説明

シリコン含有ベンゾオキサジン組成物

【課題】従来のベンゾオキサジン硬化物が有するすぐれた耐熱性などを損なわずに、硬化物に柔軟性を付与し得るベンゾオキサジン組成物を提供する。
【解決手段】一般式


(ここで、Rは炭素数2〜6の2価炭化水素基であり、nは0〜3の整数および/または4以上の整数である)で表わされるシリコン含有ベンゾオキサジン化合物およびN-フェニル置換ベンゾオキサジン基を2個以上とする化合物〔II〕を含有してなるシリコン含有ベンゾオキサジン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン含有ベンゾオキサジン組成物に関する。さらに詳しくは、柔軟性を有するベンゾオキサジン硬化物を与え得るシリコン含有ベンゾオキサジン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般式

で表わされ、R:CH2CH2CH2基であるシリコン含有ベンゾオキサジンが、特許文献1に記載されている。
【0003】
また、一般式〔I〕で表わされ、R:CH2CH2基であり、n:0であるシリコン含有ベンゾオキサジンが特許文献2〜6に記載されており、特許文献6では該シリコン含有ベンゾオキサジンをエポキシ樹脂およびベンズイミダゾール化合物またはその塩と共に形成させた熱硬化性樹脂組成物は、構造用複合材料、土木建築用材料、電気・電子材料分野におけるLSIや発光ダイオード用の絶縁材、封止剤等、プリント配線板や積層板等の接着剤、マトリックス材、インク、塗料等に好適に使用し得ると述べられている。
【0004】
さらに、非特許文献1には、R:CH2CH2CH2基であり、n:0である1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン-ベンゾオキサジンを、3,4-ジヒドロ-3-フェニル-2H-1,3-ベンゾオキサジンまたは3-フリフリル-3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジンと共重合させた共重合体について記載されている。
【0005】
しかしながら、ベンゾオキサジン化合物の硬化物は、耐熱性、難燃性、電気特性などにすぐれ、また硬化時に揮発性副生成物を発生せず、高い寸法安定性を有するという特徴を有しているが、分子構造が剛直で脆いという欠点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平9−502452号公報
【特許文献2】特開平11−12258号公報
【特許文献3】特開2000−169456号公報
【特許文献4】特開2001−213957号公報
【特許文献5】特開2006−335671号公報
【特許文献6】特開2009−203311号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J. of Polymer Sci.:Part A:Polymer Chem. 45巻 1007頁 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来のベンゾオキサジン硬化物が有するすぐれた耐熱性などを損なわずに、硬化物に柔軟性を付与し得るベンゾオキサジン組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる本発明の目的は、一般式

(ここで、Rは炭素数2〜6の2価炭化水素基であり、nは0〜3の整数および/または4以上の整数である)で表わされるシリコン含有ベンゾオキサジン化合物およびN-フェニル置換ベンゾオキサジン基を2個以上とする化合物〔II〕を含有してなるシリコン含有ベンゾオキサジン組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るシリコン含有ベンゾオキサジン組成物は、それを硬化させたときガラス転移温度Tgが低下せず、すなわちベンゾオキサジン化合物の硬化物が本来有する耐熱性などを損なわずに、硬化物に柔軟性などを付与し得る。
【0011】
かかる特性を有する本発明のシリコン含有ベンゾオキサジン組成物は、プリント配線板の基板材料、封止剤、含浸(プリプレグ)、接着剤、塗料、コーティング材、FRP、各種成形材料等に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1〜3および比較例1〜2におけるG'(貯蔵弾性率)とtanδの値を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一般式〔I〕で表わされるシリコン含有ベンゾオキサジン化合物は、前述の如く公知の化合物である。また、かかる化合物は、α,ω-ビス(末端アミノアルキル)ポリジメチルシロキサンに、理論的には2倍モル量のフェノールおよび4倍モル当量のパラホルムアルデヒドを反応させることにより得られることも公知である。
【0014】
ここで、α,ω-ビス(末端アミノアルキル)ポリジメチルシロキサンのポリジメチルシロキサン基

において、種々のn値を有するものを用いることにより、用いられたn値に対応するn値を有するシリコン含有ベンゾオキサジン化合物を得ることができる。ただし、例えばn:0の硬化物は硬く、従来のベンゾオキサジン硬化物に近い物性を有する硬化物を与え、一方n:8の硬化物は、ゼリー状のゴムで、単独では相溶し難いため、n:0のものと併用することが好ましい。
【0015】
一般には、nは0〜3の整数、または4以上、好ましくは4〜10の整数のものが単独であるいは併用して用いられる。求められるシリコン含有ベンゾオキサジン化合物の性状にもよるが、nはそれ単独または併用したときの平均値として、0〜50、好ましくは0〜20のものが用いられる。
【0016】
シリコン含有ベンゾオキサジン化合物と混合して用いられるN-フェニル置換ベンゾオキサジン基(ベンゾオキサジン基:3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン基)を2個以上有する化合物〔II〕としては、例えば次のような化合物が挙げられ、これらの化合物もまた前述の如く公知である。
・ビス(3,4-ジヒドロ-3-フェニル-2H-1,3-ベンゾオキサジン)メタン 〔IIa〕
・2,2-ビス(3,4-ジヒドロ-3-フェニル-2H-1,3-ベンゾオキサジン)プロパン 〔IIb〕
・3,3’-[メチレンビス(4,1-フェニレン)]ビス(3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン) 〔IIc〕
ただし、この化合物のフェニル基は、フェニレン基を形成している
【0017】
シリコン含有ベンゾオキサジン化合物〔I〕は、N-フェニル置換ベンゾオキサジン基を2個以上有する化合物〔II〕100重量部に対し、5〜300重量部、好ましくは5〜250重量部の割合で用いられる。シリコン含有ベンゾオキサジン化合物〔I〕の混合割合がこれよりも少ないと、硬化物に柔軟性に付与するという本発明の目的が達成されず、一方これよりも多い割合で用いられると、相溶しなくなり、それ以上柔軟にならない。
【0018】
これら2種類のベンゾオキサジン化合物よりなるシリコン含有ベンゾオキサジン組成物の硬化に際しては、硬化促進剤を使用することもでき、例えばこれら2種類のベンゾオキサジン化合物の合計量100重量部に対して1〜20重量部、好ましくは2〜10重量部の各種有機酸(脂肪族モノまたはジカルボン酸、芳香族カルボン酸等)、1〜40重量部、好ましくは2〜20重量部の金属酸化物または水酸化物、有機酸金属塩等、0.2〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部のベンズイミダゾール化合物またはその有機酸塩等の少なくとも一種を用いることもできる。
【0019】
組成物の調製は、2種類のベンゾオキサジン化合物に、必要に応じて上記の如き硬化促進剤、顔料、可塑剤、無機または有機充填剤等を添加し、溶融混合、粉体混合、溶液混合等任意の混合方法によって行われる。調製された熱硬化性樹脂組成物の成形は、溶融注型法、溶融含浸法、粉体法、RIM法などの無溶剤法あるいは樹脂溶液含浸法、溶剤塗装法などの溶剤法によって行われ、これらの加熱成形時に熱硬化性樹脂の硬化反応が行われる。その硬化反応温度は、一般に約150〜250℃、好ましくは約170〜220℃である。
【実施例】
【0020】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0021】
参考例1
α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(信越化学製品PAM-E)

10g(0.038モル)、フェノール14.5g(0.154モル)、パラホルムアルデヒド9.2g(0.308モル当量)およびトルエン200mlを容量500mlのフラスコ内に仕込み、攪拌しながら120℃で2時間反応させた。反応終了後、反応混合物を10重量%水酸化ナトリウム水溶液および飽和食塩水で順次洗浄した後、エバポレータでトルエンを留去し、シリコン含有ベンゾオキサジンを16.8g(収率88%)得た。このシリコン含有ベンゾオキサジンのn値は、平均0.2である。

【0022】
参考例2
α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(信越化学製品KF-8010)10g(0.012モル)、フェノール4.6g(0.049モル)、パラホルムアルデヒド2.9g(0.098モル当量)およびトルエン200mlを容量500mlのフラスコ内に仕込み、攪拌しながら120℃で2時間反応させた。反応終了後、反応混合物を10重量%水酸化ナトリウム水溶液および飽和食塩水で順次洗浄した後、エバポレータでトルエンを留去し、シリコン含有ベンゾオキサジンを11.7g(収率91%)得た。このシリコン含有ベンゾオキサジンのn値は、平均7.7である。
【0023】
実施例1〜10、比較例1〜2
シリコン含有ベンゾオキサジンと汎用ベンゾオキサジンの所定量をアルミパンに取り、ホットプレートで80℃に加熱しながら混合した後、200℃、4時間で硬化させ、細長いシート状体サンプル(125×40×1mm)を成形した。
BZX-Si2:一般式〔I〕において、R:CH2CH2CH2、n:0である。
BZX-Si10:一般式〔I〕において、R:CH2CH2CH2、n:8である。
BZ〔IIa〕:ビス(3,4-ジヒドロ-3-フェニル-2H-1,3-ベンゾオキサジン)メタン
BZ〔IIc〕:3,3’-[メチレンビス(4,1-フェニレン)]ビス(3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベ
ンゾオキサジン)
【0024】
得られたサンプルについて、昇温速度5℃/分、温度範囲30〜220℃でDMA測定を行い、弾性率E'(150℃で測定)およびガラス転移温度Tg(tanδの値から算出)を測定した。実施例1〜3および比較例1〜2での測定結果は、図1のグラフに示される。
【0025】
測定結果は、組成物を形成するベンゾオキサジン化合物の混合割合(単位:重量%)と共に、次の表に示される。

実施例 比較例
10
〔組成物〕
BZX-Si2 67 50 33 17 9 67 50 33 − − − −
BZX-Si10 − − − 17 24 − − − 9 9 − −
BZ〔IIa〕 33 50 67 66 67 − − − 91 − 100 −
BZ〔IIc〕 − − − − − 33 50 67 − 91 − 100
〔測定結果〕
弾性率(MPa) 156 160 169 207 334 421 410 399 524 803 754 1482
Tg (℃) 158 161 163 162 163 167 167 167 170 205 176 207


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式

(ここで、Rは炭素数2〜6の2価炭化水素基であり、nは0〜3の整数および/または4以上の整数である)で表わされるシリコン含有ベンゾオキサジン化合物およびN-フェニル置換ベンゾオキサジン基を2個以上有する化合物〔II〕を含有してなるシリコン含有ベンゾオキサジン組成物。
【請求項2】
N-フェニル置換ベンゾオキサジン基を2個以上有する化合物〔II〕がビス(3,4-ジヒドロ-3-フェニル-2H-1,3-ベンゾオキサジン)メタン

(ここで、Phはフェニル基である)である請求項1記載のシリコン含有ベンゾオキサジン組成物。
【請求項3】
N-フェニル置換ベンゾオキサジン基を2個以上有する化合物〔II〕が2,2-ビス(3,4-ジヒドロ-3-フェニル-2H-1,3-ベンゾオキサジン)プロパン

(ここで、Phはフェニル基である)である請求項1記載のシリコン含有ベンゾオキサジン組成物。
【請求項4】
N-フェニル置換ベンゾオキサジン基を2個以上有する化合物〔II〕が3,3’-[メチレンビス(4,1-フェニレン)]ビス(3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン)

である請求項1記載のシリコン含有ベンゾオキサジン組成物。
【請求項5】
N-フェニル置換ベンゾオキサジン基を2個以上有する化合物〔II〕100重量部に対し、シリコン含有ベンゾオキサジン化合物〔I〕が5〜300重量部の割合で用いられた請求項1記載のシリコン含有ベンゾオキサジン組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−12516(P2012−12516A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150863(P2010−150863)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】