説明

シンクライアント端末装置用拡張ボード、シンクライアント端末装置及びシンクライアント端末装置用オペレーティングシステムの起動方法

【課題】既存設備をシンクライアント端末装置として利用する構成において、起動時間を短縮することができるようにし、また、よりセキュアな使用状態を確保することができるようにする。
【解決手段】ネットワークに接続可能な情報処理装置に装着可能な拡張ボードであって、前記情報処理装置が有する拡張スロットに接続するためのコネクタと、シンクライアント端末装置用オペレーティングシステムが格納されている不揮発性メモリと、を備え、前記シンクライアント端末装置用オペレーティングシステムは、前記ネットワークを介して接続される管理サーバ上に提供される仮想的なPC環境に接続するためのアクセス情報を格納する環境設定ファイルと、前記環境設定ファイルに格納されているアクセス情報に基づいて、前記仮想的なPC環境へ接続する処理を、前記情報処理装置の制御手段に実行させるためのプログラムと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンクライアントシステムを構成するシンクライアント端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サーバには、アプリケーションの処理やデータの格納を集中させ、ユーザが操作する端末装置側には、必要最小限の処理をさせる、シンクライアント(thin−client)システムが知られている。
【0003】
シンクライアントシステムの登場時、ユーザが操作する端末装置(以下、「シンクライアント端末装置」という。)には、シンクライアントシステム対応の専用装置が用いられていたところ、この専用装置は、機能は豊富だが当時はまだ高価な汎用のパーソナルコンピュータに対抗して、機能を限定して低価格で提供することができた。この価格面でのメリットは、当時、シンクライアントシステム導入のインセンティブとなっていたが、パーソナルコンピュータ等の端末装置が低価格化するにつれ、価格面でのメリットは薄れるようになったため、シンクライアントシステムは十分に普及しなかった。
【0004】
しかしながら、その後、シンクライアントシステムは、価格面以外のメリット、すなわち、データをサーバに保管することで、データの流出・盗難・置き忘れ等のリスクを低減することができること(セキュリティ面でのメリット)、また、アクセス可能なシンクライアント端末装置さえあれば、ユーザは、どこからでも自分のソフトウェア環境を使用することができること(モビリティ面でのメリット)などが注目されるようになった結果、その導入に対するニーズが、新たに高まっている。
【0005】
ところが、シンクライアント端末装置に専用装置を用いる方法では、シンクライアントシステム導入時に、専用装置を別途購入しなければならないため、既存設備が活用できないという問題や、専用装置を大量に導入した場合には、初期コストが高くなりやすいという問題がある。
【0006】
そこで、既存設備を使用して手軽にシンクライアント用の端末を構築する技術の一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1には、シンクライアント用オペレーティングシステム(OS)を格納した光ディスクを汎用のパーソナルコンピュータにセットし、この光ディスクに格納されたシンクライアント用OSを起動することで、汎用のパーソナルコンピュータをシンクライアント端末装置として使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−269198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の構成は、光ディスクからシンクライアント用OSを読み込む構成であるため、シンクライアント用OSの起動に時間がかかるという問題がある。
【0009】
また、特許文献1に記載の構成は、シンクライアント用OSを光ディスクに格納して提供及び使用する形態であるところ、光ディスクは容易に取り外し可能なリムーバブルディスクであるため、光ディスクの盗難や置き忘れにより、シンクライアント用OSに含まれる機密情報が漏洩してしまう可能性がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、既存設備をシンクライアント端末装置として利用する構成において、シンクライアント用OSの起動時間を短縮することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、既存設備をシンクライアント端末装置として利用する構成において、よりセキュアなシンクライアント用OSの実装状態を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ネットワークに接続可能な情報処理装置に装着可能な拡張ボードであって、前記情報処理装置が有する拡張スロットに接続するためのコネクタと、シンクライアント端末装置用オペレーティングシステムが格納されている不揮発性メモリと、を備え、前記シンクライアント端末装置用オペレーティングシステムは、前記ネットワークを介して接続される管理サーバ上に提供される仮想的なPC環境に接続するためのアクセス情報を格納する環境設定ファイルと、前記環境設定ファイルに格納されているアクセス情報に基づいて、前記仮想的なPC環境へ接続する処理を、前記情報処理装置の制御手段に実行させるためのプログラムと、を有する。
【0013】
また、本発明は、管理サーバとネットワークを介して通信可能に構成されたシンクライアント端末装置であって、CPUと、拡張スロットと、当該拡張スロットに装着された拡張ボードと、を備え、前記拡張ボードは、シンクライアント端末装置用のオペレーティングシステムが格納されている不揮発性メモリを有し、前記シンクライアント端末装置用のオペレーティングシステムは、前記管理サーバ上に提供される仮想的なPC環境に接続するためのアクセス情報を格納する環境設定ファイルと、前記環境設定ファイルに格納されているアクセス情報に基づいて、前記仮想的なPC環境へ接続する処理を、前記CPUに実行させるためのプログラムと、を有する。
【0014】
また、本発明は、管理サーバとネットワークを介して通信可能に構成されたシンクライアント端末装置におけるオペレーティングシステムの起動方法である。当該シンクライアント端末装置は、CPUと、メモリと、拡張スロットと、当該拡張スロットに装着された拡張ボードと、を有する。前記方法は、前記CPUが、前記拡張ボードに搭載された不揮発性メモリから、当該不揮発性メモリに格納されているシンクライアント端末装置用のオペレーティングシステムを読み出して、前記メモリに書き込むステップと、前記メモリに書き込まれたシンクライアント端末装置用のオペレーティングシステムから、管理サーバ上に提供される仮想的なPC環境に接続するためのアクセス情報を読み出すステップと、前記読み出されたアクセス情報に基づいて、前記管理サーバ上に提供される仮想的なPC環境へ接続するステップと、を有する。
【0015】
なお、本明細書等において、手段とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その手段が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの手段が有する機能が2つ以上の物理的手段により実現されても、2つ以上の手段の機能が1つの物理的手段により実現されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、既存設備をシンクライアント端末装置として利用する構成において、シンクライアント用OSの起動時間を短縮することができるようになる。また、既存設備をシンクライアント端末装置として利用する構成において、よりセキュアなシンクライアント用OSの実装状態を確保するができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】シンクライアントシステムの全体構成の一例を示す図である。
【図2】PCIボードの構成の一例を示すブロック図である。
【図3】シンクライアントOSの構成の一例を示す図である。
【図4】シンクライアントOSの起動処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図5】シンクライアントシステムの全体構成の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るシンクライアント端末装置が適用されたシンクライアントシステムの一実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
なお、本実施形態に係る発明は、既存設備をシンクライアント端末装置として利用する構成において、よりセキュアな使用状態を確保するために、汎用のパーソナルコンピュータ等の既存設備に装着可能な拡張ボードを用いて、シンクライアント端末装置用OSを提供するものである。かかる技術思想は、拡張ボードが、端末装置の筺体に固定式で装着される点に着目したものであり、シンクライアントシステムのセキュリティを、サーバによるデータの集中管理とは異なる新たな観点からサポートするものである。この構成によれば、取り外しが容易で、その移動が予め想定されている光ディスク等のリムーバブルな媒体を用いて提供する場合に比べて、よりセキュアなシンクライアント端末装置用OSの使用状態を確保することができるようになる。
【0020】
また、本実施形態に係る発明は、シンクライアント端末装置用OSの起動時間を短縮するために、拡張ボードに不揮発性メモリの一例としてフラッシュメモリを搭載し、このフラッシュメモリにシンクライアント端末装置用OSを格納して提供する。光ディスク等に比べて読み込み速度に勝るフラッシュメモリから、シンクライアント端末装置用OSを起動するように構成することで、シンクライアント端末装置用OSの起動速度を短縮することができるようになる。
【0021】
なお、シンクライアント端末装置を構築するための既存設備の構成に特に限定はないが、本実施形態では、一例として、汎用のパーソナルコンピュータを用いる場合について説明する。また、シンクライアント端末装置用OSを格納したメモリを搭載する拡張ボード(拡張カード)についても、その構成に特に限定はないが、本実施形態では、一例として、PCIボード(PCIカード)を用いる場合について説明する。
【0022】
[シンクライアントシステムの構成]
図1は、シンクライアントシステム3の全体構成の概略を示す図である。シンクライアントシステム3は、シンクライアント端末装置1と、シンクライアント端末装置1とネットワークNを介して通信可能に接続された管理サーバ2とを含んで構成される。なお、管理サーバ2に接続されるシンクライアント端末装置1は1つに限られず、仕様に応じて複数のシンクライアント端末装置1を管理サーバ2に接続することができる。
【0023】
管理サーバ2は、CPU、メモリ、HDD、通信装置及び入出力装置(図示せず)などがバスを介して接続される従来のサーバ・コンピュータを適用することができ、CPUが、メモリまたはHDDなどに記憶された所定のプログラムを実行することにより、管理サーバ2としての機能を実現する。
【0024】
なお、シンクライアントシステムを実現する方式には、サーバ・ベース・コンピューティング(SBC)方式、仮想PC方式、ネットワークブート方式などの方式が提案されている。本実施形態に係るシンクライアントシステム3の方式には、特に限定はないが、一例として、仮想PC方式を採用している。仮想PC方式においては、管理サーバ2は、1または複数のユーザ(又はシンクライアント端末装置)に、それぞれ一意的に対応付けられる、1または複数の仮想的なPC環境(以下、「仮想PC」という)を構築し、この仮想PC毎に、クライアントOS(仮想OSとも呼ばれる)とアプリケーション(AP)を実行する(同図参照)。シンクライアント端末装置1は、ユーザの入力操作に従って、管理サーバ2内の当該ユーザ(及び/又はシンクライアント端末装置1)に対応付けられた仮想PCに接続する。管理サーバ2は、シンクライアント端末装置1から転送される入力情報を受信すると、ユーザ(及び/又はシンクライアント端末装置1)に対応付けられた仮想PC上のクライアントOS及びアプリケーションを実行し、その実行結果を画面データとして、シンクライアント端末装置1へ転送する。なお、管理サーバ2は、単一のコンピュータより構成されるものであっても、ネットワーク上に分散した複数のコンピュータより構成されるものであってもよい。
【0025】
一方、シンクライアント端末装置1は、CPU10と、ROM11やRAM12等のメモリと、ハードディスクドライブ(HDD)13と、通信装置14と、電源15と、光学ドライブ16と、入力装置17と、出力装置18と、PCIスロット20とが、マザーボード(図示せず)上のバスを介して接続され、筺体内に配置された汎用のパーソナルコンピュータ1aにおいて、シンクライアント端末装置用OSが格納されたPCIボード21をPCIスロット20に装着することにより、シンクライアント端末装置としての機能を実現する。なお、シンクライアント端末装置1が備える構成は、同図に示す構成に限られず、例えば、従来の汎用のパーソナルコンピュータが有する各種構成を更に備えていてもよい。
【0026】
CPU10は、汎用のパーソナルコンピュータ1aの処理及び動作を制御する制御手段であり、入力装置17から入力されたデータ等に基づいて所定の演算を行い、演算結果を出力装置18等に出力する機能を有する。また、本実施形態においては、PCIボード21のフラッシュメモリに格納されたシンクライアント端末装置用OSを実行し、これにより、シンクライアント端末装置1の処理及び動作を制御する制御手段として機能する。
【0027】
RAM12やROM11等のメモリ、HDD13及び光学ドライブ16は、所定の演算に必要なデータやプログラム等を格納するための記憶手段である。シンクライアント端末装置用OSが起動されると、HDD13や光学ドライブ16は、使用不可能となるように制御され、ユーザは、これらの記憶装置へアクセスすることができなくなる。
【0028】
通信装置14は、ネットワークN(例えば、LAN、インターネット、専用線、パケット通信網、電話回線、企業内ネットワーク、その他の通信回線、それらの組み合わせ等のいずれであってもよく、有線であるか無線であるかを問わない)を介して管理サーバ2と通信するための装置であり、その構成に特に限定はないが、例えば、LANアダプタ等を用いることができる。
【0029】
出力装置18は、演算結果等を出力するための装置であり、その構成に特に限定はないが、例えば、液晶ディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置を適用することができる。また、ヘッドフォンやスピーカなどの音声を出力する装置を適用することもできる。
【0030】
入力装置17は、演算に必要な情報の入力をユーザから受け付けるための装置であり、その構成に特に限定はないが、例えば、キーボードやマウス等の入力装置のほか、音声を入力するマイク等を用いることができる。
【0031】
PCIスロット20は、PCIボード21を装着するための差し込み口であり、PCIボード21とマザーボード(図示せず)を電気的に接続する。同図では、1つのPCIスロット20を示しているが、仕様に応じて複数のPCIスロットを備えていてもよい。この場合、使用されていないPCIスロット20にPCIボード21を装着する。
【0032】
PCIボード21は、PCIスロット20に装着可能な小型のプリント基板であり、このプリント基板上にメモリを備え、このメモリには、汎用のパーソナルコンピュータ1aをシンクライアント端末装置として機能させるためのシンクライアント端末装置用OSが格納されている。PCIボード21の構成に特に限定はないが、その一縁部(例えば、短手方向一縁部)には、PCIスロット20に接続するための接続手段としてのコネクタ(図示せず)を有し、当該一縁部とは異なる一縁部であって当該一縁部と略垂直に配置されている一縁部(例えば、長手方向一縁部)には、筺体(本体カバー)に取り付けるための取り付け部を有する。PCIボード21は、コネクタがPCIスロット20に刺し込まれた状態で、取り付け部を筺体の所定箇所(例えば、スロットカバーが取り外された箇所)に固定部材(例えば、ボルト止め)により取り付けることにより、筺体に固定される。
【0033】
図2は、PCIボード21の構成の一例を示すブロック図である。PCIボード21は、フラッシュメモリ211と、オーディオチップ212と、USBポート213を備える。なお、オーディオチップ212及びUSBポート213は、仕様に応じて省略することができる。
【0034】
フラッシュメモリ211には、シンクライアント端末装置用OSが格納されている。CPU10は、フラッシュメモリ211からシンクライアント端末装置用OSを読み出し、RAM12に展開して起動することにより、汎用のパーソナルコンピュータ1aをシンクライアント端末装置として機能させる。これによれば、PCIボード21上のフラッシュメモリ211からシンクライアント端末装置用OSを起動することができるので、例えば光ディスクから起動する場合などに比べて、高速にシンクライアント端末装置用OSを起動することができるようになる。なお、シンクライアント端末装置用OSの構成については、図3を用いて後述する。
【0035】
オーディオチップ212は、音声を入出力するための機能を有し、USBポート213は、IP電話215を接続するためのものである。これにより、シンクライアント端末装置1は、IP電話環境を提供することが可能になる。
【0036】
図3は、シンクライアント端末装置用OSの構成の一例を示す図である。シンクライアント端末装置用OS211aは、シンクライアント基本オペレーション部100を備え、このシンクライアント基本オペレーション部100は、画面データ受信送信制御部101と、ストレージ制御部102と、環境設定格納部103と、IP電話制御部104と、サウンド制御部105を備えている。なお、画面データ受信送信制御部101、ストレージ制御部102及び環境設定格納部103は、従来のシンクライアント端末装置用OSの構成を適用することができ、IP電話制御部104とサウンド制御部105は、仕様に応じて省略することができる。また、シンクライアント端末装置用OS211aは、従来のシンクライアント端末装置用OSが備える他の構成を更に備えていてもよい。
【0037】
シンクライアント基本オペレーション部100は、シンクライアント端末装置1全体を管理するためのソフトウェア(プログラム)であり、例えば、キーボード入力やディスプレイ出力などの一般的な入出力処理やメモリ管理処理に加えて、管理サーバ2の仮想PCに接続するアクセス処理などをCPU10に実行させるためのプログラム及びデータから構成される。
【0038】
画面データ受信送信制御部101は、管理サーバ2から転送される画面データの受信や、ユーザが入力した入力情報の管理サーバ2への送信を制御する処理をCPU10に実行させるためのプログラム及びデータから構成される。
【0039】
ストレージ制御部102は、汎用のパーソナルコンピュータ1aに実装されている各種記憶装置を制御する処理をCPU10に実行させるためのプログラム及びデータから構成される。本実施形態では、各種記憶装置に格納されたデータの流出による情報漏洩などのリスクを回避するために、HDD13や、光学ドライブ16及びUSBメモリ(図示せず)等の取り外し可能なストレージデバイスを無効とする処理を実行する。
【0040】
環境設定格納部103は、シンクライアントシステムの環境設定に関する環境設定ファイルを有している。環境設定ファイルには、管理サーバ2内の、ユーザ(及び/又はシンクライアント端末装置1)に対応付けられた仮想PCへ接続するためのアクセス情報が格納されている。なお、仮想PCへ接続することは、仮想OSへ接続することと同じ意味である。このアクセス情報は、そのデータ構造に特に限定はないが、例えば、接続先の仮想PCに一意的に対応付けられた、IPアドレス、ユーザ名、及びパスワードなどが該当する。このように、環境設定ファイルには、シンクライアントシステムの仮想PCへの接続に必要な情報のように保護すべき情報が含まれるところ、本実施形態では、シンクライアント端末装置用OS211aをPCIボード21によって提供しているので、外部へのアクセス情報の漏えいを防止し、セキュアな使用状態を確保することができる。
【0041】
IP電話制御部104は、IP電話処理をCPU10に実行させるためのプログラム及びデータから構成され、例えば、デジタル信号に変換された音声をパケットに分割して送信するなどの従来の技術を適用して実現することができる。
【0042】
サウンド制御部105は、音声の入出力に関する処理をCPU10に実行させるためのプログラム及びデータから構成され、例えば、オーディオチップ212を制御して音声をデジタル信号に変換するなどの従来の技術を適用して実現することができる。
【0043】
[シンクライアント端末装置用OSの起動処理の流れ]
図4は、シンクライアント端末装置用OSの起動処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図4に示す各処理ステップは処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更して又は並列に実行することができる。また、各処理ステップ間に他のステップを追加してもよい。また、便宜上1ステップとして記載されているステップは、複数ステップに分けて実行することができる一方、便宜上複数ステップに分けて記載されているものは、1ステップとして把握することができる。なお、同図中「PCカード」と記載されている箇所については、後述の「その他の実施形態」において説明する。
【0044】
シンクライアント端末装置1のCPU10は、電源が投入されると(S101)、ROM11に格納されているBIOSを起動する(S102)。そして、PCIボード21のフラッシュメモリ211にアクセスし(S103)、フラッシュメモリ211からシンクライアント端末装置用OS211aを読みだして、PCすなわちシンクライアント端末装置1の物理メモリ(RAM12)へ、読みだしたシンクライアント端末装置用OS211aを書き込む(S104)。
【0045】
CPU10は、物理メモリ(RAM12)へ書き込んだシンクライアント端末装置用OS211aを起動する(S105)。そして、ストレージ制御部102に基づいて、所定のストレージデバイス、例えば、内蔵されたHDD13、光学ドライブ16、リムーバブルなストレージデバイスが接続されている場合は当該接続されたリムーバブルなストレージデバイスを、無効にする(S106)。これにより、HDD13等へのアクセスが抑止される。
【0046】
CPU10は、環境設定格納部103から、接続先のIPアドレス等を格納した環境設定ファイルを読み出し、例えば、仮想PCに接続するためのログイン画面を表示する(S107)。ユーザが、入力装置17を介してユーザ名及びパスワードなどを入力すると、CPU10は、入力された情報を、環境設定ファイルに格納されている仮想PCに一意的に対応付けられたユーザ名及びパスワードと照合し、照合結果が一致する場合は、ログインを許可する。
【0047】
CPU10は、環境設定ファイルのIPアドレスに基づいて、管理サーバ2の仮想PCに接続する(ログイン)(S108)。CPU10は、ログイン要求に応じて管理サーバ2から送信された画面データを、画面データ受信送信制御部101に基づいて処理し、出力装置18に画面出力する。そして、CPU10は、出力画面に対してユーザが入力装置17を介して情報を入力すると、この入力された入力情報を管理サーバ2へ転送する。管理サーバ2は、転送された入力情報に基づいて仮想OSやアプリケーションを実行し、実行結果を画面データとしてシンクライアント端末装置1へ送信する。シンクライアント端末装置1(CPU10)は、送信された画面データを、出力装置18に画面出力する。このようにして、ユーザは、仮想PC上で作業を行うことができる(S109)。
【0048】
ユーザが、入力装置17を介して作業終了の指示(ログアウト)を入力すると、CPU10は、作業終了の指示(ログアウト)を管理サーバ2の仮想PCに転送し、管理サーバ2は仮想PCを終了する(S210)。
【0049】
CPU10は、環境設定格納部103へ、所定の情報(例えば、ログイン及びログアウト時刻)を格納し、シンクライアント端末装置用OS211aを終了する(S211)。
【0050】
以上、本実施形態によれば、シンクライアント端末装置用OSを、シンクライアント端末装置の筺体及びマザーボードに固定されるPCIボード21に搭載されたフラッシュメモリに格納して提供することとしているので、光ディスクのようなリムーバブルな記録媒体に格納して提供する場合に比べて、よりセキュアなシンクライアント端末装置用OSの実装状態を実現することができるようになる。
【0051】
また、本実施形態によれば、PCIボード21上のフラッシュメモリ211からシンクライアント端末装置用OSを起動することとしているので、例えば光ディスクから起動する場合などに比べて、シンクライアント端末装置用OSの起動時間を短縮することができるようになる。
【0052】
また、本実施形態によれば、既存装置が有する設備の一部(CPU、メモリ、通信装置等)の機能については、そのまま使用することとしているので、PCIボード21側に実装する機能を抑えることができる。また、シンクライアント端末装置を構築するためのパーソナルコンピュータには、高スペックは要求されないため、既存のパーソナルコンピュータが低スペックであっても、シンクライアント端末装置として有効に活用することができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、PCIボード21は、オーディオチップを実装し、シンクライアント端末装置用OSは、IP電話制御部104及びサウンド制御部105を有することとしたので、オーディオ環境を有していなかった既存設備において、IP電話環境を同時に提供することができる。
【0054】
[その他の実施形態]
(1)上記本実施形態では、シンクライアント端末装置用OSをPCIボード21上のフラッシュメモリ211に格納して提供する場合について説明したが、例えば、PCIカード(カード形状のもの)や、汎用のパーソナルコンピュータがPCスロットを備える場合には、当該PCスロットに装着可能なPCカードのフラッシュメモリに、シンクライアント端末装置用OSを格納するように構成してもよい。
【0055】
図5は、他の実施形態に係るシンクライアントシステムの構成を示す図である。他の実施形態では、汎用のパーソナルコンピュータ1a-1が、PCスロット30を備え、このPCスロット30に、シンクライアント端末装置用OS211aが格納されたPCカード31が装着されている。なお、図1に示す構成と同様の構成については、同じ符号を付与するとともに、管理サーバ2については記載を省略している。
【0056】
図5に示す構成においては、CPU10が、PCカード31内の図示しないフラッシュメモリに格納されたシンクライアント端末装置用OS211aを起動することにより、汎用のパーソナルコンピュータ1a-1が、シンクライアント端末装置としての機能を実現する。なお、PCカード31内の図示しないフラッシュメモリに格納されたシンクライアント端末装置用OS211aの起動処理は、図4に示す起動処理と同様に実行することができるため、説明を省略する。
【0057】
(2)また、上記本実施形態では、シンクライアント端末装置用OS211aを起動する場合について説明したが、シンクライアント端末装置1は、管理サーバ2の制御下で、シンクライアント端末装置用OS211aを更新することができる。例えば、管理サーバ2において仮想PCの環境設定が更新された場合、管理サーバ2は、更新情報とともに環境設定ファイルの更新指示をシンクライアント端末装置1へ送信する。シンクライアント端末装置1は、更新情報及び環境設定ファイルの更新指示を受信すると、更新情報に基づいて、フラッシュメモリ211に格納されているシンクライアント端末装置用OS211aの環境設定格納部103を更新する。
【0058】
これによれば、シンクライアント端末装置用OS211aを更新する場合であっても、管理サーバ2の制御下で、フラッシュメモリ211の内容を書き換えることができるので、PCIボードそのものを交換する必要はなく、メンテナンスが容易になる。
【符号の説明】
【0059】
1…シンクライアント端末装置、1a…パーソナルコンピュータ、2…管理サーバ、3…シンクライアントシステム、10…OS、11・・・ROM、12・・・RAM、13・・・HDD、14…通信装置、15…電源、16…光学ドライブ、17…入力装置、18…出力装置、20…PCIスロット、21…PCIボード、100…シンクライアント基本オペレーション部、101…画面データ受信送信制御部、102…ストレージ制御部、103…環境設定格納部、104…IP電話制御部、105…サウンド制御部、211…フラッシュメモリ、211a…シンクライアント端末装置用OS、212…オーディオチップ、213 …USBポート、214・・・マイク、215・・・IP電話、N…ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続可能な情報処理装置に装着可能な拡張ボードであって、
前記情報処理装置が有する拡張スロットに接続するためのコネクタと、
シンクライアント端末装置用オペレーティングシステムが格納されている不揮発性メモリと、を備え、
前記シンクライアント端末装置用オペレーティングシステムは、
前記ネットワークを介して接続される管理サーバ上に提供される仮想的なPC環境に接続するためのアクセス情報を格納する環境設定ファイルと、
前記環境設定ファイルに格納されているアクセス情報に基づいて、前記仮想的なPC環境へ接続する処理を、前記情報処理装置の制御手段に実行させるためのプログラムと、
を有することを特徴とする拡張ボード。
【請求項2】
前記仮想的なPC環境に接続するためのアクセス情報には、当該仮想的なPC環境に一意的に対応付けられたIPアドレス、ユーザ名及びパスワードのうちの、少なくとも1つが含まれることを特徴とする請求項1に記載の拡張ボード。
【請求項3】
前記不揮発性メモリは、フラッシュメモリであることを特徴とする請求項1または2に記載の拡張ボード。
【請求項4】
前記拡張ボードは、PCIボードであることを請求項1乃至3いずれか1項に記載の拡張ボード。
【請求項5】
管理サーバとネットワークを介して通信可能に構成されたシンクライアント端末装置であって、CPUと、拡張スロットと、当該拡張スロットに装着された拡張ボードと、を備え、
前記拡張ボードは、シンクライアント端末装置用のオペレーティングシステムが格納されている不揮発性メモリを有し、
前記シンクライアント端末装置用のオペレーティングシステムは、
前記管理サーバ上に提供される仮想的なPC環境に接続するためのアクセス情報を格納する環境設定ファイルと、
前記環境設定ファイルに格納されているアクセス情報に基づいて、前記仮想的なPC環境へ接続する処理を、前記CPUに実行させるためのプログラムと、
を有することを特徴とするシンクライアント端末装置。
【請求項6】
前記仮想的なPC環境に接続するためのアクセス情報には、当該仮想的なPC環境に対応付けられたIPアドレス、ユーザ名及びパスワードのうちの、少なくとも1つが含まれることを特徴とする請求項5に記載のシンクライアント端末装置。
【請求項7】
前記不揮発性メモリは、フラッシュメモリであることを特徴とする請求項5または6に記載のシンクライアント端末装置。
【請求項8】
前記拡張ボードは、PCIボードであることを請求項5乃至7いずれか1項に記載のシンクライアント端末装置。
【請求項9】
管理サーバとネットワークを介して通信可能に構成されたシンクライアント端末装置におけるオペレーティングシステムの起動方法であって、当該シンクライアント端末装置は、CPUと、メモリと、拡張スロットと、当該拡張スロットに装着された拡張ボードと、を有し、
前記方法は、
前記CPUが、
前記拡張ボードに搭載された不揮発性メモリから、当該不揮発性メモリに格納されているシンクライアント端末装置用のオペレーティングシステムを読み出して、前記メモリに書き込むステップと、
前記メモリに書き込まれたシンクライアント端末装置用のオペレーティングシステムから、管理サーバ上に提供される仮想的なPC環境に接続するためのアクセス情報を読み出すステップと、
前記読み出されたアクセス情報に基づいて、前記管理サーバ上に提供される仮想的なPC環境へ接続するステップと、
を有することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−100330(P2011−100330A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254975(P2009−254975)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】