説明

シート体支持装置、シート体加工装置、シート体支持方法およびシート体加工方法

【課題】シート体における皺の発生を防止しつつシート体を支持する。
【解決手段】連続的に移動する長尺のシート体100を吸着ローラ31の外周面31bに形成された吸気孔41からの吸気によって吸着して支持可能に構成され、吸着ローラ31の外周面31bに向けて気体を吹き付ける吹き付け部34を備え、吸着ローラ31には、吸着ローラ31の中心軸31aに対して平行な直線に沿って複数の吸気孔41が配列されて構成された複数の吸気部31cが外周面31bの周方向に沿って配列されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺のシート体を支持するシート体支持装置、そのシート体支持装置を備えたシート体加工装置、長尺のシート体を支持するシート体支持方法、およびそのシート体支持方法によって支持しているシート体に対して処理を行ってシート体を加工するシート体加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のシート体加工装置として、特開2003−71375号公報において出願人が開示した剥離フィルムの製造装置が知られている。この製造装置は、塗布液供給装置、乾燥・硬化炉、加熱処理炉、ガイドローラおよびニップロールなどを備え、剥離フィルムを製造可能に構成されている。この製造装置では、原料ロールから繰り出されたベースフィルムがガイドローラを介して塗布液供給装置に供給され、この塗布液供給装置において、ベースフィルムに対して硬化型シリコーン樹脂の塗布液が塗布される。次いで、塗布液が塗布されたベースフィルムは、ガイドローラを介して乾燥・硬化炉に導入され、この乾燥・硬化炉において、塗布液の乾燥・硬化が行われる。続いて、乾燥・硬化炉における乾燥・硬化が終了したベースフィルムは、加熱処理炉に導入され、この加熱処理炉において、ベースフィルムに対する加熱処理が行われて残留歪みが除去される。次いで、加熱処理が終了したベースフィルムは、ニップロールによって搬送張力の変更が行われ、ロールとして巻き取られる。
【0003】
一方、乾燥・硬化炉や加熱処理炉においてベースフィルムに対する処理が行われる際の温度変化に伴うベースフィルムの伸縮を阻害させないためには、ベースフィルムに対してなるべく張力を加えず、かつ弛みがない状態でベースフィルムを支持するのが好ましい。この場合、張力の変化に応じて上下動するローラを備えた緩衝機構を乾燥・硬化炉や加熱処理炉の上流側に配設する構成および方法が考えられる。しかしながら、この種の緩衝機構では、ベースフィルムの両面にローラが接触するため、塗布液が乾燥していない箇所、つまり乾燥・硬化炉の上流側においては使用することができない。このため、このような箇所においては、表面に形成された吸気口からの空気の吸引によってベースフィルムを吸着して支持するバキュームロール(サクションロール)をガイドローラとして用いて、低い張力に維持した状態でベースフィルムを支持する構成および方法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−71375号公報(第3−4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記した剥離フィルムの製造装置を含む従来の製造装置には、解決すべき以下の課題がある。すなわち、従来の製造装置では、バキュームロールを用いてベースフィルムを支持している。一方、ベースフィルムは、樹脂材料を延伸させる延伸処理などによって作製される。この場合、延伸処理によって作製されたフィルムは、延伸処理の実行時に生じた内部応力が残留していることがある。このため、剥離フィルムの製造に先立って(製造装置にセットする以前に)ベースフィルムを所定幅に切断した際に、残留した内部応力(残留応力)に起因して、幅方向における一方の縁部が他方の縁部よりも伸びた状態に変形する(「片伸び」が生じる)ことがある。このような状態のベースフィルムを低い張力を維持したまま従来のバキュームロールによって吸着したときには、伸びが生じている縁部側が重なり合った状態でバキュームロールに吸着され、その重なり合った部分が皺となって残り、これによって品質が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる解決すべき課題に鑑みてなされたものであり、シート体における皺の発生を防止しつつシート体を支持し得るシート体支持装置、シート体加工装置、シート体支持方法およびシート体加工方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく本発明に係るシート体支持装置は、連続的に移動する長尺のシート体を吸着ローラの外周面に形成された吸気孔からの吸気によって吸着して支持するシート体支持装置であって、前記吸着ローラの前記外周面に向けて気体を吹き付ける吹き付け部を備え、前記吸着ローラには、当該吸着ローラの中心軸に対して平行な直線に沿って複数の前記吸気孔が配列されて構成された複数の吸気部が前記外周面の周方向に沿って配列されている。
【0008】
また、本発明に係るシート体支持装置は、前記吹き付け部を複数備え、当該各吹き付け部は、前記吸着ローラの長さ方向に沿って配列されている。
【0009】
また、本発明に係るシート体支持装置は、前記吹き付け部は、前記気体の吹き付け量を調整可能に構成されている。
【0010】
また、本発明に係るシート体加工装置は、上記のシート体支持装置を備え、当該シート体支持装置によって支持されている前記シート体に対して加熱を伴う処理を実行して当該シート体を加工する。
【0011】
また、本発明に係るシート体支持方法は、連続的に移動する長尺のシート体を吸着ローラの外周面に形成された吸気孔からの吸気によって吸着して支持する際に、前記吸着ローラの前記外周面に向けて気体を吹き付けつつ、中心軸に対して平行な直線に沿って複数の前記吸気孔が配列されて構成された複数の吸気部が前記外周面の周方向に沿って配列された前記吸着ローラを用いて前記シート体を支持する。
【0012】
また、本発明に係るシート体加工方法は、上記のシート体支持方法によって支持している前記シート体に対して加熱を伴う処理を実行して当該シート体を加工する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るシート体支持装置およびシート体支持方法では、連続的に移動する長尺のシート体を吸着ローラの外周面に形成された吸気孔からの吸気によって吸着して支持する際に、吸着ローラの外周面に向けて気体を吹き付けつつ、複数の吸気部が外周面の周方向に沿って配列された吸着ローラを用いてシート体を支持する。このため、このシート体支持装置およびシート体支持方法では、シート体の幅方向におけるいずれかの部位に伸びが発生しているときには、その伸びの発生部位を、気体の吹き付けによって吸着ローラにおける吸気部(吸気孔)が形成されていない非形成部位において吸着ロールの外周面から確実に離反させて弛みを生じさせることができる。したがって、このシート体支持装置およびシート体支持方法によれば、伸びの発生部位の重なり合いを防止することができるため、重なり合った状態でのシート体の吸着を確実に回避することができる結果、シート体における皺の発生を確実に防止することができる。
【0014】
また、本発明に係るシート体支持装置によれば、吸着ローラの長さ方向に沿って配列された複数の吹き付け部を備えたことにより、吸着ローラの外周面における長さ方向の全ての位置に気体を吹き付けることができる。したがって、このシート体支持装置によれば、シート体の幅方向におけるどの位置に伸びが発生していたとしても、吸着ローラにおける吸気部(吸気孔)が形成されていない非形成部位において吸着ロールの外周面から伸びの発生部位をより確実に離反させることができるため、シート体における皺の発生をより確実に防止することができる。
【0015】
また、本発明に係るシート体支持装置によれば、気体の吹き付け量を調整可能に吹き付け部を構成したことにより、シート体に発生している伸びの程度(大きさ)に応じて、吹き付け部からの気体の吹き付け量を適正な量に調整することができる。したがって、このシート体支持装置によれば、吸着ローラにおける吸気部(吸気孔)が形成されていない非形成部位において吸着ロールの外周面から伸びの発生部位をさらに確実に離反させることができるため、シート体における皺の発生をさらに確実に防止することができる。
【0016】
また、本発明に係るシート体加工装置およびシート体加工方法によれば、上記のシート体支持装置を用いて上記のシート体支持方法によって支持しているシート体に対して加熱を伴う処理を実行してシート体を加工することにより、上記のシート体支持装置および上記のシート体支持方法が有する効果と同様の効果を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】シート体加工装置1の構成を示す構成図である。
【図2】シート体100およびハードコート層101の構成を示す断面図である。
【図3】シート体100の平面図である。
【図4】シート体支持装置6の構成を示す斜視図である。
【図5】シート体支持装置6の構成を示す正面図である。
【図6】シート体支持装置6の構成を示す側面図である。
【図7】シート体支持装置6の動作を説明する説明図である。
【図8】吸着ローラ131の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、シート体支持装置、シート体加工装置、シート体支持方法およびシート体加工方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0019】
最初に、シート体加工装置1の構成について説明する。図1に示すシート体加工装置1は、長尺の帯状に形成されたシート体100に対して各種の処理(後述する塗布処理、乾燥処理およびアニール処理)を行ってシート体100を加工する装置であって、移動装置2、塗布装置3、乾燥装置4、アニール装置5およびシート体支持装置6を備えて構成されている。
【0020】
移動装置2は、送り出し機構(アンワインダー)11、ニップローラ12、複数のガイドローラ13および巻き取り機構(ワインダー)14を備えて構成されている。送り出し機構11は、巻芯に巻回されたシート体100を送り出し、ニップローラ12は、シート体100を挟み込んだ状態で回転してシート体100を連続的に移動させる。ガイドローラ13は、移動経路に沿ってシート体100をガイドし、巻き取り機構14は、処理が終了したシート体100を巻き取る。
【0021】
塗布装置3は、一例として、図1に示すように、支持ローラ21,21およびバー塗布部22を備えて、シート体100の表面(図1におけるバー塗布部22に対向する面であって、図2における表面100a)にバーコート法で塗布液を塗布する塗布処理を行う。この場合、このシート体加工装置1では、一例として、アクリル樹脂を主成分とする塗布液が塗布される。
【0022】
乾燥装置4は、塗布装置3によって表面100aに塗液が塗布されたシート体100を乾燥させる乾燥処理(加熱を伴う処理)を行う。この乾燥処理が行われることにより、上記した塗布処理によって塗布されたアクリル樹脂を主成分とする塗布液が固化して、図2に示すように、シート体100の表面100aにハードコート層101が形成される。
【0023】
アニール装置5は、乾燥処理が終了したシート体100に対してアニール処理(加熱を伴う処理)を行う。このアニール処理は、シート体100に残留している歪みを除去する処理であって、シート体100を加熱した後に徐冷することによって行われる。
【0024】
シート体支持装置6は、図1に示すように、シート体100の移動経路における乾燥装置4の上流側に配置されて移動状態の(連続的に移動する)シート体100を支持可能に構成されている。具体的には、シート体支持装置6は、図1および図4〜図6に示すように、吸着ローラ31、基台32、軸受け33,33、複数(例えば、6つ)の吹き付け部34、吸気ポンプ35およびコンプレッサ36を備えて構成されている。
【0025】
吸着ローラ31は、一例として、金属で形成され、図4〜図6に示すように、全体として円柱状(円筒状)に構成されている。また、吸着ローラ31は、基台32に立設された軸受け33,33によって回転可能に支持されている。また、吸着ローラ31は、図4,5に示すように、中心軸31aに対して平行な直線に沿って配列(例えば、等間隔に配列)された複数の吸気孔41で構成された吸気部31cを複数有している。この場合、各吸気部31cは、吸着ローラ31の外周面31bの周方向に沿って配列(例えば、等間隔に配列)されている。各吸気部31cをこのように配列したことにより、この吸着ローラ31は、周方向に隣接する吸気部31cの配列同士の間に吸気孔41が形成されていない帯状(吸着ローラ31の長さ方向に長い帯状)の非形成部位31dが設けられて、各吸気部31cと各非形成部位31dとが交互に配列される構成となっている。また、吸気部31cを構成する各吸気孔41は、吸着ローラ31内の内部空間(図示せず)に連通しており、吸気ポンプ35によって内部空間が減圧されるのに伴って吸気を行い、これによってシート体100を吸着する。
【0026】
各吹き付け部34は、図4〜図7に示すように、吸着ローラ31の長さ方向(シート体100の幅方向)に沿って配列(例えば、等間隔に配列)された状態で、軸受け33,33に架け渡された支持部材33aから下方向に突出するように配設されている。この吹き付け部34は、コンプレッサ36によって送り込まれる空気(気体)を、先端部に取り付けられているノズル34aから吹き出して吸着ローラ31の外周面31bに向けて吹き付ける。この場合、このシート体支持装置6では、吹き付け部34は、吸着ローラ31に対してシート体100の移動経路における上流側に配置され、上流側から吸着ローラ31の外周面31bに向けて空気を吹き付ける。また、図4に示すように、各吹き付け部34には、配管34bを介して流量調整弁34cがそれぞれ接続されて、流量調整弁34cを操作することによってノズル34aからの空気の吹き出し量(外周面31bに対する空気の吹き付け量)を調整することが可能となっている。なお、図5〜図7では、配管34bおよび流量調整弁34cの図示を省略している。
【0027】
吸気ポンプ35は、図外の配管を介して吸着ローラ31の内部空間の空気を吸引することによって内部空間を減圧する。コンプレッサ36は、配管34bを介して各吹き付け部34に空気(気体)を送り込む。この構成により、このシート体支持装置6では、図3に示すように、例えば、シート体100の幅方向におけるいずれかの部位(同図の例では、端部100b側)に伸びが発生しているときに、伸びの発生部位を外周面31bにおける非形成部位31d(吸気孔41が形成されていない部位)において吸着ローラ31の外周面31bから離反させて、伸びの発生部位の重なり合いを回避しつつシート体100を支持することが可能となっている(図7参照)。
【0028】
次に、シート体加工装置1によってシート体100を加工するシート体加工方法、および、その際のシート体加工装置1の動作について、図面を参照して説明する。
【0029】
このシート体加工装置1を用いてシート体100を加工する際には、図1に示すように、巻芯に巻回されているシート体100を移動装置2の送り出し機構11にセットする。次いで、送り出し機構11から引き出したシート体100の先端部を、塗布装置3、移動装置2のガイドローラ13、シート体支持装置6、乾燥装置4、アニール装置5、および移動装置2のニップローラ12に通す。続いて、シート体100の先端部を移動装置2の巻き取り機構14に取り付けた巻芯に巻き付ける。
【0030】
次いで、シート体加工装置1を構成する各装置を始動させる。この際に、移動装置2の送り出し機構11、ニップローラ12および巻き取り機構14が、各々について予め決められた速度で回転し、これによってシート体100の移動が開始される。
【0031】
また、塗布装置3が塗布処理を開始する。具体的には、塗布装置3は、支持ローラ21,21によって支持されているシート体100の表面100aに対してバー塗布部22の先端からアクリル樹脂を主成分とする塗布液を供給する。これにより、シート体100の表面100aに塗液が塗布される。続いて、表面100aに塗液が塗布されたシート体100が、ガイドローラ13に案内されてシート体支持装置6に移動する。
【0032】
一方、シート体支持装置6では、吸気ポンプ35が、図外の配管を介して吸着ローラ31の内部空間の空気を吸引することによって内部空間を減圧する。また、内部空間に連通している各吸気部31cを構成する各吸気孔41が吸気を行う。また、コンプレッサ36が、配管34bを介して各吹き付け部34に空気に送り込む。また、送り込まれた空気が、吹き付け部34の先端部のノズル34aから吹き出されて吸着ローラ31の外周面31bに向けて吹き付けられる。
【0033】
ここで、例えば、吹き付け部34を備えていない従来のシート体支持装置を用いて、図3に示すように、幅方向における2つの端部100b,100cのうちの端部100b側に伸びが発生しているシート体100を吸着して支持したときには、伸びが発生している端部100b側が重なり合った状態で外周面31bに吸着されて、その重なり合った部分が皺となるおそれがある。これに対して、このシート体支持装置6およびシート体支持方法では、図4〜図6に示すように、中心軸31aに対して平行な直線に沿って形成された複数の吸気孔41で構成された複数の吸気部31cが外周面31bの周方向に沿って配列されて、隣接する吸気部31c同士の間に吸気孔41が形成されていない非形成部位31dが設けられた吸着ローラ31を用いると共に、吸着ローラ31の外周面31bに向けて吹き付け部34から空気を吹き付ける。このため、このシート体支持装置6では、シート体100の端部100b側に伸びが発生しているときには、図7に示すように、その端部100b側が非形成部位31dにおいて吸着ローラ31の外周面31bから離反して弛みが生じ、この結果、重なり合った状態での吸着が回避されて、皺の発生が防止される。
【0034】
また、このシート体支持装置6では、吹き付け部34が吸着ローラ31の外周面31bに向けて空気を吹き付けるため、シート体100における伸びの発生部位を吸着ローラ31における非形成部位31dにおいて吸着ローラ31の外周面31bから確実に離反させて弛みを生じさせることが可能となっている。また、吸着ローラ31の長さ方向(シート体100の幅方向)に沿って複数の吹き付け部34を配列し、各吹き付け部34からの空気の吹き付け量を個別に調整することが可能となっているため、伸びが発生している位置に応じて各吹き付け部34における吹き付け量を調整することで、どの位置に伸びが発生していたとしても、その部位を非形成部位31dにおいて吸着ローラ31の外周面31bから確実に離反させることが可能となっている。
【0035】
続いて、シート体支持装置6によって支持されているシート体100が乾燥装置4の内部を移動する。この場合、乾燥装置4の内部は、50℃〜100℃程度の温度に維持されており、シート体100が乾燥装置4の内部を移動する間に、シート体100の表面100aに塗布された塗液が乾燥し(乾燥処理が行われ)、これにより、図2に示すように、シート体100の表面100aにハードコート層101が形成される。
【0036】
次いで、表面100aにハードコート層101が形成されたシート体100が、アニール装置5の内部に移動する。この場合、アニール装置5の内部は、80℃〜150℃程度の温度に維持されている。このため、シート体100は、アニール装置5の内部を移動する間にその温度が徐々に上昇する。次いで、シート体100は、アニール装置5を通過してアニール装置5の外部を移動する間に徐冷される。このような加熱および徐冷(アニール処理)が行われることにより、シート体100に応力が残留しているときには、その応力が除去(低減)される。
【0037】
この場合、シート体100に加わる張力が低い状態でシート体支持装置6によってシート体100が支持されているため、温度変化に伴うシート体100の伸縮が阻害されることなく上記の乾燥処理およびアニール処理が行われる。以上により、シート体100に対する各処理(塗布処理、乾燥処理およびアニール処理)が終了する。
【0038】
続いて、各処理が終了したシート体100は、巻き取り機構14によって順次巻き取られる。この場合、ニップローラ12の回転速度と巻き取り機構14の回転速度とを調整することにより、ニップローラ12と巻き取り機構14との間においてシート体100に対して予め決められた張力を加える。これにより、端部100b側に生じている伸びが矯正されつつ、巻き取り機構14によってシート体100が巻き取られる。
【0039】
このように、このシート体支持装置6、シート体加工装置1、シート体支持方法およびシート体加工方法では、連続的に移動する長尺のシート体100を吸着ローラ31の外周面31bに形成された吸気孔41からの吸気によって吸着して支持する際に、吸着ローラ31の外周面31bに向けて空気を吹き付けつつ、中心軸31aに対して平行な直線に沿って複数の吸気孔41が配列されて構成された複数の吸気部31cが外周面31bの周方向に沿って配列された吸着ローラ31を用いてシート体100を支持する。このため、このシート体支持装置6、シート体加工装置1、シート体支持方法およびシート体加工方法では、シート体100の幅方向におけるいずれかの部位に伸びが発生しているときには、その伸びの発生部位を、空気の吹き付けによって吸着ローラ31における非形成部位31dにおいて吸着ローラ31の外周面31bから確実に離反させて弛みを生じさせることができる。したがって、このシート体支持装置6、シート体加工装置1、シート体支持方法およびシート体加工方法によれば、伸びの発生部位の重なり合いを防止することができるため、重なり合った状態でのシート体100の吸着を確実に回避することができる結果、シート体100における皺の発生を確実に防止することができる。
【0040】
また、このシート体支持装置6、シート体加工装置1、シート体支持方法およびシート体加工方法によれば、吸着ローラ31の長さ方向(シート体100の幅方向)に沿って配列した複数の吹き付け部34が吸着ローラ31の外周面31bに向けて空気を吹き付けることにより、吸着ローラ31の外周面31bにおける長さ方向の全ての位置に空気を吹き付けることができる。したがって、このシート体支持装置6、シート体加工装置1、シート体支持方法およびシート体加工方法によれば、シート体100の幅方向におけるどの位置に伸びが発生していたとしても、吸着ローラ31における非形成部位31dにおいて吸着ローラ31の外周面31bから伸びの発生部位をより確実に離反させることができるため、シート体100における皺の発生をより確実に防止することができる。
【0041】
また、このシート体支持装置6、シート体加工装置1、シート体支持方法およびシート体加工方法によれば、空気の吹き付け量を調整可能に吹き付け部34を構成したことにより、シート体100に発生している伸びの程度(大きさ)に応じて、吹き付け部34からの空気の吹き付け量を適正な量に調整することができる。したがって、このシート体支持装置6、シート体加工装置1、シート体支持方法およびシート体加工方法によれば、吸着ローラ31における非形成部位31dにおいて吸着ローラ31の外周面31bから伸びの発生部位をさらに確実に離反させることができるため、シート体100における皺の発生をさらに確実に防止することができる。
【0042】
なお、上記したシート体支持装置6、シート体加工装置1、シート体支持方法およびシート体加工方法は、一例であって、適宜変更することができる。例えば、上記した吸着ローラ31に代えて、図8に示す吸着ローラ131を備えた構成、およびこの吸着ローラ131を用いてシート体100を支持する方法を採用することができる。なお、吸着ローラ31を構成する構成要素と同じ構成要素については、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。この吸着ローラ131は、例えば、同図に示すように、金属によって全体として円柱状(円筒状)に構成されている。また、吸着ローラ131は、同図に示すように、長さ方向に沿って一方の端部側から他方の端部側まで貫通するようにして形成された気体流路31eを備え、上記した吸気部31cを構成する各吸気孔41がこの気体流路31eに連通している。
【0043】
また、吸着ローラ31,131を金属で形成した例について上記したが、樹脂などの金属以外の材料で形成することもできる。また、気体としての空気を吸着ローラ31の外周面31bに吹き付ける例について上記したが、窒素ガスや二酸化炭素などの空気以外の他の気体を吹き付ける構成および方法を採用することもできる。
【0044】
また、シート体100の移動経路における乾燥装置4の上流側にシート体支持装置6を配置する構成および方法について上記したが、移動経路におけるアニール装置5(加熱を伴う処理を行う装置)の下流側にシート体支持装置6を配置する構成および方法を採用することもできる。また、6つの吹き付け部34を用いる構成および方法について上記したが、吹き付け部34の数は、1つでもよいし、6つ以外の任意の複数でもよい。
【0045】
また、シート体100の表面100aにハードコート層101を形成する構成および方法に適用した例について説明したが、シート体100の表面100aにITO膜を形成する構成および方法や、シート体100に誘電体や電極を積層する加工を行ってチップコンデンサを製造するための素材を作製する構成および方法に適用することもできる。
【符号の説明】
【0046】
1 シート体加工装置
4 乾燥装置
5 アニール装置
6 シート体支持装置
31 吸着ローラ
31a 中心軸
31b 外周面
31c 吸気部
31d 非形成部位
34 吹き付け部
34c 流量調整弁
41 吸気孔
100b 端部
100 シート体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に移動する長尺のシート体を吸着ローラの外周面に形成された吸気孔からの吸気によって吸着して支持するシート体支持装置であって、
前記吸着ローラの前記外周面に向けて気体を吹き付ける吹き付け部を備え、
前記吸着ローラには、当該吸着ローラの中心軸に対して平行な直線に沿って複数の前記吸気孔が配列されて構成された複数の吸気部が前記外周面の周方向に沿って配列されているシート体支持装置。
【請求項2】
前記吹き付け部を複数備え、当該各吹き付け部は、前記吸着ローラの長さ方向に沿って配列されている請求項1記載のシート体支持装置。
【請求項3】
前記吹き付け部は、前記気体の吹き付け量を調整可能に構成されている請求項1または2記載のシート体支持装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のシート体支持装置を備え、当該シート体支持装置によって支持されている前記シート体に対して加熱を伴う処理を実行して当該シート体を加工するシート体加工装置。
【請求項5】
連続的に移動する長尺のシート体を吸着ローラの外周面に形成された吸気孔からの吸気によって吸着して支持する際に、
前記吸着ローラの前記外周面に向けて気体を吹き付けつつ、中心軸に対して平行な直線に沿って複数の前記吸気孔が配列されて構成された複数の吸気部が前記外周面の周方向に沿って配列された前記吸着ローラを用いて前記シート体を支持するシート体支持方法。
【請求項6】
請求項5記載のシート体支持方法によって支持している前記シート体に対して加熱を伴う処理を実行して当該シート体を加工するシート体加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−210997(P2012−210997A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77290(P2011−77290)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】