説明

シロキサン結合を有するオルガノキシシラン化合物及びその製造方法

【解決手段】 下記一般式(1)
(R1nSi{OSi(CH3m(OR23-m4-n (1)
(式中、R1は同一又は異なる炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、少なくとも1つは炭素数3〜10の1価炭化水素基、R2は炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、mは0,1又は2、nは1、2又は3である。)
で示されるシロキサン結合を有するオルガノキシシラン化合物。
【効果】 本発明によれば、シロキサン結合を有するオルガノキシシラン化合物を撥水処理剤として用いると、従来の撥水処理剤に比べ、耐候性、持続性に優れ、より高い撥水性を付与することができる。また、この新規化合物はシロキサンを導入することのできる高分子変性剤やシリル化剤としても有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスや金属表面の撥水処理剤、高分子変性剤、シリル化剤等として有用なシロキサン結合を有するオルガノキシシラン化合物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガラスや金属表面を有機ケイ素化合物で処理し、それぞれの表面に撥水性を付与することは公知である。従来、撥水処理剤としては、例えば特公昭50−15473号公報(特許文献1)、特公昭63−67828号公報(特許文献2)記載のアルキルポリシロキサン化合物が用いられてきた。しかしながら、上記のアルキルポリシロキサン化合物を用いた場合は撥水性は充分でなく(水滴の接触角が小さい、転落角の値が大きい、即ち水滴が滑りにくい)、また耐候性、持続性に劣るという問題点がある。
【0003】
耐候性、持続性を改良した撥水処理剤として、「シリコーンハンドブック」(日刊工業新聞社、伊藤邦雄著)p.79,9行目〜p.80,5行目に記載のアルキルオルガノキシシラン化合物、フルオロアルキルオルガノキシシラン化合物が例示される。これらの化合物は、オルガノキシシラン化合物を部分加水分解縮合させたものを撥水処理剤として用いるため、ガラス等の表面の水酸基と共有結合を用いて強固に結合することができ、耐候性、持続性が改良されている。
【0004】
しかしながら、アルキルオルガノキシシラン化合物を用いた場合、上記の撥水性(接触角、転落角)については依然充分ではなかった。また、フルオロアルキルオルガノキシシラン化合物に関しては、撥水性は改良されているものの、高価であり、また一般の溶剤に不溶であるため、撥水剤として使用する際の溶剤として高価で特殊なフッ素系溶剤を用いなければならず、高コスト、環境への負荷がかかるという問題点がある。
【0005】
【特許文献1】特公昭50−15473号公報
【特許文献2】特公昭63−67828号公報
【非特許文献1】「シリコーンハンドブック」日刊工業新聞社、伊藤邦雄著、p.79,9行目〜p.80,5行目
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、耐候性、持続性を有し、一般の溶剤に可溶であり、高い撥水性を付与することのできるシロキサン結合を有するオルガノキシシラン化合物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)
(R1nSi{OSi(CH3m(OR23-m4-n (1)
(式中、R1は同一又は異なる炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、少なくとも1つは炭素数3〜10の1価炭化水素基、R2は炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、mは0、1又は2、nは1、2又は3である。)
で示されるシロキサン結合を有するオルガノキシシラン化合物が、一般の溶剤に可溶であり、ガラスや金属表面の撥水処理剤として用いた時に、耐候性、持続性に優れ、且つより高い撥水性を付与することができること、またこの新規化合物がシロキサンを導入することのできる高分子変性剤やシリル化剤としても有用であることを知見し、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
従って、本発明は下記シラン化合物及びその製造方法を提供する。
[I] 下記一般式(1)
(R1nSi{OSi(CH3m(OR23-m4-n (1)
(式中、R1は同一又は異なる炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、少なくとも1つは炭素数3〜10の1価炭化水素基、R2は炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、mは0,1又は2、nは1、2又は3である。)
で示されるシロキサン結合を有するオルガノキシシラン化合物。
[II] 一般式(1)で示されるシロキサン結合を有するオルガノキシシラン化合物が、t−ブチルジメチルシロキシトリメトキシシラン、t−ブチルジメチルシロキシトリエトキシシラン、トリイソプロピルシロキシトリメトキシシラン、又はトリイソプロピルシロキシトリエトキシシランである[I]のシロキサン結合を有するオルガノキシシラン化合物。
[III] 下記一般式(2)
(R1nSi(OH)4-n (2)
(式中R1、nは上記と同様である。)
で示されるシラノール化合物と、下記一般式(3)
【化1】

(式中、R2、mは上記と同様であり、R3、R4は水素原子又は炭素数1〜10の1価炭化水素基、R5は炭素数1〜10の1価炭化水素基である。)
で示されるシリルケテンアセタール化合物とを酸触媒存在下に反応させることを特徴とする[I]のシロキサン結合を有するオルガノキシシラン化合物の製造方法。
[IV]下記一般式(2)
(R1nSi(OH)4-n (2)
(式中R1、nは上記と同様である。)
で示されるシラノール化合物と、下記一般式(4)
Si(CH3m(OR24-m (4)
(式中、R2、mは上記と同様である。)
で示されるオルガノキシシラン化合物とを触媒存在下に反応させることを特徴とする[I]のシロキサン結合を有するオルガノキシシラン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シロキサン結合を有するオルガノキシシラン化合物を撥水処理剤として用いると、従来の撥水処理剤に比べ、耐候性、持続性に優れ、より高い撥水性を付与することができる。また、この新規化合物は、シロキサンを導入することのできる高分子変性剤やシリル化剤としても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の化合物は、下記一般式(1)で示されるオルガノキシシラン化合物である。
(R1nSi{OSi(CH3m(OR23-m4-n (1)
(式中、R1は同一又は異なる炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、少なくとも1つは炭素数3〜10の1価炭化水素基、R2は炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、mは0,1又は2、nは1、2又は3である。)
【0011】
この場合、上記一般式(1)のR1、R2の1価炭化水素基は、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられるが、R1がすべて炭素数2以下の1価炭化水素基であると、撥水性が劣るため好ましくない。
【0012】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、テキシル基、オクチル基、デシル基、ノルボルニル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ノルボニル基等が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
【0013】
なお、R2としては、特にアルキル基、とりわけ1〜6、更に好ましくは1〜4のアルキル基であることが好ましい。
【0014】
本発明のオルガノキシシラン化合物は、具体的にはプロピルジメチルシロキシトリメトキシシラン、プロピルジメチルシロキシメチルジメトキシシラン、プロピルジメチルシロキシジメチルメトキシシラン、イソプロピルジメチルシロキシトリメトキシシラン、イソプロピルジメチルシロキシメチルジメトキシシラン、イソプロピルジメチルシロキシジメチルメトキシシラン、ブチルジメチルシロキシトリメトキシシラン、ブチルジメチルシロキシメチルジメトキシシラン、ブチルジメチルシロキシジメチルメトキシシラン、イソブチルジメチルシロキシトリメトキシシラン、イソブチルジメチルシロキシメチルジメトキシシラン、イソブチルジメチルシロキシジメチルメトキシシラン、ヘキシルジメチルシロキシトリメトキシシラン、ヘキシルジメチルシロキシメチルジメトキシシラン、ヘキシルジメチルシロキシジメチルメトキシシラン、オクチルジメチルシロキシトリメトキシシラン、オクチルジメチルシロキシメチルジメトキシシラン、オクチルジメチルシロキシジメチルメトキシシラン、デシルジメチルシロキシトリメトキシシラン、デシルジメチルシロキシメチルジメトキシシラン、デシルジメチルシロキシジメチルメトキシシラン、t−ブチルジメチルシロキシトリメトキシシラン、t−ブチルジメチルシロキシメチルジメトキシシラン、t−ブチルジメチルシロキシジメチルメトキシシラン、トリイソプロピルシロキシトリメトキシシラン、トリイソプロピルシロキシメチルジメトキシシラン、トリイソプロピルシロキシジメチルメトキシシラン、テキシルジメチルシロキシトリメトキシシラン、テキシルジメチルシロキシメチルジメトキシシラン、テキシルジメチルシロキシジメチルメトキシシラン、シクロヘキシルジメチルシロキシトリメトキシシラン、シクロヘキシルジメチルシロキシメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルジメチルシロキシジメチルメトキシシラン、ノルボルニルジメチルシロキシトリメトキシシラン、ノルボルニルジメチルシロキシメチルジメトキシシラン、ノルボルニルジメチルシロキシジメチルメトキシシラン、t−ブチルジフェニルシロキシトリメトキシシラン、t−ブチルジフェニルシロキシメチルジメトキシシラン、t−ブチルジフェニルシロキシジメチルメトキシシラン、トリフェニルシロキシトリメトキシシラン、トリフェニルシロキシメチルジメトキシシラン、トリフェニルシロキシジメチルメトキシシラン、ジシクロペンチルビス(トリメトキシシロキシ)シラン、ジシクロペンチルビス(メチルジメトキシシロキシ)シラン、ジシクロペンチルビス(ジメチルメトキシシロキシ)シラン、ジシクロヘキシルビス(トリメトキシシロキシ)シラン、ジシクロヘキシルビス(メチルジメトキシシロキシ)シラン、ジシクロヘキシルビス(ジメチルメトキシシロキシ)シラン、シクロヘキシルメチルビス(トリメトキシシロキシ)シラン、シクロヘキシルメチルビス(メチルジメトキシシロキシ)シラン、シクロヘキシルメチルビス(ジメチルメトキシシロキシ)シラン、ノルボルニルメチルビス(トリメトキシシロキシ)シラン、ノルボルニルメチルビス(メチルジメトキシシロキシ)シラン、ノルボルニルメチルビス(ジメチルメトキシシロキシ)シラン、ジフェニルビス(トリメトキシシロキシ)シラン、ジフェニルビス(メチルジメトキシシロキシ)シラン、ジフェニルビス(ジメチルメトキシシロキシ)シラン、t−ブチルメチルビス(トリメトキシシロキシ)シラン、t−ブチルメチルビス(メチルジメトキシシロキシ)シラン、t−ブチルメチルビス(ジメチルメトキシシロキシ)シラン、テキシルメチルビス(トリメトキシシロキシ)シラン、テキシルメチルビス(メチルジメトキシシロキシ)シラン、テキシルメチルビス(ジメチルメトキシシロキシ)シラン、t−ブチルトリス(トリメトキシシロキシ)シラン、t−ブチルトリス(メチルジメトキシシロキシ)シラン、t−ブチルトリス(ジメチルメトキシシロキシ)シラン、テキシルトリス(トリメトキシシロキシ)シラン、テキシルトリス(メチルジメトキシシロキシ)シラン、テキシルトリス(ジメチルメトキシシロキシ)シラン、フェニルトリス(トリメトキシシロキシ)シラン、フェニルトリス(メチルジメトキシシロキシ)シラン、フェニルトリス(ジメチルメトキシシロキシ)シラン、プロピルジメチルシロキシトリエトキシシラン、プロピルジメチルシロキシメチルジエトキシシラン、プロピルジメチルシロキシジメチルエトキシシラン、イソプロピルジメチルシロキシトリエトキシシラン、イソプロピルジメチルシロキシメチルジエトキシシラン、イソプロピルジメチルシロキシジメチルエトキシシラン、ブチルジメチルシロキシトリエトキシシラン、ブチルジメチルシロキシメチルジエトキシシラン、ブチルジメチルシロキシジメチルエトキシシラン、イソブチルジメチルシロキシトリエトキシシラン、イソブチルジメチルシロキシメチルジエトキシシラン、イソブチルジメチルシロキシジメチルエトキシシラン、ヘキシルジメチルシロキシトリエトキシシラン、ヘキシルジメチルシロキシメチルジエトキシシラン、ヘキシルジメチルシロキシジメチルエトキシシラン、オクチルジメチルシロキシトリエトキシシラン、オクチルジメチルシロキシメチルジエトキシシラン、オクチルジメチルシロキシジメチルエトキシシラン、デシルジメチルシロキシトリエトキシシラン、デシルジメチルシロキシメチルジエトキシシラン、デシルジメチルシロキシジメチルエトキシシラン、t−ブチルジメチルシロキシトリエトキシシラン、t−ブチルジメチルシロキシメチルジエトキシシラン、t−ブチルジメチルシロキシジメチルエトキシシラン、トリイソプロピルシロキシトリエトキシシラン、トリイソプロピルシロキシメチルジエトキシシラン、トリイソプロピルシロキシジメチルエトキシシラン、テキシルジメチルシロキシトリエトキシシラン、テキシルジメチルシロキシメチルジエトキシシラン、テキシルジメチルシロキシジメチルエトキシシラン、シクロヘキシルジメチルシロキシトリエトキシシラン、シクロヘキシルジメチルシロキシメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルジメチルシロキシジメチルエトキシシラン、ノルボルニルジメチルシロキシトリエトキシシラン、ノルボルニルジメチルシロキシメチルジエトキシシラン、ノルボルニルジメチルシロキシジメチルエトキシシラン、t−ブチルジフェニルシロキシトリエトキシシラン、t−ブチルジフェニルシロキシメチルジエトキシシラン、t−ブチルジフェニルシロキシジメチルエトキシシラン、トリフェニルシロキシトリエトキシシラン、トリフェニルシロキシメチルジエトキシシラン、トリフェニルシロキシジメチルエトキシシラン、ジシクロペンチルビス(トリエトキシシロキシ)シラン、ジシクロペンチルビス(メチルジエトキシシロキシ)シラン、ジシクロペンチルビス(ジメチルエトキシシロキシ)シラン、ジシクロヘキシルビス(トリエトキシシロキシ)シラン、ジシクロヘキシルビス(メチルジエトキシシロキシ)シラン、ジシクロヘキシルビス(ジメチルエトキシシロキシ)シラン、シクロヘキシルメチルビス(トリエトキシシロキシ)シラン、シクロヘキシルメチルビス(メチルジエトキシシロキシ)シラン、シクロヘキシルメチルビス(ジメチルエトキシシロキシ)シラン、ノルボルニルメチルビス(トリエトキシシロキシ)シラン、ノルボルニルメチルビス(メチルジエトキシシロキシ)シラン、ノルボルニルメチルビス(ジメチルエトキシシロキシ)シラン、ジフェニルビス(トリエトキシシロキシ)シラン、ジフェニルビス(メチルジエトキシシロキシ)シラン、ジフェニルビス(ジメチルエトキシシロキシ)シラン、t−ブチルメチルビス(トリエトキシシロキシ)シラン、t−ブチルメチルビス(メチルジエトキシシロキシ)シラン、t−ブチルメチルビス(ジメチルエトキシシロキシ)シラン、テキシルメチルビス(トリエトキシシロキシ)シラン、テキシルメチルビス(メチルジエトキシシロキシ)シラン、テキシルメチルビス(ジメチルエトキシシロキシ)シラン、t−ブチルトリス(トリエトキシシロキシ)シラン、t−ブチルトリス(メチルジエトキシシロキシ)シラン、t−ブチルトリス(ジメチルエトキシシロキシ)シラン、テキシルトリス(トリエトキシシロキシ)シラン、テキシルトリス(メチルジエトキシシロキシ)シラン、テキシルトリス(ジメチルエトキシシロキシ)シラン、フェニルトリス(トリエトキシシロキシ)シラン、フェニルトリス(メチルジエトキシシロキシ)シラン、フェニルトリス(ジメチルエトキシシロキシ)シランであり、好ましくは上記化合物のうち、R1がすべて炭素数3以上、及び/又はR1の少なくとも1つは分岐状又は環状炭化水素基である化合物であり、より好ましくはt−ブチルジメチルシロキシトリメトキシシラン、t−ブチルジメチルシロキシトリエトキシシラン、トリイソプロピルシロキシトリメトキシシラン、トリイソプロピルシロキシトリエトキシシランである。
【0015】
また、本発明における上記一般式(1)で示されるオルガノキシシラン化合物の製造法は、例えば下記一般式(2)
(R1nSi(OH)4-n (2)
(式中、R1、nは上記と同様である。)
で示されるシラノール化合物と、下記一般式(3)
【化2】

(式中、R2、mは上記と同様、R3、R4は水素原子又は炭素数1〜10の1価炭化水素基、R5は炭素数1〜10の1価炭化水素基である。)
で示されるシリルケテンアセタール化合物とを酸触媒存在下に反応させる方法が例示される。
ここで、R3〜R5の1価炭化水素基としては、R1、R2と同様のものが例示される。
【0016】
上記一般式(2)で示されるシラノール化合物としては、具体的にはプロピルジメチルシラノール、イソプロピルジメチルシラノール、ブチルジメチルシラノール、イソブチルジメチルシラノール、ヘキシルジメチルシラノール、オクチルジメチルシラノール、デシルジメチルシラノール、t−ブチルジメチルシラノール、トリイソプロピルシラノール、テキシルジメチルシラノール、シクロヘキシルジメチルシラノール、ノルボルニルジメチルシラノール、t−ブチルジフェニルシラノール、トリフェニルシラノール、ジシクロペンチルジシラノール、ジシクロヘキシルジシラノール、シクロヘキシルメチルジシラノール、ノルボルニルメチルジシラノール、ジフェニルジシラノール、t−ブチルメチルジシラノール、テキシルメチルジシラノール、t−ブチルトリシラノール、テキシルトリシラノール、フェニルトリシラノール等が例示される。
【0017】
また、上記反応で用いられる上記一般式(3)で示されるシリルケテンアセタール化合物は、特許第3009327号公報記載の不飽和カルボン酸エステルとハイドロジェンシラン化合物との反応により製造することができる。
【0018】
このシリルケテンアセタール化合物としては、具体的には1−トリメトキシシロキシ−1−メトキシ−1−プロペン、1−メチルジメトキシシロキシ−1−メトキシ−1−プロペン、1−ジメチルメトキシシロキシ−1−メトキシ−1−プロペン、1−トリメトキシシロキシ−1−エトキシ−1−プロペン、1−メチルジメトキシシロキシ−1−エトキシ−1−プロペン、1−ジメチルメトキシシロキシ−1−エトキシ−1−プロペン、1−トリメトキシシロキシ−1−ブトキシ−1−プロペン、1−メチルジメトキシシロキシ−1−ブトキシ−1−プロペン、1−ジメチルメトキシシロキシ−1−ブトキシ−1−プロペン、1−トリメトキシシロキシ−1−(2−エチル−1−ヘキシロキシ)−1−プロペン、1−メチルジメトキシシロキシ−1−(2−エチル−1−ヘキシロキシ)−1−プロペン、1−ジメチルメトキシシロキシ−1−(2−エチル−1−ヘキシロキシ)−1−プロペン、1−トリエトキシシロキシ−1−メトキシ−1−プロペン、1−メチルジエトキシシロキシ−1−メトキシ−1−プロペン、1−ジメチルエトキシシロキシ−1−メトキシ−1−プロペン、1−トリエトキシシロキシ−1−エトキシ−1−プロペン、1−メチルジエトキシシロキシ−1−エトキシ−1−プロペン、1−ジメチルエトキシシロキシ−1−エトキシ−1−プロペン、1−トリエトキシシロキシ−1−ブトキシ−1−プロペン、1−メチルジエトキシシロキシ−1−ブトキシ−1−プロペン、1−ジメチルエトキシシロキシ−1−ブトキシ−1−プロペン、1−トリエトキシシロキシ−1−(2−エチル−1−ヘキシロキシ)−1−プロペン、1−メチルジエトキシシロキシ−1−(2−エチル−1−ヘキシロキシ)−1−プロペン、1−ジメチルエトキシシロキシ−1−(2−エチル−1−ヘキシロキシ)−1−プロペン等が例示される。
【0019】
上記一般式(2)で示されるシラノール化合物と、上記一般式(3)で示されるシリルケテンアセタール化合物との配合比は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、シラノール化合物1モルに対しシリルケテンアセタール化合物0.5〜2モル、特に0.8〜1.2モルの範囲が好ましい。
【0020】
また、上記反応で用いられる酸触媒としては、具体的には塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等が例示される。
【0021】
酸触媒の使用量は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、シラノール化合物のシラノール基1モルに対し、0.0001〜0.1モル、特に0.001〜0.05モルの範囲が好ましい。
【0022】
上記反応の反応温度は特に限定されないが、0〜120℃、特に10〜100℃が好ましい。
【0023】
なお、上記反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒等が例示される。これらの溶媒は単独で使用してもよく、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0024】
また、本発明における上記一般式(1)で示されるオルガノキシシラン化合物の製造法として、下記一般式(2)
(R1nSi(OH)4-n (2)
(式中、R1、R2、nは上記と同様である。)
で示されるシラノール化合物と、下記一般式(4)
Si(CH3m(OR24-m (4)
(式中、R2、mは上記と同様である。)
で示されるオルガノキシシラン化合物とを触媒存在下に反応させる方法も例示される。
【0025】
上記一般式(4)で示されるオルガノキシシラン化合物としては、具体的にはテトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等が例示される。
【0026】
上記一般式(2)で示されるシラノール化合物と、上記一般式(4)で示されるオルガノキシシラン化合物との配合比は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、シラノール化合物1モルに対しオルガノキシシラン化合物0.5〜2モル、特に0.8〜1.2モルの範囲が好ましい。
【0027】
また、上記反応で用いられる触媒としては、具体的には塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等の酸触媒、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド等の塩基触媒等が例示される。
【0028】
触媒の使用量は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、シラノール化合物のシラノール基1モルに対し、0.0001〜0.1モル、特に0.001〜0.05モルの範囲が好ましい。
上記反応の反応温度は特に限定されないが、0〜120℃、特に10〜100℃が好ましい。
【0029】
なお、上記反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒等が例示される。これらの溶媒は単独で使用してもよく、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0031】
[実施例1] t−ブチルジメチルシロキシトリメトキシシラン
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、1−トリメトキシシロキシ−1−メトキシ−1−プロペン104.2g(0.5モル)、メタンスルホン酸0.48g(0.005モル)を仕込み、50℃に加熱した。内温が安定した後、t−ブチルジメチルシラノール66.2g(0.5モル)を2時間かけて滴下し、その温度で1時間撹拌した。反応液を蒸留し、沸点83−84℃/2kPaの留分を98.1g得た。
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル、IRスペクトルを測定した。
【0032】
<質量スペクトル>
m/z 237,195,165,135,119,105
1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒):図1にチャートで示す。
IRスペクトル:図2にチャートで示す。
以上の結果より、得られた化合物はt−ブチルジメチルシロキシトリメトキシシランであることが確認された。
【0033】
[実施例2] トリフェニルシロキシトリメトキシシラン
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、1−トリメトキシシロキシ−1−メトキシ−1−プロペン104.2g(0.5モル)、メタンスルホン酸0.48g(0.005モル)を仕込み、50℃に加熱した。内温が安定した後、トリフェニルシラノール138.2g(0.5モル)のテトラヒドロフラン(138.2g)溶液を2時間かけて滴下し、80℃で7時間撹拌した。反応液を蒸留し、沸点153−155℃/10Paの留分を172.9g得た。
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル、IRスペクトルを測定した。
【0034】
<質量スペクトル>
m/z 396,319,289,227,181,151
1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒):図3にチャートで示す。
IRスペクトル:図4にチャートで示す。
以上の結果より、得られた化合物はトリフェニルシロキシトリメトキシシランであることが確認された。
【0035】
[実施例3] シクロヘキシルメチルビス(トリメトキシシロキシ)シラン
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、1−トリメトキシシロキシ−1−メトキシ−1−プロペン87.5g(0.42モル)、メタンスルホン酸0.38g(0.004モル)を仕込み、50℃に加熱した。内温が安定した後、シクロヘキシルメチルジシラノール32.1g(0.2モル)のテトラヒドロフラン(30ml)溶液を2時間かけて滴下し、その温度で3時間撹拌した。反応液を蒸留し、沸点101−103℃/10Paの留分を45.1g得た。
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル、IRスペクトルを測定した。
【0036】
<質量スペクトル>
m/z 385,369,317,241,211,181
1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒):図5にチャートで示す。
IRスペクトル:図6にチャートで示す。
以上の結果より、得られた化合物はシクロヘキシルメチルビス(トリメトキシシロキシ)シランであることが確認された。
【0037】
[実施例4] トリイソプロピルシロキシトリエトキシシラン
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、テトラエトキシシラン218.7g(1.05モル)、21%ナトリウムエトキシドのエタノール溶液3.2g(0.01モル)を仕込み、80℃に加熱した。内温が安定した後、トリイソプロピルシラノール174.4g(1.0モル)を2時間かけて滴下し、その温度で2時間撹拌した。反応液を蒸留し、沸点110℃/0.4kPaの留分を310.2g得た。
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル、IRスペクトルを測定した。
【0038】
<質量スペクトル>
m/z 293,249,221,207,193,163
1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒):図7にチャートで示す。
IRスペクトル:図8にチャートで示す。
以上の結果より、得られた化合物はトリイソプロピルシロキシトリエトキシシランであることが確認された。
【0039】
[実施例5,6、比較例1] ガラス表面処理剤としての使用
上記実施例にて合成したシロキサン結合を有するオルガノキシシラン化合物0.1モルを0.2%酢酸水13g、エタノール44gの混合液に添加し、10時間撹拌した溶液に、ガラス板を12時間浸漬し、溶液から引き上げた後、70℃で2時間乾燥した。このようにして表面処理したガラスに水滴を垂らし、その接触角を測定した。
【0040】
【表1】

【0041】
本発明のシロキサン結合を有するオルガノキシシラン化合物を用いて処理することにより、撥水性が向上したことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルのチャートである。
【図2】実施例1で得られた化合物の赤外線吸収スペクトルのチャートである。
【図3】実施例2で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルのチャートである。
【図4】実施例2で得られた化合物の赤外線吸収スペクトルのチャートである。
【図5】実施例3で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルのチャートである。
【図6】実施例3で得られた化合物の赤外線吸収スペクトルのチャートである。
【図7】実施例4で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルのチャートである。
【図8】実施例4で得られた化合物の赤外線吸収スペクトルのチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
(R1nSi{OSi(CH3m(OR23-m4-n (1)
(式中、R1は同一又は異なる炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、少なくとも1つは炭素数3〜10の1価炭化水素基、R2は炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、mは0,1又は2、nは1、2又は3である。)
で示されるシロキサン結合を有するオルガノキシシラン化合物。
【請求項2】
一般式(1)で示されるシロキサン結合を有するオルガノキシシラン化合物が、t−ブチルジメチルシロキシトリメトキシシラン、t−ブチルジメチルシロキシトリエトキシシラン、トリイソプロピルシロキシトリメトキシシラン、又はトリイソプロピルシロキシトリエトキシシランである請求項1記載のシロキサン結合を有するオルガノキシシラン化合物。
【請求項3】
下記一般式(2)
(R1nSi(OH)4-n (2)
(式中R1、nは上記と同様である。)
で示されるシラノール化合物と、下記一般式(3)
【化1】

(式中、R2、mは上記と同様であり、R3、R4は水素原子又は炭素数1〜10の1価炭化水素基、R5は炭素数1〜10の1価炭化水素基である。)
で示されるシリルケテンアセタール化合物とを酸触媒存在下に反応させることを特徴とする請求項1記載のシロキサン結合を有するオルガノキシシラン化合物の製造方法。
【請求項4】
下記一般式(2)
(R1nSi(OH)4-n (2)
(式中R1、nは上記と同様である。)
で示されるシラノール化合物と、下記一般式(4)
Si(CH3m(OR24-m (4)
(式中、R2、mは上記と同様である。)
で示されるオルガノキシシラン化合物とを触媒存在下に反応させることを特徴とする請求項1記載のシロキサン結合を有するオルガノキシシラン化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−111533(P2006−111533A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297345(P2004−297345)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】