説明

シルフェニレン構造及びシロキサン構造を有する重合体およびその製造方法

【課題】半導体装置及び電子部品のための樹脂材料として好適に使用することができる新規な重合体を提供する。
【解決手段】3つの特定の構造で表される繰返し単位を含有し、テトラヒドロフランを溶出溶媒としてGPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が3,000から500,000である重合体、及びその製造方法を提供する。3つの構造は、それぞれケイ素原子とベンゼン環を含み第1の構造は、脂肪族または脂環族連結、ジフェノール構造を含有する二価の有機基がケイ素原子と結合しており、第2の構造はイソシアヌル環を含有する二価の有機基がケイ素原子と結合しており、第3構造は、シロキサン構造を含有する二価の有機基がケイ素原子と結合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シルフェニレン構造及びシロキサン構造を有する重合体、及び該重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体のウエハサイズは大口径化、薄膜化が進んでおり、また電子部品の小型化、精密化により高度な機能を有する樹脂材料が求められている。シリコーン系材料は絶縁性、可とう性、耐熱性、及び透明性に優れるため、半導体装置や電子部品の為の樹脂材料として積極的に使用されている。
【0003】
特許第3944734号公報には、シロキサン構造及びビスフェノール構造を有する高分子化合物及び該化合物を含有する光硬化性樹脂組成物が開示されている。特許第3944734号公報は、該高分子化合物は幅広い波長の光で露光でき、高弾性で透明性に優れた微細なパターンを形成することが可能であり、該高分子化合物を含有する樹脂組成物の硬化皮膜は、基板との密着性、耐熱性、電気絶縁性、及び強度に優れることを記載している。
【0004】
また、特開2008−184571号公報には、下記式で示される繰り返し単位を有するシルフェニレン骨格含有高分子化合物及び該化合物を含有する光硬化性樹脂組成物が開示されている。
【化1】

[式中、R〜Rは同一でも異なっていてもよい炭素数1〜8の1価炭化水素基を示す。また、mは1〜100の整数であり、aは正数、bは0又は正数であり、0.5≦a/(a+b)≦1.0である。更に、Xは下記一般式で示される2価の有機基である。]
【化2】

特開2008−184571号公報は、上記高分子化合物を含有する光硬化性樹脂組成物が、各種フィルム特性や保護膜としての信頼性に優れた皮膜を形成することを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3944734号公報
【特許文献2】特開2008−184571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、半導体装置及び電子部品のための樹脂材料として好適に使用することができる新規な重合体を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々検討した結果、シロキサン構造及びシルフェニレン構造を有する新規な重合体及びその製造方法を開発した。即ち本発明は、下記式(1−1)、(1−2)及び(1−3)で表される繰返し単位を含有し、テトラヒドロフランを溶出溶媒としてGPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が3,000から500,000である重合体及びその製造方法を提供する。
【化3】

式中、r、s及びtは正の整数であり、式(1−1)、式(1−2)及び式(1−3)で表される繰返し単位を構成する各単位の末端ケイ素原子が各同じ単位あるいは異なる単位のX、XまたはXの末端炭素原子と結合しており、式中、Rは、互いに独立に、炭素数1〜8の1価炭化水素基であり、Xは、互いに独立に、下記式(2)で示される2価の基であり、
【化4】

(式中、Zは、置換または非置換の、炭素数1〜15の2価炭化水素基であり、pは0又は1である。Rは、互いに独立に、炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、qは0、1または2である)
は、互いに独立に、下記式(3)で示される2価の基であり、
【化5】

(式中、Rは水素原子、炭素数1〜8の1価炭化水素基、またはグリシジル基である)
は、互いに独立に、下記式(4)で示される2価の基であり、
【化6】

(式中、Rは、互いに独立に、炭素数1〜8の1価炭化水素基であり、nは0〜100の整数である)。
【発明の効果】
【0008】
本発明はシロキサン構造及びシルフェニレン構造を有する新規な重合体を提供する。該重合体は、半導体装置及び電子部品のための樹脂材料として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は実施例1で調製した重合体のH−NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、上記式(1−1)、式(1−2)及び式(1−3)で表される繰返し単位を含有し、テトラヒドロフランを溶出溶媒としてGPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が3,000から500,000、好ましくは5,000から200,000である重合体である。上記式(1−1)、式(1−2)及び式(1−3)において、r、s及びtは、式(1−1)、式(1−2)及び式(1−3)で表される繰返し単位を構成する各単位の繰返しの数を示す。r、s及びtは正の整数であり、重合体の重量平均分子量が3,000から500,000、好ましくは5,000から200,000となる数であればよく、好ましくは、0.05≦r/(r+s+t)≦0.8、0.1≦s/(r+s+t)≦0.7、及び0.05≦t/(r+s+t)≦0.8を満たす整数であり、更に好ましくは、0.1≦r/(r+s+t)≦0.6、0.2≦s/(r+s+t)≦0.5、及び0.1≦t/(r+s+t)≦0.7を満たす整数である。上記式(1−1)、式(1−2)及び式(1−3)で表される繰返し単位を構成する各単位は、各単位の末端ケイ素原子が各同じ単位あるいは異なる単位のX、XまたはXの末端炭素原子と結合している。各単位はランダムに結合していても、ブロック重合体として結合していてもよい。
【0011】
上記式において、Rは、互いに独立に、炭素数1〜8、好ましくは1〜6 の1価炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、及びフェニル基などが挙げられる。中でもメチル基及びフェニル基が原料の入手の容易さから好ましい。
【0012】
上記式(2)において、Rは、互いに独立に、炭素数1〜4、好ましくは1〜2のアルキル基又はアルコキシ基であり、メチル、エチル基、プロピル基、tert−ブチル基、メトキシ基、及びエトキシ基などが挙げられる。qは0、1または2であり、好ましくは0である。
【0013】
上記式(2)において、Zは、置換または非置換の、炭素数1〜15の2価炭化水素基であり、炭素原子に結合している水素原子の一部または全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換されているものであってもよい。好ましくは、Zは下記に示す基のいずれかより選ばれる2価の基である。pは0又は1である。
【化7】

【0014】
上記式(3)において、Rは水素原子、炭素数1〜8、好ましくは1〜3の1価炭化水素基、またはグリシジル基である。1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0015】
上記式(4)において、Rは、互いに独立に、炭素数1〜8、好ましくは1〜6の1価炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、及びフェニル基が挙げられる。中でもメチル基、及びフェニル基が原料の入手の容易さから好ましい。nは0〜100の整数、好ましくは0〜60の整数である。
【0016】
上記式(1−1)、式(1−2)及び式(1−3)で表される繰返し単位を含有する重合体は下記式で表す事ができる。
【化8】

式中、R、R、R、R、Z、n、p、q、r、s及びtは上述の通りであり、繰返しを構成する各単位の末端ケイ素原子が各同じ単位あるいは異なる単位の末端炭素原子と結合しており、重合体の末端は脂肪族不飽和基またはケイ素原子に結合した水素原子である。
【0017】
本発明はさらに、上記式(1−1)、式(1−2)及び式(1−3)で表される繰返し単位と、下記式(5)で表される単位、下記式(6)で表される単位、及び下記式(7)で表される単位の少なくとも1を有する重合体を提供する。
【化9】

【化10】

【化11】

【0018】
上記式(1−1)、式(1−2)、式(1−3)で表わされる繰返し単位を構成する各単位と、式(5)で表わされる単位と、式(6)で表わされる単位と、及び式(7)で表わされる単位とは、各単位の末端ケイ素原子が各同じ単位あるいは異なる単位の末端炭素原子と結合している。各単位はランダムに結合していても、ブロック重合体として結合していてもよい。上記式(5)において、Xは、互いに独立に、上記X、XまたはXで示される基であり、mは0〜100の整数、好ましくは1〜60の整数である。上記式(6)及び式(7)において、e、f、g、h、i及びjは0〜100の整数であり、好ましくは0から30である。但し、e+f+g≧3であり、e=f=0ではなく、h=i=0ではない。また、上記式(5)、式(6)及び式(7)においてRは上述の通りである。
【0019】
本発明の重合体は、X、X及びXで示される基の合計モルに対して、X(即ち、上記式(2))で表される基を5モル%以上80モル%以下、好ましくは10モル%以上60モル%以下、X2(即ち、上記式(3))で表される基を10モル%以上70モル%以下、好ましくは20モル%以上50モル%以下、X(即ち、上記式(4))で表される基を5モル%以上80モル%以下、好ましくは10モル%以上70モル%以下で含有する。
【0020】
本発明の重合体は、上記式(5)、式(6)及び式(7)で表わされる単位のうち1種、あるいは2種以上を有する事ができる。各単位の繰返しの数は、重合体の、GPCで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が3,000から500,000、好ましくは5,000から200,000となる数であればよい。好ましくは、上記式(1−1)、式(1−2)及び式(1−3)で表される繰返し単位が有する繰返し数の合計(即ち、r+s+t)をa(aは正の整数)、上記式(5)で示される単位の繰返し数をb、上記式(6)で示される単位の繰返し数をc、上記式(7)で示される単位の繰返し数をdとした時に(b、c及びdは整数)、a、b、c及びdの合計に対するaの数が0.05≦a/(a+b+c+d)≦0.99、好ましくは0.2≦a/(a+b+c+d)≦0.98となる数であるのがよい。重合体が上記式(5)で示される単位を有する場合は、該単位の繰返しの数は0.01≦b/(a+b+c+d)≦0.95、好ましくは0.05≦b/(a+b+c+d)≦0.8となる数がよい。重合体が上記式(6)で示される単位を有する場合は、該単位の繰返しの数は0.01≦c/(a+b+c+d)≦0.8、好ましくは0.05≦c/(a+b+c+d)≦0.5となる数がよい。重合体が上記式(7)で示される単位を有する場合は、該単位の繰返しの数は0.01≦d/(a+b+c+d)≦0.8、好ましくは0.01≦d/(a+b+c+d)≦0.5となる数がよい。
【0021】
本発明の重合体は上述した単位に加えて、更に下記に示す単位を含んでいてもよい。
【化12】

【化13】

式中、R、X、e、f、g、h、i、及びjは上述の通りであり、各単位の末端炭素原子は、上述した各単位の末端ケイ素原子と結合する。
【0022】
上記式(1−1)、式(1−2)及び式(1−3)で表される繰返し単位と式(5)で表される単位を有する重合体は、例えば、下記式で示す事ができる。
【化14】

式中、R、R、R、R、Z、n、m、p、q、r、s、t及びbは上述の通りであり、繰返しを構成する各単位の末端ケイ素原子が各同じ単位あるいは異なる単位の末端炭素原子と結合しており、重合体の末端は脂肪族不飽和基またはケイ素原子に結合した水素原子である。
【0023】
上記式(1−1)、式(1−2)及び式(1−3)で表される繰返し単位と、式(6)で表される単位を有する重合体は、例えば、下記式で示す事ができる。
【化15】

式中、R、R、R、R、Z、n、p、q、e、f、g、r、s、t及びcは上述の通りであり、繰返しを構成する各単位の末端ケイ素原子が各同じ単位あるいは異なる単位の末端炭素原子と結合しており、重合体の末端は脂肪族不飽和基またはケイ素原子に結合した水素原子である。
【0024】
上記式(1−1)、式(1−2)及び式(1−3)で表される繰返し単位と、式(7)で表される単位を有する重合体は、例えば、下記式で示す事ができる。
【化16】

式中、R、R、R、R、Z、n、p、q、h、i、j、r、s、t及びdは上述の通りであり、繰返しを構成する各単位の末端ケイ素原子が各同じ単位あるいは異なる単位の末端炭素原子と結合しており、重合体の末端は脂肪族不飽和基またはケイ素原子に結合した水素原子である。
【0025】
本発明は更に、上述した重合体の製造方法を提供する。
【0026】
上記式(1−1)、式(1−2)及び式(1−3)で表される繰返し単位を有する重合体は、下記式(8)で表される化合物と、下記式(9)で表される化合物と、下記式(10)で表される化合物と、下記式(11)で表される化合物とを、金属触媒存在下で付加重合する工程を含む方法により製造する。
【化17】

(式中、Rは上述の通りである)
【化18】

(式中、Z、R、p及びqは上述の通りである)
【化19】

(式中、Rは上述の通りである)
【化20】

(式中、R及びnは上述の通りである)
【0027】
上記式(11)で表わされる化合物としては下記のものが挙げられる。
【化21】

【0028】
本発明は、さらに、上記式(8)で表される化合物と、上記式(9)で表される化合物と、上記式(10)で表される化合物と、上記式(11)で表される化合物と、並びに下記式(12)で表される化合物、下記式(13)で表される化合物、及び下記式(14)で表される化合物の少なくとも1とを金属触媒下に付加重合させる工程を含む方法を提供する。当該方法により、上記式(1−1)、式(1−2)及び式(1−3)で表される繰返し単位と、上記式(5)で表される単位、上記式(6)で表される単位、及び上記式(7)で表される単位の少なくとも1とを有する重合体を製造することができる。
【化22】

【化23】

【化24】

(式中、R、m、e、f、g、h、i及びjは上述の通りである)
【0029】
上記式(13)で表わされる化合物としては下記のものが挙げられる。
【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【0030】
上記式(14)で表わされる化合物としては下記のものが挙げられる。
【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【0031】
金属触媒は、例えば、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;HPtCl・xHO、HPtCl・xHO、NaHPtCl・xHO、KHPtCl・xHO、NaPtCl・xHO、KPtCl・xHO、PtCl・xHO、PtCl、NaHPtCl・xHO(式中、xは0〜6の整数が好ましく、特に0又は6が好ましい)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(例えば、米国特許第3,220,972号に記載のもの);塩化白金酸とオレフィンとの錯体(例えば、米国特許第3,159,601号明細書、米国特許第3,159,662号明細書、及び米国特許第3,775,452号明細書に記載のもの);白金黒やパラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム−オレフィン錯体;クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(所謂ウィルキンソン触媒);及び、塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン(特にビニル基含有環状シロキサン)との錯体を使用することができる。
【0032】
触媒の使用量は触媒量であればよく、白金族金属として、反応に供する原料化合物の総量に対して0.0001〜0.1質量%、好ましくは0.001〜0.01質量%であることが好ましい。付加反応は溶剤が存在しなくても実施可能であるが、必要に応じて溶剤を使用しても良い。溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤が好ましい。反応温度は、触媒が失活せず、かつ、短時間で重合の完結が可能である温度であればよく、例えば40〜150℃、特に60〜120℃が好ましい。反応時間は、重合物の種類及び量により適宜選択すればよく、例えば0.5〜100時間、特に0.5〜30時間が好ましい。溶剤を使用した場合には、反応終了後に減圧留去に供して溶剤を留去する。
【0033】
反応方法は特に制限されるものではないが、例えば、式(8)で表わされる化合物と、式(9)で表わされる化合物と、式(10)で表わされる化合物と、式(11)で表わされる化合物とを反応させる場合、先ず、式(9)、式(10)及び式(11)で表わされる化合物を混合して加温した後、前記混合液に金属触媒を添加し、次いで式(8)で表される化合物を0.1〜5時間かけて滴下するのが良い。式(12)で表わされる化合物を反応させる場合には、式(8)で表される化合物と式(12)で表される化合物とを、別々にあるいは同時に、必要に応じで混合して、0.1〜5時間かけて滴下するのが良い。
【0034】
式(13)で表される化合物及び式(14)で表される化合物を反応させる場合には、先ず、式(8)、式(9)、式(10)、及び式(11)で表わされる化合物と、必要に応じて式(12)で表わされる化合物とを付加重合に供し、0.5〜100時間、特に0.5〜30時間攪拌した後、得られた反応液中に式(13)で表される化合物、または式(14)で表される化合物を0.1〜5時間かけて滴下し、1〜10時間、特に2〜5時間攪拌するのが良い。式(8)〜(12)で表される化合物と、式(13)または(14)で表される化合物とを同時に反応させると生成物がゲル化するおそれがある。
【0035】
各化合物の配合比は、上記式(8)、式(12)、式(13)、及び式(14)で表される化合物が有するヒドロシリル基のモル数の合計と、上記式(9)、式(10)、式(11)、式(13)、及び式(14)で表される化合物が有するアルケニル基のモル数の合計が、アルケニル基の合計モル数に対するヒドロシリル基の合計モル数が0.67〜1.67、好ましくは0.83〜1.25となるように配合するのがよい。重合体の重量平均分子量はo−アリルフェノールのようなモノアリル化合物、又は、トリエチルヒドロシランのようなモノヒドロシランやモノヒドロシロキサンを分子量調整剤として使用することにより制御することが可能である。
【0036】
本発明の重合体は、半導体装置及び電子部品のための樹脂材料として好適に用いることができる。本発明の重合体を用いて樹脂材料を調製する方法は特に制限されるものではなく、従来公知の方法に従えばよい。樹脂材料としての使用態様は、例えば、半導体装置の製造に使用される封止剤あるいは接着剤;ダイオード、トランジスタ、IC、及びLSI等の電子部品表面の保護膜材料、例えば、半導体素子表面のジャンクションコート膜、パッシベーション膜及びバッファーコート膜;LSI等のα線遮蔽膜;多層配線の層間絶縁膜;プリントサーキットボードのコンフォーマルコート;イオン注入マスク;太陽電池の表面保護膜などが挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を示して本発明をさらに説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0038】
実施例において、各重合体の重量平均分子量は、GPCカラム TSKgel Super HZM−H(東ソー社製)を用い、流量0.6ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。また、各重合体の1H−NMR分析は、JNM−LA300WB(JEOL社製)を用い、測定溶媒として重クロロホルムを使用して実施した。
【0039】
実施例1〜5において使用した化合物を以下に示す。
【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【0040】
[実施例1]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に、上記式(S−1)で示される化合物86.1g(0.2モル)、上記式(S−3)で示される化合物93.0g(0.5モル)、および上記式(S−5)で示される化合物66.9g(0.3モル)を加えた後、トルエン1300gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5wt%)1.0gを投入し、上記式(S−6)で示される化合物194.4g(1.0モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=1/1)。滴下終了後、100℃まで加温し6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去して得られた生成物の構造をH−NMRを用いて解析したところ、下記式で示される重合体であった。H−NMRチャートを図1に示す。また、該重合体のGPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は42,000であった。
【0041】
【化42】

(式中、r/(r+s+t)=0.2、s/(r+s+t)=0.3、及びt/(r+s+t)=0.5であり、各単位の末端ケイ素原子が各同じ単位あるいは異なる単位の末端炭素原子と結合しており、重合体の片末端はアルケニル基であり、もう一方の末端はケイ素原子に結合している水素原子である)
【0042】
[実施例2]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に上記式(S−1)で示される化合物71.8g(0.167モル)、上記式(S−4)で示される化合物333.3g(0.074モル)および上記式(S−5)で示される化合物14.9g(0.067モル)を加えた後、トルエン1150gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5wt%)1.0gを投入し、上記式(S−6)で示される化合物64.8g(0.333モル)を30分かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=1.08/1)。滴下終了後、100℃まで加温し、6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去して得られた生成物の構造をH−NMRを用いて解析したところ、下記式で示される重合体であった。GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は55,000であった。
【0043】
【化43】

(式中、r/(r+s+t)=0.5、s/(r+s+t)=0.2、及びt/(r+s+t)=0.3であり、各単位の末端ケイ素原子が各同じ単位あるいは異なる単位の末端炭素原子と結合しており、重合体の片末端はアルケニル基であり、もう一方の末端はケイ素原子に結合している水素原子である)
【0044】
[実施例3]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に上記式(S−2)で示される化合物61.8g(0.2モル)、上記式(S−3)で示される化合物93.0g(0.5モル)および上記式(S−5)で示される化合物66.9g(0.3モル)を加えた後、トルエン1000gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5wt%)1.0gを投入し、上記式(S−6)で示される化合物179.0g(0.92モル)および上記式(S−7)で示される化合物54.8g(0.075モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=1/1)。滴下終了後、100℃まで加温し、6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去して得られた生成物の構造をH−NMRを用いて解析したところ、下記式で示される重合体であった。GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は52,000であった。
【0045】
【化44】

(式中、r/(r+s+t+b)=0.2、s/(r+s+t+b)=0.3、t/(r+s+t+b)=0.4、及びb/(r+s+t+b)=0.1であり、各単位の末端ケイ素原子が各同じ単位あるいは異なる単位の末端炭素原子と結合しており、重合体の片末端はアルケニル基であり、もう一方の末端はケイ素原子に結合している水素原子である)
【0046】
[実施例4]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に上記式(S−2)で示される化合物61.8g(0.2モル)、上記式(S−3)で示される化合物93.0g(0.5モル)および上記式(S−5)で示される化合物66.9g(0.3モル)を加えた後、トルエン1000gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5wt%)1.0gを投入し、上記式(S−6)で示される化合物179.0g(0.92モル)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃まで加温し、6時間熟成したのち、さらに上記式(S−8)で示される化合物26.8g(0.083モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=1/1)。滴下終了後、100℃にて2時間熟成した後、得られた反応溶液からトルエンを減圧留去して得られた生成物の構造をH−NMRを用いて解析したところ、下記式で示される重合体であった。また、GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は66,000であった。
【0047】
【化45】

(式中、r/(r+s+t+c)=0.2、s/(r+s+t+c)=0.3、t/(r+s+t+c)=0.4、及びc/(r+s+t+c)=0.1であり、各単位の末端ケイ素原子が各同じ単位あるいは異なる単位の末端炭素原子と結合しており、重合体の片末端はアルケニル基であり、もう一方の末端はケイ素原子に結合している水素原子である)
【0048】
[実施例5]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に上記式(S−1)で示される化合物142.1g(0.33モル)、上記式(S−3)で示される化合物70.7g(0.38モル)および上記式(S−5)で示される化合物66.9g(0.3モル)を加えた後、トルエン1500gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5wt%)2.0gを投入し、上記式(S−6)で示される化合物190.5g(0.98モル)を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃まで加温し、6時間熟成したのち、さらに上記式(S−9)で示される化合物6.8g(0.01モル)を0.1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=1/1.03)。滴下終了後、100℃にて2時間熟成した後、得られた反応溶液からトルエンを減圧留去して得られた生成物の構造をH−NMRを用いて解析したところ、下記式で示される重合体であった。GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は50,000であった。
【化46】

(式中、r/(r+s+t+d)=0.32、s/(r+s+t+d)=0.29、t/(r+s+t+d)=0.37、及びd/(r+s+t+d)=0.01であり、各単位の末端ケイ素原子が各同じ単位あるいは異なる単位の末端炭素原子と結合しており、重合体の片末端はアルケニル基であり、もう一方の末端はケイ素原子に結合している水素原子である)
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の重合体は半導体装置及び電子部品ための樹脂材料として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1−1)、(1−2)及び(1−3)で表される繰返し単位を含有し、テトラヒドロフランを溶出溶媒としてGPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が3,000から500,000である重合体
【化1】

式中、r、s及びtは正の整数であり、式(1−1)、式(1−2)及び式(1−3)で表される繰返し単位を構成する各単位の末端ケイ素原子が各同じ単位あるいは異なる単位のX、XまたはXの末端炭素原子と結合しており、式中、Rは、互いに独立に、炭素数1〜8の1価炭化水素基であり、Xは、互いに独立に、下記式(2)で示される2価の基であり、
【化2】

(式中、Zは、置換または非置換の、炭素数1〜15の2価炭化水素基であり、pは0又は1である。Rは、互いに独立に、炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、qは0、1または2である)
は、互いに独立に、下記式(3)で示される2価の基であり、
【化3】

(式中、Rは水素原子、炭素数1〜8の1価炭化水素基、またはグリシジル基である)
は、互いに独立に、下記式(4)で示される2価の基であり、
【化4】

(式中、Rは、互いに独立に、炭素数1〜8の1価炭化水素基であり、nは0〜100の整数である)。

【請求項2】
式(2)において、Zが

のいずれかより選ばれる基である、請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
さらに下記式(5)で表される単位、下記式(6)で表される単位、及び下記式(7)で表される単位の少なくとも1を有する請求項1または2に記載の重合体
【化5】

【化6】

【化7】

(式中、Rは、互いに独立に、炭素数1〜8の1価炭化水素基であり、mは0〜100の整数であり、e、f、g、h、i及びjは0〜100の整数であり、但し、e+f+g≧3であり、e=f=0ではなく、h=i=0ではない。Xは、互いに独立に、上記X、XまたはXで示される基であり、上記式(1−1)、式(1−2)及び式(1−3)で表される繰返し単位を構成する各単位、及び上記式(5)、式(6)、及び式(7)で表される単位の末端ケイ素原子が各同じ単位あるいは異なる単位の末端炭素原子と結合している)。
【請求項4】
、X及びXで示される基の合計モルに対して、Xで表される基を5モル%以上80モル%以下、Xで表される基を10モル%以上70モル%以下、Xで表される基を5モル%以上80モル%以下で含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合体。
【請求項5】
請求項1に記載の重合体を製造する方法であって、下記式(8)で表される化合物と、
【化8】

(式中、Rは、互いに独立に、炭素数1〜8の1価炭化水素基である)下記式(9)で表される化合物と、
【化9】

(式中、Zは、置換または非置換の、炭素数1〜15の2価炭化水素基であり、pは0又は1である。Rは、互いに独立に、炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、qは0、1または2である)下記式(10)で表される化合物と、
【化10】

(式中、Rは水素原子、炭素数1〜8の1価炭化水素基、またはグリシジル基である)
下記式(11)で表される化合物
【化11】

(式中、Rは、互いに独立に、炭素数1〜8の1価炭化水素基であり、nは0〜100の整数である)とを金属触媒存在下で付加重合する工程を含む製造方法。
【請求項6】
請求項3に記載の重合体を製造する方法であって、下記式(8)で表される化合物と、
【化12】

(式中、Rは、互いに独立に、炭素数1〜8の1価炭化水素基である)下記式(9)で表される化合物と、
【化13】

(式中、Zは、置換または非置換の、炭素数1〜15の2価炭化水素基であり、pは0又は1である。Rは、互いに独立に、炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、qは0、1または2である)下記式(10)で表される化合物と、
【化14】

(式中、Rは水素原子、炭素数1〜8の1価炭化水素基、またはグリシジル基である)下記式(11)で表される化合物と

【化15】

(式中、Rは、互いに独立に、炭素数1〜8の1価炭化水素基であり、nは0〜100の整数である)、並びに下記式(12)で表される化合物、下記式(13)で表される化合物、及び下記式(14)で表される化合物の少なくとも1
【化16】

【化17】

【化18】

(式中、Rは、互いに独立に、炭素数1〜8の1価炭化水素基であり、mは1〜100の整数である。e、f、g、h、i及びjは0〜100の整数であり、但し、e+f+g≧3であり、e=f=0ではなく、h=i=0ではない)
とを金属触媒存在下で付加重合する工程を含む製造方法。
【請求項7】
式(9)において、Zが

のいずれかより選ばれる基である、請求項5または6に記載の、重合体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−241161(P2012−241161A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115020(P2011−115020)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】