説明

シリンダゲージ用ゼロ合わせ装置

【課題】熟練が全く要らず、まるで外径測定を行う感覚でシリンダゲージのゼロ合わせをすることができ、かつ製造コストも安価で保守も簡単なシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置を提供する。
【解決手段】ベース体と、測定子面受け部と、ガイドレールと、前記測定子面受け部と同一軸線上かつ昇降自在に設けられ、前記シリンダゲージの換えロッドを軸心上に受けるための換えロッド受け部を有し、前記ガイドレールに摺動可能に設置された換えロッド軸心上受け部材と、前記測定子面受け部と相対向して同一軸線上に設けられ、先端に前記換えロッドの先端面を受けるための換えロッド面受け部を有するスピンドル部と、前記スピンドル部が設けられたマイクロメータヘッドと、を含むようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の内径を測定するためのシリンダゲージのゼロ合わせをするためのシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、精密加工製品の内径寸法を測定するにあたっては、測定器具として、一般的には、栓ゲージ、デジタルノギス、内径マイクロメータ、ボアーマイクロメータ、シリンダゲージ等が用いられる。これら測定器具は、測定対象物の大きさや必要とする精度等により使い分けている。
【0003】
精密加工製品の機械式内径測定においては、シリンダゲージが入らないほどの小内径のものは、栓ゲージやピンゲージといった測定装置が主に用いられている。
【0004】
一方、内径がおよそ10mmよりも大きくなってくると、シリンダゲージが入るので、シリンダゲージがよく使われる。シリンダゲージは、JIS B7515に規定されている。標準的なシリンダゲージの測定部の構造を図6に示す。シリンダゲージ100は、基端に指示器の設けられた外筒102の先端に測定部104を有する。測定部104には、種々のサイズに交換可能であり、換えロッド先端部112を有する換えロッド106(換えロッド106は、アンビルと呼ばれることもある)と、案内板108a,108bと、測定子110とが設けられており、測定子110の変位を機械的に直角方向に伝達し、長さの基準と比較することで、取りつけてあるダイヤルゲージなどの指示器で測定子の変位を読み取る。
【0005】
しかしながら、シリンダゲージは、マイクロメータなどと違い比較測定による測定方法であるため目的とする寸法にいわゆるゼロ合わせ(ゼロセットやゼロ点合わせなどとも呼ばれる)をする必要がある。
【0006】
シリンダゲージのゼロ合わせの方法は種々あるが、マイクロメータのように測定器具の製造段階で所定の精度検査が行われており、検査に合格して出荷されたものを使用すれば安心というものではなく、シリンダゲージを扱う現場の作業者がゼロ合わせを行って使用する必要がある。
【0007】
シリンダゲージのゼロ合わせの一つの方法として、マスターリングゲージを用いてゼロ合わせを行う方法がある。マスターリングゲージは、測定器の基準として用いられるゲージであり、目的とする内径寸法と同じ寸法にμm単位で高精度に加工したマスターリングである。
【0008】
このマスターリングゲージがあれば、熟練の必要がなく簡単にしかも早くゼロ合わせができ、作業者も安心して測定作業ができるが、目的とする内径寸法と同じ寸法のマスターリングゲージを全て準備する必要がある。しかし、マスターリングゲージは、特に大径のものは高価であるため、多品種少量の製品を加工する場合にはコストの面から現実的ではなく、他の方法でゼロ合わせをする必要がある。
【0009】
シリンダゲージのゼロ合わせの別の方法として、ブロックゲージというサイズ標準器を用いる方法がある。
【0010】
ブロックゲージは、高価ではあるがいろいろの組み合わせができ、通常0.01mm毎
に任意の寸法に組み替えできる高精度に加工されたブロックのセットである。
【0011】
ブロックゲージを使用する方法は、ある程度の熟練が必要な上、ブロックを使用するときに、油分、埃などを充分拭き取る必要があり、仕舞うときにはブロックが錆びないように管理しなければならないなど、手間がかかるので、敬遠されがちである。
【0012】
シリンダゲージのゼロ合わせの他の方法として、外測マイクロゲージを使用する方法もある。外測マイクロゲージは、取り扱いが簡単で安価であるため、この方法は多く使用されている。
【0013】
しかしながら、外測マイクロゲージを用いたゼロ合わせでは、シリンダゲージの測定子のサイズが大きくなるほど、ゼロ合わせには熟練を必要とし、熟練者が苦労してゼロ合わせをした割には信頼性がなかったりすることがある。
【0014】
これは、シリンダゲージの測定子の測定点を、外測マイクロゲージの測定面に対して垂直にしながら、かつシリンダゲージの目盛りを読み取らなければならないため、測定子の大きなシリンダゲージを外測マイクロゲージでゼロ合わせしようとすると、操作上の測定誤差が生じやすいためである。
【0015】
また、例えば、図5に示すような複雑な形状を有する製品200を精度良く製作するには、3箇所の距離D1,D2,D3を測定する必要がある。この場合、一工程で3つのシリンダゲージを必要とするが、3つのシリンダゲージを夫々のサイズでゼロ合わせをするためには、上述したブロックゲージを用いるなどする必要がある。しかしながら、上述したように、ブロックゲージを用いる方法は、熟練を要する上に手間がかかるので、複数のシリンダゲージを精度良くゼロ合わせをするのは大変である。
【0016】
その他、例えば特許文献1及び特許文献2に示すようなシリンダゲージ用のゼロ合わせ装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】実開昭62−133102
【特許文献2】特開平11−83404
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、熟練が全く要らず、まるで外径測定を行う感覚でシリンダゲージのゼロ合わせをすることができ、かつ製造コストも安価で保守も簡単なシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明のシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置は、シリンダゲージのゼロ合わせに用いられるシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置であって、測定スペースが設けられたベース体と、前記測定スペースの一端部から前記測定スペースの他端部に向かって設けられた測定子面受け部と、前記測定スペースの一端部から他端部に掛架せしめられたガイドレールと、前記測定子面受け部と同一軸線上かつ昇降自在に設けられ、前記シリンダゲージの換えロッドを軸心上に受けるための換えロッド受け部を有しかつ前記ガイドレールに摺動可能に設置された換えロッド軸心上受け部材と、前記測定子面受け部と相対向して同一軸線上に設けられ、先端に前記換えロッドの換えロッド先端部を受けるための換えロッド面受け部を有するスピンドル部と、前記スピンドル部が設けられたマイクロメータヘッドと、を含み、前記マイクロメータヘッドを調節することで、前記換えロッド面受け部と前記測定子面受け部との間隔が広狭自在とされてなることを特徴とする。
【0020】
ここで、軸心とは、測定子面受け部と換えロッド面受け部の中心を結んだ中心軸の軸心を意味する。
【0021】
前記支持部材としては、高さ調整可能に構成するのが好ましい。前記支持部材を高さ調整可能にする構成としては種々考えられ、特別の限定はない。
【0022】
また、前記換えロッド受け部が、凹部とされてなり、前記シリンダゲージの換えロッドを前記凹部に載置せしめることで、前記換えロッドが軸心から外れて妄動することを防止するように構成されるのが好適である。なお、本願明細書において、前記換えロッドが軸心から外れて妄動することとは、前記換えロッドが測定子面受け部と換えロッド面受け部の中心を結んだ中心軸の軸心から外れてふらふらしてしまうことを意味する。
【0023】
さらに、前記換えロッド受け部が、弾性体によって支持されることで、昇降自在とされてなるようにするのが好ましい。
【0024】
さらにまた、前記測定子面受け部に、前記シリンダゲージの案内板を受けるための案内板受け部を着脱自在に取り付け、前記案内板受け部の長手方向中心部に前記測定子面受け部が位置するようにし、かつ前記案内板受け部と前記測定子面受け部との距離が調整可能にされてなるように構成するのが好適である。前記案内板受け部の形状としては、シリンダゲージの案内板を受けられる形状であればよいものであるが、例えば、前記シリンダゲージの案内板を受ける面を円弧状、直線状又はハの字状に形成するようにすればよい。
【0025】
前記ガイドレールに摺動可能に設置され、前記シリンダゲージの測定部を支持するための支持部材をさらに設けるように構成するのが好適である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、熟練が全く要らず、まるで外径測定を行う感覚でシリンダゲージのゼロ合わせをすることができ、かつ製造コストも安価で保守も簡単なシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置を提供することができるという著大な効果を奏する。
【0027】
また、本発明のシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置を用いることで、シリンダゲージのゼロ合わせを素早く行うことができる。さらに、本発明のシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置は、様々なサイズに対応できるので、複数のシリンダゲージを必要とするような製品の加工にあたっても、簡単にゼロ合わせをすることが可能となる。
【0028】
さらに、本発明のシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置に用いるマイクロメータヘッドは、市販のものを使用すればよいので、精度が落ちてきた場合の交換が簡単である。
【0029】
さらにまた、マイクロメータヘッドの精度の誤差などの癖を記録管理することにより、±0.002mmの精度でのゼロ合わせも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置の一つの実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図1のシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置の分解斜視図である。
【図3】図1のシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置の使用状態を示す斜視図である。
【図4】本発明のシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置の別の実施の形態を示す斜視図である。
【図5】複雑な形状の製品の一例を示す断面図である。
【図6】標準的なシリンダゲージの測定部の構造を示す斜視図である。
【図7】本発明のシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置の一つの実施の形態の使い方を示す説明図である。
【図8】本発明のシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置の他の実施の形態を示す斜視図である。
【図9】本発明のシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置に用いられる案内板受け部の例をしめす平面図であって、(a)は案内板を受ける面をハの字状に形成した例、(b)案内板を受ける面を直線状に形成した例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これらは例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0032】
図1〜図3において、符号10Aは本発明に係るシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置の一つの実施の形態を示す。シリンダゲージ用ゼロ合わせ装置10Aは、指示器114を有するシリンダゲージ100(図3)のゼロ合わせに用いられるシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置である。
【0033】
図1〜図3において、シリンダゲージ用ゼロ合わせ装置10Aは、測定スペース48が設けられたベース体12と、前記測定スペース48に設けられ円弧面50を有する円弧状案内板受け部32と、前記円弧面50の長手方向中心部Pに設けられた測定子面受け部44と、前記測定スペース48の一端部56(図示例では長手方向一端部)から他端部58(図示例では長手方向他端部)に掛架せしめられたガイドレール16a,16bと、前記ガイドレール16a,16bに摺動可能に設置され、前記シリンダゲージ100の測定部104を支持するための支持部材30と、前記測定子面受け部44と同一軸線上かつ昇降自在に設けられ、前記シリンダゲージ100の換えロッド106を軸心上に受けるための換えロッド受け部28を有しかつ前記ガイドレール16a,16bに摺動可能に設置された換えロッド軸心上受け部材26と、前記測定子面受け部44と相対向して同一軸線上に設けられ、先端に前記換えロッド106の換えロッド先端部112を受けるための換えロッド面受け部46を有するスピンドル部38と、前記スピンドル部38が設けられたマイクロメータヘッド40と、を含む構成とされている。符号60は、マイクロメータヘッド40のマイクロメータヘッドシンブル部であり、前記マイクロメータヘッド40のマイクロメータヘッドシンブル部60を調節することで、前記換えロッド面受け部46と前記測定子面受け部44との間隔が広狭自在となるように構成されている。マイクロメータヘッド40は、マイクロメータヘッドシンブル部60を例えば1mm回すと、スピンドル部38が1mm前後進せしめられる構成とされている。このマイクロメータヘッド40については、市販されているものを使用すればよい。
【0034】
図示例では、ベース体12としては、鋳鉄を成型した鋳物を使用した例を示したが、ベース体12の材質などに特別の限定がないことは勿論である。
【0035】
図1〜3の例では、前記測定子面受け部に、前記シリンダゲージの案内板を受けるための案内板受け部を着脱自在に取り付け、前記案内板受け部の長手方向中心部に前記測定子面受け部が位置するようにし、かつ前記案内板受け部と前記測定子面受け部との距離が調整可能にされてなるようにした例を示したが、本発明では、前記測定スペースの一端部から前記測定スペースの他端部に向かって測定子面受け部が設けられていればよいものであるから、案内板受け部を設けない構成とすることができることはいうまでもない。また、図1〜3では、案内板受け部を円弧状とした例を示した。
【0036】
図示例では、支持部材30を設けた例を示したが、本発明の作用効果が達成される限り、支持部材30を設けない構成としてもよいことは勿論である。
【0037】
また、図示例では、前記換えロッド面受け部46と前記測定子面受け部44は超硬合金で作製し、鏡面研磨を施してある。但し、前記換えロッド面受け部46と前記測定子面受け部44の材質などに特別の限定がないことは勿論である。
【0038】
ベース体12には、ガイドレール16a,16bが前記測定スペース48の一端部56から他端部58に掛架せしめられるように、ガイドレール挿通孔18が設けられており、ガイドレール16a,16bは、前記ガイドレール挿通孔18に挿通せしめられる(図2参照)。ガイドレール16a,16bはベース体12に螺子で固定される。
【0039】
円弧状案内板受け部32の円弧面50については様々な円弧を有するものを使用する。例えば、25R(半径25mm)、37.5R(半径37.5mm)、50R(半径50mm)、75R(半径75mm)、100R(半径100mm)、200R(半径200mm)といったように、様々な種類の円弧面50を有する円弧状案内板受け部32を準備しておいてサイズに応じて使い分けるようにすれば、測定子110を円弧面50の長手方向中心部Pにある測定子面受け部44にちょうど位置するように簡単にできる。
【0040】
支持部材30は、図2によく示されるように、断面コ字状とされており、ガイドレール16a,16bに摺動可能に掛架されている。
【0041】
図示例では、先端が測定子面受け部44とされた測定子受けシャフト36がベース体12に設けられた測定子受け挿通孔14bを挿通せしめられ、円弧面50の長手方向中心部Pに設けられた挿通孔34を挿通せしめられて、前記円弧面50の長手方向中心部Pに測定子面受け部44が設けられるように構成されている。測定子受けシャフト36はベース体12に螺子で固定される。
【0042】
図示例では、測定子面受け部44を有する測定子受けシャフト36としては単なるシャフト部材を用いた例を示したが、本発明では、測定子110を受けるための測定子面受け部44を有していればよいものであるから、図示したような測定子受けシャフト36の代わりに、例えば、スピンドル部の先端に測定子面受け部44を設けたマイクロメータヘッドを取りつける構成としてもよい。すなわち、図示したマイクロメータヘッド40に加えて、さらにもう一つのマイクロメータヘッドを用意し、そのもう一つのマイクロメータヘッドのスピンドル部先端に測定子面受け部44を設け、そのスピンドル部をベース体12に設けられた測定子受け挿通孔14bに挿通せしめ、円弧面50の長手方向中心部Pに設けられた挿通孔34を挿通せしめて、前記円弧面50の長手方向中心部Pに測定子面受け部44が設けられるように構成するようにしてもよい。
【0043】
また、前記換えロッド受け部28は、M字形の窪みを有する凹部29とされており、前記シリンダゲージ100の換えロッド106を前記凹部29に載置せしめることで、前記換えロッド106が軸心から外れて妄動することを防止するように構成されている。
【0044】
さらに、換えロッド受け部28は、弾性体20(図示例ではコイルばね)によって支持されることで、昇降自在とされている。
【0045】
より具体的には、換えロッド軸心上受け部材26には弾性体挿入部22が設けられており、弾性体20が装着された換えロッド受け部28の弾性体20を弾性体挿入部22を挿入することで、換えロッド受け部28が弾性支持される構成とされている。換えロッド軸
心上受け部材26には、軸心上受け部材挿通孔24a,24bが設けられており、ガイドレール16a,16bが挿通され、このようにして、ガイドレール16a,16bに摺動可能とされている。
【0046】
前記マイクロメータヘッド40のスピンドル部38の基端部には、回り止め具42が設けられている。回り止め具42は、回り止めブラケットと回り止めナットとから構成されている(詳細な図示は省略する)。回り止め具42を設けると、スピンドル部38が不必要に回転してしまうのを防げるので、設けた方が好ましい。しかしながら、その構成に特別の限定はなく、同様の作用効果を有するものであれば適用可能である。換えロッド面受け部46を先端に設けたスピンドル部38が、換えロッド受け挿通孔14aに挿通され、マイクロメータヘッド40はベース体12に螺子で固定される。
【0047】
移動量50mmのマイクロメータヘッドを使用する場合、仕事内容にもよるが一般的には内径200mmくらいまでなら、測定子受けシャフトを4本使用することにより、すべての半端寸法にも対応可能となる。
【0048】
次に、このように構成されたシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置10Aの作用を図3に基づいて説明する。
【0049】
まず、シリンダゲージ用ゼロ合わせ装置10Aの測定スペース48に、シリンダゲージ100の測定部104が挿入できるように、マイクロメータヘッド40を調節して、前記換えロッド面受け部46と前記測定子面受け部44との間隔を調節する。
【0050】
支持部材30を摺動せしめて位置を調節し、シリンダゲージ用ゼロ合わせ装置10Aの測定スペースに、シリンダゲージ100の測定部104を挿入し、案内板108a,108bを円弧状案内板受け部32の円弧面50に当接せしめ、測定子110が測定子面受け部44の面に垂直に当接せしめられるようにする。このように案内板108a,108bを円弧状案内板受け部32の円弧面50に当接せしめることで、円弧面50によって、測定子110が円弧面50の長手方向中心部Pにある測定子面受け部44にちょうど位置するようになるのである。
【0051】
換えロッド軸心上受け部材26を摺動せしめて位置を調節し、換えロッド106を換えロッド受け部28に載置して測定子面受け部と換えロッド面受け部の中心を結んだ中心軸の軸心上にくるように高さ調整を行う。このとき、換えロッド軸心上受け部材26は、測定スペース48の長手方向他端部58に可能な限り近づけるようにするのが好ましい。換えロッド106が途中で曲がっている場合でもゼロ合わせ可能となるためである。そして、換えロッド106が、換えロッド受け部28に載置されて軸心から外れて妄動しないようにする。
【0052】
測定部104の換えロッド106のサイズに合わせてマイクロメータヘッド40を調節し、前記換えロッド106の換えロッド先端部112を、換えロッド面受け部46の面に垂直に当接せしめゼロ合わせを行う。
【0053】
このようにすれば、400mmや500mmの内径を測定するシリンダゲージのゼロ合わせも可能となる。
【0054】
図7に基づいてシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置10Aを精度良く使用する方法を説明する。
【0055】
マイクロメータヘッド40をベース体12に取り付けて固定し、目盛りを0に合わせて
クランプする。
100mmのブロックゲージ又は100mmの基準棒(100mmから125mm用の市販されているマイクロメータの付属品として付いているもので良い)を換えロッド面受け部46と測定子面受け部44との間に挟み、二面ともに平行に挟まれていることを確認して手で測定子受けシャフト36をマイクロメータヘッド40側に押しながらベース体12に固定する。
【0056】
確認のためにもう一度、市販の標準外測マイクロメータと同じ感覚で測定し、0になっていることを確認する。シリンダゲージ100を測定子面受け部44と換えロッド面受け部46との間に挿入してシリンダゲージ100の指示器114の目盛りを0に合わせる。内径100mmのマスターリングゲージで確認する。クランプしたときとクランプしないときでは、ミクロン単位ではあるが差が出るので調整する。
【0057】
このとき、測定子受けシャフト36の長さが150.00mmのものを使用していたとする。納得できる寸法合わせができたら、図7の基準面Aから測定子受けシャフト36の出っ張りLをミクロン単位で測定して記録する。出っ張りLは+0.100mmであった。
【0058】
径155mmなどのマスターリングゲージがないものを合わせようとする場合、100mmの測定子受けシャフト36を使用して上記の合わせ作業の代わりに基準面Aからの出っ張りLを+0.10mmに合わせればブロックゲージもいらないしマスターリングゲージもなくてよい。
【0059】
もちろん長さ150mmの測定子受けシャフト36と長さ100mmの測定子受けシャフトともに、−5μmの誤差があったとするならば、0.01mmの誤差が出てしまうので、調整しなければならないのは言うまでもない。径155mmなのでマイクロメータヘッド40の目盛りを5に合わせれば径155mmの寸法が測定出来る。
【0060】
また、マイクロメータヘッドのバックラッシュによる誤差があるので、ブロックゲージだけに頼らずに、測定子受けシャフト及びスピンドル部が測定スペースの内側端面の一端部及び他端部から突出して出っ張った部分の寸法をμm単位まで正確に記録して寸法管理しておけば、よりさらに十分信頼のおけるゼロ合わせ装置となる。
【0061】
マイクロメータヘッド側は一度セットしたら固定しておき、測定子受けシャフトを取り替えることでマスターリングゲージがなくとも、十分信頼のおけるゼロ合わせ装置となる。
【0062】
図4に、本発明のシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置の別の実施の形態を示す。
【0063】
符号10Bは本発明に係るシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置の別の実施の形態を示す。シリンダゲージ用ゼロ合わせ装置10Bは、測定スペース78が設けられたベース体62と、ガイドレール66a,66bと、が夫々シリンダゲージ用ゼロ合わせ装置10Aのものよりも長尺とされている以外は、上述したシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置10Aと同様の構成である。したがって、再度の詳細な説明は省略する。測定子面受け部74を有する測定子受けシャフト76についても、上記した測定子面受け部44を有する測定子受けシャフト36と同様の部材が使用できる。測定子受けシャフトの長さは、例えば、測定対象に応じて、50mm、100mm、150mm、200mmなどのものを使用すればよい。
【0064】
また、前記測定スペースの一端部から前記測定スペースの他端部に向かって測定子面受け部が設けられていればよいものであるから、前記測定子受けシャフトを例えば、ベース体に取り付ける基端側測定子受けシャフトと測定子面受け部をその先端に有する先端側測定子受けシャフトとに分離連結可能に構成し、測定対象に応じて先端側測定子受けシャフトのみを取り替えるように構成してもよい。前記測定子受けシャフトを分離連結可能に構成するには、例えば、前記基端側測定子受けシャフトはベース体に取り付けて固定し、50mm、100mm、150mm、などの種々のサイズの先端側測定子受けシャフトを準備しておき、前記種々のサイズの先端側測定子受けシャフトを測定対象に応じて前記基端側測定子受けシャフトに螺着せしめる構成とすればよい。
【0065】
シリンダゲージ用ゼロ合わせ装置10Bは、測定スペース78が設けられたベース体62と、ガイドレール66a,66bと、がシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置10Aのものよりも長尺とされているため、例えば1000mmなどの内径を測定するためのさらに長尺な換えロッド106を用いたシリンダゲージ100のゼロ合わせも可能である。すなわち、ベース体とガイドレールのサイズを変えるだけで、様々なサイズの内径を測定するためのシリンダゲージのゼロ合わせが可能となる。
【0066】
例えば、50mmの測定子受けシャフトを使えば、1000mm〜950mmの内径のシリンダゲージのゼロ合わせができるし、100mmの測定子受けシャフトを使えば、950mm〜900mmの内径のシリンダゲージのゼロ合わせができるし、150mmの測定子受けシャフトを使えば、900mm〜850mmの内径のシリンダゲージのゼロ合わせができる。
【0067】
また、図8に、本発明のシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置の他の実施の形態を示す。
【0068】
符号10Cは本発明に係るシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置の別の実施の形態を示す。シリンダゲージ用ゼロ合わせ装置10Cは、測定スペース48が設けられたベース体12と、前記測定スペース48に設けられハの字状面80を有するハの字状案内板受け部82と、前記ハの字状案内板受け部82に設けられた案内板受け部凹部84の長手方向中心部Pに設けられた測定子面受け部44と、前記測定スペース48の一端部56(図示例では長手方向一端部)から他端部58(図示例では長手方向他端部)に掛架せしめられたガイドレール16a,16bと、前記ガイドレール16a,16bに摺動可能に設置され、前記シリンダゲージ100の測定部104を支持するための支持部材86と、前記測定子面受け部44と同一軸線上かつ昇降自在に設けられ、前記シリンダゲージ100の換えロッド106を軸心上に受けるための換えロッド受け部88を有しかつ前記ガイドレール16a,16bに摺動可能に設置された換えロッド軸心上受け部材90と、前記測定子面受け部44と相対向して同一軸線上に設けられ、先端に前記換えロッド106の換えロッド先端部112を受けるための換えロッド面受け部46を有するスピンドル部38と、前記スピンドル部38が設けられたマイクロメータヘッド40と、を含む構成とされている。測定子受けシャフト36はベース体12に螺子Sで固定されてなる。
【0069】
図示例では、支持部材86を設けた例を示したが、本発明の作用効果が達成される限り、支持部材86を設けない構成としてもよいことは勿論である。
【0070】
前記換えロッド軸心上受け部材90の換えロッド受け部88は、M字形の窪みを有する凹部89とされており、前記シリンダゲージ100の換えロッド106を前記凹部89に載置せしめることで、前記換えロッド106が軸心から外れて妄動することを防止するように構成されている。また、換えロッド受け部88は、コイルばね(図示せず)によって支持されることで、上下に昇降自在とされており、適当な高さで止めネジ98で固定可能とされている。前記換えロッド軸心上受け部材90は、前記ガイドレール16a,16bに摺動可能に設置されており、適宜位置で止めネジ95で固定可能とされている。
【0071】
また、前記支持部材86には、M字形の窪みを有する凹部91とされた受け部93が設けられており、前記シリンダゲージ100の換えロッド106を前記凹部91に載置せしめることで、前記換えロッド106が軸心から外れて妄動することを防止するように構成されている。図示例では、前記シリンダゲージ100の換えロッド106の基端部側を前記凹部91に載置せしめることで、前記シリンダゲージの測定部が支持される構成とされている。前記支持部材86は、前記ガイドレール16a,16bに摺動可能に設置されており、適宜位置で止めネジ97で固定可能とされている。
【0072】
また、M字形の窪みを有する凹部91は、図8の例では、前記支持部材86に弾性体(図示例ではコイルばね)で上下に昇降自在とされており、適当な高さで止めネジ99で固
定される。このように、凹部91は、自由な高さで固定できるようにされている。このように、凹部91が所望の高さで固定できるように高さ調整可能としておけば種々のシリンダゲージに対応可能となる。前記凹部91は、止めネジ99で固定されているので、着脱が容易となっている。さらに、前記凹部91は、図2に示すような換えロッド受け部28と同様にしてもよい。
【0073】
シリンダゲージの機種によっては、それに適合する測定子面受け部、案内板受け部及び案内板受け部凹部の位置関係が、異なる場合があるが、前記凹部91を、前記したように上下に昇降自在とする構成とすることで、シリンダゲージの測定子が測定子面受け部の横方向の中心に安定してくるようにできるし、又多数のメーカーのシリンダゲージの機種に対応できるようになる。なお、図8の例では、前記支持部材86として、前記換えロッド軸心上受け部材90と同様の部材を使用した例を示した。すなわち、支持部材86と前記換えロッド軸心上受け部材90とは、相互に入れ替えることが可能とされている。
【0074】
シリンダゲージ用ゼロ合わせ装置10Cのその他の構成については、上述したシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置10Aと同様の構成であるので、再度の詳細な説明は省略する。
【0075】
なお、シリンダゲージ用ゼロ合わせ装置10Cでは、図9(a)によく示されるように、中央に案内板受け部凹部84を設けたハの字状面80を有するハの字状案内板受け部82を使用した例を示した。なお、ハの字状面80は、シリンダゲージ100の案内板108a,108bを適切に受けることができればよいものであるから、その角度に特別の限定はない。図示例では、ハの字状面80の傾斜を10度とした例を示した。
【0076】
また、前記ハの字状案内板受け部82の代わりに、図9(b)によく示されるように、中央に案内板受け部凹部94を設けた直線状面96を有する直線状案内板受け部92を使用するようにしてもよい。図8の例では、測定子面受け部に、シリンダゲージの案内板を受けるための案内板受け部を着脱自在に取り付け、前記案内板受け部の長手方向中心部に前記測定子面受け部が位置するようにし、かつ前記案内板受け部と前記測定子面受け部との距離が調整可能にされてなるようにした例を示したが、本発明では、前記測定スペースの一端部に測定子面受け部が設けられていればよいものであるから、案内板受け部を設けない構成とすることができることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
このようにして、本発明のシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置によれば、熟練が全く要らず、まるで外径測定を行う感覚でシリンダゲージのゼロ合わせをすることができ、かつ製造コストも安価で保守も簡単である。
【符号の説明】
【0078】
10A,10B,10C:シリンダゲージ用ゼロ合わせ装置、12:ベース体、14a:換えロッド受け挿通孔、14b:測定子受け挿通孔、16a,16b:ガイドレール、18:ガイドレール挿通孔、20:弾性体、22:弾性体挿入部、24a,24b:軸心上受け部材挿通孔、26,90:換えロッド軸心上受け部材、28,88:換えロッド受け部、29,89,91:凹部、30,86:支持部材、32:円弧状案内板受け部、34:挿通孔、36,76:測定子受けシャフト、38:スピンドル部、40:マイクロメータヘッド、42:回り止め具、44,74:測定子面受け部、46:換えロッド面受け部、48:測定スペース、50:円弧面、56:一端部、58:他端部、60:マイクロメータヘッドシンブル部、62:ベース体、66a,66b:ガイドレール、78:測定スペース、80:ハの字状面、82:ハの字状案内板受け部、84,94:案内板受け部凹部、92:直線状案内板受け部、93:受け部、95,97,98,99:止めネジ、96:直線状面、100:シリンダゲージ、102:外筒、104:測定部、106:換えロッド、108a,108b:案内板、110:測定子、112:換えロッド先端部、114:指示器、200:製品、A:基準面、D1,D2,D3:距離、L:出っ張り、P:長手方向中心部、S:螺子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダゲージのゼロ合わせに用いられるシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置であって、測定スペースが設けられたベース体と、前記測定スペースの一端部から前記測定スペースの他端部に向かって設けられた測定子面受け部と、前記測定スペースの一端部から他端部に掛架せしめられたガイドレールと、前記測定子面受け部と同一軸線上かつ昇降自在に設けられ、前記シリンダゲージの換えロッドを軸心上に受けるための換えロッド受け部を有しかつ前記ガイドレールに摺動可能に設置された換えロッド軸心上受け部材と、前記測定子面受け部と相対向して同一軸線上に設けられ、先端に前記換えロッドの換えロッド先端部を受けるための換えロッド面受け部を有するスピンドル部と、前記スピンドル部が設けられたマイクロメータヘッドと、を含み、前記マイクロメータヘッドを調節することで、前記換えロッド面受け部と前記測定子面受け部との間隔が広狭自在とされてなることを特徴とするシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置。
【請求項2】
前記換えロッド受け部が、凹部とされてなり、前記シリンダゲージの換えロッドを前記凹部に載置せしめることで、前記換えロッドが軸心から外れて妄動することを防止するようにしたことを特徴とする請求項1記載のシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置。
【請求項3】
前記換えロッド受け部が、弾性体によって支持されることで、昇降自在とされてなることを特徴とする請求項1又は2記載のシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置。
【請求項4】
前記測定子面受け部に、前記シリンダゲージの案内板を受けるための案内板受け部を着脱自在に取り付け、前記案内板受け部の長手方向中心部に前記測定子面受け部が位置するようにし、かつ前記案内板受け部と前記測定子面受け部との距離が調整可能にされてなることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載のシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置。
【請求項5】
前記ガイドレールに摺動可能に設置され、前記シリンダゲージの測定部を支持するための支持部材をさらに設けるようにしたことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載のシリンダゲージ用ゼロ合わせ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−281807(P2010−281807A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237114(P2009−237114)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(301059400)有限会社小林製作所 (2)
【Fターム(参考)】