説明

シートの放電処理装置および放電処理方法、ならびに多孔ポリエステルフィルム。

【課題】電気絶縁性シート、特にプラスチックフィルムの放電処理工程で発生する、電気絶縁性シートの片面または両面に存在する局所的な帯電を、後工程で欠陥が発生しないレベルまで除去できる放電処理装置ならびに放電処理方法を提供することである。また、特に比較的厚みの厚い電気絶縁性の発泡ポリエステルフィルムにおいて塗布はじきを発生することのないフィルムを提供することにある。
【解決手段】電気絶縁性シートを、表面に誘電体層を有する対極ロールと接触させながら、前記シート表面に放電雰囲気を曝露する放電処理方法にあって、前記対極ロールからの剥離点から見て搬送方向の上流側および下流側のシート表面を除電する上流側除電および下流側除電を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの放電処理装置および放電処理方法、ならびに多孔ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気絶縁性を有する繊維織物や不織布、プラスチックフィルム、紙類などの電気絶縁性シートの表面を、印刷インキ、剥離剤、接着剤等の塗布や、真空蒸着に代表される真空薄膜形成における接着性(塗れ性)を上げるために表面改質することを目的とした電気絶縁性シートの表面処理手段としてコロナ放電等を利用した放電処理が広く知られている(例えば、非特許文献1に記載)。
【0003】
その概要を図10において説明する。この図は主要部のみを示し、各要素を支える構造物等は省略してある。この図には、放電電極1、少なくとも最外層に接地された導電体層を有する芯金2の上に誘電体層3が被覆された対極ロール4、およびコロナ放電処理用高圧電源5から構成されるコロナ放電処理装置10が示されている。このコロナ放電処理装置10は、放電電極1と対極ロール4との間に高電圧を印加することにより放電電極1と対極ロール4との間にコロナ放電雰囲気6を発生させるものである。このコロナ放電処理装置10は、電気絶縁性シート7を搬送ロール8aおよび8bによって対極ロール4の最表層にある誘電体層2の上に巻き付けながら、対極ロール4を時計回り(矢印方向)に回転させながら搬送しながら、電気絶縁性シート7の表面をコロナ放電雰囲気6の中を通過させてこれに曝露することで、長尺の電気的絶縁性シートに対して連続的に表面処理を行える構造となっている。
【0004】
ところが、このようなコロナ放電処理に代表される大気圧中での放電処理は、その放電処理条件により、被処理シートである電気絶縁性シートに好ましくない帯電を残す場合がある。特に被処理シートが電気絶縁性の高いポリエステルフィルムのようなプラスチックフィルム(以下フィルムと呼ぶ)の場合、一般に体積抵抗が1012[Ωcm]と高いためにフィルムが帯電しやすく、好ましくない帯電が後々まで残りやすい。また放電処理工程で発生した帯電は、局所的に帯電電荷密度が不均一に分布した帯電模様を示す特徴がある。例えば、後述する電気絶縁性シートの各面の表面電位測定において測定される電位値が、シート面内方向の位置の違いによって、ゼロ[V]付近から数百[V]の値まで大きく振れることがある。
【0005】
このような場合、局所的に強く帯電した部位は、用途によっては後加工である塗布工程において塗布液をはじいたり、真空蒸着工程で蒸着膜が抜けてしまったり、また巻取や巻出の工程においては局所的な帯電によってシートの各層がその内層または外層と密着してしまい、巻き出す際にシート破れが生じる、といった生産上の不具合を発生させることがあった。
【0006】
本発明者らの知見によれば、この局所的な帯電模様には主要な発生要因が三つある。
【0007】
一つ目は、コロナ放電電極付近で発生する放電雰囲気の中で、電気絶縁性シート上に火花状に落ちる放電である。このような放電は目視でも確認でき、その火花状の放電が発生した部位において、電気絶縁性シート上に強く局所的な帯電が残ることが多い。
【0008】
また二つ目は、コロナ放電処理された電気絶縁性シートが対極ロールから剥離するときに発生する剥離放電である。このような剥離放電が発生すると、電気絶縁性シートの非処理面に局所的な帯電が残ることが多い。コロナ放電処理では、放電電極と電気絶縁性シートとの間の放電雰囲気中に多量のイオンが発生するが、電気絶縁性シート表面に到達するイオンの極性の偏りにより、コロナ放電処理後の電気絶縁性シート表面は正または負に強く帯電することが多い。このときの電気絶縁性シートの表面電位の絶対値は、電気絶縁性シートが対極ロール上に密着した状態においても、例えば10[kV]以上に達する場合がある。この状態から、電気絶縁性シートが対極ロールから剥離すると、電気絶縁性シートとロールとが徐々に離れるにつれて両者間の静電容量が徐々に小さくなる。電気絶縁性シート上の帯電電荷量は変化しないため、両者間の電位差は徐々に大きくなり、ついには空気の絶縁破壊電圧を超え放電に到るのである。
【0009】
そして三つ目は放電電極に対向している位置における対極ロールに被覆された誘電体層表面の帯電である。一般に対極ロールの誘電体層には、電気絶縁性を上げるために1011[Ωcm]以上の体積抵抗を持つ材質が使われることがある。上述の電気絶縁性シートが対極ロールから剥離する際に生じる剥離放電は、電気絶縁性シートの表面に局所的な帯電を生じさせるだけでなく、対極ロールの誘電体層にも局所的な帯電を残す。そして、このように局所的に帯電した対極ロールが回転して再度電気絶縁性シートが対極ロールに巻き付き始める位置(巻付点)に到達したときに、電気絶縁性シートとの間に2次的な放電が発生する場合がある。またこの誘電体層表面の局所的な帯電部位がコロナ放電雰囲気付近に到達したとき、コロナ放電雰囲気において誘電体層表面の帯電の様子に応じて不均一な量のイオンが電気絶縁性シートへ供給され、電気絶縁性シートに局所的な帯電が残る場合がある。このことは対極ロールの外周周期で局所的な帯電模様が発生するという観察結果からも裏付けられる。
【0010】
以上の三つの帯電機構の単独または複合により、電気絶縁性シートの片面または両面に局所的で強い帯電が残る場合がある。またそればかりか、その強い帯電部位が接地された金属ロールなどの接地物体に近づいたときに、さらに放電を引き起こし正負両極性の混在した複雑な帯電模様を形成することもある。
【0011】
本発明者の知見によれば、以上三つの局所的な帯電の発生メカニズムの内、塗布工程で塗布はじきや蒸着工程の膜抜け、巻出工程でのシート破れなどの重大な不具合の原因となる帯電は、二つ目および三つ目のメカニズムで発生するものである。
【0012】
ところで局所的な帯電を原因とする不具合を解決するために、電気絶縁性シートの帯電を除去する技術がいくつか提案されている。
【0013】
例えば特許文献1や特許文献2には、コロナ放電処理直後に対極ロールの搬送方向下流において、電圧印加式除電器等を用いて電気絶縁性シートを除電する方法が開示されている。この概要を図11において説明する。なお、前述の図10と同一または同等の機能を有する構成要素には同一番号を付け、詳細な説明を省略する。これらの文献によれば、電気絶縁性シート7が対極ロール4から剥離した後、電気絶縁性シート7が次の搬送ロール8bに到達する前に除電器9を備える構成である。電気絶縁性シート7が対極ロール4から剥離した後の処理面側から除電するので、電気絶縁性シート7の非処理面側に残った局所的な帯電や、対極ロール4の誘電体層3の表面に残った帯電を、この除電器9の位置で十分に除去することは難しい。
【0014】
また、特許文献3には、コロナ放電処理の対極ロールに残った帯電を除電する方法が示されている。しかしながら対極ロールとの剥離放電により電気絶縁性シートに残った局所的な帯電は除去できない。
【0015】
また、特許文献4には、帯電した電気絶縁性シートを架空状態において片面に正負イオンを強制的に吸引させることにより、シート上に残った局所的な帯電を除去する方法が開示されている。しかしこの除電方法では、ある程度の局所的な帯電模様を除去することは可能であるが、塗布はじきや蒸着時の膜抜け、巻出のシート破れ等の欠点を十分に除去できるものではなかった。その理由としては、当該除電方法では装置構成上、現実的には電気絶縁性シートの片面側からしか正負イオンを供給できないため、もう一方の面にはどうしても帯電が残ってしまうことが挙げられる。
【0016】
また特許文献5には、導電性ロールに巻きつかせた電気絶縁性シートに特定極性の電荷を強制的に付与し帯電させた上で、シートを導電性ロールから剥離した後に除電する、局所的な正負両極性帯電の除去方法が開示されている。しかしこの除電方法は片面のみに局所的な帯電が形成された場合には効果があるが、放電処理工程で発生する、シートの両面に残る局所的な帯電を除去するには不十分である。
【0017】
また特許文献6には、導電性ローラ上に誘電体層を被覆されて形成された接地ローラ上をシートが走行し、その接地ローラを剥離した直後のフィルムに、速度によって決まる周波数の交流電圧を印加した除電器を設置することにより、局所的な正負両極性帯電を除去する方法が開示されている。しかし、この除電方法も特許文献5と同様片面のみの帯電は除去できるが、放電処理で残る両面の局所的な帯電を除去する効果は期待できない。
【特許文献1】特公昭59−13536号公報
【特許文献2】特開平2−180935号公報
【特許文献3】特開2003−292650号公報
【特許文献4】特許第2651476号公報
【特許文献5】特開平8−64384号公報
【特許文献6】特開平6−243989号公報
【非特許文献1】中前勝彦、白石久司著、「高分子の表面をつくる」初版、共立出版発行、1994年5月発行、p12〜14
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
以上説明したように、従来技術では放電処理プロセスで発生する局所的な帯電を除去することは困難であった。そこで本発明者らは、上記のような従来技術の問題点に鑑み、単に局所的な帯電模様が発生したシートに対し事後的に除電処理を施すのではなく、局所的な帯電発生の根本的な原因から解消すべきであることに着目した。そして放電処理プロセスにおける主要な帯電原因を取り除き、後工程で塗布はじきや蒸着膜抜け、および巻出時のシート破れが発生しないレベルまで帯電の影響を改善できる放電処理方法を提供することを検討した。
【0019】
本発明の第1の目的は、上述した従来の技術の問題点を解決し、放電処理による表面改質効果を損なうことなく、放電処理プロセスで発生する、シートの片面または両面に存在する局所的な帯電を、後工程で欠陥が発生しないレベルまで除去できる放電処理装置ならびに放電処理方法を提供することである。
【0020】
また、本発明の第2の目的は、塗布はじきが発生することの少ない多孔ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために本発明によれば、表面が誘電体層で被覆された対極ロールと、前記対極ロールに対向配置された放電電極と、前記放電電極と前記対極ロールとの間に電位差を発生させる高圧電源と、シートを前記対極ロール上を経由して搬送可能に構成された搬送ロール群とを備えたシートの放電処理装置であって、前記シートの前記対極ロールからの剥離点から見て搬送方向上流側および下流側の表面を除電するシート除電手段を備えたシートの放電処理装置が提供される。
【0022】
その好ましい実施形態として以下が提供される。
【0023】
それは、前記除電手段は、前記シートを前記剥離点の前記上流側において除電する上流側除電手段と、前記剥離点の前記下流側において除電する下流側除電手段とを個別に備えたものであるシートの放電処理装置である。
【0024】
さらに、前記対極ロールの直径をd[m]、前記誘電体層の被覆厚みおよび比誘電率をそれぞれt[m]およびεとし、前記下流側除電手段の除電イオン発生電極から前記シートに向けて下ろした垂線と前記シートとの交点と、前記剥離点との最短距離をx[m]としたときに、
0≦x≦dcos−1(ε/(10t+ε))/2
の範囲となるように前記下流側除電手段が配置されているシートの放電処理装置である。
【0025】
また、本発明の別の好ましい形態として、前記除電手段は、前記シートの前記剥離点の前記上流側および前記下流側において前記シートを除電する上下流兼用除電手段を備えるものであるシートの放電処理装置が提供される。
【0026】
さらに本発明の好ましい形態によれば、前記対極ロールの直径をd[m]、前記誘電体層の被覆厚みおよび比誘電率をそれぞれt[m]およびεとし、前記上下流兼用除電手段の除電イオン発生電極から前記シートに向けて下ろした垂線と前記シートとの交点と、前記剥離点との最短距離をx[m]、前記上下流兼用除電手段と前記電気絶縁性シートとの最短距離をL[m]としたときに、
−L/2≦x≦dcos−1(ε/(10t+ε))−L/2
の範囲となるように構成されているシートの放電処理装置が提供される。
【0027】
上記で挙げた放電処理装置のさらに好ましい形態として、前記除電手段が、電圧印加式の除電装置であるシートの放電処理装置、あるいは、前記剥離点の搬送方向下流かつ前記シートの前記対極ロールへの巻付点の上流において、前記対極ロールの誘電体層表面を除電する誘電体層除電手段を備えたシートの放電処理装置が提供される。
【0028】
また、放電処理方法として、シートを表面に誘電体層を有する対極ロールと接触させながら、前記シート表面を放電雰囲気に曝露する放電処理済みシートの製造方法であって、前記対極ロール上で放電処理された前記シートの表面を、前記対極ロールからの剥離点から見て搬送方向上流側および下流側において除電する上流側除電および下流側除電を行なうことにより、目的の処理効果と帯電状態を満たす放電処理済みシートを得ることができる。
【0029】
さらに好ましい実施形態として、前記誘電体層の被覆厚みおよび比誘電率をそれぞれt[m]およびεとし、前記シートの厚みおよび比誘電率をそれぞれt[m]およびεとし、前記シートの搬送速度をv[m/s]としたときに、前記上流側除電および前記下流側除電における前記シートの幅方向の単位長さあたりの除電イオン量がいずれも
4.4×10−8×v/(t/ε+t/ε)[A/m]
よりも大きくなるように除電することにより、問題なく除電できた放電処理済みシートを得ることができる。
【0030】
またポリエステルフィルムにおいて、少なくとも片面の濡れ性が50[mN/m]以上であり、かつ各面の背面平衡電位の絶対値が340[V]以下である多孔ポリエステルフィルムが提供される。
【0031】
本発明において、対極ロールに被覆される誘電体層としては、一般に耐熱性、耐オゾン性、電気絶縁性の優れた材質が使用される。この特性を得るため、例えばシリコンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン・ゴム(EPDM)、ハイパロン、セラミックスなどが採用される。電気絶縁性として好ましくは1011[Ωcm]以上が望まれる。
【0032】
本発明が好ましく適用される電気絶縁性シートとして、代表的なものには、プラスチックフィルムや織布、不織布、紙等のシートや枚葉体がある。特に電気絶縁性の高いプラスチックフィルムが本発明を適用するには好適である。プラスチックフィルムの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類や、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、アラミド、ナイロンなどの高分子プラスチックフィルムが例示できる。また、プラスチックフィルムは単層でもよく、また2層以上の複合体フィルムでもよい。
【0033】
これらのなかでも、特に厚みの厚いフィルム、具体的には厚みが30[μm]以上のフィルムの方が、帯電起因の塗布はじきが顕著に発生しやすい。また特に光学用の光拡散フィルムとして使用される多孔性ポリエステルフィルムは、微小な塗布はじきにおいても光学品質を劣化させるため問題になりやすいばかりか、帯電の影響の小さい真空中での放電処理やフレーム処理を施すと内部の気泡が変形してしまい、これも光学的品質を劣化してしまう。そのため、こうしたフィルムは大気中での放電処理でしか充分な品質を確保できないのが現状である。従ってそのような多孔性フィルムの塗れ性を上げるための表面処理方法としては本発明の放電処理方法が最適である。
【0034】
多孔性フィルムについては、炭酸カルシウムや酸化チタンなどの無機系充填剤やプラスチック顔料などの有機系粉末による粗大粒子を多量に含有した層を積層し、粒子間の空隙によって多孔化したものや、すでに多孔性を持たせたシリカ粒子をプラスチックフィルムに含有させたものが例示される。
【0035】
また、本発明において、「帯電模様」とは、電気絶縁性シートの少なくとも一部が局所的に正および/または負に帯電している状態をいう。その状況は、たとえば、微粉体(トナー)等によって、その帯電の様子(分布)を模様として確認できる。
【0036】
また、本発明において、「電荷密度」とは、表面電荷密度のことで、単位面積あたりに存在する電荷の量を表す(単位は[C/m])。
【0037】
また、本発明における「除電イオン」とは、除電器から被除電シートに到達するイオンをいう。イオンとは、電子、電子を授受した原子、電荷を持った分子や分子クラスター、浮遊粒子など、様々な形態の電荷担体をいう。また「除電イオン量」とは、除電器からシートに到達するイオンの量をいい、シートの単位幅、単位時間あたりにシートに到達するイオン量により計測する。簡易には、後述する除電イオン測定器(シムコ製イオノメータICM−2またはこれに相当するもの)により測定した値をシートの単位幅あたりに到達するイオン量に換算して用いる。
【0038】
また、本発明において「濡れ性」とは、固体と液体が接触したときのひきあう力のことであり、具体的にはASTMのD2578規格に基づき定量評価する。(単位は[mN/m])。
【0039】
また、本発明において「上流」、「下流」とは、シート上のある点、または放電処理装置のシートの搬送経路上のある点から見てシートが向かう方向の側を、その点に対し「下流」側、逆に走行方向と反対方向をその点に対する「上流」側という。
【0040】
また、本発明において「剥離点」とは、シートが回転しているロールに巻きつき接触しながら搬送される工程において、シートがロールの回転に伴ってそのロール上から離れ始める位置をいう。また「巻付点」とは、ロールの上流側から搬送されできたシートがそのロールに接触し始める位置をいい、この「巻付点」から「剥離点」までの間、そのロール上においてシートがロールに接触しながら搬送される。
【0041】
また、本発明において「除電イオン発生電極」とは、除電手段の構成要素のうち、除電イオンの発生に最も寄与する構成要素をいい、電圧印加式除電器や自己放電式除電器のようにコロナ放電現象を応用した装置では、コロナ放電を発生する針電極等の電極先端部をいう。また軟X線式や紫外線式除電器の場合は、その軟X線源や紫外線源をいう。
【0042】
また、本発明において「除電イオン発生電極の位置」とは、除電イオン発生電極が単一の場合は、その除電イオン発生電極の位置をいう。除電イオン発生電極が一つの除電器の中に複数並んで存在する場合は、各除電イオン発生電極の位置の3次元的な分布における中心位置をいう。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、後述の通り実施例と比較例との対比からも明らかなように、電気絶縁性シートの両面とも局所的に強い帯電箇所がなく、塗布はじきや蒸着時の膜抜けなどその後の工程での欠陥が発生しにくい電気絶縁性シートを得ることができる。
【0044】
さらに塗布膜や蒸着膜との間に優れた密着力を備えた多孔ポリエステルフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明の最良の実施形態の例を電気絶縁性シート用放電処理装置に適用した場合を例にとって、図面を参照しながら説明する。
【0046】
図1は本実施形態の電気絶縁性シート用コロナ放電処理装置の概略断面図である。なお、従来例と同一または同等の機能を有する構成要素には同一番号を付け、詳細な説明を省略する。
【0047】
図1に示すように、前の工程からコロナ放電処理装置10に搬送されてきた電気絶縁性シート7は搬送ロール8aによって巻付点12の位置より所定の巻きつけ角で対極ロール4に巻き付けられる。対極ロールは図の時計回り(矢印方向)に回転し、フィルムは対極ロールに接触した状態で放電電極1の直下に搬送される。放電電極1にはコロナ放電処理用高周波高圧電源5が接続されており、対極ロール4の誘電体層3の内層にある芯金2と放電電極1との間に電圧が印加され、放電電極1の尖鋭部でコロナ放電が発生する。そのコロナ放電により発生するコロナ放電雰囲気6に、電気絶縁性シート7が曝露されることにより、電気絶縁性シート7の表面が改質される。コロナ放電雰囲気6を通過し表面処理された電気絶縁性シート7は、対極ロール4の回転に伴い剥離点11まで搬送され、剥離点11で対極ロール4から剥離され、搬送ロール8bを経て、次の工程へと搬送される。
【0048】
本実施形態例においては、電気絶縁性シート7が放電電極1から対極ロール4との剥離点11に到るまでの間、すなわち図1に示す剥離点11の上流側の位置に、対極ロール4上において電気絶縁性シート7を除電するための上流側除電器13が配置されている。さらに、電気絶縁性シート7が剥離点11を通過した直後、すなわち図1に示す位置に、電気絶縁性シート7を除電するための下流側除電器14を配置する。なお、ここでは上流側除電器13および下流側除電器14として、後述する電圧印加式の除電器を使用しており、そのためこれらには除電器用高圧電源16(図には交流電源を示す)を接続している。このような構成により、コロナ放電雰囲気6に曝露され表面電位が上昇した電気絶縁性シート7が上流側除電器13付近まで搬送されたとき、上流側除電器13から到来した除電イオンにより電気絶縁性シート7の表面電位は低減される。さらに電気絶縁性シート7が搬送され、剥離点11を通過し、電気絶縁性シート7と対極ロール4との距離が徐々に離れていくとき、すなわち電気絶縁性シート7と対極ロール4との静電容量が徐々に小さくなる段階において、下流側除電器14から到来する除電イオンにより電気絶縁性シート7の電位の上昇が抑制される。この二つの除電器の働きにより、電気絶縁性シート7と対極ロール4との間で発生する剥離時の放電を未然に防ぐか、低減することができる。
【0049】
下流側除電器14の最適な配置について、図2を用いて説明する。図2は図1における剥離点11の周辺のみを拡大した図である。図2は対極ロール4(誘電体層3を含む)の直径d[m]、誘電体層3の被覆厚みt[m]、誘電体層3の比誘電率をεとすると、電気絶縁性シート7が剥離点11から下流側へ距離x[m]だけ搬送された位置でのシート7と誘電体層表面との距離つまり空隙のギャップg[m]は、式(1)で表せる。
【0050】
g=d・(1/cos(2x/d)−1)/2 [m] (1)
また誘電体層3の厚み方向における電気的距離(実際の距離を比誘電率で割った距離)は式(2)で表せる。
【0051】
/ε [m] (2)
式(1)と式(2)を足した式(3)が、電気絶縁性シート7と芯金2の最表面との電気的距離を表したものである。
【0052】
・(1/cos(2x/d)−1)/2+t/ε [m](3)
この電気的距離は剥離点11からシート7が搬送されるにつれ、増大する。また何も除電を施さない場合、ある均一な帯電電荷密度をもつ電気絶縁性シート7の表面電位はその電気的距離に比例して増大する。この電気的距離は剥離点11の近傍では変化量は小さい。これはxの値が小さいときは、式(1)の余弦の項の変化量が小さいため、という理由と、xの値が小さい範囲では式(3)の値は、第2項の値、つまり誘電体層の電気的距離が支配的であるためである。しかしながら、式(3)の第1項が第2項と同程度以上になれば、式(2)の値やシート7の表面電位の値も急激に上昇し始める。下流側除電器14を配置する位置としては、剥離点より下流で、電位が急激に上昇するまでに充分除電する目的を達成するため、剥離点から式(1)の値が式(2)の5倍になる範囲までに、電気絶縁性シート7に除電イオンを照射するのが好適な条件である。また、下流側除電器14のイオン照射範囲は、下流側除電器14の除電イオン発生電極と対象の電気絶縁性シート7との距離をL[m]としたときに、下流側除電器14の除電イオン発生電極から電気絶縁性シート7に向けて下ろした垂線と電気絶縁性シート7との交点31からシート搬送方向の上流および下流にL/2[m]の範囲が最も強いと考えてよい。この交点31から上流側にL/2[m]進んだ点を上限点32、交点31から下流側にL/2[m]進んだ点を下限点33とすると、図2における下流側除電器14の上限位置としては、交点31が剥離点11の下流にあることがこのましい範囲である。さらに下限位置としては、上限点32と剥離点11との距離が、式(2)の5倍以内であることが、電位が急激に上昇する範囲で適正に除電できる許容条件である。言い換えれば、下流側除電器14の除電イオン発生電極の位置をシート7の搬送距離x=x[m]の位置におけるシートの垂線上に設置するとすると、具体的なxの好適範囲とは式(4)を満たす範囲となる。
【0053】
≧0
かつ、
≦dcos−1(ε/(10t+ε))/2+L/2 (4)
またさらに好ましくは下流側除電器14を通過後の電気絶縁性シート7の表面電位を監視し、正常に除電できているか確認するための表面電位計17を、図1に示すように、剥離点11の下流でかつ搬送ロール8bの上流の位置に配置する事が好ましい。
【0054】
また電気絶縁シート7と上流側除電器13の除電イオン発生電極の位置との距離、またシート7と下流側除電器14の除電イオン発生電極の位置との距離は、後述する除電イオン量など除電器の能力から適宜調整する方法が好ましく、各除電器の除電イオン発生電極の位置とシート7との距離を適宜調整する機構を備えることが好ましい形態である。
【0055】
図3は別の本実施形態の電気絶縁性シート用コロナ放電処理装置の概略断面図である。図1の上流側除電器13と下流側除電器14の両方の機能を併せ持つ上下流兼用除電器15を対極ロール上の剥離点11の直上付近、すなわち図3に示すように、剥離点11付近において電気絶縁性シート7と対向する位置に配置することによっても、目的を達成することができる。つまり対極ロール4の上を搬送されている電気絶縁性シート7の表面電位を低減するための除電イオンと、電気絶縁性シート7と対極ロール4とが徐々に離れていく段階において電気絶縁性シート7の表面電位の上昇を抑制するための除電イオンを同一の上下流兼用除電器15から照射する構成も好ましい形態なのである。
【0056】
この場合の上下流兼用除電器15の最適な配置を図4を用いて説明する。図4は図3における剥離点11の周辺のみを拡大した図である。なお、図2と同一または同等の意味をもつパラメータには同一記号を付け、詳細な説明を省略する。この上下流兼用除電器15は、前述の剥離点11から下流側への搬送距離x[m]の好適範囲に除電イオンを照射し、さらに剥離点より上流に向けて除電効果を発現するための除電イオンを照射する必要がある。上下流兼用除電器15のイオン照射範囲は、上下流兼用除電器15の除電イオン発生電極と対象の電気絶縁性シート7との距離をL[m]としたときに、上下流兼用除電器15の除電イオン発生電極から電気絶縁性シート7に向けて下ろした垂線と電気絶縁性シート7との交点34からシート搬送方向の上流および下流にL/2[m]の範囲が最も強いと考えてよい。この交点34から上流側にL/2[m]進んだ点を上限点35、交点34から下流側にL/2[m]進んだ点を下限点36とすると、この下限点36が剥離点11の下流にあり、かつ下限点36と剥離点11との距離が、式(4)のxの値と同じ範囲内にあることが、剥離点の上流側および下流側でシートに適正なイオンを供給できる好適条件である。言い換えれば、上下流兼用除電器15の除電イオン発生電極をシート7の剥離点11からの搬送距離x=x[m]の位置におけるシートの垂線上に設けるとすると、具体的なxの好適範囲は式(5)に示すとおりになる。
【0057】
≧−L/2
かつ
≦dcos−1(ε/(10t+ε))/2−L/2 (5)
但しxが負の値の場合は、剥離点から上流にxの絶対値[m]だけ進んだシート7の垂線上の上下流兼用除電器15の除電イオン発生電極を設けることを意味する。
【0058】
除電手段としては、電圧印加式、電圧印加送風式、自己放電式、軟X線方式、紫外線方式等があるが、図1および図3で配置する除電器13、14、15については、発生するイオン量が多い電圧印加式または軟X線方式が好ましい。さらに比較的安価で、広い幅のシートにも比較的容易に設置できる電圧印加式の除電器が好適である。
【0059】
図5、図6は、電圧印加式の除電器の例の基本概略図である。図5の電圧印加式の除電器は、除電器用高圧電源16(図には交流電源を示す)に接続された針電極21と接地されたガード電極22と針電極21を絶縁被覆する絶縁体23から構成されている。除電器用高圧電源16から高電圧を印加することにより、針電極21とガード電極22との間に電界が発生し、針電極21の尖鋭部でコロナ放電が発生する。そのコロナ放電に伴い除電イオンが発生し、針電極21の印加電圧と同極性の除電イオンが針電極との静電気力により反発され、被除電物体に向けて飛来する。除電器用高圧電源16が交流の場合には正負交互の極性の高電圧が印加されるため、正負の除電イオンがほぼ等量ずつ飛来する。
【0060】
図6は図5の除電器にさらにガスノズルを付随したタイプのもので、除電器用高圧電源16(図には交流電源を示す)に接続された針電極21と接地されたガスノズルを兼ねたガード電極22と針電極21を絶縁被覆する絶縁体23から構成される。除電器用高圧電源16より高電圧を印加することにより、図5と同様の原理で針電極21の尖鋭部でコロナ放電が発生し、除電イオンが発生する。エアー配管24より空気などのガスが導入され、ガード電極22よりガス流が照射される。そのガス流に付随して除電イオンが飛来する。
【0061】
また図7には図5に示す電圧印加式除電器を、矢印方向に搬送されている電気絶縁性シート7の上に設置し、シートを除電する適用例の斜視図である。電気絶縁性シートに使用する除電器は、針電極21が多数配列されたものが好適に使用される。その除電器の長手方向を、シートの幅方向に対して平行に除電器を配置し、針電極21の尖鋭部をシート7に向けて配置する。シート7の全幅において、除電イオンのシート7への飛来量が均一になるように、各針電極21とシート7との距離がほぼ均一になるように配置するのが好ましい。
【0062】
電圧印加式除電器は、印加電圧としては交流、直流のいずれも採用できる。図1の上流側除電器13や図3の上下流兼用除電器15の例においては、電気絶縁性シート7の帯電にはコロナ放電処理で発生する正極性および負極性の局所的な帯電が含まれるため、交流電圧を印加することが好ましい。また図1の下流側除電器14については、電気絶縁性シート7が剥離点11を通過した直後のシートの表面電位は正または負のいずれかに偏るケースが多いため、交流、直流いずれでも除電可能である。但し直流を選ぶ場合は、剥離点直後のフィルムの電位の極性がいずれかを予め確認しておき、その反対極性の直流電圧を印加することが好ましい。
【0063】
さらに電圧印加式あるいは電圧印加送風式除電器の印加電圧は4〜12[kV]とすることが好ましい。電圧が低すぎると除電イオン量が不足する傾向にあり、また電圧が高すぎると図5または図6における針電極21とガード電極22との間で火花放電などの不具合が発生する恐れがある。
【0064】
また除電手段に電圧印加式の除電器を使用する場合、除電器と誘電体層との間隔Lは10〜100[mm]の範囲が好ましい。間隔が狭すぎるとフィルムがロールに巻き付くトラブルが発生した時に接触して装置故障につながりやすくなる傾向にあり、また間隔が広すぎると除電イオンが誘電体被覆層に充分供給されない場合がある。
【0065】
正常に除電できているか否かを監視するため、図1および図3に示すように、対極ロール4よりも下流の位置で、電気絶縁性シート7に対向する位置にシート7の表面電位を測定するように表面電位計17を設置することが好ましい。この場合、電気絶縁性シートの表面電位を正しく測定するために、電気絶縁性シート7上での表面電位の測定位置としては、対極ロール4や搬送ロール8、除電器14、15、その他の構造物のいずれからも少なくとも0.3[m]以上離れている位置に選定することが好ましい。またその際、電気絶縁性シートの表面電位の絶対値が5[kV]以内であれば、正常に除電できたと判断できる。
【0066】
図1および図3に例示する上流側除電器13、下流側除電器14、兼用除電器15で発生させる好ましい除電イオン量は以下のように計算できる。
【0067】
まず、対極ロールの誘電体層の比誘電率をε、誘電体層の厚みをt[m]、電気絶縁性シートの比誘電率ε、シートの厚みをt[m]とすると、電気絶縁性シート表層と導電性芯金表層との間の単位面積あたりの静電容量Cは式(6)で表せる。但し真空の誘電率をεとする。
【0068】
C=ε/(t/ε+t/ε) [F/m] (6)
次に、誘電体層の上の電気絶縁性シート表面の帯電電荷量を算出する。なお電気絶縁性シートの厚みは対極ロールの誘電体層の厚みに比べ充分薄く、帯電電荷量を算出するには誘電体層の静電容量が支配的に寄与すると考えられ、誘電体層の静電容量のみを用いて計算する。つまり、電気絶縁性シートと誘電体層の合成静電容量が式(6)に近似されるとすると、電気絶縁性シートの表面電位がV[V]のときの単位面積(1[m])あたりの帯電電荷量Q[C/m]は、式(7)で表せる。
【0069】
Q=CV
=εV/(t/ε+t/ε) [C/m] (7)
ここで電気絶縁性シートの搬送速度をv[m/s]とすると、式(7)で表される帯電電荷量Q[C/m]を完全に中和するための除電イオンの供給量Iは、シート(あるいは除電器)の単位幅(1[m])あたりの値として、式(8)で表せる。
【0070】
I=Qv
=εVv/(t/ε+t/ε)[C/m・s=A/m] (8)
対極ロール上の電気絶縁性シートは放電処理により、その表面電位の絶対値が10kV程度まで上昇することがある。なお、この電位10[kV]という値は経験的な値であるが、一般的な放電処理の印加電圧の最大値はせいぜい10[kV]程度であり、この値以上にシートの表面電位が上昇することは多くはない。このように帯電したシートが剥離点より下流で放電するのを予防するには、この表面電位の絶対値を5[kV]以下にするのがよい。そのため上流側除電の理想的な除電イオン量は、式(8)の表面電位Vを5[kV]以上低減する効果があることが望ましい。このことより上流側除電の理想的な除電イオン量I[A/m]は式(9)で表せる。
【0071】
≧4.4×10−8×v/(t/ε+t/ε)[A/m] (9)
例えば式(9)で、シート搬送速度v=0.5[m/s]、誘電体層の比誘電率2.0、誘電体層の被覆厚み5[mm]、電気絶縁性シートの比誘電率を3.0、シート厚みを0.2[mm]として、上流側除電器の理想的な除電イオン量を算出すると、8.6[μA/m]以上となる。
【0072】
一方下流側除電についても、上流側除電で残った帯電電荷量を中和する能力があればよい。上流側除電で、対極ロール上における電気絶縁性シートの表面電位の絶対値を5[kV]以下に低減するため、さらに5[kV]低減する除電効果があることが望ましい。従って式(8)で表面電位Vを5[kV]低減するための除電イオン量があればよいため、結局理想とする除電イオン量は式(9)で示される量と同じである。以上のことから、剥離点より上流側および下流側において、式(4)で表される除電イオン量を電気絶縁性シートに向けて照射することが、より好ましい条件と言える。
【0073】
なお除電イオン量は、例えば除電イオン測定器シムコ製イオノメータICM−2を用いて測定することができる。上記イオン測定器には、電極幅約92[mm](電極面積約85[cm])の平板金属電極が備わり、その平板電極と除電器を対向して配置し、除電器から平板電極に注入した除電イオンの量を電流値として測定する装置である。測定時に平板電極には電圧が印加されており、平板電極に−3.5[kV]印加したときの測定電流値を正の除電イオン量、平板電極に+5[kV]印加したときの測定電流値を負の除電イオン量として読むことができる。なお式(4)はシート幅1[m]あたりの除電イオン量を表しているため、上記除電イオン測定器での測定値を換算する場合、測定値に10.9(=1/0.092[m])を掛ければよい。
【0074】
図8は図3の実施形態において、除電イオンを好適に測定するための除電イオン測定器の配置を示した概略構成図である。図3の例では除電器1個のみで、剥離点11を挟んで上流側および下流側での電気絶縁性シート7の除電に使用しているが、この場合剥離点から上流に到来する除電イオン量および剥離点から下流に到来する除電イオン量を図8に例示する方法でそれぞれ測定するとよい。図8において、剥離点11よりも上流側の除電イオン量を測定する際の除電イオン測定器25および剥離点よりも下流側の除電イオン量を測定する際の除電イオン測定器26を示している。なお、一つの除電イオン測定器を用いて、剥離点を挟んで上流側および下流側のそれぞれ除電イオン量を、図8に示す除電イオン測定器25、26の二つの配置で順次測定してもよい。
【0075】
またさらに好ましい適用例として、図9に示すように対極ロール4に電気絶縁性シート7が巻きついていない、剥離点11の下流かつ巻付点12の上流において、対極ロール4の誘電体層3に対向する配置に誘電体層用除電器18を設けることが好ましい。特に誘電体層3に体積抵抗が1013[Ωcm]以上の抵抗値をもつ材質を使用する場合は、摩擦帯電によっても誘電体層3の表面が帯電する場合があり、誘電体層用除電器18を設置した方が好ましい。除電器は先に挙げたいくつかの例があるが、ここでは電圧印加式、電圧印加送風式、自己放電式のいずれか選択することが好ましい。ここでの除電は誘電体層3と電気絶縁性シート7との間で放電を起こさない程度に誘電体層3の表面電位を抑制することが目的であり、先の除電器ほど除電能力を必要としない。従ってコンパクトでかつ安価な除電器を選択することができる。但し、誘電体層2にセラミックスコート層など、厚さ1[mm]以下の薄い絶縁体層を用いる場合、誘電体層表面と内側の導電体との間の静電容量が比較的大きくなり、もし誘電体層表面に何らかの局所的な帯電が形成されると除電しにくくなるため、電圧印加式など、除電能力の高い除電器を選択するのが好ましい。
【0076】
以上説明した放電処理装置を使用することにより、フィルムに局所的な帯電の発生を抑制し、後の塗布工程で塗布はじきを起こさない電気絶縁性フィルムを得ることができる。また、所望の処理効果を併せ持つことができる。
【実施例】
【0077】
以下に示す実施例および比較例において、除電の効果を以下の方法により評価した。
(1)電気絶縁シートの各面の背面平衡面電位測定:絶縁フィルムの被評価面とは逆の面を金属ロール(直径10[cm]のハードクロムメッキロール)に密着させ、電位を測定した。絶縁フィルムと金属ロールの界面の間に実質的にギャップのない状態にまでぴったりと接触させて測定するこの状態で、電位計(モンロー社製モデル244)センサ(モンロー社製プローブ1017、開口部直径1.75[mm])をフィルム上2[mm](2[mm]位置においた時の視野はモンロー社カタログより直径約6[mm]の範囲となる)の位置におき、金属ロールを低速回転(リニアモータを使用し、約0.3[m/分]で低速回転させながら電位を測定し、電位P[V]を得た。
【0078】
フィルムの面内の背面平衡電位は、まずフィルム幅方向に電位計を20mm程度スキャンさせて最大値が得られる幅方向の位置を決め、幅方向の位置を固定して、電位計をフィルム搬送方向、つまりフィルムの長さ方向にスキャンさせて電位を測定した。フィルム面内の背面平衡電位は2次元的にすべてのポイントを測定するのが理想であるが、前述の方法でフィルム面内の電位の分布を近似した。フィルム幅が1mを越す場合には、フィルムの幅方向のほぼ中央部と端部において、20mm程度を切り出してから、スキャンさせながら最大値が得られる場所を探し、その後、フィルム搬送方向にスキャンさせて電位を測定する。中央部と端部の測定結果から最大値を求め、その最大値で評価する。
◎:200[V]以下
○:200[V]を越える〜340[V]以下
×:340[V]を越える
なお本発明者の知見によれば、この背面平衡電位の絶対値が340[V]を越えた場合に、その電位超過部位で塗布はじきが発生しやすい。このため背面平衡電位の絶対値が340[V]以下になるように除電条件を調整するのが好ましい。
(2)プラスチックフィルムの表面塗れ性の測定:ASTM D2578に従って測定した。
実施例および比較例を以下に示す。
[実施例1]
電気絶縁性シートとして、厚さ188[μm]に製膜した多孔性ポリエステルフィルム(東レ株式会社製「ルミラー」、品種名E60V)の片面に、図1に示すコロナ放電処理装置を用い、以下に示す処理条件、および除電条件でコロナ放電処理を施した。
(コロナ放電処理)
電極形状 :先端半径2.0[mm]のナイフエッジ状電極をシート搬送方向に4列連ねたもの。
コロナ処理用高圧電源:春日電機製AGI040(交流)
・投入電力:2[kW]
・周波数 :25[kHz]
電極−フィルム間間隙:2.0[mm]
フィルム速度:30[m/分]
対極ロール:直径300[mm]
(1)芯金:ステンレス製の芯金で直径290[mm]
(2)誘電体層:シリコーンゴムを4.0[mm]厚で被覆:
(シリコーンゴムの体積抵抗は1014[Ωcm]、被誘電率は3)
処理環境:温度20[℃]、湿度50[%]
(除電条件)
図1に示すように、電気絶縁性シート(ここではフィルム)において剥離点から上流側に上流側除電器13、剥離点から下流側に下流側除電器14を配置した。
上流側除電器:
(1)除電器:春日電機製KER型除電バー、針ピッチ10[mm]
(2)電源:交流高圧電源(周波数60[Hz]、電圧振幅8[kV])
(3)配置:剥離点より上流側にフィルムに沿って50[mm]の距離
(4)除電イオン発生電極とシートとの距離:25[mm]
下流側除電器:
(1)除電器:春日電機製KER型除電バー、針ピッチ10[mm]
(2)電源:交流高圧電源(周波数60[Hz]、電圧振幅8[kV])
(3)配置:剥離点より下流側にフィルムに沿って25[mm]の距離
(4)除電イオン発生電極とシートとの距離:30[mm]
以上のコロナ放電処理条件で、式(4)を用いて算出される、下流側除電器を設置するのに好適な、剥離点からのフィルム上の距離x[m]の範囲は以下の範囲になる。
【0079】
0≦x≦0.038[m]
また、式(9)を用いて算出される上流側除電器および下流側除電器の除電イオン量Iの好適範囲は、以下の範囲になる。
【0080】
≧15.8 [μA/m]
このとき、対極ロールの剥離点の上流側および下流側において、図8の除電イオン測定器25および26の位置で測定した除電イオン電流量を表1に示す。
【0081】
またこうしてコロナ放電処理したポリエステルフィルムの背面平衡電位およびコロナ放電処理面の塗れ性の測定結果を表2に示す。処理効果が高く、かつ後工程に欠陥を起こしにくい帯電状態であった。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
[実施例2]
使用した電気絶縁性シート、およびコロナ処理条件は実施例1と同じで、図3に示す構成で、上下流兼用除電器15を以下の条件に設定し、シートにコロナ放電処理を施した。
(除電条件)
図3に示すように、電気絶縁性シート(ここではフィルム)において剥離点付近に上下流兼用除電器15を配置した。
上下流兼用除電器:
(1)除電器:春日電機製KER型除電バー、針ピッチ10[mm]
(2)電源:交流高圧電源(周波数60[Hz]、電圧振幅9[kV])
(3)配置:剥離点より下流側にフィルムに沿って5[mm]進んだ距離
(4)除電イオン発生電極とシートとの距離:20[mm]
以上のコロナ放電処理条件および除電条件により、式(5)を用いて算出される、上下流兼用除電器を設置するのに好適な、剥離点からのフィルム上の距離x[m]の範囲は以下の範囲になる。
【0085】
−0.010≦x≦0.028[m]
また、式(9)を用いて算出される上下流兼用除電器で剥離点より上流側および下流側に供給する除電イオン量Iの好適範囲は、いずれも以下の範囲となる。
【0086】
≧15.8 [μA/m]
このとき、対極ロールの剥離点の上流側および下流側において、図8の除電イオン測定器25および26の位置で測定した除電イオン電流量を表1に示す。
【0087】
またこうしてコロナ放電処理したポリエステルフィルムの背面平衡電位およびコロナ放電処理面の塗れ性の測定結果を表2に示す。処理効果が高く、かつ後工程に欠陥を起こしにくい帯電状態であった。
[実施例3]
使用した電気絶縁性シート、およびコロナ処理条件は実施例1と同じで、図9に示す構成で、上下流兼用除電器15および誘電体層用除電器18を以下の条件に設定し、シートにコロナ放電処理を施した。
(除電条件)
図9に示すように、電気絶縁性シート7(ここではフィルム)において剥離点11付近に上下流兼用除電器15を配置した。また、剥離点11の搬送方向下流でかつシート7の対極ロール4への巻付点12の上流において誘電体層用除電器18を誘電体層2に向けて配置した。
上下流兼用除電器:
(1)除電器:春日電機製KER型除電バー、針ピッチ10[mm]
(2)電源:交流高圧電源(周波数60[Hz]、電圧振幅9[kV])
(3)配置:剥離点より下流側にフィルムに沿って5[mm]進んだ距離
(4)除電イオン発生電極とシートとの距離:20[mm]
誘電体層用除電器:
(5)除電器:春日電機製KER型除電バー、針ピッチ10[mm]
(6)電源:交流高圧電源(周波数60[Hz]、電圧振幅8[kV])
(7)配置:剥離点より下流側に対極ロールに沿って235[mm]進んだ距離
(8)除電イオン発生電極と誘電体層との距離:50[mm]
以上のコロナ放電処理条件および除電条件により、式(5)を用いて算出される、上下流兼用除電器を設置するのに好適な、剥離点からのフィルム上の距離x[m]の範囲は以下の範囲になる。
【0088】
−0.010≦x≦0.028[m]
また、式(9)を用いて算出される上下流兼用除電器で剥離点より上流側および下流側に供給する除電イオン量Iの好適範囲は、いずれも以下の範囲となる。
【0089】
≧15.8 [μA/m]
このとき、対極ロールの剥離点の上流側および下流側において、図8の除電イオン測定器25および26の位置で測定した除電イオン電流量を表1に示す。
【0090】
またこうしてコロナ放電処理したポリエステルフィルムの背面平衡電位およびコロナ放電処理面の塗れ性の測定結果を表2に示す。処理効果が高く、かつ後工程に欠陥を起こしにくい帯電状態であった。
[比較例1]
使用した電気絶縁性シート、およびコロナ処理条件は実施例1、2と同じで、図11に示す構成で、除電器9を以下の条件に設定し、シートにコロナ放電処理を施した。
(除電条件)
図11に示すように、電気絶縁性シート(ここではフィルム)において対極ロールの下流に除電器9を配置した。
除電器:
(1)除電器:春日電機製KER型除電バー、針ピッチ10[mm]
(2)電源:交流高圧電源(周波数60[Hz]、電圧振幅8[kV])
(3)配置:剥離点より下流側にフィルムに沿って250[mm]進んだ距離
(4)除電イオン発生電極とシートとの距離:20[mm]
以上のコロナ放電処理条件および除電条件において、式(4)を用いて算出される、下流側除電器を設置するのに好適な、剥離点からのフィルム上の距離x[m]の範囲は以下の範囲になる。
【0091】
0≦x≦0.038[m]
また、式(9)を用いて算出される剥離点の上流側および剥離点の下流側直後の位置に供給する除電イオン量Iの好適範囲は、いずれも以下の範囲となる。
【0092】
≧15.8 [μA/m]
このとき、対極ロールの剥離点の上流側および下流側において、図8の除電イオン測定器25および26の位置で測定した除電イオン電流量を表1に示す。
【0093】
またこうしてコロナ放電処理したポリエステルフィルムの背面平衡電位およびコロナ放電処理面の塗れ性の測定結果を表2に示す。処理効果が高いが、帯電が強く、後工程に欠陥を起こしやすい帯電状態であった。
[比較例2]
使用した電気絶縁性シート、およびコロナ処理条件は実施例1、2および比較例1と同じで、図1に示す装置構成で、上流側除電器13のみ下記条件で作動させ、下流側除電器14は電源を切って作動させない状態で、シートにコロナ放電処理を施した。
【0094】
図1に示すように、電気絶縁性シート(ここではフィルム)において剥離点から上流側に上流側除電器13、剥離点から下流側に下流側除電器14を配置した。
上流側除電器:
(1)除電器:春日電機製KER型除電バー、針ピッチ10[mm]
(2)電源:交流高圧電源(周波数60[Hz]、電圧振幅8[kV])
(3)配置:剥離点より上流側にフィルムに沿って50[mm]の距離
(4)シートとの距離:25[mm]
以上のコロナ放電処理条件および除電条件により、式(4)を用いて算出される、上下流兼用除電器を設置するのに好適な、剥離点からのフィルム上の距離x[m]の範囲は以下の範囲になる。
【0095】
−0.010≦x≦0.028[m]
また、式(9)を用いて算出される上下流兼用除電器で剥離点より上流側および下流側に供給する除電イオン量Iの好適範囲は、いずれも以下の範囲となる。
【0096】
≧15.8 [μA/m]
このとき、対極ロールの剥離点の上流側および下流側において、図8の除電イオン測定器25および26の位置で測定した除電イオン電流量を表1に示す。
【0097】
またこうしてコロナ放電処理したポリエステルフィルムの背面平衡電位およびコロナ放電処理面の塗れ性の測定結果を表2に示す。処理効果が高いが、帯電が強く、後工程に欠陥を起こしやすい帯電状態であった。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、電気絶縁性のプラスチックフィルムを対象とする放電処理方法ならびに放電処理装置として非常に好適であるが、繊維シートや紙等のウェブや、ガラス基板等の枚葉物の放電処理方法などにも応用できるが、その応用範囲は、これらに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の一実施態様に係るコロナ放電処理方法の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施態様に係る除電器の適正配置を説明するための概念図である。
【図3】本発明の一実施態様に係るコロナ放電処理方法の概略構成図である。
【図4】本発明の一実施態様に係る除電器の適正配置を説明するための概念図である。
【図5】本発明の一実施態様に用いる電圧印加式除電器の概略構成図である。
【図6】本発明の一実施態様に用いる電圧印加式除電器の概略構成図である。
【図7】電圧印加式除電器の適用例を示す概略構成図である。
【図8】本発明の一実施態様に係る除電イオン量の測定方法の概略構成図である。
【図9】本発明の一実施態様に係るコロナ放電処理方法の概略構成図である。
【図10】従来のコロナ放電処理方法の概略構成図である。
【図11】従来のコロナ放電処理方法の概略構成図である。
【符号の説明】
【0100】
1 :放電処理電極
2 :芯金
3 :誘電体層
4 :対極ロール
5 :コロナ放電処理用高圧電源
6 :コロナ放電雰囲気
7 :電気絶縁性シート
8 :搬送ロール
8a:放電処理前搬送ロール
8b:放電処理後搬送ロール
9 :除電器
10:コロナ放電処理装置
11:剥離点
12:巻付点
13:上流側除電器
14:下流側除電器
15:上下流兼用除電器
16:除電器用高圧電源
17:表面電位計
18:誘電体層用除電器
21:針電極
22:ガード電極
23:絶縁体
24:ガス配管
25:上流側除電器の除電イオン量測定のためのイオン電流測定器
26:下流側除電器の除電イオン量測定のためのイオン電流測定器
31:下流側除電器の除電イオン発生電極から電気絶縁性シートに向けて 下ろした垂線と電気絶縁性シートとの交点
32:交点31から上流側にL/2[m]進んだ点
33:交点31から上流側にL/2[m]進んだ点
34:上下流兼用除電器の除電イオン発生電極から電気絶縁性シートに向けて 下ろした垂線と電気絶縁性シートとの交点
35:交点34から上流側にL/2[m]進んだ点
36:交点34から上流側にL/2[m]進んだ点
(Lは下流側除電器または上下流兼用除電器の除電イオン発生電極から 電気絶縁性シートとの距離)
:誘電体層の厚み[m]
:電気絶縁性シートの厚み[m]
:対極ロール(誘電体層を含む)の直径[m]
g :電気絶縁性シートと誘電体層表面との距離[m]
x :剥離点から電気絶縁性シート下流への任意距離x[m]
:下流側除電器から電気絶縁性シートに下ろした垂線とシートとの交点と、 剥離点との距離[m]
:上下流兼用除電器から電気絶縁性シートに下ろした垂線とシートとの交 点と、剥離点との距離[m]
L :上下流兼用除電器と電気絶縁性シートとの距離[m]

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が誘電体層で被覆された対極ロールと、前記対極ロールに対向配置された放電電極と、前記放電電極と前記対極ロールとの間に電位差を発生させる高圧電源と、シートを前記対極ロール上を経由して搬送可能に構成された搬送ロール群とを備えたシートの放電処理装置であって、前記シートの前記対極ロールからの剥離点から見て搬送方向上流側および下流側の表面を除電するシート除電手段を備えたことを特徴とするシートの放電処理装置。
【請求項2】
前記除電手段は、前記シートを前記剥離点の前記上流側において除電する上流側除電手段と、前記剥離点の前記下流側において除電する下流側除電手段とを個別に備えたものであることを特徴とする請求項1に記載のシートの放電処理装置。
【請求項3】
前記対極ロールの直径をd[m]、前記誘電体層の被覆厚みおよび比誘電率をそれぞれt[m]およびεとし、前記下流側除電手段の除電イオン発生電極から前記シートに向けて下ろした垂線と前記シートとの交点と、前記剥離点との最短距離をx[m]としたときに、
0≦x≦dcos−1(ε/(10t+ε))/2
の範囲となるように前記下流側除電手段が配置されていることを特徴とする請求項2に記載のシートの放電処理装置。
【請求項4】
前記除電手段は、前記シートの前記剥離点の前記上流側および前記下流側において前記シートを除電する上下流兼用除電手段を備えるものであることを特徴とする請求項1に記載のシートの放電処理装置。
【請求項5】
前記対極ロールの直径をd[m]、前記誘電体層の被覆厚みおよび比誘電率をそれぞれt[m]およびεとし、前記上下流兼用除電手段の除電イオン発生電極から前記シートに向けて下ろした垂線と前記シートとの交点と、前記剥離点との最短距離をx[m]、前記上下流兼用除電手段と前記電気絶縁性シートとの最短距離をL[m]としたときに、
−L/2≦x≦dcos−1(ε/(10t+ε))−L/2
の範囲となるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載のシートの放電処理装置。
【請求項6】
前記除電手段は、電圧印加式の除電装置であることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載のシートの放電処理装置。
【請求項7】
前記剥離点の搬送方向下流かつ前記シートの前記対極ロールへの巻付点の上流において、前記対極ロールの誘電体層表面を除電する誘電体層除電手段を備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のシートの放電処理装置。
【請求項8】
シートを表面に誘電体層を有する対極ロールと接触させながら、前記シート表面を放電雰囲気に曝露する放電処理済みシートの製造方法であって、前記対極ロール上で放電処理された前記シートの表面を、前記対極ロールからの剥離点から見て搬送方向上流側および下流側において除電する上流側除電および下流側除電を行なうことを特徴とする放電処理済みシートの製造方法。
【請求項9】
前記誘電体層の被覆厚みおよび比誘電率をそれぞれt[m]およびεとし、前記シートの厚みおよび比誘電率をそれぞれt[m]およびεとし、前記シートの搬送速度をv[m/s]としたときに、前記上流側除電および前記下流側除電における前記シートの幅方向の単位長さあたりの除電イオン量がいずれも
4.4×10−8×v/(t/ε+t/ε)[A/m]
よりも大きくなるように除電することを特徴とする請求項8に記載の放電処理済みシートの製造方法。
【請求項10】
少なくとも片面の濡れ性が50[mN/m]以上であり、かつ各面の背面平衡電位の絶対値が340[V]以下であることを特徴とする、多孔ポリエステルフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−196255(P2006−196255A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5101(P2005−5101)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】