説明

シリンダ錠の保護装置

【課題】メカニカルキーを引き抜くのに応じてシャッター板が開放位置から閉鎖位置に自動的に復帰するようにしたシリンダ錠の保護装置において、必要なときにはシャッター板の閉鎖位置への自動的な移動が生じないようにする。
【解決手段】カム手段65が、シャッター板34の閉鎖位置から開放位置への作動に応じて第1係合部材63を、シャッター板34に連動する連動部材60に閉鎖位置側から係合させ、メカニカルキーの挿入に応じて第2係合部材64を連動部材60に閉鎖位置側から係合させ、オン位置への回動操作に応じて第1係合部材63の連動部材60への係合を解除させ、メカニカルキーが引き抜かれるのに応じて第2係合部材64の連動部材60への係合を解除させ、開放位置にある連動部材60に係合する位置ならびにその係合を解除する位置間での移動操作を可能とした第3係合部材90がケーシング22に支承される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ錠が備えるインナシリンダに設けられるキー孔に対応した挿入孔を有して前記シリンダ錠のシリンダボディに固定されるケーシングと、前記挿入孔を閉鎖する閉鎖位置ならびに前記挿入孔を開放する開放位置間で前記キー孔の軸線に直交する平面に沿って作動することを可能として前記ケーシングに支承されるシャッター板と、施錠時には前記シャッター板を前記閉鎖位置で保持するとともに解錠時に前記シャッター板を前記閉鎖位置から前記開放位置に操作することを可能としたマグネット錠とを備え、メカニカルキーを前記キー孔から引き抜くのに応じて前記シャッター板が前記開放位置から前記閉鎖位置に自動的に復帰するようにしたシリンダ錠の保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キー孔を閉鎖するシャッター板をマグネット錠の解錠に応じて開放位置に作動せしめた後、キー孔に挿入したメカニカルキーを引き抜くのに応じてシャッター板が閉鎖位置に自動的に復帰するようにして、操作性を高め、閉め忘れがないようにしたシリンダ錠の保護装置が、たとえば特許文献1で既に知られている。
【特許文献1】特開2005−076204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記特許文献1で開示されるものでは、キー孔からメカニカルキーを引く抜くのに応じてシャッター板が開放位置から閉鎖位置に必ず移動するので、たとえば自動二輪車用のシリンダ錠において自動二輪車の停車時にキー孔からメカニカルキーを引き抜くと、シャッター板が自動的に閉鎖位置に移動することになり、一時的に停車するときなどのシャッター板を閉じたくないときには不便である。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、キー孔からメカニカルキーを引き抜いたときにはシャッター板が自動的に閉鎖位置に移動するようにして操作性を高め、閉め忘れがないようにした上で、必要なときにはシャッター板の閉鎖位置への自動的な移動が生じないようにすることを可能としたシリンダ錠の保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、シリンダ錠が備えるインナシリンダに設けられるキー孔に対応した挿入孔を有して前記シリンダ錠のシリンダボディに固定されるケーシングと、前記挿入孔を閉鎖する閉鎖位置ならびに前記挿入孔を開放する開放位置間で前記キー孔の軸線に直交する平面に沿って作動することを可能として前記ケーシングに支承されるシャッター板と、施錠時には前記シャッター板を前記閉鎖位置で保持するとともに解錠時に前記シャッター板を前記閉鎖位置から前記開放位置に操作することを可能としたマグネット錠とを備え、メカニカルキーを前記キー孔から引き抜くのに応じて前記シャッター板が前記開放位置から前記閉鎖位置に自動的に復帰するようにしたシリンダ錠の保護装置において、前記シャッター板もしくは該シャッター板に連動して作動する連動部材および前記ケーシング間に設けられて前記シャッター板を前記閉鎖位置側に付勢する弾発手段と、前記シャッター板もしくは前記連動部材に前記シャッター板の前記閉鎖位置から前記開放位置への作動に応じて自動的に係合して前記シャッター板を開放位置に保持し得る第1および第2係合部材と、前記開放位置にある前記シャッター板もしくは前記連動部材に係合する位置ならびにその係合を解除する位置間での移動操作を可能として前記ケーシングに支承される第3係合部材と、前記シャッター板の作動、前記キー孔に対する前記メカニカルキーの挿脱ならびに前記メカニカルキーによる回動操作に応じて第1および第2係合部材を作動せしめるカム手段とを含み、前記カム手段は、前記シャッター板の閉鎖位置から開放位置への作動に応じて第1係合部材を前記シャッター板もしくは前記連動部材に前記閉鎖位置側から係合させ、キー挿脱位置での前記キー孔への前記メカニカルキーの挿入に応じて第2係合部材を前記シャッター板もしくは前記連動部材に前記閉鎖位置側から係合させ、前記キー孔に挿入された前記メカニカルキーによるオン位置への回動操作に応じて第1係合部材の前記シャッター板もしくは前記連動部材への係合を解除させ、前記メカニカルキーが前記キー挿脱位置で前記キー孔から引き抜かれるのに応じて第2係合部材の前記シャッター板もしくは前記連動部材への係合を解除させることを特徴とする。
【0006】
なお実施の形態の戻しばね61が本発明の弾発手段に対応する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記構成によれば、マグネット錠を解錠してシャッター板を閉鎖位置から開放位置に作動せしめると、第1係合部材がシャッター板もしくは該シャッター板に連動する連動部材に閉鎖位置側から係合し、キー孔にメカニカルキーを挿入することで第2係合部材がシャッター板もしくは連動部材に閉鎖位置側から係合し、メカニカルキーによるオン位置への回動操作に応じて第1係合部材のシャッター板もしくは連動部材への係合が解除されるものの第2係合部材がシャッター板もしくは連動部材に係合したままであるので、メカニカルキーがキー孔に挿入されている限り、シャッター板は開放位置に保持される。またメカニカルキーをキー挿脱位置でキー孔から引き抜くと、第2係合部材のシャッター板もしくは連動部材への係合が解除されるので、シャッター板は弾発手段の弾発力によって開放位置から閉鎖位置に自動的に復帰することになる。すなわちメカニカルキーをキー挿脱位置で引き抜くのに応じてシャッター板が閉鎖位置に自動的に復帰するので、操作性を高め、閉め忘れがないようにして防盗性を高めることができる。一方、ケーシングには、開放位置にあるシャッター板もしくは連動部材に係合する位置ならびにその係合を解除する位置間での移動操作を可能として第3係合部材が支承されており、この第3係合部材を開放位置にあるシャッター板もしくは連動部材に係合するように操作すると、メカニカルキーをキー挿脱位置で引き抜いても、シャッター板は開放位置に止まったままであり、閉鎖位置に自動的に復帰することはなく、必要なときにはシャッター板の閉鎖位置への自動的な移動が生じないようにして利便性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付の図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
図1〜図13は本発明の実施の形態を示すものであり、図1はロック位置にあるキー孔がシャッター板で閉鎖された状態でのシリンダ錠の保護装置の正面図、図2は図1の2−2線断面図、図3はシリンダ錠の保護装置の分解斜視図、図4はメカニカルキーおよびマグネットキの一部切欠き側面図、図5はシャッター板が閉鎖位置に在る状態での図2の5−5線断面図、図6はシャッター板が開放位置にある状態での図2の6−6線断面図、図7はシャッター板が開放位置にあるとともにキー孔がロック位置にある状態での図2の7−7線断面図、図8はロック位置にあるキー孔にメカニカルキーを挿入した状態での図7に対応した断面図、図9はメカニカルキーでオフ位置まで回動操作したときの図7に対応した断面図、図10はメカニカルキーでオン位置まで回動操作したときの図7に対応した断面図、図11はオフ位置でメカニカルキーを抜き出した状態の図7に対応した断面図、図12は図1の12−12線断面図、図13は第3係合部材を連動部材に係合させた状態でメカニカルキーを抜き出したときの図6に対応した断面図である。
【0010】
先ず図1および図2において、車両たとえば自動二輪車用のシリンダ錠20のシリンダボディ21は車体フレームのヘッドパイプ(図示せず)に設けられており、このシリンダボディ21の前端部はケーシング22で覆われる。該ケーシング22は、シリンダボディ21の前端部に取付けられる非磁性材料製のケース部材23と、該ケース部材23を側方から覆う側壁24aを外周に有してケース部材23をシリンダボディ21と反対側から覆う非磁性材料製のカバー部材24と、前記ケース部材23を前記カバー部材24との間に挟む平板状の背板25とを備え、ケース部材23、カバー部材24および背板25が、複数たとえば2つのねじ部材26,26で締結されることによりケーシング22が構成され、ケーシング22は前記シリンダボディ21に固定される。
【0011】
前記シリンダ錠20は、前記シリンダボディ21に回動可能に挿入されるインナシリンダ27を有しており、このインナシリンダ27には、その回動軸線と直交する方向に長い矩形状のキー孔28が設けられ、該キー孔28は、シリンダ錠20の前端中央部に開口される。
【0012】
図3を併せて参照して、前記ケーシング22には、前記キー孔28に対応した挿入孔29が設けられる。この挿入孔29は、ケース部材23およびカバー部材24にそれぞれ同軸に設けられた円形の透孔30,31で構成されており、カバー部材24の透孔31の外端部はメカニカルキー33(図4参照)の挿入を容易とするためにテーパ状に形成される。また背板25には、ケース部材23およびカバー部材24の透孔30,31よりも大径である開口部32が前記透孔30,31に対応して設けられる。
【0013】
前記ケーシング22内の前記ケース部材23および前記カバー部材24間には、前記挿入孔29およびキー孔28を閉鎖する閉鎖位置ならびに前記挿入孔29およびキー孔28を開放する開放位置間で、前記キー孔28の軸線に直交する平面に沿うように作動することを可能としたシャッター板34が収納される。
【0014】
このシャッター板34の閉鎖位置から開放位置までの作動は、ケーシング22に配設されるマグネット錠35が備える嵌合凹部36に、マグネットキー37を嵌合することで許容されるものであり、マグネット錠35は、前記シャッター板34とは別体に形成されるロータ38を備え、該ロータ38に前記嵌合凹部36が形成される。
【0015】
ケーシング22のケース部材23には、前記挿入孔29から離隔した位置でカバー部材24側に突出した横断面円形の支持突部39が一体に突設されており、該支持突部39に対応する部分でカバー部材24には円形の開口部40が設けられる。
【0016】
図5を併せて参照して、前記ロータ38は、前記支持突部39の先端に対向する対向壁部38aを軸方向中間部に有する略円筒状のロータ主部38bと、該ロータ主部38bから外側方に延びる連結腕部38cとを一体に有して非磁性材料により形成されており、前記連結腕部38cの先端部には、長孔状の連結孔41が設けられる。前記ロータ主部38bの内端側には前記支持突部39が嵌合されるものであり、該ロータ主部38bは、Oリング45を支持突部39の基部との間に介在させて該支持突部39で回動可能に支承される。しかもロータ主部38bの外端は前記開口部40に臨むように配置され、ロータ主部38bの外端部が前記嵌合凹部36を形成する。
【0017】
前記ロータ38の前記嵌合凹部36は、変則多角形の横断面形状を有するように形成され、また嵌合凹部36の略中心部には突部42が突設される。而して嵌合凹部36の横断面形状に対応した横断面形状を有するとともに前記突部42を嵌合せしめる凹部43を有するマグネットキー37のみを嵌合凹部36に嵌合可能であり、このマグネットキー37は、図4で示すように、前記キー孔28に挿入可能な正規のメカニカルキー33に設けられた把持部44に付設される。
【0018】
前記支持突部39の先端には、たとえば正方形の各角部に対応した複数個たとえば4個の摺動凹部47…が、ロータ38の対向壁38a側に開口するようにして設けられており、各摺動凹部47…のうち選択された3つの摺動凹部47…には、前記対向壁部38a側の磁極配置が適宜の組み合わせとなるようにして棒状の永久磁石48…がそれぞれ摺動可能に嵌合され、3つの前記摺動凹部47…の底部および各永久磁石48…間には、各永久磁石48…を支持突部39の先端から突出させる側にばね付勢するばね49…がそれぞれ介設される。
【0019】
ロータ38の対向壁部38aには、4つの係合凹部50…が設けられており、それらの係合凹部50…のうちの3つに前記各永久磁石48…の一部がそれぞれ係合している状態では、ロータ38の回動作動が阻止されることになる。
【0020】
一方、マグネットキー37には、前記ロータ38の対向壁部38aに設けられる4つの係合凹部50…に対応した位置に配置される複数個たとえば4個の収容凹部51…がロータ38の対向壁部38a側に開口するようにして設けられ、各収容凹部51…のうちの3つには棒状の永久磁石52…がそれぞれ収容される。また各収容凹部51…の開口端は、マグネットキー37に固定される非磁性材料製の閉塞板53で閉じられる。
【0021】
マグネットキー37に配設される各永久磁石52…は、支持突部39側の各永久磁石48…の前記対向壁部38a側の磁極と同一の磁極が対向壁部38a側に配置されるようにして収容凹部51…に収容されるものであり、正規のマグネットキー37が嵌合凹部36に嵌合されたときには、同一磁極の反発力によって、支持突部39側の永久磁石48…はばね49…のばね力に抗して係合凹部52…から離脱するように摺動凹部47…に押し込まれ、これによりロータ38の回動作動が許容されることになる。
【0022】
しかも図3で示すように、ケース部材23およびロータ38間には、ロータ38側の周方向に間隔をあけた2箇所に設けられるクリック用凹部(図示せず)に択一的に弾発係合するクリックボール54と、該クリックボール54を前記ロータ38側に付勢するばね力を発揮してクリックボール54および前記ケース部材23間に縮設されるクリックばね55とを有するクリック機構56が設けられており、マグネット錠35の解錠時に前記ロータ38の回動操作時にクリック機構56によってクリック感を得ることができる。
【0023】
シャッター板34は、前記挿入孔29を閉鎖し得る平板状のシャッター主部34aと、該シャッター主部34aから前記ロータ38の連結腕部38c側に延びる連結腕部34bと、該連結腕部34bの前記連結腕部38c側端部に連設されて前記挿入孔29および前記開口部40と反対側に突出する連結突部34cとを一体に有するものであり、連結腕部34bには前記ロータ38の連結腕部38cの連結孔41に挿入される連結ピン57が一体に突設される。
【0024】
前記シャッター板34は、図5で示すように前記挿入孔29を閉鎖する閉鎖位置と、図6で示すように前記挿入孔29を開放する開放位置との間で、前記キー孔28の軸線に直交する平面に沿うようにして矢印58で示す作動方向に作動可能であり、その作動方向58に沿う方向に長く延びるガイド溝59が前記ケース部材23に設けられる。このガイド溝59には、前記シャッター板34に連動して作動する連動部材60が前記作動方向にスライドすることを可能として嵌合される。
【0025】
前記連動部材60には、前記シャッター板34の連結突部34cに開放位置側から当接、係合する係合突部60aが突設されるとともに、前記ガイド溝59に収容される弾発手段としての戻しばね61をケーシング22におけるケース部材23との間に介装せしめるばね受け部60bが突設されており、連動部材60は、戻しばね61の弾発付勢力によってシャッター板34を閉鎖位置側に付勢するようにして、該シャッター板60に開放位置側から当接、係合されることになる。
【0026】
ところでシリンダ錠20のインナシリンダ27は、そのキー孔28に挿入されたメカニカルキー33の操作によって、ロック(LOCK)位置からオフ(OFF)位置を経てオン(ON)位置に回動することが可能であり、オン位置で図示しないエンジンに点火することができる。ケーシング22のカバー部材24において、挿入孔29すなわち透孔31の周囲には、図1で示すように、LOCK、OFFおよびONの各位置が表示されており、前記インナシリンダ27は、横断面矩形状であるキー孔28の横断面長手方向を前記LOCK、OFFおよびONの各位置に合わせることによって、ロック位置、オフ位置およびオン位置に位置することになる。而してロック位置は、図示しないステアリングハンドルをロック状態とするものであり、シリンダ錠20には、ロック位置およびオフ位置間でのインナシリンダ27の回動にあたってはメカニカルキー33のプッシュ操作を必要とする機構(図示せず)が設けられる。またインナシリンダ27がロック位置にあるとき、インナシリンダ27がオフ位置にあるときのいずれの状態でも、メカニカルキー33のキー孔28に対する挿脱操作が可能である。
【0027】
前記ケーシング22内には、前記戻しばね61と、開放位置にある前記シャッター板34に係合して該シャッター板34を開放位置に保持し得る第1および第2係合部材63,64と、第1および第2係合部材63,64を作動せしめるカム手段65とが、前記キー孔28の軸線と直交する平面に沿って作動するようにして収容される。
【0028】
前記カム手段65は、ケース部材23で回動可能に保持される円板状のカムプレート66に、該カムプレート66の半径方向に摺動することを可能としてカムプレート66に嵌合されるプッシュプレート67とで構成され、前記カムプレート66はシリンダ錠20のインナシリンダ27に相対回動不能に連結される。
【0029】
前記ケース部材23のシリンダ錠20側の面には、前記挿入孔29と同軸である円形の支持凹部68が設けられており、前記カムプレート66は該支持凹部68に回動可能に嵌合される。一方、ケース部材23に締結される前記背板25には、前記支持凹部68に嵌合された前記カムプレート66の一部を臨ませる円形の開口部32が前記挿入孔29と同軸に設けられており、前記背板25は、前記カムプレート66の外周部を前記ケース部材23との間に挟むようにして前記ケース部材23に締結され、カムプレート66に一体に設けられて前記開口部32を貫通する複数たとえば2つの連結軸部66a,66bがシリンダ錠20のインナシリンダ27に嵌合することにより、カムプレート66がインナシリンダ27に相対回動不能に連結される。
【0030】
図7を併せて参照して、前記カムプレート66の中央部には、前記シリンダ錠20のキー孔28に対応して横断面矩形状に形成される透孔70が、前記挿入孔29および前記キー孔28間に介在するようにして設けられる。また前記カムプレート66の前記ケース部材23側に臨む面には、内端を前記透孔70に開口させるとともに外端をカムプレート66の外周に開口させた嵌合孔71が、カムプレート66の半径方向に延びるようにして設けられており、前記プッシュプレート67は該嵌合孔71に摺動可能に嵌合される。
【0031】
前記プッシュプレート67の内端部は前記透孔70を塞ぎ得るように形成され、前記プッシュプレート67の外端は前記カムプレート66の外周と同一曲率の円弧状に形成される。而して前記プッシュプレート67の内端部が前記透孔70を塞ぐ位置にあるときにはプッシュプレート67の外端は前記カムプレート66の外周よりも内方位置に在り、前記カムプレート62の内端部が前記透孔70を開放する位置にあるときには該プッシュプレート67の外端はカムプレート66の外周に面一に連なる位置にある。しかもプッシュプレート67の両側およびカムプレート66間には、前記透孔70を塞ぐ側に前記プッシュプレート67を付勢するばね72,72が設けられる。
【0032】
前記カムプレート66の前記挿入孔29側に臨む面において前記透孔70に関して前記プッシュプレート67と反対側には、挿入孔29に挿入されたメカニカルキー33の先端部を透孔70側に案内する円弧状のガイド面73が設けられ、前記プッシュプレート67の内端部の幅方向中央部には、前記ガイド面73で案内された前記メカニカルキー33の先端部を当接させる受圧面74が設けられる。この受圧面74は、前記キー孔28に挿入すべく挿入孔29に押し込んだ前記メカニカルキー33の先端部が前記受圧面74に当接することにより、前記透孔70を開放すべくカムプレート66の半径方向外方に向けての力が前記プッシュプレート67に作用するように形成されており、挿入孔29に挿入されて前記受圧面74に当接したメカニカルキー33は、プッシュプレート67をカムプレート66の半径方向外方に押し退けるようにして前記透孔70からキー孔28に挿入されることになる。
【0033】
また前記カムプレート66の外周には、第1凹部75および第2凹部76が周方向に間隔をあけて設けられ、第1凹部75は、前記カムプレート66の軸方向に沿う厚さのうち背板25側の略半部に形成される。また第2凹部76は、前記プッシュプレート67の外端を臨ませる部分でカムプレート66の外周に設けられるものであり、カムプレート66の軸方向厚みの全体にわたって形成される。
【0034】
第1係合部材63は、ケース部材23側に嵌合して揺動可能に支持される略円形の枢支部63aと、該枢支部63aからカムプレート66側に延びる嵌合部63bと、前記枢支部63aから連動部材60側に延びる係合部63cとを一体に有して、ケーシング22のケース部材23および背板25間に配置される。
【0035】
前記嵌合部63bの先端部はカムプレート66の外周に当接可能であり、前記ケース部材23には、前記カムプレート66の外周の一部を第1係合部材63側に臨ませるための切欠き77が前記支持凹部68の側壁の一部を切欠くようにして設けられる。而してカムプレート66がシリンダ錠20のインナシリンダ27とともにロック位置にあるときには、前記嵌合部63bの先端部はカムプレート66の第1凹部75に嵌合可能であり、またカムプレート66が前記インナシリンダ27とともにオフ位置およびオン位置にあるときには、前記嵌合部63bの先端部はカムプレート66の外周に摺接している。しかも第1凹部75がカムプレート66の軸方向に沿う厚さのうち略半部に形成されるものであるので、前記嵌合部63bもカムプレート66の軸方向に沿う厚さのうち略半部の厚さを有するように形成される。
【0036】
またケース部材23には、前記連動部材60の一部を第1係合部材63側に臨ませる窓78が、前記ガイド溝59の側壁の一部を切欠くようにして設けられており、前記窓78から突出した前記係合部63cの先端部を、シャッター板34が開放位置にあるときに閉鎖位置側から係合させる第1係止部79が前記連動部材60に設けられる。
【0037】
第1係合部材63およびケース部材23間には、コイル状のねじりばね80が縮設されており、第1係合部材63はねじりばね80のばね力によって、嵌合部63bをカムプレート66の外周に当接させるとともに係合部63cを第1係止部79に当接させる側に付勢される。
【0038】
しかも第1係合部材63は、その嵌合部63bがカムプレート66の第1凹部75に嵌合した状態で前記連動部材60の第1係止部79に係合し得るものであり、嵌合部63bが第1凹部75以外の個所でカムプレート66の外周に当接する状態では、係合部63cの先端部は窓78に臨む位置にあり、第1係止部79に係合部63cの先端部が係合することはない。
【0039】
また第1凹部75は、第1凹部75に前記嵌合部63bが嵌合している状態で、カムプレート66がインナシリンダ27とともにロック位置からオン位置側に向けて回動したときには、第1係合部材63をねじりばね80のばね力に抗して図7の時計方向に回動して嵌合部63bをカムプレート66の外周に乗り上げさせるとともに係合部63cの先端部をガイド溝59から窓78側に後退させるように形成されている。
【0040】
ところでシャッター板34が図5で示すように閉鎖位置にある状態では、第1係合部材63の嵌合部63bは第1凹部75に嵌合し、係合部63cは、連動部材60の側面に近接もしくは当接した状態にある。而して前記連動部材60における係合突部60aの第1係合部材63側の側面のうち前記係合部63cが近接もしくは当接した箇所から第1係止部79までの間には、シャッター板34すなわち連動部材60が閉鎖位置から開放位置に移動すべく図6の上方に移動する際には、係合部63cに当接して第1係合部材63を図6の時計方向に一旦回動させることで嵌合部63bを第1凹部75から一時的に離脱させるための傾斜面81が形成され、係合部63cが前記傾斜面81を通過した後に、第1係合部材63は嵌合部63bを第1凹部75に嵌合するように回動し、その状態で係合部63cが第1係止部79に当接、係合することになる。
【0041】
第2係合部材64は、ケース部材23側に嵌合して揺動可能に支持される略円形の枢支部64aと、該枢支部64aからカムプレート66側に延びる嵌合部64bと、前記枢支部64aからガイド溝59側に延びる係合部64cと、前記枢支部64aから前記嵌合部64b戸反対側に延びるばね受け部64dとを一体に有して、ケーシング22のケース部材23および背板25間に配置される。
【0042】
前記嵌合部64bの先端部はカムプレート66の外周に当接可能であり、前記ケース部材23には、前記カムプレート66の外周の一部を第2係合部材64側に臨ませるための切欠き82が前記支持凹部68の側壁の一部を切欠くようにして設けられる。而してカムプレート66がシリンダ錠20のインナシリンダ27とともにロック位置にあるときには、前記嵌合部64bの先端部はカムプレート66の第2凹部76に嵌合可能である。しかも第2凹部76は、前記カムプレート66の軸方向厚みの全体にわたって形成されるものであり、前記嵌合部64bは、第2凹部76に嵌合すべくカムプレート66の軸方向厚み以上の厚みを有するように形成され、嵌合部64bは第1凹部75に嵌合することはない。
【0043】
またケース部材23には、シャッター板34とともにスライド作動する前記連動部材60の一部を第2係合部材64側に臨ませる窓83が、前記ガイド溝59の側壁の一部を切欠くようにして設けられており、前記窓83から突出した前記係合部64cの先端部を、シャッター板34が開放位置にあるときに前記連動部材60に閉鎖位置側から係合させる段差状の第2係止部84が前記連動部材60に設けられる。
【0044】
第2係合部材64およびケース部材23間には、コイルばね85が設けられており、第2係合部材64はコイルばね85のばね力によって、嵌合部64bをカムプレート66の外周に当接させる側に付勢される。
【0045】
しかも第2係合部材64の嵌合部64bの先端部がカムプレート66の第2凹部76に嵌合した状態では、前記嵌合部64bの先端部は、カムプレート66の透孔70を閉鎖した状態にあるプッシュプレート67の外端部に当接するものであり、前記透孔70にメカニカルキー33が挿入されることでプッシュプレート67がカムプレート66の半径方向外方に押し出されたとき、第2係合部材64は、図8で示すように、コイルばね85のばね力に抗して図8の時計方向に回動し、それにより係合部64cの先端部が連動部材60の第2係止部84に係合するように窓83からガイド溝59内に突入することになる。
【0046】
ここでシリンダ錠20のインナシリンダ27がロック位置にあってシャッター板34が閉鎖位置にある状態から、マグネット錠35を解錠してシャッター板34を開放位置に作動せしめ、さらにメカニカルキー33をキー孔28に差し込んで回動した後、メカニカルキー33を引き抜くまでの間の各部品の作動状態を説明すると、マグネット錠35を解錠した後にシャッター板34を閉鎖位置から開放位置に作動せしめる途中の状態では、シャッター板34におけるガイド部34cの移動によって連動部材60が開放位置側に移動する際に、該連動部材60の傾斜面81が第1係合部材63の係合部63cに閉鎖位置側当接することで、第1係合部材63はその嵌合部63bをカムプレート66の第1凹部75から離脱せしめるように、ねじりばね80のばね力に抗して回動する。
【0047】
前傾斜面81が前記係合部63cを乗り越えて前記シャッター板34が開放位置に達すると、図6および図7で示すように、挿入孔29が開放されるとともに、ねじりばね80で回動付勢されている第1係合部材63の係合部63cが連動部材60の第1係止部79に閉鎖位置側から係合し、戻しばね61のばね力が作用しているにもかかわらず、シャッター板34が開放位置に保持される。しかもケース部材23には、板ばね86の一端部を嵌合、保持する嵌合突部87が突設されており、この板ばね86の他端部は、開放位置にあるシャッター板34におけるシャッター主部34aの前記連動部材60とは反対側の側面に当接し、該シャッター板34を連動部材60側に押しつけることでシャッター板34の開放位置でのがたつきが抑制される。
【0048】
次いでメカニカルキー33を挿入孔29に挿入し、図8で示すように、カム手段65における透孔70にメカニカルキー33を差し込むと、カム手段65におけるプッシュプレート67がカムプレート66の半径方向外方に押し出され、第2凹部76に嵌合部64bを嵌合せしめていた第2係合部材64が図8の時計方向に回動し、嵌合部64bが第2凹部76から離脱するとともに係合部64cが連動部材60の第2係止部84に閉鎖位置側から係合し、第2係合部材64によってもシャッター板34が開放位置に保持されることになる。
【0049】
さらに図9で示すように、キー孔28に挿入したメカニカルキー33をプッシュしつつオフ位置まで回動操作すると、インナシリンダ27とともにオフ位置まで回動するカムプレート66によって第1係合部材63が図9の時計方向に回動し、図9で示すように、嵌合部63bがカムプレート66の外周に乗り上げるとともに第1係止部79に当接、係合していた係合部63cの先端部が戻しばね61のばね力に抗して連動部材60を押し上げて窓78側に退避する。而して係合部63cの先端部が窓78側に退避して第1係止部79との係合を解除することで、連動部材60は第2係止部84に第2係合部材64の係合部64cを係合させるまで戻ることになり、この状態では、第2係合部材64によってシャッター板34が開放位置に保持されることになる。
【0050】
キー孔28に挿入したメカニカルキー33によってインナシリンダ27とともにカムプレート66をオン位置まで回動すると、図10で示すように、第1係合部材63の嵌合部63bはカムプレート66の外周に当接した状態となり、また第2係合部材64は、その係合部64cを第2係止部84に係合したままで嵌合部64bをカムプレート66の外周に当接させた状態となる。
【0051】
キー孔28に挿入したメカニカルキー33によってインナシリンダ27とともにカムプレート66をロック位置まで戻して、メカニカルキー33を抜き出すと、図5で示した状態に戻るものであり、第2係合部材64の嵌合部64bに対応する位置に第2凹部76が対応することになり、第2係合部材64はコイルばね85のばね力によってプッシュプレート67をカムプレート66の半径方向内方に押圧しながら第2凹部76に嵌合することになり、第2係合部材64の係合部64cの第2係止部84との係合が解除され、シャッター板34は戻しばね61のばね力によって閉鎖位置まで自動的に戻ることになる。この際、第1係合部材63は、その嵌合部63bを第1凹部75に嵌合せしめる位置にあり、シャッター板34および連動部材60が閉鎖位置に戻るのに応じて、ねじりばね80のばね力によって嵌合部63bを第1凹部75に嵌合せしめ、係合部63cを前記連動部材60の側面に当接させるように回動することになる。
【0052】
このようにしてカム手段65は、前記シャッター板34の閉鎖位置から開放位置への作動に応じて第1係合部材63を連動部材60に閉鎖位置側から係合させ、キー孔28へのメカニカルキー33の挿入に応じて第2係合部材64を連動部材60に閉鎖位置側から係合させ、キー孔28に挿入されたメカニカルキー33によるオン位置への回動操作に応じて第1係合部材63の連動部材60への係合を解除させ、ロック位置でメカニカルキー33がキー孔28から引き抜かれるのに応じて第2係合部材64の連動部材60への係合を解除させることになる。
【0053】
またキー孔28に挿入したメカニカルキー33によってインナシリンダ27とともにカムプレート66をオフ位置まで戻して、メカニカルキー33を抜き出したときには、第2係合部材64が連動部材60に係合しているので、図11で示すように、シャッター板34が閉鎖位置に自動的に戻ることはなく、シャッター板34の開放位置が維持されるのであるが、この際、マグネット錠36のマグネットキー37でシャッター板34を閉鎖位置に回動すると、戻しばね61で付勢された連動部材60は、シャッター板34を閉鎖位置側に付勢するようにしてシャッター板34に開放位置側から当接、係合するものであるので、シャッター板34は第2係合部材64が係合している連動部材60を置き去りにしたままで、閉鎖位置に戻ることになる。
【0054】
前記シャッター板34が開放位置にある状態で前記連動部材60に係合することでシャッター板34の開放位置を保持する第3係合部材90が、前記連動部材60に係合する位置ならびにその係合を解除する位置間での移動操作を可能としてケーシング22に支承される。
【0055】
この第3係合部材90は、キー孔28に挿入されたメカニカルキー33の操作によって、シリンダ錠20のインナシリンダ27がロック位置、オフ位置およびオン位置のいずれの位置に回動された状態であっても、前記シャッター板34が開放位置にある状態での連動部材60に係合し得るものであり、前記シャッター板34および前記連動部材60の作動方向58と直交する方向に長く延びるように形成され、その長手方向に移動することを可能として前記ケーシング22に支承される。
【0056】
ケーシング22のケース部材23には、前記第2係合部材64とは反対側で前記ガイド溝59に一端部を連ならせたガイド溝91が、前記ガイド溝59と直交する方向に延びるようにして設けられる。一方、連動部材60には、該連動部材60が開放位置に移動したときに前記ガイド溝91の一端に対向する係止凹部92が設けられており、第3係合部材90は、その内端部を前記係止凹部92に係合させることを可能として前記ガイド溝91に摺動可能に嵌合され、第3係合部材90の外端部は、図12で示すように、ケーシング22におけるカバー部材24の側壁24aに設けられた開口部89から外側方に突出する。
【0057】
ケース部材23および第3係合部材90間には、第3係合部材90の長手方向に間隔をあけた2箇所に設けられるクリック用凹部93,94に択一的に弾発係合するクリックボール95と、該クリックボール95を第3係合部材90側に付勢するばね力を発揮してクリックボール95および前記ケース部材23間に縮設されるクリックばね96とを有するクリック機構97が設けられており、連動部材60に係合する位置ならびにその係合を解除する位置間で第3係合部材90を摺動操作するときに、クリック機構97によってクリック感を得ることができる。
【0058】
また前記連動部材60の開放位置側端部において前記ガイド溝91側に臨む部分には、傾斜面60cが形成されており、前記前記第3係合部材90の内端部の前記閉鎖位置側に臨む部分には、前記傾斜面60cに対応して傾斜した傾斜面90aが形成される。而してシャッター板34が閉鎖位置にある状態で第3係合部材90を誤って操作して第3係合部材90の内端部がガイド溝59内に突出した状態となったとしても、シャッター板34および連動部材60を閉鎖位置から開放位置に作動せしめたときに、連動部材60の前記傾斜面60cが第3係合部材90の前記傾斜面90aに当接することで、第3係合部材90は外方に押し出されることになり、シャッター板34および連動部材60を閉鎖位置から開放位置に作動せしめることができる。
【0059】
また前記第3係合部材90の外端部には操作部90bが一体に連設されており、その操作部90bを掴んで第3係合部材90を操作することができる。而して操作部90bは、第3係合部材90の一部を、ケーシング22の前方側もしくは後方側に向けて直角に折り曲げ成形することによって形成されるものであり、掴み易く、操作し易い。
【0060】
第3係合部材90においてケーシング22のカバー部材24に対向する面には、図12で示すように、カバー部材24の外周部に設けられた側壁24aの内面に対向する段部90cが形成されており、第3係合部材90のケーシング22からの離脱は前記段部90cが側壁24aに当接することによって阻止される。
【0061】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、マグネット錠35を解錠してシャッター板34を閉鎖位置から開放位置に作動せしめると、シャッター板34とともに作動する連動部材60に第1係合部材63が閉鎖位置側から係合し、キー孔28にメカニカルキー33を挿入することで第2係合部材64が連動部材60に閉鎖位置側から係合し、メカニカルキー33によるオン位置への回動操作に応じて第1係合部材63の連動部材60への係合が解除されるものの第2係合部材64が連動部材60に係合したままであるので、メカニカルキー33がキー孔28に挿入されている限り、シャッター板34は開放位置に保持される。
【0062】
またメカニカルキー33をロック位置でキー孔28から引き抜くと、第2係合部材64の連動部材60への係合が解除されるので、シャッター板34は戻しばね61の弾発力によって開放位置から閉鎖位置に自動的に復帰することになる。すなわち長時間駐車時にメカニカルキー33をロック位置で引き抜くのに応じてシャッター板34が閉鎖位置に自動的に復帰するので、操作性を高め、閉め忘れがないようにして防盗性を高めることができる。一方、短時間駐車するときのように、キー孔28に挿入したメカニカルキー33をオフ位置で引き抜いたときには、連動部材60への第2係合部材64の係合状態は維持されたままであり、オフ位置でシャッター板34が自動的に閉鎖位置に戻ることはないので、短時間駐車時のようにシャッター板34を閉める必要性が低いときにはシャッター板34を閉めないようにして操作性を高めることができる。
【0063】
しかも第1および第2係合部材63,64と、第1および第2係合部材63,64を作動せしめるカム手段65と、シャッター板34を閉鎖位置側に付勢する戻しばね61とが、キー孔28の軸線に直交する平面に沿って作動するようにしてケーシング22に収容されるので、キー孔28の軸線に沿う方向でケーシング22をコンパクトに構成することができ、それに応じてメカニカルキー33の長さも短くすることができる。
【0064】
さらにケーシング22には、開放位置にある連動部材60の係止凹部92に係合する位置ならびにその係合を解除する位置間での移動操作を可能として第3係合部材90が支承されており、この第3係合部材90を、図13で示すように、開放位置にある連動部材60の係止凹部92に係合するように操作すると、メカニカルキー33をロック位置で引き抜いても、シャッター板34は開放位置に止まったままであり、閉鎖位置に自動的に復帰することはなく、必要なときにはシャッター板34の閉鎖位置への自動的な移動が生じないようにして利便性を高めることができる。
【0065】
本発明の他の実施の形態として、上記実施の形態で用いた連動部材60を省略し、シャッター板34に第1および第2係合部材63,64を直接、係合するように構成することも可能である。
【0066】
またオフ位置でのメカニカルキー33の引き抜きに応じて第1および第2係合部材のシャッター板もしくは連動部材への係合を解除するようにカム手段を構成したものにも本発明を適用可能である。
【0067】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】ロック位置にあるキー孔がシャッター板で閉鎖された状態でのシリンダ錠の保護装置の正面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】シリンダ錠の保護装置の分解斜視図である。
【図4】メカニカルキーおよびマグネットキの一部切欠き側面図である。
【図5】シャッター板が閉鎖位置に在る状態での図2の5−5線断面図である。
【図6】シャッター板が開放位置にある状態での図2の6−6線断面図である。
【図7】シャッター板が開放位置にあるとともにキー孔がロック位置にある状態での図2の7−7線断面図である。
【図8】ロック位置にあるキー孔にメカニカルキーを挿入した状態での図7に対応した断面図である。
【図9】メカニカルキーでオフ位置まで回動操作したときの図7に対応した断面図である。
【図10】はメカニカルキーでオン位置まで回動操作したときの図7に対応した断面図である。
【図11】オフ位置でメカニカルキーを抜き出した状態の図7に対応した断面図である。
【図12】図1の12−12線断面図である。
【図13】第3係合部材を連動部材に係合させた状態でメカニカルキーを抜き出したときの図6に対応した断面図である。
【符号の説明】
【0069】
20・・・シリンダ錠
21・・・シリンダボディ
22・・・ケーシング
27・・・インナシリンダ
28・・・キー孔
29・・・挿入孔
33・・・メカニカルキー
34・・・シャッター板
35・・・マグネット錠
60・・・連動部材
61・・・弾発手段である戻しばね
63・・・第1係合部材
64・・・第2係合部材
65・・・カム手段
90・・・第3係合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ錠(20)が備えるインナシリンダ(27)に設けられるキー孔(28)に対応した挿入孔(29)を有して前記シリンダ錠(20)のシリンダボディ(21)に固定されるケーシング(22)と、前記挿入孔(29)を閉鎖する閉鎖位置ならびに前記挿入孔(29)を開放する開放位置間で前記キー孔(28)の軸線に直交する平面に沿って作動することを可能として前記ケーシング(22)に支承されるシャッター板(34)と、施錠時には前記シャッター板(34)を前記閉鎖位置で保持するとともに解錠時に前記シャッター板(34)を前記閉鎖位置から前記開放位置に操作することを可能としたマグネット錠(35)とを備え、メカニカルキー(33)を前記キー孔(28)から引き抜くのに応じて前記シャッター板(34)が前記開放位置から前記閉鎖位置に自動的に復帰するようにしたシリンダ錠の保護装置において、前記シャッター板(34)もしくは該シャッター板(34)に連動して作動する連動部材(60)および前記ケーシング(22)間に設けられて前記シャッター板(34)を前記閉鎖位置側に付勢する弾発手段(61)と、前記シャッター板(34)もしくは前記連動部材(60)に前記シャッター板(34)の前記閉鎖位置から前記開放位置への作動に応じて自動的に係合して前記シャッター板(34)を開放位置に保持し得る第1および第2係合部材(63,64)と、前記開放位置にある前記シャッター板(34)もしくは前記連動部材(60)に係合する位置ならびにその係合を解除する位置間での移動操作を可能として前記ケーシング(22)に支承される第3係合部材(90)と、前記シャッター板(34)の作動、前記キー孔(28)に対する前記メカニカルキー(33)の挿脱ならびに前記メカニカルキー(33)による回動操作に応じて第1および第2係合部材(63,64)を作動せしめるカム手段(65)とを含み、前記カム手段(65)は、前記シャッター板(34)の閉鎖位置から開放位置への作動に応じて第1係合部材(63)を前記シャッター板(34)もしくは前記連動部材(60)に前記閉鎖位置側から係合させ、キー挿脱位置での前記キー孔(28)への前記メカニカルキー(33)の挿入に応じて第2係合部材(64)を前記シャッター板(34)もしくは前記連動部材(60)に前記閉鎖位置側から係合させ、前記キー孔(28)に挿入された前記メカニカルキー(33)によるオン位置への回動操作に応じて第1係合部材(63)の前記シャッター板(34)もしくは前記連動部材(60)への係合を解除させ、前記メカニカルキー(33)が前記キー挿脱位置で前記キー孔(28)から引き抜かれるのに応じて第2係合部材(64)の前記シャッター板(34)もしくは前記連動部材(60)への係合を解除させることを特徴とするシリンダ錠の保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−101000(P2010−101000A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270786(P2008−270786)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000155067)株式会社ホンダロック (164)
【Fターム(参考)】