説明

シートモールディングコンパウンド用一体成形型加飾シート及び加飾成形品

【課題】 加圧熱成形時に膜厚を保持でき成形品の端から接着剤のはみ出し等がなく、SMCとの接着性に優れ、且つ、耐温水性に優れる、SMC用一体成形型加飾シートを提供する。
【解決手段】 少なくとも透明樹脂層と装飾層と接着層とがこの順に積層され、前記接着層が、数平均分子量1000以上のヒドロキシ基を有するラジカル重合性化合物と、ポリイソシアネートと、ラジカル重合開始剤と、充填剤とを含み、且つ、前記ラジカル重合性化合物のヒドロキシ基に対する前記ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比が0.03〜0.7の範囲を満たすように前記ポリイソシアネートを含有するシートモールディングコンパウンド用一体成形型加飾シート及び加飾成形品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化プラスチックであるシートモールディングコンパウンド用の一体成形型加飾シート及びそれを使用した加飾成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維強化プラスチック(以下FRPと略す)は、優れた強度、耐久性から広く建築部材、家電部材、自動車部材などの工業製品部材を始め、システムキッチン、トイレ、浴室部材等に用いられている。これらの生産においては、ハンドレイアップ成形法、あるいはスプレーアップ成形法と言われる方式が広く採用されて来たが、該方法は一個の製品を生産するのに長い時間と多くの工数を必要とした。そこで、これらの生産性を格段に改良するものとして、シートモールディングコンパウンド(以下、SMCと略す)またはバルクモールディングコンパウンド(以下、BMCと略す)等の補強繊維入り熱硬化性樹脂組成物が開発され、これを用いた加熱圧縮成形法が現在広く採用されている。
【0003】
近年、嗜好の高級化から意匠性の高い絵柄模様などの装飾が好まれるようになり、SMC成形品に対しても特別な意匠を施す検討がなされている。このようなSMC成形品の意匠性を高める成形品の加飾方法としては、例えば、溶融温度がSMC成形温度以上の熱可塑性樹脂シートに絵柄層を印刷し、これに不織布を裏打ちしてなる化粧シートを用意し、該化粧シートの不織布側と接するようにSMCを積層し、金型内で加熱加圧して両者を一体化する方法(例えば特許文献1参照)のように、絵柄印刷を施した不織布や織布を金型内でSMCと一体化させる方法が一般的である。
しかしながら不織布や織布は、加熱圧縮成形によって織目が表面に浮き出る、絵柄層の光沢性や平滑性に欠けるといった問題や、成形時にSMCの流れにより不織布が切れる事等の問題や、浴室部材においては耐温水性が不十分となる問題があった。
【0004】
これに対し、熱成形性に優れる熱可塑性樹脂に絵柄印刷を施し、更にSMCとの接着性を高める目的で接着層を付与した熱成形用フィルムを加飾シートとして使用する方法が検討されている(例えば特許文献2参照)。該方法では、熱成形用フィルムとSMCとの接着性を高めるために、接着剤としてエポキシアクリレート熱硬化性樹脂を使用しているが、エポキシアクリレート熱硬化性樹脂は加圧成形後容易に剥がれてしまうといった問題や、加圧熱成形時に膜厚を保持できず、成形品の端から接着剤がはみ出したりして得られる加飾成形品の外観を損ねるといった問題があり、実用的ではないといった問題があった。
【0005】
SMC用の接着剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物のプライマーを予めSMCに塗工した後、室温で4時間〜7日間放置乾燥させたのち、変性エポキシアクリレート樹脂接着剤を塗布して使用する接着剤が知られているが(例えば特許文献3参照)、取り扱いが複雑であり、予め接着剤を塗工させた状態で流通する加飾シート用の接着剤としては使用できない。
【0006】
【特許文献1】特開平8−118384号公報
【特許文献2】特開平11−207878号公報
【特許文献3】特開平11−80697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、加圧熱成形時に膜厚を保持でき成形品の端から接着剤のはみ出し等がなく、SMCとの接着性に優れ、且つ、耐温水性に優れる、SMC用一体成形型加飾シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、接着剤として、ヒドロキシ基を有するラジカル重合性化合物と、ポリイソシアネートと、ラジカル重合開始剤と、充填剤とを含み、且つ前記ポリイソシアネートのイソシアネート基と前記ラジカル重合性化合物のヒドロキシ基とが特定の当量比である接着剤を使用することで、上記課題を解決した。
イソシアネート基は、ヒドロキシ基の一部と該加飾シート作成時に予め架橋させておくので、保持力が高まり加圧熱成形時に膜厚を保持できる。流通時にはイソシアネート基はほぼ反応していることから予期せぬ副反応が生じることもない。更に充填剤を含むことで、加圧成形時における接着不良が改善され、接着性に優れた加飾シートが得られる。
【0009】
即ち、本発明は。少なくとも透明樹脂層と装飾層と接着層とがこの順に積層されたシートモールディングコンパウンド用一体成形型加飾シートであって、前記接着層が、数平均分子量1000以上のヒドロキシ基を有するラジカル重合性化合物と、ポリイソシアネートと、ラジカル重合開始剤と、充填剤とを含み、且つ、前記ラジカル重合性化合物のヒドロキシ基に対する前記ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比が0.03〜0.7の範囲を満たすように前記ポリイソシアネートを含有するシートモールディングコンパウンド用一体成形型加飾シートを提供する。
【0010】
また、本発明は、前記記載のシートモールディングコンパウンド用一体成形型加飾シートの製造方法であって、少なくとも透明樹脂層と装飾層と接着層とをこの順に積層させた後、50〜90℃の温度範囲内で加熱し、前記ラジカル重合性化合物のヒドロキシ基と前記ポリイソシアネートのイソシアネート基とを反応させるシートモールディングコンパウンド用一体成形型加飾シートの製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記記載のシートモールディングコンパウンド用一体成形型加飾シートを、該加飾シートの接着層側がシートモールディングコンパウンドと接するように重ね合わせて加圧熱成形させて得た加飾成形品を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のSMC用一体成形型加飾シートは、加圧熱成形時に膜厚を保持でき成形品の端から接着剤のはみ出し等がなく、且つSMCとの接着性に優れるので、剥がれ等がなく、特に耐温水性に優れるSMC加飾成形品を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(接着層)
本発明のSMC用一体成形型加飾シートに使用する接着層は、数平均分子量1000以上のヒドロキシ基を有するラジカル重合性化合物(以下ラジカル重合性化合物Aと略す)と、ポリイソシアネートと、ラジカル重合開始剤と、充填剤とを含み、且つ前記ラジカル重合性化合物のヒドロキシ基に対する前記ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比が0.03〜0.7の範囲を満たすように前記ポリイソシアネートを含有することを特徴とする。
【0014】
(ラジカル重合性化合物A)
前記ラジカル重合性化合物Aとは、具体的には、エポキシ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基を有するポリエステル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイル基をグラフトさせたアクリルポリマー等の(メタ)アクリレートオリゴマーや、α,β−不飽和二塩基酸とジオールとの反応物である不飽和ポリエステル等があげられる。
【0015】
エポキシ(メタ)アクリレートとしては、公知のエポキシ化合物、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ハロゲン化フェノールノボラックおよびアルキルフェノールノボラックなどのノボラック樹脂と、エピクロルヒドリンまたはメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSおよびテトラブロムビスフェノールA等のビスフェノール類とエピクロルヒドリンまたはメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるビスフェノール類のジグリシジルエーテル;前記ビスフェノール類のジグリシジルエーテルを、更にビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSおよびテトラブロムビスフェノールA等で高分子量化させた伸長ビスフェノール型エポキシ樹脂;トリスフェノールメタン、トリスクレゾールメタン等とエピクロルヒドリンまたはメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、ビフェニルジグリシジルエーテル等の脂環式エポキシ樹脂;グリシジルメタクリレートとスチレンとメチルスチレンの共重合体、グリシジルメタクリレートとシクロヘキシルマレイミドとの共重合体等の共重合型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂をカルボキシル基末端型ポリエステル、カルボキシル基末端型ブタジエンゴム、二塩基酸、ビニルエーテル等で変性した可撓性エポキシ樹脂等に、1個以上のラジカル重合性基及び1個のヒドロキシ基を有する化合物、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等を反応させて得たエポキシ(メタ)アクリレートがあげられる。中でも、ビスフェノール類のジグリシジルエーテルにヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類を反応させたビスフェノールA型(メタ)アクリレートが好ましい。
【0016】
また、ヒドロキシ基を有するポリエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−3−ハイドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ハイドロキシプロピオネート、12−ヒドロキシステアリルアルコール、またはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールもしくはポリヘキサメチレングリコール、あるいはトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールA、ポリエステルポリオール等のポリオール化合物と、
イソフタル酸、テレフタル酸、(無水)フタル酸、(無水)テトラヒドロフタル酸、(無水)ヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸またはアジピン酸等の、各種ジ−あるいはポリカルボン酸(無水物)との脱水縮合によって得られるヒドロキシ基を有するポリエステル樹脂(油変性タイプも含む。)や、ε−カプロラクトンまたはバレロラクトン等の各種ラクトン化合物の開環重合によって得られるヒドロキシ基を有するポリエステル樹脂のヒドロキシ基の一部に(メタ)アクリル酸とを反応させた化合物があげられる。
【0017】
また、ヒドロキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートもしくはキシレンジイソシアネート等の各種ジイソシアネート類の一部に前記ポリオール化合物を反応させたヒドロキシ基を有するイソシアネート化合物に、(メタ)アクリル酸を反応させた化合物等があげられる。
【0018】
また、ヒドロキシ基及び(メタ)アクリロイル基をグラフトさせたアクリルポリマー等の(メタ)アクリレートとしては、例えば、前記1個以上のラジカル重合性基及び1個のヒドロキシ基を有する化合物を共重合させて得たアクリルポリマーのヒドロキシ基の一部にグリシジル(メタ)アクリレートや(メタ)アクリロイルイソシアネート等の化合物をペンダントさせた化合物があげられる。
【0019】
またα,β−不飽和二塩基酸とジオールとの反応物である不飽和ポリエステルとしては、例えば、リノール酸、リノレン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの不飽和基含有多価カルボン酸と1,6−ヘキサンジオールなどの多価アルコールとのエステル化反応等により得られる両末端または片末端アルコール基含有不飽和ポリエステルがあげられる。
【0020】
これらのラジカル重合性化合物Aの中でも、耐温水性・密着性の観点からエポキシ(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステル(メタ)アクリレートが好ましく、エポキシ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0021】
前記ラジカル重合性化合物Aの分子量は、数平均分子量(以下Mnと略す)が1000以上であればよい。Mnが1000以上であれば、ロール状にしても液だれやシート厚み変形がなく、流通時においても安定な形状を保つことが可能である。Mnの上限は特に限定はないが、高すぎると塗工性及びラジカル重合性に劣ることから、30,000以下であることが好ましい。中でも1,000〜15,000が好ましく、1,000〜10,000がより好ましい。
【0022】
(ポリイソシアネート化合物)
前記ポリイソシアネート化合物は、例えば、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートもしくはキシレンジイソシアネート等の各種ジイソシアネート類、トリフェニルメタン−4,4´,4″−トリイソシアネート、1,3,5−トリソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4´−ジメチルジフェニルメタン−2,2´,5,5´−テトライソシアネートなどの3価以上の有機ポリイソシアネート化合物、及び、これら2価以上の有機ポリイソシアネートの2量体もしくは3量体、または、これらの2価又は3価以上の有機ポリイソシアネートと、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールもしくはジペンタエリスリトール等の、各種多価アルコール類、またはイソシアネート基と反応しうる官能基を有する、きわめて分子量の低いポリエステル化合物との付加物等の各種ポリイソシアネート類が挙げられる。中でもヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネートが好ましい。
【0023】
(ラジカル重合性化合物Aとポリイソシアネート化合物の配合比)
本発明において、ラジカル重合性化合物Aが有するヒドロキシ基と、ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基とは、一定の当量比であることが好ましい。即ち、接着剤固形分中の前記ラジカル重合性化合物のヒドロキシ基に対する前記ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比、即ちイソシアネート基当量/ヒドロキシ基当量が0.03〜0.7の範囲を満たすように前記ポリイソシアネートを含有することが好ましい。該当量比が0.03に満たない範囲であると、保持力が不足し加圧熱成形時に成形品の端から接着剤のはみ出すおそれがあり、一方該当量比が0.7を超える範囲であると、SMCとの加圧接着の際に接着しない。該当量比は中でも0.04〜0.5の範囲が好ましく、0.06〜0.5の範囲がなお好ましい。
また、前記ラジカル重合性化合物Aが有するヒドロキシ量は、水酸基価に換算し30〜300mgKOH/gの範囲であれば、本発明の効果を発揮でき好ましい。
【0024】
本発明のシートの接着性において、前記ヒドロキシ基とイソシアネート基との当量比が上限を超えると接着性が低下することについては、接着剤のイソシアネートによる架橋密度が一定以上となることにより、SMCとの加圧熱成形時に接着層内およびSMCと接着剤との界面付近でラジカル重合反応が阻害されるためと考えられる。
【0025】
(熱ラジカル重合開始剤)
本発明においては、接着剤を加圧成形する際に良好に接着硬化させるために、熱ラジカル重合開始剤を使用する。熱重合開始剤としては、例えば、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系等の有機過酸化物があげられる。これら有機過酸化物は、成形法、温度等の成形条件、生産性等に応じて適宜選択され、少なくとも一種単独で、場合により2種以上併用して用いられる。有機過酸化物の添加量としては特に限定されるものではないが、好ましくは接着剤に使用する樹脂全体量に対し0.3〜5質量%の割合で使用する。
【0026】
(充填剤)
本発明で使用する充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、マイカ、タルク、カオリン、クレー、セライト、アスベスト、バーライト、バライタ、シリカ、ケイ砂、ドロマイト、石灰石、セッコウ、アルミニウム微粉、中空バルーン、アルミナ、ガラス粉、水酸化アルミニウム、寒水石、酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、二酸化モリブデンなどが挙げられる。これらの充填材は、作業性や得られる成形品の強度、外観、経済性などを考慮して選ばれるが、通常、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカなどが好ましく用いられる。これらは有機表面処理されたものも含まれる。
【0027】
充填剤の添加量は、少なくとも、前記ラジカル重合性化合物A9に対して1以上添加することが好ましい。特にラジカル重合性化合物A:充填剤が9:1〜3:7の範囲となるように充填剤を添加すると、SMCとの接着性に特にすぐれ好ましい。本発明においては、接着剤の熱成形時の硬化収縮率とSMCの熱成形時の硬化収縮率の差(内部応力)が剥がれ等の原因であると推定しており、充填剤を添加することで接着剤の熱成形時の収縮率が調整でき、SMCの熱成形時の収縮率とを近似させることができる。従って充填剤の添加量は、SMCの熱成形時の収縮率に近似の収縮率となるように添加することが好ましい。
【0028】
(その他の成分)
また、接着剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、公知のラジカル重合性モノマーを添加することも可能である。しかしながら低分子のラジカル重合性モノマーは接着剤そのものの粘度を低下させるために、該配合量は5〜30質量%の範囲にとどめておくことが好ましい。そのようなモノマーとしては、例えば、架橋密度コントロールの観点からは、スチレン、ジアリルフタレート、多官能(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0029】
本発明のシートモールディングコンパウンド用一体成形型加飾シートは、前記接着剤を使用する以外は特に限定はなく、公知の材料を使用することができる。
【0030】
(透明樹脂層)
本発明で使用する透明樹脂層は、得られるSMC加飾成形品において、装飾層を保護し美観を与え、且つ成形品の表面強度(耐擦性、耐汚染性)等を保つ役割を有する。従って、後述の装飾層が透けてみえるぐらいの透明度を有していればよく、半透明のものも含む。具体的には、ヘーズ(曇価)が5%未満であることが好ましい。ヘーズ(曇価)は、JIS K−7105により測定する。また、後述の成形用樹脂と同じ色味であれば、顔料もしくは染料等の着色剤を含有しても良い。
具体的には、熱成形を施すことから加熱により展延性を示すような熱可塑性樹脂が好ましく、また強度を付与する目的で、展延性を示す熱硬化性樹脂も好ましく使用できる。また必要に応じて複数層積層した層であってもよい。
具体的には(後述の装飾層は前記接着層には直接印刷することが困難であることから)、印刷支持体として熱可塑性樹脂層の片面に装飾層を印刷した後、反対側の面に強度を付与する目的で熱硬化性樹脂層を設け、装飾層側の面に接着層を設けた本願のSMC用一体成形型加飾シートの場合は、透明樹脂層は熱可塑性樹脂層と熱硬化性樹脂層との積層体となる。
あるいは、印刷支持体として熱可塑性樹脂層の片面に装飾層を印刷した後、該装飾層側の面に強度を付与する目的で熱硬化性樹脂層を設けた本願のSMC用一体成形型加飾シートの場合は、透明樹脂層は熱硬化性樹脂層の単層体となる。
【0031】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレートやポリエチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下ABS樹脂と略す)、アクリロニトリル−スチレン樹脂(以下AS樹脂と略す)、メチルメタクリレート−スチレン樹脂(以下MS樹脂と略す)、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニルやポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂等を使用することが出来る。また透明性を損なわない範囲でこれらのブレンド物やポリマーアロイを使用することができる。またこれらは単層、多層で使用しても良い。
また展延性を示す熱硬化性樹脂としては、例えば、イソシアネート基やエポキシ基を利用した熱硬化橋性樹脂、アクリレートモノマーやオリゴマー等を使用したUV、EB硬化性樹脂等を使用することができる。中でも耐摩擦性等に特に優れることから、ヒドロキシ基とイソシアネート基との反応を利用した熱硬化性樹脂を使用することが好ましい。
また、これらの透明樹脂には、透明性と成形性が阻害されない範囲で慣用の添加剤を添加してもよく、例えば、可塑剤、耐光性添加剤(紫外線吸収剤、安定剤等)、酸化防止剤、オゾン化防止剤、活性剤、耐電防止剤、滑剤、耐摩擦剤、表面調節剤(レベリング剤、消泡剤、ブロッキング防止剤等)、防カビ剤、抗菌剤、分散剤、難燃剤及び加流促進剤や加流促進助剤等の添加剤を配合してもよい。これら添加剤は単独で使用しても2種類以上を併用してもよい。
【0032】
透明樹脂層の膜厚は、10〜200μmの範囲が好ましく、10〜100μmの範囲が表面性・延伸性の理由からなお好ましい。
【0033】
(装飾層)
本発明で使用する装飾層は特に限定はなく、例えば、インキ又は塗料を常法により前記透明樹脂層に印刷したり、別途剥離シートに設けた装飾層を前記透明樹脂層に転写したり、真空蒸着法、スパッタリング法及びメッキ法等により金属蒸着層を形成させた装飾層を使用できる。
【0034】
インキ又は塗料に含有される着色剤は、耐候性の観点から顔料が好ましい。用いる顔料は特に限定されず、着色顔料、メタリック顔料、干渉色顔料、蛍光顔料、体質顔料および防錆顔料などの公知慣用の顔料を使用することができる。
着色顔料としては、例えば、キナクリドンレッド等のキナクリドン系、ピグメントレッド等のアゾ系、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンおよびペリレンレッド等のフタロシアニン系等の有機顔料;及び酸化チタンやカーボンブラック等の無機顔料が挙げられ、メタリック顔料としては、例えば、アルミニウム粉、ニッケル粉、銅粉、真鍮粉およびクロム粉等が挙げられる。
干渉色顔料としては、真珠光沢状のパールマイカ粉や真珠光沢状の着色パールマイカ粉等が挙げられ、蛍光顔料としては、キナクリドン系、アンスラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、モノアゾ系、不溶性アゾ系、ナフトール系、フラバンスロン系、アンスラピリミジン系、キノフタロン系、ピランスロン系、ピラゾロン系、チオインジゴ系、アンスアンスロン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系およびインダンスロン系等の有機顔料;ニッケルジオキシンイエローや銅アゾメチンイエロー等の金属錯体;酸化チタン、酸化鉄および酸化亜鉛等の金属酸化物;硫酸バリウムや炭酸カルシウム等の金属塩;及びカーボンブラック、アルミニウムおよび雲母等の無機顔料が挙げられる。
【0035】
また、金属調意匠を付与する場合は、金属粉末を含む金属光沢インキを使用する。金属粉末としては、通常メタリックインキに使用される金属粉や、金属薄膜細片等が使用される。中でも金属薄膜細片を使用した金属光沢インキは、該インキを印刷または塗工した際に金属薄膜細片が被塗物表面に対して平行方向に配向する結果、従来の金属粉では得られない高輝度の鏡面状で金属調の高い光沢が得られ、特に好ましい。
金属としては、アルミニウム、クロム、ニッケル、金、白金、銀、銅、ゲルマニウム、真鍮、チタン、インジウム、モリブデン、タングステン、パラジウム、イリジウム、シリコン、タンタル、ニッケルクロム、ステンレス鋼、クロム銅、アルミニウムシルコン、酸化亜鉛、酸化錫等の金属または合金または化合物を用いる。金属薄膜細片は、これらの蒸着金属薄膜から得た金属薄膜細片が好ましく用いられる。金属薄膜の厚さは、0.01〜0.1μmの範囲であり、好ましくは0.015〜0.08μmであり、さらに好ましくは0.018〜0.045μmである。インキ中に分散させる金属薄膜細片の平均粒子径は、5〜25μmの範囲であり、好ましくは10〜15μmである。また、インキ中の不揮発分に対する金属薄膜細片の含有量は3〜60質量%の範囲が好ましく、10〜60質量%の範囲であることがなお好ましく、20〜45質量%であることがさらに好ましい。
より高輝度の鏡面状金属光沢を得るためには、該インキ層の膜厚は0.05〜3.0μmが好ましく、より好ましくは0.2〜2.5μm、さらに好ましくは0.5〜2.0μmである。該膜厚を1μm未満に設定する場合は、皮膜中の金属薄膜細片の含有量を20〜60質量%にすることが好ましい。
【0036】
インキ又は塗料に含有される結着樹脂としては、従来のグラビアインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、あるいは塗料等に通常用いられている樹脂を使用できる。具体例として例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレア樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、オレフィン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、石油系樹脂、セルロース誘導体樹脂などが用いられる。またこれらの樹脂にカルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基、アミノ基、四級アンモニウム塩基などの極性基を化学的に結合させたものを使用または併用させても良い。
【0037】
前記装飾層を構成するインキには意匠性、成形性を阻害しない限り、必要に応じて、従来のグラビアインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、あるいは塗料等に通常用いられている各種添加剤を使用することもできる。また、粘度等を調整する目的で、各種有機溶剤を使用することもできる。
【0038】
装飾層を金属蒸着層で得る場合に、使用する金属としては、アルミニウム、クロム、ニッケル、金、銀、銅、ゲルマニウム、酸化亜鉛、酸化錫等の金属または合金または化合物を用いる。金属蒸着層の形成は前記熱可塑性樹脂フィルム層上に真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等で行う。
金属蒸着層は全面に実施しても良いし、マスキングによって部分的に実施して色インキとの組合せで柄にしてもよい。
【0039】
前記装飾層に使用するインキ又は塗料を前記透明樹脂層に展着させる方法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の印刷方式;及びグラビアコーター、グラビアリバースコーター、フレキソコーター、ブランケットコーター、ロールコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、キスタッチコーター、キスタッチリバースコーター、コンマコーター、コンマリバースコーター、マイクログラビアコーター等の塗工方式を用いることが出来る。
【0040】
装飾層の厚みは特に限定されないが、隠蔽性及び意匠性に優れ、かつ熱成形時に色むらが発生しにくいことから、インキ又は塗料を用いる場合は0.1〜5μmが好ましく、特に好ましくは0.5〜3μmである。又、金属薄膜層を形成させる場合は0.01〜0.50μmが好ましく、特に好ましくは0.02〜0.10μmである。また、熱可塑性樹脂フィルム層と装飾層の密着性を制御する目的で、該熱可塑性樹脂フィルム層の表面にはコロナ処理やプライマー塗工等の表面処理を施しても良い。
【0041】
(その他の層)
本発明のSMC用一体成形型加飾シートは、本発明の効果を損なわない範囲において、装飾層と接着層との間に熱可塑性樹脂層を設けてもよい。このような熱可塑性樹脂層は、前記接着層と接着性のよい樹脂を選択することや、あるいは樹脂層表面をプラズマ処理等で表面処理しておき、接着性を損なわないことが好ましい。
この熱可塑性樹脂層は、透明樹脂層の熱可塑性樹脂と同等の樹脂を用いることができ、膜厚は、10〜300μmの範囲が好ましく、50〜200μmの範囲が表面性・延伸性の理由からなお好ましい。
【0042】
また、流通時あるいはSMC成形時に透明樹脂層を保護する目的で、SMC金型と接する面即ち透明樹脂層側に、熱成形可能な剥離性フィルムを積層させてもよい。このような剥離性フィルムとしては、離型シートとして市販されているものを応用すればよく、例えば、粘着層や離型層を片面に有する熱可塑性樹脂フィルムを使用することができる。
剥離性フィルムをSMC成形後剥離することで、加飾シート自体の流通時あるいはSMC成形時の傷等を防止することができ、より美観を保つことが可能となる。
【0043】
(SMC用一体成形型加飾シートの製造方法)
本発明のSMC用一体成形型加飾シートの製造方法は、公知の方法で行うことができる。
例えば、透明樹脂層(熱硬化性樹脂層/熱可塑性樹脂層)/装飾層/接着層の層構造を有する本発明のSMC用一体成形型加飾シートの場合は、剥離性フィルムに熱硬化性樹脂層/熱可塑性樹脂層を塗工後、装飾層をドライ転写もしくは塗工し、最後に接着剤層を塗工する事で得ることができる。
また、透明樹脂層(熱硬化性樹脂層)/装飾層/熱可塑性樹脂/接着層の層構造を有する本発明のSMC用一体成形型加飾シートの場合は、装飾層を印刷した樹脂層の装飾層面に透明樹脂層(熱硬化性樹脂層)を塗工後、樹脂層面に接着剤を塗工する事で得ることができる。
また、透明樹脂層(熱硬化性樹脂層)/熱可塑性樹脂/装飾層/接着層の層構造を有する本発明のSMC用一体成形型加飾シートの場合は、装飾層を印刷した樹脂層の樹脂層面に透明樹脂層(熱硬化性樹脂層)を塗工後、装飾面に接着剤を塗工する事で得ることができる。
【0044】
(養生工程)
このようにして得られた本発明のSMC用一体成形型加飾シートは、接着剤塗工後養生工程を設けることが好ましい。養生工程を設けることで、接着層のラジカル重合性化合物Aのヒドロキシ基とポリイソシアネート化合物のイソシアネート基が反応することで架橋密度が生じ、液だれ等のないフィルムを得ることができる。
養生工程は、接着剤塗工後50〜90℃で数日間行うことが好ましい。より好ましくは50〜70℃の温度範囲で2日間程度である。
【0045】
(SMC)
本発明で使用するSMCは、特に限定はなく公知のものを使用すればよい。例えば、不飽和ポリエステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等のラジカル硬化性樹脂と、酢酸ビニル、スチレン、スチレン置換体、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、無水マレイン酸,N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フェニルマレイミド等のラジカル重合性モノマーと、ラジカル重合開始剤、必要に応じて低収縮剤、硬化触媒、充填剤、内部離型剤、増粘剤、着色剤等を加えて混練した樹脂混合物を繊維状強化材にシート状に含浸させ増粘させたもの、あるいは、該樹脂組成物をガラス繊維、アミド、アラミド、ビニロン、ポリエステル、フェノール等の有機繊維、カーボン繊維、金属繊維、セラミック繊維、天然繊維等と混練したものが使用できる。特に、スチレンをモノマーとして使用したSMCが、本発明のSMC用一体成形型加飾シートとの接着性に特に優れ好ましい。
【0046】
(SMC加飾成形品)
本発明のSMC用一体成形型加飾シートを、該加飾シートの接着層側がSMCと接するように重ね合わせて加圧熱成形させることで、加飾成形品を得ることができる。具体的には、型内部に本発明のSMC用一体成形型加飾シートを加飾表面が型内部と接するように設置し、次にSMCを重ねて載置し、加圧・熱プレス成形することで、SMC加飾成形品を得ることができる。型形状、圧力、加熱温度や時間等は特に制限はなく、通常のSMC成形の範囲内で加飾を行うことが可能である。
【0047】
本発明のSMC用一体成形型加飾シートは、接着層として、SMCと同じ重合形態を有するラジカル重合性化合物と熱ラジカル重合開始剤を含むため、SMCとの界面で共有結合が生じ、より強固に接着させることができる。特に加圧成形時にはSMCに含まれるスチレン等の低分子モノマーが若干SMC用一体成形型加飾シートの接着層側に移行すると考えられ、該低分子モノマーと接着層中のラジカル重合性化合物とがラジカル重合することで、接着力が増大するものと考えられる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例により説明する。特に断わりのない限り「部」、「%」は質量基準である。用いた測定方法と判定方法を下に記載する。
なお、数平均分子量は、東ソー(株)製のゲル浸透クロマトグラフィ(GPC「HLC−8220」(カラム;HXL−H+G5000HXL+G3000HXL+G2000HXL+G2000HXL(東ソー(株))、カラム温度;40℃、溶媒;テトラヒドロフラン、流速;1ml/min)で測定し、TSKポリスチレン標準物質(東ソー(株))で換算した値とした。
【0049】
(接着層A用組成物の製造方法)
大日本インキ化学工業(株)製のビスフェノールA型エポキシアクリレート「ディックライトUE8300」(数平均分子量 約2000、水酸基価 約230mgKOH/g)を50部、大日本インキ化学工業(株)製のヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート「バーノックDN-981」(不揮発分=75%、NCO%=約14%)を6部、充填剤として日本軽金属(株)製の水酸化アルミニウム「B1403」を50部、ラジカル重合開始剤として日本油脂(株)のパーブチルIを0.5部、有機溶剤としてメチルエチルケトン(以下MEKと略す)40部をホモディスパーを用いて撹拌し、接着層A用組成物を調製した。
【0050】
(接着層B用組成物の製造方法)
接着剤層A用組成物において、ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネートを3部とした以外は接着剤層A用組成物と同様にして、接着剤層B用組成物を調製した。
【0051】
(接着層C用組成物の製造方法)
接着剤層A用組成物において、ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネートを24部とした以外は接着剤層A用組成物と同様にして、接着剤層C用組成物を調製した。
【0052】
(接着層D用組成物の製造方法)
接着剤層A用組成物において、水酸化アルミニウムを6部とした以外は接着剤層A用組成物と同様にして、接着剤層D用組成物を調製した。
【0053】
(接着層E用組成物の製造方法)
大日本インキ化学工業(株)製のビスフェノールA型エポキシアクリレート「ディックライトUE8200」(数平均分子量 約500、水酸基価 約2200mgKOH/g)を50部、大日本インキ化学工業(株)製のヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート「バーノックDN-981」(不揮発分=75%、NCO%=約14%)を6部、日本軽金属(株)製の水酸化アルミニウム「B1403」を50部、パーブチルIを0.5部、MEK40部を、ホモディスパーを用いて撹拌し、接着層E用組成物を調製した。
【0054】
(接着層F用組成物の製造方法)
大日本インキ化学工業(株)製のビスフェノールA型エポキシアクリレート「ディックライトUE8300」(数平均分子量 約2000、水酸基価 約230mgKOH/g)大日本インキ化学工業(株)製のヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート「バーノックDN-981」(不揮発分=75%、NCOw%=約14%)を6部、パーブチルIを0.5部、MEK40部を、ホモディスパーを用いて撹拌し、接着層F用組成物を調製した。
【0055】
(接着層G用組成物の製造方法)
大日本インキ化学工業(株)製のビスフェノールA型エポキシアクリレート「ディックライトUE8300」(数平均分子量 約2000、水酸基価 約230mgKOH/g)を50部、大日本インキ化学工業(株)製のヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート「バーノックDN-981」(不揮発分=75%、NCOw%=約14%)を0.1.2部、水酸化アルミニウム「製品名」を50部、パーブチルIを0.5部、MEK40部を、ホモディスパーを用いて撹拌し、接着層G用組成物を調製した。
【0056】
(接着層H用組成物の製造方法)
大日本インキ化学工業(株)製のビスフェノールA型エポキシアクリレート「ディックライトUE8300」(数平均分子量 約2000、水酸基価 約230mgKOH/g)を50部、大日本インキ化学工業(株)製のヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート「バーノックDN-981」(不揮発分==75%、NCOw%=約14%)を36部、水酸化アルミニウム「製品名」を50部、パーブチルIを0.5部、MEK40部を、ホモディスパーを用いて撹拌し、接着層H用組成物を調製した。
【0057】
(透明樹脂層用組成物Aの製造方法)
酢酸ブチル850部とパーブチルZ(商品名、日本油脂社製、t−ブチルパーオキシベンゾエート)1部の混合溶液中を110℃に加熱し、メチルメタクリレート660部、t−ブチルメタクリレート150部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート190部の混合溶液、及び、酢酸イソブチル200部、パーブチルO(商品名、日本油脂社製、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)9部、パーブチルZ(商品名、日本油脂社製、t−ブチルパーオキシベンゾエート)2部の混合溶液を、窒素雰囲気下で約5時間かけて滴下混合した後、15時間攪拌し、固形分含有率60%のアクリルポリオールを得た。得られた樹脂の重量平均分子量は100,000、固形分の水酸基価は79mgKOH/g、ガラス転移温度Tgは95℃であった。
【0058】
ここで、重量平均分子量はGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定のポリスチレン換算値、水酸基価はモノマー仕込み組成よりKOH中和量としての算出値、ポリマーTgはDSC(示差走査熱量測定)による測定値である。
【0059】
前記アクリルポリオールを固形分に換算して33部、大日本インキ化学工業(株)製のヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート「バーノックDN-981」(NCO%=約14%)を固形分に換算して8部添加し、有機溶剤として酢酸エチルとメチルイソブチルケトン(以下MIBKと略す)とが1:1の割合で混合したものを適宜添加してホモディスパーを用いて撹拌し、透明樹脂層A用組成物とした。
【0060】
(実施例1)SMC用一体成形型加飾シート(1)の製造方法
東洋紡績(株)製のポリエチレンテレフタレートフィルム「ソフトシャインA1532」(188μm、以下PETフィルムと略す)に、ウレタンインキ(商品名:ユニビアA)を使用しグラビア印刷機にて厚さ3μmの絵柄を印刷し、装飾層を有するPETフィルムAを得た。
【0061】
(インキ組成、黒、茶、白)
ポリウレタン(荒川化学社製ポリウレタン2569):20部
顔料(黒、茶、白):10部
酢酸エチル・トルエン(1/1):60部
ワックス等添加剤:10部
【0062】
前記PETフィルムの装飾面に前記透明樹脂層A用組成物を、乾燥後の膜厚が25〜30μmとなるようにバーコーターにて塗工し、80℃で3分間乾燥させた。乾燥後、60℃で5日間熟成させ、透明樹脂層A/装飾層/PETフィルムの積層フィルム(1−1)を作成した。
【0063】
前記積層フィルム(1−1)のPETフィルムの装飾層とは反対側の面に前記接着層A用組成物を乾燥後の膜厚が20〜25μmとなるようにバーコーターにて塗工し、80℃で3分間乾燥させた。乾燥後、50℃で2日間熟成させることより、透明樹脂層A/装飾層/PETフィルム/接着層Aがこの順に積層されたSMC用一体成形型加飾シート(1)を得た。
【0064】
(実施例2)SMC用一体成形型加飾シート(2)の製造方法
接着剤として接着層B用組成物を使用した以外は実施例1と同様にして、透明樹脂層A/装飾層/PETフィルム/接着層Bがこの順に積層されたSMC用一体成形型加飾シート(2)を得た。
【0065】
(実施例3)SMC用一体成形型加飾シート(3)の製造方法
接着剤として接着層C用組成物を使用した以外は実施例1と同様にして、透明樹脂層A/装飾層/PETフィルム/接着層Cがこの順に積層されたSMC用一体成形型加飾シート(3)を得た。
【0066】
(実施例4)SMC用一体成形型加飾シート(4)の製造方法
パナック(株)製の離型PETフィルム「TP−01」に透明樹脂層A用組成物を乾燥後の膜厚が25〜30μmとなるようにバーコーターにて塗工し、80℃で3分間乾燥させて透明樹脂層Aを形成した。乾燥後、該透明樹脂層Aに剥離性装飾層を印刷してあるCPPフィルムをラミネートさせ、該透明樹脂層Aに装飾層を転写し、60℃で5日間熟成させて、剥離性フィルム/透明樹脂層A/装飾層の積層フィルム(4−1)を作成した。
【0067】
前記積層フィルム(4−1)の装飾層面に前記接着層A用組成物を乾燥後の膜厚が20〜25μmとなるようにバーコーターにて塗工し、80℃で3分間乾燥させた。乾燥後、50℃で2日間熟成させることより、剥離性フィルム/透明樹脂層A/装飾層/接着層Aがこの順に積層されたSMC用一体成形型加飾シート(4)を得た。
【0068】
(実施例5)SMC用一体成形型加飾シート(5)の製造方法
印刷基材に帝人デュポン(株)製のポリエチレンテレフタレートフィルム「テフレックスFT7」(188μm)を、接着剤として接着層D用組成物を使用した以外は実施例1と同様にして、透明樹脂層A/装飾層/PETフィルム/接着層Dがこの順に積層されたSMC用一体成形型加飾シート(5)を得た。
【0069】
(実施例6) SMC加飾成形品(1)の製造方法
実施例1で得たSMC用一体成形型加飾シート(1)を約20cm×20cmに裁断し、(株)山本鉄工所の100tプレス機を使い、下型(雌型、成型品の表面)の中央部にSMC用一体成形型加飾シート(1)を設置し、次にSMCを積層して、金型温度上型130℃、下型145℃、成型圧5MPa、加圧時間5分で成型し、30cm×30cm×3.5mmのSMC加飾成形品(1)を得た。SMCとしては、新ディック化工(株)製のSMC「ディックマット2622」を使用した。
【0070】
(実施例7〜10)SMC加飾成形品(2)〜(5)の製造方法
実施例1で得たSMC用一体成形型加飾シート(1)の代わりに、SMC用一体成形型加飾シート(2)〜(5)を使用した以外は実施例6と同様にして、SMC加飾成形品(2)〜(5)を得た。なおSMC用一体成形型加飾シート(4)を使用した実施例9は、成形後剥離性フィルムを剥離した。
【0071】
(比較例1)SMC用一体成形型加飾シート(H1)の製造方法
接着剤として接着層E用組成物を使用した以外は実施例1と同様にして、透明樹脂層A/装飾層/PETフィルム/接着層Eがこの順に積層されたSMC用一体成形型加飾シート(H1)を得た。
【0072】
(比較例2)SMC用一体成形型加飾シート(H2)の製造方法
接着剤として接着層F用組成物を使用した以外は実施例1と同様にして、透明樹脂層A/装飾層/PETフィルム/接着層Fがこの順に積層されたSMC用一体成形型加飾シート(H2)を得た。
【0073】
(比較例3)SMC用一体成形型加飾シート(H3)の製造方法
接着剤として接着層G用組成物を使用した以外は実施例1と同様にして、透明樹脂層A/装飾層/PETフィルム/接着層Gがこの順に積層されたSMC用一体成形型加飾シート(H3)を得た。
【0074】
(比較例4)SMC用一体成形型加飾シート(H4)の製造方法
接着剤として接着層H用組成物を使用した以外は実施例1と同様にして、透明樹脂層A/装飾層/PETフィルム/接着層Hがこの順に積層されたSMC用一体成形型加飾シート(H4)を得た。
【0075】
(比較例5)SMC用一体成形型加飾不織布(H5)の製造方法
グラビア印刷を施した日本バイリーン(株)のポリエステル不織布「MF-180」を、大日本インキ化学工業(株)製の不飽和ポリエステル樹脂「PS-204」93部、フタル酸ジアリル7部、パーブチルZ1部を混合し、トルエンで希釈した樹脂液に浸漬させた後にロールで余分な樹脂を除いてSMC用一体成形型加飾不織布(H5)を得た。加飾不織布における樹脂含有率は約60%であった
【0076】
(比較例6)SMC加飾成形品(H1)の製造方法
実施例1で得たSMC用一体成形型加飾シート(1)の代わりに、SMC用一体成形型加飾シート(H1))を使用した以外は実施例6と同様にして、SMC加飾成形品(H1)を得た。
【0077】
(比較例7〜10)SMC加飾成形品(H2)〜(H6)の製造方法
実施例1で得たSMC用一体成形型加飾シート(1)の代わりに、SMC用一体成形型加飾シート(H2)〜(H6)を使用した以外は実施例6と同様にして、SMC加飾成形品(H2)〜(H6)を得た。
【0078】
(評価方法)
実施例6〜10、及び比較例6〜10で得たSMC加飾成形品について、
1.SMC用一体成形型加飾シートの接着剤の液だれの確認
2.SMC用一体成形型加飾シートとSMCとの密着力を測定する密着性試験
3.SMC加飾成形品の耐煮沸性試験
について評価を行った。以下に評価方法について示す。
【0079】
1.SMC用一体成形型加飾シートの接着剤の液だれの確認
接着剤の液だれの確認は、SMC加飾成型品の加飾部と非加飾部(SMC表面部)との端面を目視で観察し、接着剤がはみ出しているか否かで判断した。接着剤の液だれが観察されない場合は○、流れが観察された場合は×とした。
【0080】
2.SMC用一体成形型加飾シートとSMCとの接着性試験
フィルム部分にカッターナイフを用いて4mm間隔で6本のSMC素地に達する切込みを入れ、さらにこれら切込みに直交する6本の切込みを入れて合計25個の碁盤目を形成し、この全体に粘着テープ(積水化学工業社製、布テープNo.600)を貼り付けた後に引き剥がした。この試験を3回実施し、加飾シート層が粘着テープと共に素地から剥離しなかった碁盤目数の平均を求めた。
【0081】
3.耐煮沸性試験
SMC加飾成形品から10cm×10cmの試験片を切り取り、この試験片を80℃の熱水に100時間浸漬させ、取り出した。取り出した後に加飾表面を目視で観察し、フィルムのフクレ、剥がれ等の不具合が認められた実施例・比較例は×、外観上問題ない実施例・比較例は○とした。
【0082】
結果を表1に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
【表4】

【0087】
この結果、実施例1〜5で得たSMC用一体成形型加飾シート(1)〜(5)は、接着剤の液だれが生じず、接着性及び耐煮沸性に優れるものであった。比較例1は使用するラジカル重合性化合物Aの分子量が低すぎる例、比較例3はイソシアネート基の当量比が低すぎる例であるが、いずれも接着剤の膜厚を保持できず液だれが生じてしまい外観が著しく損なったものであった。また比較例2は充填剤である水酸化アルミニウム未添加の例、比較例4はイソシアネート基の当量比が高すぎる例であるが、いずれも接着性が低下した。また比較例5は不織布を使用した例であるは、耐煮沸性においてふくれが発生してしまった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも透明樹脂層と装飾層と接着層とがこの順に積層されたシートモールディングコンパウンド用一体成形型加飾シートであって、前記接着層が、数平均分子量1000以上のヒドロキシ基を有するラジカル重合性化合物と、ポリイソシアネートと、ラジカル重合開始剤と、充填剤とを含み、且つ、前記ラジカル重合性化合物のヒドロキシ基に対する前記ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比が0.03〜0.7の範囲を満たすように前記ポリイソシアネートを含有することを特徴とするシートモールディングコンパウンド用一体成形型加飾シート。
【請求項2】
前記ラジカル重合性化合物が(メタ)アクリレートである、請求項1に記載のシートモールディングコンパウンド用一体成形型加飾シート。
【請求項3】
前記透明樹脂層側に剥離性フィルムを有する、請求項1又は2に記載のシートモールディングコンパウンド用一体成形型加飾シート。
【請求項4】
請求項1に記載のシートモールディングコンパウンド用一体成形型加飾シートの製造方法であって、少なくとも透明樹脂層と装飾層と接着層とをこの順に積層させた後、50〜90℃の温度範囲内で加熱し、前記ラジカル重合性化合物のヒドロキシ基と前記ポリイソシアネートのイソシアネート基とを反応させることを特徴とするシートモールディングコンパウンド用一体成形型加飾シートの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のシートモールディングコンパウンド用一体成形型加飾シートを、該加飾シートの接着層側がシートモールディングコンパウンドと接するように重ね合わせて加圧熱成形させて得た加飾成形品。

【公開番号】特開2009−143047(P2009−143047A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320706(P2007−320706)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】