説明

シートヒータ

【課題】着座者の違和感を軽減することが可能なシートヒータを提供すること。
【解決手段】基材5と、該基材5上に配設されたヒータ素子3と、該ヒータ素子3からの温度を検知する温度制御装置7を有し、上記温度制御装置7が上記基材5の所定の位置に設置されたシートヒータ1であって、上記基材5には、上記温度制御装置7の設置箇所近傍に切込み15が形成されており、該切込み15で囲まれる範囲内に上記温度制御装置7が設置されていることを特徴とするシートヒータ1。上記切込み15が、1対の平行な直線または略コの字形状で形成されていることをシートヒータ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用などに好適に使用可能なシートヒータとこのシートヒータが配置されたシートに係り、特に、着座者の違和感を軽減することが可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用シートに装着されシートヒータとして供されるヒータユニットとしては、例えば、基材上にヒータ素子として熱融着層を備えたコード状ヒータを蛇行配線し、加熱加圧による熱融着により基材と熱融着層を接着固定した構成のもの(例えば、特許文献1、2参照)、カレンダー加工を施して表面を硬化させた不織布を基材とし、基材の硬化させた表面上にヒータ素子としてコード状ヒータを縫合したもの(例えば、特許文献3)、硬度の異なる柔軟性を有する材料を溶着させることにより、異なる表面硬さを有する基材とし、この基材の表面硬さの硬い面にヒータ素子としてコード状ヒータを配設したもの(例えば、特許文献4)などがある。また、本発明に関連する技術として、例えば、特許文献5が挙げられる。
【0003】
このようなシートヒータの温度制御、特に、温度過昇防止は、主にサーモスタットによって行われる。具体的には、サーモスタットが所定の温度に加熱されることにより、サーモスタットがOFFとなり、ヒータ素子への通電が遮断されることになる。ヒータ素子への通電が遮断されることで加熱が止まるとサーモスタットの温度も徐々に低下していき、再びサーモスタットはONとなり、ヒータ素子への通電がなされるようになる。このような動作を繰り返すことで、シートヒータは所定の温度に制御されることになる。サーモスタットを配置したカーシートヒータとして、例えば、シートのパット中央部に凹部を設け、そこにサーモスタットを配置したもの(例えば、特許文献6)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平6−25916号公報:クラベ
【特許文献2】特許第4202071号公報:クラベ
【特許文献3】特開2007−200866公報:松下電器産業
【特許文献4】特開2007−280787公報:松下電器産業
【特許文献5】国際公開WO2007/18271:クラベ
【特許文献6】特開昭61−143012号公報:松下電器産業
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなサーモスタット、或いは、サーミスタなどの温度検知素子を含む温度制御装置は、ヒータ素子の熱を検知するものであるため、ヒータ素子と同様、基材上に配置されている。しかし温度制御装置は、可撓性のない塊状の物体であるため、シートヒータ中央部など、実際に着座者が着座する位置に配置されると、着座者が違和感を受けることになる。これに対して、上記した特許文献6では、パットに凹部を設け、そこに対応する位置にサーモスタットを配置している。しかし、今度は逆にパットの凹部が違和感の原因ともなってしまうこととなった。更に、凹部の位置とサーモスタットの位置が正確に合致していないと、凹部の違和感とサーモスタットの違和感の両方を受けることにもなってしまう。カーシートにおいては、着座・離座の動作や走行Gによる荷重の変動などにより、使用の経過によってパットとシートヒータの位置が徐々にずれていってしまうことがあるため、経時的に違和感が発生する原因となる可能性もあった。
【0006】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、着座者の違和感を軽減することが可能なシートヒータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するべく、本発明によるシートヒータは、基材と、該基材上に配設されたヒータ素子と、該ヒータ素子からの温度を検知して該ヒータ素子を制御する温度制御装置とを有し、該温度制御装置が上記基材の所定の位置に設置されたシートヒータであって、上記基材には、上記温度制御装置の設置箇所近傍に切込みが形成されており、該切込みで囲まれる範囲内に上記温度制御装置が設置されていることを特徴とするものである。
また、上記温度制御装置がサーモスタットであることが考えられる。
また、本発明の他の態様によるシートヒータは、基材と、該基材上に配設されたヒータ素子と、該ヒータ素子からの温度を検知して該ヒータ素子を制御する温度制御装置とを有し、該温度制御装置が該ヒータ素子からの温度を検知する温度検知素子と、該温度検知素子からの出力によりヒータ素子の温度を制御する温度制御回路とからなり、上記温度検知素子及び上記温度制御回路がともに上記基材の所定の位置に設置されたシートヒータであって、上記基材には、上記温度制御回路の設置箇所近傍に切込みが形成されており、該切込みで囲まれる範囲内に少なくとも上記温度制御回路が設置されていることを特徴とするものである。
また、上記切込みが、1対の平行な直線で形成されていることを特徴とするものであることが考えられる。
また、上記切込みが、略コの字形状に形成されていることを特徴とするものであることが考えられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるシートヒータによれば、基材における温度制御装置を設置した部分が、他の部分と独立して動くことができる。これにより、着座者が着座した際に、基材における温度制御装置の設置した部分は、基材の他の部分より多くパットに潜り込むことになるため、温度制御装置による違和感を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による実施の形態を示す図で、シートヒータの構成を示す平面図である。
【図2】本発明による実施の形態を示す図で、シートヒータが設置されたシートを一部切り欠いて示す斜視図である。
【図3】本発明による実施の形態を示す図で、要部を拡大して示す斜視図である。
【図4】本発明による他の実施の形態を示す図で、要部を拡大して示す斜視図である。
【図5】本発明による他の実施の形態を示す図で、切込みを説明するための概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図1〜図3を参照して本発明の実施の形態を説明する。これらの実施の形態は、本発明を車両用シートに適用することを想定した例を示すものである。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態で使用するシートヒータは構成される。不織布等からなる基材5の上に、ヒータ素子として銅合金線やNi−Cr線等の抵抗線を有するコード状ヒータ3が所定のパターン形状で配設される。コード状ヒータ3を基材5上に固定保持する方法としては、コード状ヒータ3の外周に形成された熱融着層により接着する方法、縫製による方法、接着性を有する基材5により挟持保持する方法など種々の方法が公知である。また、基材5におけるコード状ヒータ3を配設した側の面には接着層の形成、或いは、両面テープの貼り付けがなされている。これは、座席に取り付ける際、シートヒータ1をシートのパットに固定するためのものである。
【0012】
また、上記コード状ヒータ3と直列になるように、温度制御装置7としてサーモスタットがリード線13を介して接続される。この温度制御装置7は、基材5上に設置される。そして、図3に拡大して示すように、基材5における温度制御装置7の近傍には、温度制御装置7を挟み込むように1対の平行な直線の切込み15が形成されており、切込み15で囲まれる範囲内に温度制御装置7が設置された状態となっている。ここで、「切込みで囲まれる範囲」について図5を参照して詳述する。切込み15が1本の曲線または折れ線からなる場合(図5中の(a),(b))は、切込み15とこの両端点を最短で結んだ直線L(図5中、破線で示す)とで構成される範囲A(図5中、斜線部で示す)のことを示す。切込み15が複数の直線、曲線または折れ線からなる場合(図5中の(c),(d),(e))は、これら切込み15のそれぞれ端点を最大面積となるように直線L(図5中、破線で示す)で結んで構成される範囲(図5中、斜線部で示す)のことを示す。尚、ここで言う直線とは、幾何学的な表現である端点を有さない無限のものを示すのではなく、両端点を有す線分のことを示す。曲線及び折れ線についても同様である。
【0013】
上記のようにして、図1に示すようなシートヒータ1を得ることができる。尚、このシートヒータ1には、適宜、コード、コネクタ等が接続され、このコネクタを介して車両の電気系統に接続されることになる。
【0014】
そして、上記構成をなすシートヒータ1は、図2及び図3に示すような状態で、車両用のシート11内に埋め込まれて配置されることになる。即ち、シートヒータ1は、シート11の表皮カバー19とパット17との間に配置される。この際、シートヒータ1の基材5における温度制御装置7近傍には上記のように切込み15が形成されている。そのため、基材5における温度制御装置7の設置した部分は、他の部分と独立して動くことができる。これにより、着座者が着座した際には、基材5における温度制御装置7の設置した部分は、基材5の他の部分より多くパット17に潜り込むことになり、温度制御装置7による違和感を軽減することができる。なお、パット17において、温度制御装置7が配置される位置に対応して凹部を設けてもよい。特に、本発明においては、温度制御装置7の部分が多く潜り込むことになるため、その部分がパット17に設けられた凹部に入り込んで引っ掛かることで、シートヒータ1の位置ズレを防止することができる。
【0015】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、ヒータ素子として、上記のコード状ヒータの他に、例えば、エッチングヒータ、カーボンヒータ、箔状ヒータ等、種々のヒータを使用することができる。
【0016】
基材としては、上記の不織布の他に、例えば、織布、発泡樹脂シート、発泡ゴムシート、ゴムシート、アルミ箔、樹脂フィルム等、種々のものを使用することができる。
【0017】
温度制御装置としては、上記のサーモスタットの他に他の態様も考えられ、例えば、ヒータ素子からの温度を検知する温度検知素子と、この温度検知素子からの出力によりヒータ素子の温度を制御する温度制御回路とからなるものも考えられる。温度検知素子として、サーミスタ、熱電対など、種々のものを使用することができ、複数の温度検知素子を使い分けることも考えられる。これら温度検知素子と温度制御回路は、上記特許文献5のように、基材上に配置されることがある。温度検知素子はサーミスタなどの比較的小型なものであるため違和感を受けることは少ないが、温度制御回路は回路基板等が樹脂ケース、絶縁ゴムチューブ、樹脂モールド等で覆われたものであり、硬く比較的大きいものであるため、違和感を受けてしまうことがある。そのため、この場合、少なくとも基材における温度制御回路の近傍に切込みを形成することになる。これにより、温度制御回路による着座時の違和感を軽減することができる。勿論、温度検知素子の近傍に切込みを形成しても良い。また、温度制御回路が配置される位置に対応してパットに凹部を形成しても良い。
【0018】
また、温度制御装置は、圧力等から保護するため、別の基材を用意し、この別の基材と温度制御装置を設置した基材とで挟み込んでも良い。この場合、切込みはどちらの基材に形成しても良いが、着座者側の面をより平坦にするために、パット側となる基材に切込みを形成することが好ましい。
【0019】
切込みの形状については、上記及び図3に示すような1対の平行な直線のものに限定されず、種々の形状のものが考えられる。要は、上記のように、切込みで囲まれる範囲内に温度制御装置が設置された状態となっていればよい。例えば、図4に示すように、略コの字形状のものであれば、温度制御装置7が設置された位置が相当自由に動くため、違和感軽減の効果が大きい。但し、切込みの端点と端点の距離が近接過ぎると、その部分が破断してしまう可能性があるので、強度を十分考慮して切込みの形状を設計する必要がある。
【0020】
また、シートヒータは、座席の座面側に配置しても良いし、背面側に配置しても良いし、両方に配置しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0021】
以上詳述したように本発明によれば、着座者の違和感を軽減することが可能なシートヒータを得ることができる。このシートヒータは、例えば、自動車,自動二輪車,鉄道車両等の車両用シート、船舶や航空機などのシート、遊園地の観覧車のシート、各種競技場の観覧用シート、劇場や映画館等の鑑賞用シート、家庭内やオフィスで使用されるソファー、理髪店のシート、各種医療機関で使用されている医療用シートなど、種々の用途で好適に使用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 シートヒータ
3 コード状ヒータ
5 基材
7 温度制御装置
11 シート
15 切込み
17 パット
19 表皮カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に配設されたヒータ素子と、該ヒータ素子からの温度を検知して該ヒータ素子を制御する温度制御装置とを有し、該温度制御装置が上記基材の所定の位置に設置されたシートヒータであって、
上記基材には、上記温度制御装置の設置箇所近傍に切込みが形成されており、該切込みで囲まれる範囲内に上記温度制御装置が設置されていることを特徴とするシートヒータ。
【請求項2】
上記温度制御装置がサーモスタットであることを特徴とする請求項1記載のシートヒータ。
【請求項3】
基材と、該基材上に配設されたヒータ素子と、該ヒータ素子からの温度を検知して該ヒータ素子を制御する温度制御装置とを有し、該温度制御装置が該ヒータ素子からの温度を検知する温度検知素子と、該温度検知素子からの出力によりヒータ素子の温度を制御する温度制御回路とからなり、上記温度検知素子及び上記温度制御回路がともに上記基材の所定の位置に設置されたシートヒータであって、
上記基材には、上記温度制御回路の設置箇所近傍に切込みが形成されており、該切込みで囲まれる範囲内に少なくとも上記温度制御回路が設置されていることを特徴とするシートヒータ。
【請求項4】
上記切込みが、1対の平行な直線で形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3何れか記載のシートヒータ。
【請求項5】
上記切込みが、略コの字形状に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3何れか記載のシートヒータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−91669(P2012−91669A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240472(P2010−240472)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000129529)株式会社クラベ (125)
【Fターム(参考)】