説明

シート・フィルム成形ロールおよびクラウニング制御方法および金属製弾性外筒およびシート・フィルム成形装置

【課題】ロール表面の温度管理を難しくすることなく、シート・フィルム成形ロールのクラウニングの可変付与を安定して行えるようにすること。
【解決手段】内筒部材20の筒内を圧力室28とし、圧力室28に非圧縮性流体を導入してその圧力に応じて内筒部材20をクラウニング変形させ、これに倣って金属製弾性外筒50をクラウニング変形させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シート・フィルム成形ロールおよびクラウニング制御方法に関し、特に、薄膜シートの成形に適したタッチロールおよびクラウニング制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シート・フィルム成形法として、Tダイより溶融樹脂を、対をなす主ロールと従ロール(タッチロール)間に供給し、シート・フィルムを連続的に成形するタッチロール方式のものが知られている。
【0003】
この種のシート・フィルム成形において、比較的厚いシートの成形では、外周面が軸線方向にフラットなタッチロールが用いられ、ロール押付力が大きくなっても、タッチロールは全幅に亘って溶融樹脂表面に接触した状態が維持され、表面性がよいシート成形を行える。
【0004】
しかし、薄物のフィルム成形では、ロール押付力が大きくなると、タッチロールが弓状にベンディングし、軸線方向中央部におけるロール間隙が軸端領域のロール間隙に比して大きくなり、このことに応じてタッチロールの軸線方向中央部の押付圧が弱まる。このため、タッチロールの軸線方向中央部において、タッチ抜けが生じ、成形品の表面性が損なわれる。
【0005】
このことに対して、タッチロールを、外筒と内筒の二重構造にし、外筒を金属製の薄肉構造としてロール外形にクラウニングを付与したものがある(例えば、特許文献1)。
【0006】
しかし、実際のシート・フィルム成形においては、成形するフィルムの厚さ、樹脂の種類等により、最適なロール押付力が変化し、この結果、最適なクラウニング量も変化してしまう。このため、ロール外形に一定のクラウニングを付与したものでは、汎用性に欠けるタッチロールになる。
【0007】
このことに対し、タッチロールの外周面を薄肉金属外筒によって構成し、薄肉金属外筒の筒内に供給する熱媒(冷却水)の圧力を調整することにより、その圧力に応じたクラウニングを薄肉金属外筒に可変付与するものがある(例えば、特許文献2、3)。
【0008】
ラバーロールによって薄肉金属外筒の内圧支持を行うラバーロール内接タイプのものでは、薄肉金属外筒が主ロールに対する押付荷重によって主ロールの外周面に倣って弾性変形する具合がよく、特許文献1、2に示されているタッチロールのように、外筒を金属製の薄肉構造にしただけのものより、薄いシート・フィルムの成形が可能になる。
【特許文献1】特開2002−36332号公報
【特許文献2】特許第3422798号公報
【特許文献3】特開2000−506795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献2、3に示されているようなタッチロールでは、薄肉金属外筒の筒内を循環する熱媒の圧力を調整するため、圧力変動が生じ易く、クラウニング付与量が安定しない。また、薄肉金属外筒の筒内を循環させる熱媒の圧力を、せいぜい、450〜600kPa程度に止めないと、シール耐圧が不足して漏れが生じたりする。
また、薄肉金属外筒の筒内を二重構造にして薄肉金属外筒の内周面側に圧力室を作り、この圧力室に供給する圧力を調整してクラウニング量を可変設定することができるが、この場合には、薄肉金属外筒に対する熱媒の熱伝達が圧力室によって妨げられ、ロール表面の温度管理が難しくなる。
【0010】
この発明が解決しようとする課題は、ロール表面の温度管理を難しくすることなく、シート・フィルム成形ロールのクラウニングの可変付与を安定して行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明によるシート・フィルム成形ロールは、両端に軸部を有し、当該両軸部間に弾性筒体を有し、前記軸部をもって軸受部より回転可能に支持される内筒部材と、前記内筒部材の外径より大きい内径を有し、筒内に前記内筒部材を収容し、前記内筒部材に対して偏心配置されることにより内周面が前記内筒部材の外周面に接触する薄肉構造の金属製弾性外筒とを有し、前記弾性筒体は、筒内に圧力室を構成する密閉容器構造になっており、前記圧力室に非圧縮性流体を導入する非圧縮性流体導入通路を形成されている。
【0012】
この発明によるシート・フィルム成形ロールは、両端に軸部を有し、当該両軸部間に弾性体製の弾性筒体を有し、前記軸部をもって軸受部より回転可能に支持される内筒部材と、前記内筒部材の両端の前記軸部の各々に回転可能に装着された偏心側板と、前記偏心側板によって回転可能に支持され、前記内筒部材の外径より大きい内径を有し、筒内に前記内筒部材を収容し、内周面が前記内筒部材の外周面に接触する薄肉構造の円筒状の金属製弾性外筒とを有し、前記弾性筒体は、筒内に密閉構造の圧力室を構成する密閉容器構造になっており、前記圧力室に非圧縮性流体を導入する非圧縮性流体導入通路を形成されている。
【0013】
この発明によるシート・フィルム成形ロールは、好ましくは、前記金属製弾性外筒の筒内に熱媒を循環させる熱媒循環通路が前記非圧縮性流体導入通路とは別に形成されている。
【0014】
この発明によるシート・フィルム成形ロールは、好ましくは、前記弾性筒体は、金属製円筒部材と、当該金属製円筒部材の外周面に装着されたゴム状弾性体製のラバーロールとにより構成され、前記ラバーロールの外周面をもって前記金属製弾性外筒の内周面に接触している。
【0015】
この発明によるシート・フィルム成形ロールは、好ましくは、前記内筒部材の回転を前記金属製弾性外筒に伝達する歯車機構を有する。
【0016】
この発明によるシート・フィルム成形ロールは、好ましくは、前記内筒部材の前記軸部が電動機と駆動連結され、前記内筒部材が前記電動機によって回転駆動される。
【0017】
この発明によるシート・フィルム成形ロールは、好ましくは、前記偏心側板を回り止めする回り止め部を有し、当該回り止め部は前記偏心側板の周方向の回り止め位置を可変設定できる構造になっている。
【0018】
この発明によるシート・フィルム成形ロールのクラウニング制御方法は、上述の発明によるシート・フィルム成形ロールを用い、前記圧力室に導入する非圧縮性流体の圧力を、シート・フィルム成形時における当該ロールの押付力設定値に応じて制御し、押付力設定値に応じたシート・フィルムを行う。
【発明の効果】
【0019】
この発明によるシート・フィルム成形ロールは、弾性筒体は筒内に形成された密閉構造の圧力室に非圧縮性流体を導入する構造になっており、当該圧力室に供給する非圧縮性流体の圧力を調整することにより、その圧力(弾性筒体の内圧)に応じて弾性筒体がクラウニング変形し、これに倣って金属製弾性外筒がクラウニング変形する。
これにより、金属製弾性外筒の筒内に熱媒を循環させることとは別に、ロール表面の温度管理を難しくすることなく、シート・フィルム成形ロールのクラウニングの可変付与が圧力変動等の外乱を受けることなく安定して行われるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
まず、この発明によるシート・フィルム成形ロールを用いるシート・フィルム成形法の概要を、図5を参照して説明する。このシート・フィルム成形法は、Tダイ100より溶融樹脂Mを、対をなす主ロール101と従ロール(タッチロール)102間に供給し、シート・フィルムFを連続的に成形する。この発明によるシート・フィルム成形ロールは、従ロール(タッチロール)102に適用される。
【0021】
この発明によるシート・フィルム成形ロールの一つの実施形態を、図1〜図4を参照して説明する。
【0022】
シート・フィルム成形ロール10は、内筒部材20と、金属製弾性外筒50とを有する。
【0023】
内筒部材20は、操作側(図1、図2にて右側)の軸部材21と、駆動側(図1、図2にて左側)の軸部材22と、軸部材21、22の各々の先端に一体形成されたフランジ部23、24に固定装着された弾性筒体25とにより構成されている。軸部材21と22とは同心配置であり、弾性筒体25は、相対向する左右のフランジ部23、24間にあって両端部をフランジ部23、24に固定連結され、軸部材21、22と同心になっている。
【0024】
弾性筒体25は、両端部をフランジ部23、24に溶接された金属製円筒部材26と、金属製円筒部材26の外周面に装着されたラバーロール27とにより構成されている。ラバーロール27は、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム等のゴム状弾性材により構成され、金属製円筒部材26の外周面全体に貼り合わせ装着されている。
【0025】
弾性筒体25の金属製円筒部材26の内側(筒内)は両端をフランジ部23、24によって閉じられた密閉構造の圧力室28になっている。つまり、弾性筒体25は、金属製円筒部材26と、軸部材21、22のフランジ部23、24とによって、金属製円筒部材26の筒内に密閉構造の圧力室28を構成する密閉容器構造になっている。
【0026】
金属製円筒部材26、ラバーロール27は、両端部をフランジ部23、24によって拘束されているから、圧力室28に導入される油圧の圧力値に応じて太鼓形に弾性変形し、内筒部材20に圧力室28の内圧に応じたクラウニングが可変付与される。
【0027】
軸部材21には圧力室28に非圧縮性流体を導入する非圧縮性流体導入通路29を形成されている。非圧縮性流体導入通路29は、一方にて圧力室28に、他方にて軸部材21の軸端中心に開口し、軸部材21の軸端に接続されたロータリジョイント36によって外部配管37と連通接続され、外部配管37より非圧縮性流体である油圧を供給される。
【0028】
外部配管37には、一定油圧を発生する油圧源38よりの油圧が圧力制御弁39によって圧力制御されて供給される。
【0029】
圧力制御弁39は、ステッピングモータ等による電動式のものであり、クラウニング制御装置40が出力するパルス指令によって制御され、外部配管37に供給する油圧の圧力値を定量的に制御する。
【0030】
クラウニング制御装置40は、コンピュータ等による電子制御式のものであり、タッチロール押付力設定値、成形するシート・フィルムの厚さに関する情報、その他、成形するシート・フィルムの樹脂の種類に関する情報等を入力し、これらに基づいて最適クラウニング量が得られる制御目標の油圧値を演算し、制御目標の油圧値と外部配管37に接続された圧力センサ41によって計測された外部配管37の油圧値との制御偏差がゼロになるパルス指令を圧力制御弁39に出力する。
【0031】
これにより、外部配管37の油圧が、圧力制御弁39によってフィードバック制御式に制御目標油圧値に制御され、これに応じて圧力室28の圧力が制御目標油圧値に等しい圧力になる。
【0032】
内筒部材20は、軸部材(軸部)21、22をもって操作側軸受部90、駆動側軸受部91より各々回転可能に支持され、自身の中心軸線周りに回転可能になっている。つまり、操作側軸受部90、駆動側軸受部91は、内筒部材20の両端の軸部材21、22を軸受部材92、93によって回転自在に支持している。
【0033】
駆動側の軸部材22は、ベルト式の動力伝達機構31によって電動機(電動モータ)30と駆動連結されている。これにより、内筒部材20は、電動機30と駆動連結され、電動機30によって回転駆動される。なお、電動機30は、減速機付きのものであってもよく、軸部材22と電動機30との間に減速機構が組み込まれていてもよい。
【0034】
内筒部材20の軸部材21、22は、各々、ころがり軸受51、52によって円盤状の偏心側板53、54を回転可能に支持している。偏心側板53、54の中心Cbは、内筒部材20の中心Caに対して偏心量e(図4参照)をもって偏心している。
【0035】
金属製弾性外筒50は、ステンレス鋼等の金属薄板製の円筒体で、可撓性を有する薄肉構造になっており、両端部にリング状のエンド部材81、82を一体的に取り付けられている。エンド部材81、82の各々の内側にはリング状の歯車取付部材83、84がを一体的に取り付けられている。
【0036】
偏心側板53、54は、外周面部において、各々、ころがり軸受55、56によって歯車取付部材83、84を回転可能に支持している。これにより、金属製弾性外筒50は、両端部を、エンド部材81、82、歯車取付部材83、84を介してころがり軸受55、56によって偏心側板53、54より回転可能に支持されている。
【0037】
金属製弾性外筒50は、内筒部材20のラバーロール27の外径Raより十分に大きい内径Rb(図3参照)を有し、筒内68にラバーロール27を収容し、ラバーロール27に対する偏心により、偏心接近側(図3で見て右側)で、内周面50Aがラバーロール27の外周面27Aに接触している。
【0038】
なお、無負荷状態では、ラバーロール27の外周面27Aと金属製弾性外筒50の内周面50Aとが接触せず、ラバーロール27の外周面27Aと金属製弾性外筒50の内周面50Aとの間に間隙があり、主ロール101との対接によって金属製弾性外筒50が弾性変形することにより、ラバーロール27の外周面27Aと金属製弾性外筒50の内周面50Aとが接触するようになってもよい。このことにより、ラバーロール27を装着された内筒部材20と金属製弾性外筒50との組み付けが容易になる。
【0039】
内筒部材20の軸部材21、22の外周部には、各々、内歯車(ピニオン)32、33が固定装着されている。金属製弾性外筒50と一体の歯車取付部材83、84には、各々、金属製弾性外筒50と同心にリング状の外歯車34、35が固定装着されている。内歯車32、33と外歯車34、35は、各々、偏心接近側(図3で見て右側)で、互いに噛合している。この噛合により、軸部材21、22の回転、つまり、内筒部材20の回転が金属製弾性外筒50に伝達される。
【0040】
なお、内歯車の32、33、外歯車34、35は、筒内68でなく、筒外に設けられていてもよい。
【0041】
内歯車の32、33の歯数をZa、外歯車34、35の歯数をZb、ラバーロール27の外径をRa、金属製弾性外筒50の内径をRbとすると、Za=Zb(Rb/Ra)の歯数設定により、ラバーロール27の外周面の周速度と金属製弾性外筒50の内周面の周速度とが同一になり、ラバーロール27の外周面と金属製弾性外筒50の内周面との間で、すべりを生じることなく、金属製弾性外筒50が強制的に回転駆動される。
【0042】
偏心側板53、54は、各々、回り止め部57、58によって操作側軸受部26、駆動側軸受部27と連結され、回り止めされている。この回り止めにより、偏心側板53、54の内筒部材20、ラバーロール27に対する偏心方向が決まる。この偏心方向は、図3に示されているように、シート・フィルム成形ロール(タッチロール)10が主ロール101と対向する側が、偏心接近側(図3で見て右側)になるように設定されている。つまり、内筒部材20の中心Caが偏心側板53、54の中心Cbより主ロール101の側に位置するように、偏心方向を設定されている(図4参照)。
【0043】
これにより、ラバーロール27は、金属製弾性外筒50が主ロール101に押し付けらける側(図3で見て右側)において、金属製弾性外筒50の内周面50Aに接触している。
【0044】
回り止め部57、58は、図4に示されているように、偏心側板53、54に固定装着された突起片59と、操作側軸受部26、駆動側軸受部27に固定装着された取付片60、61にねじ係合した調整ねじ62、63とにより構成され、調整ねじ62、63が突起片59を両側から挟むことにより、偏心側板53、54が回転できないようにしている。
【0045】
更に、調整ねじ62、63のねじ込み量の調整により、突起片59の挟み込み位置を偏心側板53、54の周方向(時計廻り方向、半時計廻り方向)に変更可能になっている。これにより、偏心側板53、54の周方向の回り止め位置を可変設定できる。このことにより、金属製弾性外筒50の主ロール101に対する押付側の偏心量を増減調整することができる。
【0046】
内筒部材20の軸部材21、22と偏心側板53、54との間には、シール部材64、65が取り付けられ、偏心側板53、54と金属製弾性外筒50の歯車取付部材83、84との間には、シール部材66、67が取り付けられている。これにより、金属製弾性外筒50の筒内68が、内筒部材20の圧力室28とは別の液密構造になっている。
【0047】
操作側の軸部材21には中心孔69が形成されている。中心孔69には管70が挿入されており、管70の内側と外側に熱媒供給通路71と熱媒排出通路72とが形成されている。熱媒供給通路71と熱媒排出通路72は、軸部材21の軸端に装着される二重構造のロータリジョイント(図示省略)によって固定側の冷却水供給ニップル、冷却水排出ニップルに各々連通接続されている。
【0048】
熱媒供給通路71は、フランジ部23、24との間に掛け渡されて内筒部材20の中心部を軸線方向に横切って延在する管73の管内通路74、駆動側の軸部材22に形成されている熱媒供給孔75、76によって金属製弾性外筒50の筒内68の一端側(左端側)に連通している。熱媒排出路72は、軸部材21に形成されている熱媒排出孔路77によって金属製弾性外筒50の筒内68の他端側(右端側)に連通している。これらが、非圧縮性流体導入通路29とは別に金属製弾性外筒50の筒内68に熱媒を循環させる熱媒循環通路をなす。
【0049】
冷却水(熱媒)は、図示されていない冷却水供給ニップルより、ロータリジョイント、熱媒供給通路路71、管内通路74、熱媒供給孔75を通って熱媒供給孔76より金属製弾性外筒50の筒内68の一端側に供給される。これにより、金属製弾性外筒50の筒内68は冷却水によって満たされる。筒内68の冷却水は、筒内68を一端側より他端側へ流れ、熱媒排出孔路77より熱媒排出路72に入り、図示されていないロータリジョイント、冷却水排出ニップルへ流れて外部に排出される。
【0050】
上述の構成によるシート・フィルム成形ロール10は、電動機30によって内筒部材20が操作側軸受部26、駆動側軸受部27より軸受支持された状態で、自身の中心軸線周り(中心Caを回転中心とした回転)に回転駆動される。
【0051】
この内筒部材20の回転は、内歯車32、33と外歯車34、35の噛合によって金属製弾性外筒50に伝達され、金属製弾性外筒50が、偏心側板53、54より回転自在に支持され、ラバーロール27が内接した状態で、自身の中心軸線周りに回転する。
【0052】
この金属製弾性外筒50の回転駆動は、歯車式の強制駆動であるから、金属製弾性外筒50は、内筒部材20の回転に確実に同期して回転し、金属製弾性外筒50とラバーロール27との間で、すべりを生じることがない。
【0053】
シート・フィルム成形ロール10は、ラバーロール27によって金属製弾性外筒50の内圧支持を内側から行うラバーロール内接タイプのものであるから、金属製弾性外筒50が主ロール101に対する押付荷重によって主ロール101の外周面に倣って弾性変形する具合がよく、外筒を金属製の薄肉構造にしただけのものより、薄いシート・フィルムの成形が可能になる。
【0054】
その上で、シート・フィルム成形ロール10は、従来のシート・フィルム成形ロールと同様に、駆動側軸受部27より支持される軸部材22に電動機30を駆動連結するだけで、従来と同様の駆動機構によって回転駆動でき、駆動系構造を複雑にすることがなく、一般的な既存のシート・フィルム成形装置に、そのまま使用することができる。
【0055】
また、回り止め部57、58の調整ねじ62、63によって偏心量を調整することができるから、ラバーロール27の摩耗を補償する調整を簡便に行うことができ、ラバーロール27の摩耗によって内圧支持の押付圧分布に狂いが生じても、それを解消する調整を使用中でも行うことができる。
【0056】
内筒部材20、金属製弾性外筒50が回転してシート・フィルムの成形が行われている状態下で、シート・フィルム成形ロール10クラウニング制御装置40よりのパルス指令によって、圧力制御弁39が外部配管37に出力する油圧の圧力値がタッチロール押付力設定値、成形するシート・フィルムの厚さ、成形するシート・フィルムの樹脂の種類に応じて最適クラウニング量が得られる油圧値に制御され、この油圧値の油圧が内筒部材20の圧力室28に導入される。
【0057】
これにより、その油圧値(弾性筒体25の内圧)に応じて弾性筒体25がクラウニング変形(弾性変形)し、これに倣って金属製弾性外筒50がクラウニング変形(弾性変形)する。
【0058】
これにより、金属製弾性外筒50の筒内68に熱媒を循環させることとは別に、ロール表面の温度管理を難しくすることなく、シート・フィルム成形ロール10に、最適クラウニング量によるクラウニングが付与される。
【0059】
圧力室28に供給する油圧の圧力値は、金属製弾性外筒50の筒内68を循環させる熱媒の圧力とは異なり、10MPa以上の高圧に設定可能であり、高圧設定でも、シール部材64、65、66、67の耐圧性能に影響を与えることがない。圧力室28の油圧は圧力室28内を循環させるものではないから、安定した圧力状態が得られ、このことにより、クラウニングの可変付与が安定して行われるようになる。
【0060】
なお、圧力室28に供給する油圧だけではクラウニング量が不足する場合には、内筒部材20の弾性筒体25が、初期形状として、最小限のクラウニングを与えられた太鼓形状に形成されていてもよい。
【0061】
この発明によるシート・フィルム成形ロールにおいて、金属製弾性外筒50を回転駆動するための歯車の32、33、外歯車34、35は、必須ではなく、内筒部材20のラバーロール27と金属製弾性外筒50との接触部の摩擦により、内筒部材20、ラバーロール27の回転が金属製弾性外筒50に十分に伝達される場合には、歯車の32、33、外歯車34、35は省略できる。また、歯車の32、33、外歯車34、35による強制駆動の場合には、内筒部材20のラバーロール27は必須でなく、さほど薄くないシート・フィルムの成形等では、弾性筒体25は弾性変形可能な金属製筒体だけで構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明によるシート・フィルム成形ロールを組み込まれたシート・フィルム成形装置の一つの実施形態を示す断面図である。
【図2】この発明によるシート・フィルム成形ロールの一つの実施形態の要部を拡大して示す断面図である。
【図3】図1の線A−A拡大断面図である。
【図4】図1の線B−B拡大断面図である。
【図5】この発明によるシート・フィルム成形ロールを用いるシート・フィルム成形法の概要を示す説明図である。
【符号の説明】
【0063】
10 シート・フィルム成形ロール
20 内筒部材
21、22 軸部材(軸部)
23、24 フランジ部
25 弾性筒体
26 金属製円筒部材
27 ラバーロール
27A 外周面
28 圧力室
29 非圧縮性流体導入通路
30 電動機
31 動力伝達機構
32、33 内歯車
34、35 外歯車
36 ロータリジョイント
37 外部配管
38 油圧源
39 圧力制御弁
40 クラウニング制御装置
41 圧力力センサ
50 金属製弾性外筒
50A 内周面
51、52 ころがり軸受
53、54 偏心側板
55、56 ころがり軸受
57、58 回り止め部
59 突起片
60、61 取付片
62、63 調整ねじ
64、65、66、67 シール部材
68 筒内
69 中心孔
70 管
71 熱媒供給通路
72 熱媒排出路
73 管
74 管内通路
75、76 熱媒供給孔
77 熱媒排出孔
81、82 エンド部材
83、84 歯車取付部材
90 操作側軸受部
91 駆動側軸受部
92、93 軸受部材
101 主ロール
102 従ロール(タッチロール)
103 Tダイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に軸部を有し、当該両軸部間に弾性筒体を有し、前記軸部をもって軸受部より回転可能に支持される内筒部材と、
前記内筒部材の外径より大きい内径を有し、筒内に前記内筒部材を収容し、前記内筒部材に対して偏心配置されることにより内周面が前記内筒部材の外周面に接触する薄肉構造の金属製弾性外筒とを有し、
前記弾性筒体は、筒内に密閉構造の圧力室を構成する密閉容器構造になっており、前記圧力室に非圧縮性流体を導入する非圧縮性流体導入通路を形成されているシート・フィルム成形ロール。
【請求項2】
両端に軸部を有し、当該両軸部間に弾性体製の弾性筒体を有し、前記軸部をもって軸受部より回転可能に支持される内筒部材と、
前記内筒部材の両端の前記軸部の各々に回転可能に装着された偏心側板と、
前記偏心側板によって回転可能に支持され、前記内筒部材の外径より大きい内径を有し、筒内に前記内筒部材を収容し、内周面が前記内筒部材の外周面に接触する薄肉構造の円筒状の金属製弾性外筒とを有し、
前記弾性筒体は、筒内に圧力室を構成する密閉容器構造になっており、前記圧力室に非圧縮性流体を導入する非圧縮性流体導入通路を形成されているシート・フィルム成形ロール。
【請求項3】
前記金属製弾性外筒の筒内に熱媒を循環させる熱媒循環通路が前記非圧縮性流体導入通路とは別に形成されている請求項1または2に記載のシート・フィルム成形ロール。
【請求項4】
前記弾性筒体は、金属製円筒部材と、当該金属製円筒部材の外周面に装着されたゴム状弾性体製のラバーロールとにより構成され、前記ラバーロールの外周面をもって前記金属製弾性外筒の内周面に接触している請求項1〜3の何れか一項に記載のシート・フィルム成形ロール。
【請求項5】
前記内筒部材の回転を前記金属製弾性外筒に伝達する歯車機構を有する請求項1〜4の何れか一項に記載のシート・フィルム成形ロール。
【請求項6】
前記内筒部材の前記軸部が電動機と駆動連結され、前記内筒部材が前記電動機によって回転駆動される請求項1〜5の何れか一項に記載のシート・フィルム成形ロール。
【請求項7】
前記偏心側板を回り止めする回り止め部を有し、当該回り止め部は前記偏心側板の周方向の回り止め位置を可変設定できる構造になっている請求項2〜6の何れか一項に記載のシート・フィルム成形ロール。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載のシート・フィルム成形ロールを用い、前記圧力室に導入する非圧縮性流体の圧力を、シート・フィルム成形時における当該ロールの押付力設定値に応じて制御し、押付力設定値に応じたクラウニングを行うシート・フィルム成形ロールのクラウニング制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−175972(P2007−175972A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376029(P2005−376029)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】