説明

シリコン球状体用の加工電極装置及び加工方法

【課題】シリコン球状体の上の半球部分のみならず下の半球部分にもテクスチャー形状を形成できるシリコン球状体用の加工電極装置及び加工方法を提供する。
【解決手段】電極2上に載置して真空雰囲気内でテクスチャーを加工される加工電極装置は、シリコン球状体14の表面に対して、磁力線が少なくとも45°の角度になるように構成した磁石組み込み電極を有する。加工方法は、前記処理基板に、シリコン球状体の表面に対して、磁力線が少なくとも45°になるように構成した磁石12を組み込み、反応性イオンエッチング法により、エッチングガスとしてμテクスチャーを形成する際に反応に寄与するフッ素系ガスと、マスク材をより効率的に形成しテクスチャー形成を促す塩素系ガスと、シリコン球状体の表面を酸化させまたマスク材のポリマーの大きさを制御する酸素ガスとを含むガスを使用して、シリコン球状体の表面に微細なμテクスチャーを加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置におけるシリコン球状体用の加工電極装置及び加工方法に関するものであり、特にシリコン球状体の表面にサブミクロンのピラミッド型の凹凸を形成し反射率を低減させるような加工に応用できる分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年結晶Siの太陽電池の分野においてSiの消費量を減じ材料費を低減できる集光型の球状Si太陽電池が注目されている。一般に約900個の球状Siを一つのセルが構成され、このようなセルが200〜300枚設けられて一つの太陽電池を形成している。
【0003】
先行技術の例としては、光電変換部を薄型化して、高価なシリコンの使用量を低減ししかも入射してくる光を有効利用するために、各々底部に孔を形成した導電体から成る多数の凹部内に球状素子を取り付け、凹部内面を反射鏡として機能させるようにした球状太陽電池及びその製造法は公知である(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【0004】
また、この種の装置に用いられる球状粒子は、底部にノズル孔を設けた坩堝に材料を入れ、溶融させ、上方からガス圧力を作用させて坩堝の底部のノズル孔から溶融した材料を滴下させることにより作られている(特許文献5、特許文献6参照)。
【0005】
従来公知の仕方で製作したシリコン球状体に対して、光電変換効率を高めるために、その表面にテクスチャー加工を施している。このようなテクスチャー加工には一般に反応性イオンエッチング法やプラズマエッチング法が用いられている。
【0006】
ところで、従来技術の装置では、単なる平行平板の電極上にシリコン球状体を載置しただけであるので、通常の反応性イオンエッチング(RIE)装置を用いて球状Siテクスチャー加工で行った場合、シリコン球状体の上の半球部分ではテクスチャー形状が形成されるが、下の半球部分は、表面に対して入射するプラズマの粒子の垂直成分が極めて少ないためにテクスチャーが形成されないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−164554
【特許文献2】特開2004−63564
【特許文献3】特開2007−214264
【特許文献4】特開2009−135332
【特許文献5】特開2002−292265
【特許文献6】特開2004−244670
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、かかる問題点を解決して、シリコン球状体の上の半球部分では勿論のこと下の半球部分にもテクスチャー形状を形成できるシリコン球状体用の加工電極装置及び加工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明の第1の発明によれば、電極上に載置して真空雰囲気内でテクスチャー形成加工が行われる本発明による加工電極装置において、
シリコン球状体の表面に対して、磁力線が少なくとも45°の角度になるように構成した磁石組み込み電極を有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、処理基板を電極上に載置して真空雰囲気内でテクスチャー形成加工する本発明による加工方法において、
前記処理基板に、シリコン球状体の表面に対して、磁力線が少なくとも45°になるように構成した磁石を組み込み、
反応性イオンエッチング法により、エッチングガスとしてμテクスチャーを形成する際に反応に寄与するフッ素系ガスと、マスク材を依り効率的に形成しテクスチャー形成を促す塩素系ガスと、シリコン球状体の表面を酸化させまたマスク材のポリマーの大きさを制御する酸素ガスとを含むガスを使用して、シリコン球状体の表面に微細なμテクスチャーを加工すること
を特徴としている。
【0011】
好ましくは、磁力線がシリコン球状体の表面に球面に対して法線に沿うようにされ得る。
【0012】
ドライエッチングでμテクスチャーを形成する際に反応に寄与するフッ素系ガスとしてはF2、CF4、SF6、NF3、CHF3、C2F6、C3F8、C4F8などが用いられ得る。またマスク材を依り効率的に形成しテクスチャー形成を促す塩素系ガスとしては塩素CL2、臭素Br2、ヨウ素I2などが用いられ得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の発明による加工電極装置においては、シリコン球状体の表面に対して、磁力線が少なくとも45°の角度になるように構成した磁石組み込み電極を有しているので、シリコン球状体の表面の下側の半球部分の2/3程度にテクスチャー加工を施すことが可能となる。これにより、特にシリコン球状体を加工する部品例えば太陽電池の集光技術に関して、シリコン球状体の表面形状にテクスチャー加工を施し反射率を低減させて光のエネルギー利用効率を上げて光電変換効率を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の第2の発明による加工方法においては、前記電極に、シリコン球状体の表面に対して、磁力線が少なくとも45°になるように構成した磁石を組み込み、反応性イオンエッチング法により、エッチングガスとしてμテクスチャーを形成する際に反応に寄与するフッ素系ガスと、マスク材を依り効率的に形成しテクスチャー形成を促す塩素系ガスと、シリコン球状体の表面を酸化させまたマスク材のポリマーの大きさを制御する酸素ガスとを含むガスを使用して、シリコン球状体の表面に微細なμテクスチャーを加工するように構成したことにより、加工形状の均一性を向上させることができ、しかも、シリコン球状体の表面にサブミクロンのピラミッド型の凹凸を形成し反射率を低減させるような加工に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を実施できる装置の一例を示す概略線図。
【図2】本発明による加工電極装置の一例を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1には本発明を実施しているプラズマ処理装置の一例を示している。
このプラズマ処理装置は真空チャンバ1を有し、真空チャンバ1の底壁にはカソード電極2は絶縁体3を介して設けられ、カソード電極2は処理すべき基板を装着する基板受け部4を備えている。このカソード電極2はマッチング回路5を介して高周波電源6に接続されている。カソード電極2に対向した真空チャンバ1の天井には、対向電極7が絶縁体8を介して設けられている。この対向電極7は接地されている。また、真空チャンバ1にはエッチングガス導入系9が設けられ、このエッチングガス導入系9は、μテクスチャーを形成する際に反応に寄与するフッ素系ガスのガス源と、マスク材を依り効率的に形成しテクスチャー形成を促す塩素系ガスのガス源と、シリコン球状体の表面を酸化させまたマスク材のポリマーの大きさを制御する酸素ガのガス源とを含んでいる。フッ素系ガスとしてはF2、CF4、SF6、NF3、CHF3、C2F6、C3F8、C4F8などが用いられ、塩素系ガスとしては塩素CL2、臭素Br2、ヨウ素I2などが用いられ得る。なお、図示していないが、真空チャンバ1の内側面にはY23の保護膜が形成されている。
【0017】
さらに真空チャンバ1には真空排気系10が接続されている。この真空排気系10により真空チャンバ1は真空排気されて所定の真空雰囲気を形成し、ガス導入系9からエッチングガスが導入され、カソード電極組立体2と対向電極7との間の放電により発生したイオンによって、導入されたエッチングガスがプラズマ化される。こうして生成したプラズマ中に発生したイオンやラジカルはカソード電極組立体2に向かって引き付けられ、カソード電極組立体2の基板受け部4上の以下に詳しく説明する処理対象物に入射してエッチング処理が行われる。
【0018】
本発明の実施形態においては、処理対象物として図2に示すように基板11の表面上に内部に磁石12を組み込んだ円錐状または角錐状突起13を設け、その上にシリコン球状体14が設けられる。突起13は、例えば剣山状に好ましくは針状に設けられ得る。シリコン球状体14は一例では直径約1mmであり、隣接シリコン球状体14との間隔は1〜0.5mm程度となるように約900個配列される。すなわち、隣接するシリコン球状体14は、互いに接触しないようにされている。各シリコン球状体14はその自体知られているように、底部にノズル孔を設けた坩堝に材料を入れ、溶融させ、上方からガス圧力を作用させて坩堝の底部のノズル孔から溶融した材料を滴下させることにより形成され得る。
【0019】
このように構成した加工電極装置は図1に示すプラズマエッチング処理装置によってシリコン球状体14に対してテクスチャーが形成される。以下、テクスチャーの形成工程について説明する。
【0020】
真空チャンバ1内は真空排気系10により真空雰囲気を維持したまま、加工電極装置を真空チャンバ1内部に搬入し、カソード電極2上の基板受け部4に装着される。
【0021】
真空チャンバ1内部を真空排気しながら、ガス導入系9からエッチングガスを真空チャンバ11内に導入し、所定圧力のエッチング雰囲気を形成する。エッチング雰囲気を維持しながら、カソード電極2と対向電極7との間の放電によりエッチングガスはプラズマ化される。
【0022】
エッチングガスのうち、フッ素系ガスはμテクスチャーを形成する際に反応に寄与し、塩素系ガスはマスク材を依り効率的に形成しテクスチャー形成を促す働きをする。フッ素系ガスとしては前述のようにF2、CF4、SF6、NF3、CHF3、C2F6、C3F8、C4F8などが用いられ、また塩素系ガスとしては塩素CL2、臭素Br2、ヨウ素I2などが用いられ得るが、それらのうちのどのガスを使用するかは処理対象及び処理条件、処理装置の仕様などに応じて任意に選定される。
【0023】
加工は、エッチングガスの種類や、カソード電極2への印加電圧、真空チャンバ1内の圧力等を変更することで調整可能であり、またこれらのファクタを調整することで、シリコン球状体14の表面の凹凸形状(テクスチャーの形状)を制御し、所望な微細凹凸パターンを形成できる。
【0024】
前記の加工プロセスにおいて、基板11の表面上に設けた円錐状または角錐状突起13内部に組み込んだ磁石12の作用で、シリコン球状体14の表面に対して実質的に垂直に磁力線が投射される。それにより、シリコン球状体14の表面にサブミクロンのピラミッド型の凹凸が形成され、反射率を低減させることができる。しかも、従来可能でなかったシリコン球状体14の下側の半球の2/3程度にテクスチャー加工を施すことが可能となった。
【符号の説明】
【0025】
1:真空チャンバ
2:カソード電極
3:絶縁体
4:基板受け部
5:マッチング回路
6:高周波電源
7:対向電極
8:絶縁体
9:エッチングガス導入系
10:真空排気系
11:基板
12:磁石
13:円錐状または角錐状突起
14:シリコン球状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極上に載置して真空雰囲気内でテクスチャー形成加工の施される加工電極装置において、
シリコン球状体の表面に対して、磁力線が少なくとも45°の角度になるように構成した磁石組み込み電極を有することを特徴とする加工電極装置。
【請求項2】
磁石組み込み電極が針状または剣山状であり、その上にシリコン球状体が設けられていることを特徴とする請求項1記載の加工電極装置。
【請求項3】
針状または剣山状の磁石組み込み電極が頂部シリコン球状体を受けるように凹状に形成されていることを特徴とする請求項2記載の加工電極装置。
【請求項4】
処理基板を電極上に載置して真空雰囲気内でテクスチャー形成加工する加工方法において、
前記処理基板に、シリコン球状体の表面に対して、磁力線が少なくとも45°になるように構成した磁石を組み込み、
反応性イオンエッチング法により、エッチングガスとしてμテクスチャーを形成する際に反応に寄与するフッ素系ガスと、マスク材を依り効率的に形成しテクスチャー形成を促す塩素系ガスと、シリコン球状体の表面を酸化させまたマスク材のポリマーの大きさを制御する酸素ガスとを含むガスを使用して、シリコン球状体の表面に微細なμテクスチャーを加工すること
を特徴とする加工方法。
【請求項5】
磁力線がシリコン球状体の表面に球面に対して法線に沿うようにされることを特徴とする請求項4記載の加工方法。
【請求項6】
ドライエッチングでμテクスチャーを形成する際に反応に寄与するフッ素系ガスとしてはF2、CF4、SF6、NF3、CHF3、C2F6、C3F8、C4F8などが用いられることを特徴とする請求項4又は5記載の加工方法。
【請求項7】
マスク材を依り効率的に形成しテクスチャー形成を促す塩素系ガスとしては塩素CL2、臭素Br2、ヨウ素I2などが用いられることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項記載の加工方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−234854(P2012−234854A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100383(P2011−100383)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】