説明

シリンダ式バルブ

【課題】シリンダ式バルブにおける弁ケースを水栓の本体ボデーに対し回転方向に位置決めする位置決リングの組付けが容易で、しかも位置決リングを組み付けるための特別の余分の部材を必要とせず、また位置決リングの組付けに際してこれを単独で落下させてしまって紛失してしまう恐れのないシリンダ式バルブを提供する。
【解決手段】シリンダ式バルブ24において、シリンダ弁体と弁ケース28とを止め輪44にて軸方向に固定するとともに、弁ケース28を水栓の本体ボデー12に対し回転方向に位置決めする位置決リング56に、止め輪44に対して軸方向に掛止する掛止爪88を設け、掛止爪88の止め輪44への掛止によって、位置決リング56を弁ケース28に組み付けるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は円筒形状のシリンダ弁体と、その外側の円筒形状の弁ケースとを有するシリンダ式バルブに関し、詳しくはシリンダ式バルブを内蔵する水栓の本体ボデーに対して弁ケースを位置決する位置決リングの組付構造に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水栓におけるバルブとして、円筒形状のシリンダ弁体を外側の円筒形状の弁ケースに回転可能に内嵌させるとともに、それぞれの周壁を内外に貫通する通水用の開口を形成し、シリンダ弁体を回転させることによって、弁ケースの開口に対するシリンダ弁体の開口を位置変化させ、以って水路の開度変化を行うようになしたシリンダ式バルブが用いられている。
【0003】
このシリンダ式バルブにおいては、水栓の本体ボデーと弁ケースとの間に跨って組み付けられ、それら本体ボデーと弁ケースとを周方向即ちシリンダ弁体の回転方向に位置決するための位置決リングが設けられる。
例えば下記特許文献1に、かかる位置決リングを備えたシリンダ式バルブの一例が開示されている。
【0004】
この特許文献1に開示のものでは、位置決リングに径方向外方に突出状態で設けた第1係合凸部(第1係合部)を、本体ボデーに形成した第1被係合凹部(第1被係合部)に対して軸方向に挿入して周方向に係合させ、また位置決リングに径方向内方に突出状態に設けた第2係合凸部(第2係合部)を、弁ケースに設けた第2被係合凹部(第2被係合部)に対して軸方向に挿入して周方向に係合させ、以ってかかる位置決リングを介して弁ケースを本体ボデーに対し周方向即ち回転方向に位置決するようにしている。
【0005】
しかしながらこの場合、位置決リングの第2係合凸部を弁ケースの第2被係合凹部に位置合わせして係合させながら、第1係合凸部を本体ボデーの第2被係合凹部に位置合わせして係合させるように、位置決リングを弁ケースとともに本体ボデーに組み付けなければならず、組付作業に面倒を伴うとともに、その際に位置決リングを落としてしまったり或いは落下により紛失したりしてしまうと、位置決リング及びシリンダ式バルブを本体ボデーに組付けできなくなってしまう。
【0006】
一方、予め位置決リングを弁ケースに位置決状態で組み付けておいて、その状態で弁ケース及び位置決リングを本体ボデーに位置決しつつ組み付けるといったことも考えられが、この場合、弁ケースに対し位置決リングを組み付けるための別途の部材を必要とし、部品点数が多くなってしまうとともに、位置決リングの組付構造が複雑化してしまう。
【0007】
【特許文献1】特開2002−323153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上のような事情を背景とし、位置決リングの組付けが容易で、しかも位置決リングを組み付けるための特別の余分の部材を必要とせず、しかも位置決リングの組付けに際して、位置決リングを単独で落下させてしまったり、或いはその落下による紛失によって位置決リング、ひいてはシリンダ式バルブの組付けができなくなってしまうといった問題を解決することのできるシリンダ式バルブを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
而して請求項1のものは、円筒形状のシリンダ弁体と、該シリンダ弁体の外側の円筒形状の弁ケースの各周壁に、該周壁を内外に貫通する通水用の開口をそれぞれ形成し、該弁ケースに対する該シリンダ弁体の回転により、該弁ケースの開口に対する該シリンダ弁体の開口を位置変化させて、水路の開度変化を行うようになしたシリンダ式バルブにおいて、前記シリンダ弁体と弁ケースとを、該シリンダ弁体に設けた嵌込溝に弾性的に嵌め込んだ、径方向に弾性を有する止め輪にて軸方向に固定するとともに、前記バルブを内蔵する水栓の本体ボデーに形成した第1被係合部に対し周方向に係合する第1係合部、及び前記弁ケースに形成した第2被係合部に対して周方向に係合する第2係合部とを備え、それら本体ボデーと弁ケースとに跨って装着されることにより、該本体ボデーと該弁ケースとを周方向の回転方向に位置決めする位置決リングに、前記止め輪に対して軸方向に掛止する掛止部を設け、該掛止部の該止め輪への掛止によって、該位置決リングを前記弁ケースに組み付けるようになしたことを特徴とする。
【0010】
請求項2のものは、請求項1において、前記位置決リングの前記第2係合部は、前記弁ケース側に向って軸方向に突出する形状で設けられていて、該第2係合部に前記掛止部が備えられていることを特徴とする。
【0011】
請求項3のものは、請求項2において、前記第2係合部は、前記弁ケースに形成した凹形状の前記第2被係合部に対して軸方向に挿入されて前記周方向に係合するものとされており、前記掛止部は、該第2係合部の該第2被係合部への挿入時に、前記止め輪を軸方向に弾性的に乗り越えて該止め輪に対し軸方向に掛止するものとされており、該掛止部には、挿入方向の先端側に該止め輪を乗越えガイドする傾斜面が設けられていることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0012】
以上のように本発明は、位置決リングに、シリンダ弁体と弁ケースとを軸方向に固定する弾性止め輪に対して軸方向に掛止する掛止部を設け、その掛止部の止め輪への掛止によって、位置決リングを弁ケースに組み付けるようになしたもので、本発明によれば、予め弁ケースに対して位置決リングを周方向即ち回転方向に位置決した状態で組み付けておき、その状態で位置決リングの第1係合部を、本体ボデーの第1被係合部に係合させる状態に組み付けることができ、従って位置決リングの組付けを極めて簡単に行うことができるようになるとともに、その組付けに際して位置決リングを単独で落下させてしまったり、或いはその落下により位置決リングを紛失したりしてしまって、組付けができなくなるといった問題を解決することができる。
【0013】
また本発明では、弁ケースとシリンダ弁体とを軸方向に固定するための止め輪を利用して位置決リングを弁ケースに組み付けるようになしているため、位置決リングを弁ケースに組み付けるために別途の部材を弁ケースの側に取り付けておくといった必要はなく、位置決リングを弁ケースに予め取り付けておくために部品点数が多くなるといった問題も生じず、従ってまた位置決リングを弁ケースに取り付けるために構造が複雑化してしまうといった問題も解決することができる。
【0014】
請求項2は、位置決リングに、上記第2係合部を弁ケース側に向って軸方向に突出する形状で設け、その第2係合部に上記掛止部を備えたもので、この請求項2によれば、位置決リングを弁ケースに対し周方向に位置決するための第2係合部自体に掛止部が備えられていることから、位置決リングを止め輪に対し掛止するための掛止部を、係合部とは別途に独立して位置決リングに設けておく必要がなく、位置決リングの構造をより簡単な構造となすことができる。
【0015】
この場合において、第2係合部は、弁ケースに形成した凹形状の第2被係合部に対し軸方向に挿入されて周方向に係合するものとなし、そして上記掛止部には、第2係合部の第2被係合部への挿入時に、止め輪を軸方向に弾性的に乗り越えて、その止め輪に対し軸方向に掛止するものとなしておき、更にその掛止部には、挿入方向の先端側に止め輪を乗越えガイドする傾斜面を設けておくことができる(請求項3)。
【0016】
このようにしておけば、位置決リングの第2係合部を、弁ケースの第2被係合部に軸方向に挿入して位置決する際に、第2係合部に備えた掛止部が、傾斜面のガイド作用で簡単に止め輪を乗り越えて移動することができ、且つこれを乗り越えたところで自動的に掛止部が止め輪に掛止した状態となって、位置決リングが、弁ケースに対する位置決めと同時に弁ケースに組み付いた状態となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は洗濯機水栓,トイレの手洗用水栓等に用いられる水栓(ここでは単水栓)で、壁Wから前方に突出する状態で設けられている。
【0018】
12は円筒形状をなす水栓10の本体ボデーで、この本体ボデー12から吐水部14が前方斜め下向きに突き出しており、また本体ボデー12の先端側には回転式のハンドル16が設けられている。
ここでハンドル16は、回転操作によって吐水開始と止水及び水量調節を行う。
このハンドル16には、周方向所定個所に突出形状の摘み18を備えている。また吐水部14は先端に吐水口20を備えている。
【0019】
本体ボデー12は、図2及び図3に示しているように軸方向端部に雄ねじ管21を備えており、この雄ねじ管21が壁Wを貫通して裏側に突き出している。そして壁Wの裏側に突き出した雄ねじ管21に対し、図示を省略する固定ナットがねじ込まれることにより、本体ボデー12が大径のフランジ部23にて壁Wの表側を挟み付ける状態に壁Wに取り付けられるようになっている。
【0020】
図2及び図3に示しているように、本体ボデー14の内部には水路22の開度(遮断又は開放を含む)を制御するシリンダ式バルブ(以下単にバルブとする)24が組み込まれている。
このバルブ24は、ハンドル16に作動的に連結されてこれと一体回転する円筒形状のシリンダ弁体40と、その外側の円筒形状の弁ケース28とを有している。
【0021】
図12にも示しているようにシリンダ弁体40(詳しくは後述の弁本体26)には、周方向に180°隔たった2個所に周壁を内外に貫通する一対の通水用の開口30,32が形成されている。
また同じく弁ケース28の側にも開口30,32に対応する位置において、弁ケース28の周壁を内外に貫通する開口34,36が設けられている。
【0022】
これらシリンダ弁体40,弁ケース28を有する本例のバルブ24の場合、ハンドル16の操作によってシリンダ弁体40を回転させて位置変化させ、そしてシリンダ弁体40の開口30,32を弁ケース28の開口34,36に完全一致させた状態で水路22が完全開放され、水路22を通じて送られてきた水が吐水口20から外部に吐水される。
【0023】
また一方ハンドル16の操作によって、シリンダ弁体40が上記の位置と異なる位置に回転させられ、そしてシリンダ弁体40の開口30,32が弁ケース28の開口34,36に完全不一致となった状態で水路22が遮断され、吐水口20からの吐水が停止(止水)する。
更にシリンダ弁体40の開口30,32と弁ケース28の開口34,36とが重なり合った状態で、且つその重なり合った面積が変化することで、吐水口20から外部に吐水される水量が調節される。
【0024】
本体ボデー12の図中左端部の内面には雌ねじ50が形成されており、そこに外面に雄ねじ52を有する固定リング54がねじ込まれている。
そしてこの固定リング54の本体ボデー12のねじ込みにより、バルブ24が後述の位置決リング56を介し、本体ボデー12に軸方向に固定され抜止めされている。
【0025】
シリンダ弁体40は、弁本体26に組み付けられた弁軸部38を備えている。
この弁軸部38には、図4,図6,図10及び図14に示しているように細幅のリング溝42が形成されており、そこに径方向に弾性を有する止め輪(ここではEリング)44が、弾性的に嵌められている。
【0026】
そして弁軸部38が弁ケース28の挿通孔46を軸方向に挿通した状態で、この止め輪44と弁軸部38の後述の大径の雄嵌合部90とが、弁ケース28の内向きのフランジ部48を軸方向に挟み込む状態に弁軸部38が、即ちシリンダ弁体40が弁ケース28に固定され組み付けられている。
【0027】
図3,図4,図6,図8に示しているように、本体ボデー12の図中左端部の内面には雌ねじ50が形成されており、そこに外面に雄ねじ52を有する固定リング54がねじ込まれている。
そしてこの固定リング54の本体ボデー12のねじ込みにより、バルブ24が後述の位置決リング56を介し本体ボデー12に軸方向に固定され抜止めされている。
【0028】
図4及び図5において、58はハンドル16に加えられた回転の操作力を上記弁軸部38に伝達して一体回転させる軸状の伝達部材(ここでは樹脂製)で、図中左端部の外面に図4に示しているように雄セレーション部60が設けられている。
一方ハンドル18の内面には、図4に示しているように雌セレーション部62が設けられていて、この雌セレーション部62が雄セレーション部60に噛み合わされている。そしてこれら雄セレーション部60と雌セレーション部62との噛み合いにより、伝達部材58がハンドル16と一体回転するようになっている。
【0029】
一方、伝達部材58は図5,図6に示すように図中右端側に嵌合孔64を有しており、この嵌合孔64において弁軸部38に嵌合させられている。
そしてその嵌合状態の下で、弁軸部38の中心部に形成された雌ねじ部66に、固定ねじ68がねじ込まれることによって、弁軸部38と伝達部材58とが軸方向に締結されている。
図4に示しているように、弁軸部38は図中左端部が略四角形状をなしているとともに、軸直角方向に突出する突条70を備えている。
【0030】
一方これに嵌合する伝達部材58の嵌合孔64には、図6中左側の奥部に、弁軸部38の先端部に対応した四角形状の係合部72と、突条70に対応した凹溝74が備えられており、それら係合部72及び凹溝74が、弁軸部38の四角形状の先端部及び突条70に嵌り合って回転方向に係合している。そしてそれらの係合に基づいて、伝達部材58に伝えられた回転方向の操作力がシリンダ弁体40に伝えられ、それらが一体回転するようになっている。
【0031】
上記位置決リング56は、図4,図5及び図7に示しているように軸方向に所定長さを有する円環状の部材であって、外周面の周方向に隔たった2個所に、径方向外方に突出する第1係合凸部(第1係合部)76を有しており、これら一対の第1係合凸部76が、図4及び図8に示しているように水栓10の本体ボデー12の内面に形成された、対応する第1被係合凹部(第1被係合部)78に軸方向に挿入され、周方向即ち回転方向に係合することによって、位置決リング56自体の本体ボデー12に対する回転方向の位置が定められるようになっている。
【0032】
位置決リング56はまた、第1係合凸部76と同じ周方向位置において、軸方向に突出する一対の第2係合凸部(第2係合部)80を有しており、これらが図4及び図9に示しているようにバルブ24、詳しくはバルブケース28の対応する一対の第2被係合凹部(第2被係合部)82に、軸方向に挿入されて周方向即ち回転方向に係合することにより、位置決リング56とバルブ24との回転方向の位置が定められるようになっている。
尚図8(B)はハンドル16の全閉状態を示したものである。
即ち、バルブ24の本体ボデー12に対する回転方向の組付位置が、位置決リング56を介して規定されている。
【0033】
これら一対の第2係合凸部80の内面には、径方向内方に突出する掛止爪(掛止部)88が設けられており、これら掛止爪88によって、位置決リング56がバルブ24に組み付けられている。
詳しくは、図10に示しているように位置決リング56をバルブ24に対し軸方向に押し込むと、掛止爪88がバルブ24のリング溝42に装着されている止め輪44を弾性的に乗り越えて通過し、そして止め輪44を掛止爪88が乗り越えたところで、掛止爪88が止め輪44に対し軸方向に引っ掛かって掛止した状態となる。これにより位置決リング56がバルブ24に組み付いた状態となる。
尚、各掛止爪88には図7及び図10(II)の部分拡大図に示しているように、位置決リング56を図中軸方向(図7中下方向)に押し込んで、第2係合凸部80をバルブケース28の第2被係合凹部82に軸方向に挿入する際に、止め輪44を乗越えガイドする傾斜面89が押込方向の先端側に設けられている。
【0034】
位置決リング56にはまた、更にその内面の2個所に、具体的には外面の第1係合凸部76と同じ周方向位置の2個所において、径方向内方に突出する一対のストッパ部84が設けられている。
これらストッパ部84は、ハンドル16の回転を一定角度範囲内に規定するハンドルストッパ部として働くものである。
【0035】
詳しくは、ハンドル16の回転方向の操作力をシリンダ弁体40の弁軸部38に伝達する上記伝達部材58には、図5,図8に示しているように径方向外方に突出する一対の当接部86が備えられており、図11に示しているようにハンドル16を回転させたときに、これら当接部86が位置決リング56の一対のストッパ部84に当接することによって、ハンドル16の回転が一定角度範囲内に規制される。
尚図11中(A)はハンドル16の全閉状態を、(B)はハンドル16の全開状態を示している。
【0036】
尚、ハンドル16を正方向に回転させたときには伝達部材58の一対の当接部86の一方が、位置決リング56の一対のストッパ部84の一方に当接し、また逆方向に回転操作したときには伝達部材58の他方の当接部86が、位置決リング56の他方のストッパ部84に当接する。
【0037】
図12,図15及び図16にシリンダ弁体40における弁本体26と弁軸部38との組付構造が具体的に示してある。
これらの図に示しているように、樹脂製とされた弁軸部38には図15,図16中下端部に大径の円形の雄嵌合部90が設けられており、この雄嵌合部90が、金属製とされた弁本体26の図中上端の開口からその内部に嵌入させられ、かかる雄嵌合部90が弁本体26の図中上端部(軸端部)の雌嵌合部92に弾性的に嵌合されている。
ここで雄嵌合部90の外周面には、図15(ロ)に示しているように周方向に180°隔たった2個所に、各一対の位置決突起94が径方向外方に突出する状態で一体に形成されている。
【0038】
一方弁本体26の図中上端部には、開口に続いて正面形状が矩形状の切欠き96が形成されており、そこに位置決突起94が嵌り込むことによって、弁軸部38と弁本体26との回転方向位置が規定されている。
【0039】
金属製の弁本体26は、図17(A)に示しているように金属製の板材100を絞り加工し、そして底部102を打ち抜いて除去して得た絞り加工品から成るものであって、図中上側の軸端部が、軸端の開口に至るまで開口に向って均等な板厚で径方向内方に湾曲しており、湾曲部分の内側が全周に亘って係合爪98とされている。
【0040】
ここで径方向内方に突出する形態をなす係合爪98は、軸端の開口に向って漸次小径化して開口に至る形状をなしている。
一方湾曲部分の外面は、軸端の開口に至るまで開口に向って漸次小径化する曲面(R面)106をなしている(図15(ハ)参照)。
尚、弁本体26の図中下端部にはフランジ部104が全周に亘って環状に形成されている。
【0041】
一方、弁軸部38の大径の雄嵌合部90の外面には、図15(ロ)に示しているように周方向に略120°ずつ隔たった3個所に、径方向外方に突出する係合突起108が設けられており、これら係合突起108が、弁本体26の係合爪98に対し軸方向且つ弁軸部38の抜き方向に係合させられ、それら係合突起108と係合爪98との係合により、弁軸部38が弁本体26に対し軸方向に抜止状態に連結され組み付けられている。
【0042】
係合突起108は、図16に示しているように軸方向に延びる長手形状をなしており、その上端は鋭く屈曲した角部とされている。
一方、図中の下端部は下方に進むにつれて径方向内方に移行する傾斜面110とされている。
尚、雄嵌合部90の下端の外周縁部は曲面(R面)112とされている。
【0043】
図13及び図14において、114は弁ケース28の開口36縁部に装着されて、弁本体26と水栓の本体ボデー12との間を水密にシールするゴム等の弾性材で構成されたリング状のパッキンで、116はそのリング状をなすパッキン114の内周側に嵌込状態に装着されて、パッキン114の求心方向の変形を防止する硬質の拘束リングである。
【0044】
本実施形態では、バルブ24を本体ボデー12内部に組み込むに際して、図9に示しているように予め弁ケース28に位置決リング56を組み付けておき、その状態で全体を本体ボデー12の内部に挿入して、その際に図8に示すように位置決リング56の第1係合凸部76を、本体ボデー12の第1被係合凹部78に軸方向に挿入し、第1被係合凹部78に対し周方向に係合させることで、位置決リング56を本体ボデー12に対し回転方向に位置決することができる。
即ちかかる位置決リング56を介して、バルブ24を本体ボデー12に対し回転方向に位置決した状態で組み込むことができる。
その後、固定リング54を本体ボデー12にねじ込むことによって、バルブ24及び位置決リング56が本体ボデー12から抜止状態に軸方向に固定される。
【0045】
以上のような本実施形態によれば、予め弁ケース28に対して位置決リング56を回転方向に位置決めした状態で組み付けておき、その状態で位置決リング56の第1係合凸部76を、本体ボデー12の第1被係合凹部に係合させる状態に組み付けることができ、従って位置決リング56の組付けを極めて簡単に行うことができるようになるとともに、その組付けに際して位置決リング56を単独で落下させてしまったり、或いはその落下により位置決リング56を紛失したりしてしまって組付けができなくなるといった問題を解決することができる。
【0046】
また弁ケース28とシリンダ弁体40とを軸方向に固定するための止め輪44を利用して、位置決リング56を弁ケース28に組み付けるようになしているため、位置決リング56を弁ケース28に組み付けるために別途の部材を弁ケース28の側に取り付けておくといった必要はなく、位置決リング56を弁ケース28に予め取り付けておくために部品点数が多くなるといった問題も生じず、従ってまた位置決リング56を弁ケース28に取り付けるために構造が複雑化してしまうといった問題も解決することができる。
【0047】
また位置決リング56を弁ケース28に対し回転方向に位置決するための第2係合凸部80自体に掛止爪88を備えていることから、位置決リング56を止め輪44に対し掛止するための掛止部を、第2係合凸部80とは別途に独立して位置決リング56に設けておく必要がなく、位置決リング56の構造をより簡単な構造となすことができる。
【0048】
更に第2係合凸部80に備えた掛止爪88には、挿入方向の先端側に止め輪44を乗越えガイドする傾斜面89が設けてあるため、位置決リング56の第2係合凸部80を、弁ケース28の第2被係合凹部82に軸方向に挿入して位置決する際に、掛止爪88を、傾斜面89のガイド作用で簡単に止め輪44を乗り越えて移動させることができ、且つこれを乗り越えたところで自動的に掛止爪88を止め輪44に掛止した状態とすることができる。
【0049】
以上本発明の実施形態を詳述したが、本発明においては第1係合部を凹形状に、第1被係合部を凸形状に構成したり、第2係合部を凹形状に、第2被係合部を凸形状に形成するといったことも場合により可能であるし、また本発明のシリンダ式バルブは、単水栓のみならず2ハンドル式の湯水混合水栓その他様々な水栓に適用することが可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態のシリンダ式バルブを内蔵した水栓を外観状態で示す図である。
【図2】図1の水栓の平面断面図である。
【図3】図1の水栓の側面断面図である。
【図4】同実施形態のシリンダ式バルブを水栓とともに分解して示した斜視図である。
【図5】図4の各部品を別の方向から示した斜視図である。
【図6】図4及び図5に示した各部品の側面断面図である。
【図7】同実施形態のシリンダ式バルブにおける位置決リングの単品図である。
【図8】図7の位置決リングと水栓の本体ボデー及び伝達部材との組付関係を示した図である。
【図9】図7の位置決リングと弁ケースとの位置決構造を示した図である。
【図10】図7の位置決リングと弁ケースとの組付構造を示した図である。
【図11】図7の位置決リングのハンドルに対する回転規制作用を示した作用説明図で、(A)は全閉状態を(B)は全開状態を示している。
【図12】同実施形態のシリンダ式バルブを組付状態で単体で示した図である。
【図13】図12のシリンダ式バルブを弁ケースとシリンダ弁体とに分解して示した斜視図である。
【図14】図12のシリンダ式バルブを弁ケースとシリンダ弁体とに分解して図13とは異なる方向で示した斜視図である。
【図15】同実施形態のシリンダ式バルブにおけるシリンダ弁体の弁本体と弁軸部との組付構造を示した図である。
【図16】図15の弁本体と弁軸部とを組み付けた状態で示すシリンダ弁体の断面図である。
【図17】図15及び図16のシリンダ弁体における弁本体の製造工程の要部を示した図である。
【符号の説明】
【0051】
10 水栓
12 本体ボデー
22 水路
24 シリンダ式バルブ
28 弁ケース
30,32,34,36 開口
40 シリンダ弁体
42 リング溝
44 止め輪
56 位置決リング
76 第1係合凸部(第1係合部)
78 第1被係合凹部(第1被係合部)
80 第2係合凸部(第2被係合部)
82 第2被係合凹部(第2被係合部)
88 掛止爪
89 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状のシリンダ弁体と、該シリンダ弁体の外側の円筒形状の弁ケースの各周壁に、該周壁を内外に貫通する通水用の開口をそれぞれ形成し、該弁ケースに対する該シリンダ弁体の回転により、該弁ケースの開口に対する該シリンダ弁体の開口を位置変化させて、水路の開度変化を行うようになしたシリンダ式バルブにおいて
前記シリンダ弁体と弁ケースとを、該シリンダ弁体に設けた嵌込溝に弾性的に嵌め込んだ、径方向に弾性を有する止め輪にて軸方向に固定するとともに
前記バルブを内蔵する水栓の本体ボデーに形成した第1被係合部に対し周方向に係合する第1係合部、及び前記弁ケースに形成した第2被係合部に対して周方向に係合する第2係合部とを備え、それら本体ボデーと弁ケースとに跨って装着されることにより、該本体ボデーと該弁ケースとを周方向の回転方向に位置決めする位置決リングに、前記止め輪に対して軸方向に掛止する掛止部を設け、該掛止部の該止め輪への掛止によって、該位置決リングを前記弁ケースに組み付けるようになしたことを特徴とするシリンダ式バルブ。
【請求項2】
請求項1において、前記位置決リングの前記第2係合部は、前記弁ケース側に向って軸方向に突出する形状で設けられていて、該第2係合部に前記掛止部が備えられていることを特徴とするシリンダ式バルブ。
【請求項3】
請求項2において、前記第2係合部は、前記弁ケースに形成した凹形状の前記第2被係合部に対して軸方向に挿入されて前記周方向に係合するものとされており、前記掛止部は、該第2係合部の該第2被係合部への挿入時に、前記止め輪を軸方向に弾性的に乗り越えて該止め輪に対し軸方向に掛止するものとされており、該掛止部には、挿入方向の先端側に該止め輪を乗越えガイドする傾斜面が設けられていることを特徴とするシリンダ式バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−185159(P2008−185159A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20191(P2007−20191)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】