説明

シート収納装置および収納状態検出方法

【課題】小切手処理装置の小切手収納部が満杯になったか否かを的確に検出できるようにすること。
【解決手段】小切手処理装置1の小切手収納部10は第1および第2収納ポケット13,14を備えている。各収納ポケット13,14には、それらに送り込まれた小切手を積層状態で整列保持するための前側垂直押さえ板54,64と後側垂直押さえ板55,65が配置されている。前側垂直押さえ板54,64は各収納ポケット13,14に収納されている小切手の総厚に対応して押し出される。これらに形成した被検出片81,91と、これら被検出片を検出するためのホトセンサ82,92とを備えた検出機構80,90を用いて、各収納ポケット13,14に収納された小切手の総厚を検出でき、これに基づき、満杯か否かを的確に判断できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小切手処理装置などの媒体処理装置に搭載されるシート状媒体を収納するためのシート収納装置に関し、特に、シート収納装置におけるシート状媒体の収納状態を検出する収納状態検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状媒体を処理するための媒体処理装置としては小切手類を処理するための小切手処理装置が知られている。特許文献1、2にはかかる小切手処理装置が開示されている。これらの特許文献に開示されているように、小切手処理装置は、小切手類を挿入する供給部と、イメージスキャナおよび磁気ヘッドが配置された搬送路と、これらによって画像および磁気インク文字が読み取られた後に搬送路から排出される小切手類を一時保管する小切手収納部(シート収納装置)を備えている。
【0003】
小切手収納部は、長さおよび幅の異なる小切手類を収納できるようにするために、一般に上方および後方が開口している一定幅の長方形の溝からなるポケットからなり、搬送路から排出された小切手類がポケットの溝内においてその幅方向に順次重なった状態で収納される。
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0257626号公報
【特許文献2】特開2004−206362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、小切手収納部が満杯状態になったにも拘らず、継続して小切手を送り込むと、送り込まれた小切手がジャミング状態に陥るおそれがある。ジャミング状態に陥った小切手を小切手収納部から取り出す作業は、小切手が破損しないように慎重に行う必要があり、時間を要する。このような弊害の発生を回避するために、小切手収納部が満杯になったか否かは、例えば、小切手収納部に送り込まれる小切手の枚数に基づき検出することが考えられる。
【0005】
しかしながら、小切手の厚さは標準のものでは0.13mmであるが、市場には厚さの異なる各種の小切手が出回っており、それらの厚さは0.09mm〜0.2mmと多様である。また、小切手には折り目の付いたものなどが混在している。したがって、厚い小切手、折れ曲がった小切手が送り込まれると、少ない枚数でも小切手収納部が満杯になってしまうので、小切手収納部に送り込まれる小切手の枚数に基づき、小切手収納部が満杯になったか否かを検出することができない。
【0006】
このため、小切手処理装置では、その小切手収納部の収納状態を検出するための検出機構が一般的に備わっておらず、オペレータが目視により小切手収納部の収納状態を確認しているのが現状である。
【0007】
オペレータは一般に小切手収納部が満杯になる直前の状態まで待って小切手の取り出しを行う。このため、連続して小切手が送り込まれる場合などにおいては、送り込みの途中で小切手収納部が満杯となり、その後に連続して送り込まれる複数枚の小切手が小切手収納部の入り口近傍でジャミングしてしまうおそれがある。先に述べたように、ジャミング状態に陥ると、小切手収納部から小切手を取り除く作業に時間が掛かるので、小切手読取業務の効率が低下してしまう。また、場合によっては小切手に破れなどの損傷が生じてしまう。
【0008】
本発明の課題は、この点に鑑みて、満杯になったか否か等の収納状態を的確に検出可能なシート収納装置および収納状態検出方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
次に、本発明のシート収納装置は、
シート状媒体を収納するための所定深さの溝からなる収納ポケットと、
この収納ポケットの前端側から送り込まれた前記シート状媒体を、当該収納ポケットの一方の第1側面の側に押さえる媒体押さえ部材と、
この媒体押さえ部材の前記収納ポケットにおける幅方向への移動量を検出する検出手段とを有していることを特徴としている。
【0010】
収納ポケット内に送り込まれたシート状媒体を積層状態に保持するための媒体押さえ部材の移動量に基づき、収納ポケットに収納されたシート状媒体の総厚さを検出できる。総厚さが収納ポケットの幅寸法に近い値になれば、収納ポケットが満杯状態であることが分かる。また、収納ポケット内の一方の側の第1側面および媒体押さえ部材の間に送り込まれたシート状媒体が折れ曲がってジャミング状態に陥ると、これによって媒体押さえ部材が大きく押し出された状態になる。したがって、媒体押さえ部材が大きく移動した場合にはジャミングが発生したと判断できる。また、総厚さが収納ポケットの幅寸法に近い値から、小切手がほぼ無い値になれば、オペレータが小切手の取り出しを行ったことがわかる。
【0011】
ここで、前記媒体押さえ部材として、前記収納ポケットの他方の側の第2側面から前記第1側面に向けて前記収納ポケットの後方に所定の傾斜角度で延び、当該媒体押さえ部材と前記第1側面の間に送り込まれるシート状媒体によって前記第2側面の側に移動可能なものを用いることができる。この場合には、前記検出手段を、前記媒体押さえ部材に形成した被検出部と、当該被検出部の移動軌跡上に配置されている検出部とを備えたものとすることができる。
【0012】
また、前記被検出部を、前記媒体押さえ部材から前記第2側面に向かって突出している被検出片とした場合には、前記検出部を、前記第2側面に形成した前記被検出片を受け入れ可能な開口部の内部に配置しておくことができる。
【0013】
さらに、前記媒体押さえ部材として、前記収納ポケット内における前後に離れた位置に、前側媒体押さえ部材および後側媒体押さえ部材を配置しておくことができる。例えば、長さの異なるシート状媒体が収納ポケットに送り込まれる場合には、短いシート状媒体は前側媒体押さえ部材のみで第1側面に押し付けて積層状態に整列保持できる。また、長いシート状媒体の場合には、前側媒体押さえ部材および後側媒体押さえ部材によってシート用媒体の前後を第1側面に押し付けることにより整列状態に保持できる。
【0014】
この場合には、前記検出手段によって、少なくとも前記前側媒体押さえ部材の移動量を検出すればよい。すなわち、短いシート状媒体は後側媒体押さえ部材に届かない場合があるので、前側媒体押さえ部材の移動位置を検出することにより、収納状態を的確に検出できる。
【0015】
また、この場合には、前記前側媒体押さえ部材による前記シート状媒体の押し付け力を、前記後側媒体押さえ部材による前記シート状媒体の押し付け力よりも弱くしておくことが望ましい。押し付け力を弱くしておくと、送り込まれたシート状媒体がジャミング状態に陥った場合等において前側媒体押さえ部材が簡単に移動するので、ジャミングの発生を迅速に検出できる。
【0016】
なお、前記検出手段としては光学式検出手段を用いることができる。
【0017】
次に、本発明のシート収納装置の収納状態検出方法は、
所定深さの溝からなる収納ポケットに、その前方からシート状媒体を、当該収納ポケットの一方の側面と、当該側面に押し付けられている媒体押さえ部材との間に送り込むことにより、当該側面から幅方向に積層した状態にさせ、
前記側面から離れる方向に移動する前記媒体押さえ部材の位置に基づき、前記収納ポケットにおけるシート状媒体の収納状態を検出することを特徴としている。
【0018】
ここで、検出対象の前記収納状態としては、前記収納ポケットが前記シート状媒体で満杯になった状態、前記収納ポケット内において前記シート状媒体のジャミングが発生した状態を挙げることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、収納ポケットに送り込まれたシート状媒体をその側面に押し付けて積層状態に整列保持するための媒体押さえ部材に着目し、この移動位置を検出するようにしている。媒体押さえ部材の移動位置から収納ポケットに収納されたシート状媒体の総厚を判別できるので、収納ポケットが満杯になったことや、収納ポケットでジャミングが発生したことを的確に検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した小切手処理装置の実施の形態を説明する。
【0021】
(全体構成)
図1(a)および(b)は本実施の形態に係る小切手処理装置を示す斜視図および平面図である。小切手処理装置1は、装置本体側の本体ケース2と、本体ケース2の先端部に取り付けた垂直軸3を中心として左右に開閉可能な開閉カバー4、5とを備えている。本体ケース2と開閉カバー4、5の間には、小切手6を搬送するための小切手搬送路7が形成されている。小切手搬送路7は、上から見た場合に略U字状に湾曲して延びている細幅の垂直溝によって規定されている。小切手搬送路7の小切手搬送方向の上流端は、細幅の垂直溝からなる小切手送り出し通路8を介して広幅の垂直溝からなる小切手供給部9に繋がっている。小切手搬送路7の下流端は小切手収納部10に繋がっている。小切手収納部10は、小切手搬送路7の下流端に繋がっている細幅の垂直溝からなる第1および第2分岐通路11、12と、これらの下流端に繋がっている第1収納ポケット13および第2収納ポケット14とを備えている。
【0022】
小切手6は、図1に示すように、その表面6aの下端部分に、その長辺方向に磁気インク文字列6Aが印刷されている。また、表面6aには、所定の模様の背景に、金額、振出人、番号、サインなどが記載されており、裏面6bには裏書き欄などが設けられている。小切手6は、上下方向を揃え、表面6aがU形状の小切手搬送路7の外側を向くように、小切手供給部9に挿入される。
【0023】
小切手搬送路7には、図1(b)において点線で示すように、小切手6の表面画像を読み取るための表面側コンタクトイメージスキャナ21、その裏面画像を読み取るための裏面側コンタクトイメージスキャナ22、その磁気インク文字を読み取るための磁気ヘッド23、その表面に「電子決済済み」などの印刷を行う印刷機構24がこの順序に配置されている。小切手供給部9から小切手送り出し通路8を介して送り出された小切手6は、小切手搬送路7に沿って搬送されながら、その表面画像および裏面画像が読み取られ、しかる後に、その表面6aに印刷されている磁気インク文字列6Aが読み取られる。これらの情報が正常に読み取られた小切手6は、「電子決済済み」などの印刷が行われた後に、第1収納ポケット13に振り分けられて、そこに収納される。読取不能、読取異常などが発生した小切手6については、そのような印刷が行われることなく、第2ポケット14に振り分けられて、そこに収納されるようになっている。
【0024】
(小切手収納部)
図2は小切手収納部10の主要部分を示す概略平面構成図である。小切手収納部10は、第1、第2分岐通路11、12と、前後方向(小切手送り込み方向)に延びる仕切り壁15を挟み、隣接配置された第1および第2収納ポケット13、14を有している。これら第1および第2収納ポケット13、14は、全体として前後方向に長い長方形をした所定深さの垂直溝からなり、第1収納ポケット13は溝幅が第2収納ポケット14の溝幅よりも広く、小切手収納枚数が多い。各収納ポケット13、14の前端には、小切手6を各収納ポケット13、14内に送り込むためのローラ対25、26が配置されている。
【0025】
第1収納ポケット13に向けて小切手6を送り込むための第1分岐通路11は、小切手搬送路7の下流側の端部7aに直線状に繋がっている前後方向に延びる通路であり、この第1分岐通路11の下流端はローラ対25のニップ部に繋がっている。第2収納ポケット14に向けて小切手6を送り込むための第2分岐通路12は、小切手搬送路7の端部7aから前後方向に対して鋭角に分岐した後ほぼ直線状に延びている傾斜通路であり、この第2分岐通路12の下流端がローラ対26のニップ部に繋がっている。
【0026】
これらの第1および第2分岐通路11、12の分岐位置には、小切手6を振り分けるための切換レバー16が配置されている。切換レバー16は通常は第2分岐通路12を封鎖した状態に保持されており、読取不能、読取異常などが発生した小切手6については、必要に応じて第1分岐通路11を封鎖し、第2分岐通路12を小切手搬送路7に連通させた切換状態に、不図示のモータにより切り換わる。
【0027】
次に、第1収納ポケット13は、前端面31、平行に延びている左右の側面32、33、後端面34および底面35を備えている。第2収納ポケット14の側の側面33の前端側部分は、当該第1収納ポケット13の前端面31に向かうに連れて第2収納ポケット14の側に広がっている傾斜ガイド面36となっている。この傾斜ガイド面36によって広幅となっている前端部分における第2収納ポケット側の隅の部分にローラ対25が配置されている。
【0028】
第2収納ポケット14も同様に、前端面41、左右の側面42、43、後端面44および底面45を備えており、後端面44は第1収納ポケット13の後端面34に連続している面である。第1収納ポケット13とは反対側の側面43の前端側部分は、当該第2ポケット14の前端面41に向けて他方の側面42から離れる方向に傾斜している傾斜ガイド面46となっている。この傾斜ガイド面46によって広幅となっている前端部分の隅にローラ対26が配置されている。
【0029】
第1収納ポケット13のローラ対25は、送り込みローラ51と、ここに横方から押し付けられている押さえローラ52とを備えている。第1収納ポケット13の内部には、ローラ対25の隣接位置に、送り込まれた小切手5を送り込みローラ51の側に向けてガイドするための小切手ガイド53が配置されている。小切手ガイド53によって小切手5は送り込みローラ51の外周面に押し付けられながら確実に第1収納ポケット13の内部に送り込まれる。
【0030】
第1収納ポケット13の内部には、送り込まれた小切手6を側板32に押し付けて積層状態に整列保持するための前側垂直押さえ板54および後側垂直押さえ板55が配置されている。短い長さの小切手6は前側垂直押さえ板54のみによって側面32に押し付けられる。後側垂直押さえ板55と側面32の間にまで届く長い小切手6は、双方の押さえ板54、55によって側面32に押し付けられるので、その送り込み方向の前側部分が上下、左右に乱されることなく整列状態に保持される。
【0031】
同様に、第2収納ポケット14のローラ対26も送り込みローラ61と、ここに横方から押し付けられている押さえローラ62とを備えている。第2収納ポケット14の内部には、ローラ対26の隣接位置に、送り込まれた小切手6を送り込みローラ61の側に向けてガイドするための小切手ガイド63が配置されている。小切手ガイド63によって小切手6は送り込みローラ61の外周面に押し付けられながら確実に第2収納ポケット14の内部に送り込まれる。
【0032】
第2収納ポケット14の内部にも、送り込まれた小切手6を側板42に押し付けて積層状態に整列保持するための前側垂直押さえ板64および後側垂直押さえ板65が配置されている。短い長さの小切手6は前側垂直押さえ板64のみによって側面42に押し付けられる。後側垂直押さえ板65と側面42の間にまで届く長い小切手6は、双方の押さえ板64、65によって側面42に押し付けられるので、その送り込み方向の前側部分が上下、左右に乱されることなく整列状態に保持される。
【0033】
次に、図3は、第1収納ポケット13の前側垂直押さえ板54を取り外した状態での小切手収納部10の主要部を示す分解斜視図であり、図4は小切手収納部10を反対側から見た場合のその主要部の斜視図である。
【0034】
これらの図から分かるように、前側垂直押さえ板54は長方形の板であり、その一方の側端部には軸受部54aが形成されている。この軸受部54aと仕切り壁15の間に、垂直支軸71が回転自在の状態で垂直に通されている。また、固定板72が取付ねじ73によって仕切り壁15の上面に固定されており、この固定板72によって前側垂直押さえ板54が垂直支軸71から抜け出ないように押えられている。さらに、垂直支軸71には同軸状でねじりコイルばね74が配置されており、このねじりコイルばね74によって、前側垂直押さえ板54は側面32に向けて所定のばね力で付勢されている。
【0035】
したがって、前側垂直押さえ板54は、側面33の側の垂直支軸71を中心として、他方の側面32から離れる方向に旋回可能であり、常時は、ねじりコイルばね74によって先端側の側端縁54bが側面32に押し付けられている。小切手6が送り込まれてくると、小切手6は前側垂直押さえ板54を押し出しながら、側面32と前側垂直押さえ板54の間に進入する。送り込み用のローラ対25のニップ部から外れた後の小切手6は、側面32に前側押さえ板54によって押し付けられて垂直に保持される。順次に送り込まれる小切手6は、側面32と前側押さえ板54の間において厚さ方向に重なった整列状態に保持される。
【0036】
後側垂直押さえ板55も同様な構造となっている。異なる点は、ねじりコイルばねによる付勢力を前側垂直押さえ板54よりも強くしてあることである。また、他方の第2収納ポケット14の前側垂直押さえ板64および後側垂直押さえ板65も、前側垂直押さえ板54および後側垂直押さえ板55と同様に構成されている。また、後側垂直押さえ板65による押し付け力よりも前側垂直押さえ板64の押し付け力を弱くしてある。
【0037】
(収納状態の検出機構)
ここで、小切手収納部10には、第1および第2収納ポケット13、14の収納状態を検出するための検出機構80、90が備わっている。図2〜4を参照して説明すると、第1収納ポケット13の側の検出機構80は光学式のものであり、前側垂直押さえ板54の裏面54cから側面33に向けて突出している僅かに円弧状をした被検出片81と、仕切り壁15の内部に配置されているホトセンサ82とを備えている。被検出片81は、前側垂直押さえ板54の旋回中心を規定している垂直支軸71を中心とする円弧形状の板であり、図4から分かるように、この被検出片81を受け入れ可能な矩形の開口部83が側面33に形成されている。
【0038】
ホトセンサ82は、図3から分かるように、回路基板84に搭載されており、回路基板84は取付ねじ85によって仕切り壁15に固定されている。この取付状態においては、開口部83の内部にホトセンサ82が位置している。被検出片81が開口部83に進入してホトセンサ82の検出領域に入ると、当該ホトセンサ82によって被検出片81が検出される。
【0039】
他方の第2収納ポケット14の検出機構90も同様に構成されており、前側垂直押さえ板64の裏面64cから側面43に向けて突出している被検出片91と、側面44が形成されている側壁部分17の内部に配置されているホトセンサ92とを備えている。
【0040】
(検出動作)
図5(a)は小切手収納部10の第1収納ポケット13が空の状態を示す説明図であり、図5(b)は第1収納ポケット13が満杯になった状態を示す説明図である。これらの図を参照して検出機構80の検出動作を説明する。
【0041】
図5(a)に示すように、空の状態では、前側垂直押さえ板54および後側垂直押さえ板55は側面32に押し付けられた状態にある。送り込まれた小切手6は、側面32と前側垂直押さえ板54の間に挟まれて積層整列状態に保持される。後側垂直押さえ部材55にも届く長い小切手6の場合には、双方の押さえ部材54、55と側面32の間に挟まれて積層整列状態に保持される。積層状態の小切手6、すなわち収納されている小切手6が増えると、それに伴って、前側垂直押さえ板54が垂直支軸71を中心として側面33の側に後退する。これに伴って、当該前側垂直押さえ板54に形成されている被検出片81も側面33の開口部83に向けて移動する。
【0042】
図5(b)に示すように、第1収納ポケット13が満杯状態では、前側垂直押さえ板54の被検出片81は、開口部83からホトセンサ82の検出領域に達する位置まで差し込まれた状態になる。この結果、ホトセンサ82から検出信号が出力される。この検出信号によって、第1収納ポケット13が満杯になったことが分かる。例えば、小切手処理装置1の表示部を点滅駆動するなどして、満杯になった旨をオペレータに知らせることができる。
【0043】
なお、他方の第2収納ポケット14の検出機構90も同様であるので、その検出動作の説明を省略する。
【0044】
以上説明したように、小切手処理装置1の小切手収納部10には、第1および第2収納ポケット13、14が満杯になったことを検出するための検出機構80、90が備わっている。検出機構80、90は、第1、2収納ポケット13、14内に送り込まれた小切手6を積層状態に保持するための前側垂直押さえ部材54、64に着目し、この移動位置に基づき、第1、2収納ポケット13、14に収納された小切手6の総厚を検出している。
【0045】
したがって、小切手6の厚さのばらつきに影響されることなく、的確に満杯状態を検出することができる。また、第1、2収納ポケット13、14内に送り込まれた小切手6が折れ曲がってジャミング状態に陥ると、これによっても前側垂直押さえ板54、64が大きく押し出され、被検出片81、91がホトセンサ82、92によって検出される。したがって、小切手6が各収納ポケット13、14内でジャミングした状態も速やかに検出できる。
【0046】
また、前側垂直押さえ板54、64に検出機構80、90を取り付けてあるので、後側垂直押さえ板55、65に検出機構を取り付ける場合よりも正確に満杯状態、ジャミング状態を検出できる。例えば、後側垂直押さえ板55、65に届かないような短い長さの小切手6が送り込まれると、後側垂直押さえ板55、65はそのような小切手の厚さを反映した移動位置にならない。このため、各収納ポケット13、14が満杯になっていることを検出できない可能性がある。同様に、各収納ポケット13、14の前側部分で小切手がジャミングしていることも検出できない可能性がある。本例によれば、このような弊害を回避できる。
【0047】
さらに、小切手を積層状態に整列保持するために必要な押し付け力は、前側垂直押さえ板54、64の方が後側垂直押さえ板55、65よりも小さくて済む。したがって、前側垂直押さえ板54、64の方が、ジャミングした小切手によって簡単に押し出されるので、ジャミングの検出感度が良いという利点もある。
【0048】
なお、本例では、前側垂直押さえ板にのみ検出機構を設けたが、前側および後側垂直押さえ板の双方に検出機構を設けることもできる。例えば、前側の垂直押さえ板のみが大きく移動し、後側の垂直押さえ板が移動しない場合には、ジャミングが発生したものと判断できる。
【0049】
また、検出機構は、光透過型、光反射型のいずれのものであってもよく、光学式以外の検出機構、例えばメカニカルスイッチを用いることも可能である。
【0050】
(その他の実施の形態)
なお、本発明は、小切手や手形、請求書などの小切手類以外のシート状媒体を処理するための媒体処理装置の収納装置として用いることができる。例えば、プリンタ、スキャナなどの媒体処理装置に搭載されるシート状媒体の収納装置として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明を適用した小切手処理装置の斜視図および平面図である。
【図2】図1の小切手処理装置の小切手収納部の概略構成図である。
【図3】前側垂直押さえ板を取り外した状態の小切手収納部を示す分解斜視図である。
【図4】図3とは反対側から見た場合の小切手収納部の斜視図である。
【図5】小切手収納部の検出機構の検出動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1 小切手処理装置、2 本体ケース、4,5 開閉カバー、6 小切手、7 小切手搬送路、8 小切手送り出し通路、9 小切手供給部、10 小切手収納部、11 第1分岐通路、12 第2分岐通路、13 第1収納ポケット、14 第2収納ポケット、15 仕切り壁、16 切換レバー、17 側壁、21 表面側コンタクトイメージスキャナ、22 裏面側コンタクトイメージスキャナ、23 磁気ヘッド、24 印刷機構、25,26 ローラ対、31 前端面、32,33 側面、34 後端面、35 底面、41 前端面、42,43 側面、44 後端面、45 底面、51,61 送り込みローラ、52,62 押さえローラ、53,64 小切手ガイド、54,64 前側垂直押さえ板、55,65 後側垂直押さえ板、71 垂直支軸、72 固定板、73 取付ねじ、74 ねじりコイルばね、80,90 検出機構、81,91 被検出片、82,92 ホトセンサ、83 開口部、84 回路基板、85 取付ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状媒体を収納するための所定深さの溝からなる収納ポケットと、
この収納ポケットの前端側から送り込まれた前記シート状媒体を、当該収納ポケットの一方の第1側面の側に押さえる媒体押さえ部材と、
この媒体押さえ部材の前記収納ポケットにおける幅方向への移動量を検出する検出手段とを有していることを特徴とするシート収納装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート収納装置において、
前記媒体押さえ部材は、前記収納ポケットの他方の側の第2側面から前記第1側面に向けて前記収納ポケットの後方に所定の傾斜角度で延びており、
当該媒体押さえ部材と前記第1側面の間に送り込まれるシート状媒体によって、当該媒体押さえ部材は前記第2側面の側に移動可能であり、
前記検出手段は、前記媒体押さえ部材に形成した被検出部と、当該被検出部の移動軌跡上に配置されている検出部とを備えていることを特徴とするシート収納装置。
【請求項3】
請求項2に記載のシート収納装置において、
前記被検出部は、前記媒体押さえ部材から前記第2側面に向かって突出している被検出片であり、
前記検出部は、前記第2側面に形成した前記被検出片を受け入れ可能な開口部の内部に配置されていることを特徴とするシート収納装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のシート収納装置において、
前記媒体押さえ部材として、前記収納ポケット内における前後に離れた位置に、前側媒体押さえ部材および後側媒体押さえ部材が配置されており、
前記検出手段は、少なくとも前記前側媒体押さえ部材の移動量を検出することを特徴とするシート収納装置。
【請求項5】
請求項4に記載のシート収納装置において、
前記前側媒体押さえ部材による前記シート状媒体の押し付け力は、前記後側媒体押さえ部材による前記シート状媒体の押し付け力よりも弱いことを特徴とするシート収納装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれかの項に記載のシート収納装置において、
前記検出手段は光学式検出手段であることを特徴とするシート収納装置。
【請求項7】
所定深さの溝からなる収納ポケットに、その前方からシート状媒体を、当該収納ポケットの一方の側面と、当該側面に押し付けられている媒体押さえ部材との間に送り込むことにより、当該側面から厚さ方向に積層した状態にさせ、
前記側面から離れる方向に移動する前記媒体押さえ部材の位置に基づき、前記収納ポケットにおけるシート状媒体の収納状態を検出することを特徴とするシート収納装置の収納状態検出方法。
【請求項8】
請求項7に記載のシート収納装置の収納状態検出方法において、
前記収納状態は、前記収納ポケットが前記シート状媒体で満杯になった状態であることを特徴とするシート収納装置の収納状態検出方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載のシート収納装置の収納状態検出方法において、
前記収納状態は、前記収納ポケット内において前記シート状媒体がジャミングした状態であることを特徴とするシート収納装置の収納状態検出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−29539(P2009−29539A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192989(P2007−192989)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】