説明

シリコーンヒドロゲル眼科レンズの離型容易化

【課題】シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズにおいて、離型を実施するために水溶液を使用した既知の水和プロセスは、効率的でなかった。有機溶媒を使ってシリコーンレンズを離型する試みがなされたが、安全上の問題、製造ラインの中断時間のリスク増加、離型溶液の高いコスト、および、爆発の可能性を含めて、高濃縮有機溶液の使用が欠点になり得る。そのため、有機溶媒の使用がほとんどもしくはまったく必要なく、型からレンズを効果的に離型させる生産法を見出すことが有利であると思われる。
【解決手段】本発明は、眼科レンズなどのヒドロゲル生物医学的装置を、割型からの生物医学的装置の離型を容易にするためにポリエチレングリコールを使って加工する方法およびシステムを含む。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、シリコーンヒドロゲル製の眼科レンズを生産するプロセスに関する。さらに具体的には、本発明は、界面活性剤を含む離型助剤(release aid)への眼科レンズの曝露によって、当該眼科レンズが形成される割型(mold parts)から眼科レンズを離型させる(releasing)方法およびシステムに関する。
【0002】
〔発明の背景〕
コンタクトレンズが視力の改善に使用されることができるのは、周知である。長年、各種コンタクトレンズが商業生産されている。コンタクトレンズの初期のデザインは、硬質材料から作製された。これらのレンズは、現在もなお、一部の適用では使用されているが、快適さが不十分であること、また、酸素透過性が比較的低いことから、硬質材料製レンズは、全患者に適しているというわけではない。その後、本分野での開発により、ヒドロゲルを主体にしたソフトコンタクトレンズがもたらされた。
【0003】
今日では、ヒドロゲルコンタクトレンズは、非常に一般的である。これらのレンズは、硬質材料製のコンタクトレンズよりも装着が心地良いことがしばしばである。可鍛性ソフトコンタクトは、複数の割型(multi-part mold)中でレンズを形成することによって製造されることができ、当該割型中で、組み合わせられた部品が、所望の最終レンズと一致する構造(topography)を生じる。
【0004】
ヒドロゲルを眼科レンズなどの有用な物品に作り上げるのに使用される複数の割型(multi-part molds)は、例えば、眼科レンズの裏側のカーブ(back curve)に対応する凸面を有する第一割型(mold portion)と、眼科レンズの前カーブ(front curve)に対応する凹面を有する第二割型を含む。このような割型を使ってレンズを調製するには、未硬化ヒドロゲルレンズ調合物が、割型の凹面と凸面の間に配置され、その後、硬化される。当該ヒドロゲルレンズ調合物は、例えば、熱および光の一方、または、その両方への曝露によって硬化されることができる。硬化されたヒドロゲルは、割型の寸法に従ってレンズを形成する。
【0005】
硬化後、従来の実施によれば、前記割型が分離され、前記レンズは、割型の一方に付着されたままであることが規定されている。ある離型法は、当該レンズを残りの割型から外す。先行技術に従って、割型からのレンズの離型は、レンズを膨潤させ、当該レンズの型への付着を緩める働きをする水溶液または食塩水への当該レンズの曝露によって容易化されることができる。
【0006】
本分野における新規開発は、シリコーンヒドロゲルから作られるコンタクトレンズに到達した。離型を実施するために水溶液を使用した既知の水和プロセスは、シリコーンヒドロゲルレンズでは効率的でなかった。その結果、有機溶媒を使ってシリコーンレンズを離型する試みがなされた。レンズが、無水下、または、微量成分としての水との混合物中で、アルコール(ROH)、ケトン(RCOR')、アルデヒド(RCHO)、エステル(RCOOR')、アミド(RCONR'R")、またはN-アルキルピロリドンに20時間〜40時間浸漬されるプロセスが記述されている(例、米国特許第5,258,490号参照)。
【0007】
しかし、既知のプロセスでいくらかの成果が得られたものの、高濃縮有機溶液の使用は、例えば、安全上の問題、製造ラインの中断時間のリスク増加、離型溶液(release solution)の高いコスト、および、爆発による巻き添え被害の可能性を含めた種々の欠点を示すことがある。
【0008】
そのため、有機溶媒の使用をほとんどもしくはまったく必要とせずに、可燃性の物質の使用を避け、レンズが形成される型からレンズを効果的に離型させ、当該レンズからUCDを除去する、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの生産法を見出すことが有利であると思われる。
【0009】
〔発明の概要〕
従って、本発明は、割型からのシリコーンヒドロゲル眼科レンズの離型を容易にする器具および方法を提供する。本発明に従って、ポリエーテルが使用され、当該割型からのレンズの離型を助ける。一部の実施態様では、当該ポリエーテルが、当該レンズの形成に使用されるモノマーに含まれることができる。一部の実施態様は、割型材料に含まれるポリエーテルを含むことができ、さらに追加実施態様は、形成されたレンズが曝露される溶液に当該ポリエーテルを含むことができる。
【0010】
さらに、本発明は、一般に、少なくとも1種類の高分子量親水ポリマーと少なくとも1種類のヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマー(hydroxyl-functionalized silicone-containing monomer)を含む反応混合物から形成される水和性(wettable)のシリコーンヒドロゲルを含む材料から作られる眼科レンズに関する。一部の実施態様では、当該眼科レンズは、高分子量親水ポリマーと有効量のヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーを含む反応混合物から形成される。
【0011】
他の実施態様では、本発明は、例えばPEGまたはPEOなどの有効量のポリエーテルを、高分子量親水ポリマーなどのポリマー中に含み、当該混合物を硬化させ、生物医学的装置を生成する段階を含む、眼科レンズなどの生物医学的装置の調製法に関する。そのため、実施態様は、例えば、ポリマー形成に使用されるモノマーへのPEGまたはPEOの混合、生物医学的装置形成に使用される型プラスチック(mold plastic)中にPEGまたはPEOを含めること、および、形成された生物医学的装置が重合後に曝露される水和溶液中にPEGまたはPEOを含めること、を含む、PEGまたはPEOを当該親水ポリマーに組み入れるいずれかの方法を含むことができる。
【0012】
一部の実施態様では、本発明は、なおもさらに、少なくとも1種類のヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーと前記レンズに組み入れるのに十分な量の高分子量親水ポリマーを含む反応混合物から、表面処理なしで形成される、約80°未満の前進接触角(advancing contact angle)を有する眼科レンズに関する。
【0013】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、シリコーンレンズの形成に使用される割型からのシリコーンヒドロゲルレンズの離型に関する。シリコーンヒドロゲル眼科レンズの離型は、レンズ、即ち重合レンズの形成に使用されるモノマーをPEGまたはPEOなどのポリエーテルに曝露することによって容易化され得ることが判明している。本発明に従って、当該ポリエーテルは、重合前にモノマーと混合される場合、前記レンズの形成に使用される割型のプラスチック中に混入される場合、および、形成されたレンズが曝露される水溶液中に混入される場合に、離型を容易にすることができる。
【0014】
PEGおよびPEO材料は、水および多くの有機溶媒に可溶性であり、本発明の各種実施態様において、モノマー混合物(monomer mix)、割型、および形成されたレンズの処理に使用される溶液のうち1種類以上に組み入れられることができる。
【0015】
一般に、ポリエチレングリコール(PEG)とポリエチレンオキシド(PEO)は、鎖長および末端基を除けば、構造が総じて同一のポリマーである。ポリエチレングリコールは、分子量が50,000未満のポリマー(エチレングリコールから生成される縮合ポリマー)を指すが、ポリエチレンオキシドは、高分子量(付加ポリマー)に使用される。PEGおよびPEOは、鎖長効果のために物理的特性(即ち、粘性)が異なるが、それらの化学的特性は、ほぼ同一である。PEGメチルエーテル2000およびPEG 2000などのPEG、およびPEOの具体例は、特に有効であることができる。本発明に含まれる他の変形物は、mPEGおよびPEG DMEを含む。
【0016】
ポリマーポリエチレングリコールの化学構造は、一般に、次のとおりであり、
【化1】

また、ポリエチレングリコールは、次の構造を有する。
H-(CH2-CH2-O)n-H
【0017】
本発明に従って、PEGおよびPEOは、疎水性分子に結合し、眼科レンズまたは他の生物医学的装置の作製に利用される割型からの当該眼科レンズまたは他の生物医学的装置の離型を容易にする非イオン型界面活性剤を生成することができる。一般に、本明細書で使用される場合、界面活性剤は、親水性または水溶性増強官能基に結合された疎水部分、通常は長アルキル鎖、から構成される水溶性表面活性物質である。本発明では、非イオン型親水性物質は、ポリエチレングリコール鎖のエーテル酸素で水と結合する。当該界面活性剤の親水性末端は、水分子に強力に引き付けられ、疎水性物質と水の間の引力は、わずかにすぎない。結果として、当該界面活性剤分子は、表面および内部で整列しているので、親水性末端は、水の方向に向いており、疎水性物質は、水から絞り出される。
【0018】
眼科レンズの製造加工は、典型的には、水和中に前カーブの型から当該レンズを離型する段階を含む。離型によって、当該レンズがさらに加工され、検査および滅菌などの追加加工用一次パッケージ内に入れられることが可能になる。本発明では、PEG科分子(PEG family of molecules)の界面活性剤は、レンズの品質に悪影響を与えることなく、レンズの離型に有益な影響を有することが判明している。
【0019】
特に、本発明は、ポリエチレングリコールジメチルエーテル2000、およびポリ(エチレングリコール)2000が、眼科レンズの形成に使用される割型からの当該眼科レンズの離型を容易にする上で有用である、と説く。
【0020】
定義
本明細書で使用される場合、「高分子量親水ポリマー(high molecular weight hydrophilic polymer)」は、1.661×10-19g(100,000ダルトン)程度の重量平均分子量を有する物質であって、当該物質は、シリコーンヒドロゲル調合物に組み入れる際、硬化シリコーンヒドロゲルの湿潤性を高める物質を指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「モノマー」は、少なくとも1種類の重合性基(polymerizable group)、および、ゲル浸透クロマトグラフィー屈折率検出によって測定されると、約3.321×10-21g(約2000ダルトン)未満の平均分子量を含有する化合物である。よって、モノマーは、ダイマーを含むことができ、ある場合には、1個以上のモノマー単位から生成されるオリゴマーを含めたオリゴマーを含むことができる。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「レンズ」、「眼科レンズ」、および「眼科装置」は、眼球内または眼球上に留まる装置を指す。これらの装置は、視力矯正(optical correction)、創傷ケア、薬剤送達、診断機能性、美容増進または美容効果、あるいは、これらの特性の組み合わせを提供することができる。用語レンズは、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ、眼内レンズ、オーバーレイレンズ、眼内挿入物および、光学挿入物(optical insert)を含むが、それらに制約されない。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語PEGは、ポリエチレングリコールを指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語PEOは、ポリエチレンオキシドを指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「型から離型される(released from a mold)」は、レンズが型から完全に分離されること、あるいは、緩く付着されているに過ぎないので、軽度の攪拌によって外れるか、綿棒で押し出し可能であることを意味する。
【0026】
レンズ形成
ここで、図1に関して、ブロック図は、コンタクトレンズなどの眼科レンズ100、および、眼科レンズ100(先行技術)の形成に使用される割型101〜102について示されている。一部の典型的実施態様では、当該割型は、裏面割型101および前面割型102を含む。本明細書で使用される場合、用語「前面割型(front surface mold part)」は、凹面104が眼科レンズの前面の形成に使用されるレンズ形成面である割型を指す。同様に、用語「裏面割型(back surface mold part)」は、凸面105が、レンズ形成面を形成する割型101を指し、これが眼科レンズ100の裏面を形成する。一部の実施態様では、割型101および102は、凹凸形状であり、好ましくは、平坦な輪状フランジ106および107をそれぞれ含み、当該フランジは、割型101〜102の凹凸領域の最上縁の外周を囲む。
【0027】
典型的には、割型101〜102は、「サンドイッチ」状に配列されている。前面割型102は、底部にあり、当該割型の凹面104は上方へ向いている。裏面割型101は、前面割型102の最上部で対称に配置することができ、裏面割型101の凸面105は、部分的に前面割型102の凹領域に突き出す。好ましくは、裏面割型101は、その凸面105が前面割型102の凹面104の外縁に外周全体で係合し、それによって、協調して密封された型空洞を形成し、その型空洞中で眼科レンズ100が形成されるように寸法を定められる。
【0028】
一部の実施態様では、割型101〜102は、熱可塑物質製であり、重合開始化学線の透過性を有し、それは、前記型空洞内での前記反応混合物またはモノマー(「反応混合物」)の重合を開始するのに有効な強度および波長の放射線の少なくとも一部および好ましくは全部が、割型101〜102を通過できることを意味する。
【0029】
例えば、割型は、ポリスチレン、ポリビニルクロライド、ポリオレフィン(ポリエチレンおよびポリプロピレンなど)、アクリロニトリルまたはブタジエンとのスチレンのコポリマーまたは混合物、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエステル、環式オレフィンコポリマー、または、他の既知材料を含むことができる。
【0030】
本発明に従って、割型101〜102の1個以上は、1個以上の割型101〜102からのレンズの離型を容易にするのに有効な量で、PEGおよびPEOの少なくとも1種類を含む。本発明に従ったPEGおよびPEOの少なくとも1種類の有効量は、PEGおよびPEOの少なくとも1種類を含まない割型と比較して、同等の反応混合物および条件であると、PEGおよびPEOの少なくとも1種類の包含によって短縮された離型時間に一致する量である。本発明の一部の実施態様に従って、例えばPEG2000などのPEGおよびPEOの1種類以上が、割型を作るのに使用される射出成形プロセス前に、添加剤として型材料に添加されることができる。
【0031】
一部の好ましい実施態様では、例えばPEG2000などのPEGおよびPEOの1種類以上は、100万分の25(25ppm)〜100万分の1000(1000ppm)の量で型プラスチックに添加され、一部のさらに好ましい実施態様では、PEGおよびPEOの1種類以上は、50 ppm〜200 ppmの量で添加される。
【0032】
方法段階
レンズ100の形成のための前記反応混合物の重合後、レンズ表面103は、典型的には、割型表面104に付着する。本発明の段階は、当該割型表面からのレンズ表面103の離型を容易にする。
【0033】
ここで、図2に関して、フローチャートは、本発明の一部の実施態様において実施されることができる例示的段階を示す。本発明の各種実施態様において、以下の段階の一部または全部が実施可能であることを理解することが必要である。201において、前記反応混合物(さらに詳細に下記される)は、第一割型102に入れられ、これが、眼科レンズ100の成形に利用される。
【0034】
202において、第一割型102は、少なくとも1個の他の割型(第二割型)101と組み合わされ、配置されたシリコーンモノマーまたは他の反応混合物を成形することができる。
【0035】
203において、前記反応混合物は、硬化され、レンズ100に形成される。硬化は、例えば、化学線への前記モノマーの曝露、昇温(即ち、40℃〜75℃)への当該モノマーの曝露、または、化学線および昇温双方への曝露など、技術上周知の各種手段によって実施されることができる。
【0036】
204において、第一割型101は、型から取り出すプロセス(demolding process)において第二割型102から分離されることができる。一部の実施態様では、レンズ100は、硬化プロセス中、第二割型102(即ち、前カーブ割型)に付着してしまうことになり、レンズ100が前カーブ割型102から離型されるまで、分離後、第二割型102に残る。他の実施態様では、レンズ100は、第一割型101に付着することができる。
【0037】
205において、一部の実施態様では、前記水和溶液が加熱されることができる。例えば、当該水和溶液は、約40℃〜約72℃の温度まで上昇されることができる。加熱は、爆発の可能性を最小化するために熱交換器で、または、液体を加熱する任意の他の実行可能な手段もしくは機器によって達成されることができる。
【0038】
206において、前記レンズは、水和溶液に当該レンズを曝露することによって水和される。本発明に従って、当該水和溶液は、PEGおよびPEOの1種類以上を、また、一部の特定の実施態様ではPEG2000を、割型102からのレンズ100の離型を容易にするのに有効な量で含む水溶液である。
【0039】
本発明に従って、1個以上のレンズ割型101〜102から前記レンズの離型を容易にするのに有効な、水和溶液中のPEGおよびPEOの量は、PEGおよびPEOの少なくとも1種類を含まない水和溶液に比較して、(同等条件下で同等反応混合物で)PEGおよびPEOの少なくとも1種類の包含によって短縮された離型時間に一致する量である。
【0040】
一部の実施態様では、前記水和溶液は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであるトゥイーン80(Tween 80)、チロキサポール(Tyloxapol)、オクチルフェノキシ(オキシエチレン)エタノール、両性10)(amphoteric 10))、防腐剤(例、EDTA、ソルビン酸、DYMED、クロルヘキサジングルコネート、過酸化水素、チメロサール、ポリクァド(polyquad)、ポリヘキサメチレンビグアニド、抗細菌剤、潤滑剤、塩、および緩衝剤などの添加剤も含むことができる。一部の実施態様では、添加剤は、0.01重量%と10重量%の間を変動する量であるが、累積するとほぼ10重量%未満となる量で前記水和溶液に添加されることができる。
【0041】
前記水和溶液の温度は、凝固点近くから沸点近くまでのどの温度であることもできるが、30℃〜72℃であるのが好ましく、はるかに好ましくは45℃〜65℃の温度である。
【0042】
前記水和溶液への眼科レンズ100の曝露は、洗浄、噴霧、浸す(soaking)、沈める(submerging)、または、それらのいずれかの組み合わせによって達成されることができる。例えば、一部の実施態様では、レンズ100は、水和塔(hydration tower)中、脱イオン水およびPEG 2000の水和溶液で洗浄されることができる。
【0043】
水和塔中での洗浄によって前記レンズを水和するには、レンズ100を収納する前カーブ割型102が、パレットもしくはトレー中に置かれ、垂直に積重ねられる。重ねられたレンズ100の最上部に前記溶液が導入されることができ、それによって、当該溶液は、レンズ100上を下に向かって流れる。当該溶液は、当該塔に沿って、様々な位置で導入されることができる。一部の実施態様では、当該トレーは、上方に動かされ、レンズ100が、次第に、より新鮮な溶液に曝露されることが可能である。
【0044】
他の実施態様では、眼科レンズ100は、水和段階206の間に、水和溶液に浸され、または沈められる。
【0045】
前記水和段階は、2分〜400分間、好ましくは10分〜180分間、さらに好ましくは15〜30分間持続することができる。しかし、当該水和段階の時間の長さは、使用される場合の着色剤、前記溶液または溶媒に使用される材料を含むレンズ材料、および、当該溶液の温度に左右される。水和処理時間は、前記レンズおよび当該溶液が平衡に達するのに必要な時間とは異なっていてよい。十分な処理時間は、典型的には、前記コンタクトレンズを膨潤させ、前記割型から当該レンズを離型し、当該レンズを機能的サイズにする。
【0046】
一部の好ましい方法では、分離または型からの取り出し後、枠の一部であることができる前カーブ上のレンズは、当該前カーブから外す際、当該コンタクトレンズを受ける個々の凹形溝付きカップに合わせられる。当該カップは、トレーの一部であることができる。例は、それぞれ32個のレンズを受けるトレー、および、1個のマガジン内に積重ねることができる20個のトレーを含むことができる。
【0047】
前記レンズを沈めることによって前記水和溶液にレンズを曝露する本発明の一部の実施態様に従って、マガジンが、積重ねられ、その後、PEGおよびPEOの少なくとも1種類、好ましくはPEG2000を含む水和溶液を含有するタンク内に下ろされることができる。当該溶液は、上記のとおりの他の添加剤を含むこともできる。さらに、一部の実施態様では、当該水和溶液は、30℃〜72℃の温度まで加熱されることができる。
【0048】
207では、前記眼科レンズは、すすがれ、PEG 2000および当該レンズからの残渣を除去する。すすぎは、例えば、当該レンズを、例えばDI水(脱イオン水)などのリンス液に曝露するいずれかの方法によって達成されることができる。従って、各種実施態様では、すすぎは、当該レンズをリンス液の流れに曝す作業、また、リンス液に当該レンズを沈める作業の1種類以上を含むことができる。
【0049】
一部の実施態様では、前記反応混合物が入れられる割型の1個以上は、当該割型材料中にPEGおよびPEOの1種類以上を含む。典型的には、眼科レンズは、眼科レンズの裏側のカーブに対応する凸面を有する第一割型と、当該レンズの前カーブに対応する凹面を有する第二割型を使って作られる。
【0050】
本発明に従って、前記凹型および凸型の割型の1個以上を構成するPEGおよびPEOの1種類以上は、分離後に当該レンズが付着したままの割型からの当該レンズの離型を助ける。
【0051】
双方の割型にPEGおよびPEOの1種類以上が含まれる一部の実施態様では、PEGおよびPEOは、当該割型間に収められた硬化したレンズを傷付けることなく、当該割型の分離を容易にすることもできる。本発明に従って、PEGおよびPEOの1種類以上は、当該割型から前記反応混合物中に取り込まれることができる。
【0052】
器具(Apparatus)
ここで図3に関して、ブロック図は、加工ステーション301〜304に収容された、本発明の実施に利用されることができる器具が示されている。一部の好ましい実施態様では、加工ステーション301〜304は、運搬メカニズム305によって、眼科レンズ100に接近することができる。運搬メカニズム305は、変速モーターまたは他の既知の駆動メカニズム(図示せず)を動力とするコンベアベルト、チェーン、ケーブル、または水圧メカニズムを含むことができる移動手段と連動した、例えばロボット、および、コンベア、およびレールシステムの1種類以上を含むことができる。
【0053】
一部の実施態様は、パレット(図示せず)中に配置された裏面割型101を含むことができる。当該パレットは、2箇所以上の加工ステーション301〜304の間を運搬メカニズム305によって移動することができる。コンピューターもしくは他のコントローラ306が、加工ステーション301〜304に動作可能に連結され、各ステーション301〜304での加工を監視、制御することができ、また、運搬メカニズム305を監視、制御し、加工ステーション301〜304の間のレンズの移動を調整することもできる。
【0054】
加工ステーション301〜304は、例えば、射出成形ステーション301を含むことができる。射出成形ステーション301では、射出成形器具が、例えば上記のようなシリコーンヒドロゲルなどの、所与の量の反応混合物を前カーブ割型102に入れ、好ましくは当該反応混合物で割型の表面104を完全に覆う。当該反応混合物は、重合時に、光学的に透明で、完全な形状を維持するコンタクトレンズ、またはコンタクトレンズ前駆物質を生じる任意の材料もしくは材料の混合物を含むことが必要である。
【0055】
この用途で利用される場合、「前駆物質(precursor)」は、所望の相対寸法を有し、その後の水中もしくは緩衝等張食塩水溶液中での水和時、コンタクトレンズとして装着されることができる物体を意味する。そのような合成物の例は、この分野では豊富にあり、標準的な文献等を参照することによって、容易に確認可能である。
【0056】
一部の実施態様では、前記反応混合物の重合は、一部の実施態様における無酸素環境を含めて、酸素への曝露が制御された雰囲気中で実施されることができる。その理由は、酸素が副反応を起こし、所望の光学的品質、ならびに、重合化レンズの透明度に影響を与える可能性があるからである。一部の実施態様では、レンズ型の半分が、限られた酸素を有する、または無酸素の雰囲気中で調製されることもできる。酸素への曝露を制御する方法および器具は、技術上周知である。
【0057】
硬化ステーション302は、前記反応混合物を重合する器具を含むことができる。重合は、好ましくは、PEG 2000または他のPEGもしくはPEOを含む当該反応混合物を重合開始条件に曝露することによって実施される。そのため、硬化ステーション302は、前記の前カーブ型102に入れられた当該反応混合物の重合開始源を提供する器具を含む。重合開始源は、例えば、化学線および熱の1種類以上を含むことができる。一部の実施態様では、化学線は、電球から得られることができ、その下を型組立品(mold assemblies)が移動する。当該電球は、当該電球の軸に平行な一定の平面に、重合を開始するのに十分な化学線の強度を提供することができる。
【0058】
一部の実施態様では、硬化ステーション302の熱源は、重合の生長(propagation)を助け、化学線に前記反応混合物が曝露されている間、当該反応混合物の収縮傾向に対抗し、それによって、より良好な重合を促進するのに十分な温度まで当該反応混合物の温度を上昇させるのに有効であることができる。そのため、一部の実施態様は、当該反応混合物が重合しながら、重合生成物のガラス遷移温度より高い温度、または、軟化温度より高い温度に当該反応混合物(これは、当該反応混合物が重合を開始する前、および、重合している最中の樹脂を意味する)の温度を維持できる熱源を含むことができる。当該温度は、当該反応混合物中の成分の本質(identity)と量によって変化することができる。一般に、一部の実施態様は、およそ40℃〜75℃の温度を設定、維持することができる器具を含む。
【0059】
一部の実施態様では、熱源は、型組立品が化学線電球下を通過する際に、例えばN2もしくは空気などの温かい気体を、当該型組立品全体および周囲に吹き付けるダクトを含むことができる。ダクトの先端は、複数の孔を備えており、その孔を温かい気体が通る。このように気体をいきわたらせると、ハウジングの下の領域全体の温度の均一性を達成する助けになる。当該型組立品周囲の領域全体の均一な温度は、さらに均一な重合を促進することができる。
【0060】
型分離ステーション303は、裏側カーブ割型101を前カーブ割型102から分離する器具を含むことができる。分離は、例えば、当該割型をてこで引き離す機械フィンガーおよび高速ロボット運動で達成されることができる。
【0061】
一部の実施態様では、ポリマー/希釈剤混合物を含む硬化レンズは、水和ステーション304での水和溶液への曝露によって処理されることができ、当該処理が、当該希釈剤を除去し、最終的に、当該希釈剤を水と置換し、それによって、元の成型ポリマー/希釈剤物品のサイズおよび形状に酷似する最終のサイズおよび形状を有するシリコーンヒドロゲルレンズが形成される。
【0062】
一部の実施態様では、前記希釈剤の除去に利用される水和溶液は、前記レンズが形成される割型、例えば前記裏側カーブ割型からの当該レンズの離型を容易にするように使用されることもできる。本発明に従って、当該レンズの処理に使用される水和溶液は、PEGおよびPEOの1種類以上を含み、一部の好ましい実施態様では、当該水和溶液は、PEG 2000を含む。一部の好ましい実施態様は、脱イオン水(DI水)と、500 ppm〜2000 ppmのPEG 2000とを含む溶液を含むことができ、さらに好ましい実施態様は、この溶液は、800 ppm〜1200 ppmのPEG 2000を含む。
【0063】
水和ステーション304は、例えば、本発明に従って、前記眼科レンズ100を水和プロセスに曝露することができる水和塔または沈水ビヒクル(submersion vehicle)を含むことができる。例えば、水和ステーション304は、当該レンズが上方に移動するトレー中で垂直に積み重ねられ、積み重なったトレー中で、前記水和溶液の流れが下向きに流れ、重なりの下位のトレー中のレンズを連続洗浄する器具を含むことができる。当該溶液は、当該積み重ねトレーの最上部に導入されることができ、あるいは、新鮮な溶液が、当該積み重ねトレーの様々な箇所で導入されることができる。一部の実施態様では、PEGおよびPEOの1種類以上の異なる濃度の水和溶液の流れが、積み重ねトレーの様々な箇所で導入されることができる。総じて、溶液カスケードが、各眼科レンズ上を下方に流れる。下方への流れを利用した水和器具(hydration apparatus)の各種実施態様の詳細な説明は、米国特許第6,207,086号に記述されており、当該特許は、参照することによって本出願に組み入れられている。
【0064】
一部の実施態様は、水和タンクへの前記眼科レンズの沈水も含むことができる。例えば、レンズ100を含有する前カーブ割型102は、型キャリアとプレートとの間に挟まれて、水和キャリアを形成することができる(図示せず)。ロボット組立品は、水和溶液中の各水和キャリアを浸漬させることができる。下方への流れを利用した水和器具の各種実施態様の詳細な説明および実施例は、米国特許第6,207,086号に開示されており、当該特許は、参照することによって本明細書に組み入れられている。
【0065】
各種実施態様は、前記レンズが入れられる一連の複数溶液槽、または、当該レンズが曝露される水和溶液のさまざまな流れを含むことができる。各溶液槽または溶液流は、脱イオン水中に同一もしくは異なる濃度のPEGおよびPEOの1種類以上を有することができる。
【0066】
例えば、一部の実施態様は、各レンズ100の、そのそれぞれの割型102からの離型を主目的に、水和溶液に曝露される(即ち、沈水、または、溶液流によって)レンズを含むことができる。
【0067】
一部の実施態様では、熱交換器307が使用され、典型的な周囲の室温よりも高い温度に、前記水和溶液の温度を維持する。例えば、熱交換器は、約30℃〜約72℃まで当該水和溶液温度を上昇させるのに使用されることができるが、それに制約されない。
【0068】
レンズ材料
本発明での使用に適した眼科レンズは、シリコーンヒドロゲルから生成されるレンズを含む。シリコーンヒドロゲルは、普通のヒドロゲルに比較して、眼科レンズユーザーに利益を提供する。例えば、当該シリコーンヒドロゲルは、典型的には、はるかに高い酸素透過性(oxygen permeability)、Dk、または、酸素酸素/透過性(oxygen oxygen/transmissibility)、Dk/lを提供し、この場合、lは当該レンズの厚さである。当該レンズは、低酸素症の軽減により角膜腫脹(corneal swelling)軽減を引き起こし、角膜周辺の赤みを減少させ、快適さ向上を生じ、細菌感染などの有害応答リスク低減を有することができる。シリコーンヒドロゲルは、典型的には、シリコーン含有モノマーもしくはマクロマーを親水モノマーもしくはマクロマーと配合することによって生成される。
【0069】
一部の実施態様は、高分子量親水ポリマー、ヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマー、さらに以下の物質の1種類以上を混合することによって調製される、本発明の眼科レンズを含むことができる。当該物質とは、追加シリコーン含有モノマー、親水モノマー、添加剤(「反応成分」)および希釈剤(合わせて、「反応混合物」)、および、重合開始剤、およびPEG 2000などのPEGおよびPEOの1種類以上、である。次に、当該反応混合物が硬化される。
【0070】
本発明に従って、PEGおよびPEOの1種類以上は、前記反応混合物中に、形成されたレンズの離型を容易にするのに有効な量で含まれる。本明細書で使用される場合、離型を容易にするのに有効な量とは、PEGおよびPEOの少なくとも1種類を含まない同等の反応混合物に比較して、同様の条件下では、より短い離型時間を示す量である。例えば、一部の好ましい実施態様では、0.05〜10.0重量%のPEG 2000が、前記モノマー混合物に添加され、離型を容易にすることができ、さらに好ましくは0.05〜5.0重量%のPEG 2000、最も好ましくは0.10〜3重量%のPEG 2000が前記反応混合物に添加され、前記割型からの前記眼科レンズの離型を容易にすることができる。
【0071】
シリコーン含有モノマーの例は、SiGMA、α,ω-ビスメタクリルオキシプロピルポリジメチルシロキサン、mPDMS(モノメタクリルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン)、およびTRIS(3-メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン)を含む。
【0072】
親水モノマーの例は、HEMA(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、DMA(N,N-ジメチルアクリルアミド)、およびNVP(N-ビニルピロリドン)を含む。
【0073】
一部の実施態様では、高分子量ポリマーがモノマー混合物に添加され、内部湿潤剤の機能を発揮することができる。一部の実施態様は、技術上周知の追加成分または添加剤も含むことができる。添加剤は、例えば、紫外線吸収化合物およびモノマー、反応性着色剤(reactive tint)、抗菌化合物、色素、光互変性物質(photochromic)、離型剤、それらの配合物などを含むことができる。
【0074】
前記シリコーンモノマーおよびマクロマーは、前記親水モノマーまたはマクロマーとブレンドされ、眼科レンズ型に入れられ、当該モノマーの重合を惹起できる1種類以上の条件に当該モノマーを曝露することによって硬化される。当該条件は、例えば、熱および光を含むことができ、当該光は、可視光、電離線、化学線、X線、電子ビームまたは紫外(以後、「UV」)光の1種類以上を含むことができる。一部の実施態様では、重合の惹起に利用される光は、250〜700 nmの波長を有することができる。適切な放射線源は、UVランプ、蛍光ランプ、白熱ランプ、水銀ランプ、および日光を含む。前記モノマー合成物にUV吸収化合物が(例えば、UVブロックとして)含まれる実施態様では、硬化は、UV照射以外の手段(例えば、可視光または熱など)によって実施されることができる。
【0075】
一部の実施態様で、硬化の促進に使用される放射線源は、低強度のUVA(約315〜約400 nm)、UVB(約280〜約315)、または可視光(約400〜約450 nm)から選択されることができる。一部実施態様は、混合物がUV吸収化合物を含む反応も含むことができる。
【0076】
前記レンズが熱を使って硬化される一部の実施態様では、その後、熱重合開始剤(thermal initiator)がモノマー混合物に添加されることができる。当該重合開始剤は、過酸化ベンゾイルなどの過酸化物、および、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)などのアゾ化合物を含むことができる。
【0077】
一部の実施態様で、レンズは、UV光または可視光を使って硬化されることができ、光重合開始剤(photoinitiator)が、前記モノマー混合物に添加されることができる。当該光重合開始剤は、例えば、芳香族α-ヒドロキシケトン、アルコキシオキシベンゾイン、アセトフェノン、アシルフォスフィンオキサイド、および、三級アミン+ジケトン(tertiary amine plus a diketone)、それらの混合物などを含むことができる。光重合開始剤の説明に役立つ例は、1-ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2、4-4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド(DMBAPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(イルガキュア819(Irgacure 819))、2,4,6-トリメチルベンジルジフェニルフォスフィンオキサイド、および2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾインメチルエステル、および、カンファーキノンとエチル4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエートの配合物である。市販の可視光重合開始剤系は、イルガキュア819(Irgacure 819)、イルガキュア1700(Irgacure 1700)、イルガキュア1800(Irgacure 1800)、イルガキュア819(Irgacure 819)、イルガキュア1850(Irgacure 1850)(全て、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals)から販売)、および、ルシリンTPO重合開始剤(Lucirin TPO initiator)(BASFから販売)を含む。市販のUV光重合開始剤は、ダロキュア1173 (Darocur 1173)、およびダロキュア2959(Darocur 2959)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals))を含む。
【0078】
一部の実施態様では、例えば、各種成分の溶解性を改善するため、あるいは、形成されるポリマーの透明度または重合度を高めるために、前記モノマー混合物中に希釈剤を含むことも有用であることができる。実施態様は、希釈剤として二級および三級アルコールを含むことができる。
【0079】
既知のスピンキャスティングおよび置注法(static casting)を含めて、眼科レンズの生産において、前記反応混合物の加工に各種プロセスが既知である。一部の実施態様では、ポリマーから眼科レンズを生産する方法は、シリコーンヒドロゲルの成型を含む。シリコーンヒドロゲル成型は、効率的であることができ、水和レンズの最終形状の正確な制御を提供する。
【0080】
本明細書で使用される場合、前記モノマー混合物の硬化は、当該モノマー混合物の重合を可能にする、あるいは、促進するプロセスまたは条件を含む。重合を促進する条件の例は、光への曝露および熱エネルギーの適用の1種類以上を含む。
【0081】
シリコーンヒドロゲルレンズは、3,7-ジメチル-3-オクタノールなどの比較的疎水性のある希釈剤を使って製造されることができる。水中で当該レンズを離型することを試みる場合、当該希釈剤は、水の吸収を防ぎ、当該レンズ離型を格納するのに十分な膨潤の余地を与えない。
【0082】
別法として、シリコーンヒドロゲルは、エタノール、t-ブタノール、またはt-アミルアルコールなどの比較的親水性の水溶性希釈剤を使って製造されることができる。当該希釈剤が使用され、前記レンズおよび型が水に入れられると、疎水性希釈剤が使用される場合よりも、当該希釈剤は、より容易に溶解することができ、当該レンズは、水中でさらに外れ易くなることができる。
【0083】
高分子量親水ポリマー
これらの高分子量親水ポリマーの好ましい重量平均分子量は、約2.491×10-19g(約150,000ダルトン)を超える、さらに好ましくは約2.491×10-19g(約150,000ダルトン)〜約3.321×10-18g(約2,000,000ダルトン)、なお一層好ましくは約4.982×10-19g(約300,000ダルトン)〜約2.989×10-18g(約1,800,000ダルトン)、最も好ましくは約8.303×10-19g(約500,000ダルトン)〜約2.491×10-18g(約1,500,000ダルトン)である。
【0084】
別法として、本発明の親水ポリマーの分子量は、「エンサイクロペディア・オブ・ポリマー・サイエンス・アンド・エンジニアリング、N−ビニルアミドポリマーズ(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, N-Vinyl Amide Polymers)第2版、17巻」pp.198〜257, ジョン・ウィレー・アンド・サンズ・インコーポレイティッド(John Wiley & Sons Inc.)に記述されているように、動粘度測定に基づいて、 K-値でも表されることができる。このように表示される場合、親水モノマーは、約46より高い、好ましくは約46〜約150のK-値を有する。当該高分子量親水ポリマーは、コンタクトレンズを提供するのに十分な量で、これらの装置の調合物中に存在し、これは、使用中に、表面改質なしに、表面沈着物が実質的にない状態にする。典型的な使用期間は、少なくとも約8時間、好ましくは連続で数日間の装着、さらに好ましくは外さずに24時間以上を含む。表面沈着物が実質的にないというのは、細隙灯(slit lamp)で検査した場合に、患者集団において装着されたレンズの少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、さらに好ましくは約90%が、装着期間全体で、なし、またはわずかと評価された沈着物を示すことを意味する。
【0085】
高分子量親水ポリマーの適切な量は、すべて、全反応成分の合計に基づいて、約1〜約15重量%、さらに好ましくは約3〜約15重量%、最も好ましくは約5〜約12重量%を含む。
【0086】
高分子量親水ポリマーの例は、ポリアミド、ポリラクトン、ポリイミド、ポリラクタム、および、DMAを低モル量のヒドロキシル官能基モノマー(HEMAなど)で共重合し、その後、生じたコポリマーのヒドロキシル基をラジカル重合性基(イソシアネートエチルメタクリレート、またはメタクリロイルクロライドなど)含有材料と反応させることによって官能基化されたDMAなどの官能基化ポリアミド、ポリラクトン、ポリイミド、ポリラクタムを含むが、それらに制約されない。グリシジルメタクリレートによってDMA、またはn-ビニルピロリドンから生成される親水プレポリマーも使用されることができる。当該グリシジルメタクリレート環は開環され、ジオールを生じることができ、当該ジオールは、混合系で他の親水プレポリマーと合わせて使用され、高分子量親水ポリマー、ヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマー、および相溶性を付与する任意の他の基の相溶性を高めることができる。好ましい高分子量親水ポリマーは、主鎖に環式部分を含有するもの、さらに好ましくは環式アミド、または環式イミドである。高分子量親水ポリマーは、ポリ-N-ビニルピロリドン、ポリ-N-ビニル-2-ピペリドン、ポリ-N-ビニル-2-カプロラクタム、ポリ-N-ビニル-3-メチル-2-カプロラクタム、ポリ-N-ビニル-3-メチル-2-ピペリドン、ポリ-N-ビニル-4-メチル-2-ピペリドン、ポリ-N-ビニル-4-メチル-2-カプロラクタム、ポリ-N-ビニル-3-エチル-2-ピロリドン、および、ポリ-N-ビニル-4,5-ジメチル-2-ピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリ-N-N-ジメチルアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリ-2-エチルオキサゾリン、ヘパリンポリサッカライド、ポリサッカライド、それらの混合物およびコポリマー(ブロックもしくはランダム、枝分れ、多重鎖(multichain)、櫛形、または星形を含む)を含むが、それらに制約されず、ポリ-N-ビニルピロリドン(PVP)が特に好ましい。PVPのグラフトコポリマーなど、コポリマーも使用できる。
【0087】
前記高分子量親水ポリマーは、本発明の医療装置に湿潤性の改良、特に生体内での湿潤性の改良を提供する。いずれの理論にも拘束されることなく、当該高分子量親水ポリマーは、水素結合受容体であり、これにより、水性環境中で、水への水素結合が親水性を効果的に高めると考えられる。無水状態は、前記反応混合物中への当該親水ポリマーの混合(incorporation)を促進する。具体的に列挙された高分子量親水ポリマーとは別に、本発明では、前記ポリマーがシリコーンヒドロゲル調合物に添加される場合、当該親水ポリマーが、(a)前記反応混合物から実質的に相分離せず、(b)生じる硬化ポリマーに湿潤性を付与するという条件付きであれば、どの高分子量ポリマーも本発明において有用になると予想される。一部の実施態様では、当該高分子量親水ポリマーは、加工温度で、希釈剤に可溶性であるのが好ましい。簡単であることおよびコスト削減の点から、水または水溶性希釈剤を使用する製造プロセスが好ましい。これらの実施態様では、加工温度で水溶性である高分子量親水ポリマーが好ましい。
【0088】
ヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマー
本明細書で使用される場合、「ヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマー(hydroxyl-functionalized silicone containing monomer)」とは、ゲル透過クロマトグラフィー、屈折率検出法で測定された場合、約8.303×10-21g(約5000ダルトン)未満、好ましくは、約4.982×10-21g(約3000ダルトン)未満の平均分子量を有する少なくとも1個の重合性基を含有する化合物で、これは、前記ヒドロゲル調合物中に含まれるシリコーン含有モノマーを前記親水ポリマーと相溶化できる。ヒドロキシル官能基(hydroxyl functionality)は、親水相溶性を改善する上で非常に効率的である。よって、好ましい実施態様では、本発明のヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーは、少なくとも1個のヒドロキシル基と少なくとも1個の「-Si-O-Si-」基を含む。シリコーンおよびその結合酸素は、前記ヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーの約10重量%を上回る割合を占めるのが好ましく、さらに好ましくは約20重量%を超える割合を占める。
【0089】
前記ヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマー中のOHに対するSiの比率も、所望の相溶度を提供するヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーの提供にとって重要である。OHに対する疎水部分の比率が高すぎると、当該ヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーは、親水ポリマーの相溶化が不良になり、不相溶性反応混合物を生じることがある。従って、一部の実施態様では、当該Si対OHの比は、ほぼ15:1未満、好ましくは約1:1〜約10:1である。一部の実施態様では、一級アルコールが、二級アルコールに比べて改良された相溶性を提供した。ヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーの量および選択が、所望の湿潤性を達成するのにどの位の親水ポリマーが必要か、また、当該シリコーン含有モノマーが前記親水ポリマーとどの程度まで不相溶であるかに左右されることを当業者は認識するであろう。
【0090】
ヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマー中の例は、式IおよびIIのモノマーを含み、
【化2】

【化3】

式中、
nは3〜35、好ましくは4〜25の整数であり、
R1は水素、C1-6アルキルであり、
R2、R3およびR4は、独立して、C1-6アルキル、トリC1-6アルキルシロキシ、フェニル、ナフチル、置換型C1-6アルキル、置換型フェニル、または置換型ナフチルであり、
当該アルキル置換基は、C1-6アルコキシカルボニル、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、アミド、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシル、C1-6アルキルカルボニル、およびホルミルから成る群の構成物1種類以上から選択され、
芳香族置換基は、C1-6アルコキシカルボニル、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、アミド、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシル、C1-6アルキルカルボニル、およびホルミルから成る群の構成物1種類以上から選択され、
R5はヒドロキシル、1個以上のヒドロキシル基を含有するアルキル基、または、(CH2(CR9R10)yO)x)-R11であり、
式中、yは1〜5、好ましくは1〜3であり、
xは1〜100、好ましくは2〜90、さらに好ましくは10〜25の整数であり、
R9〜R11は、独立して、H、10個までの炭素原子を有するアルキル、および、少なくとも1個の極性官能基で置換された炭素原子10個までを有するアルキル基であり、
R6は、炭素原子20個までを含む二価基(divalent group)であり、
R7は、フリーラジカルおよび/または陽イオン重合を受けることができる、炭素原子20個までを含む一価基であり、
R8は、炭素原子20個までを含む、二価または三価基である。
【0091】
本発明の反応混合物は、1種類を上回るヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーを含むことができる。
【0092】
単官能基ヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーに関して、好ましいR1は水素、好ましいR2、R3およびR4は、C1-6アルキルおよびトリC1-6アルキルシロキシ、最も好ましくはメチルおよびトリメチルシロキシである。多官能基(二官能基以上)R1〜R4は、独立して、エチレン不飽和重合性基(ethylenically unsaturated polymerizable groups)を含み、さらに好ましくはアクリレート、スチリル、C1-6アルキルアクリレート、アクリルアミド、C1-6アルキルアクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、C2-12アルケニル、C2-12アルケニルフェニル、C2-12アルケニルナフチル、または、C2-6アルケニルフェニルC1-6アルキルを含む。
【0093】
好ましいR5はヒドロキシル、-CH2OHまたはCH2CHOHCH2OHであり、ヒドロキシルが最も好ましい。
【0094】
好ましいR6は二価C1-6アルキル、C1-6アルキルオキシ、C1-6アルキルオキシC1-6アルキル、フェニレン、ナフタレン、C1-12シクロアルキル、C1-6アルコキシカルボニル、アミド、カルボキシ、C1-6アルキルカルボニル、カルボニル、C1-6アルコキシ、置換型C1-6アルキル、置換型C1-6アルキルオキシ、置換型C1-6アルキルオキシC1-6アルキル、置換型フェニレン、置換型ナフタレン、置換型C1-12シクロアルキルであり、当該置換基は、C1-6アルコキシカルボニル、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、アミド、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシル、C1-6アルキルカルボニル、およびホルミルから成る群の1種類以上の構成物から選択される。特に好ましいR6は、二価メチル(メチレン)である。
【0095】
好ましいR7は、フリーラジカル反応基(アクリレート、スチリル、ビニル、ビニルエーテル、イタコネート基(itaconate group)、C1-6アルキルアクリレート、アクリルアミド、C1-6アルキルアクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、C2-12アルケニル、C2-12アルケニルフェニル、C2-12アルケニルナフチル、もしくはC2-6アルケニルフェニルC1-6アルキルなど)、または、陽イオン反応基(ビニルエーテル、もしくはエポキシド基など)を含む。特に好ましいR7は、メタクリレートである。
【0096】
好ましいR8は、二価C1-6アルキル、C1-6アルキルオキシ、C1-6アルキルオキシC1-6アルキル、フェニレン、ナフタレン、C1-12シクロアルキル、C1-6アルコキシカルボニル、アミド、カルボキシ、C1-6アルキルカルボニル、カルボニル、C1-6アルコキシ、置換型C1-6アルキル、置換型C1-6アルキルオキシ、置換型C1-6アルキルオキシC1-6アルキル、置換型フェニレン、置換型ナフタレン、置換型C1-12シクロアルキルであり、当該置換基は、C1-6アルコキシカルボニル、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、アミド、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシル、C1-6アルキルカルボニル、およびホルミルから成る群の1種類以上の構成物から選択される。特に好ましいR8は、C1-6アルキルオキシC1-6アルキルである。
【0097】
特に好ましい式Iのヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーの例は、2-プロペン酸、2-メチル-2-ヒドロキシ-3-[3-[1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロポキシ]プロピルエステル(これは、(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシランとも称されることができる)である。
【化4】

【0098】
上記の化合物(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシランは、エポキシドから形成され、これが、上記の化合物と(2-メタクリルオキシ-3-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシランの80:20混合物を生成する。本発明の一部の実施態様では、若干量の一級ヒドロキシル、好ましくは約10重量%を超える量、さらに好ましくは少なくとも約20重量%を存在させるのが好ましい。
【0099】
他の適切なヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーは、
(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン
【化5】

ビス-3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシプロピル ポリジメチルシロキサン
【化6】

3-メタクリルオキシ-2-(2-ヒドロキシエトキシ)プロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン
【化7】

N,N,N',N'-テトラキス(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-α,ω-ビス-3-アミノプロピル-ポリジメチルシロキサンを含む。
【0100】
アミノ官能基ポリジメチルシロキサンとのグリシジルメタクリレートの反応生成物も、ヒドロキシル官能基シリコーン含有モノマーとして使用されることができる。
【0101】
適切なヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーであることができるなおも別の構造は、「プロシーディングス・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ、ディビジョン・オブ・ポリマー・マテリアル・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Pro. ACS Div. Polym. Mat. Sci. Eng.)」、1997年4月13〜17日、p.42に開示された化合物に類似し、以下の構造を有する、
【化8】

式中、
n=1〜50、Rは、独立して、Hまたは重合性不飽和基を含み、少なくとも1個のRが重合性基を含み、少なくとも1個のR、および、好ましくは3〜8個のRがHを含む。
【0102】
これらの成分は、液相クロマトグラフィー、蒸留、再結晶または抽出などの既知の方法によって前記ヒドロキシル官能基化モノマーから除去されることができ、あるいは、反応条件と反応物比率の慎重な選択によって、それらの形成が、回避されることができる。
【0103】
適切な単官能基ヒドロキシル官能基化シリコーンモノマーは、ペンシルバニア州モリスビルのグレスト・インコーポレイティッド(Glest, Inc.)から市販されている。適切な多官能基ヒドロキシル官能基化シリコーンモノマーは、Glest, Inc. Morrisville, PAから市販されており、あるいは、米国特許第5,994,488号および第5,962,548号に開示されている手順を使って生成されることができる。
【0104】
ヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーは、生物医学的装置、特に眼科用装置の相溶性ポリマーの提供に特に適していることが判明しているが、重合および/または形成され、最終物品になる場合に、選択された親水成分と相溶性を示すいずれの官能基化シリコーン含有モノマーも使用されることができる。適切な官能基化シリコーン含有モノマーは、次のモノマー相溶性試験を使って選択されることができる。この試験では、モノ-3-メタクリルオキシプロピル末端、モノ-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(mPDMS MW(分子量)800〜1000)、および被験モノマーそれぞれ1gが、ほぼ20℃で3,7-ジメチル-3-オクタノール1gと合わせて混合される。12重量部のK-90 PVPおよび60重量部のDMAの混合物が、疎水成分溶液に、攪拌下で、3分間の攪拌後に混濁するまで滴加される。PVPとDMAの添加ブレンドの質量は、g単位で測定され、モノマー相溶性指数として記録される。0.2gを超える、さらに好ましくは約0.7gを超える、最も好ましくは約1.5gを超える相溶性指数を有するヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーが、本発明での使用に適している。
【0105】
本発明のヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーの「有効量」または「相溶化有効量(compatibilizing effective amount)」は、前記ポリマー調合物の高分子量親水ポリマーと他の成分の相溶化または溶解に必要な量である。よって、ヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーの量は、一部には、使用される親水ポリマー量に左右され、より高濃度の親水ポリマーの相溶化には、より多くのヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーが必要である。前記ポリマー調合物中のヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーの有効量は、約5%(前記反応成分の重量%に基づいた重量%)〜約90%、好ましくは約10〜約80%、最も好ましくは約20〜約50%を含む。
【0106】
本発明の生物医学的装置の調製には、本発明の高分子量親水ポリマーおよびヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーに加えて、他の親水性および疎水性モノマー、架橋剤、添加剤、希釈剤、重合開始剤が使用されることができる。本発明の生物医学的装置の提供には、高分子量親水ポリマーおよびヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーに加えて、前記ヒドロゲル調合物は、追加のシリコーン含有モノマー、親水モノマー、および架橋剤を含むことができる。
【0107】
追加のシリコーン含有モノマー
追加のシリコーン含有モノマーに関して、TRISの有用なアミド類似体は、3-メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)、モノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、3-メタクリルオキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、メタクリルオキシプロピルペンタメチルジシロキサン、およびそれらの配合物が、本発明の追加のシリコーンシリコーン含有モノマーとして特に有用である。追加のシリコーン含有モノマーは、約0〜約75重量%、さらに好ましくは約5〜約60重量%、最も好ましくは約10〜40重量%の量で存在することができる。
【0108】
親水モノマー
さらに、本発明の反応成分は、従来のヒドロゲルの調製に使用されるいずれかの親水モノマーも含むことができる。例えば、アクリル基を含有するモノマー(CH2.dbd.CRCOX、式中、Rは水素またはC1-6アルキルであり、XはOまたはNである)、またはビニル基(--C.dbd.CH2)が使用されることができる。追加の親水性モノマーの例は、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミド、およびそれらの配合物である。
【0109】
上記の追加の親水モノマーとは別に、重合性二重結合を含有する官能基で置換された末端ヒドロキシル基1個以上を有するポリオキシエチレンポリオールが使用されることができる。例は、ポリエチレングリコール、エトキシル化アルキルグルコシド(ethoxylated alkyl glucoside)、およびエトキシル化ビスフェノールA(ethoxylated bisphenol A)を含み、イソシアネートエチルメタクリレート、無水メタクリル酸、塩化メタクリロイル、塩化ビニルベンゾイルなどの1モル当量以上のエンドキャッピング基(end-capping group)と反応し、カルバメート基、尿素基またはエステル基などの結合部分によって結合された1個以上の末端重合性オレフィン基を有するポリエチレンポリオールを生成する。
【0110】
なおもさらなる例は、親水性ビニルカーボネートもしくはビニルカルバメートモノマー、親水性オキサゾロンモノマーおよびポリデキストランを含む。
【0111】
追加の親水性モノマーは、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、グリセロールメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N-ビニルピロリドン(NVP)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、および、それらの配合物を含むことができる。追加の親水モノマーは、約0〜約70重量%、さらに好ましくは約5〜60重量%、最も好ましくは約10〜50重量%の量で存在することができる。
【0112】
架橋剤
適切な架橋剤は、2個以上の重合性官能基を有する化合物である。当該架橋剤は、親水性または疎水性であることができ、本発明の一部の実施態様では、親水性および疎水性架橋剤の混合物が、光学的透明度が改善された(CSI薄型レンズに比較して曇りが減少)シリコーンヒドロゲルを提供することが認められている。適切な親水性架橋剤の例は、2個以上の重合性官能基、ならびに、ポリエーテル、アミドまたはヒドロキシル基などの親水性官能基を有する化合物を含む。具体例は、TEGDMA(テトラエチレングリコールジメタクリレート)、TrEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、エチレンジアミンジメタクリルアミド、グリセロールジメタクリレート、および、それらの配合物を含む。適切な疎水性架橋剤の例は、多官能基ヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマー、多官能基ポリエーテル-ポリジメチルシロキサンブロックコポリマー、それらの配合物などを含む。具体的な疎水性架橋剤は、アクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン(n=10または20)(acPDMS)、ヒドロキシルアクリレート官能基化シロキサンマクロマー、メタクリルオキシプロピル末端PDMS、ブタンジオールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、1,3-ビス(3-メタクリルオキシプロピル)-テトラキス(トリメチルシロキシ)ジシロキサン、およびそれらの混合物を含む。好ましい架橋剤は、TEGDMA、EGDMA、acPDMS、およびそれらの配合物を含む。使用される親水性架橋剤の量は、一般に約0〜約2重量%、好ましくは約0.5〜約2重量%であり、疎水性架橋剤の量は、約0〜約5重量%、であり、これは、別法として、約0.01〜約0.2 mmol/g反応成分、好ましくは約0.02〜約0.1 mmol/g、さらに好ましくは0.03〜約0.6 mmol/gのモル%で示されることができる。
【0113】
最終ポリマー中の架橋剤レベルを増加させると、曇り度を減少させることが認められている。しかし、架橋剤濃度が約0.15 mmol/gを超えて増加するにつれ、反応成分弾性率(reactive components modulus)は、総じて所望レベルより上に(約6.206×105Pa(約90psi)を超えて)増加する。よって、本発明の一部の実施態様では、当該架橋剤の組成および量は、約0.01〜約0.1 mmol/g架橋剤の、反応混合物中架橋剤濃度を提供するように選択される。
【0114】
総じて技術上周知の追加の成分または添加剤も含まれることができる。添加剤は、紫外線吸収化合物およびモノマー、反応性着色剤、抗菌化合物、色素、光互変性物質、離型剤、それらの配合物などを含むが、それらに制約されない。
【0115】
追加の成分は、技術上周知の炭素-炭素三重結合含有モノマーおよびフッ素含有モノマーなどの他の酸素透過性成分を含み、フッ素含有(メト)アクリレートを含み、さらに具体的には、例えば、(メト)アクリル酸のフッ素含有C2−C12アルキルエステル、例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メト)アクリレート、2,2,2,2',2',2'-ヘキサフルオロイソプロピル(メト)アクリレート、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル(メト)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ペンタデカフルオロオクチル(メト)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9-ヘキサデカフルオロノニル(メト)アクリレートなどを含む。
【0116】
希釈剤
反応成分(ヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマー、親水性ポリマー、架橋剤、および他の成分)は、一般に、混合され、無水下、任意に少なくとも1種類の希釈剤の存在下で反応され、反応混合物を形成する。使用される希釈剤の種類および量も、生じるポリマーおよび物品の特性に影響する。最終物品の曇り度および湿潤性は、比較的疎水性のある希釈剤の選択および/または使用される希釈剤の濃度低下によって改良されることができる。上記のように、当該希釈剤の疎水性を増加すると、相溶性不良成分(相溶性試験で測定した場合)を加工し、相溶性ポリマーおよび物品を形成させることもできる。しかし、当該希釈剤が、疎水性を高めるにつれ、希釈剤を水に置換するのに必要な加工段階は、水以外の溶媒の使用を必要とするようになる。これは、製造プロセスをさらに複雑にし、コストを増加させることがあるので望ましくない。よって、必要な加工簡便性レベルを伴って前記成分に所望の相溶性を提供する希釈剤を選択するのが重要である。本発明の装置の調製に有用な希釈剤は、エーテル、エステル、アルカン、ハロゲン化アルキル、シラン、アミド、アルコール、および、それらの配合物を含む。アミドおよびアルコールが好ましい希釈剤であり、二級および三級アルコールは、最も好ましいアルコール希釈剤である。本発明に希釈剤として有用なエーテルの例は、テトラヒドロフラン、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、および、それらの混合物を含む。本発明に有用なエステルの例は、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸i-プロピル(i-propyl lactate)を含む。本発明に希釈剤として有用なハロゲン化アルキルの例は、塩化メチレンを含む。本発明に希釈剤として有用なシランの例は、オクタメチルシクロテトラシロキサンを含む。
【0117】
本発明に希釈剤として有用なアルコールの例は、式7を有する化合物であって、式中、R、R'およびR"は、独立して、H、1〜10個の炭素を有する線状、枝分れまたは環式一価アルキルから選択され、当該アルキルは、任意にハロゲン、エーテル、エステル、アリール、アミン、アミド、アルケン、アルキン、カルボン酸、アルコール、アルデヒド、ケトンなどを含む基(groups)の1種類以上と置換されることができ、あるいは、R、R'およびR"のいずれかの2種類または全3個が、合わせて結合し、前記の通りに置換されることもできる1〜10個の炭素を有するアルキルなど1種類以上の環状構造を、R、R'またはR"のうちの1個だけがHであるという条件付きで、形成できる。
【0118】
R、R'およびR"は、独立して、H、または、1〜7個の炭素を有する非置換の線状、枝分れまたは環式アルキル基から選択されるのが好ましい。R、R'およびR"は、独立して、1〜7個の炭素を有する非置換の線状、枝分れまたは環式アルキル基から選択されるのがさらに好ましい。特定の実施態様では、好ましい希釈剤は、4個以上、さらに好ましくは5個以上の全炭素を有する。その理由は、分子量が高いほど、希釈剤の揮発性が低下し、可燃性が低下するからである。当該R、R'およびR"のうちの1個がHであると、構造は、二級アルコールを形成する。当該R、R'およびR"のいずれもがHでない場合、構造は三級アルコールを形成する。三級アルコールは、二級アルコールよりも好ましい。当該希釈剤は、好ましくは不活性で、炭素総数が5以下であると、容易に水と置換可能となる。有用な二級アルコールの例は、2-ブタノール、2-プロパノール、メントール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、およびエキソノルボルネオール(exonorborneol)、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、3-メチル-2-ブタノール、2-ヘプタノール、2-オクタノール、2-ノナノール、2-デカノール、3-オクタノール、ノルボルネオールなどを含む。
【0119】
有用な三級アルコールの例は、tert-ブタノール、tert-アミルアルコール、2-メチル-2-ペンタノール、2,3-ジメチル-2-ブタノール、3-メチル-3-ペンタノール、1-メチルシクロヘキサノール、2-メチル-2-ヘキサノール、3,7-ジメチル-3-オクタノール、1-クロロ-2-メチル-2-プロパノール、2-メチル-2-ヘプタノール、2-メチル-2-オクタノール、2-2-メチル-2-ノナノール、2-メチル-2-デカノール、3-メチル-3-ヘキサノール、3-メチル-3-ヘプタノール、4-メチル-4-ヘプタノール、3-メチル-3-オクタノール、4-メチル-4-オクタノール、3-メチル-3-ノナノール、4-メチル-4-ノナノール、3-メチル-3-オクタノール、3-エチル-3-ヘキサノール、3-メチル-3-ヘプタノール、4-エチル-4-ヘプタノール、4-プロピル-4-ヘプタノール、4-イソプロピル-4-ヘプタノール、2,4-ジメチル-2-ペンタノール、1-メチルシクロペンタノール、1-エチルシクロペンタノール、1-エチルシクロペンタノール、3-ヒドロキシ-3-メチル-1-ブテン、4-ヒドロキシ-4-メチル-1-シクロペンタノール、2-フェニル-2-プロパノール、2-メトキシ-2-メチル-2-プロパノール、2,3,4-トリメチル-3-ペンタノール、3,7-ジメチル-3-オクタノール、2-フェニル-2-ブタノール、2-メチル-1-フェニル-2-プロパノール、および3-エチル-3-ペンタノールなどを含む。
【0120】
単一アルコール、または、上記アルコールの2種類以上の混合物、または、上記構造に従った2種類以上のアルコールの混合物が希釈剤として使用され、本発明のポリマーを生成することができる。
【0121】
特定の実施態様では、好ましいアルコール希釈剤は、少なくとも4個の炭素を有する二級および三級アルコールである。特に、一部のアルコール希釈剤は、tert-ブタノール、tert-アミルアルコール、2-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2,3-ジメチル-2-ブタノール、3-メチル-3-ペンタノール、3-エチル-3-ペンタノール、3,7-ジメチル-3-オクタノールを含むことができる。
【0122】
希釈剤は、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、tert-ブチルアルコール、3-メチル-3-ペンタノール、イソプロパノール、tert-アミルアルコール、乳酸エチル、乳酸メチル、乳酸i-プロピル、3,7-ジメチル-3-オクタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルプロピオンアミド、N-メチル-ピロリジノン、およびそれらの混合物も含むことができる。
【0123】
本発明の一部の実施態様では、前記希釈剤は、加工条件下で水溶性であり、短時間に前記レンズから水で容易に洗浄除去される。適切な水溶性希釈剤は、1-エトキシ-2-プロパノール、1-メチル-2-プロパノール、t-アミルアルコール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、イソプロパノール、1-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルプロピオンアミド、乳酸エチル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、それらの混合物などを含む。水溶性希釈剤の使用は、成型後プロセスが水のみ、または、実質的成分として水を含む水溶液を使って実施されることを可能にする。
【0124】
一部の実施態様では、希釈剤の量は、一般に、前記反応混合物の50重量%未満、好ましくは40重量%未満、さらに好ましくは10〜30重量%であることができる。一部の実施態様では、希釈剤は、離型剤などの追加の成分を含むことができ、水溶性物質を含み、レンズのデブロッキング(deblocking)に役立つことができる。
【0125】
重合開始剤は、適度の昇温でフリーラジカルを発生する過酸化ラウリル、過酸化ベンゾイル、過炭酸イソプロピル、アゾビスイソブチロニトリルなど、および、芳香族アルファヒドロキシケトン、アルコキシオキシベンゾイン、アセトフェノン、アシルフォスフィンオキサイド、および三級アミン+ジケトン(tertiary amine plus a diketone)などの光重合開始剤系、それらの混合物などの化合物を含むことができる。光重合開始剤の説明に役立つ例は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4-4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド(DMBAPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(イルガキュア819(Irgacure 819))、2,4,6-トリメチルベンジルジフェニルフォスフィンオキサイド、および2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾインメチルエステル、および、カンファーキノンとエチル4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエートの配合物である。市販の可視光重合開始剤系は、イルガキュア819(Irgacure 819)、イルガキュア1700(Irgacure 1700)、イルガキュア1800(Irgacure 1800)、イルガキュア819(Irgacure 819)、イルガキュア1850(Irgacure1850)(すべて、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals)から販売)、およびルシリンTPO重合開始剤(Lucirin TPO initiator)(BASFから販売)を含む。市販のUV光重合開始剤は、ダロキュア1173(Darocur 1173)、ダロキュア2959(Darocur 2959)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(Ciba Specilty Chemicals))を含む。当該重合開始剤は、前記反応混合物中、当該反応混合物の光重合を開始するのに有効な量、例えば、反応モノマー100重量部当り0.1〜2重量部の量で使用される。当該反応混合物の重合は、使用される重合開始剤に応じて、熱もしくは可視光もしくは紫外線または他の手段の適切な選択によって開始されることができる。別法として、重合開始は、例えば電子ビームを使って、光重合開始剤を利用せずに実施されることができる。しかし、光重合開始剤が使用される場合、一部の実施態様は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4-4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド(DMBAPO)の配合物を含むことができ、当該重合開始法は、可視光を含むことができる。他の実施態様は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(イルガキュア819.RTM.(Irgacure 819.RTM.))を含むことができる。
【0126】
一部の実施態様では、本発明は、さらに、次の調合の眼科レンズを含むことができる。即ち、1重量%成分HFSCM HMWHP SCM HM 5-90 1-15、3-15または5-12 0 0 10-80 1-15、3-15または5-12 0 0 20-50 1-15、3-15または5-12 0 0 5-90 1-15、3-15または5-12 0-80、5-60または10- 0-70、5-60または10- 40 50 10-80 1-15、3-15または5-12 0-80、5-60または10- 0-70、5-60または10- 40 50 20-50 1-15、3-15または5-12 0-80、5-60または10- 0-70、5-60または10- 40 50である。HFSCMはヒドロキシル-官能基化シリコーン含有モノマー、HMWHPは高分子量親水ポリマー、SCMはシリコーン含有モノマー、HMは親水モノマーである。
【0127】
上記の重量%は、全反応成分に基づくことができる。よって、一部の実施態様では、本発明は、シリコーンヒドロゲル、生物医学的装置、眼科装置およびコンタクトレンズの1種類以上を含むことができ、その1種類以上の合成物(compositions)のそれぞれは、90種類の可能な組成範囲を述べた表に挙げられている。検討された範囲のそれぞれが、「約(about)」の前置詞を付されているが、表示された成分、およびいずれの追加成分も、合計100重量%であるという条件付きで、この範囲の組合せが提供される。
【0128】
化合されるシリコーン含有モノマー(ヒドロキシル-官能基化シリコーン含有モノマーおよび追加のシリコーン含有モノマー)の範囲は、前記反応成分の、約5〜99重量%、さらに好ましくは約15〜90重量%、また、一部の実施態様では、約25〜約80重量%であることができる。ヒドロキシル-官能基化シリコーン含有モノマーの範囲は、約5〜約90重量%、好ましくは約10〜約80重量%、最も好ましくは約20〜約50重量%であることができる。一部の実施態様では、親水モノマーの範囲は、前記反応成分の約0〜約70重量%、さらに好ましくは約5〜約60重量%、最も好ましくは約10〜約50重量%であることができる。他の実施態様では、高分子量親水ポリマーの範囲は、約1〜約15重量%、または、約3〜約15重量%、または、約5〜約12重量%であることができる。すべてのおよその重量%は、全反応成分の合計を基礎とする。
【0129】
一部の実施態様では、希釈剤の範囲は、前記反応混合物の全成分の重量に基づいて、約0〜約70重量%、または、約0〜約50重量%、および/または、約0〜約40重量%、一部の実施態様では、約10〜約30重量%である。必要とされる希釈剤の量は、前記反応成分の性質および相対量に応じて異なる。
【0130】
一部の実施態様では、前記反応成分は、2-プロペン酸、2-メチル-2-ヒドロキシ-3-[3-[1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル」プロポキシ]プロピルエステル、「SiGMA」(前記反応成分の約28重量%);800〜1000 MW モノメタクリルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン、「mPDMS」(約31重量%);N,N-ジメチルアクリルアミド、「DMA」(約24重量%);2-ヒドロキシエチルメタクリレート、「HEMA」(約6重量%);テトラエチレングリコールジメタクリレート、「TEGDMA」(約1.5重量%)、ポリビニルピロリドン、「K-90 PVP」(約7重量%)を含み、残りは微量の添加剤および光重合開始剤を含む。重合は、約23%(化合されるモノマーおよび希釈剤ブレンドの重量%)の3,7-ジメチル-3-オクタノール希釈剤の存在下でも実施されることができる。
【0131】
一部の実施態様では、上記調合物の重合は、約29重量%の未硬化反応混合物を含む、希釈剤としてのtert-アミルアルコールの存在下で実施されることができる。
【0132】
〔実施の態様〕
(1) 反応混合物から形成される眼科レンズにおいて、
高分子量親水ポリマーと、
有効量のヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーと、
前記レンズが形成される割型からの前記レンズの離型を容易にするのに十分な量のポリエチレングリコールと、
を含む、眼科レンズ。
(2) 実施態様1に記載の眼科レンズにおいて、
前記レンズが形成される割型からの前記レンズの離型を容易にするのに十分な前記ポリエチレングリコールの前記量が、0.005〜10重量%である、
眼科レンズ。
(3) 実施態様1に記載の眼科レンズにおいて、
前記レンズが形成される割型からの前記レンズの離型を容易にするのに十分な前記ポリエチレングリコールの前記量が、0.05〜5重量%である、
眼科レンズ。
(4) 実施態様1に記載の眼科レンズにおいて、
前記レンズが形成される割型からの前記レンズの離型を容易にするのに十分な前記ポリエチレングリコールの前記量が、0.01〜3重量%である、
眼科レンズ。
(5) 実施態様1に記載の眼科レンズにおいて、
前記眼科レンズが、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである、
眼科レンズ。
(6) 実施態様1に記載の眼科レンズにおいて、
前記ポリエチレングリコールが、PEG 2000を含む、
眼科レンズ。
(7) 実施態様2に記載の眼科レンズにおいて、
前記ポリエチレングリコールが、mPEGを含む、
眼科レンズ。
(8) 実施態様2に記載の眼科レンズにおいて、
前記ポリエチレングリコールが、PEG DMEを含む、
眼科レンズ。
【0133】
(9) 生物医学的装置を調製する方法において、
少なくとも1種類の高分子量親水ポリマー、有効量の少なくとも1種類のヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマー、および、前記生物医学的装置が形成される割型からの前記生物医学的装置の離型を容易にするのに十分な量のポリエチレングリコールを含む成分の混合物を生成する段階と、
前記成分混合物を第一割型に入れる段階と、
前記成分混合物および前記第一割型と接触する第二割型を配置する段階と、
前記成分混合物を硬化させ、前記生物医学的装置を形成する段階と、
形成された前記生物医学的装置が前記第一割型および前記第二割型の少なくとも一方に付着したままであるように、前記第一割型を前記第二割型から分離する段階と、
形成された前記生物医学的装置を溶液に曝露し、形成された前記生物医学的装置が付着したままの前記第一割型および前記第二割型の少なくとも一方から、形成された前記生物医学的装置を離型させる段階と、
を含む、方法。
(10) 実施態様9に記載の方法において、
前記装置が形成される前記割型からの前記装置の離型を容易にするのに十分な前記ポリエチレングリコールの前記量が、0.05〜5重量%である、
方法。
(11) 実施態様9に記載の方法において、
前記装置が形成される前記割型からの前記装置の離型を容易にするのに十分な前記ポリエチレングリコールの前記量が、0.01〜3重量%である、
方法。
(12) 実施態様9に記載の方法において、
前記生物医学的装置が、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである、
方法。
(13) 実施態様9に記載の方法において、
前記ポリエチレングリコールが、PEG 2000を含む、
方法。
(14) 実施態様9に記載の方法において、
前記ポリエチレングリコールが、mPEGを含む、
方法。
(15) 実施態様9に記載の方法において、
前記ポリエチレングリコールが、PEG DMEを含む、
方法。
(16) 反応混合物から形成されるシリコーンヒドロゲルにおいて、
高分子量親水ポリマーと、
有効量のヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーと、
0.05〜5重量%のポリエチレングリコールと、
を含む、シリコーンヒドロゲル。
(17) 実施態様16に記載のシリコーンヒドロゲルにおいて、
少なくとも1種類の追加のシリコーン含有モノマー、
をさらに含む、シリコーンヒドロゲル。
【0134】
(18) シリコーンヒドロゲルを含む生物医学的装置を形成する器具において、
前記生物医学的装置の形成に適した形状およびサイズの空洞を形成するように、互いに対して配置された、第一割型、および第二割型、
を含み、
前記第一割型および前記第二割型の少なくとも一方が、形成された前記生物医学的装置の離型を容易にするのに十分な量のポリエチレングリコールを含む、
器具。
(19) 実施態様18に記載の器具において、
形成された前記生物医学的装置の離型を容易にするのに十分な量のポリエチレングリコールを含む前記第一割型および前記第二割型の少なくとも一方が、ポリプロピレンをさらに含む、
器具。
(20) 実施態様18に記載の器具において、
形成された前記生物医学的装置の離型を容易にするのに十分な量のポリエチレングリコールを含む前記第一割型および前記第二割型の少なくとも一方が、ポリオレフィンをさらに含む、
器具。
(21) 実施態様18に記載の器具において、
形成された前記生物医学的装置の離型を容易にするのに十分な量のポリエチレングリコールを含む前記第一割型および前記第二割型の少なくとも一方が、チーグラー・ナッタ系ポリオレフィン(Zieglar-Natta based polyolefin)をさらに含む、
器具。
【0135】
(22) シリコーンヒドロゲルを含む眼科レンズを加工する方法において、
レンズ形成樹脂を第一割型の第一レンズ形成面上に入れる段階と、
前記レンズ形成樹脂を、第二割型の第二レンズ形成面と接触させる段階であって、前記第一割型および前記第二割型が、互いを受けるように構成され、それによって、前記第一レンズ形成面と前記第二レンズ形成面との間に空洞が形成され、前記空洞が前記眼科レンズの形状を画定する、段階と、
前記レンズ形成樹脂を重合開始条件に曝露し、前記レンズ形成樹脂からレンズを形成し、前記第一割型および前記第二割型の少なくとも一方に前記レンズを付着させる段階と、
形成された前記眼科レンズが前記第一割型および前記第二割型の少なくとも一方に付着したままであるように、前記第二割型から前記第一割型を分離する段階と、
前記レンズが形成される前記割型からの前記レンズの離型を容易にするのに十分な量のポリエチレングリコールを含む第一水和溶液に前記眼科レンズを曝露する段階と、
を含む、方法。
(23) 実施態様22に記載の方法において、
前記レンズが形成される前記割型からの前記レンズの離型を容易にするのに十分な前記ポリエチレングリコールの前記量が、約800ppm〜1200ppmのポリエチレングリコールを含む、
方法。
(24) 実施態様22に記載の方法において、
前記レンズが形成される前記割型からの前記レンズの離型を容易にするのに十分な前記ポリエチレングリコールの前記量が、約500ppm〜2000ppmのポリエチレングリコールを含む、
方法。
(25) 実施態様22に記載の方法において、
脱イオン水を含む第二水和溶液に前記レンズおよび前記割型を曝露し、前記レンズから前記第一水和溶液を洗い落とす段階、
をさらに含む、方法。
(26) 実施態様22に記載の方法において、
前記重合開始条件が、化学線を含む、
方法。
(27) 実施態様22に記載の方法において、
前記重合開始条件が、化学線、および熱を含む、
方法。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】図1は、眼科レンズの型およびレンズの概略図を示す。
【図2】図2は、本発明の一部の実施態様の実施に利用されることができる例示的段階のブロック図を示す。
【図3】図3は、本発明の一部の実施態様の実施に利用されることができる器具の概略図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応混合物から形成される眼科レンズにおいて、
高分子量親水ポリマーと、
有効量のヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーと、
前記レンズが形成される割型からの前記レンズの離型を容易にするのに十分な量のポリエチレングリコールと、
を含む、眼科レンズ。
【請求項2】
請求項1に記載の眼科レンズにおいて、
前記レンズが形成される割型からの前記レンズの離型を容易にするのに十分な前記ポリエチレングリコールの前記量が、0.005〜10重量%である、
眼科レンズ。
【請求項3】
請求項1に記載の眼科レンズにおいて、
前記レンズが形成される割型からの前記レンズの離型を容易にするのに十分な前記ポリエチレングリコールの前記量が、0.05〜5重量%である、
眼科レンズ。
【請求項4】
請求項1に記載の眼科レンズにおいて、
前記レンズが形成される割型からの前記レンズの離型を容易にするのに十分な前記ポリエチレングリコールの前記量が、0.01〜3重量%である、
眼科レンズ。
【請求項5】
請求項1に記載の眼科レンズにおいて、
前記眼科レンズが、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである、
眼科レンズ。
【請求項6】
請求項1に記載の眼科レンズにおいて、
前記ポリエチレングリコールが、PEG 2000を含む、
眼科レンズ。
【請求項7】
請求項2に記載の眼科レンズにおいて、
前記ポリエチレングリコールが、mPEGを含む、
眼科レンズ。
【請求項8】
請求項2に記載の眼科レンズにおいて、
前記ポリエチレングリコールが、PEG DMEを含む、
眼科レンズ。
【請求項9】
生物医学的装置を調製する方法において、
少なくとも1種類の高分子量親水ポリマー、有効量の少なくとも1種類のヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマー、および、前記生物医学的装置が形成される割型からの前記生物医学的装置の離型を容易にするのに十分な量のポリエチレングリコールを含む成分の混合物を生成する段階と、
前記成分混合物を第一割型に入れる段階と、
前記成分混合物および前記第一割型と接触する第二割型を配置する段階と、
前記成分混合物を硬化させ、前記生物医学的装置を形成する段階と、
形成された前記生物医学的装置が前記第一割型および前記第二割型の少なくとも一方に付着したままであるように、前記第一割型を前記第二割型から分離する段階と、
形成された前記生物医学的装置を溶液に曝露し、形成された前記生物医学的装置が付着したままの前記第一割型および前記第二割型の少なくとも一方から、形成された前記生物医学的装置を離型させる段階と、
を含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記装置が形成される前記割型からの前記装置の離型を容易にするのに十分な前記ポリエチレングリコールの前記量が、0.05〜5重量%である、
方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法において、
前記装置が形成される前記割型からの前記装置の離型を容易にするのに十分な前記ポリエチレングリコールの前記量が、0.01〜3重量%である、
方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法において、
前記生物医学的装置が、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである、
方法。
【請求項13】
請求項9に記載の方法において、
前記ポリエチレングリコールが、PEG 2000を含む、
方法。
【請求項14】
請求項9に記載の方法において、
前記ポリエチレングリコールが、mPEGを含む、
方法。
【請求項15】
請求項9に記載の方法において、
前記ポリエチレングリコールが、PEG DMEを含む、
方法。
【請求項16】
反応混合物から形成されるシリコーンヒドロゲルにおいて、
高分子量親水ポリマーと、
有効量のヒドロキシル官能基化シリコーン含有モノマーと、
0.05〜5重量%のポリエチレングリコールと、
を含む、シリコーンヒドロゲル。
【請求項17】
請求項16に記載のシリコーンヒドロゲルにおいて、
少なくとも1種類の追加のシリコーン含有モノマー、
をさらに含む、シリコーンヒドロゲル。
【請求項18】
シリコーンヒドロゲルを含む生物医学的装置を形成する器具において、
前記生物医学的装置の形成に適した形状およびサイズの空洞を形成するように、互いに対して配置された、第一割型、および第二割型、
を含み、
前記第一割型および前記第二割型の少なくとも一方が、形成された前記生物医学的装置の離型を容易にするのに十分な量のポリエチレングリコールを含む、
器具。
【請求項19】
請求項18に記載の器具において、
形成された前記生物医学的装置の離型を容易にするのに十分な量のポリエチレングリコールを含む前記第一割型および前記第二割型の少なくとも一方が、ポリプロピレンをさらに含む、
器具。
【請求項20】
請求項18に記載の器具において、
形成された前記生物医学的装置の離型を容易にするのに十分な量のポリエチレングリコールを含む前記第一割型および前記第二割型の少なくとも一方が、ポリオレフィンをさらに含む、
器具。
【請求項21】
請求項18に記載の器具において、
形成された前記生物医学的装置の離型を容易にするのに十分な量のポリエチレングリコールを含む前記第一割型および前記第二割型の少なくとも一方が、チーグラー・ナッタ系ポリオレフィンをさらに含む、
器具。
【請求項22】
シリコーンヒドロゲルを含む眼科レンズを加工する方法において、
レンズ形成樹脂を第一割型の第一レンズ形成面上に入れる段階と、
前記レンズ形成樹脂を、第二割型の第二レンズ形成面と接触させる段階であって、前記第一割型および前記第二割型が、互いを受けるように構成され、それによって、前記第一レンズ形成面と前記第二レンズ形成面との間に空洞が形成され、前記空洞が、前記眼科レンズの形状を画定する、段階と、
前記レンズ形成樹脂を重合開始条件に曝露し、前記レンズ形成樹脂からレンズを形成し、前記第一割型および前記第二割型の少なくとも一方に前記レンズを付着させる段階と、
形成された前記眼科レンズが前記第一割型および前記第二割型の少なくとも一方に付着したままであるように、前記第二割型から前記第一割型を分離する段階と、
前記レンズが形成される前記割型からの前記レンズの離型を容易にするのに十分な量のポリエチレングリコールを含む第一水和溶液に前記眼科レンズを曝露する段階と、
を含む、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、
前記レンズが形成される前記割型からの前記レンズの離型を容易にするのに十分な前記ポリエチレングリコールの前記量が、約800ppm〜1200ppmのポリエチレングリコールを含む、
方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法において、
前記レンズが形成される前記割型からの前記レンズの離型を容易にするのに十分な前記ポリエチレングリコールの前記量が、約500ppm〜2000ppmのポリエチレングリコールを含む、
方法。
【請求項25】
請求項22に記載の方法において、
脱イオン水を含む第二水和溶液に前記レンズおよび前記割型を曝露し、前記レンズから前記第一水和溶液を洗い落とす段階、
をさらに含む、方法。
【請求項26】
請求項22に記載の方法において、
前記重合開始条件が、化学線を含む、
方法。
【請求項27】
請求項22に記載の方法において、
前記重合開始条件が、化学線、および熱を含む、
方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−279690(P2007−279690A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−28343(P2007−28343)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(500092561)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド (153)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 Centurion Parkway−Suite 100, Jacksonville, Florida 32256, U.S.A.
【Fターム(参考)】