説明

シートベルト用ウェビング及びシートベルト用ウェビングの製造方法

【課題】細い単糸繊維から成る非常に強度の高いシートベルト用ポリエステルマルチフィラメント糸をウェビングの経糸に使用し、経糸単位本数当たりの強力が高く、薄くて軽く、且つ耐摩耗性を維持したウェビングを得る。
【解決手段】単糸繊度が7デニール以下で、且つ10g/デニール以上のポリエステルフィラメントが複数本集合されたマルチフィラメント糸に、非常に撚糸加工コストの安い従来にない撚糸加工方法により、従来シートベルトでは一般的でない高撚度の撚り加工を加えて、従来にない高い収束性を与えた糸を経糸とし、ポリエステルのマルチフィラメント糸又はモノフィラメント糸或いはその双方を緯糸として、経糸と交差させて帯状に織成したシートベルト用ウェビング。
【効果】経糸単位本数当たりの強力が非常に高く、原糸のコスト逓減が可能で、且つ耐摩耗性を維持したウェビングが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経糸に緯糸を交差させて帯状に織られたシートベルト用に関し、従来シートベルトでは一般的でない、高強度で細い単糸繊維により構成され、従来シートベルトでは一般的でない高撚度の撚り加工を加えた、ポリエステルマルチフィラメント糸を経糸として織成し、経糸単位本数当たりの強力が非常に高く、薄くて軽く、且つ、耐摩耗性を維持したウェビングを得る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、シートベルト用ウェビングは、規定された引張強さ、伸度、耐久性等の諸特性を確保するような仕様で、主としてポリエステル又はポリアミド繊維から成るマルチフィラメント糸を経糸として、ポリエステル又はポリアミド繊維から成るマルチフィラメント糸またはモノフィラメント糸を緯糸として使用し、経糸及び緯糸を細巾織物用織機上で交差させて帯状に織り込み形成されている。
【0003】
従来、殆どのウェビングは、織機上で開口された上下の経糸群の間を緯糸用シャトルを往復さることにより、経糸と緯糸を交差させて細巾織物用力織機上で帯状に織成されていた。
【0004】
この細巾織物用力織機による製織動作中に、上下に開口した経糸群の間を通過する緯糸用シャトルによる経糸群への擦過により、経糸群にフィラメント切断の損傷が多く発生していた。
【0005】
この経糸群のフィラメント切断の損傷を防ぐために、従来に於いては、単糸繊度が概ね8デニール、強度が1デニール当たりおおよそ8g程度の、1m当たり約80回の撚糸加工を施した、ポリアミドのマルチフィラメント糸がウェビングの経糸として一般的に使用されていた。
【0006】
その後、織機上で開口された上下の経糸群の間を緯糸用ニードルを往復させることにより、経糸と緯糸を交差させて帯状に織布する、細巾織物用ニードル織機によるウェビングの製織が普及した。
【0007】
この細巾織物用ニードル織機による製織動作中に、上下に開口した経糸群の間を通過する緯糸用ニードルによる経糸群の擦過は、力織機の緯糸用シャトルによる経糸群の擦過に比べて非常に小さく、経糸に撚糸加工を施して糸の収束性を保持しなくても、経糸群にフィラメント切断の損傷を与えることが少なくなった。このため、従来から行われてきた経糸への撚糸加工を廃止して、撚糸加工賃を削除してウェビングのコストを逓減しようとする傾向が強まっていった。
【0008】
更に、撚糸加工を廃止するという傾向と共に、単糸繊度が太いマルチフィラメント糸を経糸に使用して織り上げたウェビングに、樹脂又は油剤等による表面処理加工を施して、ウェビングの耐摩耗性を確保する新たな手段が工夫され、この技術が多く使用されるようになった。
【0009】
その結果、単糸繊度が概ね11デニール、強度がおおよそ1デニール当たり8.5g程度のポリアミドまたはポリエステルのマルチフィラメント糸がほぼ無撚りの状態でウェビングの経糸に使用されることが一般的になっていった。
【0010】
処で、近頃は、殆どのウェビングにポリエステル繊維が使用されるようになり、主として、単糸繊度が概ね11デニール、強度がおおよそ1デニール当たり9g程度のポリエステルマルチフィラメント糸を、殆ど無撚りの状態で経糸に使用して、細巾織物用ニードル織機で織成することがウェビング生産の主流となってきている。
【0011】
更に、最近は、単糸繊維が太くても従来の強度を維持し、且つフィラメントの切断の少ないポリエステルの製糸技術の進歩と相まって、ウェビングの耐摩耗性を維持するための仕上げ表面処理加工を省く目的で、ウェビングの経糸に使用する繊維の単糸繊度を更に太くする傾向が見られ、単糸繊度が概ね14デニール以上、強度がおおよそ1デニール当たり9g程度のポリエステルマルチフィラメント糸を殆ど無撚りの状態で、ウェビングの経糸に使用することが一部に推奨されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の従来技術の経過に見るように、ウェビングの製織に細巾織物用ニードル織機の使用が一般化し、また、製糸技術が進歩して、従来は困難であった、フィラメント切断の欠点が少ない、太い単糸繊度のポリエステルマルチフィラメント糸を繊維製造業者が供給出来るようになるに従って、ウェビングのコスト逓減を図ることを目的として、ウェビングの経糸の撚糸加工を省き、また、表面処理加工を省いて耐摩耗性を確保するために、経糸に使用されるポリエステル繊維の単糸繊度を太くする方向へとウェビング製造技術が推移してきた。
【0013】
一方、製糸工程において、ポリエステル繊維は、繊維の延伸率を高くするほど強度が大きくなり、その反面、フィラメント切断の欠点が多くなる傾向がある。
【0014】
また、単糸繊度が太くなるほど製糸工程での延伸加工の難度が高くなり、一定の品質を保つために製糸速度が遅くなるとされている。
【0015】
最近、ウェビングの経糸に多く使用されつつある、より太い単糸繊度のポリエステルマルチフィラメント繊維を、フィラメント切断の欠点を増加させることなく、延伸率を上げてその強度を更に向上させる事、或いは、製糸速度を上げて原糸コストを更に逓減する事は、高度に進歩したと言われる現在の製糸技術をもってしても非常に困難である。
【0016】
他方、製織工程において、太い単糸繊度のポリエステルマルチフィラメント繊維が、ほとんど無撚りの状態でウェビングの経糸に使用されており、フィラメント切断の欠点は、織り上がったウェビングの表面に太い単糸繊維の端末が突出するウェビングの欠点となり、ウェビングの外観不良として顕在化する。
【0017】
そのため、ウェビングの不良を増加させない観点からして、製糸工程でのフィラメント切断の欠点が多発する事を容認する事は出来ず、繊維の強度を増加させて、或いは、製糸速度を上げて原糸コストの逓減を追求する事は何れも困難である。
【0018】
従って、ウェビングの経糸に使用されるポリエステル繊維の撚糸加工を省き、単糸繊度を太くする傾向にある近頃のウェビング織成技術の方向では、製糸工程に於ける製糸速度向上による原糸価格の逓減、または、延伸率増加による原糸強度の向上による原糸コストの逓減を図ることは何れも困難で、技術的に頭打ちの状態にあり、これらを打開する新たな技術展開が課題となる。
【0019】
従って、本発明の目的は、上記課題を解消するものであって、ウェビングの耐摩耗性を損なうことなく、非常に高強力で細い単糸繊維から成るポリエステルマルチフィラメント糸をウェビングの経糸に使用することを可能にし、その結果、経糸単位本数当たりの強力が高く、より高い引張強さを持ち、経糸量の軽減が可能な、より薄く、重量の軽い、コスト逓減を可能とするウェビングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記目的を達成するため、基本的には、以下に示す様な技術構成を採用するものである。
【0021】
即ち、本発明に於ける第1の態様としては、単糸繊度が7デニール以下で、且つ10g/デニール以上の単糸強度を有するポリエステルフィラメントが複数本集合されたマルチフィラメント糸であって、次式(1)で求められる撚り係数α
α = T x (D1)1/2 (1)
(ここで、T:撚り数t/m及びD1:経糸マルチフィラメント糸デニールとする。)
が、4000以上の加撚が施されているポリエステルマルチフィラメント糸を主地経糸に使用し、緯糸の密度と太さの関係が次式(2)、即ち
緯糸密度(本/3cm) x (D2)1/3 > 175 (2)
(ここで、D2:緯糸マルチフィラメント糸及びモノフィラメント糸或いはその両者の合計デニールとする)
を満足するような緯糸密度で織成されているシートベルト用ウェビングであり、又、本発明に於ける第2の態様としては、単糸繊度が7デニール以下で、且つ10g/デニール以上の単糸強度を有するポリエステルフィラメントが複数本集合されたマルチフィラメント糸であって、上記で定義した式で求められる撚り係数αが4000以上の指定された加撚を施されているポリエステルマルチフィラメント糸を、少なくとも地経糸の一部に配し、当該ポリエステルマルチフィラメント糸を加撚しながら織成工程に供給して織成するように構成されているシートベルト用ウェビングの製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に於ける上記したシートベルト用ウェビング及びシートベルト用ウェビングの製造方法は、上記した構成を有しているので、特許第2514884号の「加撚装置を備えたクリール」或いは特許第2630567号の「ダブル加撚装置を備えたクリール」に開示された技術を使用して、整経加工或いは製織加工をしながら、同時に、経糸への撚糸加工を行う等の加工コストが非常に小さい従来にない撚糸加工方法により、ウェビングを構成する経糸に従来シートベルトでは一般的でない高撚度の撚り加工を加えることにより、製糸工程で最大限の延伸比率で或いは高速度で紡糸した、従来シートベルトでは一般的でない細い単糸繊維の、従来にない非常に高強度のポリエステルマルチフィラメント糸をウェビング゛の経糸に使用する事を可能とし、経糸単位本数当たりの強力が非常に高く、原糸のコスト逓減が可能で、且つ耐摩耗性を維持したウェビングを得る事が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に於ける上記したシートベルト用ウェビング及びシートベルト用ウェビングの製造方法は、上記した技術構成を採用しているので、ウェビングの耐摩耗性を損なうことなく、非常に高強力で細い単糸繊維から成るポリエステルマルチフィラメント糸をウェビングの経糸に使用することを可能にし、その結果、経糸単位本数当たりの強力が高く、より高い引張強さを持ち、経糸量の軽減が可能な、より薄く、重量の軽い、コスト逓減を可能とするウェビングが得られるのである。
【0024】
本発明に於いては、最近一般的に経糸に使用されつつある太い単糸繊維より格段に細い単糸繊度、即ち、単糸繊度で7デニール以下で、格段に強度の高いポリエステルマルチフィラメント糸、即ち、10g/d以上の強度を持つ糸をウェビングの経糸に使用する事である。
【0025】
つまり、細い単糸繊度の糸は、製糸工程において、従来に比してより高い延伸率での製糸が可能となり、現行に比して非常に強度が高いポリエステル繊維を経糸として使用できる。また、より速い速度での紡糸が可能となり、コスト逓減の可能性が大きいポリエステル繊維が、ウェビングの経糸に使用できる。従ってウェビングの経糸の強度向上によるウェビング強力の向上、或いは、経糸糸量の削減及び原糸価格の低下によるウェビングのコスト逓減が可能となる。
【0026】
又、本発明に於いては、格段に細い単糸繊度のポリエステルのマルチフィラメント糸からなる経糸に、従来シートベルトでは一般的でない強い撚り加工を施すことにより経糸に強い収束性を持たせる事である。これによって、特別な表面処理加工を施さなくても、ウェビングの耐摩耗性を維持する事が出来る。もちろん、表面処理加工を併用しても何ら問題ない。
【0027】
更に、本発明に於いては、製糸工程での高い延伸或いは高速の紡糸で発生する切断したフィラメントの端末を糸の撚りの中に巻き込んで隠し込み、ウェビングの表面にフィラメントの端末が顕著に突出しないようにして、ウェビングの外観上の欠点を削減する事ができる。撚り数としては、一般的に基準とされているJIS規格による六角棒摩耗後の強力保持率が80%以上を保持するために、次式(1)で求められる撚り係数αが4,000以上で有ることが必要である。
【0028】
α = T x (D1)1/2 (1)
(ここで、T:撚り数t/m及びD1:経糸マルチフィラメント糸デニールとする。)
又、本発明に於いては、例えば特許第2514884号の「加撚装置を備えたクリール」或いは特許第2630567号の「ダブル加撚装置を備えたクリール」を使用して、整経加工或いは製織加工をしながら、同時に、経糸への撚糸加工を行う等、加工コストが非常に小さい撚糸加工手段を採用する事である。これによって、嘗て、コスト逓減のために削除されていったウェビング経糸への撚糸加工を、再び、ウェビング製造技術の中に新たな形態で取り込み、使用可能な原糸の単糸繊度の選択の自由度、或いは製糸工程で発生するフィラメント切断欠陥の許容範囲を数倍に拡大することが出来る。
【0029】
更に、本発明に於いては、上述の経糸を使用したウェビングの緯糸として、六角棒摩耗特性、ウェビングとしての形態安定性などの観点から、緯糸の密度と太さの関係が次式(2)(これを緯糸係数と定義する)を満足する密度で、ウェビングを織成する事である。
【0030】
緯糸密度(本/3cm) x (D2)1/3 > 175 (2)
(ここで、D2:緯糸マルチフィラメント糸及びモノフィラメント糸或いはその両者の合計デニールとする)
本発明に於いては、この緯糸係数が175以下の場合は、六角棒摩耗後の強力保持率が80%以下となり摩耗性が悪く、又、目ずれのし易いウェビングとなる。
【0031】
又、緯糸としてポリエステルモノフィラメント糸を単独又はポリエステルマルチフィラメント糸と併用してウェビングを構成することによりウェビングの幅方向の堅さ(剛性)を調節してウェビング装着時の快適性を得ること、或いは、巻き取り装置にウェビングを巻き込む時の反転性を防止することができる。この緯糸係数を満足する範囲で緯糸太さを適当に選択し、ウェビングの厚さを変えることによって、衝突時のウェビングとウェビングをガイドする金具、或いはウェビングと人体との間の高速摩擦によるウェビングの溶融劣化を防ぐために、ウェビングの耐熱容量を調節する事が出来る。
【0032】
又、経糸の一部に、当該ポリエステルマルチフィラメント糸以外の単糸繊度、単糸強度、撚り数を有するポリエステルマルチフィラメント糸を使用すること、或いは、ポリエステル以外の材質からなるマルチフィラメント糸を使用することもできる。
【0033】
更には、このウェビングの両端部分に比較的細い繊度の経糸(複数)を挿入することにより、ウェビングの両端の形状をほぼ円形にし、または筒状にすることによって、柔軟な感触の端末を持ったウェビングを提供することも出来る。また、ウェビング外観上の識別をするために、同様の経糸(複数)を経糸の任意の一部分に挿入することもできるし、ウェビングを形成する経糸の一部分の織り組織を変えて異なる仕様のウェビングを識別する標識とすることもできる。
【0034】
実施例
以下に、本発明に於けるシートベルト用ウェビング及びシートベルト用ウェビングの製造方法の一具体例の構成について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0035】
即ち、図1は、本発明に於けるシートベルト用ウェビングの一具体例の構成を示す図であり、図中、単糸繊度が 7デニール以下で、且つ10g/デニール以上の単糸強度を有するポリエステルフィラメントが複数本集合されたマルチフィラメント糸1であって、次式(1)で求められる撚り係数α
α = T x (D1)1/2 (1)
(ここで、T:撚り数t/m及びD1:経糸マルチフィラメント糸デニールとする。)
が、4000以上の加撚が施されているポリエステルマルチフィラメント糸1を主地経糸2に使用し、緯糸3の密度と太さの関係が次式(2)を満足するような緯糸密度で織成されている事を特徴とするシートベルト用ウェビング4が示されている。
緯糸密度(本/3cm) x (D2)1/3 > 175 (2)
(ここで、D2:緯糸マルチフィラメント糸及びモノフィラメント糸或いはその両者の合計デニールとする)
上記した本発明に於いて使用する式(1)によれば、撚り係数αは、マルチフィラメント糸1の撚り数T(t/m)と経糸2として使用されるマルチフィラメント糸1のデニール(D1)の平方根との積として示されるものである。
【0036】
一方、本発明に於いて使用する式(2)によれば、緯糸3の密度と上記した緯糸として使用されるマルチフィラメント糸及びモノフィラメント糸或いはその両者の合計デニール太さの関係が、緯糸密度(本/3cm)と緯糸のデニール(D2)の立方根との積として示されるものである。
【0037】
又、本発明に於いては、当該シートベルト用ウェビング4はニードル織機により織成されている事も好ましい。
【0038】
更に、本発明に於いては、当該シートベルト用ウェビング4が染色加工、ヒートセット加工或いは仕上げ加工された後に、主地経糸2を構成するポリエステルマルチフィラメント糸1の単糸強度が9g/デニール以上を保持しているものである事も望ましい。
【0039】
更に、本発明に於いては、ポリエステルマルチフィラメント糸、ポリエステルモノフィラメント糸或いはその双方が緯糸として使用されるものであっても良い。
【0040】
一方、本発明に於ける上記シートベルト用ウェビング4に於いては、当該シートベルト用ウェビングに於ける耳部5を構成する経糸6が、当該主地経糸2を構成するマルチフィラメント糸1の繊度よりも小さい繊度を有するマルチフィラメント糸が使用されている事も好ましい。
【0041】
更に、本発明に於けるシートベルト用ウェビングの製造方法の一具体例としては、例えば、単糸繊度が7デニール以下で、且つ10g/デニール以上の単糸強度を有するポリエステルフィラメントが複数本集合されたマルチフィラメント糸であって、上記の様に定義した撚り係数αが4000以上の指定された加撚を施されているポリエステルマルチフィラメント糸を、少なくとも地経糸の一部に配し、当該ポリエステルマルチフィラメント糸を加撚しながら織成工程に供給して織成する様に構成されているものである。
【0042】
本発明に於けるシートベルト用ウェビングの製造方法のより好ましい具体例としては、当該無撚りのポリエステルマルチフィラメント糸からなる複数のボビンを経糸供給手段として適宜の加撚機構を持つクリールに搭載せしめ、当該クリールに搭載された複数の当該ボビンのそれぞれから当該ポリエステルマルチフィラメント糸からなる経糸を引き出しながら加撚を施すと同時に、整経工程に供給しながら整経した経糸を織成工程に供給し織成する様に構成されているものである。
【0043】
更に、本発明に於けるシートベルト用ウェビングの製造方法の別の態様としては、当該無撚りのポリエステルマルチフィラメント糸からなる複数のボビンを経糸供給手段として適宜の加撚機構を持つクリールに搭載せしめ、当該クリールに搭載された複数の当該ボビンのそれぞれから当該ポリエステルマルチフィラメント糸からなる経糸を引き出しながら加撚を施すと同時に、粗織工程に供給しながら粗織織物を構成し、その粗織織物の経糸部分を織成工程に供給し織成する様に構成されているものである。
【0044】
以下に実施例をあげて本発明についてさらに詳述する。
【0045】
実施例1
本発明に於いてウェビングに使用する細い単糸繊度からなるポリエステルマルチフィラメントとして、1500デニールで288フィラメント(単糸繊度5.2デニール)、強度10.5g/dの糸を経糸1として200本使用し、特許第2630567号に示されている「ダブル加撚装置を備えたクリール」を用いて、経糸撚り数を種々に変更する様に加撚加工を行いながら経糸1としニードル織機に供給すると共に、緯糸3として、ポリエステルマルチフィラメント750デニール糸を20本/3cm(緯糸係数:182)の密度で同じニードル織機に供給して、粗織りされた生巾ウェビングを作成し、最後に染色・樹脂加工を行い表1に示すような複数種のウェビングを作成した。
【0046】
また、比較として、最近一般的にウェビングの経糸として使用されている太い単糸繊度からなるポリエステル1500デニールで144フィラメント(単糸繊度10.4デニール)、強度9.1g/dの糸を経糸として使用して、同様な加工方法で表1のG、Hに示す様なウェビングを作成した。
【0047】
この結果から見ると、図2に示す様に、撚り係数(α)が4,000以上の撚り加工をすることによって、JIS規格の六角棒摩耗強力保持率80%以上の良好なウェビングができることが分かる。また、このような撚り加工をすることによって、表1に示す様に、表面毛羽欠点も良好なレベルに押さえることができる事が判明した。
【0048】
実施例2
本発明に於いてウェビングに使用する細い単糸繊度からなるポリエステルマルチフィラメントとして、1260デニールで192フィラメント(単糸繊度6.6デニール)、強度10.8g/dの糸を経糸1として使用し、特許第2630567号に示される「ダブル加撚装置を備えたクリール」を用いて、経糸撚り数を120t/mとして、上記経糸1への撚糸加工を行いながら、同時に粗織りされる緯糸3を使用して、ニードル織機にてウェビングを形成するに際し、緯糸本数、緯糸種類・緯糸太さ及び密度を表2に示す様に種々変更したウェビングを作成した。ウェビングは染色加工のみ施した物及び樹脂加工を施した物を作成した。
【0049】
また、比較例として、最近一般的にウェビングの経糸として使用されている太い単糸繊度からなるポリエステル1260デニールで108フィラメント(単糸繊度11.7デニール)、強度9g/dの糸を経糸に使用した表2のSのウェビングを作成した。
【0050】
この結果から見ると、現在、30kNタイプのウェビングとして一般的に流れている比較例Sに比較して、本発明に於いて、上記に定義した緯糸係数が175以上になるような緯糸の太さと密度で構成した実施例L、M、P、Q、Rのウェビングは、性能的に良好で、厚さも薄く、重さが14−19%も軽い物ができている。
【0051】
これに比較して、比較例J、K、Nのウェビングは、緯糸係数が満足しないため、六角棒摩耗性が悪く、又目ずれもし易い物となっている。
【0052】
また、緯糸にポリエステルモノフィラメント600デニールを併用した実施例Rのウェビングは、実施例Pに比較して約2倍のよこ剛性を持つ製品となっている。
【0053】
更に、上記した六角棒摩耗後の強力保持率と緯糸係数との関係は、図3に示す様な特定の曲線を示し、且つ、図示の曲線で示されるグラフの近傍にあるものが理想的と考えられるが、少なくとも上記緯糸係数が175以上であれば本発明の目的を満足する製品が得られることが理解される。
【0054】
実施例3
上記した実施例Dのウェビングに、500デニール、48フィラメントのポリエステルマルチフィラメント糸及び250デニール、24フィラメントのポリエステルマルチフィラメント糸に約120t/mの撚りを与えた糸を各々16本、ウェビング4の両端部分5の経糸6に挿入し、図4に示す織り組織で製織することにより、ウェビングの両端の形状をほぼ円形にし柔軟な感触の端末を持ったウェビングを形成することができる。
【0055】
また、500デニール、48フィラメントのポリエステルマルチフィラメント糸に約120t/mの撚りを与えた糸を32本、ウェビングの両端部分の経糸に挿入し、図5に示す織り組織で製織することにより、ウェビングの両端の形状をほぼ筒状にし柔軟な感触の端末を持ったウェビングを形成することが出来る。
【0056】
本発明に於ける上記したシートベルト用ウェビング及びシートベルト用ウェビングの製造方法は、上記した構成を有しているので、特許第2514884号の「加撚装置を備えたクリール」或いは特許第2630567号の「ダブル加撚装置を備えたクリール」に開示された技術を使用して、整経加工或いは製織加工をしながら、同時に、経糸への撚糸加工を行う等の加工コストが非常に小さい従来にない撚糸加工方法により、ウェビングを構成する経糸に従来シートベルトでは一般的でない高撚度の撚り加工を加えることにより、製糸工程で最大限の延伸比率で或いは高速度で紡糸した、従来シートベルトでは一般的でない細い単糸繊維の、従来にない非常に高強度のポリエステルマルチフィラメント糸をウェビング゛の経糸に使用する事を可能とし、経糸単位本数当たりの強力が非常に高く、原糸のコスト逓減が可能で、且つ耐摩耗性を維持したウェビングを得る事が可能となる。
【0057】
更に、本発明に於いては、ウェビングの経糸に強い撚り加工を加えて経糸に従来にない高い収束性を与える事により、製糸工程で発生した切断されたフィラメントの端末を糸の撚りの中に巻き込んで隠し込み、ウェビングの表面にフィラメントの端末が顕著に突出しないようにして、ウェビングの外観上の欠点を削減する事ができるので、ウェビングの欠点の削減と共に、製糸工程でのフィラメントの切断増加を許容し、更に糸の延伸率と紡糸速度を高めて、より高強力なより低価格の原糸の使用を可能とし、更なる経糸単位本数当たりの強力向上と、ウェビングのコスト逓減を可能とする。
【0058】
又、本発明に於いては、ウェビングの両端部分に比較的細い繊度の経糸(複数)を挿入することにより、ウェビングの両端の形状をほぼ円形にし、または筒状にし、或いは柔軟な感触の端末を形成する等、ウェビングの耳部の形状の快適性の確保に対応できる。
【0059】
一方、本発明に於いては、ウェビングの緯糸のフィラメントの形状(マルチフィラメント又はモノフィラメント)又は繊度(糸の太さ)の選択により、ウェビングの巾方向の堅さ(剛性)を調節してウェビング装着時の快適性を得ること、或いは、巻取り装置にウェビングを巻き込むときのウェビングの反転を防止することが出来る。
【0060】
更に、本発明に於いては、衝突時のウェビングとウェビングをガイドする金具、或いはウェビングと人体との間の高速摩擦によるウェビングの溶融劣化を防ぐために、ウェビングの耐熱容量を、ウェビングの厚さを変えることにより調節する事が出来る。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は本発明に於けるシートベルト用ウェビングの構成の概要を説明する図である。
【図2】図2は、撚り係数と六角棒摩耗後の強力保持率の関係を示すグラフである。
【図3】図3は、緯糸係数と六角棒摩耗後の強力保持率の関係を示すグラフである。
【図4】図4は、ウェビング両端末の形状を円形にするための織組織の一例を示す図である。
【図5】図5は、ウェビング両端末の形状を筒状にするための織組織一例を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1 マルチフィラメント糸
2 主地経糸
3 緯糸
4 シートベルト用ウェビング
5 シートベルト用ウェビングの端部
6 シートベルト用ウェビングの端部の経糸
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経糸に緯糸を交差させて帯状に織られたシートベルト用に関し、従来シートベルトでは一般的でない、高強度で細い単糸繊維により構成され、従来シートベルトでは一般的でない高撚度の撚り加工を加えた、ポリエステルマルチフィラメント糸を経糸として織成し、経糸単位本数当たりの強力が非常に高く、薄くて軽く、且つ、耐摩耗性を維持したウェビングを得る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、シートベルト用ウェビングは、規定された引張強さ、伸度、耐久性等の諸特性を確保するような仕様で、主としてポリエステル又はポリアミド繊維から成るマルチフィラメント糸を経糸として、ポリエステル又はポリアミド繊維から成るマルチフィラメント糸またはモノフィラメント糸を緯糸として使用し、経糸及び緯糸を細巾織物用織機上で交差させて帯状に織り込み形成されている。
【0003】
従来、殆どのウェビングは、織機上で開口された上下の経糸群の間を緯糸用シャトルを往復さることにより、経糸と緯糸を交差させて細巾織物用力織機上で帯状に織成されていた。
【0004】
この細巾織物用力織機による製織動作中に、上下に開口した経糸群の間を通過する緯糸用シャトルによる経糸群への擦過により、経糸群にフィラメント切断の損傷が多く発生していた。
【0005】
この経糸群のフィラメント切断の損傷を防ぐために、従来に於いては、単糸繊度が概ね8デニール、強度が1デニール当たりおおよそ8g程度の、1m当たり約80回の撚糸加工を施した、ポリアミドのマルチフィラメント糸がウェビングの経糸として一般的に使用されていた。
【0006】
その後、織機上で開口された上下の経糸群の間を緯糸用ニードルを往復させることにより、経糸と緯糸を交差させて帯状に織布する、細巾織物用ニードル織機によるウェビングの製織が普及した。
【0007】
この細巾織物用ニードル織機による製織動作中に、上下に開口した経糸群の間を通過する緯糸用ニードルによる経糸群の擦過は、力織機の緯糸用シャトルによる経糸群の擦過に比べて非常に小さく、経糸に撚糸加工を施して糸の収束性を保持しなくても、経糸群にフィラメント切断の損傷を与えることが少なくなった。このため、従来から行われてきた経糸への撚糸加工を廃止して、撚糸加工賃を削除してウェビングのコストを逓減しようとする傾向が強まっていった。
【0008】
更に、撚糸加工を廃止するという傾向と共に、単糸繊度が太いマルチフィラメント糸を経糸に使用して織り上げたウェビングに、樹脂又は油剤等による表面処理加工を施して、ウェビングの耐摩耗性を確保する新たな手段が工夫され、この技術が多く使用されるようになった。
【0009】
その結果、単糸繊度が概ね11デニール、強度がおおよそ1デニール当たり8.5g程度のポリアミドまたはポリエステルのマルチフィラメント糸がほぼ無撚りの状態でウェビングの経糸に使用されることが一般的になっていった。
【0010】
処で、近頃は、殆どのウェビングにポリエステル繊維が使用されるようになり、主として、単糸繊度が概ね11デニール、強度がおおよそ1デニール当たり9g程度のポリエステルマルチフィラメント糸を、殆ど無撚りの状態で経糸に使用して、細巾織物用ニードル織機で織成することがウェビング生産の主流となってきている。
【0011】
更に、最近は、単糸繊維が太くても従来の強度を維持し、且つフィラメントの切断の少ないポリエステルの製糸技術の進歩と相まって、ウェビングの耐摩耗性を維持するための仕上げ表面処理加工を省く目的で、ウェビングの経糸に使用する繊維の単糸繊度を更に太くする傾向が見られ、単糸繊度が概ね14デニール以上、強度がおおよそ1デニール当たり9g程度のポリエステルマルチフィラメント糸を殆ど無撚りの状態で、ウェビングの経糸に使用することが一部に推奨されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の従来技術の経過に見るように、ウェビングの製織に細巾織物用ニードル織機の使用が一般化し、また、製糸技術が進歩して、従来は困難であったフィラメント切断の欠点が少ない、太い単糸繊度のポリエステルマルチフィラメント糸を繊維製造業者が供給出来るようになるに従って、ウェビングのコスト逓減を図ることを目的として、ウェビングの経糸の撚糸加工を省き、また、表面処理加工を省いて耐摩耗性を確保するために、経糸に使用されるポリエステル繊維の単糸繊度を太くする方向へとウェビング製造技術が推移してきた。
【0013】
一方、製糸工程において、ポリエステル繊維は、繊維の延伸率を高くするほど強度が大きくなり、その反面、フィラメント切断の欠点が多くなる傾向がある。
【0014】
また、単糸繊度が太くなるほど製糸工程での延伸加工の難度が高くなり、一定の品質を保つために製糸速度が遅くなるとされている。
【0015】
最近、ウェビングの経糸に多く使用されつつあるより太い単糸繊度のポリエステルマルチフィラメント繊維を、フィラメント切断の欠点を増加させることなく、延伸率を上げてその強度を更に向上させる事、或いは、製糸速度を上げて原糸コストを更に逓減する事は、高度に進歩したと言われる現在の製糸技術をもってしても非常に困難である。
【0016】
他方、製織工程において、太い単糸繊度のポリエステルマルチフィラメント繊維が、ほとんど無撚りの状態でウェビングの経糸に使用されており、フィラメント切断の欠点は、織り上がったウェビングの表面に太い単糸繊維の端末が突出するウェビングの欠点となり、ウェビングの外観不良として顕在化する。
【0017】
そのため、ウェビングの不良を増加させない観点からして、製糸工程でのフィラメント切断の欠点が多発する事を容認する事は出来ず、繊維の強度を増加させて、或いは、製糸速度を上げて原糸コストの逓減を追求する事は何れも困難である。
【0018】
従って、ウェビングの経糸に使用されるポリエステル繊維の撚糸加工を省き、単糸繊度を太くする傾向にある近頃のウェビング織成技術の方向では、製糸工程に於ける製糸速度向上による原糸価格の逓減、または、延伸率増加による原糸強度の向上による原糸コストの逓減を図ることは何れも困難で、技術的に頭打ちの状態にあり、これらを打開する新たな技術展開が課題となる。
【0019】
従って、本発明の目的は、上記課題を解消するものであって、ウェビングの耐摩耗性を損なうことなく、非常に高強力で細い単糸繊維から成るポリエステルマルチフィラメント糸をウェビングの経糸に使用することを可能にし、その結果、経糸単位本数当たりの強力が高く、より高い引張強さを持ち、経糸量の軽減が可能な、より薄く、重量の軽い、コスト逓減を可能とするウェビングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記目的を達成するため、基本的には、以下に示す様な技術構成を採用するものである。
【0021】
即ち、本発明に於ける第1の態様としては、単糸繊度が
7デニール以下で、且つ10g/デニール以上の単糸強度を有するポリエステルフィラメントが複数本集合されたマルチフィラメント糸であって、次式(1)で求められる撚り係数α
α = T x (D1)1/2 (1)
(ここで、T:撚り数t/m及びD1:経糸マルチフィラメント糸デニールとする。)
が、4000以上5500以下の条件で加撚が施されているポリエステルマルチフィラメント糸を主地経糸に使用し、緯糸の密度と太さの関係が次式(2)、即ち
緯糸密度(本/3cm) x (D2)1/3 ≧ 179 (2)
(ここで、D2:緯糸マルチフィラメント糸及びモノフィラメント糸或いはその両者の合計デニールとする)
を満足するような緯糸係数で織成されており且つ1kN当りの厚みが0.037mm以下で1kN当りの重さが1.64g/m以下であって、然も六角棒摩耗強力保持率が80%以上である事を特徴とする耐磨耗性を有するシートベルト用ウェビングであり、又、本発明に於ける第2の態様としては、単糸繊度が7デニール以下で、且つ10g/デニール以上の単糸強度を有するポリエステルフィラメントが複数本集合されたマルチフィラメント糸であって、請求項1記載の式(1)で求められる撚り係数αが4000以上5500以下の指定された加撚を施されているポリエステルマルチフィラメント糸を、少なくとも地経糸の一部に配し、当該ポリエステルマルチフィラメント糸を加撚しながら連続的に織成工程に供給して、請求項1記載の式(2)で求められる緯糸係数をもって供給される緯糸とで織成する事を特徴とする耐磨耗性を有するシートベルト用ウェビングの製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に於ける上記したシートベルト用ウェビング及びシートベルト用ウェビングの製造方法は、上記した構成を有しているので、特許第2514884号の「加撚装置を備えたクリール」或いは特許第2630567号の「ダブル加撚装置を備えたクリール」に開示された技術を使用して、整経加工或いは製織加工をしながら、同時に、経糸への撚糸加工を行う等の加工コストが非常に小さい従来にない撚糸加工方法により、ウェビングを構成する経糸に従来シートベルトでは一般的でない高撚度の撚り加工を加えることにより、製糸工程で最大限の延伸比率で或いは高速度で紡糸した、従来シートベルトでは一般的でない細い単糸繊維の、従来にない非常に高強度のポリエステルマルチフィラメント糸をウェビング゛の経糸に使用する事を可能とし、経糸単位本数当たりの強力が非常に高く、原糸のコスト逓減が可能で、且つ耐摩耗性を維持したウェビングを得る事が可能となる。
更に、本発明では、引張強度が大きいにも係らず、薄くて軽いと言うシートベルト用ウェビングが得られると共に換言すれば、同じ引張強度特性を持つシートベルト用ウェビングであれば、その重さは軽く且つ薄いものが得られるという作用効果が期待出来る
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に於ける上記したシートベルト用ウェビング及びシートベルト用ウェビングの製造方法は、上記した技術構成を採用しているので、ウェビングの耐摩耗性を損なうことなく、非常に高強力で細い単糸繊維から成るポリエステルマルチフィラメント糸をウェビングの経糸に使用することを可能にし、その結果、経糸単位本数当たりの強力が高く、より高い引張強さを持ち、経糸量の軽減が可能な、より薄く、重量の軽い、コスト逓減を可能とするウェビングが得られるのである。
【0024】
本発明に於いては、最近一般的に経糸に使用されつつある太い単糸繊維より格段に細い単糸繊度、即ち、単糸繊度で7デニール以下で、格段に強度の高いポリエステルマルチフィラメント糸、即ち、10g/d以上の強度を持つ糸をウェビングの経糸に使用する事である。
【0025】
つまり、細い単糸繊度の糸は、製糸工程において、従来に比してより高い延伸率での製糸が可能となり、現行に比して非常に強度が高いポリエステル繊維を経糸として使用できる。また、より速い速度での紡糸が可能となり、コスト逓減の可能性が大きいポリエステル繊維が、ウェビングの経糸に使用できる。従ってウェビングの経糸の強度向上によるウェビング強力の向上、或いは、経糸糸量の削減及び原糸価格の低下によるウェビングのコスト逓減が可能となる。
【0026】
又、本発明に於いては、格段に細い単糸繊度のポリエステルのマルチフィラメント糸からなる経糸に、従来シートベルトでは一般的でない強い撚り加工を施すことにより経糸に強い収束性を持たせる事である。これによって、特別な表面処理加工を施さなくても、ウェビングの耐摩耗性を維持する事が出来る。もちろん、表面処理加工を併用しても何ら問題ない。
【0027】
更に、本発明に於いては、製糸工程での高い延伸或いは高速の紡糸で発生する切断したフィラメントの端末を糸の撚りの中に巻き込んで隠し込み、ウェビングの表面にフィラメントの端末が顕著に突出しないようにして、ウェビングの外観上の欠点を削減する事ができる。撚り数としては、一般的に基準とされているJIS規格による六角棒摩耗後の強力保持率が80%以上を保持するために、次式(1)で求められる撚り係数αが4,000以上で有ることが必要である。
【0028】
α = T x (D1)1/2 (1)
(ここで、T:撚り数t/m及びD1:経糸マルチフィラメント糸デニールとする。)
又、本発明に於いては、例えば特許第2514884号の「加撚装置を備えたクリール」或いは特許第2630567号の「ダブル加撚装置を備えたクリール」を使用して、整経加工或いは製織加工をしながら、同時に、経糸への撚糸加工を行う等、加工コストが非常に小さい撚糸加工手段を採用する事である。これによって、嘗て、コスト逓減のために削除されていったウェビング経糸への撚糸加工を、再び、ウェビング製造技術の中に新たな形態で取り込み、使用可能な原糸の単糸繊度の選択の自由度、或いは製糸工程で発生するフィラメント切断欠陥の許容範囲を数倍に拡大することが出来る。
【0029】
更に、本発明に於いては、上述の経糸を使用したウェビングの緯糸として、六角棒摩耗特性、ウェビングとしての形態安定性などの観点から、緯糸の密度と太さの関係が次式(2)(これを緯糸係数と定義する)を満足する密度で、ウェビングを織成する事である。
【0030】
緯糸密度(本/3cm) x (D2)1/3 ≧ 179 (2)
(ここで、D2:緯糸マルチフィラメント糸及びモノフィラメント糸或いはその両者の合計デニールとする)
本発明に於いては、この緯糸係数が179以下の場合は、六角棒摩耗後の強力保持率が80%以下となり摩耗性が悪く、又、目ずれのし易いウェビングとなる。
【0031】
又、緯糸としてポリエステルモノフィラメント糸を単独又はポリエステルマルチフィラメント糸と併用してウェビングを構成することによりウェビングの幅方向の堅さ(剛性)を調節してウェビング装着時の快適性を得ること、或いは、巻き取り装置にウェビングを巻き込む時の反転性を防止することができる。この緯糸係数を満足する範囲で緯糸太さを適当に選択し、ウェビングの厚さを変えることによって、衝突時のウェビングとウェビングをガイドする金具、或いはウェビングと人体との間の高速摩擦によるウェビングの溶融劣化を防ぐために、ウェビングの耐熱容量を調節する事が出来る。
【0032】
又、経糸の一部に、当該ポリエステルマルチフィラメント糸以外の単糸繊度、単糸強度、撚り数を有するポリエステルマルチフィラメント糸を使用すること、或いは、ポリエステル以外の材質からなるマルチフィラメント糸を使用することもできる。
【0033】
更には、このウェビングの両端部分に比較的細い繊度の経糸(複数)を挿入することにより、ウェビングの両端の形状をほぼ円形にし、または筒状にすることによって、柔軟な感触の端末を持ったウェビングを提供することも出来る。また、ウェビング外観上の識別をするために、同様の経糸(複数)を経糸の任意の一部分に挿入することもできるし、ウェビングを形成する経糸の一部分の織り組織を変えて異なる仕様のウェビングを識別する標識とすることもできる。
【0034】
実施例
以下に、本発明に於けるシートベルト用ウェビング及びシートベルト用ウェビングの製造方法の一具体例の構成について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0035】
即ち、図1は、本発明に於けるシートベルト用ウェビングの一具体例の構成を示す図であり、図中、単糸繊度が
7デニール以下で、且つ10g/デニール以上の単糸強度を有するポリエステルフィラメントが複数本集合されたマルチフィラメント糸1であって、次式(1)で求められる撚り係数α
α = T x (D1)1/2 (1)
(ここで、T:撚り数t/m及びD1:経糸マルチフィラメント糸デニールとする。)
が、4000以上の加撚が施されているポリエステルマルチフィラメント糸1を主地経糸2に使用し、緯糸3の密度と太さの関係が次式(2)を満足するような緯糸密度で織成されている事を特徴とするシートベルト用ウェビング4が示されている。
緯糸密度(本/3cm) x (D2)1/3 ≧ 179 (2)
(ここで、D2:緯糸マルチフィラメント糸及びモノフィラメント糸或いはその両者の合計デニールとする)
上記した本発明に於いて使用する式(1)によれば、撚り係数αは、マルチフィラメント糸1の撚り数T(t/m)と経糸2として使用されるマルチフィラメント糸1のデニール(D1)の平方根との積として示されるものである。
【0036】
一方、本発明に於いて使用する式(2)によれば、緯糸3の密度と上記した緯糸として使用されるマルチフィラメント糸及びモノフィラメント糸或いはその両者の合計デニール太さの関係が、緯糸密度(本/3cm)と緯糸のデニール(D2)の立方根との積として示されるものである。
【0037】
又、本発明に於いては、当該シートベルト用ウェビング4はニードル織機により織成されている事も好ましい。
【0038】
更に、本発明に於いては、当該シートベルト用ウェビング4が染色加工、ヒートセット加工或いは仕上げ加工された後に、主地経糸2を構成するポリエステルマルチフィラメント糸1の単糸強度が9g/デニール以上を保持しているものである事も望ましい。
【0039】
更に、本発明に於いては、ポリエステルマルチフィラメント糸、ポリエステルモノフィラメント糸或いはその双方が緯糸として使用されるものであっても良い。
【0040】
一方、本発明に於ける上記シートベルト用ウェビング4に於いては、当該シートベルト用ウェビングに於ける耳部5を構成する経糸6が、当該主地経糸2を構成するマルチフィラメント糸1の繊度よりも小さい繊度を有するマルチフィラメント糸が使用されている事も好ましい。
【0041】
更に、本発明に於けるシートベルト用ウェビングの製造方法の一具体例としては、例えば、単糸繊度が7デニール以下で、且つ10g/デニール以上の単糸強度を有するポリエステルフィラメントが複数本集合されたマルチフィラメント糸であって、上記の様に定義した撚り係数αが4000以上の指定された加撚を施されているポリエステルマルチフィラメント糸を、少なくとも地経糸の一部に配し、当該ポリエステルマルチフィラメント糸を加撚しながら織成工程に供給して織成する様に構成されているものである。
【0042】
本発明に於けるシートベルト用ウェビングの製造方法のより好ましい具体例としては、当該無撚りのポリエステルマルチフィラメント糸からなる複数のボビンを経糸供給手段として適宜の加撚機構を持つクリールに搭載せしめ、当該クリールに搭載された複数の当該ボビンのそれぞれから当該ポリエステルマルチフィラメント糸からなる経糸を引き出しながら加撚を施すと同時に、整経工程に供給しながら整経した経糸を織成工程に供給し織成する様に構成されているものである。
【0043】
更に、本発明に於けるシートベルト用ウェビングの製造方法の別の態様としては、当該無撚りのポリエステルマルチフィラメント糸からなる複数のボビンを経糸供給手段として適宜の加撚機構を持つクリールに搭載せしめ、当該クリールに搭載された複数の当該ボビンのそれぞれから当該ポリエステルマルチフィラメント糸からなる経糸を引き出しながら加撚を施すと同時に、粗織工程に供給しながら粗織織物を構成し、その粗織織物の経糸部分を織成工程に供給し織成する様に構成されているものである。
【0044】
以下に実施例をあげて本発明についてさらに詳述する。
【0045】
実施例1
本発明に於いてウェビングに使用する細い単糸繊度からなるポリエステルマルチフィラメントとして、1500デニールで288フィラメント(単糸繊度5.2デニール)、強度10.5g/dの糸を経糸1として200本使用し、特許第2630567号に示されている「ダブル加撚装置を備えたクリール」を用いて、経糸撚り数を種々に変更する様に加撚加工を行いながら経糸1としニードル織機に供給すると共に、緯糸3として、ポリエステルマルチフィラメント750デニール糸を20本/3cm(緯糸係数:182)の密度で同じニードル織機に供給して、粗織りされた生巾ウェビングを作成し、最後に染色・樹脂加工を行い表1に示すような複数種のウェビングを作成した。
表1中、D,Eは本発明の実施例に相当し、A,B,C,Fは比較例を示すものである
【0046】
また、別の比較として、最近一般的にウェビングの経糸として使用されている太い単糸繊度からなるポリエステル1500デニールで144フィラメント(単糸繊度10.4デニール)、強度9.1g/dの糸を経糸として使用して、同様な加工方法で表1のG、Hに示す様なウェビングを作成した。
【0047】
この結果から見ると、図2に示す様に、撚り係数(α)が4,000以上の撚り加工をすることによって、JIS規格の六角棒摩耗強力保持率80%以上の良好なウェビングができることが分かる。また、このような撚り加工をすることによって、表1に示す様に、表面毛羽欠点も良好なレベルに押さえることができる事が判明した。
【0048】
実施例2
本発明に於いてウェビングに使用する細い単糸繊度からなるポリエステルマルチフィラメントとして、1260デニールで192フィラメント(単糸繊度6.6デニール)、強度10.8g/dの糸を経糸1として使用し、特許第2630567号に示される「ダブル加撚装置を備えたクリール」を用いて、経糸撚り数を120t/mとして、上記経糸1への撚糸加工を行いながら、同時に粗織りされる緯糸3を使用して、ニードル織機にてウェビングを形成するに際し、緯糸本数、緯糸種類・緯糸太さ及び密度を表2に示す様に種々変更したウェビングを作成した。ウェビングは染色加工のみ施した物及び樹脂加工を施した物を作成した。
【0049】
また、比較例として、最近一般的にウェビングの経糸として使用されている太い単糸繊度からなるポリエステル1260デニールで108フィラメント(単糸繊度11.7デニール)、強度9g/dの糸を経糸に使用した表2のSのウェビングを作成した。
【0050】
この結果から見ると、現在、30kNタイプのウェビングとして一般的に流れている比較例Sに比較して、本発明に於いて、上記に定義した緯糸係数が179若しくはそれ以上になるような緯糸の太さと密度で構成した実施例L、M、P、Q、Rのウェビングは、性能的に良好で、厚さも薄く、重さが16−20%も軽い物ができている。
【0051】
これに比較して、比較例J、K、Nのウェビングは、緯糸係数が満足しないため、六角棒摩耗性が悪く、又目ずれもし易い物となっている。
【0052】
また、緯糸にポリエステルモノフィラメント600デニールを併用した実施例Rのウェビングは、実施例Pに比較して約2倍のよこ剛性を持つ製品となっている。
【0053】
更に、上記した六角棒摩耗後の強力保持率と緯糸係数との関係は、図3に示す様な特定の曲線を示し、且つ、図示の曲線で示されるグラフの近傍にあるものが理想的と考えられるが、少なくとも上記緯糸係数が179若しくはそれ以上であれば本発明の目的を満足する製品が得られることが理解される。
【0054】
実施例3
上記した実施例Dのウェビングに、500デニール、48フィラメントのポリエステルマルチフィラメント糸及び250デニール、24フィラメントのポリエステルマルチフィラメント糸に約120t/mの撚りを与えた糸を各々16本、ウェビング4の両端部分5の経糸6に挿入し、図4に示す織り組織で製織することにより、ウェビングの両端の形状をほぼ円形にし柔軟な感触の端末を持ったウェビングを形成することができる。
【0055】
また、500デニール、48フィラメントのポリエステルマルチフィラメント糸に約120t/mの撚りを与えた糸を32本、ウェビングの両端部分の経糸に挿入し、図5に示す織り組織で製織することにより、ウェビングの両端の形状をほぼ筒状にし柔軟な感触の端末を持ったウェビングを形成することが出来る。
ここで、本発明のシートベルト用ウェビングの特徴である引張強度が大きく且つ軽くて薄いと言う特性を確認する為に、上記表1及び表2を表3及び表4にそれぞれ展開して分析する。
つまり、表3及び表4は、表1及び表2のそれぞれの試料に関する厚さ、重さ、引張強度の各データを元に、それぞれの試料について、縦糸総デニールd、1kN当りのデニールd、1kN当りの厚さmm及び1kN当りの重さg/mをそれぞれ求めたものである。
これらの実験結果データを検討すると、先ず撚り係数αに関しては、図2から判断して4000以上が望ましいと考えられるが、比較例Fが示す様に、当該撚り係数αが、6000を超えるとかなり引張強度が低下し、高強力糸を使用する意味が薄れると共に、厚さも厚くなり、重量も重くなることが判明しているので、実施例Eを参照すれば、当該撚り係数αの上限は5500とする事が望ましいと判断される。
次に、比較例A,B,C,N,J,Kは何れも耐摩耗性が80%以下であり、本発明で必要とされる摩耗特性を満足していないので、本発明の実施例にはならないことは明らかである。
又、比較例Gは、経糸を加撚するものではなく、又比較例Hは、撚り係数αは、上記した本発明の好ましい範囲に入っており、然も耐摩耗性も好ましい範囲を示してはいるが強力が低く、従って本発明の実施例D,Eと同等の強力を得るには、経糸本数を増やす必要があり、その結果重量が増加すると共に厚みも増加するという問題を含んでいる。
一方、比較例Sは、従来一般的に市販されているシートベルト用ウェビングに該当するもので、経糸が加撚されていない点で比較例としているものであり、かかる比較例Sと同一の構成を有し、且つ本発明の構成要件を満足する実施例Pとを比較すると、実施例Pは重さで比較例Sよりも19%も軽くなっており、厚さで13%薄くなっていることが判る。
より具体的には、本発明に於ては、シートベルト用ウェビングとしては1kN当りの厚みが0.037mm以下で1kN当りの重さが1.64g/m以下と言う特性値を有していることが望ましいと判断されており、上記各表のデータから明らかな様に、本発明の実施例の具体例では、何れも1kN当りの厚みが0.037mm以下で1kN当りの重さが1.64g/m以下と言う特性値を示していることは明らかである。
又、本発明の実施例では、1kN当りの経糸合計繊度が11700デニール以下である事が更に好ましい事が示されている。
【0056】
本発明に於ける上記したシートベルト用ウェビング及びシートベルト用ウェビングの製造方法は、上記した構成を有しているので、特許第2514884号の「加撚装置を備えたクリール」或いは特許第2630567号の「ダブル加撚装置を備えたクリール」に開示された技術を使用して、整経加工或いは製織加工をしながら、同時に、経糸への撚糸加工を行う等の加工コストが非常に小さい従来にない撚糸加工方法により、ウェビングを構成する経糸に従来シートベルトでは一般的でない高撚度の撚り加工を加えることにより、製糸工程で最大限の延伸比率で或いは高速度で紡糸した、従来シートベルトでは一般的でない細い単糸繊維の、従来にない非常に高強度のポリエステルマルチフィラメント糸をウェビング゛の経糸に使用する事を可能とし、経糸単位本数当たりの強力が非常に高く、原糸のコスト逓減が可能で、且つ耐摩耗性を維持したウェビングを得る事が可能となる。
【0057】
更に、本発明に於いては、ウェビングの経糸に強い撚り加工を加えて経糸に従来にない高い収束性を与える事により、製糸工程で発生した切断されたフィラメントの端末を糸の撚りの中に巻き込んで隠し込み、ウェビングの表面にフィラメントの端末が顕著に突出しないようにして、ウェビングの外観上の欠点を削減する事ができるので、ウェビングの欠点の削減と共に、製糸工程でのフィラメントの切断増加を許容し、更に糸の延伸率と紡糸速度を高めて、より高強力なより低価格の原糸の使用を可能とし、更なる経糸単位本数当たりの強力向上と、ウェビングのコスト逓減を可能とする。
【0058】
又、本発明に於いては、ウェビングの両端部分に比較的細い繊度の経糸(複数)を挿入することにより、ウェビングの両端の形状をほぼ円形にし、または筒状にし、或いは柔軟な感触の端末を形成する等、ウェビングの耳部の形状の快適性の確保に対応できる。
【0059】
一方、本発明に於いては、ウェビングの緯糸のフィラメントの形状(マルチフィラメント又はモノフィラメント)又は繊度(糸の太さ)の選択により、ウェビングの巾方向の堅さ(剛性)を調節してウェビング装着時の快適性を得ること、或いは、巻取り装置にウェビングを巻き込むときのウェビングの反転を防止することが出来る。
【0060】
更に、本発明に於いては、衝突時のウェビングとウェビングをガイドする金具、或いはウェビングと人体との間の高速摩擦によるウェビングの溶融劣化を防ぐために、ウェビングの耐熱容量を、ウェビングの厚さを変えることにより調節する事が出来る。

【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は本発明に於けるシートベルト用ウェビングの構成の概要を説明する図である。
【図2】図2は、撚り係数と六角棒摩耗後の強力保持率の関係を示すグラフである。
【図3】図3は、緯糸係数と六角棒摩耗後の強力保持率の関係を示すグラフである。
【図4】図4は、ウェビング両端末の形状を円形にするための織組織の一例を示す図である。
【図5】図5は、ウェビング両端末の形状を筒状にするための織組織一例を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 マルチフィラメント糸
2 主地経糸
3 緯糸
4 シートベルト用ウェビング
5 シートベルト用ウェビングの端部
6 シートベルト用ウェビングの端部の経糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単糸繊度が 7デニール以下で、且つ10g/デニール以上の単糸強度を有するポリエステルフィラメントが複数本集合されたマルチフィラメント糸であって、次式(1)で求められる撚り係数α
α=T x (D1)1/2 (1)
(ここで、T:撚り数t/m及びD1:経糸マルチフィラメント糸デニールとする。)
が、4000以上の加撚が施されているポリエステルマルチフィラメント糸を主地経糸に使用し、緯糸の密度と太さの関係が次式(2)を満足するような緯糸密度で織成されている事を特徴とするシートベルト用ウェビング。
緯糸密度(本/3cm) x (D2)1/3 > 175 (2)
(ここで、D2:緯糸マルチフィラメント糸及びモノフィラメント糸或いはその両者の合計デニールとする)
【請求項2】
当該シートベルト用ウェビングはニードル織機により織成されている事を特徴とする請求項1記載のシートベルト用ウェビング。
【請求項3】
当該シートベルト用ウェビングが染色加工、ヒートセット加工或いは仕上げ加工された後に、請求項1記載の主地経糸を構成するポリエステルマルチフィラメント糸の単糸強度が9g/デニール以上を保持している請求項1又は2に記載のシートベルト用ウェビング。
【請求項4】
ポリエステルマルチフィラメント糸、ポリエステルモノフィラメント糸或いはその双方が緯糸として使用されている事を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のシートベルト用ウェビング。
【請求項5】
当該シートベルト用ウェビングに於ける耳部を構成する経糸が、当該主地経糸を構成するマルチフィラメント糸の繊度よりも小さい繊度を有するマルチフィラメント糸が使用されている事を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のシートベルト用ウェビング。
【請求項6】
単糸繊度が7デニール以下で、且つ10g/デニール以上の単糸強度を有するポリエステルフィラメントが複数本集合されたマルチフィラメント糸であって、請求項1記載の式で求められる撚り係数αが4000以上の指定された加撚を施されているポリエステルマルチフィラメント糸を、少なくとも地経糸の一部に配し、当該ポリエステルマルチフィラメント糸を加撚しながら織成工程に供給して織成する事を特徴とするシートベルト用ウェビングの製造方法。
【請求項7】
当該無撚りのポリエステルマルチフィラメント糸からなる複数のボビンを経糸供給手段として適宜の加撚機構を持つクリールに搭載せしめ、当該クリールに搭載された複数の当該ボビンのそれぞれから当該ポリエステルマルチフィラメント糸からなる経糸を引き出しながら加撚を施すと同時に、整経工程に供給しながら整経した経糸を織成工程に供給し織成する事を特徴とする請求項6記載のシートベルト用ウェビングの製造方法。
【請求項8】
当該無撚りのポリエステルマルチフィラメント糸からなる複数のボビンを経糸供給手段として適宜の加撚機構を持つクリールに搭載せしめ、当該クリールに搭載された複数の当該ボビンのそれぞれから当該ポリエステルマルチフィラメント糸からなる経糸を引き出しながら加撚を施すと同時に、粗織工程に供給しながら粗織織物を構成し、その粗織織物の経糸部分を織成工程に供給し織成する事を特徴とする請求項6記載のシートベルト用ウェビングの製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単糸繊度が
7デニール以下で、且つ10g/デニール以上の単糸強度を有するポリエステルフィラメントが複数本集合されたマルチフィラメント糸であって、次式(1)で求められる撚り係数α
α = T x (D1)1/2 (1)
(ここで、T:撚り数t/m及びD1:経糸マルチフィラメント糸デニールとする。)
が、4000以上5500以下の条件で加撚が施されているポリエステルマルチフィラメント糸を主地経糸に使用し、緯糸の密度と太さの関係が次式(2)を満足するような緯糸係数で織成されており且つ1kN当りの厚みが0.037mm以下で1kN当りの重さが1.64g/m以下であって、然も六角棒摩耗強力保持率が80%以上である事を特徴とする耐磨耗性を有するシートベルト用ウェビング。
緯糸密度(本/3cm) x (D2)1/3 ≧ 179 (2)
(ここで、D2:緯糸マルチフィラメント糸及びモノフィラメント糸或いはその両者の合計デニールとする)
【請求項2】
1kN当りの経糸合計繊度が11700デニール以下である事を特徴とする請求項1に記載のシートベルト用ウェビング
【請求項3】
当該シートベルト用ウェビングはニードル織機により織成されている事を特徴とする請求項1又は2に記載のシートベルト用ウェビング。
【請求項4】
当該シートベルト用ウェビングが染色加工、ヒートセット加工或いは仕上げ加工された後に、主地経糸を構成するポリエステルマルチフィラメント糸の単糸強度が9g/デニール以上を保持している請求項1乃至3の何れかに記載のシートベルト用ウェビング
【請求項5】
ポリエステルマルチフィラメント糸、ポリエステルモノフィラメント糸或いはその双方が緯糸として使用されている事を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のシートベルト用ウェビング
【請求項6】
当該シートベルト用ウェビングに於ける耳部を構成する経糸が、当該主地経糸を構成するマルチフィラメント糸の繊度よりも小さい繊度を有するマルチフィラメント糸が使用されている事を特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のシートベルト用ウェビング
【請求項7】
単糸繊度が7デニール以下で、且つ10g/デニール以上の単糸強度を有するポリエステルフィラメントが複数本集合されたマルチフィラメント糸であって、請求項1記載の式(1)で求められる撚り係数αが4000以上5500以下の指定された加撚を施されているポリエステルマルチフィラメント糸を、少なくとも地経糸の一部に配し、当該ポリエステルマルチフィラメント糸を加撚しながら連続的に織成工程に供給して、請求項1記載の式(2)で求められる緯糸係数をもって供給される緯糸とで織成する事を特徴とする耐磨耗性を有するシートベルト用ウェビングの製造方法
【請求項8】
当該無撚りのポリエステルマルチフィラメント糸からなる複数のボビンを経糸供給手段として適宜の加撚機構を持つクリールに搭載せしめ、当該クリールに搭載された複数の当該ボビンのそれぞれから当該ポリエステルマルチフィラメント糸からなる経糸を引き出しながら加撚を施すと同時に、整経工程に供給しながら整経した経糸を連続的に織成工程に供給し織成する事を特徴とする請求項7記載のシートベルト用ウェビングの製造方法
【請求項9】
当該無撚りのポリエステルマルチフィラメント糸からなる複数のボビンを経糸供給手段として適宜の加撚機構を持つクリールに搭載せしめ、当該クリールに搭載された複数の当該ボビンのそれぞれから当該ポリエステルマルチフィラメント糸からなる経糸を引き出しながら加撚を施すと同時に、連続的に粗織工程に供給しながら粗織織物を構成し、その粗織織物の経糸部分を織成工程に連続的に供給し織成する事を特徴とする請求項7又は8に記載のシートベルト用ウェビングの製造方法

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−52519(P2006−52519A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−211045(P2005−211045)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【分割の表示】特願2001−384367(P2001−384367)の分割
【原出願日】平成13年12月18日(2001.12.18)
【出願人】(000159146)菊地工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】