説明

シリコーンエラストマー剥離用組成物

本発明の組成物は、化粧品として許容可能なビヒクル中に約40〜99%のシリコーンエラストマー粉末の水懸濁液を含む。この組成物は、機械的撹拌を例えば、手でこすることによって与えた場合に、皮膚剥離剤として有用である。剥離後、被膜もしくは残留物は皮膚上にほとんど残らないか、または全く残らず、必要に応じて、処置した部位を洗浄しても良い。化粧品として許容可能なビヒクルは、多様な有益な成分、美容剤または外皮用剤および添加剤を含むことができる。本発明はまた、そのような処置に必要とされる皮膚を剥離するための方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の組成物は、化粧品として許容可能なビヒクル中に約40〜99%のシリコーンエラストマー粉末の水懸濁液を含む。この組成物は、機械的撹拌を例えば、手でこすることによって与えた場合に、皮膚剥離剤として有用である。剥離後、被膜もしくは残留物は皮膚上にほとんど残らないか、または全く残らず、必要に応じて、処置した部位を洗浄しても良い。化粧品として許容可能なビヒクルは、多様な有益な成分、美容剤または外皮用剤および添加剤を含むことができる。本発明はまた、そのような処置に必要とされる皮膚を剥離するための方法を含む。
【背景技術】
【0002】
化粧品およびパーソナルケアの業界において、シリコーンベースの成分を使用することは、周知である。一般に、シリコーンは、極端な温度に対する高耐性、耐光性、湿気および化学物質への曝露に対する耐性など、非常に有用な様々な特徴を有する。シリコーン製品の一般的な用途としては、接着剤、界面活性剤および消泡剤としての使用が挙げられるが、化粧品およびパーソナルケアの分野においては、シリコーンは平滑化、潤滑化、保湿化およびコンディショニングを含む明確な複数の役割を果たす。
【0003】
重要な点は、シリコーン成分がその持続性(substantivity)のために用いられていることである。持続性とは、皮膚または髪を水ですすいだ後でも、美容成分がその皮膚または髪から失われない能力をいう。良好な持続性によれば、コンディショニング剤は長期間皮膚また髪上にとどまり、それらに利益をもたらすことが可能である。長期間とは、シリコーン成分が皮膚または髪上に、少なくとも数分間または数時間、損なわれることなくとどまり、特定の洗剤によらなければ容易に除去されないことを意味する。実際には、良好な持続性を有する美容成分は、皮膚または髪上に数時間または数日間とどまることができ、このことはしばしば意図されることである。良好な持続性を有する成分の1つの欠点は、長期にわたる繰り返しの塗布によって、皮膚または髪上に堆積しやすいということである。やがて、この堆積物自体が皮膚に対して有害となる。新規方法において、本発明は、その良好な持続性が知られているシリコーン材料を利用するが、上記堆積の問題を回避する。
【0004】
いくつかの薬剤は、処置表面と成分間の強い静電気引力のために、良好な持続性を示す。一般に、シリコーンはこの種のものに属さない。シリコーンは、水に不溶性であるために良好な持続性を示す美容成分の一種に属する。そのため、皮膚または髪に堆積すると、容易に洗い流すことはできない。シリコーン製品は、流動体、樹脂またはエラストマーであり得、その実体は、ポリマー骨格の長さ、および架橋の程度による。大抵のシリコーンは、水溶性ではないため、かなりの研究および開発が、シリコーン材料を水性送達系に組み入れる方法ばかりに集中している。つまり、シリコーンにその優れた持続性を与える特性そのものにより、シリコーンを安定した、有効な水溶液系に調製することが困難となる。例えば、化粧品およびパーソナルケアの分野において、製品のビヒクルはしばしば水ベースであり、しばしば、シリコーン油およびエラストマーを、界面活性剤を用いて外部水相に乳化する必要がある。このために上記調製および全規模生産がさらに複雑なものとなり、乳化しなければならないために、生産費は増大し、また上記調製についてさらなる制限がかかる。例えば、乳化剤および界面活性剤は皮膚刺激物であることが知られており、そのためこの点は検討する必要がある。本発明は水性であるが、さらなる乳化剤を必要としない、安定かつ有効なシリコーンエラストマー処方物を提供する。
【0005】
美容業界において、シリコーンエラストマーは乾性のエモリエントとして考えることができる。エモリエントは、滑らかさおよび潤滑性を皮膚または髪に与える薬剤である。局所軟膏では、シリコーンエラストマーは、光沢およびシルクの様な、さらさらした手触りを皮膚または髪に与える。メイク用組成物では、シリコーンエラストマーは、光沢を改善するか、皮膚の見た目をマティファイ(mattify)するために用いられ、また持続的効果のある防水特性を与えるために用いることができる。これらの目的で使用される公知の架橋シリコーンエラストマーの例としては、Dow Corning社製のジメチコーン-シクロメチコーンおよびジメチコーン-ジビニルジメチコーンクロスポリマー; Grant Industries社製のGransilの製品名で知られるオルガノポリシロキサン;General Electric社製のジメチコーン-ビニルジメチコーンクロスポリマーなどを含む。エラストマーは粉末形態であるが、皮膚に塗布されると、先行技術の製剤と同じように、良好な持続性を示し、容易には皮膚から洗い流せない。本発明の組成物は特に、粉末形態の固相シリコーンエラストマーに関する。しかし、本明細書中に記載される組成物は、その塗布から数秒または数分以内に特定の洗剤もしくは除去剤、さらには水を即座に用いることなく、皮膚から容易に除去することができる。
【0006】
上記したように、シリコーンエラストマーは、エマルジョン法によって水ベースの系に組み入れることができるが、しかし、粉末状シリコーンエラストマーの懸濁液を形成し、これを次に水ベースの溶液に添加することができることも知られている。シリコーンエラストマーが非親水性であり、そのために事実上、乳化しない場合、シリコーンエラストマーを、乳化するよりも懸濁するほうが好ましい。懸濁化剤は一般に、このために用いられる。シリコーンエラストマー懸濁液はまた、界面活性剤および乳化剤の過酷な、刺激性の副作用を回避すること、またはこれらの刺激物の量をできる限り減らすことが望まれる場合、乳化系よりも好ましい。さらに、意図される種の懸濁液は一般に、乳液よりも作製しやすい。
【0007】
この種の懸濁液の市販のものとしては、Dow Corning 9509 シリコーンエラストマー懸濁液があり、これは63重量%の粉末状ジメチコーン/ビニル ジメチコーンクロスポリマー (および) C12-14 パレス-12が水中にある非イオン性懸濁液である。DC9509 製品情報シート(ref no. 27-1001-01; 08/17/2001:本明細書中にその内容が参照として援用される)によると、シリコーンエラストマー粒子は球状であり、平均粒径が3μmである。DC 9509の粒径範囲は、約0.1μm〜100μmである。この材料は、水相に直接添加され、その結果純シリコーンエラストマーが、最終製剤の3〜6重量%のレベルで存在するように用いられることが推奨される。上記懸濁液が63重量%のシリコーンエラストマーであることを考えれば、この懸濁液は、製造者が推奨する3〜6重量%シリコーンエラストマーに合わせるために、およそ最終製剤の5〜10重量%を含むべきである。製品情報シートには、3つの例が記載されている:水相中にDC 9509 10%含有ヒドロゲル、DC 9509 8%含有ヒドロゲル、およびDC 9509 6.5%含有シリコーン中水乳剤。DC 9509を伴う製剤のさらなる例は、Dow Corning社およびNational Starch社のウェブサイトにて見出すことができる。これらには以下のものが含まれる: DC 9509を10重量%含有する、Dow 製剤 00035 Fresh Energizing Lotion with Reduced Shine; DC 9509を5重量%含有する、Dow 製剤 00231 Matte Last Hydrogel; DC 9509を2重量%含有する、Dow 製剤 00458 Shaving Jelly; およびDC 9509を6重量%含有する、National Starch 12002-63 Firming And Moisturizing Body Fluid。Dowの取扱説明書によると、これらの製剤は、10%以上DC 9509を使用するものはない。本発明は、実質的に10%以上のDC 9509を伴う、安定であり、かつ有効な組成物を含む。
【0008】
特許文献1(本明細書中にその開示内容が参照として援用されている)は、水ベースの化粧品を製造するための方法であって、以下のステップ:
(a)特定の平均粒径(0.1〜100μm、好ましくは1〜10μm)を有する球形(globularまたはspherical)粒子の硬化シリコーンゴムからなる水分散液(懸濁液)を、当該文献中に開示された特定の方法によって製造すること、および
(b)シリコーンゴム粒子からなる特定量の水分散液と水ベースの化粧品組成物の主成分からなるベース混合物とを混合すること、
を含む、上記方法を開示する。
【0009】
シリコーンゴム粒子の含有量は、ベース混合物中の非揮発性物質の総量の0.1〜30重量% (好ましくは1〜10重量%)に特に限定される。上記ステップ(a)にて形成された水分散液のシリコーン含有量は、水分散液の1〜70重量% の範囲であると開示されている。したがって、ステップ(a) は、63%水分散液であるDow Corning 9509(上記)を含む。
【0010】
ステップ(b)における上限30%は、上記特許文献1の第6欄、第29〜32行目に「硬化シリコーンゴム粒子の量があまりに多い場合には、水ベースの化粧品調製物による固有の機能は、十分に果たされないか、または水ベースの化粧品調製物の安定性も低下し得る」と説明されている。つまり、上記特許文献1は、水ベースの化粧品とベース混合物中の非揮発性物質の総量の約30重量%を超えるシリコーンエラストマーとを配合しないことについて、明確な理由を述べている。この理由は、組成物全体の有効性および安定性の喪失に関連する。
【0011】
実際には、上記先行技術は、ベース混合物の非揮発性部分の30重量%よりもずっと低い量でシリコーンエラストマー粉末を使用することを開示する。上記特許文献1における4種の例では、エラストマーの重量は、3%未満である。上記4種の例(3つはDow Corning社製、1つはNational Starch社製)においては、シリコーンエラストマーの含有量は、ベース混合物中の非揮発性物質の総量の1〜8重量%である。したがって、実際には、上記特許文献1を含む先行技術は、上記特許文献1にて推奨されるシリコーンエラストマー粉末の最大量をはるかに下回っていた。本発明は、ベース混合物中の非揮発性物質の総量の実質的に30%を超えるレベルでDC 9509を伴う、安定しかつ有効な組成物を含む。
【0012】
特許文献2は、懸濁シリコーンエラストマーを含有する非乳化、水ベースの組成物を開示する。好ましい懸濁エラストマーが、DC 9509として開示されており、これを総組成物の10重量%以下の量で組成物に添加すべきである。これは上記のように、Dow Corning社が推奨する量でもある。シリコーンエラストマー懸濁液の好ましい濃度は、組成物の総重量の0.1〜5重量%であり、最も好ましくは0.5〜2.5重量%である。当該文献における唯一の例において、シリコーンエラストマー懸濁液の重量は、組成物の総重量の2%である。シリコーンエラストマー自体の重量は、ベース混合物中の非揮発性物質の総量の2重量%未満である。ここでも、これは上記特許文献1に開示されている上限をはるかに下回っており、また本発明のレベルをさらに下回っている。
【0013】
特許文献3は、高脂質含有量の、真珠光沢のある化粧品調製物を開示しており、かかる調製物は、C12-C40脂肪酸、C12-C40脂肪アルコール、両親媒性ポリマーおよび/またはシロキサンエラストマー、水酸化ナトリウム溶液ならびに必要に応じてC12-C40ポリエトキシ化脂肪酸エステルを含む。シリコーンエラストマーは、球状の粉末形態で、懸濁液または乳液中にあるのが好ましく、DC 9509は特に有利なものとして開示されている。純シリコーンエラストマーの重量は、総組成物の0.5〜10重量%であるとして開示されているが、例においては、組成物中のシリコーンエラストマーは0.5重量%以下を示す。ここでも、これは上記特許文献1に開示されている上限をはるかに下回っており、本発明のレベルをさらに下回っている。
【0014】
上記特許文献3の段落0074には、「シリコーンエラストマーは、油分を多く含み、かつ最大でも5重量%と水含有量が低い製剤に対する安定効果を有する」と教示されている。この先行技術の記載は、シリコーンエラストマーが5%を超える水を含む組成物を安定させることはできないことを確かに示唆している。DC 9509の水分が約37%であることを考慮すれば、少なくとも約14%のDC 9509を含む組成物は自動的に5%を超える水を含む。したがって、上記特許文献3は、14%を超えるDC 9509を伴う組成物を処方することによっては、なんら利益が得られないことを示唆する。本発明は、実質的に、14%を超えるDC 9509または14%のDC 9509相当量を都合よく含む。
【0015】
本願出願人が知る限り、上記に示されるように、シリコーンエラストマーの重量がベース混合物中の非揮発性物質の総量の30重量%を超えるように、シリコーンエラストマー粒子の水懸濁液を含む有効かつ安定したパーソナルケア組成物は、先行技術において未知である。実際、先行技術において開示されている例は、全てこのレベルを大幅に下回っている。本発明は、先行技術の教示に反するものであり、ベース混合物中の非揮発性物質の総量の30重量%を超えるシリコーンエラストマーを有する安定かつ有効な組成物を提供する。さらに、本発明は、実質的に5%を超える水を含有する組成物を含む。
【0016】
美容または皮膚科学の剥離は、皮膚の最表面から死んだまたは脱落した皮膚細胞の層を除去し、下の健全な細胞を露出させるための方法である。美容のための剥離は、多数が公知であり、一般に以下の効果が認められている:より健康的で魅力的な外観を皮膚に与えること、「明るみ(glow)」を皮膚に与えること、毛穴を開放するか毛穴の詰まりを除去して、局所的に用いられた栄養物または他の治療効果を容易に受けることができるようにすること、皮膚中の血流量を増大させること、皮膚中のコラーゲン形成を促し、厚く、安定した、健康な皮膚をもたらすこと。とりわけ、剥離は、にきび、不規則な色素沈着、加齢の徴候、および瘢痕の治療に用いられていた。これらのおよび他の理由から、剥離は、皮膚の健康および外観を改善することに関心のある人々にとって、最も重要な皮膚治療法の1つとして広く認識されている。手法としては、機械的研磨(スクラブ、ピールおよび皮膚剥離など);ピール、マスクおよび他の局所軟膏の形態の化学的剥離剤(chemical exfoliant); ならびにレーザー処置、が含まれる。第一に、本発明は、皮膚に利益をもたらす機械的表皮剥離に関する。しかし、化学的剥離剤を組み込むこと、またはレーザー処置と共に用いることも、本発明の範囲内である。
【0017】
いくつかの剥離手法、特に従来のピールおよびマスクについては、それらを除去できるまで、かなりの乾燥時間を要し使用者は待たなければならない点が欠点である。しばしば、皮膚の広大な部分、特に顔に軟膏の厚い層をつけたままでいるのは、身体的に不快であり、また社会的に不都合である。そのためこれらの処置を受けている人々の中には、処置の間は人前に出たがらない人もいる。本発明の組成物は、クリーム、ローションおよび軟膏の様式で用いられるが、先行技術と比べて乾燥時間は大幅に減少しており、また他の製品よりもかなり短い時間で剥離を完了することができる。そのため、剥離処置に関する身体的および社会的不快感を軽減することができる。
【0018】
またいくつかの剥離用製品は、水またはその他の洗剤を用いてすすぎ流すことによって皮膚から除去しなければならない点が欠点である。そうしなければ残留物が皮膚上に残り、これは一般に皮膚の外観を傷つけ、使用者にとって不快であり、また使用者の皮膚に炎症を引きこし得る。このため、一部の人々は剥離処置を受けたがらないために、美容製品を用いた機械的剥離が一般的に家またはサロンにてなされ、そこでは、水およびプライバシーを即時に提供することができる。一方、本発明の剥離剤(exfoliant)は、皮膚に利益を与えるために用いることができ、そして洗い流すために水をほとんど用いないかまたは全く水を用いることなく皮膚から除去することができる。この処置は、従来の剥離処置よりも迅速に、またはるかに目立つことなく完了することができる。したがって、使用者は、処置を家またはサロンに限定しなくてもよい。
【0019】
特許文献4は、球状のシリコーンエラストマー粉末を含む洗顔剤を開示する。その明細書によると「本発明に用いられるオルガノポリシロキサン エラストマーにより、本発明の洗顔剤は、滑らかな使い心地であり、皮膚を刺激することがない」。さらに、明細書には、「非シリコーン粉末を含有する従来の洗顔剤は、これらの粉末がシリコーンに対する親和性を欠いているために、シリコーン除去作用が不十分である。オルガノポリシロキサンエラストマー粉末は、化粧品に調合されたシリコーン出発材料に対する親和性を有し、そのため皮膚に接着したシリコーンを除去することができる。」と記載されている。したがって、これらの組成物では、シリコーンエラストマーは、他のシリコーンに対する化学親和性によって、それらシリコーンを皮膚から除去するために主に用いられる。著者らによると、それは滑らかにするのと同時に、皮膚を刺激することはない。他の部分の開示より、著者らがいう「刺激」とは、先行技術の非球状であり、尖っており、硬い洗浄剤に特有の機械的刺激を意味する。したがって、この参考文献は、シリコーンエラストマーの球状の性質およびそれに関連する柔軟性は、機械的表皮剥離を減少させるのに有用であることを示唆している。言い換えれば、上記特許文献4は、剥離作用を低減するための球状のシリコーンエラストマー粉末の使用を示唆する。実際、この参考文献中には、いずれかの剥離型の活性または利点について記載はない。したがって、上記特許文献4に記載されるシリコーンエラストマー粉末の使用は、機械的剥離のために組成物中にシリコーンエラストマー粉末を使用する本発明とは異なっている。
【0020】
上記特許文献4はさらに、組成物がクリームまたは乳液である場合、シリコーンエラストマー粉末は当該組成物の30%以下で(組成物が固体またはペーストである場合には50%以下で)使用することを開示する。繰り返しとなるが、先行技術は、この点をまとめて、固体ではない組成物のシリコーンエラストマー粉末含有量の上限を約30%としているようである。先の参考文献と同様、上記特許文献4における例は、30%をはるかに下回っているシリコーンエラストマー粉末量を開示しており、この場合、5%にすぎないシリコーンエラストマー粉末が実際の組成物中に存在する。
【0021】
さらに、上記特許文献4は、組成物中の柔らかい、球状の粒子が、組成物の機械的剥離作用を低減させると期待され得るという事実の一例である。実際、シリコーンエラストマーおよび他のシリコーン製品は、それらが組成物に与える軟化性(emolliency)、潤滑性、つやおよびさらさら感のために注目されている。これら全ての事柄は、剥離用製品に要求される機械的表皮剥離の様相とは反するものである。それにもかかわらず、本発明は、新規の方法で球状のシリコーンエラストマー粉末を使用して、新しい種類の剥離用製品を作製する。
【0022】
最後に、先行技術に開示された具体例によると、先行技術は全体として、上記のように、シリコーンエラストマー粒子に関連する不安定性および有効性の損失は、30%未満のどこかで、特に5%を超える水分が組成物中に存在する場合に、生じ始めることが示唆される。したがって、上記特許文献1に由来する上限30%とは、言わば安定性および有効性の問題の開始点というよりも、限界値(a point of no return)として正確に理解されている。
【特許文献1】米国特許第5,871,761号
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0126349号
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0036971号
【特許文献4】欧州特許第0295886号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の目的としては、以下のものが含まれる:
心地良い感じを与え、剥離のために不快な研磨剤を使用しない剥離用組成物を提供すること;
迅速かつ使い勝手の良い剥離法を提供すること;
水を必要とすることなく、どこでも都合よく行うことができる剥離レジメンを提供すること;
懸濁液または乳液であり得る、安定であり、かつ有効な水性シリコーンエラストマー組成物を提供すること;
先行技術が許容するよりもかなり高い濃度でシリコーンエラストマー粉末を含む、安定であり、かつ有効な組成物を提供すること;
処置後に皮膚を洗い流さなくても、皮膚上になんら残留物を実質的に残さない剥離用組成物を提供すること。
【0024】
これらのおよび他の目的および効果は、本明細書中に記載される本発明の組成物にて実現される。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の剥離用組成物は、化粧品として許容可能なビヒクル中30〜99%のシリコーンエラストマー粉末の水懸濁液を含む。化粧品として許容可能なビヒクルは、実質的に水性であっても、ほとんど水を含まないか、または全く含まなくとも良い。化粧品として許容可能なビヒクルは、多様な有益な成分、美容剤または外皮用剤および添加剤を含んでも良い。本発明の組成物は、機械的に撹拌された場合、例えば手でこすられる場合、皮膚剥離剤(skin exfoliant)として有用である。剥離後は、被膜もしくは残留物は皮膚上にほとんど残らないか、または全く残らず、必要に応じて処置部位を洗浄する。本発明はまた、剥離方法を含み、当該方法は処置を必要とする皮膚に、剥離するのに有効量の、化粧品として許容可能なビヒクル中のシリコーンエラストマー粉末の水懸濁液を塗布することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本明細書の全体を通して、「含む(comprise、comprises、comprising)」という用語は一貫して、物体の集合物が具体的に列挙した物体に限定されないことを意味するものとする。さらに、本発明の組成物に関して、列挙した全てのパーセントレベルは、特に断りのない限り、「およそ」のレベルとして理解される。
【0027】
40〜99%のシリコーンエラストマー粉末の水懸濁液を含有する組成物が、剥離用製品として安定であり、かつ有効であることを有利にも見出した。本発明において有用なシリコーンエラストマー粉末の水懸濁液は、限定されないが、粒径分布範囲が約0.1μm〜100μm、好ましくは1〜10μmにあるものである。シリコーンエラストマー粉末の濃度が30〜70%であるシリコーンエラストマー懸濁液が、本発明に有用である。有用なシリコーンエラストマー粉末の水懸濁液の1つは、Dow Corning社製のDC 9509である。DC 9509は、総組成物の40〜99重量%、好ましくは50〜90重量%、最も好ましくは60〜80重量%のレベルで本発明に都合よく用いることができる。DC 9509は、シリコーンエラストマーの63%溶液であるために、本発明の組成物は、約25〜63重量%、好ましくは30〜57重量%、最も好ましくは37〜50重量%のシリコーンエラストマー粉末を有利に含むことができる。この濃度を満たすシリコーンエラストマー粉末のいずれの懸濁液も、本発明の範囲内であり、少なくともこの意味において、Dow Corning 9509の機能的等価物と考えることもできる。
【0028】
本発明において用いられるシリコーンエラストマー粉末の水懸濁液は、化粧品として許容可能な担体と組み合わせられ、通常皮膚に使用される形態で用いられる。「化粧品として許容可能な担体」という用語は、活性成分を目的とする標的に送達するビヒクルを指し、これはヒトまたは他のレシピエント生物に害を及ぼさない。本明細書中で用いられる場合、「化粧品」という用語は、活性成分と両立可能なヒトおよび動物の化粧品(例えば、ゲル、クリーム、ローション、軟膏、ムース、スプレー、固体棒(solid stick)、粉末、懸濁液、分散液など)を含むと理解される。様々な種類のビヒクルを処方する手法は、当業者に周知であり、例えば、Chemistry and Technology of the Cosmetic and Toiletries Industry, WilliamsおよびSchmitt, eds., Blackie Academic and Professional, 第2版, 1996,ならびにRemington’s Pharmaceutical Sciences, 第18版, 1990(これらの記載内容は、本明細書中に参照として援用されている)に記載されている。用いられる製剤はまた、他の美容成分または医薬成分(例えば、モイスチャー、保湿剤、抗炎症剤、酸化防止剤など)を含むこともできる。
【0029】
本発明の組成物の使用方法は以下の通りである。十分量の本発明の組成物を、剥離処置を必要とする皮膚領域に塗布する。組成物は通常、手で皮膚上に広げるようにして塗布することができる。領域に用いた量が不十分であると思われる場合には、既に皮膚上にある組成物をさらに広げても良い。広げることによって処置されるべき領域が十分に覆われた後、使用者はすぐに皮膚上の組成物をこすり始めても良いし、こすり始める前に数秒間または数分間待ってもよい。組成物をすぐにこすりはじめるのが最も都合が良いが、本発明では計画的に遅らせることも可能である。組成物が機械的剥離の前に他の機能を実施するのに時間が必要であるならば、遅らせるのが適切であり得る。例えば、機械的剥離のために皮膚を調整するのには時間がかかることがある。ことによると、洗剤または化学的剥離剤をまず作用させても良い。別の例としては、組成物は、全く感覚的な特性を含み、使用者に満足感を与えることができる。いずれの場合にも、こする作業は通常、広げる作業よりも力強いものであるが、行うのは困難ではない。こすり始めてから数秒または数分以内に(こする強さにもよる)、皮膚上の組成物は、目に見える薄片状のかたまりを生じる。広げる作業とは異なり、こする作業は、組成物のかたまりを生じるといった特徴を有する。広げる作業によっても、偶発的な量でいくらかかたまりを生じ得るが、これとは異なり、より力強いこする作業によって、かなり大量にかたまりを生じる。こする作業が進むにつれて、十分な量の薄片が皮膚上に現れ、皮膚の剥離を開始する。この間は、組成物がはがれるのと皮膚の剥離が同時に生じ得る。しかし、こすり始めてから数秒または数分以内に、薄片の形成が完了する。薄片になろうとしている組成物の全てがはがれた時点で、こする作業を継続または延長することによって、最大量の剥離を生じる。長時間こすることによって、死んだ皮膚、皮膚代謝物および皮膚表面の付着物が薄片に移行する。これは広げる作業のみでは生じないし、また長時間のこする作業無しでは生じない。長時間のこする作業の間、このこする作業は、上記剥離を生じるのに十分な程力強いものでなければならないが、これは困難なことではない。長時間のこする作業の間、薄片状の組成物は、かなりの量の死んだ皮膚、皮膚代謝物および皮膚表面の他の付着物と共に、皮膚から剥がれ落ちる。あるいはまたはさらに、薄片を、剥離した皮膚から他の手段、例えば、水で洗い流すか、またはタオルで軽くたたくことによって除去することもできる。有利には、長時間のこする作業と合わせて、薄片は皮膚の有効な機械的剥離を生じる。
【0030】
イメージを抱くために、薄片自体の外観は、消しゴムを使用して生じた薄片に似ていると考えられる。大きさは様々であるが、薄片は肉眼で容易に見ることができ、例えば、1〜5 mmの長さであり得る。したがって、それらは通常、DC 9509のシリコーンエラストマー粒子よりも大きい。これらの大きな薄片が有効な剥離を生じさせるものであり、これら薄片が存在しなければ、有効な機械的剥離は生じないということを理解することが重要である。純なシリコーン粒子自体は、有効な剥離剤ではない。このことは、純なシリコーン粉末が通常、潤滑性を高め、有効な剥離に必要とされる摩擦のたぐいを低減するために用いられていることから、驚くべきことではない。一方、薄片は、シリコーン球体よりもずっと大きく、また球状というよりも不均一な形状である。本発明の有効性の1つの理論は、薄片の大きさおよび不規則な形状によって、基材である球状のシリコーン粒子よりも、皮膚とより多く接触するというものである。皮膚との接触の度合いが、薄片を機械的剥離剤として有用なものとする。同時に、薄片はシリコーンエラストマーの柔軟性をいくらか保持し、そのためこの薄片は剥離に有効でありながら、多くの機械的剥離剤材料が持つのと同様の不快感はない。
【0031】
上記の様に、本発明の組成物は、約25〜63重量%、好ましくは30〜57重量%、最も好ましくは37〜50重量%のシリコーンエラストマー粉末を都合よく含むことができる。シリコーンエラストマー粉末のこれらのレベルは、剥離するのに有効な量を規定する。「剥離するのに有効な量」とは、こすると、有用な薄片状のかたまりを生じるのに十分な、シリコーンエラストマー粉末の量を意味する。この量に満たない量のシリコーンエラストマー粉末を用いた場合、こすることによって生じた薄片状のかたまりの程度は、あったとしても、有用なものではない。「有用な薄片状のかたまりを生じる」とは、こすることによって生じた薄片の量が長時間こすることによって、有効な剥離処置を生じるのに十分であることをいう。「有効な剥離処置」とは、皮剥け(skin flakiness)が、基準と比べて少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%減少していることを意味する。皮剥けの減少は、この目的で用いられることが公知である標準的な方法によって、例えば、D-スクオムディスク(squame disc)を使用して画像分析により測定することができる。
【0032】
本発明において用いられるシリコーンエラストマー粉末の水懸濁液は、化粧品として許容可能な担体と組み合わせて、通常皮膚に用いられる形態で用いられる。美容上および医薬的に許容可能な様々な材料を有利に用いて、組成物の物理的特性を維持または変化させ、使用者に独特のかつ快適な感覚を与え得る。例えば、本発明の精神から離れることなく、以下の1または複数種を有効量で含むことができる:研磨剤、吸収剤、粘結防止剤、消泡剤、抗真菌剤、抗菌剤、酸化防止剤、結合剤、殺生物剤、バッファー、充てん剤、着色剤、防蝕剤、脱臭剤、塗膜形成剤、香料、保湿剤、乳白剤、酸化剤、pH調整剤、可塑剤、保存料、推進薬、還元剤、スリップ調整剤、溶媒、安定剤、界面活性剤、粘性制御剤。さらに、美容上および医薬的に許容可能な様々な材料および活性剤を、皮膚に効果をもたらすために用いることができる。これらは以下の1または複数種を有効量で含む:研磨剤、吸収剤、にきび抑制剤、抗加齢剤、抗真菌剤、抗炎症剤、抗菌剤、酸化防止剤、制汗剤、収斂剤、殺生物剤、化学的剥離剤、洗剤、脱臭剤、除毛剤、脱毛剤、外用鎮痛薬、保湿剤、メイク落とし、美白剤、皮膚コンディショニング剤、皮膚保護剤、日焼け止め、日焼け剤および紫外線吸収剤。局所的使用に好適な美容剤、外皮用剤または医薬品であればなんでも、本発明の範囲内であるが、上記の方法で用いられる場合に、組成物全体としては、剥離剤として有効に機能しなければならない。
【0033】
一例として、ジメチコーン、トリメチコーン、シクロメチコーン、直鎖炭化水素およびそのエステルおよびポリオールは、組成物に上品な感じ、質感または安定性を与えるのに有用であることがわかった。一般的に、公知先行技術の化粧品の処方法はいずれも、本発明の組成物に有用であり得る。
【0034】
本発明による組成物を使用した剥離処置の後、皮膚を水で洗い流す必要はないかもしれない。好ましくは、本発明による組成物を使用した剥離処置の後、皮膚を水で洗い流す必要はない。薄片化した実質的に全ての組成物がこすりとられる。実質的に全ての組成物が、数秒以内に、または大抵は5分以内に薄片となってはがれ、処置した皮膚上には、ヒトの眼または触感によって検出できるシリコーン残留物はない。実質的に全ての組成物は、こする作業を行ってから2分以内に除去できることが好ましく、最も好ましくは1分以内である。薄片化した組成物が、あまりにも早くこすり落ちてしまう場合、剥離は完了しないかもしれない。あまりにもゆっくりとこすり落ちる場合、実用的な、時間節約および都合の良い効果が損なわれる。当該処置は完了するために洗い流し作業を必要としないために、使用者は、洗い流すための水を供給できる場に限定されない。これは、先行技術の剥離剤よりも優れた顕著な利点である。さらに、処置が比較的すぐに完了するために、使用者は当該処置を、全く人目を避けることなく、ためらうことなく行うことができる。それは見られる可能性が、かなり減少するためである。例えば、本発明は、職場で、昼日中に、大切な取引相手との会議の直前に、即座にリフレッシュさせる「元気を回復させるもの」に最適であり得る。
【0035】
たとえ組成物が数分間以上皮膚上にとどまっていられなくとも、本発明の剥離用組成物は少なくとも、毛穴の開放および毛穴の詰まりを除去することに多少は有効であることを忘れてはならない。したがって、組成物に組み入れられた美容上活性な薬剤が持続的な有益な効果を、処置が終了してもなお、有していると考えるのは現実的であり、それは少なくともこれら薬剤のうちのいくつかは毛穴への経路を見出し、そして皮膚中にとどまるためである。このように、本発明の組成物は、毛穴に美容および外皮用の材料を取り入れるための送達用ビヒクルとして用いることができる。
【0036】
本発明の製剤は必要に応じて、一時的に斑状、はがれやすい、または一様でない質感となった「新しい表面」の皮膚に塗布しても良い。しかし、多くの場合、本製剤の使用は、常習的なものであり、天然の剥離作用の持続的な低減を改善するためのものである。例えば、必要であれば、本発明による剥離処置を、1週間におよそ1度〜1日におよそ4または5回、好ましくは1週間におよそ3回〜1日におよそ3回、最も好ましくは1日におよそ1または2回、実施しても良い。「常習的」使用とは、本明細書中において、局所的使用の期間が、使用者の一生涯に及ぶもの、好ましくは少なくとも約1ヶ月間、より好ましくは約3ヶ月〜約20年間、より好ましくは約6ヶ月〜約10年間、さらにより好ましくは約1年〜約5年間であり得ることを意味する。有利には、本発明の組成物は、先行技術の剥離用組成物よりも使用することが容易であるため、常習的な使用を必要とするヒトは、長期の治療レジメンに継続的に専念しやすい。
【0037】
本発明の組成物は、単独でまたは皮膚治療レジメンの一部として用いることができる。例えば、剥離後化粧水を用いて、剥離した皮膚に、栄養分、リフレッシュ感、香料、染料、光の増強剤、付加的な洗剤または他の美容効果もしくは皮膚科的効果を与えることができる。新たに剥離した皮膚は特に、皮膚治療および美容製品(beautifying product)を容易に受けることも、利用することもできる。
【実施例】
【0038】
以下の非限定的な実施例は、本発明を理解するのに有用であり得る。実施例における組成物は、剥離用組成物として安定し、かつ有効である。
【0039】
実施例1: 臨床研究
以下は、本発明の組成物の剥離効果を調べるために実施された臨床研究の説明である。
【0040】
臨床研究の概要
ポストピーリング化粧水の前に、2種類の剥離用組成物を、女性からなる二つの群で試験した。これらの組成物は、以下に示される(「試験製品」を参照のこと)。比較のために、第2群の組成物は、5% N-アセチルD-グルコサミン (公知の化学的剥離剤)、さらにその後2% N-アセチルD-グルコサミンを含む化粧水から構成されていた。第1群の組成物およびポストピーリング化粧水は、N-アセチルD-グルコサミンも、他のいずれの剥離剤も含んでいなかった。
【0041】
各組成物を、清潔な顔に塗布し、20分間そのままにしてから、上記のこする方法ではがした。次に処置した領域を化粧水に浸した綿ボールで洗浄した。
【0042】
皮膚の評価は、5日間毎回、処置の前および処置の15分後に実施した。皮膚の剥離を、D−スクオムディスクを使用して皮膚表面より除去された薄片の量を測定し、それらをIA法によって分析することによって、評価した。
【0043】
実験計画
被験体の選択 26名の女性(各群13名)が本研究を首尾よく成し遂げた。女性らは、本研究の目的と要件について詳細に伝えられ、彼女らが以下の基準を満たすのであれば、認められた。試験部位は彼女らの顔全体であった。被験体は、試験の前少なくとも10時間は、彼女らの顔に美容製品を使用することを控えた。彼女らは、きれいな、洗浄した皮膚で試験施設に報告した。全てのボランティアは、試験開始前に同意書を提出した。
【0044】
試験対象者基準 ボランティアは以下の基準を満たしていた:
1. 25〜65歳である
2. 顔が通常〜乾燥肌である
3.皮膚科または眼科の疾患を含む急性または慢性の疾患を示さず総合的に良好な健康状態である
除外基準 ボランティアは以下のいずれをも示さない:
1. 試験部位になんらかの皮膚疾患(感染、炎症、日焼け、腫瘍)を有する
2. 美容製品に対する過敏症またはアレルギーの病歴がある
3. 妊婦または授乳中の女性である
試験方法
各検査に、被験体は試験の少なくとも1時間前に洗浄した、きれいな顔で現れた。D-スクオム皮膚サンプルを下記方法によって得た。組成物を被験体の顔に20分間塗布し、次にそれをはがして、化粧水に浸した綿ボールで洗浄し、15分後に再評価した。綿ボールで塗布した第1群化粧水は、追加の剥離を示さなかった。初日に、被験体はモイスチャーのチューブが与えられ、それのみを彼女らの常用のモイスチャーに代えて1日に1回または2回使用し、本試験の間、他のいずれの処置も控えた。被験体は次の4日間来て、上記試験手順を同一の条件下で繰り返し行った。
【0045】
D-スクオムディスク法による皮膚の剥離および画像解析 4枚のD-スクオムディスクは、携帯型の均一加圧装置を使用して、顔(左右2箇所)にしっかりとかつ均一に押し当て、そして皮膚よりそっと引き離し除去した。D-スクオムディスクを、きれいな顕微鏡用スライドにマウントし、パネリストの氏名および検査日を記入した。落屑を、画像分析器を用いてD-スクオムディスクに基いて調べた。この評価を5日間毎日、処置の前後に行った。
【0046】
OPTIMA画像分析器を使用して、皮剥けを調べた。表皮角質細胞を含むD-スクオムサンプルを、明るい台の上、カメラ下に配置し、そして各画像を画像分析器に取り込んだ。サンプル密度に対応する平均Gray Valueを測定した。サンプルが濃くなるにつれて、Gray Valueの差は大きくなる。
【0047】
試験製品

方法
1. 主容器にDC 9509シリコーンエラストマーを添加する。
【0048】
2. 温度を25℃に維持する。
【0049】
3. ホモゲナイザーおよびサイドワイプミキシング(side wipe mixing)を開始する。
【0050】
4. N-アセチル-D-グルコサミンを添加し、15分間混合して、確実に、バッチを均一にし、かつ全ての粉末を完全に溶解する (第2群についてのみ)。
【0051】
5. L-アルギニンを添加する。5分間混合する。
【0052】
6. Aristoflex AVCにゆっくりと混ぜる。ホモゲナイザーのスピードをわずかに速く調整する。ホモゲナイザーおよびサイドワイプミキシングを30分間継続する。バッチが、ゲルの塊が存在することなく、なめらかでかつ均一となるようにする。
【0053】
7. フェノキシエタノールを添加し、10分間混合する。
【0054】
8. 別の容器にてTMF-1.5およびシリコーンHL 88をプロペラミキサーを使用して、予め混合する。10分間混合する。
【0055】
9. そのTM-1.5およびシリコーンHL 88からなる予め混合した混合物を上記主容器にゆっくりと添加する。ホモゲナイザーおよびサイドワイプミキシングを継続する。必要であればスピードを調節する。
【0056】
10. バッチが均一になったら全てのミキシングを停止し、バルクを適当な容器に移す。
【0057】

結果および考察
図1のグラフは、本研究結果の概要を示す。この結果は、上記両組成物によって、処置前の基準と比較して、各処置後に皮剥けが減少したことを示す。それぞれの組成物を用いて得られた結果の差異は、統計学的に意味のあるものではない。グルコサミンを組成物に添加しても、剥離に関して総計学的に有意な増加は見られなかった。この結果は、グルコサミン (またはさらに言えば他のいずれの剥離剤)を含まない、少なくともいくつかの本発明の組成物が、皮膚を完全に剥離できることを強く示唆する。既知の剥離剤を本発明の組成物に組み入れることによって、さらなる利益が得られるか否かについては、本実験を繰り返すことによって測定できる。剥離とは、死んでいるかまたは老朽化した皮膚細胞層を、その下にある健康な細胞を露出させるために、皮膚の最表面より除去する方法である。剥離の効能については上記した。本臨床研究は、本発明の組成物が、剥離の目的および効能について有効であることを示す。
【0058】
本発明は塗布されて、1、2分以内にはがれ落ち得ることが重視される。本実験において、皮膚上に存在する時間は、20分間であった。この理由は、化学的剥離剤、グルコサミンを含有する第2群の組成物が作用する時間を与えるためである。一貫性のため、グルコサミンを含有しない第1群の組成物も同じ時間だけ、顔の上に放置した。
【0059】
実施例2〜7 本発明の以下の組成物は、剥離用製品として有効である。一般に、以下の実施例の組成物およびその変形物は、中程度の粘性を有するローションから濃厚なクリームまたはゲルであり得る。量は重量%である。
【0060】


実施例7 以下のクリームは、本発明の組成物が、皮膚または組成物に効能を与える種々の化粧品として許容可能な成分を含有し得ることを示す。これら効能のうちの少なくともいくつかは、有効な剥離処置の間、および直後に皮膚上にそれら成分が存在することによって増強され得る。
【0061】

実施例8
以下の組成物は、Dow Corning社のウェブサイトから得られ、Dow Corning社製剤 00231, Mattifying Hydrogel(2003年10月17日; http://www.dowcorning .com/content/publishedlit/00231.pdf)として知られていた。
【0062】

方法
1. 渦ができるほど十分に水を撹拌する。勾配のある3枚のブレードを備えたミキサーを用いると良い。Carbopol 粉末を渦上にゆっくりとふるい落とす。この工程は、ふるいまたは網目スクリーンを用いることが推奨される。必要であればミキサーのスピードを1200 rpm以下まで上げて、粒子が膨らみ、見えなくなるまで混合し続ける。発泡を防ぐためにスピードを約300 rpmまで下げ、そして混合してCarbopolを水和物にする。
【0063】
2. 成分3を添加し、混合する。
【0064】
3. 混合しながら、成分4を添加する。
4. 混合しながら、成分5を添加する。
5. B相の成分を予め混合する(均一になるまで)。
【0065】
6. 適当に混合しながら、B相をA相に添加する。
7. C相を予め混合する。水酸化ナトリウムを水にゆっくりと添加する。溶解するまでそっと混合する。
8. C相をバッチに添加し、混合し続ける。バッチはより粘性になるはずである。pHは、6.0〜6.2まで上げるべきである。
【0066】
この組成物は、先行技術の典型的なレベルでDC 9509を使用することを意味し、本明細書中に記載した方法で使用した場合、はがれなかった。したがって、この組成物は、本発明の剥離用組成物として有効ではない。
【0067】
実施例9
以下の組成物は、薄片状のかたまりを生じる現象をより理解するために作製した。この結果は、30% DC 9509からなる組成物を、本発明の方法で使用した場合、薄片状のかたまりが見られなかったことを示す。しかし、40%及びそれ以上用いることによって、有用な薄片状のかたまりが見られた。
【0068】

先行技術がDC 9509を30%以下の濃度で使用することを教示していること(先行技術の実施例では常に30%よりずっと低いが)を考えると、40%またはそれ以上を含有する組成物は、先行技術の教示に反する。さらに、「不安定性」(少なくとも先行技術が安定していないとみなすもの)が、30% シリコーンエラストマー懸濁液に近い組成物を用いて見受けられる限り、40%またはそれ以上のシリコーンエラストマー懸濁液が有用な製品を生じると考えることは常識に反する。しかし、本発明では、この予想外の効果を実現した。さらに、その有用な製品が剥離用組成物であるということは、シリコーンエラストマー懸濁液の剥離剤としての使用を意図していない先行技術を考慮しても、想到されるものでは決してない。実際、比較的やわらかい、球状のシリコーンエラストマー粒子を、機械的表皮剥離とは正反対の、軟化性(emolliency)および潤滑性のために一般に用いている。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、本発明の組成物を用いた剥離処置の結果を比較した図を示す。特に、本発明の組成物が、皮膚を完全に剥離できること示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離するのに有効量のシリコーンエラストマー粉末を含む、剥離用組成物。
【請求項2】
組成物の総重量に対するシリコーンエラストマー粉末の重量が、25〜63%である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
組成物の総重量に対するシリコーンエラストマー粉末の重量が、30〜57%である、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
組成物の総重量に対するシリコーンエラストマー粉末の重量が、37〜50%である、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
シリコーンエラストマー粉末が、水性懸濁液の形態で組成物に添加される、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
シリコーンエラストマー懸濁液が、Dow Corning 9509 シリコーンエラストマー懸濁液またはその機能的等価物である、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
シリコーンエラストマー粉末の粒径が、0.1μm〜100μmである、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
シリコーンエラストマー粉末の粒径が、1μm〜10μmである、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
化粧品として許容可能な担体を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
さらに、組成物の物理的特性を維持または変化させるために用いられる、研磨剤、吸収剤、粘結防止剤、消泡剤、抗真菌剤、抗菌剤、酸化防止剤、結合剤、殺生物剤、バッファー、充てん剤、着色剤、防蝕剤、脱臭剤、塗膜形成剤、香料、保湿剤、乳白剤、酸化剤、pH調整剤、可塑剤、保存料、推進薬、還元剤、スリップ調整剤、溶媒、安定剤、界面活性剤、粘性制御剤から選択される1または複数種の化粧品として許容可能な物質を有効量含む、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
さらに、皮膚に対して有益となるように用いられる、研磨剤、吸収剤、にきび抑制剤、抗加齢剤、抗真菌剤、抗炎症剤、抗菌剤、酸化防止剤、制汗剤、収斂剤、殺生物剤、化学的剥離剤(chemical exfoliant)、洗剤、脱臭剤、除毛剤、脱毛剤、剥離剤(exfoliant)、外用鎮痛薬、保湿剤、メイク落とし、美白剤、皮膚コンディショニング剤、皮膚保護剤、日焼け止め、日焼け剤および紫外線吸収剤から選択される1または複数種の化粧品として許容可能な物質または活性分子を有効量含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
皮膚を剥離するための方法であって、
剥離するのに有効量のシリコーンエラストマー粉末の水懸濁液を含む組成物を皮膚に塗布すること、
組成物を、皮膚上に薄片が現れるように、皮膚上でこすること、および
皮膚が剥離するように該薄片をこすること、
を含む、上記方法。
【請求項13】
組成物をこする工程が開始される前に、塗布する工程を繰り返す、請求項12記載の方法。
【請求項14】
組成物を塗布した直後に組成物をこすり始めるか、組成物を塗布することとこすることのあいだに間がある、請求項12記載の方法。
【請求項15】
剥離した皮膚を除去する工程をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項16】
薄片をこすって、剥離した皮膚を落とし、皮膚をきれいにする、請求項15記載の方法。
【請求項17】
2分間未満で行う、請求項16記載の方法。
【請求項18】
薄片は肉眼で見ることができる、請求項12記載の方法。
【請求項19】
薄片は長さが1〜5 mmである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
薄片が不均一な形状である、請求項12記載の方法。
【請求項21】
組成物が、化粧品として許容可能な担体を含む、請求項12記載の方法。
【請求項22】
組成物がさらに、該組成物の物理的特性を維持または変化させるために用いられる、研磨剤、吸収剤、粘結防止剤、消泡剤、抗真菌剤、抗菌剤、酸化防止剤、結合剤、殺生物剤、バッファー、充てん剤、着色剤、防蝕剤、脱臭剤、塗膜形成剤、香料、保湿剤、乳白剤、酸化剤、pH調整剤、可塑剤、保存料、推進薬、還元剤、スリップ調整剤、溶媒、安定剤、界面活性剤および粘性制御剤から選択される1または複数種の化粧品として許容可能な物質を有効量含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
組成物がさらに、皮膚に対して有益となるように用いられる、研磨剤、吸収剤、にきび抑制剤、抗加齢剤、抗真菌剤、抗炎症剤、抗菌剤、酸化防止剤、制汗剤、収斂剤、殺生物剤、化学的剥離剤、洗剤、脱臭剤、除毛剤、脱毛剤、外用鎮痛薬、保湿剤、メイク落とし、美白剤、皮膚コンディショニング剤、皮膚保護剤、日焼け止め、日焼け剤および紫外線吸収剤から選択される1または複数種の化粧品として許容可能な物質を有効量含む、請求項21記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−538764(P2008−538764A)
【公表日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507719(P2008−507719)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/013741
【国際公開番号】WO2006/115793
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(598100128)イーエルシー マネージメント エルエルシー (112)
【Fターム(参考)】