説明

シークインの縫付け方法及びシークインが縫い付けられている布製品

【課題】 布に対して列設したシークイン列が多色(複数色)に輝くように縫製するシークインの縫付け方法及びシークインが縫い付けられている布製品を提供する。
【解決手段】シークイン配置領域66に対して次々と供給される各シークインSを布に縫付けるときの糸Tには、任意の色糸Tを用いて縫い付けを行い、さらに、上記シークイン配置領域66に対して上記色糸Tを用いて縫い付けられている多数のシークインSに対しては、さらに、上記の色糸Tとは異なる色の色糸Tを用いて縫い付けを行い、しかも、上記の異なる色の色糸Tを用いて縫い付けを行うときには、異なる色の色糸相互間の位置関係において、各縫い付け色糸の少なくとも一部においては相互に異なる場所でシークインの表面Scに添え付けできる状態で縫い付けるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布製品にシークインを縫付ける方法及びシークインが縫い付けられている布製品に関し、詳しくは、布製品の一面における予め定められたシークイン配置領域に対して、多数のシークインを、次々と供給しながら、上記のシークイン配置領域に対して供給される各シークインを、次々と色糸を用いて布に縫付けていくシークインの縫付け方法及びシークインが縫い付けられている布製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より布製品の一面における予め定められたシークイン配置領域に対して、多数のシークインを、次々と供給しながら、上記のシークイン配置領域に対して供給される各シークインを、次々と色糸を用いて布に縫付けていくシークインの縫付け方法及びシークインが縫い付けられている布製品は広く知られている。
例えば特許文献3に示されるシークインが縫い付けられている布製品は、文献3の図5に示されている(本件の図面欄においては図14(B)として転記してある)ように、列設された状態の各シークイン列SL(第1列SLaと、第2列SLb)の相互間においては色糸が相互に異ならしめてある。よって、隣接する各シークイン列(第1列SLaと、第2列SLb)の相互間のシークイン表面Scの反射光の色彩は相互に異なることになり、美しさを醸し出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−295826号公報
【特許文献2】実用新案登録第3161374号公報
【特許文献3】実用新案登録第3154766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の図(図14(B)参照)に表れているシークイン列SL1、SL2を多数列設させて、大きな図柄のデザインを構築する場合は、いろいろな色彩のシークイン列SLを組み合わせて美しい色彩を用いたデザインを構築することができるが、図15,16に表れているように細幅のシークイン列SLを1条又は2条(1列又は2列)配設することによりデザインを構築する場合は、配置される色数が1色または2色になり、美しさに欠ける問題点があった。
【0005】
本件出願の目的は、布に対して列設したシークイン列が多色(複数色)に輝くように縫製するシークインの縫付け方法及びシークインが縫い付けられている布製品を提供しようとするものである。
他の目的及び利点は図面及びそれに関連した以下の説明により容易に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明におけるシークインの縫付け方法及びシークインが縫い付けられている布製品は、布Gの一面Gaにおける予め定められたシークイン配置領域66に対して、多数のシークインを、次々と供給しながら、上記のシークイン配置領域66に対して供給される各シークインSを、次々と縫糸Tで布Gに縫付けていくシークインの縫付け方法において、上記のシークイン配置領域66に対して次々と供給される各シークインSを布に縫付けるときの糸Tには、任意の色糸Tを用いて縫い付けを行い、さらに、上記シークイン配置領域66に対して上記色糸Tを用いて縫い付けられている多数のシークインSに対しては、さらに、上記の色糸Tとは異なる色の色糸Tを用いて縫い付けを行い、しかも、上記の異なる色の色糸Tを用いて縫い付けを行うときには、異なる色の色糸相互間の位置関係において、各縫い付け色糸の少なくとも一部においては相互に異なる場所でシークインの表面Scに添え付けできる状態で縫い付けるようにしたものである。
【0007】
また好ましくは、布Gの一面Gaにおける予め定められたシークイン配置領域66に対して、多数のシークインを、次々と供給しながら、上記のシークイン配置領域66に対して供給される各シークインSを、次々と縫糸Tで布に縫付けていくシークインの縫付け方法において、上記のシークイン配置領域66に対して次々と供給される各シークインSを列設させる状態で布Gに縫付けるときの糸には、任意の色糸Tを用いて縫い付けを行い、しかも、その色糸Tの配置は、列設状態で縫い付けられるシークイン列SLの一方の側に色糸が配置されるように縫い付け、さらに、上記シークイン配置領域66に対して上記の状態で縫い付けられている列設状態のシークインに対しては、さらに、上記の色糸Tとは異なる色の色糸Tを用いて、シークイン列の他方の側に色糸Tが配置されるように縫い付けることにより、列設状態のシークイン列SLにおいて、シークイン列の幅方向68の一方の側と、他方の側とが夫々細幅の筋状に色別けされて上記シークイン列が幅方向に2列の細幅の色糸で区分されているようにするものであればよい。
【0008】
また好ましくは、布Gの一面Gaにおける予め定められたシークイン配置領域66に対して、多数のシークインを、 次々と供給しながら、上記のシークイン配置領域66に対して供給される各シークインSを、次々と縫糸Tで布に縫付けていくシークインの縫付け方法において、上記のシークイン配置領域66に対して次々と供給される各シークインを列設させる状態で布Gに縫付ける工程は、シークイン列SLの中央部に任意の色糸Tが位置するように縫い付ける工程と、列設させる状態で縫い付けられるシークイン列SLの一方の側に上記の色糸とは異なる色の色糸Tが配置されるように縫い付ける工程と、さらに、列設させる状態で縫い付けられるシークイン列SLの他方の側に、上記の色糸Tとはさらに異なる色の色糸Tが配置されるように縫い付ける工程とを含み、列設状態のシークイン列SLにおける幅方向68において、一方の側と、他方の側とが夫々細幅の筋状に色別けされ、さらに、上記シークイン列SLの中央部においては上記左右の色違いの筋状が、それらの色糸とは異なる色糸Tでもって区分されていて、上記シークイン列SLが幅方向に3列の細幅の色糸で区分されているようにするものであればよい。
【0009】
また好ましくは、布製品Gの一面Gaに複数のシークインSを列設させた状態で配置することにより模様67が表出されており、しかも、それら複数のシークインSの個々においては、夫々複数の色糸Tで縫い付けられており、しかもその縫い付け色糸相互間の位置関係は、各縫い付け色糸の少なくとも一部においては相互に異なる場所でシークインの表面Scに添え付けられた状態で縫い付けられているものであればよい。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明は、シークイン配置領域66に対して縫い付けられている多数のシークイン列SLの夫々に対しては、各シークイン列SLを構成するシークインSに対し、夫々相互に異なる色の色糸Tを用いて縫い付けを行い、しかも、異なる色の色糸相互間の位置関係は、各縫い付け色糸Tの少なくとも一部においては相互に異なる場所でシークインSの表面Scに添え付けられる状態にするものであるから、布Gのシークイン配置領域66に縫い付けられた多数のシークインにおける個々のシークインSにおいては、第1にシークインSの表面Scの地色の輝きと、第2に一つの色糸Tの色彩、第3に他の色糸Tの色彩、第4に複数の色糸Tの色彩が夫々シークイン表面Scに反射して醸し出す混色の色彩(複数の色糸の色彩とシークイン表面からの反射の色彩)に係わる輝き等、多彩な色彩の輝きを発揮させることのできる特長がある。
従って、多数のシークインS,S・・・・・Sを布の表面に対して配置することにより美しいデザインを創作する場合、優美なデザインを手軽に創作できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ロータリー式多頭ミシンMを説明する為の概略斜視図。
【図2】刺繍ミシンCにおける断面図。
【図3】(A)は略示斜視図、(B)は図2におけるIII-III線断面図。
【図4】(A)は複数の天秤の平面図、(B)は斜視図、(C)は一つの天秤が下がった状態を示す斜視図。
【図5】機枠と、刺繍ミシンCのヘッドと、シークイン供給装置Eとの配置関係を説明する為の略示平面図。
【図6】図5におけるVI矢視方向の側面図。
【図7】(A)は、図5のVI矢視方向の機枠と、機枠に取付けられた支持部材90との配置関係を説明する為の略示側面図、(B)は、図6におけるVII−VII線断面図。
【図8】部分拡大図。
【図9】(A)は図8におけるIXA−IXA線断面図。(B)はIXB−IXB線拡大断面図。
【図10】(A)は図9におけるX−X線断面図、(B)は拡大図。
【図11】図10(A)におけるXI−XI線の概略断面図。
【図12】(A)は、図6のXII−XII線断面図、(B)は布押え部分37aのXIIB−XIIB線断面図。(C)は布押え部材37のXIIC−XIIC線断面図。(D)は一部拡大断面図。
【図13】タイミング図。
【図14】(A)は布の表面Gaにおけるシークイン配置領域66に縫い付けられた多数のシークインSからなるシークイン列SLを表す平面模式図。(B)は布の表面Gaにおけるシークイン配置領域66に縫い付けられた多数のシークインSからなる2列のシークイン列SLを表す平面模式図。
【図15】(A)は布製品の布の一面Gaにおけるシークイン配置領域66に複数の色糸で縫い付けられた多数のシークインSを表す平面図。(B)は(A)におけるシークイン列SLの部分拡大模式図。
【図16】(A)は布製品の布の一面Gaにおけるシークイン配置領域66に複数の色糸で縫い付けられた多数のシークインSを表す平面図。(B)は(A)におけるシークイン列SLのXVI矢視部の部分拡大模式図。
【図17】布Gのシークイン配置領域66に対して、各シークインSを次々と縫糸で縫付けてシークイン列SLを列設する場合の縫付け動作順を示す概略平面模式図。
【図18】布Gのシークイン配置領域66に対して、縫付けられたシークイン列SLを次々と縫糸で縫付ける場合の縫付け動作順を示す概略平面模式図。
【図19】タイミング図。
【図20】図15、16のシークイン列SLとは、シークイン表面に表出させた異なる色の色糸相互間の位置関係の点において異なる例を示す模式図。
【図21】タイミング図。
【図22】タイミング図。
【図23】前出の図15、16、図20の例とは、シークイン表面に表出させた異なる色の色糸相互間の位置関係の点がさらに異なる例を示す模式図。
【図24】タイミング図。
【図25】タイミング図。
【図26】前出の図の例とは、シークイン表面に列設させたシークイン列の列数の点が異なる例を示す模式図。 なお、図面の説明に当り、前出の図に対する後出の図面の説明において、前出の図と同符号を用いた構成、部材等の機能、性質、手段又は特徴等は、以下の説明に於て加える新規な部材の構成、組合せ等の説明に係わる事項を除き、前出の図の同符号の説明と同旨である。よって、前出の図に対する後出の図面の説明においては重複する説明は一部省略する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1〜図13は、本発明の実施に用いることができるシークイン供給装置付き刺繍(多針)ミシンM1を説明する為の図である。このシークイン供給装置付き刺繍ミシンM1に関わる構成は、従来から、例えば特許文献1で知られた構成と同旨の構成であるが、以下説明する。
図1は、機枠AにテーブルBと、ヘッド5と、支持部材90によって支持されているシークイン供給装置Eとを備える周知のシークイン供給装置付刺繍ミシンM1を多数並設して成るロータリー式多頭ミシンMを示す概略斜視図。
図2は、1つの刺繍ミシンCにおけるヘッド5を説明する為の断面図で、針棒保持枠8と、針棒保持枠8に備えさせた複数の針棒の内、針落孔2の上方に選択された針棒と、その針棒に添設してある布押え具36とを説明する為の図。
図3は、複数の針棒と針棒保持枠8との配置関係と、針棒保持枠8の回動により複数の針棒の内の一つの針棒を選択する切替を説明する為の略示図で、(A)は略示斜視図、(B)は図2におけるIII-III線断面図。
図4は、複数の天秤の配置関係と、複数の天秤の内の一つの天秤の選択切替を説明する為の略示図で、(A)は平面図、(B)は斜視図、(C)は一つの天秤が下がった状態を示す斜視図。
図5は、機枠Aと、機枠Aに取付けられた刺繍ミシンのヘッド5と、支持部材90と、シークイン供給装置Eとの配置関係を説明する為の略示平面図。
図6は、シークイン供給装置付き刺繍ミシンM1で、機枠Aと、機枠Aに取付けられたテーブルと刺繍ミシンと支持部材90及び支持部材に取付けられたシークイン供給装置Eとの配置関係を説明する為の図で、図5における支持部材の取付部90bの表側(左側)に対して主枠100を昇降自在に付設した状態を表すVI矢視方向の側面図。
図7(A)は、図5のVI矢視方向の機枠Aと、機枠に取付けられた支持部材90との配置関係を説明する為の略示側面図で、図5のシークイン供給装置Eについては、支持部材90との位置関係を説明する為に一点鎖線で示す(なお、符号100dで示す二点鎖線は主枠100の上昇位置、符号100で示す一点鎖線は主枠100の下降位置を示す)。(B)は、図6におけるVII−VII線断面図で、ガイドレール94に対して昇降自在である摺動部材101を説明する為の図。
図8は、主枠100の下部100bに配設されたシークイン供給装置における案内路110と、シークイン103と、送出し装置120との関係を説明する為の部分拡大図。
図9は、案内路110と、シークイン103と、送出し装置120における送出し部材121との位置関係を説明する為の図で、(A)は図8におけるIXA−IXA線断面図。(B)は図8におけるIXB−IXB線断面図で、案内路110の拡大断面図。
図10は、案内路110と、帯状に連なっているシークイン103との関係を説明する為の概略図で、(A)は図9におけるX−X線断面図(シークインの先端103aを供給点111から突出空間118に突出させた状態を示す)。(B)は案内路110の巾寸法を、公知の調整機構119を用いて(A)の状態より広げた状態を示す拡大図。
図11は、送出し装置120と、案内路110と、シークイン103と、針落孔2との関係、及び送出し装置120によって、シークイン103が供給点111から突出空間118へ送出動作を説明する為の図で、図10(A)におけるXI−XI線の概略断面図。(A)はシークイン103の先端103aが供給点111にある状態、(B)はシークインの先端103aが供給点111から突出空間118へ送出され、切断部材116により切り離されたシークインSの孔Saに針18が刺し通された状態を示す図(なお、(A)、(B)夫々において、図の下方に示される帯状に連なっているシークイン103の図は、送出し装置120によって移動するシークイン103の関連を示す平面図)。
図12(A)は、図6におけるXII−XII線位置の上下位置に配置される針棒保持枠8の回転中心点11と針落孔位置2と結ぶ線の延長線13と、シークイン供給装置における供給点111から針落孔2方向へ向かうシークインSの孔Saの移動軌跡107と、布押え部材37との位置関係を説明する為の略示断面図。(B)は刺繍縫用の布押え部分37aを説明する為の一部破断した断面図で(A)におけるXIIB−XIIB線断面図。(C)はシークイン縫付け用の布押え部材37を説明する為の一部破断した断面図で(A)におけるXIIC−XIIC線断面図。(D)は延長線13と、布押え部材37の向きと、移動軌跡107との関係を説明する為の(A)の一部拡大図。
図13は、刺繍ミシンにおける針と、布押え具と、刺繍枠と、シークイン供給装置におけるシークインの送出し動作と、シークインの表面Scに表出された色糸と針落位置3の関
係を説明する為のタイミング図で、主軸が6回転する間の各所の動作を表したもの。
【0013】
図2のヘッド内の構成、図3の針棒保持枠8と針棒16,針棒16とそれに添設される布押え具36、図4の天秤装置51、図6〜図11におけるシークイン供給装置Eに係る構成は、特開平7−328273号公報、特開平4−96788号公報、特許第2546742号公報、特開2005−205公報で開示されている公知の構成と同じような趣旨の構成を備えている。
よって、その操作、機能は広く知られている。なお、実施に際しては、本案の図示のものに代えて特開平7−328273号公報等上記公知の構成を一部利用しても良い。
【0014】
本件のロータリー式多頭ミシンMにおける刺繍ミシンCは、図1〜図4から理解できるように、機枠Aには、テーブルBと、上記テーブルBの上方に位置するヘッド5とを備えさせ、上記ヘッド5には、複数の針棒16を支持する為の針棒保持枠8であって、往復回動を自在にしてある針棒保持枠8と、上記針棒保持枠8に対して夫々上下動自在に並設された複数本の針棒16と、上記複数の針棒16に対して夫々同期して上下動するように添設してある布押え具36とを備え、上記針棒保持枠8を回動させて、複数の針棒の内の一つの針棒16をテーブル上面1の針落孔2の上方に選択して止め、上記針棒16と布押え具を同期させて上下動させて縫製に用いるようにしてある。
【0015】
この点を、図1〜図4、図12を用いて具体的に説明する。図1に表れているMはロータリー式多頭ミシンを示す。Bは、機枠に対して取付けられているテーブル、Cは、上記したように、多数の針に付された相互に異なる色糸を用いて 刺繍模様を縫製する為のもの刺繍ミシンで、機枠のテーブルBの上方に並列状態で取付けられている複数の刺繍ミシンを示す。Dは、複数の刺繍ミシンCにおける針棒16及び天秤53を駆動させる為の主軸で、図示外のモータによって回動自在にしてある。Eは機枠に対して取付けられた複数のシークイン供給装置、Fはテーブルの上面においてXY方向に移動可能にした刺繍枠、Hはロータリー式多頭ミシンMの動作を制御する為のCPU等を含むコンピュータを備えている制御装置を示す。
【0016】
刺繍ミシンCにおけるヘッド5は、機枠に装着してあり、図2に示されるように、フレーム6と、針棒保持枠8と、複数の針棒機構15と、針棒駆動機構26と、複数の布押え具と、天秤装置51を備える。
図2、3から理解できるように、針棒保持枠は、ヘッドのフレームに対して案内棒30を用い、回動中心11を中心に往復回動自在に取付けてある。針棒保持枠は、周知のように制御装置Hで制御される図示外の針棒切替機構(任意のステッピングモータを備える)に連なる連繋杆14を介して往復回動制御される。針棒保持枠には、多数の針棒16を上下動自在に支持する為の貫通孔12が、回動中心11を中心とする同一円周上に多数形成されている。
次に、針棒機構15は、符号16、17、18、20、21で示される部材を備える。16は、針棒保持枠の貫通孔12に対して夫々上下動自在に取付けられる多数の針棒を示し、下部には夫々相互に異なる色の色糸が付されている針18が針止部材17で止着してある。この針止部材17は、針棒下動時に後述のシークイン供給装置Eにおける切断部材116を下動させる為の押し部材としても兼用される。20は、針棒及び布押え具を上昇させる為の第1ばねで、針棒保持枠と布押え具の第1ばね座44aの間に配置してある。21は、針棒を上昇させる為の第2ばねで、布押え具の第1ばね座44aと第2ばね座44bとの間に配置してある。第1、第2ばねのばね力は、針棒と布押え具を同期させて(図13のタイミング図に示すように関連動作させて)上下動できるように、第1ばねに比べ第2ばねのばね力が強くしてある。
【0017】
次に、針落孔2の上方に選択されて止められた針棒を上下動させる為の針棒駆動機構26について説明する。針棒駆動機構26は、符号27〜31で示される部材によって構成してある。27は主軸に取付けられた偏心輪、27aはクランクロッド、28は一端28aをフレームに枢着したレバーで、29はレバー28と昇降体31を連結するリンク、30は針棒保持枠の回動中心11に取付けられた案内棒で、フレームに対し往復回動自在に取付けてある。31は案内棒30に対し上下動自在に装着した昇降体、31aは針棒を押える為の針棒押さえを示す。
針棒駆動機構26は、周知のように主軸の回動運動を、符号27〜29の部材を介して昇降体31に上下運動にして伝達する。
【0018】
次に布押え具36について説明する。布押え具は、図2、図3から理解できるように、複数の針棒に対して夫々添設してある。
布押え具は、布Gを押える為の布押え部材37(又は押え部分37a)と、布押え部材37(又は押え部分37a)を針棒と連係する為の連係部材43とを一体的に連結して形成してある。
図12によく表れている37aは、任意の数だけ備えた刺繍縫用の布押え部分を示し、37は、任意の数だけ備えシークイン縫付け用の布押え部材を示す。
図12(A)、(B)に表れる刺繍縫用の布押え部分37aは、針落孔2を囲むことができるように、元部38aから二つの持出し部分37bを張出し、それらを前端連結部分37cで連結してリング部41とし、中央位置に針通し孔41bが形成してある。
次に、布押え具におけるシークイン縫付け用の布押え部材37の平面形状は、図12(A)、(C)、(D)から理解できるように、下降状態において、シークインSの両側の布Gを布押え面39aで押えることができるように、布押え部材37の元部38から二つの布押え爪39を夫々上記シークインSの両側に向けて突設した形状にしてある。40は二つの布押え爪39の間に形成される間隙を示す。
次に、布押え具の連係部材43にあっては、第1ばね座44a、ガイド部46夫々に形成された針棒通し孔45、47に対して針棒を挿通させて、針棒に対して相対的な上下動自在に装着してある。
【0019】
さらに、上記の針棒について、夫々の針棒に同期して上下動するように添設してある上記布押え具における夫々の布押え部材37の平面形状は、前述した形状にしてある(図12参照)。上記構成のシークイン縫付け用の布押え部材37を複数並設した場合、針棒保持枠8を回動させることにより、上記複数の布押え具の内の複数を選択して、予め各針棒に付される相互に異なる色糸で、シークイン供給装置Eから供給されるシークインSを縫製するようにする。
さらに、上記刺繍縫用の布押え部分37aとシークイン縫付け用の布押え部材37の夫々の配設数や配置は、縫製内容、使用状況等使用者の要求に対応して任意に選択すれば良い。
【0020】
上記布押え具は、周知のように上記針棒に対して夫々同期して上下動する。この動作の点を詳しく説明する。主軸Dの回動により、針棒駆動機構26を介して昇降体31が上下動する。昇降体31が下動すると、針棒押さえ31aが針棒を押す為、針棒16が下動する。それにより第2ばね21を介して第1ばね座44aが押し下げられ、第1ばね20が押し縮められて布押え具が下動する。そして図2に示されるように、布押え具の布押え部材37(又は布押え部分37a)は布G上面に当接し、布を押さえつける。さらに、針棒が下動し、針が布Gに刺さり、下死点まで至った後、広く知られているように上糸と下糸(図示省略)が絡む。その後昇降体31が上動すると、針棒は第2ばね21により布Gから抜ける。次に、第1ばね20により針棒と布押え具が上死点まで上昇してする。このような動作を繰り返し行い、上記針棒と布押え具を同期させて上下動させて縫製に用いるようにすればよい。
さらに、上記の場合、広く知られているように、針棒と布押え具と、刺繍枠F等を同期させて(図13のタイミング図に示すように関連動作させて)縫製に用いるようにすればよい。
【0021】
次に、図2、4に表われる天秤装置51について説明する。天秤装置51における天秤保持枠52は、フレームに対して往復回動自在に装着されており、連係機構80の連係部材81と案内棒30を介して、針棒保持枠の往復回動と一体的に往復回動する。
次に、天秤装置51における複数並設の天秤53は、支軸54でもって天秤保持枠52に対して矢印方向に揺動自在に枢着してある。天秤53において、56は天秤駆動機構70における駆動子74と嵌合する為の嵌合部、57は位置決片60に係合する為の凹状の係合部、59は腕部58の先端に備えられる糸通し孔を夫々示す。60は、フレームに固定された位置決片を示す。61は位置決片60における欠如部を示し、その幅寸法は、後述の天秤駆動機構70における駆動レバー72が通過できる寸法にすればよい。上記60は、針落孔2に対応する位置にある針棒と天秤の上下方向の動きを妨げることなく、他の天秤の下落を防止できるようにしてある。天秤保持枠52が横動する場合は、駆動子74が図2の位置にあって天秤53が下落することはない。
次に天秤駆動機構70について説明する。天秤駆動機構70は周知のように符号71〜77で示される部材によって構成してある。71は主軸に取付けられるカムで、カム溝71aを備える。72は駆動レバーで、元部を枢軸73に枢着されて回動自在にされ、先端には駆動子74を備える。76は連繋レバーで、一端を駆動レバー72の元部に一体に連結し、他端には従動子77を備え、カム溝71aに位置させてある。周知のように主軸の回動を、天秤カム71、駆動レバー72、連繋レバー76を介して伝え、上記位置決片60の欠如部61位置にある天秤53を揺動させればよい。
【0022】
次に、図1に示される刺繍ミシンCにおいて、84は、夫々複数のヘッドの上方で、かつ、機枠に対して備えられる周知のテンション台を示す。62は、刺繍ミシンCの縫製に用いる縫糸Tを巻付けておく糸巻きを立てるピンを示す。複数の糸巻きに夫々相互に異なる種類の色糸Tを巻き付けておき、多種の縫糸Tを選択的に縫製に用いるとよい。縫糸Tは、周知のようにテンション台84、糸道64、天秤の糸通し孔59、糸道65を通して針の針孔に通して用いる。
【0023】
次に、本件ロータリー式多頭ミシンMにおけるシークイン供給装置Eは、図5〜7に表れているように、上記機枠に取付けられる支持部材90に対して主枠100を備えさせ、上記主枠100には、上記主枠100における下部100bに、帯状に連なっているシークイン103の先端103aを、案内路110における供給点111へ向けて案内する案内路110を備えさせ、さらに、上記案内路110に位置させる上記帯状に連なっているシークイン103の先端103aを上記供給点111の先に存在する突出空間118に向けて押し進める為の送出し装置120を備えさせてある 。
【0024】
この点を図5〜11を用いて詳しく説明する。
支持部材90において、90aは機枠に取り付ける為の固着部を示し、90bはシークイン供給装置Eにおける主枠100を取付ける為の取付部を示す。図7によく表れる94は、支持部材90に対して主枠100を昇降自在に支持する為に、取付部90bに設けられる凸溝状に突出させたガイドレールを示す。91は後述の昇降手段96の取付部を示す。
図6、7から理解できるように、主枠(スライドカバーとも称されている)100の中間部には、支持部材90におけるガイドレール94に対して摺動自在に装着する為の摺動部材101が固着されている。101aは後述の昇降手段96の取付部を示す。図7に一点鎖線で示される符号96は周知の昇降手段としてのエアシリンダの存在を示し、固定点91と101aとの間を矢印97方向に伸縮自在にする為のものである。エアシリンダ94が矢印97方向へ伸縮すると、主枠100は支持部材90に対して矢印98方向に昇降する。なお、100dは主枠100の上昇位置を示す。
図6に示されるように、主枠100における上部100aには、帯状に連なっているシークイン103(以下単に「シークイン103」ともいう)を巻付けて蓄える為のリール102が、回転自在に枢着されている。リール102に巻付けられたシークイン103は回転子108を通って主枠100における下部100bに備えられる案内路110へ案内される。
なお、支持部材90は一体材で形成しても、複数部材を連結して形成してもよい。
さらに、機枠に対する支持部材90の取付手段を、容易に着脱可能な止具、例えばボルト又はボルトとナットにして、シークイン供給装置Eを使用しない場合に、シークイン供給装置Eを外せるようにしてもよい。さらに、支持部材90を図5の矢印92方向に回動できるように固着部90aを枢着構造にして、邪魔なとき右側へ退避できるようにしてもよい。
【0025】
次に、シークイン供給装置Eにおける案内路(ガイド溝とも称される)110について説明する。案内路110は、シークイン103の先端103aを供給点111へ向けて案内する為に主枠100における下部100bに配置されている。案内路110は、図8〜11から理解できるように、底部材(底板とも称される)112と、底部材112の上面112aに配設された二つの側部材(案内板とも称される)113で形成される。案内路110は図示の如く上方が開放したトンネル状に形成してあり(図9参照)、その巾と高さ寸法は、シークイン103が案内路110を通過できる寸法に設定してあればよい。図9、11に表われているように、底部材112には後述の送出し部材123における腕部125の先端126を位置させる為のスリット状の凹部112bが形成してある。115は、案内路110に向うシークイン103が案内路110にスムーズに進入できるように上から帯状に連なっているシークイン103を底部材112の上面に押し付ける為の板バネを示す。
なお、案内路110の巾寸法は、図10に示すように、周知の調整機構119を用いて二つの側部材113、113の間隔を拡げたり狭めたりして、調整すればよい。
【0026】
本件のロータリー式多頭ミシンMにおけるシークイン供給装置Eにおける供給点111の位置は、図5〜11に表れているように、供給点111から針落孔2方向へ向かうシークインSの孔Saの移動軌跡107が、刺繍ミシンCにおける針棒保持枠の回転中心点11と針落孔位置2と結ぶ線の延長線13上に位置させ、かつ、供給点111から突出空間118へ突出させるシークインSが、上記針落孔位置2と重合する位置に至るようにしてある。
図5〜11に表れている案内路110における供給点111は、図示の如く案内路110の先端で、かつシークイン103の孔Saが通過する略中央部を意味する。
次に、図8、図11に表れている116は、供給点111から突出空間(供給点111よりも針落孔2寄りの空間であって、図11(A)の状態で針落孔2と重合する空間を意味する)118に向けて突出させたシークイン103の先端103aのシークインSを1ケ宛切り離す為の切断部材を示し、切断部材116から延びる軸116aを下部100bに対して上下動自在に装着している。切断部材116は、針棒の下降時に上記針棒機構15の押し部材17に備えさせる駆動部116bによって押し下げられる。
【0027】
次に、シークイン供給装置Eにおける送出し装置120について説明する。
図8、11によく示される121は、案内路110に位置する帯状に連なっているシークイン103に係合して押し進める為の送出し部材を示す。送出し部材121は、本体部122を送出駆動機構130における駆動体133に対して枢軸122aでもって往復回動自在に枢着し、先端にL字状の腕部125を有する。腕部125における126は、シークイン103の孔Saに係合させる為の係合部を示す。係合部126は、送出し部材121が図8、11における右方向に移動するときに、係合部126がシークインの孔Saから離脱するように図8、図11における右側を斜状にした先端傾斜面127が形成してある。128は、送出し部材121を下方に付勢する為のバネを示す。
次に、送出し装置における130は、送出し部材121を前後方向(この明細書においては、図3(B)の針棒保持枠8の回動中心11から見て右方向(放射方向)を、「前方向」という。従って、この場合前後方向とは、図6〜8における左右方向である)に往復移動させる為の送出駆動機構を示す。送出駆動機構130は、符号131〜138で示される部材によって構成される。131は主枠100の下部100bに対して固着されている二つの柱部材(ブロックとも称される)、132は二つの柱部材131、131間に支持されるロッド、133はロッド132、132に対して前後方向に往復移動自在に装着される駆動体(スライダとも称される)、136aはステッピングモータ136の駆動軸、137は駆動軸136aに取付けられたアーム、138はアーム137と駆動体133を連結するリンクを示す。送出駆動機構130は、駆動軸136aの往復回動運動を、アーム137、リンク138、駆動体133を介して送出し部材121に前後運動にして伝達する。
【0028】
上記シークイン供給装置Eは、周知のように送出し装置を動作させて、案内路110に位置する帯状に連なっているシークイン103の先端103aを、供給点111から突出空間118に向けて突出させる。この動作を繰返し、シークインSを次々と突出空間118へ供給する。この動作の点を詳しく説明する。
送出し装置を動作させ、送出し部材121が図11に示される矢印150方向に進むと、腕部125の係合部126がシークイン103の孔Saに係合した状態でシークイン103を矢印150方向に押し進める。そして、シークイン103の先端103aを、供給点111から針落孔2の上方に位置する突出空間118に向けて突出させる(図11(A)において一点鎖線で示される位置参照)。
次に、送出し部材121が、図11(B)に示される矢印151方向に移動すると、腕部125の先端傾斜面127が、シークイン103の孔Saの孔縁Sbに当たり、係合部126が持ち上げられる。係合部126はシークイン103の1ピッチ分だけ移動する。このような動作を繰り返し行い、案内路110に存在するシークイン103の先端103aを供給点111の先に存在する突出空間118に向けて次々と突出させるようにすればよい。なお、この動作は針棒、刺繍枠Fと同期させて(図13のタイミング図に示すように関連動作させて)行うようにすればよい。
なお、送出し装置によるシークイン103の送り出すピッチ(送出量)は、周知のように送出駆動機構130におけるステッピングモータ136のステップ数を制御することによりすれば良い。さらに、図10、11に示されるように、周知の調整部材140(部材140a、140bを備える部材)を用いて送出し部材121の前後移動を調整すればよい。
次に、針、布押え具、刺繍枠F、針棒切替機構、送出駆動機構130、シークイン等の関連動作の状態は図13のタイミング図に示す。これらの動作は、周知のように制御装置Hによるコンピュータ制御により行えばよい。
【0029】
上記構成のものを用いてシークインSを布Gに縫付ける動作について説明する(なお、刺繍ミシンC及びシークイン供給装置E夫々の動作については、上述した記載を参照)。
まず、図5のように通過軌跡107を、延長線13上に重ねて位置させている上記シークイン供給装置Eは、自体に備える送出し装置(図11参照)120を動作させて、帯状に連なっているシークインの先端103aを、供給点111から突出空間118に向けて突出させる。
これによって、図11(A)に示されるように上記シークインの先端103aを刺繍ミシンCにおける針落孔位置2の上方に重合させることができる。
【0030】
次に、上記刺繍ミシンCにおける針棒と布押え具を矢印152方向に下降させる。すると、図11(B)に示されるように針止部材17の駆動部116bが切断部材116を矢印152方向に押し下げて、針先に貫通させると共に、帯状に連なっているシークイン103の突出したシークインSを切り離し、シークインの孔Saを針落孔2に重合させる。さらに針棒に付された針は下死点に至り、縫糸Tを下糸に絡ませて上昇し、シークインSを縫い止めする。
この針棒が上昇してシークインSの孔Saに刺し通した針が抜ける際、布押え具は図13のタイミングで下降しており、図12に示されるように、布押え具における布押え部材37が、その布押え面39aでシークインSの両側の布Gをしっかりと押えた状態で、針が布Gから抜けて上昇する。このように布Gの両側が押えられると、布Gは「ばたつく」ことなく安定し、布Gの上面のシークインSの位置も安定し、布Gに対する縫付け予定位置にあるまま縫付けられる。
引き続いて、図13に示されるように布押え具も上昇を始め、さらに刺繍枠Fが移動する。
次に図13の2針目に示されるように、シークイン供給装置Eにおける送出し装置を動作させないで、針棒、布押え具、刺繍枠Fを同期させて縫製を行う。これにより二針目はシークインSの孔に糸を刺し通すことなく、布Gの上面のシークインSを越えて布に直接差し込まれ、布に対しシークインSを色糸T1で止め付ける。
このような動作を繰り返し行い、刺繍ミシンCとシークイン供給装置Eとを同期させて上下動させ、次々とシークインSを供給し、それらのシークインSを次々と布Gの上面に縫い糸(T1、T2・・T5・・・)で縫付けるようにすれば図14(A)に表れているようなシークイン列SLの縫製が行われる。
【0031】
上記のシークインSの縫付け方法によれば、図14(A)に表れているような状態で布製品Gの表面Gaにおけるシークインを配置すべき領域66(シークインを配置すべき予定の場所66)に多数のシークインSが列設された状態(列設の状態は、図14(A)の状態、或いは、周知のように複数のシークインS相互が1部重合しながら直列状になったり、複数のシークインS相互が相互間に僅かな間隙を持ちながら直列状になったりする状態をいう)で、縫い付けられることになる。
なお、図13において二針毎にシークインSの孔Saに刺し通して縫付ける場合を図示したが、一針毎にシークインSの孔Saに針18を刺し通して縫付けるようにしてもよい。
【0032】
さらに、従来より知られているように、例えば文献3の図5に示されているように(本件の図面欄に転記した図においては図14(B)である。以下本件においてはこれらの図を、図14(B)と称する)、一般的には、シークイン列SLを複数列縫製することにより模様を構成している。またこの場合、各列設された状態のシークイン列SLの各1つのシークインSに対する針落ち数を周知の手段に基づき、増加させることにより、図14(B)に表れているように各シークインSの表面Scにおける色糸Tの縫い糸の数を増加させた状態に縫付けできる。
なお、図14(B)においては列設された状態の各シークイン列SLa、SLbの相互間においては色糸の色が相互に異ならしめてある。よって、隣接する各シークイン列SLa、SLbの相互間のシークイン表面Scの反射光の色彩も、相互に異なることになり、美しさを醸し出す。
【0033】
上記図14(B)に表れているように、各列設された状態の各シークイン列SLa、SLbの相互間における色糸の色を相互に異ならしめる手段は広く知られているが、一般的には、上記したように予め異なる色糸Tが付されている各針棒16を選択利用して、シークイン供給装置Eから供給される多数のシークインSを、各列ごとに色糸Tを変更して縫製する。
【0034】
次に、図15、16は布製品(Tシャツ)に対して列設した細幅のシークイン列SLが多色(複数色)に輝くように、シークイン加工を施した例を示す。
具体的には、一列のシークイン列SLが2色の細幅列に輝くように、あるいは2列のシークイン列SL、SLが4色の細幅列に輝くようにしたものを提供する例を示す。
図に示される布Gの一面Gaにおけるシークイン配置領域66に縫い付けられた多数のシークインS、S・・・Sは、周知のもので、例えば、特許文献3に開示され広く知られているようなシークインSの表面Scに輝きを持たせた(表面に光沢面)が備えられたシークインSを示す。
上記配置領域66におけるシークイン列SLの縫付け状態は、図15、16に示されるように、一列のシークイン列SLが夫々2色の細幅列に輝くように縫付けられている。
まず、図15(A)に示される「NIHON」の模様67を構成するシークイン列SLの縫付け状態を説明する。
図15(B)に示される「N」におけるシークイン列SL1は次のように縫付けられている。
シークイン列SL1の各シークインSを布Gに対して縫付けるのに用いた色糸Tは、シークイン列SL1の一方の側(図における左側で、シークインSの幅方向68の約半分の幅に偏在した側)は、例えば「赤色」の色糸で縫付けられている。さらに、上記シークイン列SL1における他方の側(図における右側で、シークインSの幅方向68の約半分の幅に偏在した側)は、上記の色糸Tとは異なる色、例えば「黒色」の色糸Tで縫付けられている。
このように、縫付けられているシークイン列SL1の夫々のシークインSの表面Scにおいては、夫々縫付けに用いた色糸T(赤色)と、色糸T(黒色)の色が夫々押さえ付けてあるシークインSの表面Scに反映して、夫々の縫付けに用いた色糸の色に同化して見えるようになる。
その結果、シークイン列SL1における夫々のシークインSの表面Scの色は、一方の側は赤色化して、赤色の色列L1となり、他方の側は黒色化して黒色の色列L2となり、1列のシークイン列SL1が細幅の2列の細幅の色列に区別して輝いて見えることになる。
【0035】
次に、「N」を構成する2列シークイン列SL2について説明する。図15(B)に示されるように、2列シークイン列SL2は、2つのシークイン列SL3、SL4を並設状態で列設されている。上記2つのシークイン列SL3、SL4は夫々、前述したシークイン列SL1と同様に、シークイン列の一方の側(左側)と他方の側が異なる色の色糸で縫付けられている。シークイン列SL3、SL4についての縫付けに用いた色糸の色としては、「N」を描くデザインにより任意の色に決定すればよい。例えば、シークイン列SL3の一方の側(図における左側)は、「赤色」の色糸、他方の側(図における右側)は、一方の側とは異なる「紫色」の色糸で縫付けられている。シークイン列SL4の一方の側(図における左側)は「白色」の色糸、他方の側(図における右側)は、一方の側とは異なる「黒色」の色糸で縫付けられている。この結果、2つのシークイン列SL3、SL4は、左から赤色、紫色、白色、黒色の4列の細幅の色列に区別して輝いて見えることになる。
以上のように縫付けられている「N」は、2つのシークイン列SL3、SL4が4色の細幅列に、一列のシークイン列SL1が2色の細幅列に輝くように見え、「N」の文字が陰影のついたカラフルな文字に輝かせて見えるようになっている。
【0036】
次に、図16にに示される布製品(Tシャツ)の表面側に上下方向に細長く配設された模様67を構成するシークイン列SL(2列のシークイン列SL2)の縫付け状態を説明する。
上記2列シークイン列SL2は、前述した図15の2列のシークイン列SL2と同様に、2つのシークイン列SL3、SL4を並設状態で列設されている。シークイン列SL2、SL3についての縫付けに用いた色糸の色としては、細幅のストライプを描くデザインにより任意の色に決定すればよいが、例えば、図16(B)のような色糸を用いる。この結果、2つのシークイン列SL3、SL4は、左から赤色、白色、黄色、緑色の4列の細幅の色列に区別して輝いて見えることになる。
なお、シークイン加工を施す布製品としては、図示したTシャツの他の任意の布製品に施されるが、例えば、帽子、衣服、靴、ベルト、携帯電話カバー等がある。
また上記の布Gとしては、通常、織物、編物、不織布、合皮、ビニール等のシート状のものが用いられる。
【0037】
次に、シークイン列SLの縫製順を、図17〜19を用いて説明する。
図17、18は、布Gのシークイン配置領域66に対して、各シークインSを次々と縫糸Tで縫付けてシークイン列SL1を列設する場合における縫製順を示す概略平面図。
図17、18においては周知のように「布押え部材37」と、「シークイン供給装置Eから針落孔2に向けて供給されるシークインS」と、「刺繍枠に張設された布G」と「布Gに縫い付けられるシークインS」と、「シークインの表面Scに表出された色糸Tと針落位置3」との関係を針落孔2の位置を固定した状態で経時的に描いたもので、8個シークインを縫付ける状態を示すものである(なお、図において3〜7番目に縫い付けられているシークインSを中略して示す)。図17は、シークイン列SL1の一方の側(L1)に、シークインSを次々と供給しながら、次々と対応して色糸Tが配置されるように縫付ける順を示す図面、図18は、図17で縫い付けられているシークイン列SL1の他方の側(L2)に対して色糸Tが配置されるように縫付ける順を示す平面図。
これらの両図により夫々の色糸の縫付け動作、縫付け順、縫付け位置等は明らかになっている。なお、図17、18において、布押え部材37、シークイン供給装置Eの存在位置は一点鎖線で示し、矢印は刺繍枠の移動による布Gの移動方向を示す。3は針落位置で、下糸との絡み部分を示す。
【0038】
次に図19(A)(B)は、前述した図13のタイミング図と同旨のタイミング図を示し、図においては周知のように「針」と、「布押え具」と、「刺繍枠」と、「シークイン供給装置EにおけるシークインSの送出し動作」と、「シークインの表面Scに表出された色糸Tと針落位置3」との関係を、周知のように上下に並べ、かつ、右に向けて経時的に描き、上下相互間の動きの関連を示すものである。
従って、この図と関連した図であって、シークイン表面に対して、表出させる状態で複数の色糸が配置してある平面図等を参酌することにより夫々の色糸の縫付け動作、縫付け順、縫付け位置等は明らかになる。
なお後述する図21、22、24、25のタイミング図も同様の考えに基づいて参酌することにより、対応する図面の色糸の縫付け動作、縫付け順、縫付け位置等を明らかにするものである。
【0039】
次に、図15に示されるシークイン列SLの内、1列のシークイン列SL1の縫製順について説明する。
まずシークイン表面の色列L1についての縫製(シークインSを供給しながらの縫製)を説明する。
図17に示されるように、 上記のシークイン配置領域66に対して次々と供給される各シークインSを布に縫付けるときの糸Tには、任意の色糸T(赤色糸)を用いて縫い付けを行う。しかも、その色糸Tの配置は、列設状態で縫い付けられるシークイン列SLの一方の側に色糸が配置されるように縫い付ける。
この場合、「針」と、「布押え具」と、「刺繍枠」と、「シークイン供給装置EにおけるシークインSの送出し動作」と、「シークインの表面Scに表出された色糸Tと針落位置3」との関連動作の関係は、図19(A)に示すとおりに縫製すればよい。
この結果、シークイン列SL1は図17(vii)、図19(A)から理解できるように、シークイン列SL1は赤色の色糸T(T1〜T16)により布Gに対して縫付けられ、シークイン列SL1の一方の側には赤色の色糸列L1が形成される。
【0040】
引き続いて、図18、図19(B)に示されるように、さらに、上記シークイン配置領域66に対して上記の状態で縫い付けられている列設状態のシークインSに対しては、さらに、上記の色糸Tとは異なる色の色糸T(黒色糸)を用いて、シークイン列の他方の側に色糸Tが配置されるように縫い付ける。
この結果、シークイン列SL1には図17、図18(iv)のように、シークイン列SL1の他方の側は黒色の色糸T(T21〜T36)により布Gに対して色糸列L2が縫付けられ、シークイン列SL1の他方の側L2 には黒色の色糸列L2が形成される。
なお、左側の色列L1を縫製するときシークインSを供給しながら縫付けを説明した。しかし、右側の色列L2を先に縫製するのであれば、色列L2の縫製のときにシークインSを供給しながら縫付けてもよい。
【0041】
次に、図15(B)に示される2列のシークイン列SL2の縫製順について説明する。
まず、2列のシークイン列SL2における左側のシークイン列SL3を布Gに対して縫付ける。この縫製順は、前述した図15、図17〜19のシークイン列SL1について説明した場合の縫製と同様に縫製すればよい。この場合においてシークイン列SL3についての縫付けに用いた色糸の色としては、例えば、図示のようにシークイン列SL3の一方の側(図における左側)は、「赤色」の色糸、他方の側(図における右側)は、一方の側とは異なる「紫色」の色糸を用いて縫付ける。
引き続いて2列のシークイン列SL2における右側のシークイン列SL4を布Gに対して縫付ける。この縫製順は、前述した図15、図17〜19のシークイン列SL1について説明した場合の縫製と同様に縫製すればよい。この縫製においてシークイン列SL4についての縫付けに用いた色糸の色としては、例えば、図示のようにシークイン列SL4の一方の側(図における左側)は「白色」の色糸、他方の側(図における右側)は、一方の側とは異なる「黒色」の色糸を用いて縫付ける。
この結果、2列のシークイン列SL2は、左から赤色、紫色、白色、黒色の4列の細幅の色列に区別して輝いて見えることになる。
【0042】
上記のような構成の縫製を施せば、列設状態のシークイン列SLにおいて、シークイン列の幅方向68の一方の側と、他方の側とが夫々細幅の筋状に色別けされて上記シークイン列(SL1、SL2、SL3等)が、夫々幅方向に2列の細幅の「色筋」で区分されているように縫製される。
小さなシークイン(直径3mm〜6mm位)から構成されるシークイン列(横幅は最大幅で3mm〜6mm位)を、更に細幅の「色筋」でもって、「幅方向に分割」して表現することができる。
さらに、各シークイン列を構成する各シークインSの表面Scに2つの色糸を左右に色分けして架け渡すことによって、シークイン列の幅方向に左右のシークイン表面の輝きを色を分けて二様に輝かせることができるので、カラフルで美しい細幅の色列のシークイン加工を施した布製品を提供することができる。
【0043】
なお本発明のシークインの縫付け方法に用いるシークイン供給装置付き刺繍ミシンM1としては、前述したロータリー方式のミシンと同様に、複数の針棒群を支持する枠を直線的に往復動させるタイプの多針ミシンであるスライド式多針ミシンであって、シークイン供給装置を備えている多針ミシン(例えば特許文献2参照)を用いるものであってもよい。
【0044】
次に、図20(A)について説明する。
図20(A)は、布製品に対して列設する一列の細幅のシークイン列SLが3色の細幅列に輝くようにしたものの例を示す。
【0045】
次に、図20(A)のシークイン列SLの縫製順について説明する。
まず、シークイン列SLの中央部に任意の色糸Tが位置するように、シークインSを次々と供給しながらシークインSを縫い付ける(シークイン表面の色列L1)。上記色列L1は、前述した図14(A)の色列L1について説明した通りに縫製するとよい。
次に、図20(A)の列設させる状態で縫い付けられたシークイン列SLの一方の側(左側)に上記の色糸とは異なる色の色糸T(例えば橙色の色糸)が配置されるように縫い付ける(シークイン表面の色列L2)。上記色列L2は、前述した図19(B)の色列L2について説明した通りの縫製方法に準じて縫製するとよい。
さらに、列設させる状態で縫い付けられたシークイン列SLの他方の側(右側)に、上記の色糸Tとはさらに異なる色の色糸T(例えば白色の色糸)が配置されるように縫い付ける(シークイン表面の色列L3)。
上記色列L3は、前述した図18、図19(B)の色列L2について説明した通りの縫製方法に準じて縫製するとよい。
なお、シークイン列SLにおけるシークインSの数を矢印方向に、2つ縫製することについて説明したが、布G上に配置される模様のデザイン上、2つ以上のシークインSを必要とされる場合は、上述した縫製順を繰り返して、必要な数のシークインを羅列させればよい。
なお、シークイン列SLの中央部の色列L1を縫製するときシークインSを供給しながら縫い付け、次いで左側の色列L2、右側の色列 L3の順に縫製するような縫付けを説明した。
しかし、シークイン列SLの左側の色列L2を、まず最初に図17、図19(A)を用いて説明した通りの縫製方法に準じて縫製し、その後右側の色列 L3、中央部の色列L1を縫製してもよい。中央部の色列L1を縫製する場合は、後述する図20(C)、図21(B)を用いての説明をする通りの縫製方法に準じて縫製するとよい。
【0046】
以上のように一列シークイン列SLを縫い付けるようにしたので、列設状態のシークイン列SLにおける幅方向68において、一方の側と、他方の側とが夫々細幅の筋状に色別けされ、さらに、上記シークイン列SLの中央部においては上記左右の色違いの筋状が、それらの色糸とは異なる色糸Tでもって区分されていて、上記シークイン列SLが幅方向に3列の細幅の色糸で区分されているようになる。
一列のシークイン列SLは、その巾方向68に3つに色分けされた3列の色彩列に変化し、カラフルで美しい細巾列の描かれた布製品を提供することができる。
【0047】
次に、図20(B)について説明する。
図20(B)は、布製品に対して列設した細幅のシークイン列SLが多色(複数色)に輝くように、シークイン加工を施した例を示す。具体的には、一列のシークイン列SLが2色の細幅列に輝くようにしたものを提供する例を示す。
次に、図20(B)のシークイン列SLの縫製順について説明する。
まずシークイン列SLの中央部のシークイン表面の色列L1(赤色糸)についての縫製(シークインSを供給しながらの縫製)を説明する。
上記色列L1は、前述した図14(A)の色列L1について説明した通りの縫製方法に準じて縫製するとよい。
次に、上記中央部の色列L1の左右側のシークインの表面の色列L2a、L2b(白色糸)についての、斜め十文字状の縫製(シークインSを供給することなく縫製)を説明する。
「針」と、「布押え具」と、「刺繍枠」と、「シークイン供給装置EにおけるシークインSの送出し動作」と、「シークインの表面Scに表出された色糸Tと針落位置3」との関連動作の関係は、図21(A)に示すとおりに縫製すればよい。
【0048】
上記の場合、図20(B)に示されるようにシークイン列SLを縫い付けるようにしたので、列設状態のシークイン列SLにおける幅方向68において、中央部においては左右の色列L2a、L2bとは色違いの細い筋状の色列L1が、それらの色糸とは異なる色糸Tでもって区分されていて、一方の側と、他方の側とが夫々細幅の筋状に分割されているようになる。一列のシークイン列SLは、その巾方向68に、例えば「白色」、「赤色」、「白色」と2色に色分けされた3列の色彩列に変化し、美しい細巾列の描かれた布製品を提供することができる。
【0049】
次に、図20(C)について説明する。
図20(C)は、布製品に対して列設した細幅のシークイン列SLが多色(複数色)に輝くように、シークイン加工を施した例を示す。具体的には、一列のシークイン列SLが3色の細幅列に輝くようにしたものを提供する例を示す。
次に、シークイン列SLの縫製順について説明する。
まず、シークイン表面の色列L1(例えば赤色糸)と、上記中央部の色列L1の左右側のシークインの表面の色列L2a、L2b(例えば白色糸)についての縫製を前述した 図20(B)の色列L1について説明した同様の手法でもって縫製する。
次に、シークイン列SLの中央部のシークイン表面の色列L1の右側の色列L3(例えば橙色糸)についての縫製する。
色列L3の縫製において、「針」と、「布押え具」と、「刺繍枠」と、「シークイン供給装置EにおけるシークインSの送出し動作」と、「シークインの表面Scに表出された色糸Tと針落位置3」との関連動作の関係は、図21(B)に示すとおりに縫製すればよい。この場合、縫い付け色糸相互間の位置関係(例えば色列L1の糸T1と、色列L3の糸T21a)とは、各縫い付け色糸の一部においては加工の都合で相互に重なっても致しかたがないが、少なくとも一部においては、重合することなく、図20(C)の糸T1と、糸T21aのように相互に異なる場所で、それぞれシークインの表面Scに添え付けられた状態で縫い付けられるのが望ましい。この場合は、色糸T1と、色糸T21aのそれぞれの異なる色がそれぞれシークインの表面Scに反射されて、きらびやかな混色を発散する。
【0050】
上記の場合、図20(C)に示されるようにシークイン列SLを縫い付けるようにしたので、列設状態のシークイン列SLにおける幅方向68において、中央部においては左右の色列L2a、色列L2bとは色違いの細い筋状の2本の色列L1、L3が、左右の色列L2a、色列L2bの色糸とは異なる色糸Tでもって区分されていて、夫々細幅の筋状に分割されているようになる。
一列のシークイン列SLは、その巾方向68に「白色」、「赤色」、「橙色」、「白色」と色分けされた4列の色彩列によって変化し、美しい細巾列の多色に混色された光で描かれた布製品を提供することができる。
【0051】
次に、図20(D)について説明する。
図20(D)は、布製品に対して列設した細幅のシークイン列SLが多色(複数色の混色光)に輝くように、シークイン加工を施した例を示す。具体的には、一列のシークイン列SLが3色の細幅列に輝くようにしたものを提供する例を示す。
次に、上記シークイン列SLの縫製順について説明する。
まずシークイン列SLの中央部のシークイン表面の色列L1(例えば赤色糸)についての縫製(シークインSを供給しながらの縫製)を説明する。
上記色列L1は、前述した図14(A)の色列L1について説明した縫製方法に準じて縫製するとよい。
次に 上記中央部の色列L1の左右側のシークインの表面の色列L2(白色糸)についての縫製(シークインSを供給することなく縫製)を説明する。
「針」と、「布押え具」と、「刺繍枠」と、「シークイン供給装置EにおけるシークインSの送出し動作」と、「シークインの表面Scに表出された色糸Tと針落位置3」との関連動作の関係は、図22に示すとおりに縫製すればよい。
【0052】
上記のように図20(D)に示されるようにシークイン列SLを縫い付けるようにしたので、列設状態のシークイン列SLにおける幅方向68において、中央部においては左右の色列L2とは色違いの細い筋状の色列L1が、それらの色糸とは異なる色糸Tでもって区分されていて、一方の側と、他方の側とが夫々細幅の筋状に分割されているようになる。
一列のシークイン列SLは、その巾方向68に、例えば「白色」、「赤色」、「白色」と2色に色分けされた3列の色彩列に変化し、美しい細巾列の描かれた布製品を提供することができる。
【0053】
次に、図23について説明する。
図23(A)〜(C)は、布製品に対して列設した細幅のシークイン列SLが多色(複数色)に輝くように、シークイン加工を施した例を示す。具体的には、布Gのシークイン配置領域66に縫い付けられた多数のシークインにおける個々のシークインSにおいては、第1にシークインSの表面Scの地色の輝きと、第2に一つの色糸Tの色彩、第3に他の色糸Tの色彩、第4に複数の色糸Tの色彩が夫々シークイン表面Scに反射して醸し出す混色の色彩(複数の色糸の色彩とシークイン表面からの反射の色彩)に係わる輝き等、多彩な色彩の輝きを発揮させることのできるようにしたものを提供する例を示す。
【0054】
次に、図23(A)のシークイン列SLの縫製順について説明する。
まずシークイン列SLの例えば赤色糸(T1〜T8)についての縫製(シークインSを供給しながらの縫製)を説明する。
上記赤色糸の縫製において、「針」と、「布押え具」と、「刺繍枠」と、「シークイン供給装置EにおけるシークインSの送出し動作」と、「シークインの表面Scに表出された色糸Tと針落位置3」との関連動作の関係は、図24(A)に示すとおりに縫製すればよい。
次に シークイン列SLの例えば黒色糸(T21〜T28)についての縫製(シークインSを供給することなく縫製)を説明する。
この黒色糸の縫製において、「針」と、「布押え具」と、「刺繍枠」と、「シークイン供給装置EにおけるシークインSの送出し動作」と、「シークインの表面Scに表出された色糸Tと針落位置3」との関連動作の関係は、図24(B)に示すとおりに縫製すればよい。
なお、シークイン列SLの赤色の糸を縫製するときシークインSを供給しながら縫い付けることを説明した。しかし、シークイン列SLを最初に黒色の糸で縫製するときシークインSを供給しながら縫付け、次いで、シークイン列SLの赤色の糸をシークインSを供給することなく縫付けるようにしてもよい。
【0055】
次に、図23(B)のシークイン列SLの縫製順について説明する。
まずシークイン列SLの例えば赤色糸(T1〜T4)についての縫製(シークインSを供給しながらの縫製)を説明する。
前述した図19(A)の色列L1について説明した通りの縫製方法に準じて縫製するとよい。
次に シークイン列SLの黒色糸(T21〜T24)についての縫製(シークインSを供給することなく縫製)を説明する。
前述した図19(B)の色列L1について説明した通りの縫製方法に準じて縫製するとよい。
なお、シークイン列SLの赤色の糸を縫製するときシークインSを供給しながら縫い付けることを説明した。しかし、シークイン列SLの黒色の糸を最初に縫製するときシークインSを供給しながら縫付け、次いで、シークイン列SLの赤色の糸をシークインSを供給することなく縫付けるようにしてもよい
【0056】
次に、図23(C)のシークイン列SLの縫製順について説明する。
まず、前述した図20(D)の色列L1、L2について説明した通りの縫製方法に準じて縫製するとよい。
次に シークイン列SLの例えば黒色糸(T21a〜T28a)についての縫製(シークインSを供給することなく縫製)を説明する。
この黒色糸の縫製において、「針」と、「布押え具」と、「刺繍枠」と、「シークイン供給装置EにおけるシークインSの送出し動作」と、「シークインの表面Scに表出された色糸Tと針落位置3」との関連動作の関係は、図25に示すとおりに縫製すればよい。
【0057】
上記のような構成の縫製を施した状態では、図示の如く、
(B)布製品Gの一面Gaに複数のシークインSを列設させた状態で配置することにより模様67が表出されており、しかも、それら複数のシークインSの個々においては、夫々複数の色糸Tで縫い付けられており、しかもその縫い付け色糸相互間の位置関係は、各縫い付け色糸の少なくとも一部においては相互に異なる場所でシークインの表面Scに添え付けられた状態で縫い付けられていて、各色糸の色は、夫々シークインの表面Scに映されて、反射され、隣接の色糸の色と混色され、えも言われぬ美しい光を放射する 。
言葉を変えると、上記本願にあっては、上記シークイン加工を施した布製品を提供することができ、これにより布製品の表面に対し、上記列設状態のシークイン列SLにおける各シークインSの表面においては、多数の色、即ち、「シークインSの表面Scの地色」の輝きと、第3種類の色糸Tの色彩「黒色」「赤色」「白色」の色彩、「複数の色糸Tの色彩が夫々シークイン表面Scに反射して醸し出す混色」の色彩の輝きが、細かくちりばめられキラキラと細かく輝く万華鏡のように、美しい輝きを発揮させることができる。
【0058】
なお、前述した図20、図23の説明において、シークイン列SLにおけるシークインSの数を矢印方向2つ縫製することについて説明したが、布G上に配置される模様のデザイン上、2つ以上のシークインSを必要とされる場合は、上述した縫製順を繰り返して、必要な数のシークインを羅列させればよい。
【0059】
なお、布Gのシークインの配置領域に対して施すシークイン列SLについて、1列又は2列を並設する例を説明したが、列設させるシークイン列SLの列数は、布製品に施す模様、色数により、任意に増加させて縫製すればよい。例えば、多色(9色)の細幅列のカラフルなデザインを構築する要望がある場合は、図26に示されるようにすることにより、図のような細幅の9種類の色列に区別して、9色のストライプ柄に輝いて見える美しいシークイン加工を施した布製品を提供することができる。
なお、この場合、刺繍ミシンCにおける布押え具36は、布Gを押える為の布押え部材37を9本の針棒に対して備えさせ、縫製に用いるようにするとよい。
【符号の説明】
【0060】
M・・・ロータリー式多頭ミシン、A・・・機枠、B・・・テーブル、C・・・刺繍ミシン、D・・・主軸、E・・・シークイン供給装置、F・・・刺繍枠、G・・・布、Ga・・・布の一面、H・・・制御装置、S・・・シークイン、Sa・・・孔、Sb・・・孔縁、Sc・・・表面、SL・・・シークイン列、L1,L2・・Ln・・・シークインの表面の色列、T・・・色糸、2・・・針落孔、3・・・針落位置、5・・・ヘッド、8・・・針棒保持枠、11・・・回動中心、15・・・針棒機構、16・・・針棒、18・・・針、26・・・針棒駆動機構、30・・・案内棒、31・・・昇降体、31a・・・針棒押さえ、36・・・布押え具、37・・・布押え部材、37a・・・刺繍縫用布押え部分、38・・・元部、39・・・布押え爪、39a・・・布押え面、45・・・針棒通し孔、46・・・ガイド部、47・・・針棒通し孔、51・・・天秤装置、52・・・天秤保持枠、59・・・糸通し孔、60・・・位置決片、62・・・糸巻き立て用ピン、66・・・シークインの配置領域、67・・・模様、68・・・シークインの幅方向、70・・・天秤駆動機構、72・・・駆動レバー、90・・・支持部材、94・・・ガイドレール、96・・・エアシリンダ、100・・・主枠(スライドカバー)、103・・・帯状に連なっているシークイン、103a・・・先端、111・・・供給点、118・・・突出空間、120・・・送出し装置、121・・・送出し部材、130・・・送出駆動機構、133・・・駆動体(スライダ)、136・・・ステッピングモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布の一面における予め定められたシークイン配置領域に対して、
多数のシークインを、次々と供給しながら、上記のシークイン配置領域に対して供給される各シークインを、次々と縫糸で布に縫付けていくシークインの縫付け方法において、
上記のシークイン配置領域に対して次々と供給される各シークインを布に縫付けるときの糸には、任意の色糸を用いて縫い付けを行い、
さらに、上記シークイン配置領域に対して上記色糸を用いて縫い付けられている多数のシークインに対しては、さらに、上記の色糸とは異なる色の色糸を用いて縫い付けを行い、しかも、上記の異なる色の色糸を用いて縫い付けを行うときには、異なる色の色糸相互間の位置関係において、各縫い付け色糸の少なくとも一部においては相互に異なる場所でシークインの表面に添え付けできる状態で縫い付けることを特徴とする シークインの縫付け方法。
【請求項2】
布の一面における予め定められたシークイン配置領域に対して、
多数のシークインを、次々と供給しながら、上記のシークイン配置領域に対して供給される各シークインを、次々と縫糸で布に縫付けていくシークインの縫付け方法において、
上記のシークイン配置領域に対して次々と供給される各シークインを列設させる状態で布に縫付けるときの糸には、任意の色糸を用いて縫い付けを行い、しかも、その色糸の配置は、列設状態で縫い付けられるシークイン列の一方の側に色糸が配置されるように縫い付け、
さらに、上記シークイン配置領域に対して上記の状態で縫い付けられている列設状態のシークインに対しては、さらに、上記の色糸とは異なる色の色糸を用いて、シークイン列の他方の側に色糸が配置されるように縫い付けることにより、
列設状態のシークイン列において、シークイン列の幅方向の一方の側と、他方の側とが夫々細幅の筋状に色別けされて上記シークイン列が幅方向に2列の細幅の色糸で区分されているようにすることを特徴とする シークインの縫付け方法。
【請求項3】
布の一面における予め定められたシークイン配置領域に対して、
多数のシークインを、 次々と供給しながら、上記のシークイン配置領域に対して供給される各シークインを、次々と縫糸で布に縫付けていくシークインの縫付け方法において、
上記のシークイン配置領域に対して次々と供給される各シークインを列設させる状態布に縫付ける工程は、
シークイン列の中央部に任意の色糸が位置するように縫い付ける工程と、
列設させる状態で縫い付けられるシークイン列の一方の側に上記の色糸とは異なる色の色糸が配置されるように縫い付ける工程と、
さらに、列設させる状態で縫い付けられるシークイン列の他方の側に、上記の色糸とはさらに異なる色の色糸が配置されるように縫い付ける工程とを含み、
列設状態のシークイン列における幅方向において、一方の側と、他方の側とが夫々細幅の筋状に色別けされ、さらに、上記シークイン列の中央部においては上記左右の色違いの筋状が、それらの色糸とは異なる色糸でもって区分されていて、上記シークイン列が幅方向に3列の細幅の色糸で区分されているようにすることを特徴とする シークインの縫付け方法。
【請求項4】
布製品の一面に複数のシークインを列設させた状態で配置することにより模様67が表出されており、しかも、
それら複数のシークインの個々においては、夫々複数の色糸で縫い付けられており、
しかもその縫い付け色糸相互間の位置関係は、各縫い付け色糸の少なくとも一部においては相互に異なる場所でシークインの表面に添え付けられた状態で縫い付けられていることを特徴とするシークインが縫い付けられている布製品。
【請求項5】
請求項1、2、3に記載のシークインの縫付け方法で得られるシークインが縫付けられている布製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−81141(P2012−81141A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231009(P2010−231009)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000135690)株式会社バルダン (125)
【Fターム(参考)】