説明

シリンダ錠の保護装置

【課題】メカニカルキーをキー孔から引き抜くのに応じてシャッター板が開放位置から閉鎖位置に自動的に復帰するようにしたシリンダ錠の保護装置において、メカニカルキーを長く形成することを不要としてコンパクトに構成する。
【解決手段】弾発手段57と、第1および第2係合部材58,59と、それらの係合部材58.59を作動せしめるカム手段60とが、キー孔28の軸線と直交する平面に沿って作動するようにしてケーシング22内に収容され、カム手段60は、シャッター板34の開放位置への作動に応じて第1係合部材58をシャッター板34に係合させ、メカニカルキー33の挿入に応じて第2係合部材59をシャッター板34に係合させ、オン位置への回動操作に応じて第1係合部材58のシャッター板34への係合を解除させ、メカニカルキー33の引き抜きに応じて第2係合部材59のシャッター板34への係合を解除させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ錠が備えるインナシリンダに設けられるキー孔に対応した挿入孔を有して前記シリンダ錠のシリンダボディに固定されるケーシングと、前記挿入孔を閉鎖する閉鎖位置ならびに前記挿入孔を開放する開放位置間で前記キー孔の軸線に直交する平面に沿って作動することを可能として前記ケーシング内に収納されるシャッター板と、施錠時には前記シャッター板を前記閉鎖位置で保持するとともに解錠時に前記シャッター板を前記閉鎖位置から前記開放位置に操作することを可能としたマグネット錠とを備え、メカニカルキーを前記キー孔から引き抜くのに応じて前記シャッター板が前記開放位置から前記閉鎖位置に自動的に復帰するようにしたシリンダ錠の保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キー孔を閉鎖するシャッター板をマグネット錠の解錠に応じて開放位置に作動せしめた後、キー孔に挿入したメカニカルキーを引き抜くのに応じてシャッター板が閉鎖位置に自動的に復帰するようにして、操作性を高め、閉め忘れがないようにしたシリンダ錠の保護装置が、たとえば特許文献1で既に知られている。
【特許文献1】特開2005−076204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記特許文献1で開示されるものでは、シャッター板を開放位置に保持する部材が、キー孔の軸線に沿う方向に移動する構造となっているので、ケーシングがキー孔の軸線に沿う方向に大型化し、それに伴ってメカニカルキーも長く形成する必要が生じる。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、キー孔からのメカニカルキーの引き抜きに応じてシャッター板を開放位置から閉鎖位置に自動的に復帰させるようにした上で、メカニカルキーを長く形成することを不要としてコンパクトに構成されたシリンダ錠の保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、シリンダ錠が備えるインナシリンダに設けられるキー孔に対応した挿入孔を有して前記シリンダ錠のシリンダボディに固定されるケーシングと、前記挿入孔を閉鎖する閉鎖位置ならびに前記挿入孔を開放する開放位置間で前記キー孔の軸線に直交する平面に沿って作動することを可能として前記ケーシング内に収納されるシャッター板と、施錠時には前記シャッター板を前記閉鎖位置で保持するとともに解錠時に前記シャッター板を前記閉鎖位置から前記開放位置に操作することを可能としたマグネット錠とを備え、メカニカルキーを前記キー孔から引き抜くのに応じて前記シャッター板が前記開放位置から前記閉鎖位置に自動的に復帰するようにしたシリンダ錠の保護装置において、前記シャッター板を前記閉鎖位置側に付勢するようにして前記ケーシングおよび前記シャッター板間に設けられる弾発手段と、前記開放位置にある前記シャッター板に係合して該シャッター板を開放位置に保持し得る第1および第2係合部材と、前記シャッター板の作動、前記キー孔に対する前記メカニカルキーの挿脱ならびに前記メカニカルキーによる回動操作に応じて第1および第2係合部材を作動せしめるカム手段とが、前記キー孔の軸線と直交する平面に沿って作動するようにして前記ケーシング内に収容され、前記カム手段は、前記シャッター板の閉鎖位置から開放位置への作動に応じて第1係合部材を前記シャッター板に前記閉鎖位置側から係合させ、前記キー孔への前記メカニカルキーの挿入に応じて第2係合部材を前記シャッター板に前記閉鎖位置側から係合させ、前記キー孔に挿入された前記メカニカルキーによるオン位置への回動操作に応じて第1係合部材の前記シャッター板への係合を解除させ、前記メカニカルキーが前記キー孔から引き抜かれるのに応じて第2係合部材の前記シャッター板への係合を解除させることを特徴とする。
【0006】
また請求項2記載の発明は、シリンダ錠が備えるインナシリンダに設けられるキー孔に対応した挿入孔を有して前記シリンダ錠のシリンダボディに固定されるケーシングと、前記挿入孔を閉鎖する閉鎖位置ならびに前記挿入孔を開放する開放位置間で前記キー孔の軸線に直交する平面に沿って作動することを可能として前記ケーシング内に収納されるシャッター板と、施錠時には前記シャッター板を前記閉鎖位置で保持するとともに解錠時に前記シャッター板を前記閉鎖位置から前記開放位置に操作することを可能としたマグネット錠とを備え、メカニカルキーを前記キー孔から引き抜くのに応じて前記シャッター板が前記開放位置から前記閉鎖位置に自動的に復帰するようにしたシリンダ錠の保護装置において、前記シャッター板もしくは該シャッター板に連動して作動する連動部材および前記ケーシング間に設けられて前記シャッター板を前記閉鎖位置側に付勢する弾発手段と、前記シャッター板もしくは前記連動部材に前記シャッター板が前記開放位置にあるときに係合して前記シャッター板を開放位置に保持し得る第1および第2係合部材と、前記シャッター板の作動、前記キー孔に対する前記メカニカルキーの挿脱ならびに前記メカニカルキーによる回動操作に応じて第1および第2係合部材を作動せしめるカム手段とが、前記キー孔の軸線と直交する平面に沿って作動するようにして前記ケーシング内に収容され、前記カム手段は、前記シャッター板の閉鎖位置から開放位置への作動に応じて第1係合部材を前記シャッター板もしくは前記連動部材に前記閉鎖位置側から係合させ、前記キー孔への前記メカニカルキーの挿入に応じて第2係合部材を前記シャッター板もしくは前記連動部材に前記閉鎖位置側から係合させ、前記キー孔に挿入された前記メカニカルキーによるオン位置への回動操作に応じて第1係合部材の前記シャッター板もしくは前記連動部材への係合を解除させ、前記メカニカルキーがオフ位置で前記キー孔から引き抜かれても第2係合部材の前記シャッター板もしくは前記連動部材への係合を維持するものの前記メカニカルキーがロック位置で前記キー孔から引き抜かれるのに応じて第2係合部材の前記シャッター板もしくは前記連動部材への係合を解除させることを特徴とする。
【0007】
さらに請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の構成に加えて、前記シャッター板の作動に応じて前記キー孔の軸線に直交する平面に沿ってスライド作動する前記連動部材が、該連動部材および前記ケーシング間に設けられる前記弾発手段の弾発付勢力によって前記シャッター板を前記閉鎖位置側に付勢するようにして前記シャッター板に開放位置側から当接、係合され、第1および第2係合部材を係合せしめて前記シャッター板の閉鎖位置を保持するための第1および第2係止部が前記連動部材に設けられることを特徴とする。
【0008】
なお第1実施例の戻しばね57および第2実施例の戻しばね106が本発明の弾発手段に対応する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、マグネット錠を解錠してシャッター板を閉鎖位置から開放位置に作動せしめると、第1係合部材がシャッター板に閉鎖位置側から係合し、キー孔にメカニカルキーを挿入することで第2係合部材がシャッター板に閉鎖位置側から係合し、メカニカルキーによるオン位置への回動操作に応じて第1係合部材のシャッター板への係合が解除されるものの第2係合部材がシャッター板に係合したままであるので、メカニカルキーがキー孔に挿入されている限り、シャッター板は開放位置に保持される。またメカニカルキーをキー孔から引き抜くと、第2係合部材のシャッター板への係合が解除されるので、シャッター板は弾発手段の弾発力によって開放位置から閉鎖位置に自動的に復帰することになる。すなわちキー孔に挿入したメカニカルキーを引き抜くのに応じてシャッター板が閉鎖位置に自動的に復帰するので、操作性を高め、閉め忘れがないようにすることができる。
【0010】
しかも第1および第2係合部材と、第1および第2係合部材を作動せしめるカム手段と、シャッター板を閉鎖位置側に付勢する弾発手段とが、キー孔の軸線に直交する平面に沿って作動するようにしてケーシングに収容されるので、キー孔の軸線に沿う方向でケーシングをコンパクトに構成することができ、それに応じてメカニカルキーの長さも短くすることができる。
【0011】
また請求項2記載の発明によれば、マグネット錠を解錠してシャッター板を閉鎖位置から開放位置に作動せしめると、第1係合部材がシャッター板もしくは該シャッター板に連動する連動部材に閉鎖位置側から係合し、キー孔にメカニカルキーを挿入することで第2係合部材がシャッター板もしくは連動部材に閉鎖位置側から係合し、メカニカルキーによるオン位置への回動操作に応じて第1係合部材のシャッター板もしくは連動部材への係合が解除されるものの第2係合部材がシャッター板もしくは連動部材に係合したままであるので、メカニカルキーがキー孔に挿入されている限り、シャッター板は開放位置に保持される。またメカニカルキーをロック位置でキー孔から引き抜くと、第2係合部材のシャッター板もしくは連動部材への係合が解除されるので、シャッター板は弾発手段の弾発力によって開放位置から閉鎖位置に自動的に復帰することになる。すなわち長時間駐車時にメカニカルキーをロック位置で引き抜くのに応じてシャッター板が閉鎖位置に自動的に復帰するので、操作性を高め、閉め忘れがないようにして防盗性を高めることができる。一方、短時間駐車するときのように、キー孔に挿入したメカニカルキーをオフ位置で引き抜いたときには、シャッター板もしくは連動部材への第2係合部材の係合状態は維持されたままであり、オフ位置でシャッター板が自動的に閉鎖位置に戻ることはないので、短時間駐車時のようにシャッター板を閉める必要性が低いときにはシャッター板を閉めないようにして操作性を高めることができる。
【0012】
しかも第1および第2係合部材と、第1および第2係合部材を作動せしめるカム手段と、シャッター板を閉鎖位置側に付勢する弾発手段とが、キー孔の軸線に直交する平面に沿って作動するようにしてケーシングに収容されるので、キー孔の軸線に沿う方向でケーシングをコンパクトに構成することができ、それに応じてメカニカルキーの長さも短くすることができる。
【0013】
さらに請求項3記載の発明によれば、連動部材が弾発手段の弾発付勢力によってシャッター板を閉鎖位置側に付勢するようにしてシャッター板に開放位置側から当接、係合され、第1および第2保持部材を係合せしめる第1および第2係止部が連動部材に設けられるので、オフ位置でキー孔からメカニカルキーを抜いた状態でシャッター板が開放位置にあるときにも、必要に応じてマグネット錠を用ることで、第2係合部材が連動部材に係合したままシャッター板を閉鎖位置に回動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0015】
図1〜図15は本発明の第1実施例を示すものであり、図1はロック位置にあるキー孔がシャッター板で閉鎖された状態でのシリンダ錠の保護装置の正面図、図2は図1の2−2線断面図、図3はシリンダ錠の保護装置の分解斜視図、図4はメカニカルキーおよびマグネットキの一部切欠き側面図、図5は図2の5−5線断面図、図6は図2の6−6線断面図、図7はカム手段の分解斜視図、図8はシャッター板が閉鎖位置および開放位置間に在る状態での図5に対応した断面図、図9はシャッター板が閉鎖位置および開放位置間に在る状態での図6に対応した断面図、図10はシャッター板が開放位置にある状態での図5に対応した断面図、図11はシャッター板が開放位置に在る状態での図6に対応した断面図、図12はロック位置でキー孔にメカニカルキーを挿入した状態での図6に対応した断面図、図13はメカニカルキーでオフ位置に回動操作した状態での図6に対応した断面図、図14はメカニカルキーでオン位置に回動操作した状態での図6に対応した断面図、図15はオフ位置でメカニカルキーを抜き出した状態での図6に対応した断面図である。
【0016】
先ず図1および図2において、車両たとえば自動二輪車用のシリンダ錠20のシリンダボディ21は車体フレームのヘッドパイプ(図示せず)に設けられており、このシリンダボディ21の前端部はケーシング22で覆われる。該ケーシング22は、シリンダボディ21の前端部に取付けられる非磁性材料製のケース部材23と、該ケース部材23に取付けられる非磁性材料製のカバー部材24と、前記ケース部材23を前記カバー部材24との間に挟む平板状の背板25とを備え、ケース部材23、カバー部材24および背板25が、複数たとえば2つのねじ部材26,26で締結されることによりケーシング22が構成され、ケーシング22は前記シリンダボディ21に固定される。
【0017】
前記シリンダ錠20は、前記シリンダボディ21に回動可能に挿入されるインナシリンダ27を有しており、このインナシリンダ27には、その回動軸線と直交する方向に長い矩形状のキー孔28が設けられ、該キー孔28は、シリンダ錠20の前端中央部に開口される。
【0018】
図3を併せて参照して、前記ケーシング22には、前記キー孔28に対応した挿入孔29が設けられる。この挿入孔29は、ケース部材23およびカバー部材24にそれぞれ同軸に設けられた円形の透孔30,31で構成されており、カバー部材24の透孔31の外端部はメカニカルキー33(図4参照)の挿入を容易とするためにテーパ状に形成される。また背板25には、ケース部材23およびカバー部材24の透孔30,31よりも大径である開口部32が前記透孔30,31に対応して設けられる。
【0019】
前記ケーシング22内の前記ケース部材23および前記カバー部材24間には、前記挿入孔29およびキー孔28を閉鎖する閉鎖位置ならびに前記挿入孔29およびキー孔28を開放する開放位置間で、前記キー孔28の軸線に直交する平面に沿うように作動することを可能としたシャッター板34が収納される。
【0020】
このシャッター板34の閉鎖位置から開放位置までの作動は、ケーシング22に配設されるマグネット錠35が備える嵌合凹部36に、マグネットキー37を嵌合することで許容されるものであり、マグネット錠35は、前記シャッター板34とは別体に形成されるロータ38を備え、該ロータ38に前記嵌合凹部36が形成される。
【0021】
ケーシング22のケース部材23には、前記挿入孔29から離隔した位置でカバー部材24側に突出した横断面円形の支持突部39が一体に突設されており、該支持突部39に対応する部分でカバー部材24には円形の開口部40が設けられる。
【0022】
図5を併せて参照して、前記ロータ38は、前記支持突部39の先端に対向する対向壁部38aを軸方向中間部に有する略円筒状のロータ主部38bと、該ロータ主部38bから外側方に延びる連結腕部38cとを一体に有して非磁性材料により形成されており、前記連結腕部38cの先端部には、長孔状の連結孔41が設けられる。前記ロータ主部38bの内端側には前記支持突部39が嵌合されるものであり、該ロータ主部38bは、Oリング42を支持突部39の基部との間に介在させて該支持突部39で回動可能に支承される。しかもロータ主部38bの外端は前記開口部40に臨むように配置され、ロータ主部38bの外端部が前記嵌合凹部36を形成する。
【0023】
前記ロータ38の前記嵌合凹部36は、変則多角形の横断面形状を有するように形成され、また嵌合凹部36の略中心部には突部42が突設される。而して嵌合凹部36の横断面形状に対応した横断面形状を有するとともに前記突部42を嵌合せしめる凹部43を有するマグネットキー37のみを嵌合凹部36に嵌合可能であり、このマグネットキー37は、図4で示すように、前記キー孔28に挿入可能な正規のメカニカルキー33に設けられた把持部44に付設される。
【0024】
前記支持突部39の先端には、たとえば正方形の各角部に対応した複数個たとえば4個の摺動凹部47…が、ロータ38の対向壁38a側に開口するようにして設けられており、各摺動凹部47…のうち選択された3つの摺動凹部47…には、前記対向壁部38a側の磁極配置が適宜の組み合わせとなるようにして棒状の永久磁石48…がそれぞれ摺動可能に嵌合され、3つの前記摺動凹部47…の底部および各永久磁石48…間には、各永久磁石48…を支持突部39の先端から突出させる側にばね付勢するばね49…がそれぞれ介設される。
【0025】
ロータ38の対向壁部38aには、4つの係合凹部50…が設けられており、それらの係合凹部50…のうちの3つに前記各永久磁石48…の一部がそれぞれ係合している状態では、ロータ38の回動作動が阻止されることになる。
【0026】
一方、マグネットキー37には、前記ロータ38の対向壁部38aに設けられる4つの係合凹部50…に対応した位置に配置される複数個たとえば4個の収容凹部51…がロータ38の対向壁部38a側に開口するようにして設けられ、各収容凹部51…のうちの3つには棒状の永久磁石52…がそれぞれ収容される。また各収容凹部51…の開口端は、マグネットキー37に固定される非磁性材料製の閉塞板53で閉じられる。
【0027】
マグネットキー37に配設される各永久磁石52…は、支持突部39側の各永久磁石48…の前記対向壁部38a側の磁極と同一の磁極が対向壁部38a側に配置されるようにして収容凹部51…に収容されるものであり、正規のマグネットキー37が嵌合凹部36に嵌合されたときには、同一磁極の反発力によって、支持突部39側の永久磁石48…はばね49…のばね力に抗して係合凹部52…から離脱するように摺動凹部47…に押し込まれ、これによりロータ38の回動作動が許容されることになる。
【0028】
シャッター板34は、前記挿入孔29を閉鎖し得る平板状のシャッター主部34aと、該シャッター主部34aから前記ロータ38の連結腕部38c側に延びる連結腕部34bと、前記挿入孔29および前記開口部40と反対側で前記シャッター主部34aに直角に連設されるガイド部34cとを一体に有するものであり、連結腕部34bには前記ロータ38の連結腕部38cの連結孔41に挿入される連結ピン54が一体に突設される。
【0029】
図6を併せて参照して、前記ガイド部34cは、前記ケース部材23に設けられるガイド溝55に摺動可能に嵌合されるものであり、前記ガイド部34cおよび前記ガイド溝55は、マグネットキー37が嵌合凹部36に嵌合されることでマグネット錠35が解錠した状態でマグネットキー37を操作してロータ38を回動操作することにより、前記シャッター板34が、前記挿入孔29を閉鎖する閉鎖位置ならびに前記挿入孔29を開放する開放位置間で、前記キー孔28の軸線に直交する平面に沿うようにして矢印56(図5参照)で示す作動方向に作動するのをガイドすべく、前記作動方向56に沿って長く形成される。しかも前記シャッター板34のガイド部34cおよびケース部材23間には弾発部材であるコイル状の戻しばね57が縮設され、ガイド溝55に収容される戻しばね57が発揮する弾発力によって、シャッター板34は閉鎖位置側に付勢される。
【0030】
ところでシリンダ錠20のインナシリンダ27は、そのキー孔28に挿入されたメカニカルキー33の操作によって、ロック(LOCK)位置からオフ(OFF)位置を経てオン(ON)位置に回動することが可能であり、オン位置で図示しないエンジンに点火することができる。ケーシング22のカバー部材24において、挿入孔29すなわち透孔31の周囲には、図1で示すように、LOCK、OFFおよびONの各位置が表示されており、前記インナシリンダ27は、横断面矩形状であるキー孔28の横断面長手方向を前記LOCK、OFFおよびONの各位置に合わせることによって、ロック位置、オフ位置およびオン位置に位置することになる。而してロック位置は、図示しないステアリングハンドルをロック状態とするものであり、シリンダ錠20には、ロック位置およびオフ位置間でのインナシリンダ27の回動にあたってはメカニカルキー33のプッシュ操作を必要とする機構(図示せず)が設けられる。またインナシリンダ27がロック位置にあるとき、インナシリンダ27がオフ位置にあるときのいずれの状態でも、メカニカルキー33のキー孔28に対する挿脱操作が可能である。
【0031】
前記ケーシング22内には、前記戻しばね57と、開放位置にある前記シャッター板34に係合して該シャッター板34を開放位置に保持し得る第1および第2係合部材58,59と、第1および第2係合部材58,59を作動せしめるカム手段60とが、前記キー孔28の軸線と直交する平面に沿って作動するようにして収容される。
【0032】
前記カム手段60は、ケース部材23で回動可能に保持される円板状のカムプレート61に、該カムプレート61の半径方向に摺動することを可能としてカムプレート61に嵌合されるプッシュプレート62とで構成され、前記カムプレート61はシリンダ錠20のインナシリンダ27に相対回動不能に連結される。
【0033】
前記ケース部材23のシリンダ錠20側の面には、前記挿入孔29と同軸である円形の支持凹部63が設けられており、前記カムプレート61は該支持凹部63に回動可能に嵌合される。一方、ケース部材23に締結される前記背板25には、前記支持凹部63に嵌合された前記カムプレート61の一部を臨ませる円形の開口部32が前記挿入孔29と同軸に設けられており、前記背板25は、前記カムプレート61の外周部を前記ケース部材23との間に挟むようにして前記ケース部材23に締結され、カムプレート61に一体に設けられて前記開口部32を貫通する複数たとえば2つの連結軸部61a,61bがシリンダ錠20のインナシリンダ27に嵌合することにより、カムプレート61がインナシリンダ27に相対回動不能に連結される。
【0034】
図7を併せて参照して、前記カムプレート61の中央部には、前記シリンダ錠20のキー孔28に対応して横断面矩形状に形成される透孔65が、前記挿入孔29および前記キー孔28間に介在するようにして設けられる。また前記カムプレート61には、内端を前記透孔65に開口させるとともに外端をカムプレート61の外周に開口させた嵌合孔66が、カムプレート61の半径方向に延びるようにして設けられており、前記プッシュプレート62は該嵌合孔66に摺動可能に嵌合される。
【0035】
前記プッシュプレート62の内端部は前記透孔65を塞ぎ得るように形成され、前記プッシュプレート62の外端は前記カムプレート61の外周と同一曲率の円弧状に形成される。而して前記プッシュプレート62の内端部が前記透孔65を塞ぐ位置にあるときにはプッシュプレート62の外端は前記カムプレート61の外周よりも内方位置に在り、前記カムプレート62の内端部が前記透孔65を開放する位置にあるときには該プッシュプレート62の外端はカムプレート61の外周に面一に連なる位置にある。
【0036】
しかも前記カムプレート61の前記挿入孔29側に臨む面において前記透孔65に関して前記プッシュプレート62と反対側には、挿入孔29に挿入されたメカニカルキー33の先端部を透孔65側に案内する円弧状のガイド面67が設けられ、前記プッシュプレート62の内端部の幅方向中央部には、前記ガイド面67で案内された前記メカニカルキー33の先端部を当接させる受圧面68が設けられる。この受圧面68は、前記キー孔28に挿入すべく挿入孔29に押し込んだ前記メカニカルキー33の先端部が前記受圧面68に当接することにより、前記透孔65を開放すべくカムプレート61の半径方向外方に向けての力が前記プッシュプレート62に作用するように形成されており、挿入孔29に挿入されて前記受圧面68に当接したメカニカルキー33は、プッシュプレート62をカムプレート61の半径方向外方に押し退けるようにして前記透孔65からキー孔28に挿入されることになる。
【0037】
また前記カムプレート61の外周には、第1〜第4凹部71,72,73,74が周方向に間隔をあけて設けられる。第1および第2凹部71,72は同一形状のものであり、前記カムプレート61の軸方向に沿う厚さのうち背板25側の略半部に形成される。また第3および第4凹部73,74は同一形状のものであり、前記カムプレート61の軸方向厚みの全体にわたって形成される。しかも第1および第2凹部71,72間の間隔と、第3および第4凹部73,74間の間隔とは同一であり、第3および第4凹部73,74は前記カムプレート61の周方向に沿う前記嵌合孔66の両端部を横切るように配置される。
【0038】
第1係合部材58は、ケース部材23に設けられた支持部75に嵌合して揺動可能に支持される略円形の枢支部58aと、該枢支部58aからカムプレート61側に延びる嵌合部58bと、前記枢支部58aからシャッター板34のガイド部34c側に延びる係合部58cとを一体に有して、ケーシング22のケース部材23および背板25間に配置される。
【0039】
前記嵌合部58bの先端部はカムプレート61の外周に当接可能であり、前記ケース部材23には、前記カムプレート61の外周の一部を第1係合部材58側に臨ませるための切欠き76が前記支持凹部63の側壁の一部を切欠くようにして設けられる。而してカムプレート61がシリンダ錠20のインナシリンダ27とともにロック位置にあるときには、前記嵌合部58bの先端部はカムプレート61の第1凹部71に嵌合可能であり、またカムプレート61が前記インナシリンダ27とともにオフ位置にあるときには、前記嵌合部58bの先端部はカムプレート61の第2凹部72に嵌合可能である。しかも第1および第2凹部71,72がカムプレート61の軸方向に沿う厚さのうち略半部に形成されるものであるので、前記嵌合部58bもカムプレート61の軸方向に沿う厚さのうち略半部の厚さを有するように形成される。
【0040】
またケース部材23には、前記ガイド部34cの一部を第1係合部材58側に臨ませる窓77が、前記ガイド溝55の側壁の一部を切欠くようにして設けられており、前記窓77から突出した前記係合部58cの先端部を、シャッター板34が開放位置にあるときに閉鎖位置側から係合させる第1係止段部78が前記ガイド部34cに設けられる。
【0041】
第1係合部材58およびケース部材23間には、コイル状の第1ばね79が縮設されており、第1係合部材58は第1ばね79のばね力によって、嵌合部58bをカムプレート61の外周に当接させるとともに係合部58cを前記ガイド部34cに当接させる側に付勢される。
【0042】
しかも第1係合部材58は、その嵌合部58bがカムプレート61の第1凹部71もしくは第2凹部72に嵌合した状態で前記ガイド部34cの第1係止段部78に係合し得るものであり、嵌合部58bが第1および第2凹部71,72以外の個所でカムプレート61の外周に当接する状態では、係合部58cの先端部は窓77に臨む位置にあり、第1係止段部78に係合部58cの先端部が係合することはない。
【0043】
また第1および第2凹部71,72は、それら凹部71,72に前記嵌合部58bが嵌合している状態で、カムプレート61がインナシリンダ27とともにロック位置からオン位置側に向けて矢印86で示す方向に回動したときには、第1係合部材58を第1ばね77のばね力に抗して図6の時計方向に回動して嵌合部58bをカムプレート61の外周に乗り上げさせるとともに係合部58cの先端部をガイド溝55から窓77側に後退させるように形成されている。
【0044】
ところでシャッター板34が図5および図6で示すように閉鎖位置にある状態では、第1係合部材58の嵌合部58bは第1凹部71に嵌合し、係合部58cは、ガイド部34cの側面の1個所の当接個所80(図6参照)に当接した状態にある。而して前記ガイド部34cの第1係合部材58側の側面のうち前記当接個所80から第1係止段部78までの間は、シャッター板34すなわちガイド部34cが閉鎖位置から開放位置に移動すべく図6の上方に移動する際には、係合部58cに当接することで第1係合部材58を図6の時計方向に回動させて嵌合部58bを第1凹部71から離脱させるように形成される。
【0045】
第2係合部材59は、ケース部材23に設けられた支持部81に嵌合して揺動可能に支持される略円形の枢支部59aと、該枢支部59aからカムプレート61側に延びる嵌合部59bと、前記枢支部59aからガイド溝55側に延びる係合部59cとを一体に有して、ケーシング22のケース部材23および背板25間に配置される。
【0046】
前記嵌合部59bの先端部はカムプレート61の外周に当接可能であり、前記ケース部材23には、前記カムプレート61の外周の一部を第2係合部材59側に臨ませるための切欠き82が前記支持凹部63の側壁の一部を切欠くようにして設けられる。而してカムプレート61がシリンダ錠20のインナシリンダ27とともにロック位置にあるときには、前記嵌合部59bの先端部はカムプレート61の第3凹部73に嵌合可能であり、またカムプレート61が前記インナシリンダ27とともにオフ位置にあるときには、前記嵌合部59bの先端部はカムプレート61の第4凹部74に嵌合可能である。而して第3および第4凹部73,74は、前記カムプレート61の軸方向厚みの全体にわたって形成されるものであり、前記嵌合部59bは、第3凹部73もしくは第4凹部74に嵌合すべくカムプレート61の軸方向厚み以上の厚みを有するように形成され、嵌合部59bは第1および第2凹部71,72に嵌合することはない。
【0047】
またケース部材23には、開放位置に移動したシャッター板34のガイド部34cの一部を第2係合部材59側に臨ませる窓83が、前記ガイド溝55の側壁の一部を切欠くようにして設けられており、前記窓83から突出した前記係合部59cの先端部を、シャッター板34が開放位置にあるときに閉鎖位置側から係合させる第2係止段部84が前記ガイド部34cに設けられる。
【0048】
第2係合部材59およびケース部材23間には、板ばねである第2ばね85が設けられており、第2係合部材59は第2ばね85のばね力によって、嵌合部59bをカムプレート61の外周に当接させる側に付勢される。
【0049】
しかも第2係合部材59の嵌合部59bの先端部がカムプレート61の第3凹部73もしくは第4凹部74に嵌合した状態では、前記嵌合部59bの先端部は、カムプレート61の透孔65を閉鎖した状態にあるプッシュプレート62の外端部に当接するものであり、前記透孔65にメカニカルキー33が挿入されることでプッシュプレート62がカムプレート61の半径方向外方に押し出されたとき、第2係合部材59は第2ばね85のばね力に抗して図6の反時計方向に回動し、それにより係合部59cの先端部がガイド部34cの第2係止段部84に係合するように窓83からガイド溝55内に突入することになる。
【0050】
ここでシリンダ錠20のインナシリンダ27がロック位置にあってシャッター板34が閉鎖位置にある状態から、マグネット錠35を解錠してシャッター板34を開放位置に作動せしめ、さらにメカニカルキー33をキー孔28に差し込んで回動した後、メカニカルキー33を引き抜くまでの間の各部品の作動状態を説明すると、マグネット錠35を解錠した後にシャッター板34を閉鎖位置から開放位置に作動せしめる途中の状態では、図8および図9で示すように、シャッター板34におけるガイド部34cの移動によって第1係合部材58はその嵌合部58bをカムプレート61の第1凹部71から離脱せしめるように、第1ばね79のばね力に抗して回動する。
【0051】
シャッター板34が開放位置に達すると、図10および図11で示すように、挿入孔29が開放されるとともに、第1ばね79で回動付勢されている第1係合部材58の係合部58cがシャッター板34におけるガイド部34cの第1係止段部78に閉鎖位置側から係合し、戻しばね57のばね力が作用しているにもかかわらず、シャッター板34が開放位置に保持される。
【0052】
次いでメカニカルキー33を挿入孔29に挿入し、図12で示すように、カム手段60における透孔65にメカニカルキー33を差し込むと、カム手段60におけるプッシュプレート62がカムプレート61の半径方向外方に押し出され、第3凹部73に嵌合部59bを嵌合せしめていた第2係合部材59が図12の反時計方向に回動し、嵌合部59bが第3凹部73から離脱するとともに係合部59cがガイド部34cの第2係止段部84に閉鎖位置側から係合し、第2係合部材59によってもシャッター板34が開放位置に保持される。
【0053】
さらにキー孔28に挿入したメカニカルキー33をプッシュしつつオフ位置まで回動操作すると、インナシリンダ27とともにオフ位置まで回動するカムプレート61によって第1係合部材58が図12の時計方向に回動し、図13で示すように、嵌合部58bがカムプレート61の外周に乗り上げるとともに第1係止段部78に当接、係合していた係合部58cの先端部が戻しばね57のばね力に抗してガイド部34cを押し上げて窓77側に退避する。而して係合部58cの先端部が窓77側に退避して第1係止段部77との係合を解除することで、ガイド部34cは第2係止段部84に第2係合部材59の係合部59cを係合させるまで戻ることになり、この状態では、第2係合部材59によってシャッター板34が開放位置に保持されることになる。
【0054】
キー孔28に挿入したメカニカルキー33によってインナシリンダ27とともにカムプレート61をオン位置まで回動すると、図14で示すように、第1係合部材58の嵌合部58bは第2凹部72および第3凹部73間でカムプレート61の外周に当接した状態となり、また第2係合部材59は、その係合部59cを第2係止段部84に係合したままで嵌合部59bを、第4凹部74および第1凹部71間でカムプレート61の外周に当接させた状態となる。
【0055】
キー孔28に挿入したメカニカルキー33によってインナシリンダ27とともにカムプレート61をオフ位置まで戻して、メカニカルキー33を抜き出すと、図15で示すように、第2係合部材59の嵌合部59bに対応する位置に第4凹部74が対応することになり、第2係合部材59は第2ばね85のばね力によってプッシュプレート62をカムプレート61の半径方向内方に押圧しながら第4凹部74に嵌合することになり、第2係合部材59の係合部59cの第2係止段部84との係合が解除され、シャッター板34は戻しばね57のばね力によって閉鎖位置まで自動的に戻ることになる。この際、第1係合部材58は、その嵌合部58bを第2凹部72に嵌合せしめる位置にあり、シャッター板34のガイド部34cが閉鎖位置に戻るのに応じて、第1ばね79のばね力によって嵌合部58bを第2凹部72に嵌合せしめ、係合部58cを前記ガイド部34cの前記当接個所80に当接させるように回動することになる。
【0056】
またロック位置までインナシリンダ27およびカムプレート61を戻して、メカニカルキー33を抜き出したときには、図6で示した状態に戻るものであり、第2係合部材59は第3凹部73に嵌合して第2係止段部84との係合を解除し、それによってシャッター板34が自動的に閉鎖位置に戻り、第1係合部材58は第1凹部71に嵌合する状態となる。
【0057】
このようにしてカム手段60は、前記シャッター板34の閉鎖位置から開放位置への作動に応じて第1係合部材58をシャッター板34に閉鎖位置側から係合させ、キー孔28へのメカニカルキー33の挿入に応じて第2係合部材59をシャッター板34に閉鎖位置側から係合させ、キー孔28に挿入されたメカニカルキー33によるオン位置への回動操作に応じて第1係合部材58のシャッター板34への係合を解除させ、オフ位置もしくはロック位置でメカニカルキー33がキー孔28から引き抜かれるのに応じて第2係合部材59のシャッター板34への係合を解除させることになる。
【0058】
次にこの第1実施例の作用について説明すると、マグネット錠35を解錠してシャッター板34を閉鎖位置から開放位置に作動せしめると、第1係合部材58がシャッター板34に閉鎖位置側から係合し、キー孔28にメカニカルキー33を挿入することで第2係合部材59がシャッター板34に閉鎖位置側から係合し、メカニカルキー33によるオン位置への回動操作に応じて第1係合部材58のシャッター板34への係合が解除されるものの第2係合部材59がシャッター板34に係合したままであるので、メカニカルキー33がキー孔28に挿入されている限り、シャッター板34は開放位置に保持される。またメカニカルキー33をキー孔28から引き抜くと、第2係合部材59のシャッター板34への係合が解除されるので、シャッター板34は戻しばね57の弾発力によって開放位置から閉鎖位置に自動的に復帰することになる。すなわちキー孔28に挿入したメカニカルキー33を引き抜くのに応じてシャッター板34が閉鎖位置に自動的に復帰するので、操作性を高め、閉め忘れがないようにすることができる。
【0059】
しかも第1および第2係合部材58,59と、第1および第2係合部材58,59を作動せしめるカム手段60と、シャッター板34を閉鎖位置側に付勢する戻しばね57とが、キー孔28の軸線に直交する平面に沿って作動するようにしてケーシング22に収容されるので、キー孔28の軸線に沿う方向でケーシング22をコンパクトに構成することができ、それに応じてメカニカルキー33の長さも短くすることができる。
【0060】
図16〜図25は本発明の第2実施例を示すものであり、図16はロック位置にあるキー孔がシャッター板で閉鎖された状態でのシリンダ錠の保護装置の正面図、図17は図16の17−17線断面図、図18はシリンダ錠の保護装置の分解斜視図、図19はシャッター板が閉鎖位置に在る状態での図17の19−19線断面図、図20はシャッター板が開放位置にある状態での図17の20−20線断面図、図21はシャッター板が開放位置にあるとともにキー孔がロック位置にある状態での図17の21−21線断面図、図22はロック位置にあるキー孔にメカニカルキーを挿入した状態での図21に対応した断面図、図23はメカニカルキーでオフ位置まで回動操作したときの図21に対応した断面図、図24はメカニカルキーでオン位置まで回動操作したときの図21に対応した断面図、図25はオフ位置でメカニカルキーを抜き出した後にマグネットキーでシャッター板を閉鎖位置まで回動操作した状態の図21に対応した断面図である。
【0061】
なお第1実施例に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0062】
先ず図16および図17において、車両たとえば自動二輪車用のシリンダ錠20におけるシリンダボディ21の前端部はケーシング90で覆われる。該ケーシング90は、シリンダボディ21の前端部に取付けられる非磁性材料製のケース部材91と、該ケース部材91に取付けられる非磁性材料製のカバー部材92と、前記ケース部材91を前記カバー部材92との間に挟む平板状の背板93とを備え、ケース部材91、カバー部材92および背板93が、複数たとえば2つのねじ部材94,94で締結されることによりケーシング90が構成され、ケーシング90は前記シリンダボディ21に固定される。
【0063】
図18を併せて参照して、前記ケーシング90には、シリンダ錠20のインナシリンダ27が有するキー孔28に対応した挿入孔95が設けられる。この挿入孔95は、ケース部材91およびカバー部材92にそれぞれ同軸に設けられた円形の透孔96,97で構成されており、カバー部材92の透孔97の外端部はメカニカルキー33(第1実施例参照)の挿入を容易とするためにテーパ状に形成される。また背板93には、ケース部材91およびカバー部材92の透孔96,97よりも大径である開口部98が前記透孔96,97に対応して設けられる。
【0064】
前記ケーシング90内の前記ケース部材91および前記カバー部材92間には、前記挿入孔95およびキー孔28を閉鎖する閉鎖位置ならびに前記挿入孔95およびキー孔28を開放する開放位置間で、前記キー孔28の軸線に直交する平面に沿うように作動することを可能としたシャッター板99が収納される。
【0065】
このシャッター板99の閉鎖位置から開放位置までの作動は、ケーシング90に配設されるマグネット錠35が備える嵌合凹部36に、マグネットキー37を嵌合することで許容されるものであり、マグネット錠35は、前記シャッター板99とは別体に形成されるロータ38を備え、該ロータ38に前記嵌合凹部36が形成される。
【0066】
ケーシング90のケース部材91には、前記挿入孔95から離隔した位置でカバー部材92側に突出した横断面円形の支持突部39が一体に突設されており、該支持突部39に対応する部分でカバー部材92には円形の開口部100が設けられる。而して非磁性材料から成る前記ロータ38は、第1実施例と同様に構成されており、ロータ38のロータ主部38bがOリング42を支持突部39の基部との間に介在させて該支持突部39で回動可能に支承され、ロータ主部38bの外端は前記開口部100に臨むように配置されている。
【0067】
前記支持突部39の先端に設けられた複数個たとえば4個の摺動凹部47…のうち選択された3つの摺動凹部47…には、ロータ38における対向壁部38a側の磁極配置が適宜の組み合わせとなるようにして棒状の永久磁石48…がそれぞれ摺動可能に嵌合され、各永久磁石48…は、ばね49…で支持突部39の先端から突出する側にばね付勢される。而してロータ38の対向壁部38aに設けられた4つの係合凹部50…のうちの3つに前記各永久磁石48…の一部がそれぞれ係合している状態では、ロータ38の回動作動が阻止されることになる。
【0068】
マグネットキー37はメカニカルキー33に設けられた把持部44に付設されており、前記ロータ38の対向壁部38a側に開口するようにして前記把持部44に設けられる4個の収容凹部51…のうちの3つに、支持突部39側の各永久磁石48…の前記対向壁部38a側の磁極と同一の磁極が対向壁部38a側に配置されるようにして棒状の永久磁石52…がそれぞれ収容されて成り、各収容凹部51…の開口端は、マグネットキー37に固定される非磁性材料製の閉塞板53で閉じられる。
【0069】
而して正規のマグネットキー37が嵌合凹部36に嵌合されたときには、同一磁極の反発力によって、支持突部39側の永久磁石48…はばね49…のばね力に抗して係合凹部52…から離脱するように摺動凹部47…に押し込まれ、これによりロータ38の回動作動が許容されることになる。
【0070】
しかも図18で示すように、ケース部材91およびロータ38間には、ロータ38側の周方向に間隔をあけた2個所に設けられるクリック用凹部(図示せず)に択一的に弾発係合するクリックボール87と、該クリックボール87を前記ロータ38側に付勢するばね力を発揮してボール87および前記ケース部材91間に縮設されるクリックばね88とを有するクリック機構89が設けられており、マグネット錠35の解錠時の前記ロータ38の回動操作時にクリック機構89によってクリック感を得ることができる。
【0071】
図19および図20を併せて参照して、シャッター板99は、前記挿入孔95を閉鎖し得る平板状のシャッター主部99aと、該シャッター主部99aから前記ロータ38の連結腕部38c側に延びる連結腕部99bと、該連結腕部99bの前記連結腕部38c側端部に連設されて前記挿入孔95および前記開口部100と反対側に突出する連結突部99cとを一体に有するものであり、連結腕部99bには前記ロータ38の連結腕部38cの連結孔41に挿入される連結ピン101が一体に突設される。
【0072】
前記シャッター板99は、図19で示すように前記挿入孔95を閉鎖する閉鎖位置と、図20で示すように前記挿入孔95を開放する開放位置との間で、前記キー孔28の軸線に直交する平面に沿うようにして矢印103で示す作動方向に作動可能であり、その作動方向103に沿う方向に長く延びるガイド溝104が前記ケース部材91に設けられる。このガイド溝104には、前記シャッター板99に連動して作動する連動部材105が前記作動方向103にスライドすることを可能として嵌合される。
【0073】
前記連動部材105には、前記シャッター板99の連結突部99cに開放位置側から当接、係合する係合突部105aが突設されるとともに、前記ガイド溝104内に収容される弾発手段としての戻しばね106をケーシング90におけるケース部材91との間に介装せしめるばね受け部105bが突設されており、連動部材105は、戻しばね106の弾発付勢力によってシャッター板99を閉鎖位置側に付勢するようにして該シャッター板99に開放位置側から当接、係合されることになる。
【0074】
ところでケーシング90のカバー部材92において、挿入孔95すなわち透孔97の周囲には、図16で示すように、LOCK、OFFおよびONの各位置が表示されており、シリンダ錠20のインナシリンダ27は、横断面矩形状であるキー孔28の横断面長手方向を前記LOCK、OFFおよびONの各位置に合わせることによって、ロック位置、オフ位置およびオン位置に位置することになる。而してロック位置は、図示しないステアリングハンドルをロック状態とするものであり、シリンダ錠20には、ロック位置およびオフ位置間でのインナシリンダ27の回動にあたってはメカニカルキー33のプッシュ操作を必要とする機構(図示せず)が設けられる。またインナシリンダ27がロック位置にあるとき、インナシリンダ27がオフ位置にあるときのいずれの状態でも、メカニカルキー33のキー孔28に対する挿脱操作が可能である。
【0075】
前記ケーシング90内には、前記戻しばね106と、前記シャッター板99が開放位置にある状態で前記連動部材105に係合してシャッター板99を開放位置に保持し得る第1および第2係合部材108,109と、第1および第2係合部材108,109を作動せしめるカム手段110とが、前記キー孔28の軸線と直交する平面に沿って作動するようにして収容される。
【0076】
前記カム手段110は、ケース部材91で回動可能に保持される円板状のカムプレート111と、該カムプレート111の半径方向に摺動することを可能としてカムプレート111に嵌合されるプッシュプレート112とを備え、前記カムプレート111はシリンダ錠20のインナシリンダ27に相対回動不能に連結される。
【0077】
前記ケース部材91のシリンダ錠20側の面には、前記挿入孔95と同軸である円形の支持凹部113(図17参照)が設けられており、前記カムプレート111は該支持凹部113に回動可能に嵌合される。一方、ケース部材91に締結される前記背板93には、前記支持凹部113に嵌合された前記カムプレート111の一部を臨ませる円形の開口部98が前記挿入孔95と同軸に設けられており、前記背板93は、前記カムプレート111の外周部を前記ケース部材91との間に挟むようにして前記ケース部材91に締結され、カムプレート111に一体に設けられて前記開口部98を貫通する複数たとえば2つの連結軸部111a,111bがシリンダ錠20のインナシリンダ27に嵌合することにより、カムプレート111がインナシリンダ27に相対回動不能に連結される。
【0078】
図21を併せて参照して、前記カムプレート111の中央部には、前記シリンダ錠20のキー孔28に対応して横断面矩形状に形成される透孔114が、前記挿入孔95および前記キー孔28間に介在するようにして設けられる。また前記カムプレート111の前記ケース部材91側に臨む面には、内端を前記透孔114に開口させるとともに外端をカムプレート111の外周に開口させた嵌合凹部115が、カムプレート111の半径方向に延びるようにして設けられており、前記プッシュプレート112は該嵌合凹部115に摺動可能に嵌合される。
【0079】
前記プッシュプレート112の内端部は前記透孔114を塞ぎ得るように形成され、前記プッシュプレート112の外端は前記カムプレート111の外周と同一曲率の円弧状に形成される。而して前記プッシュプレート112の内端部が前記透孔114を塞ぐ位置にあるときにはプッシュプレート112の外端は前記カムプレート111の外周よりも内方位置に在り、前記カムプレート112の内端部が前記透孔114を開放する位置にあるときには該プッシュプレート112の外端はカムプレート111の外周に面一に連なる位置にある。しかもプッシュプレート112の両側およびカムプレート111間には、前記透孔114を塞ぐ側に前記プッシュプレート112を付勢するばね124,124が設けられる。
【0080】
前記カムプレート111の前記挿入孔95側に臨む面において前記透孔114に関して前記プッシュプレート112と反対側には、挿入孔95に挿入されたメカニカルキー33の先端部を透孔114側に案内する円弧状のガイド面116が設けられ、前記プッシュプレート112の内端部の幅方向中央部には、前記ガイド面116で案内された前記メカニカルキー33の先端部を当接させる受圧面117が設けられる。この受圧面117は、前記キー孔28に挿入すべく挿入孔95に押し込んだ前記メカニカルキー33の先端部が前記受圧面117に当接することにより、前記ばね124…のばね力に抗して前記透孔114を開放すべくカムプレート111の半径方向外方に向けての力が前記プッシュプレート112に作用するように形成されており、挿入孔95に挿入されて前記受圧面117に当接したメカニカルキー33は、プッシュプレート112をカムプレート111の半径方向外方に押し退けるようにして前記透孔114からキー孔28に挿入されることになる。
【0081】
また前記カムプレート111の外周には、一対の凹部118,119が周方向に間隔をあけて設けられ,一方の凹部118は、前記カムプレート111の軸方向に沿う厚さのうち背板93側の略半部に形成される。また他方の凹部119は、前記プッシュプレート112の外端を臨ませ得る部分でカムプレート111の外周に設けられるものであり、カムプレート111の軸方向厚みの全体にわたって形成される。
【0082】
第1係合部材108は、ケース部材91側に嵌合して揺動可能に支持される略円形の枢支部108aと、該枢支部108aからカムプレート111側に延びる嵌合部108bと、前記枢支部108aから連動部材105側に延びる係合部108cとを一体に有して、ケーシング90のケース部材91および背板93間に配置される。
【0083】
前記嵌合部108bの先端部はカムプレート111の外周に当接可能であり、前記ケース部材91には、前記カムプレート111の外周の一部を第1係合部材108側に臨ませるための切欠き120が前記支持凹部113の側壁の一部を切欠くようにして設けられる。而してカムプレート111がシリンダ錠20のインナシリンダ27とともにロック位置にあるときには、前記嵌合部108bの先端部はカムプレート111の凹部118に嵌合可能であり、またカムプレート111が前記インナシリンダ27とともにオフ位置およびオン位置にあるときには、前記嵌合部108bの先端部はカムプレート111の外周に摺接している。しかも凹部118がカムプレート111の軸方向に沿う厚さのうち略半部に形成されるものであるので、前記嵌合部108bもカムプレート111の軸方向に沿う厚さのうち略半部の厚さを有するように形成される。
【0084】
またケース部材91には、前記連動部材105の一部を第1係合部材108側に臨ませる窓121が、前記ガイド溝104の側壁の一部を切欠くようにして設けられており、前記窓121から突出した前記係合部108cの先端部を、シャッター板99が開放位置にあるときに閉鎖位置側から係合させる段差状の第1係止部122が前記連動部材105に設けられる。
【0085】
第1係合部材108およびケース部材91間には、コイル状のねじりばね123が縮設されており、第1係合部材108はねじりばね123のばね力によって、嵌合部108bをカムプレート111の外周に当接させるとともに係合部108cを第1係止部122に当接させる側に付勢される。
【0086】
しかも第1係合部材108は、その嵌合部108bがカムプレート111の凹部118に嵌合した状態で前記連動部材105の第1係止部122に係合し得るものであり、嵌合部108bが凹部111以外の個所でカムプレート111の外周に当接する状態では、係合部108cの先端部は窓121に臨む位置にあり、第1係止部122に係合部108cの先端部が係合することはない。
【0087】
また前記凹部118は、該凹部118に前記嵌合部108bが嵌合している状態で、カムプレート111がインナシリンダ27とともにロック位置からオン位置側に向けて回動したときには、第1係合部材108をねじりばね113のばね力に抗して図21の時計方向に回動して嵌合部108bをカムプレート111の外周に乗り上げさせるとともに係合部108cの先端部をガイド溝104から窓121側に後退させるように形成されている。
【0088】
ところでシャッター板99が図19で示すように閉鎖位置にある状態では、第1係合部材108の嵌合部108bは凹部118に嵌合し、係合部108cは、連動部材105の側面に近接もしくは当接した状態にある。而して前記連動部材105における係合突部105aの第1係合部材108側の側面のうち前記係合部108cが近接もしくは当接した個所から第1係止部122までの間には、シャッター板99すなわち連動部材105が閉鎖位置から開放位置に移動すべく図19の上方に移動する際には、係合部108cに当接して第1係合部材108を図19の時計方向に一旦回動させて嵌合部108bを凹部118から一時的に離脱させるようにするための傾斜面125が形成され、係合部108cが前記傾斜面125を通過した後に、第1係合部材108は嵌合部108bを凹部118に嵌合するように回動し、その状態で係合部108cが第1係止部122に当接、係合することになる。
【0089】
第2係合部材109は、ケース部材91側に嵌合して揺動可能に支持される略円形の枢支部109aと、該枢支部109aからカムプレート111側に延びる嵌合部109bと、前記枢支部109aからガイド溝104側に延びる係合部109cと、前記枢支部109aから前記嵌合部109bと反対側に延びるばね受け部109dとを一体に有して、ケーシング90のケース部材91および背板93間に配置される。
【0090】
前記嵌合部109bの先端部はカムプレート111の外周に当接可能であり、前記ケース部材91には、前記カムプレート111の外周の一部を第2係合部材109側に臨ませるための切欠き126が前記支持凹部63の側壁の一部を切欠くようにして設けられる。而してカムプレート111がシリンダ錠20のインナシリンダ27とともにロック位置にあるときには、前記嵌合部109bの先端部はカムプレート111の前記凹部119に嵌合可能である。しかも前記凹部119は、前記カムプレート111の軸方向厚みの全体にわたって形成されるものであり、前記嵌合部109bは、凹部119に嵌合すべくカムプレート111の軸方向厚み以上の厚みを有するように形成され、嵌合部109bは前記凹部118に嵌合することはない。
【0091】
またケース部材91には、シャッター板99とともにスライド作動する前記連動部材105の一部を第2係合部材109側に臨ませる窓127が、前記ガイド溝104の側壁の一部を切欠くようにして設けられており、前記窓127から突出した前記係合部109cの先端部を、シャッター板99が開放位置にあるときに前記連動部材105に閉鎖位置側から係合させる段差状の第2係止部128が前記連動部材105に設けられる。
【0092】
第2係合部材109およびケース部材91間には、コイルばね129が設けられており、第2係合部材109はコイルばね129のばね力によって、嵌合部109bをカムプレート111の外周に当接させる側に付勢される。
【0093】
しかも第2係合部材109における嵌合部109bの先端部がカムプレート111の凹部119に嵌合した状態では、前記嵌合部109bの先端部は、カムプレート111の透孔114を閉鎖した状態にあるプッシュプレート112の外端部に当接するものであり、前記透孔114にメカニカルキー33が挿入されることでプッシュプレート112がカムプレート111の半径方向外方に押し出されたとき、第2係合部材109は、図22で示すように、コイルばね129のばね力に抗して図22の時計方向に回動し、それにより係合部109cの先端部が連動部材105の第2係止部128に係合するように窓127からガイド溝104内に突入することになる。
【0094】
ここでシリンダ錠20のインナシリンダ27がロック位置にあってシャッター板99が閉鎖位置にある状態から、マグネット錠35を解錠してシャッター板99を開放位置に作動せしめ、さらにメカニカルキー33をキー孔28に差し込んで回動した後、メカニカルキー33を引き抜くまでの間の各部品の作動状態を説明すると、マグネット錠35を解錠した後にシャッター板99を閉鎖位置から開放位置に作動せしめる途中の状態では、図20で示すように、シャッター板99とともに連動部材105がスライドすることによって第1係合部材108はその嵌合部108bをカムプレート111の凹部118から離脱せしめるように、ねじりばね123のばね力に抗して回動する。
【0095】
シャッター板99が開放位置に達すると、図20で示すように、挿入孔95が開放されるとともに、図21で示すように、ねじりばね123で回動付勢されている第1係合部材108の係合部108cが連動部材105の第1係止部122に閉鎖位置側から係合し、戻しばね106のばね力が作用しているにもかかわらず、シャッター板99が開放位置に保持される。しかもケース部材91には、板ばね130の一端部を嵌合、保持する嵌合突部131が突設されており、この板ばね130の他端部は、開放位置にあるシャッター板99のシャッター主部99aの前記連動部材105と反対側の側面に当接し、該シャッター板を連動部材105側に押しつけることでシャッター板99の開放位置でのがたつきを防止する。
【0096】
次いでメカニカルキー33を挿入孔95に挿入し、図22で示すように、カム手段110における透孔114にメカニカルキー33を差し込むと、カム手段110におけるプッシュプレート112がカムプレート111の半径方向外方に押し出され、凹部119に嵌合部109bを嵌合せしめていた第2係合部材109が図22の時計方向に回動し、嵌合部109bが凹部119から離脱するとともに係合部109cが連動部材105の第2係止部128に閉鎖位置側から係合し、第2係合部材109によってもシャッター板99が開放位置に保持される。
【0097】
さらに図23で示すように、キー孔28に挿入したメカニカルキー33をプッシュしつつオフ位置まで回動操作すると、インナシリンダ27とともにオフ位置まで回動するカムプレート111によって第1係合部材108が図23の時計方向に回動し、図23で示すように、嵌合部108bがカムプレート111の外周に乗り上げるとともに第1係止部122に当接、係合していた係合部108cの先端部が戻しばね106のばね力に抗して連動部材105を押し上げて窓121側に退避する。而して係合部108cの先端部が窓121側に退避して第1係止部122との係合を解除することで、連動部材105は第2係止部128に第2係合部材109の係合部109cを係合させるまで戻ることになり、この状態では、第2係合部材109によってシャッター板99が開放位置に保持されることになる。
【0098】
キー孔28に挿入したメカニカルキー33によってインナシリンダ27とともにカムプレート111をオン位置まで回動すると、図24で示すように、第1係合部材108の嵌合部108bはカムプレート111の外周に当接した状態となり、また第2係合部材109は、その係合部109cを第2係止部128に係合したままで嵌合部109bをカムプレート111の外周に当接させた状態となる。
【0099】
キー孔28に挿入したメカニカルキー33によってインナシリンダ27とともにカムプレート111をロック位置まで戻して、メカニカルキー33を抜き出すと、図19で示した状態に戻るものであり、第2係合部材109の嵌合部109bに対応する位置に凹部119が対応することになり、第2係合部材109はコイルばね129のばね力によってプッシュプレート112をカムプレート111の半径方向内方に押圧しながら凹部119に嵌合することになり、第2係合部材109の係合部109cの第2係止部128との係合が解除され、シャッター板99は戻しばね106のばね力によって閉鎖位置まで自動的に戻ることになる。この際、第1係合部材108は、その嵌合部108bを凹部118に嵌合せしめる位置にあり、シャッター板99および連動部材105が閉鎖位置に戻るのに応じて、ねじりばね123のばね力によって嵌合部108bを凹部118に嵌合せしめ、係合部108cを前記連動部材105の側面に当接させるように回動することになる。
【0100】
このようにしてカム手段110は、前記シャッター板99の閉鎖位置から開放位置への作動に応じて第1係合部材108を連動部材105に閉鎖位置側から係合させ、キー孔28へのメカニカルキー33の挿入に応じて第2係合部材109を連動部材105に閉鎖位置側から係合させ、キー孔28に挿入されたメカニカルキー33によるオン位置への回動操作に応じて第1係合部材108の連動部材105への係合を解除させ、ロック位置でメカニカルキー33がキー孔28から引き抜かれるのに応じて第2係合部材109の連動部材105への係合を解除させることになる。
【0101】
而してキー孔28に挿入したメカニカルキー33によってインナシリンダ27とともにカムプレート111をオフ位置まで戻して、メカニカルキー33を抜き出したときには第2係合部材109が連動部材105に係合していることでシャッター板99が閉鎖位置に自動的に戻ることはなく、シャッター板99の開放位置が維持されるのであるが、この際、マグネット錠36のマグネットキー37でシャッター板99を閉鎖位置に回動すると、戻しばね106で付勢された連動部材105は、シャッター板99を閉鎖位置側に付勢するようにしてシャッター板99に開放位置側から当接、係合されるものであるので、図25で示すように、シャッター板99は第2係合部材109が係合している連動部材105を置き去りにしたままで、閉鎖位置に戻ることになる。
【0102】
次にこの第2実施例の作用について説明すると、マグネット錠35を解錠してシャッター板99を閉鎖位置から開放位置に作動せしめると、シャッター板99とともに作動する連動部材105に第1係合部材108が閉鎖位置側から係合し、キー孔28にメカニカルキー33を挿入することで第2係合部材109が連動部材105に閉鎖位置側から係合し、メカニカルキー33によるオン位置への回動操作に応じて第1係合部材108の連動部材105への係合が解除されるものの第2係合部材109が連動部材105に係合したままであるので、メカニカルキー33がキー孔28に挿入されている限り、シャッター板99は開放位置に保持される。
【0103】
またメカニカルキー33をロック位置でキー孔28から引き抜くと、第2係合部材109の連動部材105への係合が解除されるので、シャッター板99は戻しばね106の弾発力によって開放位置から閉鎖位置に自動的に復帰することになる。すなわち長時間駐車時にメカニカルキー33をロック位置で引き抜くのに応じてシャッター板99が閉鎖位置に自動的に復帰するので、操作性を高め、閉め忘れがないようにして防盗性を高めることができる。一方、短時間駐車するときのように、キー孔28に挿入したメカニカルキー33をオフ位置で引き抜いたときには、連動部材105への第2係合部材109の係合状態は維持されたままであり、オフ位置でシャッター板99が自動的に閉鎖位置に戻ることはないので、短時間駐車時のようにシャッター板99を閉める必要性が低いときにはシャッター板99を閉めないようにして操作性を高めることができる。
【0104】
しかも第1および第2係合部材108,109と、第1および第2係合部材108,109を作動せしめるカム手段110と、シャッター板99を閉鎖位置側に付勢する戻しばね106とが、キー孔28の軸線に直交する平面に沿って作動するようにしてケーシング90に収容されるので、キー孔28の軸線に沿う方向でケーシング90をコンパクトに構成することができ、それに応じてメカニカルキー33の長さも短くすることができる。
【0105】
本発明の他の実施例として、上記第2実施例で用いた連動部材105を省略し、シャッター板99に第1および第2係合部材108,109を直接、係合するように構成することも可能である。
【0106】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】第1実施例を示すものであってロック位置にあるキー孔がシャッター板で閉鎖された状態でのシリンダ錠の保護装置の正面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】シリンダ錠の保護装置の分解斜視図である。
【図4】メカニカルキーおよびマグネットキの一部切欠き側面図である。
【図5】図2の5−5線断面図である。
【図6】図2の6−6線断面図である。
【図7】カム手段の分解斜視図である。
【図8】シャッター板が閉鎖位置および開放位置間に在る状態での図5に対応した断面図である。
【図9】シャッター板が閉鎖位置および開放位置間に在る状態での図6に対応した断面図である。
【図10】シャッター板が開放位置にある状態での図5に対応した断面図である。
【図11】ャッター板が開放位置に在る状態での図6に対応した断面図である。
【図12】ロック位置でキー孔にメカニカルキーを挿入した状態での図6に対応した断面図である。
【図13】メカニカルキーでオフ位置に回動操作した状態での図6に対応した断面図である。
【図14】メカニカルキーでオン位置に回動操作した状態での図6に対応した断面図である。
【図15】オフ位置でメカニカルキーを抜き出した状態での図6に対応した断面図である。
【図16】第2実施例を示すものであってロック位置にあるキー孔がシャッター板で閉鎖された状態でのシリンダ錠の保護装置の正面図である。
【図17】図16の17−17線断面図である。
【図18】シリンダ錠の保護装置の分解斜視図である。
【図19】シャッター板が閉鎖位置に在る状態での図17の19−19線断面図である。
【図20】シャッター板が開放位置にある状態での図17の20−20線断面図である。
【図21】シャッター板が開放位置にあるとともにキー孔がロック位置にある状態での図17の21−21線断面図である。
【図22】ロック位置にあるキー孔にメカニカルキーを挿入した状態での図21に対応した断面図である。
【図23】メカニカルキーでオフ位置まで回動操作したときの図21に対応した断面図である。
【図24】メカニカルキーでオン位置まで回動操作したときの図21に対応した断面図である。
【図25】オフ位置でメカニカルキーを抜き出した後にマグネットキーでシャッター板を閉鎖位置まで回動操作した状態の図21に対応した断面図である。
【符号の説明】
【0108】
20・・・シリンダ錠
21・・・シリンダボディ
22,90・・・ケーシング
23,99・・・シャッター板
27・・・インナシリンダ
28・・・キー孔
29,95・・・挿入孔
33・・・メカニカルキー
35・・・マグネット錠
57,106・・・弾発手段である戻しばね
58,108・・・第1係合部材
59,109・・・第2係合部材
60,110・・・カム手段
122・・・第1係止部
128・・・第2係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ錠(20)が備えるインナシリンダ(27)に設けられるキー孔(28)に対応した挿入孔(29)を有して前記シリンダ錠(20)のシリンダボディ(21)に固定されるケーシング(22)と、前記挿入孔(29)を閉鎖する閉鎖位置ならびに前記挿入孔(29)を開放する開放位置間で前記キー孔(28)の軸線に直交する平面に沿って作動することを可能として前記ケーシング(22)内に収納されるシャッター板(34)と、施錠時には前記シャッター板(34)を前記閉鎖位置で保持するとともに解錠時に前記シャッター板(34)を前記閉鎖位置から前記開放位置に操作することを可能としたマグネット錠(35)とを備え、メカニカルキー(33)を前記キー孔(28)から引き抜くのに応じて前記シャッター板(34)が前記開放位置から前記閉鎖位置に自動的に復帰するようにしたシリンダ錠の保護装置において、前記シャッター板(34)を前記閉鎖位置側に付勢するようにして前記ケーシング(22)および前記シャッター板(34)間に設けられる弾発手段(57)と、前記開放位置にある前記シャッター板(34)に係合して該シャッター板(34)を開放位置に保持し得る第1および第2係合部材(58,59)と、前記シャッター板(34)の作動、前記キー孔(28)に対する前記メカニカルキー(33)の挿脱ならびに前記メカニカルキー(33)による回動操作に応じて第1および第2係合部材(58,59)を作動せしめるカム手段(60)とが、前記キー孔(28)の軸線と直交する平面に沿って作動するようにして前記ケーシング(22)内に収容され、前記カム手段(60)は、前記シャッター板(34)の閉鎖位置から開放位置への作動に応じて第1係合部材(58)を前記シャッター板(34)に前記閉鎖位置側から係合させ、前記キー孔(28)への前記メカニカルキー(33)の挿入に応じて第2係合部材(59)を前記シャッター板(34)に前記閉鎖位置側から係合させ、前記キー孔(28)に挿入された前記メカニカルキー(33)によるオン位置への回動操作に応じて第1係合部材(58)の前記シャッター板(34)への係合を解除させ、前記メカニカルキー(33)が前記キー孔(28)から引き抜かれるのに応じて第2係合部材(59)の前記シャッター板(34)への係合を解除させることを特徴とするシリンダ錠の保護装置。
【請求項2】
シリンダ錠(20)が備えるインナシリンダ(27)に設けられるキー孔(28)に対応した挿入孔(95)を有して前記シリンダ錠(20)のシリンダボディ(21)に固定されるケーシング(90)と、前記挿入孔(95)を閉鎖する閉鎖位置ならびに前記挿入孔(95)を開放する開放位置間で前記キー孔(28)の軸線に直交する平面に沿って作動することを可能として前記ケーシング(90)内に収納されるシャッター板(99)と、施錠時には前記シャッター板(99)を前記閉鎖位置で保持するとともに解錠時に前記シャッター板(99)を前記閉鎖位置から前記開放位置に操作することを可能としたマグネット錠(35)とを備え、メカニカルキー(33)を前記キー孔(28)から引き抜くのに応じて前記シャッター板(99)が前記開放位置から前記閉鎖位置に自動的に復帰するようにしたシリンダ錠の保護装置において、前記シャッター板(99)もしくは該シャッター板(99)に連動して作動する連動部材(105)および前記ケーシング(90)間に設けられて前記シャッター板(99)を前記閉鎖位置側に付勢する弾発手段(106)と、前記シャッター板(99)もしくは前記連動部材(105)に前記シャッター板(99)が前記開放位置にあるときに係合して前記シャッター板(99)を開放位置に保持し得る第1および第2係合部材(108,109)と、前記シャッター板(99)の作動、前記キー孔(28)に対する前記メカニカルキー(33)の挿脱ならびに前記メカニカルキー(33)による回動操作に応じて第1および第2係合部材(108,109)を作動せしめるカム手段(110)とが、前記キー孔(28)の軸線と直交する平面に沿って作動するようにして前記ケーシング(90)内に収容され、前記カム手段(110)は、前記シャッター板(99)の閉鎖位置から開放位置への作動に応じて第1係合部材(108)を前記シャッター板(99)もしくは前記連動部材(105)に前記閉鎖位置側から係合させ、前記キー孔(28)への前記メカニカルキー(33)の挿入に応じて第2係合部材(109)を前記シャッター板(99)もしくは前記連動部材(105)に前記閉鎖位置側から係合させ、前記キー孔(28)に挿入された前記メカニカルキー(33)によるオン位置への回動操作に応じて第1係合部材(108)の前記シャッター板(99)もしくは前記連動部材(105)への係合を解除させ、前記メカニカルキー(33)がオフ位置で前記キー孔(28)から引き抜かれても第2係合部材(109)の前記シャッター板(99)もしくは前記連動部材(105)への係合を維持するものの前記メカニカルキー(33)がロック位置で前記キー孔(28)から引き抜かれるのに応じて第2係合部材(109)の前記シャッター板(99)もしくは前記連動部材(105)への係合を解除させることを特徴とするシリンダ錠の保護装置。
【請求項3】
前記シャッター板(99)の作動に応じて前記キー孔(28)の軸線に直交する平面に沿ってスライド作動する前記連動部材(105)が、該連動部材(105)および前記ケーシング(90)間に設けられる前記弾発手段(106)の弾発付勢力によって前記シャッター板(99)を前記閉鎖位置側に付勢するようにして前記シャッター板(99)に開放位置側から当接、係合され、第1および第2係合部材(108,109)を係合せしめて前記シャッター板(99)の閉鎖位置を保持するための第1および第2係止部(122,128)が前記連動部材(105)に設けられることを特徴とする請求項2記載のシリンダ錠の保護装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate


【公開番号】特開2009−121228(P2009−121228A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232209(P2008−232209)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000155067)株式会社ホンダロック (164)
【Fターム(参考)】