説明

シートヒータおよび発熱体の製造方法

【課題】従来のシートヒータ1は2枚の絶縁シート11で挟み込むヒータ2をエッチングや蒸着によって形成していた。しかし、このような方法ではデザイン変更に対して柔軟性に乏しく、また大型の設備を必要とするためシートヒータの製造コストが高騰するという不具合が生じる。
【解決手段】抵抗部材からなる帯状の薄板を、左右両側から適宜部分的に切り取り、蛇行部21の相互間に直線部22が位置するように形成する。そして、絶縁シート11内に配置する際に直線部22を折り返して蛇行部21の位置を変更できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有する抵抗部材からなる発熱体を絶縁性シート部材で上下方向から挟み込んだシートヒータと、このシートヒータに用いられる発熱体の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のシートヒータは抵抗体が蛇行形状に形成された発熱体を絶縁性シート部材で上下方向から挟み込むことによって形成されている。
【0003】
このようなシートヒータに用いられる発熱体は、平面状の抵抗部材の表面に適宜の蛇行形状の被覆層を形成し、被覆層が形成されていない部分をエッチングによって溶解除去することにより形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
あるいは、一方の絶縁性シート部材の表面に、蛇行形状部分が抜かれたマスク層を形成し、抜かれた部分に蒸着により抵抗材料を被着させて発熱体を形成している(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10−22065号公報(段落0003,0013)
【特許文献2】特開平10−321348号公報(段落0002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に開示されているような、エッチングや蒸着により発熱体を製造する方法では、エッチングにより不要な部分を溶解除去し、あるいは必要な厚みになるまで抵抗材料を蒸着させるために長時間を要する。また、被覆層やマスク層は製造しようとする発熱体の形状に合わせて専用品として形成しなければならず、他の形状の発熱体の製造時に流用することができないので、発熱体の製造コストが大幅に高くなる。
【0006】
更に、大型の抵抗体を製造するためには、その抵抗体が入る大きさのエッチング槽や蒸着炉が必要となるため、抵抗体の大きさが大きくなるにつれて製造装置のコストが飛躍的に増加する。
【0007】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、製造コストが高くならないシートヒータおよびシートヒータに用いられる発熱体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明によるシートヒータは、可撓性を有する薄板状の抵抗部材を蛇行形状に成形した発熱体を、絶縁性シート部材で上下方向から挟み込んだシートヒータにおいて、上記発熱体に蛇行形状に形成された蛇行部を複数形成すると共に、各蛇行部の相互間に2つの蛇行部を相互に連結する直線部を設け、この直線部を折り返すことによって、直線部の両端に連結されている2つの蛇行部の各延在方向を相違させたことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、直線部を折り返すことにより相互に隣設する蛇行部の延在方向を相違させることができるので、蛇行部の位置を適宜選択することができ、そのため、シートヒータの形状の自由度が増す。
【0010】
このシートヒータは、例えば通信用のパラボラアンテナの融雪用として用いることができるが、シートヒータから電磁波が放出されるとパラボラアンテナにノイズとして受信されてしまう。この場合には上記絶縁性シート部材のほぼ全面にわたって、発熱体からの電磁波の漏出を防止する電磁波遮蔽層を形成すればよい。
【0011】
上記発熱体の表面に導電性セラミックの被膜を蒸着させてもよい。なお、このセラミックとして、例えば酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide:ITO)を用いることができる。
【0012】
上記課題を解決するために本発明による発熱体の製造方法は、可撓性を有する薄板状の抵抗部材に蛇行形状の蛇行部を形成して発熱体を製造する発熱体の製造方法において、抵抗部材を予め帯状に形成しておき、この帯状の抵抗部材の両側縁から抵抗部材の長手方向に沿って左右交互に抵抗部材の一部を切り取って蛇行部を形成することを特徴とする。
【0013】
なお、帯状の抵抗部材を予めロール状に巻回しておき、抵抗部材を所定ピッチで繰り出しながら抵抗部材の長手方向に沿って左右交互に抵抗部材の一部を切り取ると共に、抵抗部材の一部を切り取ることなく所定ピッチ数空送りし、その後この空送りされた部分に、前後2つの蛇行部を相互に連結する直線部を形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明から明らかなように、本発明によるシートヒータは、蛇行部を連結する直線部を折り返すことにより蛇行部の延在方向を相違させることができるので、シートヒータの形状が変更されても直線部の折り返し状態を変更することにより、蛇行部を変更されたシートヒータの形状に合わせることができ、シートヒータの形状の自由度を増すことができる。そして、このように自由度が増すことによりシートヒータの製造コストを低減させることができる。
【0015】
また本発明による発熱体の製造方法は、シートヒータに好適な発熱体をエッチングや蒸着といった従来の方法ではなく、抵抗部材の一部を切除するという方法で製造するので、発熱体の製造コストを大幅に低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1を参照して、1は本発明によるシートヒータである。このシートヒータ1は発熱体であるヒータ2を上下方向から2枚の絶縁シートで挟み込むことにより製造される。ヒータ2は4個所の蛇行部21と各蛇行部を相互に連結する直線部22とから構成されている。そして、ヒータ2の両端部には電力供給用のリード線12が接続されている。このヒータ2は上述するが、厚みが50μm程度のステンレス系の抵抗部材である薄板で形成されている。なお、本実施の形態では、ヒータ2の表面に酸化インジウムスズを0.1μmの厚みになるように蒸着した。また、そのヒータ2を絶縁シート11で挟み込んだあと、絶縁シート11の表面に、電磁波を遮蔽する塗料を塗布した。
【0017】
ヒータ2は、最初に4個所の蛇行部21および直線部22が1本の直線上に順次並ぶように形成し、直線部22を図示のように折り返すことにより4個所の蛇行部21が相互に平行になるように配置した。
【0018】
図2を参照して、1つの蛇行部21を固定し、その固定された蛇行部21に隣接する蛇行部21を図示の状態で裏返すことなく反時計回りに180度回転させると直線部22は90度に2回折り返され、図2に示す状態になる。なお、折返し部22aの近傍では直線部22が2重になり、直線部22が相互に接触する個所が生じる。するとその接触した個所で電流が短絡するため、火花放電が発生するおそれがある。そこで、折返し部22aの近傍で2重になった直線部22が相互に接触しないように絶縁片31を挟み込むようにした。
【0019】
ところで、図2に示すものでは上述のように、蛇行部21を反時計回りに180度回転させたが、逆方向、すなわち時計回りに180度回転させると、図3に示すようになる。このものでは、2つの折返し部22aの折り返し方向が逆になるので、絶縁片32を2枚用い、各々の折返し部22aの近傍に差し込むようにした。
【0020】
上記シートヒータ1に用いられるヒータ2は、図4に示すように、帯状の抵抗部材4を加工して製造される。抵抗部材4はロール状に巻回されており、中心軸41をスタンド42で保持し、自由に引き出すことができるように支持されている。
【0021】
そして、ロール状の抵抗部材4を直線状に引き出して、加工装置5で蛇行部21と直線部22とを形成している。図5を参照して、この加工装置5は、抵抗部材4の下方に位置するダイ51を備えている。そして、このダイ51の上方には、抵抗部材4を挟んで1対の抜き刃6R、6Lが上下方向に移動できるように保持されている。そして、各抜き刃6R、6Lに対向させて抜き穴52がダイ51に形成されている。
【0022】
したがって、ダイ51の上面に抵抗部材4を載置した状態で抜き刃6R、6Lを下ろすと、抜き刃6R、6Lによって抵抗部材4の左右から抵抗部材4の一部が切り取られることになる。
【0023】
なお、抜き刃6R、6Lの刃部分を波刃形状にした。このように波刃形状にすることにより、刃部分の突出した複数の先突部分が最初に抵抗部材4に食い込み、抵抗部材4の位置決めをする。そのため、抵抗部材4の一部を切り取る過程で抵抗部材4の位置がずれない。
【0024】
抜き刃6R、6Lの下流には送り方向に対して左右に対向する1対の切断刃7R、7Lが設けられている。この切断は7R、7Lは抜き刃6R、6Lと同様に上下方向に移動することができ、両切断刃7R、7Lに対応して切断穴55がダイ51に形成されている。なお、53,54は搬送ローラでである。
【0025】
図6を参照して、本図の(a)は送り方向に対して右側に直線部22を形成したもので、同じく(b)は直線部22を送り方向に対して左側に形成したものを示している。
【0026】
(a)に示すものでは、抜き刃6R、6Lを同時に下ろして蛇行部21を形成する。なお、抵抗部材4は1ピッチずつ送る。直線部22を形成する場合には、抜き刃6R、6Lを下ろさず1ピッチ分、空送りをし、更に1ピッチ送って抜き刃6Lのみを下ろす。そして、空送りされた部分に切断刃7Lを1ピッチ毎に2回下ろすことにより、直線部21が送り方向右側に形成される。
【0027】
(b)では、直線部22を形成する位置で、抜き刃6Rのみを下ろし、次に1ピッチ空送りをする。そして、切断刃7Lを2ピッチ分、すなわち2回下ろすことにより、直線部22が送り方向左側に形成される。
【0028】
なお、切断刃7R,7Lの外側の面7Ra、7Laを、外側に凸となるように湾曲させた。これにより、例えば切断刃7Lで抵抗部材4の一部を切断して直線部22を形成する際、切断刃7Lを2回下ろしても、図6(b)の拡大図示のように2回行われる切断部分の切断線が交差し、ケバ状の切り残しが生じない。
【0029】
上記図1に示したものでは、シートヒータ1の形状を矩形状に形成したが、図7に示すように、シートヒータ8を環状に形成してもよい。このものでは絶縁シート81を環状に形成し、2枚の絶縁シート81でヒータを挟み込む。その際中心側に位置する直線部22の折り返しを2回ではなく1回にすることにより、湾曲部21をほぼ放射状にレイアウトした。
【0030】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】直線部での折り返し状態を示す図
【図3】直線部での他の折り返し状態を示す図
【図4】抵抗部材の加工時のレイアウトを示す図
【図5】加工装置の構成を示す図
【図6】直線部の形成工程を示す図
【図7】シートヒータの他の形状を示す図
【符号の説明】
【0032】
1 シートヒータ
2 ヒータ
4 抵抗部材
5 加工装置
8 シートヒータ
21 蛇行部
22 直線部
22a 折返し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する薄板状の抵抗部材を蛇行形状に成形した発熱体を、絶縁性シート部材で上下方向から挟み込んだシートヒータにおいて、上記発熱体に蛇行形状に形成された蛇行部を複数形成すると共に、各蛇行部の相互間に2つの蛇行部を相互に連結する直線部を設け、この直線部を折り返すことによって、直線部の両端に連結されている2つの蛇行部の各延在方向を相違させたことを特徴とするシートヒータ。
【請求項2】
上記絶縁性シート部材のほぼ全面にわたって、発熱体からの電磁波の漏出を防止する電磁波遮蔽層を形成したことを特徴とする請求項1に記載のシートヒータ。
【請求項3】
上記発熱体の表面に導電性セラミックの被膜を蒸着させたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシートヒータ。
【請求項4】
可撓性を有する薄板状の抵抗部材に蛇行形状の蛇行部を形成して発熱体を製造する発熱体の製造方法において、抵抗部材を予め帯状に形成しておき、この帯状の抵抗部材の両側縁から抵抗部材の長手方向に沿って左右交互に抵抗部材の一部を切り取って蛇行部を形成することを特徴とする発熱体の製造方法。
【請求項5】
帯状の抵抗部材を予めロール状に巻回しておき、抵抗部材を所定ピッチで繰り出しながら抵抗部材の長手方向に沿って左右交互に抵抗部材の一部を切り取ると共に、抵抗部材の一部を切り取ることなく所定ピッチ数空送りし、その後この空送りされた部分に、前後2つの蛇行部を相互に連結する直線部を形成することを特徴とする請求項4に記載の発熱体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−324081(P2006−324081A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145026(P2005−145026)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(505128278)
【出願人】(505128234)
【出願人】(505128289)株式会社シティ企画 (4)
【Fターム(参考)】