さな元素を主成分とする第1遮蔽体をさらに備え、
前記X線検出素子を透過して前記熱伝導体に到達するX線の線量を前記第1遮蔽体により減少させるようにしたことを特徴とする。
【0023】
また請求項7に記載の発明は、前記熱伝導体の前記X線検出素子側に開口端を持つ有底の空洞をさらに備えたことを特徴とする。
【0024】
また請求項8に記載の発明は、前記有底の空洞が前記X線検出素子を透過して進行するX線が斜めに入射する内壁面を有する形状であることを特徴とする。
【0025】
また請求項9に記載の発明は、前記有底の空洞が円錐状又は多角錐状又は内壁が放物面状又は単一焦点を持たない曲面状の形状であることを特徴とする。
【0026】
また請求項10に記載の発明は、前記第1遮蔽体は窒化硼素又はベリリア磁器から成ることを特徴とする。
【0027】
また請求項11に記載の発明は、前記第1遮蔽体と前記熱伝導体との間に前記熱伝導体よりも原子番号の大きな元素を主成分とする第3遮蔽体をさらに備え、前記X線検出素子を透過して前記熱伝導体に到達したX線により前記熱伝導体から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させるようにしたことを特徴とする。
【0028】
また請求項12に記載の発明は、前記第3遮蔽体は金箔から成ることを特徴とする。
【0029】
また請求項13に記載の発明は、前記有底の空洞内壁表面に前記熱伝導体を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の小さな元素を主成分とするX線減少層を設け、前記内壁表面で発生するX線のX線発生効率が小さくなるようにしたことを特徴とする。
【0030】
また請求項14に記載の発明は、前記X線減少層はカーボン塗料から成ることを特徴とする。
【0031】
また請求項15に記載の発明は、前記第1遮蔽体と前記第2遮蔽体との間に、前記第1遮蔽体より原子番号が大きく前記第2遮蔽体より原子番号が小さい元素を主成分とする少なくとも一つのX線遮蔽体を更に設けたことを特徴とする。
【0032】
また請求項16に記載の発明は、前記第1遮蔽体と前記第3遮蔽体との間に、前記第1遮蔽体より原子番号が大きく前記第3遮蔽体より原子番号が小さい元素を主成分とする少なくとも一つのX線遮蔽体を更に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
(1)請求項1記載の発明によれば、X線検出素子とペルチェ素子との間にペルチェ素子を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の小さな元素を主成分とする第1遮蔽体を備えたので、X線検出素子を透過してペルチェ素子に到達するX線の線量を第1遮蔽体により減少させ、また第1遮蔽体から発生するX線のエネルギーを低くすることができる。そのため、ペルチェ素子から発生する二次X線の量が減少し、また第1遮蔽体から発生するX線がX線検出素子で検出されにくくなるのでバックグランドを軽減することができる。
【0034】
(2)請求項2記載の発明によれば、第1遮蔽体とペルチェ素子との間に、ペルチェ素子を構成する材料よりも原子番号の大きな元素を主成分とする第2遮蔽体をさらに備えたので、X線検出素子を透過してペルチェ素子に到達したX線によりペルチェ素子から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させることができる。そのため、ペルチェ素子から発生する二次X線がX線検出素子に入射する量を減少させ、バックグランドを軽減することができる。
(3)請求項3記載の発明によれば、第1遮蔽体として窒化硼素又はベリリア磁器を用いることにより、X線検出素子を透過してペルチェ素子に到達するX線の線量を第1遮蔽体により減少させ、また第1遮蔽体から発生するX線のエネルギーを低くすることができる。そのため、ペルチェ素子から発生する二次X線の量が減少し、また第1遮蔽体から発生するX線がX線検出素子で検出されにくくなるのでバックグランドを軽減することができる。
【0035】
(4)請求項4記載の発明によれば、第2遮蔽体として金箔を用いることにより、X線検出素子を透過してペルチェ素子に到達したX線によりペルチェ素子から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させることができる。そのため、ペルチェ素子から発生する二次X線がX線検出素子に入射する量を減少させ、バックグランドを軽減することができる。
【0036】
(5)請求項5記載の発明によれば、電極端子板とペルチェ素子との間に熱伝導体を備えたので、ペルチェ素子から発生する二次X線の量が減少し、バックグランドを軽減することができる。またペルチェ素子が発生する磁場が電子線装置の電子線に影響を及ぼさないようにペルチェ素子の位置をX線検出素子から遠ざけることにより、TEMに装着する場合にもペルチェ素子による試料に照射する電子線への影響を避けることが出来る。
【0037】
(6)請求項6記載の発明によれば、電極端子板とペルチェ素子との間に熱伝導体を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の小さな元素を主成分とする第1遮蔽体を備えたので、X線検出素子を透過して熱伝導体に到達するX線の線量を減少させることができる。また第1遮蔽体から発生するX線のエネルギーを低くすることができる。そのため、熱伝導体から発生する二次X線がX線検出素子によって検出される量が減少し、バックグランドを軽減することができる。
【0038】
(7)請求項7記載の発明によれば、熱伝導体のX線検出素子側に開口端を持つ有底の空洞をさらに備えたので、X線検出素子を透過して熱伝導体に入射したX線が有底の空洞の壁面から二次X線を発生させるようになる。そのため、発生した二次X線がX線検出素子によって検出される量を減少させ、バックグランドを軽減することができる。
【0039】
(8)請求項8記載の発明によれば、前記有底の空洞が、前記X線検出素子を透過して進行するX線が斜めに入射する内壁面を有する形状としたので、有底の空洞の壁面で発生した二次X線がX線検出素子によって検出される量を減少させ、バックグランドを軽減することができる。
【0040】
(9)請求項9記載の発明によれば、熱伝導体に設けた有底の空洞を円錐状又は多角錐状又は内壁が放物面状又は単一焦点を持たない曲面状の形状としたので、有底の空洞の壁面で発生した二次X線がX線検出素子によって検出される量を減少させ、バックグランドを軽減することができる。
【0041】
(10)請求項10記載の発明によれば、第1遮蔽体として窒化硼素又はベリリア磁器を用いることにより、X線検出素子を透過してペルチェ素子に到達するX線の線量を第1遮蔽体により減少させ、また第1遮蔽体から発生するX線のエネルギーを低くすることができる。そのため、ペルチェ素子から発生する二次X線の量が減少し、また第1遮蔽体から発生するX線がX線検出素子で検出されにくくなるのでバックグランドを軽減することができる。
【0042】
(11)請求項11に記載の発明によれば、第1遮蔽体と熱伝導体との間に熱伝導体よりも原子番号の大きな元素を主成分とする第3遮蔽体をさらに備えたので、X線検出素子を透過して熱伝導体に到達したX線により熱伝導体から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させることができる。そのため熱伝導体から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させ、バックグランドを軽減することができる。
【0043】
(12)請求項12に記載の発明によれば、第3遮蔽体として金箔を用いることにより、X線検出素子を透過して熱伝導体に到達したX線により熱伝導体から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させることができる。そのため熱伝導体から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させ、バックグランドを軽減することができる。
【0044】
(13)請求項13に記載の発明によれば、有底の空洞内壁表面に熱伝導体を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の小さな元素を主成分とするX線減少層を設け、前記内壁表面で発生するX線のX線発生効率が小さくなるようにしたので、X線検出素子を透過して熱伝導体に到達したX線により熱伝導体から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させることができる。そのためバックグランドを軽減することができる。
【0045】
(14)請求項14に記載の発明によれば、X線減少層としてカーボン塗料を用いることにより有底の空洞内壁表面よりのX線発生効率が小さくなるため、X線検出素子を透過して熱伝導体に到達したX線により熱伝導体から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させることができる。そのためバックグランドを軽減することができる。
【0046】
(15)請求項15に記載の発明によれば、前記第1遮蔽体と前記第2遮蔽体との間に、前記第1遮蔽体より原子番号が大きく前記第2遮蔽体より原子番号が小さい元素を主成分とする少なくとも一つのX線遮蔽体を更に設けたことにより、X線検出素子を透過してペルチェ素子に到達したX線によりペルチェ素子から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させることができる。そのため、ペルチェ素子から発生する二次X線がX線検出素子に入射する量を減少させ、バックグランドを軽減することができる。
(16)請求項16に記載の発明によれば、前記第1遮蔽体と前記第3遮蔽体との間に、前記第1遮蔽体より原子番号が大きく前記第3遮蔽体より原子番号が小さい元素を主成分とする少なくとも一つのX線遮蔽体を更に設けたことにより、X線検出素子を透過して熱伝導体に到達したX線により熱伝導体から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させることができる。そのため、熱伝導体から発生する二次X線がX線検出素子に入射する量を減少させ、バックグランドを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明を実施するひとつのシリコンドリフト型X線検出器の概略構成例を示す断面図。
【図2】本発明を実施する他のシリコンドリフト型X線検出器の概略構成例を示す断面図。
【図3】シリコンドリフト型X線検出器の一例を示す外観図。
【図4】シリコンドリフト型X線検出器の一例を示す断面図。
【図5】シリコンドリフト型X線検出器の原理を説明するための図。
【図6】シリコンドリフト型X線検出器を透過電子顕微鏡に装着した様子を示す図。
【図7】アウトレンズ型対物レンズを有する走査電子顕微鏡にシリコンドリフト型X線検出器を装着した様子を示す図。
【図8】インレンズ型対物レンズを有する走査電子顕微鏡にシリコンドリフト型X線検出器を装着した様子を示す図。
【図9】シリコン(Si)にリチウム(Li)をドープしたPIN型検出器の原理を説明するための図。
【図10】本発明を実施するひとつのシリコンドリフト型X線検出器の変形された概略構成例を示す断面図。
【図11】本発明を実施する他のシリコンドリフト型X線検出器の変形された概略構成例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下図1、図2を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。但し、この例示によって本発明の技術範囲が制限されるものでは無い。各図において、同一または類似の動作を行なうものには共通の符号を付し、詳しい説明の重複を避ける。なお、以下の説明において、便宜的に本来検出すべきX線がX線検出器に入射する側の面を前面、入射と反対側の面を後面と呼ぶ。
(実施の形態1)
図1は、本発明を実施するシリコンドリフト型X線検出器(SDD)の概略構成例を示す断面図である。1はX線検出素子、1aはX線検出素子1の後面上に統合配置された電界効果トランジスタ(FET)、2はX線検出素子1とFET1aに電気接続するための電気配線が施された電極端子板、3はペルチェ素子、4は後部熱伝導体、5は例えば窒化硼素(BN)やベリリア磁器等の軽元素材料からなる第1遮蔽体、6は例えば金箔等の重元素からなる第2遮蔽体、7は冷却されたSDDを真空環境下に保持するための非磁性外套、8はX線入射窓である。電極端子板2は開口部2aを持つ枠状であり X線検出素子1の周辺部で接触し、X線検出素子1を保持している。
【0049】
X線検出素子1の厚みは0.5mm程度と薄いため、X線検出素子1を透過したX線の多くは第1遮蔽体5に入射する。第1遮蔽体5を構成するのは、例えば窒素(N)、硼素(B)、ベリリウム(Be)、酸素(O)等の軽元素である。シリコン(Si)主体の半導体X線検出器において、一般に各元素の特性X線に対する検出感度はSiが最大で、N,B,Be,O等の軽元素から発生する低エネルギーの特性X線に対する感度は極めて低い。加えて、軽元素から発生する特性X線の電子線による励起効率も低いので、元々軽元素から発生する特性X線量も少ない。第1遮蔽体5は、少なくとも後述するペルチェ素子3を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の小さな元素を主成分とする必要があるが、上記したようにできるだけ軽い元素から成る成分で構成することが望ましい。
【0050】
一方、ペルチェ素子3を構成する材料には、例えばビスマス(Bi)、テルル(Te)、インジウム(In)等の重金属が含まれている。これらの重元素から発生する二次X線は比較的高エネルギーで、多くの特性X線種が存在する。特に2〜3keVくらいのエネルギーを持つ特性X線種は、シリコン(Si)主体の半導体X線検出器の検出感度が高いエネルギー範囲に含まれる。
【0051】
そのため、軽元素材料からなる第1遮蔽体を設けた場合にX線検出素子1を透過したX線によって第1遮蔽体5から発生する二次X線が後面からX線検出素子1に入射するX線量は、第1遮蔽体が無くて直接ペルチェ素子3から発生する二次X線が後面からX線検出素子1に入射するX線量に比べて大幅に低下する。これにより、二次X線に起因するバックグランドを軽減することが出来る。
【0052】
なお、図1において第1遮蔽体5はペルチェ素子3と電極端子板2との間に挟まれるため、熱伝導性に優れた材料であることが必要である。前述の窒化硼素(BN)やベリリア磁器はこの条件を満たす代表的材料であるが、熱伝導性に優れた軽元素材料であればこれらに限る必要は無い。
【0053】
第1遮蔽体5は軽元素を主とする構成のため、X線検出素子1を透過したX線がさらに第1遮蔽体5も透過してペルチェ素子3に到達してしまうX線もありえる。ペルチェ素子3の材料には重元素が含まれるため、比較的エネルギーの高い二次X線が発生する場合も有る。こうしたエネルギーの高いX線が後面からX線検出素子1に入射しないように遮蔽するため、第1遮蔽体5とペルチェ素子3との間に重元素からなる第2遮蔽体6を配置するとなお良い。
【0054】
第2遮蔽体6は、少なくともペルチェ素子3を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の大きな元素を主成分とする必要がある。また、第1遮蔽体5と同様の理由で、第2遮蔽体6も熱伝導性に優れた材料であることが必要である。前述の金箔はこの条件を満たす代表的材料であるが、熱伝導性に優れた重元素材料であればこれらに限る必要は無い。
【0055】
図1のSDDの変形を図10に示す。図10のSDDは、電極端子板2の枠を長くして開口部2aに第1遮蔽体5をはめ込み、電極端子板2とペルチェ素子3が直に接する構造となっている。このようにすれば、第1遮蔽体5を配置してもX線検出素子1と電極端子板2の冷却効率の低下を避けることが出来る。
【0056】
上記したように、図1に示すSDDにおいて、第1遮蔽体5、又は第1遮蔽体5と第2遮蔽体6を電極端子板2の間に設けることにより、SDDに取り付けられているペルチェ素子から発生する二次X線に起因するバックグランドを軽減することができる。
【0057】
なお、図1においては第1遮蔽体と第2遮蔽体の両方を設ける例を示しているが、第1遮蔽体のみを設けるようにしても良い。
【0058】
(実施の形態2)
図2は、本発明を実施する他のもうひとつのシリコンドリフト型X線検出器(SDD)の概略構成例を示す断面図である。前述したように、ペルチェ素子には直流の大電流が流れている。実施の形態2のSDDは、TEMに装着する場合にも、ペルチェ素子に流れる電流によって発生する磁場が電子線に影響を与えないようにするためのものである。
【0059】
図2において、1はX線検出素子、1aはX線検出素子1の後面上に統合配置された電界効果トランジスタ(FET)、2はX線検出素子1とFET1aに電気接続するための電気配線が施された電極端子板、3はペルチェ素子、4は後部熱伝導体、5は軽元素材料からなる第1遮蔽体、7は非磁性外套、8はX線入射窓である。電極端子板2は開口部2aを持つ枠状であり、X線検出素子1の周辺部で接触し、保持するようになっている。
【0060】
ペルチェ素子3から離れた位置にあるX線検出素子1を出来るだけ効率良く冷却するため、第1遮蔽体5とペルチェ素子3の間には熱伝導体9が設けられている。熱伝導体9には、出来るだけ熱伝導に優れた材料で、且つ二次X線の発生を少なくするためにペルチェ素子を構成する材料よりも原子番号が低い物質が望ましい。これらの条件を満たすものとして、例えば銅(Cu)等の金属を使用すれば良い。
【0061】
熱伝導体9の長さは、ペルチェ素子3をX線検出素子1とどれだけ離せばよいかによって決まる。なぜならば、ペルチェ素子3が電子線に与える影響の大きさは、TEMの対物レンズ構造やSDDのペルチェ素子の性能に応じて変わるためである。
【0062】
熱伝導体9の前面には、熱伝導体9を円錐状に抉った有底の空洞からなるバックグランド軽減機構10が形成されている。もしX線検出素子1を透過したX線が第1遮蔽体5を透過した場合、第1遮蔽体5の直後に熱伝導体9が存在すると、熱伝導体9から二次X線が発生し易くなる。しかし、図2に示すように熱伝導体9に空洞を設けた構造になっていれば、透過したX線は空洞内を進行した後にバックグランド軽減機構10の壁面10aに斜めに入射し、そこで二次X線を発生させることになる。一般に、発生した二次X線の放射方向は概ね等方的であると考えられるため、二次X線の多くが熱伝導体の内部で吸収され、壁面10aで発生したX線がX線検出素子1の方向に向かう割合は少ない。
【0063】
従って、熱伝導体9にバックグランド軽減機構10を設ければ、第1遮蔽体5の直ぐ後に熱伝導体9が有る場合に比べて、後面からX線検出素子1に入射する二次X線のX線量を大幅に減少させることが出来る。図2においてバックグランド軽減機構10の形状は円錐状になっているが、必ずしも円錐状に限られるわけではなく、例えば多角錐状や内壁が放物面状又は単一焦点を持たない曲面状であっても同様の効果を得ることが出来る。
【0064】
図2のSDDの変形を図11に示す。図11のSDDは、電極端子板2の枠を長くしてその一部を切り欠き、開口部2aに第1遮蔽体5をはめ込んで固定している。そのため、バックグランド軽減機構10の空洞があっても、第1遮蔽体5を確実に支持できる構造となっている。また、電極端子板2とペルチェ素子3が直に接する構造となり、第1遮蔽体5を配置してもX線検出素子1と電極端子板2の冷却効率の低下を避けることが出来る。
【0065】
なお、図2において、遮蔽体に関しては軽元素材料からなる第1遮蔽体のみを設けるようにしているが、第1遮蔽体と熱伝導体9との間に、例えば金箔等の熱伝導体9より重い元素からなる第3遮蔽体(図示せず)を設けるようにしても良い。この第3遮蔽体は、少なくとも熱伝導体9を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の大きな元素を主成分とする必要がある。
【0066】
さらに、図2及び図11において、壁面10aの表面に熱伝導体9よりも原子番号の小さな物質からなるX線減少層を設ければ、X線検出素子1を透過したX線が壁面10aの表面で二次X線を発生させる効率を小さくすることができる。このX線減少層としては、例えばカーボン塗料を用いることができる。
【0067】
以上述べたように、本発明によれば、X線検出素子1とペルチェ素子3との間に軽元素を主成分とするX線遮蔽体と、重元素を主成分とするX線遮蔽体を備え、SDDの半導体素子を透過したX線が冷却用のペルチェ素子の構成元素を励起して二次的に発生するX線を抑制することによりバックグランドを低減することができる。
【0068】
また、X線検出素子1とペルチェ素子3との間にバックグランド軽減機構を有する熱伝導体を設けたので、ペルチェ素子が発生させる磁界が電子線に影響を及ぼさないようにすることができる。
【0069】
なお、上記した実施の形態1及び2において、X線検出素子1とペルチェ素子3との間に軽元素を主成分とするX線遮蔽体と、重元素を主成分とするX線遮蔽体を重ねて配置する構造を示したが、これに限る必要は無い。例えば、遮蔽体を三層以上の積層構造とし、X線検出素子1に近い層をより軽く、ペルチェ素子3に近い層をより重い元素成分で構成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0070】
(同一または類似の動作を行なうものには共通の符号を付す。)
1…X線検出素子
2…電極端子板
3…ペルチェ素子
4…後部熱伝導体
5…第1遮蔽体
6…第2遮蔽体
7…非磁性外套
8…X線入射窓
9…熱伝導体
10…バックグランド軽減機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過電子顕微鏡(TEM)、走査電子顕微鏡(SEM)、蛍光X線分析装置(XRF)等に搭載されるエネルギー分散型X線分光器(EDS)においてX線を検出するために用いられるX線検出器に係わり、特にシリコンドリフト型X線検出器(SDD)において検出するX線のバックグランドを低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からEDSに用いられている半導体X線検出器として、図9に示すようなシリコン(Si)にリチウム(Li)をドープしたPIN型検出器が有る。図9の半導体素子は逆バイアスが印加されたPINダイオードであり、一方の電極には電界効果トランジスタ(FET)のゲートが接続されている。試料から発生したX線がPIN半導体に入射すると、X線量子のエネルギーに応じた数のイオン対が生成される。半導体に印加されている逆バイアス電圧により、生成したイオン対は分離して電子なだれを生じ、電極に引き寄せられる。FETのゲート電極の電位が変化することにより、PINダイオードに入射したX線量子のエネルギーに比例した大きさの電流変化信号が取り出される。なお、PIN型検出器でX線を検出するときは、PINダイオード部とFETを液体窒素で冷却する必要がある。
【0003】
PIN型検出器に対し、SDDはX線の高計数率測定を可能にするために比較的新しく開発されたX線検出器であり、PIN型検出器とは大きく異なる構造を有している。ここでは、図5を参照しながら、SDDについて簡単に説明する。図5はSDDのX線検出素子の概略構造図である。断面の構造を見やすいように、一部を切り欠いた図としている。
【0004】
検出すべきX線はカソード(C)側(紙面下方)からX線検出素子に入射する。PIN型検出器におけるFETは別体として配線接続されているが、SDDにおけるFETは図5に示すようにX線検出素子の後面上に形成されている。すなわち、FETの電極はそれぞれ内側から、ドレイン(D)、ゲート(G)、ソース(S)の順にX線検出素子上に配置されている。
【0005】
X線の高計数率測定を可能にするためには、X線検出素子に入射したX線によって作られるイオン対が電気的に取り出される時間(時定数)を出来るだけ短縮する必要がある。時定数を小さくするためにはX線検出素子の寄生静電容量を小さくしなければならない。SDDは、X線検出素子のアノード(A)を小さくすること及びFETをX線検出素子に統合配置することにより寄生静電容量を小さくしている。しかし、アノードを小さくするだけでは、X線入射によって生じた電子をアノードにうまく導くことが出来ない。そのため、図5に示すように、「フィールドストリップ」と呼ばれる多段のリング状電極(実際の装置ではもっと多くのリングを形成する)を設け、アノードに近い内側のリングから外側に向かって段々に負電位のバイアスを与えるようにしている。電子はフィールドストリップにかけられた段階的な電界に沿って移動し、アノードに集中して流れ込む。アノードはFETのゲート電極に接続されている。FETのゲート電極の電位が変化することにより、SDDに入射したX線量子のエネルギーに比例した大きさの電流変化信号が取り出される。
【0006】
X線検出素子の厚みを増加させるに従い、フィールドストリップにかける逆バイアス電圧をそれだけ高くする必要がある。しかし、この電圧をあまり高くすると、X線検出素子の収納容器内を高真空に保つなどの厳しい保護条件を満たす必要がある。そのため性能との兼ね合いでX線検出素子の厚みは0.5mm程度と、PIN型検出器に比べて薄く作られている。
【0007】
SDDは通常ペルチェ素子を使用した電子冷却を行なう。液体窒素によらずペルチェ素子による冷却を行なうだけで、PIN型X線検出器と同等のエネルギー分解能が得られること、またペルチェ素子による冷却機構を含む検出器全体の小型化と軽量化により装置への装着が容易であることもSDDの特徴である。
【0008】
図3に、ペルチェ素子を取り付けたSDDの部分外観図を示す。図4は、図3に示すSDDの断面図である。1はX線検出素子、1aはX線検出素子1の後面上に統合配置されたFET、2はX線検出素子1とFET1aに電気接続するための電気配線が施された電極端子板、3はペルチェ素子、4は後部熱伝導体である。電極端子板2は開口部2aを持つ枠状であり、X線検出素子1の周辺部で接触し、保持するようになっている。従って、FETが配置されたX線検出素子1の後面とペルチェ素子3との間には隙間がある。X線検出素子1を短時間で冷却できるように、ペルチェ素子3は電極端子板2を介してX線検出素子1になるべく近接するように取り付けられている。
【0009】
特許文献1の特開2006−119141号公報には、SDDの電荷−電圧変換率の率依存変化を補正する技術が開示されている。また、特許文献2の特開2005−308632号公報には、PIN型半導体検出器の冷却にペルチェ素子を使用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−119141号公報
【特許文献2】特開2005−308632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したようにSDDのX線検出素子の厚みは0.5mm程度であり、従来のSi(Li)半導体素子に比べてかなり薄く作られている。そのため、検出器に入射したX線のうち、X線検出素子を透過してX線検出素子の後方に取り付けられているペルチェ素子に到達する割合が多くなる。ペルチェ素子を構成する材料には原子番号の高い元素を多く含む材料が使用されているため、ペルチェ素子からは比較的高いエネルギーの二次X線が発生する。この二次X線が後面からX線検出素子に入射し検出されることによりバックグランドが増加するという問題がある。
【0012】
またこれとは別に、X線検出素子に近接してペルチェ素子を取り付けることによる問題点もある。ペルチェ素子には直流の大電流が流れている。この電流が磁場を発生する。また近傍に磁性部品があると複雑な磁界となる。この直流電流に変動や雑音が重畳するとさらに複雑になる。TEMやSEMに装着されるX線検出器は、観測しようとするX線の検出感度をあげるため、電子線が当たる測定試料のできるだけ近い位置に配置される。しかし、図3、図4に示すように、X線検出素子を冷却するためのペルチェ素子も試料の近傍に近づくことになるので、試料に照射される電子線はペルチェ素子の発生する磁界による影響を受け、電子顕微鏡の性能に悪影響を与えるという問題がある。この問題はSDDをXRFに装着する場合は特に問題となることは無い。しかし、電子線を試料に照射して該試料から発生する特性X線を分光検出することによって試料の分析を行なうTEMやSEMなどの電子線装置に装着する場合は大きな問題である。以下に説明するように、この問題は特にTEMにSDDを装着した場合においてより顕著にあらわれる。
【0013】
図6はTEMにEDSを装着して分析を行なうときの模式図である。上側対物レンズ磁極と下側対物レンズ磁極との間には電子線を集束するための極めて強い磁場が発生している。電子線照射により試料から発生するX線を出来るだけ多く検出するにはEDSを出来るだけ試料に近づける必要がある。しかしEDSを試料に近づけようとすると、EDSの先端はこの磁場により近づく状態となる。もしEDSがSDDタイプのX線検出器であれば、冷却用のペルチェ素子から発生する磁場がTEMの対物レンズの磁場を乱し、電子線に悪影響を与えることになる。
【0014】
一方、図7と図8はSEMにEDSを装着して分析を行なうときの模式図である。図7はアウトレンズ型対物レンズを有するSEMの場合、図8はセミインレンズ型対物レンズを有するSEMの場合である。アウトレンズ型対物レンズの場合は、EDSが配置される近傍まで対物レンズの磁場が漏れる事はない。セミインレンズ型対物レンズは試料面まで対物レンズの磁場を漏らすようにして電子線を細く絞るようにするタイプの対物レンズである。しかし、試料面にまで磁場を漏らして使用する場合は、高分解能を得ることが目的であり、このときの対物レンズ下面と試料面との距離は極めて小さい。従って、この漏れ磁場に影響を与えるほど試料にEDSを近づけることは出来ない。よって、SEMに取り付けるEDSがSDDであっても、TEMに取り付けた場合に比べると、ペルチェ素子から発生する磁場の影響は少ない。
【0015】
即ち、SDDの半導体素子が薄いことによる問題はTEMとSEMに取り付けた場合に共通の問題であり、ペルチェ素子から発生する磁場の問題はTEMに取り付けた場合の問題である。
【0016】
本発明は上記した問題を解決するためになされたものであって、その目的は、SDDの半導体素子を透過したX線が冷却用のペルチェ素子の構成元素を励起して二次的に発生するX線を抑制することによりバックグランドを低減することである。また、もうひとつの目的は、SDDをTEMに装着した場合に、試料に照射する電子線が冷却用のペルチェ素子から発生する磁場の影響を受けないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の問題を解決するために、
請求項1に記載の発明は、電子線又は電磁波を試料に照射して該試料から発生する特性X線を分光検出することにより該試料の分析を行なうX線分析装置に装着されるエネルギー分散型X線分光器に用いられるX線検出器であって、
X線を検出するための固体半導体からなるX線検出素子と、
前記X線検出素子にとりつけられ、前記X線検出素子を外部回路と電気接続するための接続端子を備えた電極端子板と、
前記電極端子板を介して熱的に接続して前記X線検出素子を冷却するペルチェ素子とからなるシリコンドリフト型X線検出器において、
前記X線検出素子と前記ペルチェ素子との間に前記ペルチェ素子を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の小さな元素を主成分とする第1遮蔽体を備え、
前記X線検出素子を透過して前記ペルチェ素子に到達するX線の線量を前記第1遮蔽体により減少させるようにしたことを特徴とする。
【0018】
また請求項2に記載の発明は、前記第1遮蔽体と前記ペルチェ素子との間に、前記ペルチェ素子を構成する材料よりも原子番号の大きな元素を主成分とする第2遮蔽体をさらに備え、
前記X線検出素子を透過して前記ペルチェ素子に到達したX線により前記ペルチェ素子から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させるようにしたことを特徴とする。
【0019】
また請求項3に記載の発明は、前記第1遮蔽体は窒化硼素又はベリリア磁器から成ることを特徴とする。
【0020】
また請求項4に記載の発明は、前記第2遮蔽体は金箔から成ることを特徴とする。
【0021】
また請求項5に記載の発明は、電子線を試料に照射して該試料から発生する特性X線を分光検出することにより該試料の分析を行なう電子線装置に装着されるエネルギー分散型X線分光器に用いられるX線検出器であって、
X線を検出するための固体半導体からなるX線検出素子と、
前記X線検出素子にとりつけられ、前記X線検出素子を外部回路と電気接続するための接続端子を備えた電極端子板と、
前記電極端子板を介して熱的に接続して前記X線検出素子を冷却するペルチェ素子とからなるシリコンドリフト型X線検出器において、
前記電極端子板と前記ペルチェ素子との間に熱伝導体を備え、
前記熱伝導体の長さは、前記ペルチェ素子が発生する磁場が前記電子線装置の電子線に影響を及ぼさないように前記ペルチェ素子を前記X線検出素子から遠ざけておくのに必要な距離に基づいて定められることを特徴とする。
【0022】
また請求項6に記載の発明は、前記電極端子板と前記熱伝導体との間に前記熱伝導体を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の小さな元素を主成分とする第1遮蔽体をさらに備え、
前記X線検出素子を透過して前記熱伝導体に到達するX線の線量を前記第1遮蔽体により減少させるようにしたことを特徴とする。
【0023】
また請求項7に記載の発明は、前記熱伝導体の前記X線検出素子側に開口端を持つ有底の空洞をさらに備えたことを特徴とする。
【0024】
また請求項8に記載の発明は、前記有底の空洞が前記X線検出素子を透過して進行するX線が斜めに入射する内壁面を有する形状であることを特徴とする。
【0025】
また請求項9に記載の発明は、前記有底の空洞が円錐状又は多角錐状又は内壁が放物面状又は単一焦点を持たない曲面状の形状であることを特徴とする。
【0026】
また請求項10に記載の発明は、前記第1遮蔽体は窒化硼素又はベリリア磁器から成ることを特徴とする。
【0027】
また請求項11に記載の発明は、前記第1遮蔽体と前記熱伝導体との間に前記熱伝導体よりも原子番号の大きな元素を主成分とする第3遮蔽体をさらに備え、前記X線検出素子を透過して前記熱伝導体に到達したX線により前記熱伝導体から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させるようにしたことを特徴とする。
【0028】
また請求項12に記載の発明は、前記第3遮蔽体は金箔から成ることを特徴とする。
【0029】
また請求項13に記載の発明は、前記有底の空洞内壁表面に前記熱伝導体を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の小さな元素を主成分とするX線減少層を設け、前記内壁表面で発生するX線のX線発生効率が小さくなるようにしたことを特徴とする。
【0030】
また請求項14に記載の発明は、前記X線減少層はカーボン塗料から成ることを特徴とする。
【0031】
また請求項15に記載の発明は、前記第1遮蔽体と前記第2遮蔽体との間に、前記第1遮蔽体より原子番号が大きく前記第2遮蔽体より原子番号が小さい元素を主成分とする少なくとも一つのX線遮蔽体を更に設けたことを特徴とする。
【0032】
また請求項16に記載の発明は、前記第1遮蔽体と前記第3遮蔽体との間に、前記第1遮蔽体より原子番号が大きく前記第3遮蔽体より原子番号が小さい元素を主成分とする少なくとも一つのX線遮蔽体を更に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
(1)請求項1記載の発明によれば、X線検出素子とペルチェ素子との間にペルチェ素子を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の小さな元素を主成分とする第1遮蔽体を備えたので、X線検出素子を透過してペルチェ素子に到達するX線の線量を第1遮蔽体により減少させ、また第1遮蔽体から発生するX線のエネルギーを低くすることができる。そのため、ペルチェ素子から発生する二次X線の量が減少し、また第1遮蔽体から発生するX線がX線検出素子で検出されにくくなるのでバックグランドを軽減することができる。
【0034】
(2)請求項2記載の発明によれば、第1遮蔽体とペルチェ素子との間に、ペルチェ素子を構成する材料よりも原子番号の大きな元素を主成分とする第2遮蔽体をさらに備えたので、X線検出素子を透過してペルチェ素子に到達したX線によりペルチェ素子から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させることができる。そのため、ペルチェ素子から発生する二次X線がX線検出素子に入射する量を減少させ、バックグランドを軽減することができる。
(3)請求項3記載の発明によれば、第1遮蔽体として窒化硼素又はベリリア磁器を用いることにより、X線検出素子を透過してペルチェ素子に到達するX線の線量を第1遮蔽体により減少させ、また第1遮蔽体から発生するX線のエネルギーを低くすることができる。そのため、ペルチェ素子から発生する二次X線の量が減少し、また第1遮蔽体から発生するX線がX線検出素子で検出されにくくなるのでバックグランドを軽減することができる。
【0035】
(4)請求項4記載の発明によれば、第2遮蔽体として金箔を用いることにより、X線検出素子を透過してペルチェ素子に到達したX線によりペルチェ素子から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させることができる。そのため、ペルチェ素子から発生する二次X線がX線検出素子に入射する量を減少させ、バックグランドを軽減することができる。
【0036】
(5)請求項5記載の発明によれば、電極端子板とペルチェ素子との間に熱伝導体を備えたので、ペルチェ素子から発生する二次X線の量が減少し、バックグランドを軽減することができる。またペルチェ素子が発生する磁場が電子線装置の電子線に影響を及ぼさないようにペルチェ素子の位置をX線検出素子から遠ざけることにより、TEMに装着する場合にもペルチェ素子による試料に照射する電子線への影響を避けることが出来る。
【0037】
(6)請求項6記載の発明によれば、電極端子板とペルチェ素子との間に熱伝導体を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の小さな元素を主成分とする第1遮蔽体を備えたので、X線検出素子を透過して熱伝導体に到達するX線の線量を減少させることができる。また第1遮蔽体から発生するX線のエネルギーを低くすることができる。そのため、熱伝導体から発生する二次X線がX線検出素子によって検出される量が減少し、バックグランドを軽減することができる。
【0038】
(7)請求項7記載の発明によれば、熱伝導体のX線検出素子側に開口端を持つ有底の空洞をさらに備えたので、X線検出素子を透過して熱伝導体に入射したX線が有底の空洞の壁面から二次X線を発生させるようになる。そのため、発生した二次X線がX線検出素子によって検出される量を減少させ、バックグランドを軽減することができる。
【0039】
(8)請求項8記載の発明によれば、前記有底の空洞が、前記X線検出素子を透過して進行するX線が斜めに入射する内壁面を有する形状としたので、有底の空洞の壁面で発生した二次X線がX線検出素子によって検出される量を減少させ、バックグランドを軽減することができる。
【0040】
(9)請求項9記載の発明によれば、熱伝導体に設けた有底の空洞を円錐状又は多角錐状又は内壁が放物面状又は単一焦点を持たない曲面状の形状としたので、有底の空洞の壁面で発生した二次X線がX線検出素子によって検出される量を減少させ、バックグランドを軽減することができる。
【0041】
(10)請求項10記載の発明によれば、第1遮蔽体として窒化硼素又はベリリア磁器を用いることにより、X線検出素子を透過してペルチェ素子に到達するX線の線量を第1遮蔽体により減少させ、また第1遮蔽体から発生するX線のエネルギーを低くすることができる。そのため、ペルチェ素子から発生する二次X線の量が減少し、また第1遮蔽体から発生するX線がX線検出素子で検出されにくくなるのでバックグランドを軽減することができる。
【0042】
(11)請求項11に記載の発明によれば、第1遮蔽体と熱伝導体との間に熱伝導体よりも原子番号の大きな元素を主成分とする第3遮蔽体をさらに備えたので、X線検出素子を透過して熱伝導体に到達したX線により熱伝導体から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させることができる。そのため熱伝導体から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させ、バックグランドを軽減することができる。
【0043】
(12)請求項12に記載の発明によれば、第3遮蔽体として金箔を用いることにより、X線検出素子を透過して熱伝導体に到達したX線により熱伝導体から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させることができる。そのため熱伝導体から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させ、バックグランドを軽減することができる。
【0044】
(13)請求項13に記載の発明によれば、有底の空洞内壁表面に熱伝導体を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の小さな元素を主成分とするX線減少層を設け、前記内壁表面で発生するX線のX線発生効率が小さくなるようにしたので、X線検出素子を透過して熱伝導体に到達したX線により熱伝導体から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させることができる。そのためバックグランドを軽減することができる。
【0045】
(14)請求項14に記載の発明によれば、X線減少層としてカーボン塗料を用いることにより有底の空洞内壁表面よりのX線発生効率が小さくなるため、X線検出素子を透過して熱伝導体に到達したX線により熱伝導体から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させることができる。そのためバックグランドを軽減することができる。
【0046】
(15)請求項15に記載の発明によれば、前記第1遮蔽体と前記第2遮蔽体との間に、前記第1遮蔽体より原子番号が大きく前記第2遮蔽体より原子番号が小さい元素を主成分とする少なくとも一つのX線遮蔽体を更に設けたことにより、X線検出素子を透過してペルチェ素子に到達したX線によりペルチェ素子から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させることができる。そのため、ペルチェ素子から発生する二次X線がX線検出素子に入射する量を減少させ、バックグランドを軽減することができる。
(16)請求項16に記載の発明によれば、前記第1遮蔽体と前記第3遮蔽体との間に、前記第1遮蔽体より原子番号が大きく前記第3遮蔽体より原子番号が小さい元素を主成分とする少なくとも一つのX線遮蔽体を更に設けたことにより、X線検出素子を透過して熱伝導体に到達したX線により熱伝導体から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させることができる。そのため、熱伝導体から発生する二次X線がX線検出素子に入射する量を減少させ、バックグランドを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明を実施するひとつのシリコンドリフト型X線検出器の概略構成例を示す断面図。
【図2】本発明を実施する他のシリコンドリフト型X線検出器の概略構成例を示す断面図。
【図3】シリコンドリフト型X線検出器の一例を示す外観図。
【図4】シリコンドリフト型X線検出器の一例を示す断面図。
【図5】シリコンドリフト型X線検出器の原理を説明するための図。
【図6】シリコンドリフト型X線検出器を透過電子顕微鏡に装着した様子を示す図。
【図7】アウトレンズ型対物レンズを有する走査電子顕微鏡にシリコンドリフト型X線検出器を装着した様子を示す図。
【図8】インレンズ型対物レンズを有する走査電子顕微鏡にシリコンドリフト型X線検出器を装着した様子を示す図。
【図9】シリコン(Si)にリチウム(Li)をドープしたPIN型検出器の原理を説明するための図。
【図10】本発明を実施するひとつのシリコンドリフト型X線検出器の変形された概略構成例を示す断面図。
【図11】本発明を実施する他のシリコンドリフト型X線検出器の変形された概略構成例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下図1、図2を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。但し、この例示によって本発明の技術範囲が制限されるものでは無い。各図において、同一または類似の動作を行なうものには共通の符号を付し、詳しい説明の重複を避ける。なお、以下の説明において、便宜的に本来検出すべきX線がX線検出器に入射する側の面を前面、入射と反対側の面を後面と呼ぶ。
(実施の形態1)
図1は、本発明を実施するシリコンドリフト型X線検出器(SDD)の概略構成例を示す断面図である。1はX線検出素子、1aはX線検出素子1の後面上に統合配置された電界効果トランジスタ(FET)、2はX線検出素子1とFET1aに電気接続するための電気配線が施された電極端子板、3はペルチェ素子、4は後部熱伝導体、5は例えば窒化硼素(BN)やベリリア磁器等の軽元素材料からなる第1遮蔽体、6は例えば金箔等の重元素からなる第2遮蔽体、7は冷却されたSDDを真空環境下に保持するための非磁性外套、8はX線入射窓である。電極端子板2は開口部2aを持つ枠状であり X線検出素子1の周辺部で接触し、X線検出素子1を保持している。
【0049】
X線検出素子1の厚みは0.5mm程度と薄いため、X線検出素子1を透過したX線の多くは第1遮蔽体5に入射する。第1遮蔽体5を構成するのは、例えば窒素(N)、硼素(B)、ベリリウム(Be)、酸素(O)等の軽元素である。シリコン(Si)主体の半導体X線検出器において、一般に各元素の特性X線に対する検出感度はSiが最大で、N,B,Be,O等の軽元素から発生する低エネルギーの特性X線に対する感度は極めて低い。加えて、軽元素から発生する特性X線の電子線による励起効率も低いので、元々軽元素から発生する特性X線量も少ない。第1遮蔽体5は、少なくとも後述するペルチェ素子3を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の小さな元素を主成分とする必要があるが、上記したようにできるだけ軽い元素から成る成分で構成することが望ましい。
【0050】
一方、ペルチェ素子3を構成する材料には、例えばビスマス(Bi)、テルル(Te)、インジウム(In)等の重金属が含まれている。これらの重元素から発生する二次X線は比較的高エネルギーで、多くの特性X線種が存在する。特に2〜3keVくらいのエネルギーを持つ特性X線種は、シリコン(Si)主体の半導体X線検出器の検出感度が高いエネルギー範囲に含まれる。
【0051】
そのため、軽元素材料からなる第1遮蔽体を設けた場合にX線検出素子1を透過したX線によって第1遮蔽体5から発生する二次X線が後面からX線検出素子1に入射するX線量は、第1遮蔽体が無くて直接ペルチェ素子3から発生する二次X線が後面からX線検出素子1に入射するX線量に比べて大幅に低下する。これにより、二次X線に起因するバックグランドを軽減することが出来る。
【0052】
なお、図1において第1遮蔽体5はペルチェ素子3と電極端子板2との間に挟まれるため、熱伝導性に優れた材料であることが必要である。前述の窒化硼素(BN)やベリリア磁器はこの条件を満たす代表的材料であるが、熱伝導性に優れた軽元素材料であればこれらに限る必要は無い。
【0053】
第1遮蔽体5は軽元素を主とする構成のため、X線検出素子1を透過したX線がさらに第1遮蔽体5も透過してペルチェ素子3に到達してしまうX線もありえる。ペルチェ素子3の材料には重元素が含まれるため、比較的エネルギーの高い二次X線が発生する場合も有る。こうしたエネルギーの高いX線が後面からX線検出素子1に入射しないように遮蔽するため、第1遮蔽体5とペルチェ素子3との間に重元素からなる第2遮蔽体6を配置するとなお良い。
【0054】
第2遮蔽体6は、少なくともペルチェ素子3を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の大きな元素を主成分とする必要がある。また、第1遮蔽体5と同様の理由で、第2遮蔽体6も熱伝導性に優れた材料であることが必要である。前述の金箔はこの条件を満たす代表的材料であるが、熱伝導性に優れた重元素材料であればこれらに限る必要は無い。
【0055】
図1のSDDの変形を図10に示す。図10のSDDは、電極端子板2の枠を長くして開口部2aに第1遮蔽体5をはめ込み、電極端子板2とペルチェ素子3が直に接する構造となっている。このようにすれば、第1遮蔽体5を配置してもX線検出素子1と電極端子板2の冷却効率の低下を避けることが出来る。
【0056】
上記したように、図1に示すSDDにおいて、第1遮蔽体5、又は第1遮蔽体5と第2遮蔽体6を電極端子板2の間に設けることにより、SDDに取り付けられているペルチェ素子から発生する二次X線に起因するバックグランドを軽減することができる。
【0057】
なお、図1においては第1遮蔽体と第2遮蔽体の両方を設ける例を示しているが、第1遮蔽体のみを設けるようにしても良い。
【0058】
(実施の形態2)
図2は、本発明を実施する他のもうひとつのシリコンドリフト型X線検出器(SDD)の概略構成例を示す断面図である。前述したように、ペルチェ素子には直流の大電流が流れている。実施の形態2のSDDは、TEMに装着する場合にも、ペルチェ素子に流れる電流によって発生する磁場が電子線に影響を与えないようにするためのものである。
【0059】
図2において、1はX線検出素子、1aはX線検出素子1の後面上に統合配置された電界効果トランジスタ(FET)、2はX線検出素子1とFET1aに電気接続するための電気配線が施された電極端子板、3はペルチェ素子、4は後部熱伝導体、5は軽元素材料からなる第1遮蔽体、7は非磁性外套、8はX線入射窓である。電極端子板2は開口部2aを持つ枠状であり、X線検出素子1の周辺部で接触し、保持するようになっている。
【0060】
ペルチェ素子3から離れた位置にあるX線検出素子1を出来るだけ効率良く冷却するため、第1遮蔽体5とペルチェ素子3の間には熱伝導体9が設けられている。熱伝導体9には、出来るだけ熱伝導に優れた材料で、且つ二次X線の発生を少なくするためにペルチェ素子を構成する材料よりも原子番号が低い物質が望ましい。これらの条件を満たすものとして、例えば銅(Cu)等の金属を使用すれば良い。
【0061】
熱伝導体9の長さは、ペルチェ素子3をX線検出素子1とどれだけ離せばよいかによって決まる。なぜならば、ペルチェ素子3が電子線に与える影響の大きさは、TEMの対物レンズ構造やSDDのペルチェ素子の性能に応じて変わるためである。
【0062】
熱伝導体9の前面には、熱伝導体9を円錐状に抉った有底の空洞からなるバックグランド軽減機構10が形成されている。もしX線検出素子1を透過したX線が第1遮蔽体5を透過した場合、第1遮蔽体5の直後に熱伝導体9が存在すると、熱伝導体9から二次X線が発生し易くなる。しかし、図2に示すように熱伝導体9に空洞を設けた構造になっていれば、透過したX線は空洞内を進行した後にバックグランド軽減機構10の壁面10aに斜めに入射し、そこで二次X線を発生させることになる。一般に、発生した二次X線の放射方向は概ね等方的であると考えられるため、二次X線の多くが熱伝導体の内部で吸収され、壁面10aで発生したX線がX線検出素子1の方向に向かう割合は少ない。
【0063】
従って、熱伝導体9にバックグランド軽減機構10を設ければ、第1遮蔽体5の直ぐ後に熱伝導体9が有る場合に比べて、後面からX線検出素子1に入射する二次X線のX線量を大幅に減少させることが出来る。図2においてバックグランド軽減機構10の形状は円錐状になっているが、必ずしも円錐状に限られるわけではなく、例えば多角錐状や内壁が放物面状又は単一焦点を持たない曲面状であっても同様の効果を得ることが出来る。
【0064】
図2のSDDの変形を図11に示す。図11のSDDは、電極端子板2の枠を長くしてその一部を切り欠き、開口部2aに第1遮蔽体5をはめ込んで固定している。そのため、バックグランド軽減機構10の空洞があっても、第1遮蔽体5を確実に支持できる構造となっている。また、電極端子板2とペルチェ素子3が直に接する構造となり、第1遮蔽体5を配置してもX線検出素子1と電極端子板2の冷却効率の低下を避けることが出来る。
【0065】
なお、図2において、遮蔽体に関しては軽元素材料からなる第1遮蔽体のみを設けるようにしているが、第1遮蔽体と熱伝導体9との間に、例えば金箔等の熱伝導体9より重い元素からなる第3遮蔽体(図示せず)を設けるようにしても良い。この第3遮蔽体は、少なくとも熱伝導体9を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の大きな元素を主成分とする必要がある。
【0066】
さらに、図2及び図11において、壁面10aの表面に熱伝導体9よりも原子番号の小さな物質からなるX線減少層を設ければ、X線検出素子1を透過したX線が壁面10aの表面で二次X線を発生させる効率を小さくすることができる。このX線減少層としては、例えばカーボン塗料を用いることができる。
【0067】
以上述べたように、本発明によれば、X線検出素子1とペルチェ素子3との間に軽元素を主成分とするX線遮蔽体と、重元素を主成分とするX線遮蔽体を備え、SDDの半導体素子を透過したX線が冷却用のペルチェ素子の構成元素を励起して二次的に発生するX線を抑制することによりバックグランドを低減することができる。
【0068】
また、X線検出素子1とペルチェ素子3との間にバックグランド軽減機構を有する熱伝導体を設けたので、ペルチェ素子が発生させる磁界が電子線に影響を及ぼさないようにすることができる。
【0069】
なお、上記した実施の形態1及び2において、X線検出素子1とペルチェ素子3との間に軽元素を主成分とするX線遮蔽体と、重元素を主成分とするX線遮蔽体を重ねて配置する構造を示したが、これに限る必要は無い。例えば、遮蔽体を三層以上の積層構造とし、X線検出素子1に近い層をより軽く、ペルチェ素子3に近い層をより重い元素成分で構成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0070】
(同一または類似の動作を行なうものには共通の符号を付す。)
1…X線検出素子
2…電極端子板
3…ペルチェ素子
4…後部熱伝導体
5…第1遮蔽体
6…第2遮蔽体
7…非磁性外套
8…X線入射窓
9…熱伝導体
10…バックグランド軽減機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線又は電磁波を試料に照射して該試料から発生する特性X線を分光検出することにより該試料の分析を行なうX線分析装置に装着されるエネルギー分散型X線分光器に用いられるX線検出器であって、
X線を検出するための固体半導体からなるX線検出素子と、
前記X線検出素子にとりつけられ、前記X線検出素子を外部回路と電気接続するための接続端子を備えた電極端子板と、
前記電極端子板を介して熱的に接続して前記X線検出素子を冷却するペルチェ素子とからなるシリコンドリフト型X線検出器において、
前記X線検出素子と前記ペルチェ素子との間に前記ペルチェ素子を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の小さな元素を主成分とする第1遮蔽体を備え、
前記X線検出素子を透過して前記ペルチェ素子に到達するX線の線量を前記第1遮蔽体により減少させるようにしたことを特徴とするシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項2】
前記第1遮蔽体と前記ペルチェ素子との間に、前記ペルチェ素子を構成する材料よりも原子番号の大きな元素を主成分とする第2遮蔽体をさらに備え、
前記X線検出素子を透過して前記ペルチェ素子に到達したX線により前記ペルチェ素子から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項3】
前記第1遮蔽体は窒化硼素又はベリリア磁器から成ることを特徴とする請求項1乃至2の何れかに記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項4】
前記第2遮蔽体は金箔から成ることを特徴とする請求項2乃至3の何れかに記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項5】
電子線を試料に照射して該試料から発生する特性X線を分光検出することにより該試料の分析を行なう電子線装置に装着されるエネルギー分散型X線分光器に用いられるX線検出器であって、
X線を検出するための固体半導体からなるX線検出素子と、
前記X線検出素子にとりつけられ、前記X線検出素子を外部回路と電気接続するための接続端子を備えた電極端子板と、
前記電極端子板を介して熱的に接続して前記X線検出素子を冷却するペルチェ素子とからなるシリコンドリフト型X線検出器において、
前記電極端子板と前記ペルチェ素子との間に熱伝導体を備え、
前記熱伝導体の長さは、前記ペルチェ素子が発生する磁場が前記電子線装置の電子線に影響を及ぼさないように前記ペルチェ素子を前記X線検出素子から遠ざけておくのに必要な距離に基づいて定められることを特徴とするシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項6】
前記電極端子板と前記熱伝導体との間に前記熱伝導体を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の小さな元素を主成分とする第1遮蔽体をさらに備え、
前記X線検出素子を透過して前記熱伝導体に到達するX線の線量を前記第1遮蔽体により減少させるようにしたことを特徴とする請求項5に記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項7】
前記熱伝導体の前記X線検出素子側に開口端を持つ有底の空洞をさらに備えたことを特徴とする請求項5又は6の何れかに記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項8】
前記有底の空洞が、前記X線検出素子を透過して進行するX線が斜めに入射する内壁面を有する形状であることを特徴とする請求項7に記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項9】
前記有底の空洞が円錐状又は多角錐状又は内壁が放物面状又は単一焦点を持たない曲面状の形状であることを特徴とする請求項8に記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項10】
前記第1遮蔽体は窒化硼素又はベリリア磁器から成ることを特徴とする請求項6乃至9の何れかに記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項11】
前記第1遮蔽体と前記熱伝導体との間に前記熱伝導体よりも原子番号の大きな元素を主成分とする第3遮蔽体をさらに備え、前記X線検出素子を透過して前記熱伝導体に到達したX線により前記熱伝導体から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させるようにしたことを特徴とする請求項6乃至10の何れかに記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項12】
前記第3遮蔽体は金箔から成ることを特徴とする請求項6乃至11の何れかに記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項13】
前記有底の空洞内壁表面に前記熱伝導体を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の小さな元素を主成分とするX線減少層を設け、前記内壁表面で発生するX線のX線発生効率が小さくなるようにしたことを特徴とする請求項8乃至12の何れかに記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項14】
前記X線減少層はカーボン塗料から成ることを特徴とする請求項13に記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項15】
前記第1遮蔽体と前記第2遮蔽体との間に、前記第1遮蔽体より原子番号が大きく前記第2遮蔽体より原子番号が小さい元素を主成分とする少なくとも一つのX線遮蔽体を更に設けたことを特徴とする請求項2に記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項16】
前記第1遮蔽体と前記第3遮蔽体との間に、前記第1遮蔽体より原子番号が大きく前記第3遮蔽体より原子番号が小さい元素を主成分とする少なくとも一つのX線遮蔽体を更に設けたことを特徴とする請求項11に記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項1】
電子線又は電磁波を試料に照射して該試料から発生する特性X線を分光検出することにより該試料の分析を行なうX線分析装置に装着されるエネルギー分散型X線分光器に用いられるX線検出器であって、
X線を検出するための固体半導体からなるX線検出素子と、
前記X線検出素子にとりつけられ、前記X線検出素子を外部回路と電気接続するための接続端子を備えた電極端子板と、
前記電極端子板を介して熱的に接続して前記X線検出素子を冷却するペルチェ素子とからなるシリコンドリフト型X線検出器において、
前記X線検出素子と前記ペルチェ素子との間に前記ペルチェ素子を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の小さな元素を主成分とする第1遮蔽体を備え、
前記X線検出素子を透過して前記ペルチェ素子に到達するX線の線量を前記第1遮蔽体により減少させるようにしたことを特徴とするシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項2】
前記第1遮蔽体と前記ペルチェ素子との間に、前記ペルチェ素子を構成する材料よりも原子番号の大きな元素を主成分とする第2遮蔽体をさらに備え、
前記X線検出素子を透過して前記ペルチェ素子に到達したX線により前記ペルチェ素子から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項3】
前記第1遮蔽体は窒化硼素又はベリリア磁器から成ることを特徴とする請求項1乃至2の何れかに記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項4】
前記第2遮蔽体は金箔から成ることを特徴とする請求項2乃至3の何れかに記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項5】
電子線を試料に照射して該試料から発生する特性X線を分光検出することにより該試料の分析を行なう電子線装置に装着されるエネルギー分散型X線分光器に用いられるX線検出器であって、
X線を検出するための固体半導体からなるX線検出素子と、
前記X線検出素子にとりつけられ、前記X線検出素子を外部回路と電気接続するための接続端子を備えた電極端子板と、
前記電極端子板を介して熱的に接続して前記X線検出素子を冷却するペルチェ素子とからなるシリコンドリフト型X線検出器において、
前記電極端子板と前記ペルチェ素子との間に熱伝導体を備え、
前記熱伝導体の長さは、前記ペルチェ素子が発生する磁場が前記電子線装置の電子線に影響を及ぼさないように前記ペルチェ素子を前記X線検出素子から遠ざけておくのに必要な距離に基づいて定められることを特徴とするシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項6】
前記電極端子板と前記熱伝導体との間に前記熱伝導体を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の小さな元素を主成分とする第1遮蔽体をさらに備え、
前記X線検出素子を透過して前記熱伝導体に到達するX線の線量を前記第1遮蔽体により減少させるようにしたことを特徴とする請求項5に記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項7】
前記熱伝導体の前記X線検出素子側に開口端を持つ有底の空洞をさらに備えたことを特徴とする請求項5又は6の何れかに記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項8】
前記有底の空洞が、前記X線検出素子を透過して進行するX線が斜めに入射する内壁面を有する形状であることを特徴とする請求項7に記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項9】
前記有底の空洞が円錐状又は多角錐状又は内壁が放物面状又は単一焦点を持たない曲面状の形状であることを特徴とする請求項8に記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項10】
前記第1遮蔽体は窒化硼素又はベリリア磁器から成ることを特徴とする請求項6乃至9の何れかに記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項11】
前記第1遮蔽体と前記熱伝導体との間に前記熱伝導体よりも原子番号の大きな元素を主成分とする第3遮蔽体をさらに備え、前記X線検出素子を透過して前記熱伝導体に到達したX線により前記熱伝導体から発生する二次X線が前記X線検出素子へ入射する量を減少させるようにしたことを特徴とする請求項6乃至10の何れかに記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項12】
前記第3遮蔽体は金箔から成ることを特徴とする請求項6乃至11の何れかに記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項13】
前記有底の空洞内壁表面に前記熱伝導体を構成する材料の平均原子番号よりも原子番号の小さな元素を主成分とするX線減少層を設け、前記内壁表面で発生するX線のX線発生効率が小さくなるようにしたことを特徴とする請求項8乃至12の何れかに記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項14】
前記X線減少層はカーボン塗料から成ることを特徴とする請求項13に記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項15】
前記第1遮蔽体と前記第2遮蔽体との間に、前記第1遮蔽体より原子番号が大きく前記第2遮蔽体より原子番号が小さい元素を主成分とする少なくとも一つのX線遮蔽体を更に設けたことを特徴とする請求項2に記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【請求項16】
前記第1遮蔽体と前記第3遮蔽体との間に、前記第1遮蔽体より原子番号が大きく前記第3遮蔽体より原子番号が小さい元素を主成分とする少なくとも一つのX線遮蔽体を更に設けたことを特徴とする請求項11に記載のシリコンドリフト型X線検出器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−169659(P2010−169659A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266163(P2009−266163)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
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