シリンダボアの熱変形測定装置
【課題】温間での測定においてシリンダボアの壁面の温度分布の変化を低減するとともに、エンジン実働時に近い温度分布を実現させてシリンダボアの正確な熱変形を測定できるシリンダボアの熱変形測定装置を提供する。
【解決手段】シリンダボア2に挿入されるピストン状の本体20と、本体20に設けられ、ボア壁面3のシリンダボア2の径方向の位置を読み取るギャップセンサ30と、本体20をシリンダボア2の高さ方向に所定の範囲で上下動させる駆動機構と、ギャップセンサ30をボア壁面3に沿う円周方向に回転させるとともに円周方向における所定の位置で位置決めするロータ27と、ギャップセンサ30の高さ方向における位置を読み取る回転センサ等と、ギャップセンサ30の円周方向における位置を読み取るロータリエンコーダ等と、を備えた。
【解決手段】シリンダボア2に挿入されるピストン状の本体20と、本体20に設けられ、ボア壁面3のシリンダボア2の径方向の位置を読み取るギャップセンサ30と、本体20をシリンダボア2の高さ方向に所定の範囲で上下動させる駆動機構と、ギャップセンサ30をボア壁面3に沿う円周方向に回転させるとともに円周方向における所定の位置で位置決めするロータ27と、ギャップセンサ30の高さ方向における位置を読み取る回転センサ等と、ギャップセンサ30の円周方向における位置を読み取るロータリエンコーダ等と、を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのシリンダブロックが有するシリンダボアの熱変形を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンを構成するシリンダブロックが有するシリンダボアの変形を測定するための装置として、例えば特許文献1に開示されているようなピストン型の測定機がある。具体的には、図8に示すように、ピストン型測定機110は、エンジンにおいてクランク軸に連結されるピストンと同様に、シリンダブロック101が有するシリンダボア102内に挿入され、シリンダボア102の壁面(以下「ボア壁面」という。)103の位置を測定する。
【0003】
ピストン型測定機110は、モータ等によりボア壁面103の周方向に沿って回転駆動されるロータ(回転体)と、ロータに固定されるセンサとを備える。センサは、ボア壁面103との間の間隔を検出することで、ボア壁面103の位置(シリンダボア102の径方向の位置)を検出する。つまり、ピストン型測定機110は、センサからの検出値に基づいて、ボア壁面103の位置を測定する。また、ピストン型測定機110は、例えば、連結部材125に連結されることで、クランク軸に連結されるピストンと同様の構成により、シリンダボア102内をピストンの摺動方向に移動可能に設けられる。
【0004】
このような構成において、ピストン型測定機110がシリンダボア102内の所定の高さ(ピストン型測定機110の移動方向における位置)に位置決めされ、ロータが回転させられることでボア壁面103の一周分の測定が行われる。そして、ロータの回転によって一周分の測定が行われた後、ピストン型測定機110の高さが逐次変更され、複数の断面位置についての測定が行われる。
【0005】
このようなピストン型測定機110によってシリンダボア102の熱変形が測定される場合、ピストン(ピストン型測定機110)とシリンダブロック101に取り付けられるシリンダヘッド104との間の空間として形成される燃焼室106内にスチーム105を通し、ボア壁面103をエンジンの実働時における温度に近い温度まで加熱することが行われる。すなわち、ピストン型測定機110により、冷間時(常温時)とスチーム105による温間時とで同様の測定が行われ、それらの差分から、シリンダボア102の熱変形を知ることができる。また、シリンダボア102の熱変形の測定が行われる際には、シリンダブロック101が有する複数のシリンダボア102の温度に極端な差がつかないように、位相が揃った特殊なクランク軸により、ピストン型測定機110が同一の高さとなるように一斉に上下移動させることが行われている。
【0006】
このように、ピストン型測定機110によるシリンダボア102の熱変形の測定においては、温間時での測定中に、ボア壁面103の温度分布の変化が防止されることが望まれる。しかし、従来の測定においては、ピストン型測定機110の固定位置(位置決めされる位置)により、ボア壁面103の温度分布が大きく変化する。
【0007】
図9は、ボア壁面103の温度分布の一例を示す。図9に示すグラフにおいて、横軸はボア壁面103におけるピストンの摺動方向についての位置を示し、縦軸はボア壁面103の温度を示す。ここで、横軸は、図8に示すボア壁面103における左右方向の位置に対応する。図9のグラフG1に示すように、ピストン型測定機110が所定の高さに位置決めされている状態においては、ボア壁面103の温度について、スチーム105との接触が有る部分(図8、範囲R1参照)の温度が、スチーム105との接触が無い部分(同図、範囲R2参照)の温度に対して相対的に高くなる。
【0008】
したがって、シリンダボア102内におけるピストン型測定機110の固定位置が変化することで、ボア壁面103におけるスチーム105との接触範囲が変化し、これにともない、ボア壁面103の温度分布が大きく変化する。ここで、図9に示すグラフにおいて、位置P0は、図8におけるスチーム105との接触が有る部分(範囲R1)とスチーム105との接触が無い部分(範囲R2)との境界の位置(ピストン型測定機110の燃焼室106側の端面の位置)に対応する。例えば、図8に示すように、ピストン型測定機110の位置が、ピストン型測定機110の移動(下降)によって二点鎖線で示すピストン型測定機110の位置に変化した場合、ボア壁面103の温度分布は、図9におけるグラフG1から、同図において二点鎖線で示すグラフG2で示される温度分布に変化する。
【0009】
また、ピストン型測定機110によるシリンダボア102の熱変形の測定においては、エンジンの実態に即した正確な熱変形を測定するため、エンジンの実働時により近い温度分布が実現されることが望まれる。ボア壁面103について狙い通りの温度分布を得るためには、ピストン型測定機110がエンジン実働時におけるピストンと同様に常時移動(往復移動)していることが望ましい。
【0010】
しかし、図10に示すように、シリンダボア102における特定の断面位置についての測定が行われるためには、ボア壁面103の一周分の測定が行われる時間中、ピストン型測定機110がその測定位置で停止している必要がある。このようにピストン型測定機110が測定位置にて停止している間に、ボア壁面103の温度分布が変化する。
【0011】
具体的には、図11において、グラフG3は、ピストン型測定機110が常時移動している場合のボア壁面103の温度分布を示す。グラフG3からわかるように、ピストン型測定機110が常時移動している場合においては、ボア壁面103の温度は、燃焼室106側が相対的に高く、滑らかに変化する。これに対し、ピストン型測定機110が所定の測定位置(ピストン型測定機110の端面の位置を示す位置P0参照)で停止することで、ボア壁面103の温度分布は、図11において二点鎖線で示すグラフG4のように変化する。つまり、移動しているピストン型測定機110が測定のために停止することで、その停止している間に、ボア壁面103の温度分布が、前述したようにピストン型測定機110が位置決めされている状態におけるスチーム105との接触の有無(境界の位置を示す位置P0参照)が部分的に別れる場合の温度分布に変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−127990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、温間での測定においてシリンダボアの壁面の温度分布の変化を低減することができるとともに、エンジン実働時に近い温度分布を実現させてシリンダボアの正確な熱変形を測定できるシリンダボアの熱変形測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1においては、エンジンのシリンダブロックに形成されるシリンダボアの熱変形を測定するシリンダボアの熱変形測定装置であって、
前記シリンダボアに挿入されるピストン状の本体と、
前記本体に設けられ、前記シリンダボアの壁面の、前記シリンダボアの径方向の位置を読み取るボア壁位置読取手段と、
前記本体を前記シリンダボアの高さ方向に所定の範囲で上下動させる駆動手段と、
前記ボア壁位置読取手段を前記シリンダボアの壁面に沿う円周方向に回転させるとともに前記円周方向における所定の位置で位置決めする回転位置決め手段と、
前記ボア壁位置読取手段の前記高さ方向における位置を読み取る高さ位置読取手段と、
前記ボア壁位置読取手段の前記円周方向における位置を読み取る円周位置読取手段と、
を備え、
前記駆動手段によって前記本体を上下動させて、上下動する前記本体の上昇中および下降中の少なくともいずれかにおいて、前記ボア壁位置読取手段により前記壁面の前記径方向の位置を前記高さ方向に沿って読み取る操作、
および前記高さ位置読取手段により読み取られる前記ボア壁位置読取手段の前記高さ方向における位置が、前記所定の範囲における上昇端および下降端の少なくともいずれかに対応する位置に達するたびに、前記回転位置決め手段により前記ボア壁面位置読取手段を前記円周方向に所定の角度回転させるとともに位置決めする操作を、
前記円周位置読取手段により読み取られる前記ボア壁位置読取手段の前記円周方向における位置に基づいて、前記ボア壁位置読取手段が初期位置から前記円周方向に一回転以上するまで行い、
前記ボア壁位置読取手段により読み取られた前記壁面の前記径方向の位置に基づいて、前記シリンダボアの熱変形を測定する、ものである。
【0015】
請求項2においては、前記回転位置決め手段は、前記本体が前記所定の範囲を一往復上下動するたびに、前記ボア壁位置読取手段を、所定の角度回転させるラチェット機構によって構成されるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
すなわち、本発明によれば、温間での測定においてシリンダボアの壁面の温度分布の変化を低減することができるとともに、エンジン実働時に近い温度分布を実現させてシリンダボアの正確な熱変形を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態における熱変形測定装置の構成を示す側面図。
【図2】ギャップセンサ等が読み取る座標値および角度の概要を示す説明図。
【図3】上昇動作および下降動作の両方で読取りが行われる場合のフロー図。
【図4】同じくギャップセンサの軌道を示す図。
【図5】上昇動作または下降動作のいずれかで読取りが行われる場合のフロー図。
【図6】同じくギャップセンサの軌道を示す図。
【図7】熱変形測定装置の別実施形態の構成を示す図。
【図8】従来のピストン型測定機の構成を示す側面図。
【図9】温間時の測定におけるシリンダボア内の温度変化を示す図。
【図10】センサの軌道を示す図。
【図11】温間時の測定におけるシリンダボア内の温度変化とエンジン実働時におけるシリンダボア内の温度変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係るシリンダボアの熱変形測定装置の実施の一形態である熱変形測定装置10について、図面を参照して説明する。
【0019】
熱変形測定装置10は、エンジンを構成するシリンダブロック1が有するシリンダボア2の熱変形(以下「ボア変形」という。)を測定するものである。熱変形測定装置10は、エンジンにおいてクランク軸に連結されるピストンと同様に、シリンダボア2内に挿入され、シリンダボア2の壁面(以下「ボア壁面」という。)3の位置を測定する。
【0020】
図1に示すように、熱変形測定装置10は、本体20を備える。本体20は、全体として略円筒状の外形を有し、ピストン状に構成される。本体20は、シリンダボア2に挿入され、シリンダボア2内をシリンダボア2の高さ方向(図1における矢印A方向)において上下動するものである。なお、図1において矢印Aで示される上下方向が、本実施形態に係る熱変形測定装置10における上下方向に対応する。本体20は、摺動部材21とロータ22と天板23とシャフト24とによって構成される。
【0021】
摺動部材21は、下面側が開口した円筒状の部材である。ロータ22は、円板状の部材であり、摺動部材21の上側において摺動部材21に対して回動可能に支持される。ロータ22は、シャフト24によって摺動部材21の筒軸方向(中心軸方向)が回転軸の方向となるように支持される。シャフト24は、摺動部材21の上側に支持され、ロータ22の中心位置に形成される支持孔22aによりロータ22を貫通する。天板23は、ロータ22と同様に円板状の部材であり、ロータ22の上側に設けられる。天板23の外周には、後述するスチームが燃焼室6外へ漏れることを防止するためのシール部材としてのOリング23aが装着される。また、天板23は、前記のとおりロータ22を貫通するシャフト24により支持される。
【0022】
本体20を構成する摺動部材21、ロータ22、および天板23は、略同じ外径寸法を有し、同心配置された状態で設けられる。このように、本体20は、摺動部材21とロータ22と天板23とがシャフト24によって一体的に形成されて、ピストン形状を成す。
【0023】
このように構成される本体20は、所定の駆動機構によってシリンダボア2の高さ方向(上下方向、以下「ボア高さ方向」という。)に所定の範囲で往復動(上下動)させられる。本体20は、連結部材25に連結されることで、エンジンにおいてクランク軸に連結されるピストンと同様の構成により、シリンダボア2内をピストンの摺動方向(上下方向)に移動可能に設けられる。
【0024】
すなわち、連結部材25は、その一端側が本体20を構成する摺動部材21の下側開口部を介して、摺動部材21の内部にて水平方向(図1において紙面に垂直方向)を回動軸方向として支持される。また、連結部材25の他端側は、シリンダブロック1において回転可能に支持されるクランク軸(図示略)に連結される。クランク軸は、モータ等の所定の駆動源によって回転させられる。つまり、所定の駆動源によるクランク軸の回転運動が、連結部材25を介して本体20の上下方向の往復直線運動に変換される。
【0025】
このように、本実施形態においては、連結部材25とクランク軸とクランク軸を回転させるための所定の駆動源とを含む構成が、本体20をボア高さ方向に所定の範囲で上下動させる駆動手段として機能する。
【0026】
また、熱変形測定装置10は、ギャップセンサ30を備える。ギャップセンサ30は、ボア壁面3のシリンダボア2の径方向の位置(以下「ボア壁面位置」という。)を読み取るためのものである。ギャップセンサ30としては、公知のギャップセンサが用いられ、非接触式センサや接触式センサ等、その種類は特に限定されない。
【0027】
ギャップセンサ30は、ボア壁面3との間隔(図1に示す符号C参照)を検出することで、ボア壁面位置を読み取る。つまり、ギャップセンサ30から出力される検出信号は、ボア壁面3の変形量に対応したものとなり、この検出信号に基づき、ボア壁面位置が求められる。ギャップセンサ30は、図示せぬ配線等を介して、ギャップセンサ30から出力される検出信号に基づいてボア壁面位置を計測してボア変形を測定する測定機(図示略、以下「ボア変形測定機」という。)に接続される。
【0028】
ギャップセンサ30は、本体20に設けられる。具体的には、ギャップセンサ30は、その検出部側がボア壁面3に対向する姿勢で、本体20を構成するロータ22に支持された状態で設けられる。ギャップセンサ30は、ロータ22において外周面側に開口する取付穴22bに嵌め込まれた状態で、ロータ22に支持される。
【0029】
このように、本実施形態におけるギャップセンサ30は、本体20に設けられ、ボア壁面位置を読み取るボア壁位置読取手段として機能する。なお、ギャップセンサ30によって読み取られたボア壁面位置についてのデータは、ボア変形測定機に備えられRAMやHDD等によって構成される記憶部に記憶される。
【0030】
ギャップセンサ30は、ロータ22の動作により、ボア壁面3に沿う円周方向(以下「ボア円周方向」という。)に回転させられるとともにボア円周方向における所定の位置で位置決めされる。前記のとおり摺動部材21に対して回動可能に支持されるロータ22は、モータ26を駆動源として回転駆動する(図1における矢印B参照)。
【0031】
図1に示すように、モータ26は、摺動部材21の内部において、駆動軸26aが上下方向に沿う姿勢で、摺動部材21の外周側の位置に設けられる。モータ26の回転は、モータ26の駆動軸26aに取り付けられる駆動ギア26bと、ロータ22に設けられるギア部22cとを介してロータ22に伝達される。
【0032】
すなわち、モータ26の駆動軸26aは、摺動部材21の上面部を貫通して摺動部材21の上側に突出する。この駆動軸26aの摺動部材21からの突出部分に、駆動ギア26bが取り付けられる。一方、摺動部材21の上側に支持された状態のロータ22の下面側に、駆動ギア26bと噛み合うギア部22cが設けられる。ギア部22cは、ロータ22の下面部においてロータ22の周縁に沿うように形成される円環状の突部であり、その内周部に歯部が形成されている。つまり、駆動ギア26bは、ロータ22のギア部22cに対して内周側から噛み合う。
【0033】
このような構成により、モータ26の駆動軸26aの回転にともない、ギア部22cによって駆動ギア26bに噛み合うロータ22が、シャフト24を中心に回転する。こうしたロータ22の回転にともない、ロータ22に支持されるギャップセンサ30がボア円周方向に回動させられる。そして、モータ26の駆動が停止させられることによってロータ22の回転が停止することで、ギャップセンサ30がボア円周方向において位置決めされる。
【0034】
このように、本実施形態では、ギャップセンサ30を支持するロータ22と、ロータ22を回転駆動させるモータ26とを含む構成が、ギャップセンサ30をボア円周方向に回転させるとともにボア円周方向における所定の位置で位置決めする回転位置決め手段として機能する。
【0035】
また、本実施形態の熱変形測定装置10においては、本体20に設けられるギャップセンサ30の位置について、ボア高さ方向における位置(以下「高さ位置」という。)と、ボア円周方向における位置(以下「円周位置」という。)とが、所定の構成によって読み取られる。
【0036】
具体的には、ギャップセンサ30の高さ位置は、例えば、前述したように本体20をボア高さ方向に上下動させるための構成であるクランク軸の回転角度に基づいて読み取られる。つまり、クランク軸の回転にともなって上下動する本体20に支持されるギャップセンサ30の高さ位置が、クランク軸の回転量に基づいて読み取られる。
【0037】
クランク軸の回転角度は、クランク軸の回転、あるいはクランク軸を回転させるための駆動源(モータ等)の回転を検出する回転センサ等によって検出される。つまり、クランク軸についての所定の基準位置からの回転角度により、ギャップセンサ30の高さ位置が読み取られる。この場合、回転センサ等のクランク軸の回転角度を検出するための構成が、ギャップセンサ30の高さ位置を読み取る高さ位置読取手段として機能する。
【0038】
また、ギャップセンサ30の円周位置は、例えば、前述したようにロータ22を回転させるための構成であるモータ26(の駆動軸26a)の回転量に基づいて読み取られる。つまり、モータ26の駆動軸26aの回転にともなって回転するロータ22に支持されるギャップセンサ30の円周位置が、モータ26の回転量に基づいて読み取られる。
【0039】
モータ26の回転量は、ロータリエンコーダ等によって検出される。つまり、モータ26の駆動軸26aについての所定の基準位置からの回転量により、ギャップセンサ30の円周位置が読み取られる。この場合、ロータリエンコーダ等のモータ26の回転量を検出するための構成が、ギャップセンサ30の円周位置を読み取る円周位置読取手段として機能する。
【0040】
なお、熱変形測定装置10において読み取られたギャップセンサ30の高さ位置および円周位置についてのデータは、ボア壁面位置と同様に、ボア変形測定機に備えられる記憶部に記憶される。
【0041】
また、熱変形測定装置10に備えられるボア変形測定機においては、CPU等によって構成される演算部において、記憶部に記憶されたデータに基づいて、シリンダボア2における任意の断面(高さ位置が一定)のデータを取り出す機能を有する部分や、取り出された断面のデータを描画したり、かかる断面における真円度を算出する部分が備えられる。そして、ボア変形測定機は、ディスプレイ等によって構成される表示部において、ボア変形を明示したりする機能を有する部分等が備えられる。
【0042】
以下では、熱変形測定装置10の動作態様について説明する。
熱変形測定装置10は、燃焼室6内にスチームが通されることでエンジン実働時における温度に近い温度までボア壁面3が加熱された温間時と、冷間時(常温時)とでそれぞれ測定を行う。そして、熱変形測定装置10は、それらの測定結果の差分から、ボア変形を測定する。
【0043】
熱変形測定装置10によるボア変形の測定においては、本体20の動作によって、ギャップセンサ30のボア高さ方向についての移動、およびボア円周方向についての移動ならびに位置決めが行われる。すなわち、ボア高さ方向については、所定の駆動機構による本体20のボア高さ方向の所定の範囲での往復動にともない、ギャップセンサ30が移動(上下動)する。また、ボア円周方向については、モータ26による本体20を構成するロータ22の回転および停止により、ギャップセンサ30が位置決めされながら移動する。
【0044】
したがって、ギャップセンサ30は、ボア高さ方向について本体20が上下動する所定の範囲で移動可能に設けられる。つまり、本体20がその移動範囲における上昇端に達した状態でのギャップセンサ30の位置が、ギャップセンサ30の上昇端であり、本体20がその移動範囲における下降端に達した状態でのギャップセンサ30の位置が、ギャップセンサ30の下降端である。
【0045】
以下の説明において、ギャップセンサ30の高さ位置についての上昇端とは、本体20が上下動する所定の範囲における上昇端に対応する位置であり、本体20が上昇端にある状態におけるギャップセンサ30の位置である。同様に、ギャップセンサ30の高さ位置についての下降端とは、本体20が上下動する所定の範囲における下降端に対応する位置であり、本体20が下降端にある状態におけるギャップセンサ30の位置である。
【0046】
また、ギャップセンサ30のボア円周方向の移動は、ギャップセンサ30が上昇端および下降端の少なくともいずれかに達した状態で行われる。つまり、ボア高さ方向に移動するギャップセンサ30は、上昇端または下降端に達した状態において一旦停止させられ、ボア円周方向に所定の長さ移動させられ(所定の角度回転させられ)、位置決めされる。
【0047】
そして、このようなギャップセンサ30のボア高さ方向の移動およびボア円周方向の移動の組合せが、少なくともギャップセンサ30がボア円周方向において一回転以上するまで行われる。つまり、熱変形測定装置10によるボア変形の測定におけるギャップセンサ30の動作としては、ボア高さ方向の往復動が、上昇端または下降端に達するたびに行われるボア円周方向の移動についての移動量である回転角度の合計が360°以上となるまで行われる。
【0048】
言い換えると、本実施形態においては、ギャップセンサ30は、ボア高さ方向についての下降端から上昇端への移動(上昇)、上昇端におけるボア円周方向への移動(回転)、ボア高さ方向についての上昇端から下降端への移動(下降)、および下降端におけるボア円周方向への移動(回転)を、初期位置からボア円周方向に一回転以上するまで順に繰り返す。
【0049】
ここで、本実施形態の熱変形測定装置10においては、駆動手段によって本体20を上下動させて、上下動する本体20の上昇中および下降中の少なくともいずれかにおいて、ギャップセンサ30によりボア壁面位置を高さ方向に沿って読み取る操作が行われる。
【0050】
このように、本実施形態の熱変形測定装置10においては、回転センサ等により読み取られるギャップセンサ30の高さ位置が、上昇端および下降端の少なくともいずれかに達するたびに、ロータ22およびモータ26を含む構成によりギャップセンサ30をボア円周方向に所定の角度回転させるとともに位置決めする操作が行われる。そして、ボア壁面位置を高さ方向に沿って読み取る操作、およびギャップセンサ30を所定の角度回転させるとともに位置決めする操作が、ロータリエンコーダ等により読み取られるギャップセンサ30の円周位置に基づいて、ギャップセンサ30が初期位置からボア円周方向に一回転以上するまで行われる。
【0051】
そして、このようなギャップセンサ30の動作において、ギャップセンサ30により読み取られたボア壁面位置に基づいて、ボア変形が測定される。
【0052】
すなわち、前述したように動作するギャップセンサ30が用いられ、ボア変形の測定のためのギャップセンサ30によるボア壁面位置の読取りが、ギャップセンサ30の上昇中および下降中の両方において、あるいはいずれか(上昇中または下降中)において行われる。以下、それぞれの場合における熱変形測定装置10の動作態様について説明する。
【0053】
なお、以下では、説明の便宜上、図2に示すように、ギャップセンサ30によって読み取られるボア壁面位置を、シリンダボア2の径方向についての座標値として表されるボア壁面位置Rとする(図2に示す符号R参照)。また、回転センサ等によって読み取られるギャップセンサ30の高さ位置を、ボア高さ方向についての座標値として表される高さ位置Zとする(図2に示す符号Z参照)。さらにまた、ロータリエンコーダ等によって読み取られるギャップセンサ30の円周位置を、ボア円周方向における角度として表される円周位置θとする(図2に示す符号θ参照)。
【0054】
また、熱変形測定装置10によるボア変形の測定においては、ボア壁面位置Rと高さ位置Zと円周位置θとは、それぞれボア変形測定機の記憶部に記憶される。ボア変形測定機は、前述したように、記憶部に記憶されたデータに基づいて、シリンダボア2の断面のデータを描画したり、かかる断面における真円度を算出するとともに表示する。これにより、ボア変形の結果を作業者等が確認できる。
【0055】
最初に、ボア変形の測定のためのギャップセンサ30によるボア壁面位置の読取りが、ギャップセンサ30の上昇中および下降中の両方において行われる場合について、図3に示すフロー図を用いて説明する。
【0056】
図3に示すように、この場合における熱変形測定装置10の動作態様においては、まず、本体20が、初期位置にセットされる(S100)。ここで、本体20の初期位置は、本体20の移動範囲における下降端である。このため、本体20が初期位置にセットされた状態においては、高さ位置Zは下降端である。また、本体20が初期位置にある状態での円周位置θについては、円周位置θ=0°とする。
【0057】
本体20は、ギャップセンサ30の高さ位置Zが上昇端に達するまで駆動機構により上昇させられる。すなわち、回転センサ等により高さ位置Zが読み取られ、かかる高さ位置Zが上昇端に達すると、本体20の上昇動作が停止される。このような本体20の上昇動作に際して、ギャップセンサ30は、ボア壁面位置Rを読み取る。また、ボア変形測定機の記憶部には、ボア壁面位置R、円周位置θ(0°)、および高さ位置Zが記憶される(S110、S120)。
【0058】
そして、ギャップセンサ30の高さ位置Zが上昇端に達して(S120)、本体20の上昇動作が停止された後、ギャップセンサ30は、ロータ27の回転により所定の角度(Δθ)回転させられて位置決めされる(S130)。
【0059】
このとき、ロータリエンコーダ等によりギャップセンサ30の円周位置θが読み取られ、かかる円周位置θが360°以上である場合、すなわち、初期位置を基準としてギャップセンサ30がシリンダボア2内を一回転以上している場合、本体20を初期位置に戻して測定を終了する(S140、S190)。
【0060】
一方、円周位置θが360°未満である場合、本体20は、ギャップセンサ30の高さ位置Zが下降端に達するまで駆動機構により下降させられる。すなわち、回転センサ等により高さ位置Zが読み取られ、かかる高さ位置Zが下降端に達すると、下降動作が停止される。このような本体20の下降動作に際して、ギャップセンサ30は、ボア壁面位置Rを読み取る。また、ボア変形測定機の記憶部には、ボア壁面位置R、円周位置θ(0°)、およびボア高さ位置Zが記憶される(S140〜S160)。
【0061】
ギャップセンサ30の高さ位置Zが下降端に達して(S160)、本体20の下降動作が停止された後、ギャップセンサ30は、ロータ27の回転によりΔθ回転させられて、位置決めされる(S170)。
【0062】
このとき、ロータリエンコーダ等によりギャップセンサ30の円周位置θが読み取られ、かかる円周位置θが360°未満である場合、すなわち、初期位置を基準としてギャップセンサ30がシリンダボア2内を一回転以上していない場合、ギャップセンサ30は、上昇させられながらボア壁面位置Rを読み取る。このとき、ボア変形測定機の記憶部には、ボア壁面位置R、円周位置θ(Δθ)、およびボア高さ位置Zが記憶される(S180、S110)。
【0063】
一方、円周位置θが360°以上である場合、本体20を初期位置に戻して測定を終了する(S180、S190)。
【0064】
以上のようなフローによるボア変形の測定においては、図4に示すように、上昇端および下降端に達するたびにボア円周方向にΔθずつ回転するギャップセンサ30により、上昇中および下降中にボア壁面位置の読取りが行われる。
【0065】
次に、ボア変形の測定のためのギャップセンサ30によるボア壁面位置の読取りが、ギャップセンサ30の上昇中および下降中のいずれかにおいて行われる場合について、図5に示すフロー図を用いて説明する。
なお、図5におけるS200からS220までは、前述したS100からS120までと同一であるため、その説明を省略する。
また、説明の便宜上、ギャップセンサ30によるボア壁面位置の読取りは、ギャップセンサ30の上昇中において行われるものとする。
【0066】
本体20は、上昇動作が停止された後、ギャップセンサ30の高さ位置Zが下降端に達するまで駆動機構により下降させられる。すなわち、回転センサ等によりギャップセンサ30の高さ位置Zが読み取られ、かかる高さ位置Zが下降端に達すると、本体20の下降動作が停止される(S230)。
【0067】
そして、ギャップセンサ30は、ロータ27の回転によりΔθ回転させられて、位置決めされる(S240)。
【0068】
このとき、ロータリエンコーダ等によりギャップセンサ30の円周位置θが読み取られ、かかる円周位置θが360°未満である場合、本体20は、高さ位置Zが上昇端に達するまで駆動機構により上昇させられる。このとき、ギャップセンサ30は、ボア壁面位置Rを読み取る。また、ボア変形測定機の記憶部には、ボア壁面位置R、円周位置θ(Δθ)、およびボア高さ位置Zが記憶される(S250、S210)。
【0069】
一方、円周位置θが360°以上である場合、本体20を初期位置に戻して測定を終了する(S250、S260)。
【0070】
以上のようなフローによるボア変形の測定においては、図6に示すように、下降端に達するたびにボア円周方向にΔθずつ回転するギャップセンサ30により、上昇中にボア壁面位置の読取りが行われる。
【0071】
なお、ボア変形の測定において、上昇動作と下降動作とは入れ替えても構わない。この場合、上昇端と下降端とを入れ替えることにより、上昇動作と下降動作とを入れ替えることができる。
【0072】
図4および図6に示すように、本体20は、ボア変形の測定に際して、常にシリンダボア2内を上下動している。このため、シリンダボア2の温度分布が大きく変化しない。つまり、図10に示すように、従来行われていたような、ボア高さ方向において所定の位置で留まる場合におけるボア壁面3の温度分布との比較において、ボア壁面3の温度分布の変化を低減させることができる。このように熱変形測定装置10は、ボア壁面3の温度分布の変化を低減することができるとともに、エンジン実働時に近い温度分布を実現させてシリンダボア2の正確な熱変形を測定できる。
【0073】
また、図6に示すように、上昇中および下降中のいずれかにおいて測定することにより、本体20の上昇時と下降時とで、本体20の姿勢が変化した場合、つまり、ギャップセンサ30の姿勢が変化した場合においても、その影響を受けることなく、正確にボア変形を測定できる。また、ボア壁面3の温度が本体20の上昇時と下降時とで差異が生じた場合において、その影響を受けることなく、正確にボア変形を測定できる。
【0074】
以下に、本発明に係るシリンダボアの熱変形測定装置の別実施形態である熱変形測定装置60について、図7を参照して説明する。
なお、既に説明したものについては、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0075】
図7(a)に示すように、熱変形測定装置60は、本体70を備える。本体70は、熱変形測定装置10の本体20と同様に、摺動部材71とロータ72と天板73とがシャフト74によって一体的に形成されて、ピストン形状を成す。天板73の外周には、前記Oリング23aと同様に構成されるOリング73aが装着される。また、本体70には、ギャップセンサ30が備えられる。ここで、図7(a)は、熱変形測定装置60の構成を示す側面図である。図7(b)は、ラチェット機構78の構成を示す平面図である。
【0076】
このように構成される本体70は、インデックス機構77によって回転させられる。インデックス機構77は、複数の突起部77aおよび複数の切欠部77bの動作により本体70を回転させる。
【0077】
図7(a)に示すように、複数の突起部77aは、それぞれ摺動部材71の上面に形成される。具体的には、複数の突起部77aが、それぞれボア円周方向に沿って形成され、所定の間隔を空けて配置される。また、複数の突起部77aは、それぞれボア円周方向に沿って配置される。
【0078】
複数の切欠部77bは、それぞれロータ72の下面を突起部77aの外形と略同一の形状に切り欠いて形成される。具体的には、複数の切欠部77bは、それぞれボア円周方向に沿って連続して配置される。
【0079】
また、突起部77aと切欠部77bとの間には、遊びが持たされる。具体的には、本体70の上昇動作時において、突起部77aと切欠部77bとは、係合される(以下「係合状態」という。)。逆に、本体70の下降動作時において、突起部77aと切欠部77bとは、係合状態が解除されて、突起部77aがロータ72の回転に干渉しない程度の隙間が生じる(以下「解除状態」という。)。
このように構成されるインデックス機構77は、本体70の往復上下動に際して、突起部77aと切欠部77bとは、係合状態および解除状態を繰り返す。解除状態から係合状態になる際に、突起部77aは、ボア円周方向において係合が解除された切欠部77bに隣接する切欠部77bに係合される。すなわち、本体70の往復上下動に際して、突起部77aは、ボア円周方向において隣接する切欠部77bに順次係合される。これにより、ロータ72は、ボア円周方向に回転させられる。
インデックス機構77によって回転させられるロータ72は、ラチェット機構78によって位置決めされる。
【0080】
ラチェット機構78は、係止部材78aとラック78bとにより、ロータ72をボア円周方向における所定の位置で位置決めするものである。ラチェット機構78は、例えば、ロータ72の上面に設けられる。
【0081】
図7(b)に示すように、係止部材78aは、シリンダボア2の径の中心部よりシリンダボア2の径方向に沿って配置される。係止部材78aは、径方向外側においてその辺の長さに差異が生じるような平面視略台形状に形成される。ラック78bは、係止部材78aと係止されることで、回転される方向の反対の方向(図7(b)における時計回りの方向)の回転を規制するとともに、ロータ72が回転される方向(図7(b)における反時計回りの方向)の回転を許容する。また、係止部材78aは、ボア円周方向において隣接するラック78bに順次係合されることにより、ロータ72を所定の間隔で位置決めできる。
このように、ラチェット機構78は、本体70が所定の範囲を一往復上下動するたびに、ギャップセンサ30を、所定の角度回転させる回転位置決め手段として構成される。
【0082】
このように、ロータ72は、本体70の一往復上下動ごとに所定の角度回転される。つまり、ロータ72が回転させられる位置から一往復上下動すると、ギャップセンサ30は、所定の角度回転される。つまり、ボア変形測定機によって高さ位置Zを監視することで、ギャップセンサ30の回転位置θを読み取ることができる。この場合、回転センサおよびボア変形測定機を含む構成は、ギャップセンサ30の円周位置θを読み取る円周位置読取手段として機能する。
【0083】
また、熱変形測定装置60は、巻き戻し機構79を備える。巻き戻し機構79は、ギャップセンサ30を初期位置にセットするものである。巻き戻し機構79は、例えば、つるまきバネによって構成され、シャフト74に嵌装される。また、つるまきバネの一端部がロータ72に係止されるとともに、他端部が天板73に係止される。巻き戻し機構79は、ロータ72が回転されることにより、その巻きピッチが小さくさせられる。つまり、ロータ72が回転させられると、巻き戻し機構79は、ロータ72の回転方向と反対の方向にロータ72を付勢する。このとき、係止部材78aをラック78bが係止するため、ロータ72は、巻き戻し機構79の付勢力によるロータ72の回転方向と反対の方向への回転が規制される。つまり、係止部材78aをラック78bから外すと、ロータ72は巻き戻し機構79によって回転方向と反対の方向へ付勢される。
これによれば、係止部材78aをラック78bから外すことにより熱変形測定装置60を初期位置に戻すことができる。
【0084】
このように構成される熱変形測定装置60は、本体70が一往復上下動することで、ロータ72を所定の角度回転させるとともに位置決めできる。このため、本体70の上昇中のみ、ギャップセンサ30によりボア壁面位置Rを読み取ることができる。
【0085】
これによれば、モータを備えることなくボア変形の測定ができる。すなわち、モータの回転を制御する必要がないため、熱変形測定装置60の製造コストを下げることができる。また、温間時の測定に際して、シリンダボア2内は高温多湿な状態となる。このような状態でモータを駆動させると、モータに負荷がかかる。しかし、熱変形測定装置60では、モータを備えることなくボア変形を測定するため、温間時の測定における影響を低減できる。
【0086】
なお、本体は、摺動部材に切欠部を形成するとともに、ロータに突起部を形成する構成としても構わない。この場合、本体を下降させる際にロータを回転できる。これによれば、ボア変形の測定において、上昇端と下降端とを入れ替えることにより、上昇動作と下降動作とを入れ替えることができる。
【符号の説明】
【0087】
1 シリンダブロック
2 シリンダボア
3 ボア壁面
10 熱変形測定装置
20 本体
22 ロータ(回転位置決め手段)
30 ギャップセンサ(ボア壁面位置読取手段)
R ボア壁面位置(径方向の位置)
θ 円周位置(円周方向の位置)
Z 高さ位置(高さ方向の位置)
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのシリンダブロックが有するシリンダボアの熱変形を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンを構成するシリンダブロックが有するシリンダボアの変形を測定するための装置として、例えば特許文献1に開示されているようなピストン型の測定機がある。具体的には、図8に示すように、ピストン型測定機110は、エンジンにおいてクランク軸に連結されるピストンと同様に、シリンダブロック101が有するシリンダボア102内に挿入され、シリンダボア102の壁面(以下「ボア壁面」という。)103の位置を測定する。
【0003】
ピストン型測定機110は、モータ等によりボア壁面103の周方向に沿って回転駆動されるロータ(回転体)と、ロータに固定されるセンサとを備える。センサは、ボア壁面103との間の間隔を検出することで、ボア壁面103の位置(シリンダボア102の径方向の位置)を検出する。つまり、ピストン型測定機110は、センサからの検出値に基づいて、ボア壁面103の位置を測定する。また、ピストン型測定機110は、例えば、連結部材125に連結されることで、クランク軸に連結されるピストンと同様の構成により、シリンダボア102内をピストンの摺動方向に移動可能に設けられる。
【0004】
このような構成において、ピストン型測定機110がシリンダボア102内の所定の高さ(ピストン型測定機110の移動方向における位置)に位置決めされ、ロータが回転させられることでボア壁面103の一周分の測定が行われる。そして、ロータの回転によって一周分の測定が行われた後、ピストン型測定機110の高さが逐次変更され、複数の断面位置についての測定が行われる。
【0005】
このようなピストン型測定機110によってシリンダボア102の熱変形が測定される場合、ピストン(ピストン型測定機110)とシリンダブロック101に取り付けられるシリンダヘッド104との間の空間として形成される燃焼室106内にスチーム105を通し、ボア壁面103をエンジンの実働時における温度に近い温度まで加熱することが行われる。すなわち、ピストン型測定機110により、冷間時(常温時)とスチーム105による温間時とで同様の測定が行われ、それらの差分から、シリンダボア102の熱変形を知ることができる。また、シリンダボア102の熱変形の測定が行われる際には、シリンダブロック101が有する複数のシリンダボア102の温度に極端な差がつかないように、位相が揃った特殊なクランク軸により、ピストン型測定機110が同一の高さとなるように一斉に上下移動させることが行われている。
【0006】
このように、ピストン型測定機110によるシリンダボア102の熱変形の測定においては、温間時での測定中に、ボア壁面103の温度分布の変化が防止されることが望まれる。しかし、従来の測定においては、ピストン型測定機110の固定位置(位置決めされる位置)により、ボア壁面103の温度分布が大きく変化する。
【0007】
図9は、ボア壁面103の温度分布の一例を示す。図9に示すグラフにおいて、横軸はボア壁面103におけるピストンの摺動方向についての位置を示し、縦軸はボア壁面103の温度を示す。ここで、横軸は、図8に示すボア壁面103における左右方向の位置に対応する。図9のグラフG1に示すように、ピストン型測定機110が所定の高さに位置決めされている状態においては、ボア壁面103の温度について、スチーム105との接触が有る部分(図8、範囲R1参照)の温度が、スチーム105との接触が無い部分(同図、範囲R2参照)の温度に対して相対的に高くなる。
【0008】
したがって、シリンダボア102内におけるピストン型測定機110の固定位置が変化することで、ボア壁面103におけるスチーム105との接触範囲が変化し、これにともない、ボア壁面103の温度分布が大きく変化する。ここで、図9に示すグラフにおいて、位置P0は、図8におけるスチーム105との接触が有る部分(範囲R1)とスチーム105との接触が無い部分(範囲R2)との境界の位置(ピストン型測定機110の燃焼室106側の端面の位置)に対応する。例えば、図8に示すように、ピストン型測定機110の位置が、ピストン型測定機110の移動(下降)によって二点鎖線で示すピストン型測定機110の位置に変化した場合、ボア壁面103の温度分布は、図9におけるグラフG1から、同図において二点鎖線で示すグラフG2で示される温度分布に変化する。
【0009】
また、ピストン型測定機110によるシリンダボア102の熱変形の測定においては、エンジンの実態に即した正確な熱変形を測定するため、エンジンの実働時により近い温度分布が実現されることが望まれる。ボア壁面103について狙い通りの温度分布を得るためには、ピストン型測定機110がエンジン実働時におけるピストンと同様に常時移動(往復移動)していることが望ましい。
【0010】
しかし、図10に示すように、シリンダボア102における特定の断面位置についての測定が行われるためには、ボア壁面103の一周分の測定が行われる時間中、ピストン型測定機110がその測定位置で停止している必要がある。このようにピストン型測定機110が測定位置にて停止している間に、ボア壁面103の温度分布が変化する。
【0011】
具体的には、図11において、グラフG3は、ピストン型測定機110が常時移動している場合のボア壁面103の温度分布を示す。グラフG3からわかるように、ピストン型測定機110が常時移動している場合においては、ボア壁面103の温度は、燃焼室106側が相対的に高く、滑らかに変化する。これに対し、ピストン型測定機110が所定の測定位置(ピストン型測定機110の端面の位置を示す位置P0参照)で停止することで、ボア壁面103の温度分布は、図11において二点鎖線で示すグラフG4のように変化する。つまり、移動しているピストン型測定機110が測定のために停止することで、その停止している間に、ボア壁面103の温度分布が、前述したようにピストン型測定機110が位置決めされている状態におけるスチーム105との接触の有無(境界の位置を示す位置P0参照)が部分的に別れる場合の温度分布に変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−127990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、温間での測定においてシリンダボアの壁面の温度分布の変化を低減することができるとともに、エンジン実働時に近い温度分布を実現させてシリンダボアの正確な熱変形を測定できるシリンダボアの熱変形測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1においては、エンジンのシリンダブロックに形成されるシリンダボアの熱変形を測定するシリンダボアの熱変形測定装置であって、
前記シリンダボアに挿入されるピストン状の本体と、
前記本体に設けられ、前記シリンダボアの壁面の、前記シリンダボアの径方向の位置を読み取るボア壁位置読取手段と、
前記本体を前記シリンダボアの高さ方向に所定の範囲で上下動させる駆動手段と、
前記ボア壁位置読取手段を前記シリンダボアの壁面に沿う円周方向に回転させるとともに前記円周方向における所定の位置で位置決めする回転位置決め手段と、
前記ボア壁位置読取手段の前記高さ方向における位置を読み取る高さ位置読取手段と、
前記ボア壁位置読取手段の前記円周方向における位置を読み取る円周位置読取手段と、
を備え、
前記駆動手段によって前記本体を上下動させて、上下動する前記本体の上昇中および下降中の少なくともいずれかにおいて、前記ボア壁位置読取手段により前記壁面の前記径方向の位置を前記高さ方向に沿って読み取る操作、
および前記高さ位置読取手段により読み取られる前記ボア壁位置読取手段の前記高さ方向における位置が、前記所定の範囲における上昇端および下降端の少なくともいずれかに対応する位置に達するたびに、前記回転位置決め手段により前記ボア壁面位置読取手段を前記円周方向に所定の角度回転させるとともに位置決めする操作を、
前記円周位置読取手段により読み取られる前記ボア壁位置読取手段の前記円周方向における位置に基づいて、前記ボア壁位置読取手段が初期位置から前記円周方向に一回転以上するまで行い、
前記ボア壁位置読取手段により読み取られた前記壁面の前記径方向の位置に基づいて、前記シリンダボアの熱変形を測定する、ものである。
【0015】
請求項2においては、前記回転位置決め手段は、前記本体が前記所定の範囲を一往復上下動するたびに、前記ボア壁位置読取手段を、所定の角度回転させるラチェット機構によって構成されるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
すなわち、本発明によれば、温間での測定においてシリンダボアの壁面の温度分布の変化を低減することができるとともに、エンジン実働時に近い温度分布を実現させてシリンダボアの正確な熱変形を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態における熱変形測定装置の構成を示す側面図。
【図2】ギャップセンサ等が読み取る座標値および角度の概要を示す説明図。
【図3】上昇動作および下降動作の両方で読取りが行われる場合のフロー図。
【図4】同じくギャップセンサの軌道を示す図。
【図5】上昇動作または下降動作のいずれかで読取りが行われる場合のフロー図。
【図6】同じくギャップセンサの軌道を示す図。
【図7】熱変形測定装置の別実施形態の構成を示す図。
【図8】従来のピストン型測定機の構成を示す側面図。
【図9】温間時の測定におけるシリンダボア内の温度変化を示す図。
【図10】センサの軌道を示す図。
【図11】温間時の測定におけるシリンダボア内の温度変化とエンジン実働時におけるシリンダボア内の温度変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係るシリンダボアの熱変形測定装置の実施の一形態である熱変形測定装置10について、図面を参照して説明する。
【0019】
熱変形測定装置10は、エンジンを構成するシリンダブロック1が有するシリンダボア2の熱変形(以下「ボア変形」という。)を測定するものである。熱変形測定装置10は、エンジンにおいてクランク軸に連結されるピストンと同様に、シリンダボア2内に挿入され、シリンダボア2の壁面(以下「ボア壁面」という。)3の位置を測定する。
【0020】
図1に示すように、熱変形測定装置10は、本体20を備える。本体20は、全体として略円筒状の外形を有し、ピストン状に構成される。本体20は、シリンダボア2に挿入され、シリンダボア2内をシリンダボア2の高さ方向(図1における矢印A方向)において上下動するものである。なお、図1において矢印Aで示される上下方向が、本実施形態に係る熱変形測定装置10における上下方向に対応する。本体20は、摺動部材21とロータ22と天板23とシャフト24とによって構成される。
【0021】
摺動部材21は、下面側が開口した円筒状の部材である。ロータ22は、円板状の部材であり、摺動部材21の上側において摺動部材21に対して回動可能に支持される。ロータ22は、シャフト24によって摺動部材21の筒軸方向(中心軸方向)が回転軸の方向となるように支持される。シャフト24は、摺動部材21の上側に支持され、ロータ22の中心位置に形成される支持孔22aによりロータ22を貫通する。天板23は、ロータ22と同様に円板状の部材であり、ロータ22の上側に設けられる。天板23の外周には、後述するスチームが燃焼室6外へ漏れることを防止するためのシール部材としてのOリング23aが装着される。また、天板23は、前記のとおりロータ22を貫通するシャフト24により支持される。
【0022】
本体20を構成する摺動部材21、ロータ22、および天板23は、略同じ外径寸法を有し、同心配置された状態で設けられる。このように、本体20は、摺動部材21とロータ22と天板23とがシャフト24によって一体的に形成されて、ピストン形状を成す。
【0023】
このように構成される本体20は、所定の駆動機構によってシリンダボア2の高さ方向(上下方向、以下「ボア高さ方向」という。)に所定の範囲で往復動(上下動)させられる。本体20は、連結部材25に連結されることで、エンジンにおいてクランク軸に連結されるピストンと同様の構成により、シリンダボア2内をピストンの摺動方向(上下方向)に移動可能に設けられる。
【0024】
すなわち、連結部材25は、その一端側が本体20を構成する摺動部材21の下側開口部を介して、摺動部材21の内部にて水平方向(図1において紙面に垂直方向)を回動軸方向として支持される。また、連結部材25の他端側は、シリンダブロック1において回転可能に支持されるクランク軸(図示略)に連結される。クランク軸は、モータ等の所定の駆動源によって回転させられる。つまり、所定の駆動源によるクランク軸の回転運動が、連結部材25を介して本体20の上下方向の往復直線運動に変換される。
【0025】
このように、本実施形態においては、連結部材25とクランク軸とクランク軸を回転させるための所定の駆動源とを含む構成が、本体20をボア高さ方向に所定の範囲で上下動させる駆動手段として機能する。
【0026】
また、熱変形測定装置10は、ギャップセンサ30を備える。ギャップセンサ30は、ボア壁面3のシリンダボア2の径方向の位置(以下「ボア壁面位置」という。)を読み取るためのものである。ギャップセンサ30としては、公知のギャップセンサが用いられ、非接触式センサや接触式センサ等、その種類は特に限定されない。
【0027】
ギャップセンサ30は、ボア壁面3との間隔(図1に示す符号C参照)を検出することで、ボア壁面位置を読み取る。つまり、ギャップセンサ30から出力される検出信号は、ボア壁面3の変形量に対応したものとなり、この検出信号に基づき、ボア壁面位置が求められる。ギャップセンサ30は、図示せぬ配線等を介して、ギャップセンサ30から出力される検出信号に基づいてボア壁面位置を計測してボア変形を測定する測定機(図示略、以下「ボア変形測定機」という。)に接続される。
【0028】
ギャップセンサ30は、本体20に設けられる。具体的には、ギャップセンサ30は、その検出部側がボア壁面3に対向する姿勢で、本体20を構成するロータ22に支持された状態で設けられる。ギャップセンサ30は、ロータ22において外周面側に開口する取付穴22bに嵌め込まれた状態で、ロータ22に支持される。
【0029】
このように、本実施形態におけるギャップセンサ30は、本体20に設けられ、ボア壁面位置を読み取るボア壁位置読取手段として機能する。なお、ギャップセンサ30によって読み取られたボア壁面位置についてのデータは、ボア変形測定機に備えられRAMやHDD等によって構成される記憶部に記憶される。
【0030】
ギャップセンサ30は、ロータ22の動作により、ボア壁面3に沿う円周方向(以下「ボア円周方向」という。)に回転させられるとともにボア円周方向における所定の位置で位置決めされる。前記のとおり摺動部材21に対して回動可能に支持されるロータ22は、モータ26を駆動源として回転駆動する(図1における矢印B参照)。
【0031】
図1に示すように、モータ26は、摺動部材21の内部において、駆動軸26aが上下方向に沿う姿勢で、摺動部材21の外周側の位置に設けられる。モータ26の回転は、モータ26の駆動軸26aに取り付けられる駆動ギア26bと、ロータ22に設けられるギア部22cとを介してロータ22に伝達される。
【0032】
すなわち、モータ26の駆動軸26aは、摺動部材21の上面部を貫通して摺動部材21の上側に突出する。この駆動軸26aの摺動部材21からの突出部分に、駆動ギア26bが取り付けられる。一方、摺動部材21の上側に支持された状態のロータ22の下面側に、駆動ギア26bと噛み合うギア部22cが設けられる。ギア部22cは、ロータ22の下面部においてロータ22の周縁に沿うように形成される円環状の突部であり、その内周部に歯部が形成されている。つまり、駆動ギア26bは、ロータ22のギア部22cに対して内周側から噛み合う。
【0033】
このような構成により、モータ26の駆動軸26aの回転にともない、ギア部22cによって駆動ギア26bに噛み合うロータ22が、シャフト24を中心に回転する。こうしたロータ22の回転にともない、ロータ22に支持されるギャップセンサ30がボア円周方向に回動させられる。そして、モータ26の駆動が停止させられることによってロータ22の回転が停止することで、ギャップセンサ30がボア円周方向において位置決めされる。
【0034】
このように、本実施形態では、ギャップセンサ30を支持するロータ22と、ロータ22を回転駆動させるモータ26とを含む構成が、ギャップセンサ30をボア円周方向に回転させるとともにボア円周方向における所定の位置で位置決めする回転位置決め手段として機能する。
【0035】
また、本実施形態の熱変形測定装置10においては、本体20に設けられるギャップセンサ30の位置について、ボア高さ方向における位置(以下「高さ位置」という。)と、ボア円周方向における位置(以下「円周位置」という。)とが、所定の構成によって読み取られる。
【0036】
具体的には、ギャップセンサ30の高さ位置は、例えば、前述したように本体20をボア高さ方向に上下動させるための構成であるクランク軸の回転角度に基づいて読み取られる。つまり、クランク軸の回転にともなって上下動する本体20に支持されるギャップセンサ30の高さ位置が、クランク軸の回転量に基づいて読み取られる。
【0037】
クランク軸の回転角度は、クランク軸の回転、あるいはクランク軸を回転させるための駆動源(モータ等)の回転を検出する回転センサ等によって検出される。つまり、クランク軸についての所定の基準位置からの回転角度により、ギャップセンサ30の高さ位置が読み取られる。この場合、回転センサ等のクランク軸の回転角度を検出するための構成が、ギャップセンサ30の高さ位置を読み取る高さ位置読取手段として機能する。
【0038】
また、ギャップセンサ30の円周位置は、例えば、前述したようにロータ22を回転させるための構成であるモータ26(の駆動軸26a)の回転量に基づいて読み取られる。つまり、モータ26の駆動軸26aの回転にともなって回転するロータ22に支持されるギャップセンサ30の円周位置が、モータ26の回転量に基づいて読み取られる。
【0039】
モータ26の回転量は、ロータリエンコーダ等によって検出される。つまり、モータ26の駆動軸26aについての所定の基準位置からの回転量により、ギャップセンサ30の円周位置が読み取られる。この場合、ロータリエンコーダ等のモータ26の回転量を検出するための構成が、ギャップセンサ30の円周位置を読み取る円周位置読取手段として機能する。
【0040】
なお、熱変形測定装置10において読み取られたギャップセンサ30の高さ位置および円周位置についてのデータは、ボア壁面位置と同様に、ボア変形測定機に備えられる記憶部に記憶される。
【0041】
また、熱変形測定装置10に備えられるボア変形測定機においては、CPU等によって構成される演算部において、記憶部に記憶されたデータに基づいて、シリンダボア2における任意の断面(高さ位置が一定)のデータを取り出す機能を有する部分や、取り出された断面のデータを描画したり、かかる断面における真円度を算出する部分が備えられる。そして、ボア変形測定機は、ディスプレイ等によって構成される表示部において、ボア変形を明示したりする機能を有する部分等が備えられる。
【0042】
以下では、熱変形測定装置10の動作態様について説明する。
熱変形測定装置10は、燃焼室6内にスチームが通されることでエンジン実働時における温度に近い温度までボア壁面3が加熱された温間時と、冷間時(常温時)とでそれぞれ測定を行う。そして、熱変形測定装置10は、それらの測定結果の差分から、ボア変形を測定する。
【0043】
熱変形測定装置10によるボア変形の測定においては、本体20の動作によって、ギャップセンサ30のボア高さ方向についての移動、およびボア円周方向についての移動ならびに位置決めが行われる。すなわち、ボア高さ方向については、所定の駆動機構による本体20のボア高さ方向の所定の範囲での往復動にともない、ギャップセンサ30が移動(上下動)する。また、ボア円周方向については、モータ26による本体20を構成するロータ22の回転および停止により、ギャップセンサ30が位置決めされながら移動する。
【0044】
したがって、ギャップセンサ30は、ボア高さ方向について本体20が上下動する所定の範囲で移動可能に設けられる。つまり、本体20がその移動範囲における上昇端に達した状態でのギャップセンサ30の位置が、ギャップセンサ30の上昇端であり、本体20がその移動範囲における下降端に達した状態でのギャップセンサ30の位置が、ギャップセンサ30の下降端である。
【0045】
以下の説明において、ギャップセンサ30の高さ位置についての上昇端とは、本体20が上下動する所定の範囲における上昇端に対応する位置であり、本体20が上昇端にある状態におけるギャップセンサ30の位置である。同様に、ギャップセンサ30の高さ位置についての下降端とは、本体20が上下動する所定の範囲における下降端に対応する位置であり、本体20が下降端にある状態におけるギャップセンサ30の位置である。
【0046】
また、ギャップセンサ30のボア円周方向の移動は、ギャップセンサ30が上昇端および下降端の少なくともいずれかに達した状態で行われる。つまり、ボア高さ方向に移動するギャップセンサ30は、上昇端または下降端に達した状態において一旦停止させられ、ボア円周方向に所定の長さ移動させられ(所定の角度回転させられ)、位置決めされる。
【0047】
そして、このようなギャップセンサ30のボア高さ方向の移動およびボア円周方向の移動の組合せが、少なくともギャップセンサ30がボア円周方向において一回転以上するまで行われる。つまり、熱変形測定装置10によるボア変形の測定におけるギャップセンサ30の動作としては、ボア高さ方向の往復動が、上昇端または下降端に達するたびに行われるボア円周方向の移動についての移動量である回転角度の合計が360°以上となるまで行われる。
【0048】
言い換えると、本実施形態においては、ギャップセンサ30は、ボア高さ方向についての下降端から上昇端への移動(上昇)、上昇端におけるボア円周方向への移動(回転)、ボア高さ方向についての上昇端から下降端への移動(下降)、および下降端におけるボア円周方向への移動(回転)を、初期位置からボア円周方向に一回転以上するまで順に繰り返す。
【0049】
ここで、本実施形態の熱変形測定装置10においては、駆動手段によって本体20を上下動させて、上下動する本体20の上昇中および下降中の少なくともいずれかにおいて、ギャップセンサ30によりボア壁面位置を高さ方向に沿って読み取る操作が行われる。
【0050】
このように、本実施形態の熱変形測定装置10においては、回転センサ等により読み取られるギャップセンサ30の高さ位置が、上昇端および下降端の少なくともいずれかに達するたびに、ロータ22およびモータ26を含む構成によりギャップセンサ30をボア円周方向に所定の角度回転させるとともに位置決めする操作が行われる。そして、ボア壁面位置を高さ方向に沿って読み取る操作、およびギャップセンサ30を所定の角度回転させるとともに位置決めする操作が、ロータリエンコーダ等により読み取られるギャップセンサ30の円周位置に基づいて、ギャップセンサ30が初期位置からボア円周方向に一回転以上するまで行われる。
【0051】
そして、このようなギャップセンサ30の動作において、ギャップセンサ30により読み取られたボア壁面位置に基づいて、ボア変形が測定される。
【0052】
すなわち、前述したように動作するギャップセンサ30が用いられ、ボア変形の測定のためのギャップセンサ30によるボア壁面位置の読取りが、ギャップセンサ30の上昇中および下降中の両方において、あるいはいずれか(上昇中または下降中)において行われる。以下、それぞれの場合における熱変形測定装置10の動作態様について説明する。
【0053】
なお、以下では、説明の便宜上、図2に示すように、ギャップセンサ30によって読み取られるボア壁面位置を、シリンダボア2の径方向についての座標値として表されるボア壁面位置Rとする(図2に示す符号R参照)。また、回転センサ等によって読み取られるギャップセンサ30の高さ位置を、ボア高さ方向についての座標値として表される高さ位置Zとする(図2に示す符号Z参照)。さらにまた、ロータリエンコーダ等によって読み取られるギャップセンサ30の円周位置を、ボア円周方向における角度として表される円周位置θとする(図2に示す符号θ参照)。
【0054】
また、熱変形測定装置10によるボア変形の測定においては、ボア壁面位置Rと高さ位置Zと円周位置θとは、それぞれボア変形測定機の記憶部に記憶される。ボア変形測定機は、前述したように、記憶部に記憶されたデータに基づいて、シリンダボア2の断面のデータを描画したり、かかる断面における真円度を算出するとともに表示する。これにより、ボア変形の結果を作業者等が確認できる。
【0055】
最初に、ボア変形の測定のためのギャップセンサ30によるボア壁面位置の読取りが、ギャップセンサ30の上昇中および下降中の両方において行われる場合について、図3に示すフロー図を用いて説明する。
【0056】
図3に示すように、この場合における熱変形測定装置10の動作態様においては、まず、本体20が、初期位置にセットされる(S100)。ここで、本体20の初期位置は、本体20の移動範囲における下降端である。このため、本体20が初期位置にセットされた状態においては、高さ位置Zは下降端である。また、本体20が初期位置にある状態での円周位置θについては、円周位置θ=0°とする。
【0057】
本体20は、ギャップセンサ30の高さ位置Zが上昇端に達するまで駆動機構により上昇させられる。すなわち、回転センサ等により高さ位置Zが読み取られ、かかる高さ位置Zが上昇端に達すると、本体20の上昇動作が停止される。このような本体20の上昇動作に際して、ギャップセンサ30は、ボア壁面位置Rを読み取る。また、ボア変形測定機の記憶部には、ボア壁面位置R、円周位置θ(0°)、および高さ位置Zが記憶される(S110、S120)。
【0058】
そして、ギャップセンサ30の高さ位置Zが上昇端に達して(S120)、本体20の上昇動作が停止された後、ギャップセンサ30は、ロータ27の回転により所定の角度(Δθ)回転させられて位置決めされる(S130)。
【0059】
このとき、ロータリエンコーダ等によりギャップセンサ30の円周位置θが読み取られ、かかる円周位置θが360°以上である場合、すなわち、初期位置を基準としてギャップセンサ30がシリンダボア2内を一回転以上している場合、本体20を初期位置に戻して測定を終了する(S140、S190)。
【0060】
一方、円周位置θが360°未満である場合、本体20は、ギャップセンサ30の高さ位置Zが下降端に達するまで駆動機構により下降させられる。すなわち、回転センサ等により高さ位置Zが読み取られ、かかる高さ位置Zが下降端に達すると、下降動作が停止される。このような本体20の下降動作に際して、ギャップセンサ30は、ボア壁面位置Rを読み取る。また、ボア変形測定機の記憶部には、ボア壁面位置R、円周位置θ(0°)、およびボア高さ位置Zが記憶される(S140〜S160)。
【0061】
ギャップセンサ30の高さ位置Zが下降端に達して(S160)、本体20の下降動作が停止された後、ギャップセンサ30は、ロータ27の回転によりΔθ回転させられて、位置決めされる(S170)。
【0062】
このとき、ロータリエンコーダ等によりギャップセンサ30の円周位置θが読み取られ、かかる円周位置θが360°未満である場合、すなわち、初期位置を基準としてギャップセンサ30がシリンダボア2内を一回転以上していない場合、ギャップセンサ30は、上昇させられながらボア壁面位置Rを読み取る。このとき、ボア変形測定機の記憶部には、ボア壁面位置R、円周位置θ(Δθ)、およびボア高さ位置Zが記憶される(S180、S110)。
【0063】
一方、円周位置θが360°以上である場合、本体20を初期位置に戻して測定を終了する(S180、S190)。
【0064】
以上のようなフローによるボア変形の測定においては、図4に示すように、上昇端および下降端に達するたびにボア円周方向にΔθずつ回転するギャップセンサ30により、上昇中および下降中にボア壁面位置の読取りが行われる。
【0065】
次に、ボア変形の測定のためのギャップセンサ30によるボア壁面位置の読取りが、ギャップセンサ30の上昇中および下降中のいずれかにおいて行われる場合について、図5に示すフロー図を用いて説明する。
なお、図5におけるS200からS220までは、前述したS100からS120までと同一であるため、その説明を省略する。
また、説明の便宜上、ギャップセンサ30によるボア壁面位置の読取りは、ギャップセンサ30の上昇中において行われるものとする。
【0066】
本体20は、上昇動作が停止された後、ギャップセンサ30の高さ位置Zが下降端に達するまで駆動機構により下降させられる。すなわち、回転センサ等によりギャップセンサ30の高さ位置Zが読み取られ、かかる高さ位置Zが下降端に達すると、本体20の下降動作が停止される(S230)。
【0067】
そして、ギャップセンサ30は、ロータ27の回転によりΔθ回転させられて、位置決めされる(S240)。
【0068】
このとき、ロータリエンコーダ等によりギャップセンサ30の円周位置θが読み取られ、かかる円周位置θが360°未満である場合、本体20は、高さ位置Zが上昇端に達するまで駆動機構により上昇させられる。このとき、ギャップセンサ30は、ボア壁面位置Rを読み取る。また、ボア変形測定機の記憶部には、ボア壁面位置R、円周位置θ(Δθ)、およびボア高さ位置Zが記憶される(S250、S210)。
【0069】
一方、円周位置θが360°以上である場合、本体20を初期位置に戻して測定を終了する(S250、S260)。
【0070】
以上のようなフローによるボア変形の測定においては、図6に示すように、下降端に達するたびにボア円周方向にΔθずつ回転するギャップセンサ30により、上昇中にボア壁面位置の読取りが行われる。
【0071】
なお、ボア変形の測定において、上昇動作と下降動作とは入れ替えても構わない。この場合、上昇端と下降端とを入れ替えることにより、上昇動作と下降動作とを入れ替えることができる。
【0072】
図4および図6に示すように、本体20は、ボア変形の測定に際して、常にシリンダボア2内を上下動している。このため、シリンダボア2の温度分布が大きく変化しない。つまり、図10に示すように、従来行われていたような、ボア高さ方向において所定の位置で留まる場合におけるボア壁面3の温度分布との比較において、ボア壁面3の温度分布の変化を低減させることができる。このように熱変形測定装置10は、ボア壁面3の温度分布の変化を低減することができるとともに、エンジン実働時に近い温度分布を実現させてシリンダボア2の正確な熱変形を測定できる。
【0073】
また、図6に示すように、上昇中および下降中のいずれかにおいて測定することにより、本体20の上昇時と下降時とで、本体20の姿勢が変化した場合、つまり、ギャップセンサ30の姿勢が変化した場合においても、その影響を受けることなく、正確にボア変形を測定できる。また、ボア壁面3の温度が本体20の上昇時と下降時とで差異が生じた場合において、その影響を受けることなく、正確にボア変形を測定できる。
【0074】
以下に、本発明に係るシリンダボアの熱変形測定装置の別実施形態である熱変形測定装置60について、図7を参照して説明する。
なお、既に説明したものについては、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0075】
図7(a)に示すように、熱変形測定装置60は、本体70を備える。本体70は、熱変形測定装置10の本体20と同様に、摺動部材71とロータ72と天板73とがシャフト74によって一体的に形成されて、ピストン形状を成す。天板73の外周には、前記Oリング23aと同様に構成されるOリング73aが装着される。また、本体70には、ギャップセンサ30が備えられる。ここで、図7(a)は、熱変形測定装置60の構成を示す側面図である。図7(b)は、ラチェット機構78の構成を示す平面図である。
【0076】
このように構成される本体70は、インデックス機構77によって回転させられる。インデックス機構77は、複数の突起部77aおよび複数の切欠部77bの動作により本体70を回転させる。
【0077】
図7(a)に示すように、複数の突起部77aは、それぞれ摺動部材71の上面に形成される。具体的には、複数の突起部77aが、それぞれボア円周方向に沿って形成され、所定の間隔を空けて配置される。また、複数の突起部77aは、それぞれボア円周方向に沿って配置される。
【0078】
複数の切欠部77bは、それぞれロータ72の下面を突起部77aの外形と略同一の形状に切り欠いて形成される。具体的には、複数の切欠部77bは、それぞれボア円周方向に沿って連続して配置される。
【0079】
また、突起部77aと切欠部77bとの間には、遊びが持たされる。具体的には、本体70の上昇動作時において、突起部77aと切欠部77bとは、係合される(以下「係合状態」という。)。逆に、本体70の下降動作時において、突起部77aと切欠部77bとは、係合状態が解除されて、突起部77aがロータ72の回転に干渉しない程度の隙間が生じる(以下「解除状態」という。)。
このように構成されるインデックス機構77は、本体70の往復上下動に際して、突起部77aと切欠部77bとは、係合状態および解除状態を繰り返す。解除状態から係合状態になる際に、突起部77aは、ボア円周方向において係合が解除された切欠部77bに隣接する切欠部77bに係合される。すなわち、本体70の往復上下動に際して、突起部77aは、ボア円周方向において隣接する切欠部77bに順次係合される。これにより、ロータ72は、ボア円周方向に回転させられる。
インデックス機構77によって回転させられるロータ72は、ラチェット機構78によって位置決めされる。
【0080】
ラチェット機構78は、係止部材78aとラック78bとにより、ロータ72をボア円周方向における所定の位置で位置決めするものである。ラチェット機構78は、例えば、ロータ72の上面に設けられる。
【0081】
図7(b)に示すように、係止部材78aは、シリンダボア2の径の中心部よりシリンダボア2の径方向に沿って配置される。係止部材78aは、径方向外側においてその辺の長さに差異が生じるような平面視略台形状に形成される。ラック78bは、係止部材78aと係止されることで、回転される方向の反対の方向(図7(b)における時計回りの方向)の回転を規制するとともに、ロータ72が回転される方向(図7(b)における反時計回りの方向)の回転を許容する。また、係止部材78aは、ボア円周方向において隣接するラック78bに順次係合されることにより、ロータ72を所定の間隔で位置決めできる。
このように、ラチェット機構78は、本体70が所定の範囲を一往復上下動するたびに、ギャップセンサ30を、所定の角度回転させる回転位置決め手段として構成される。
【0082】
このように、ロータ72は、本体70の一往復上下動ごとに所定の角度回転される。つまり、ロータ72が回転させられる位置から一往復上下動すると、ギャップセンサ30は、所定の角度回転される。つまり、ボア変形測定機によって高さ位置Zを監視することで、ギャップセンサ30の回転位置θを読み取ることができる。この場合、回転センサおよびボア変形測定機を含む構成は、ギャップセンサ30の円周位置θを読み取る円周位置読取手段として機能する。
【0083】
また、熱変形測定装置60は、巻き戻し機構79を備える。巻き戻し機構79は、ギャップセンサ30を初期位置にセットするものである。巻き戻し機構79は、例えば、つるまきバネによって構成され、シャフト74に嵌装される。また、つるまきバネの一端部がロータ72に係止されるとともに、他端部が天板73に係止される。巻き戻し機構79は、ロータ72が回転されることにより、その巻きピッチが小さくさせられる。つまり、ロータ72が回転させられると、巻き戻し機構79は、ロータ72の回転方向と反対の方向にロータ72を付勢する。このとき、係止部材78aをラック78bが係止するため、ロータ72は、巻き戻し機構79の付勢力によるロータ72の回転方向と反対の方向への回転が規制される。つまり、係止部材78aをラック78bから外すと、ロータ72は巻き戻し機構79によって回転方向と反対の方向へ付勢される。
これによれば、係止部材78aをラック78bから外すことにより熱変形測定装置60を初期位置に戻すことができる。
【0084】
このように構成される熱変形測定装置60は、本体70が一往復上下動することで、ロータ72を所定の角度回転させるとともに位置決めできる。このため、本体70の上昇中のみ、ギャップセンサ30によりボア壁面位置Rを読み取ることができる。
【0085】
これによれば、モータを備えることなくボア変形の測定ができる。すなわち、モータの回転を制御する必要がないため、熱変形測定装置60の製造コストを下げることができる。また、温間時の測定に際して、シリンダボア2内は高温多湿な状態となる。このような状態でモータを駆動させると、モータに負荷がかかる。しかし、熱変形測定装置60では、モータを備えることなくボア変形を測定するため、温間時の測定における影響を低減できる。
【0086】
なお、本体は、摺動部材に切欠部を形成するとともに、ロータに突起部を形成する構成としても構わない。この場合、本体を下降させる際にロータを回転できる。これによれば、ボア変形の測定において、上昇端と下降端とを入れ替えることにより、上昇動作と下降動作とを入れ替えることができる。
【符号の説明】
【0087】
1 シリンダブロック
2 シリンダボア
3 ボア壁面
10 熱変形測定装置
20 本体
22 ロータ(回転位置決め手段)
30 ギャップセンサ(ボア壁面位置読取手段)
R ボア壁面位置(径方向の位置)
θ 円周位置(円周方向の位置)
Z 高さ位置(高さ方向の位置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのシリンダブロックに形成されるシリンダボアの熱変形を測定するシリンダボアの熱変形測定装置であって、
前記シリンダボアに挿入されるピストン状の本体と、
前記本体に設けられ、前記シリンダボアの壁面の、前記シリンダボアの径方向の位置を読み取るボア壁位置読取手段と、
前記本体を前記シリンダボアの高さ方向に所定の範囲で上下動させる駆動手段と、
前記ボア壁位置読取手段を前記シリンダボアの壁面に沿う円周方向に回転させるとともに前記円周方向における所定の位置で位置決めする回転位置決め手段と、
前記ボア壁位置読取手段の前記高さ方向における位置を読み取る高さ位置読取手段と、
前記ボア壁位置読取手段の前記円周方向における位置を読み取る円周位置読取手段と、
を備え、
前記駆動手段によって前記本体を上下動させて、上下動する前記本体の上昇中および下降中の少なくともいずれかにおいて、前記ボア壁位置読取手段により前記壁面の前記径方向の位置を前記高さ方向に沿って読み取る操作、
および前記高さ位置読取手段により読み取られる前記ボア壁位置読取手段の前記高さ方向における位置が、前記所定の範囲における上昇端および下降端の少なくともいずれかに対応する位置に達するたびに、前記回転位置決め手段により前記ボア壁面位置読取手段を前記円周方向に所定の角度回転させるとともに位置決めする操作を、
前記円周位置読取手段により読み取られる前記ボア壁位置読取手段の前記円周方向における位置に基づいて、前記ボア壁位置読取手段が初期位置から前記円周方向に一回転以上するまで行い、
前記ボア壁位置読取手段により読み取られた前記壁面の前記径方向の位置に基づいて、前記シリンダボアの熱変形を測定する、
ことを特徴とする、シリンダボアの熱変形測定装置。
【請求項2】
前記回転位置決め手段は、前記本体が前記所定の範囲を一往復上下動するたびに、前記ボア壁位置読取手段を、所定の角度回転させるラチェット機構によって構成される、
ことを特徴とする、請求項1に記載のシリンダボアの熱変形測定装置。
【請求項1】
エンジンのシリンダブロックに形成されるシリンダボアの熱変形を測定するシリンダボアの熱変形測定装置であって、
前記シリンダボアに挿入されるピストン状の本体と、
前記本体に設けられ、前記シリンダボアの壁面の、前記シリンダボアの径方向の位置を読み取るボア壁位置読取手段と、
前記本体を前記シリンダボアの高さ方向に所定の範囲で上下動させる駆動手段と、
前記ボア壁位置読取手段を前記シリンダボアの壁面に沿う円周方向に回転させるとともに前記円周方向における所定の位置で位置決めする回転位置決め手段と、
前記ボア壁位置読取手段の前記高さ方向における位置を読み取る高さ位置読取手段と、
前記ボア壁位置読取手段の前記円周方向における位置を読み取る円周位置読取手段と、
を備え、
前記駆動手段によって前記本体を上下動させて、上下動する前記本体の上昇中および下降中の少なくともいずれかにおいて、前記ボア壁位置読取手段により前記壁面の前記径方向の位置を前記高さ方向に沿って読み取る操作、
および前記高さ位置読取手段により読み取られる前記ボア壁位置読取手段の前記高さ方向における位置が、前記所定の範囲における上昇端および下降端の少なくともいずれかに対応する位置に達するたびに、前記回転位置決め手段により前記ボア壁面位置読取手段を前記円周方向に所定の角度回転させるとともに位置決めする操作を、
前記円周位置読取手段により読み取られる前記ボア壁位置読取手段の前記円周方向における位置に基づいて、前記ボア壁位置読取手段が初期位置から前記円周方向に一回転以上するまで行い、
前記ボア壁位置読取手段により読み取られた前記壁面の前記径方向の位置に基づいて、前記シリンダボアの熱変形を測定する、
ことを特徴とする、シリンダボアの熱変形測定装置。
【請求項2】
前記回転位置決め手段は、前記本体が前記所定の範囲を一往復上下動するたびに、前記ボア壁位置読取手段を、所定の角度回転させるラチェット機構によって構成される、
ことを特徴とする、請求項1に記載のシリンダボアの熱変形測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−185857(P2010−185857A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31921(P2009−31921)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]