説明

シート後端押さえ装置及び枚葉印刷機の給紙装置

【課題】シート後端押さえ装置及び枚葉印刷機の給紙装置に関し、枚葉印刷機の印刷装置に給紙されるシートがフィーダボード上のセンサ等の機器類と接触して傷付くことを防止することができるようにする。
【解決手段】シート後端押さえ部材61を、枚葉印刷機の給紙装置のフィーダボード11b上に移送されるシート1の軌道に接近して配置して、支持部材62,63によって弾性的に支持して装備することにより、移送されるシート1の後端部の浮き上がりを抑制するようにして、シート1がフィーダボード11b上のセンサ等の機器類44と接触して傷付くことを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枚葉印刷機における給紙装置の下流部に設備されるフィーダボード上に装備され、給紙装置から順次送り出されてくる枚葉状シートの後端部の跳ね上がりを抑制するシート後端押さえ装置及びこれを装備した枚葉印刷機の給紙装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
枚葉印刷機では、印刷装置部に枚葉紙を一枚ずつ供給するために、上流部に給紙装置(シート供給装置)が装備されている。図7,図8は従来の枚葉印刷機を示すもので、図7はその枚葉印刷機の概略構成図、図8はその給紙装置の側面図である。
図7に示すように、従来の枚葉印刷機は、主な構成要素として、フィーダボード11を有する給紙装置10,複数組の印刷装置21a〜21n(個々に区別しない場合は符号21で示す)からなる印刷装置部20,シート搬送部31とシート積重部32とを備えた排紙装置30などから構成されている。
【0003】
給紙装置10は、図8に示すように、被印刷物となるシート1を給紙テーブル10a上に積重させておき、印刷に伴う消費速度に対応して最上段側のシート1から1枚ずつ順次次工程へ供給する装置である。次のフィーダボード11は、上流側フィーダボード11aと下流側フィーダボード(レジスタボード)11bとからなり、給紙装置10の下流端と印刷装置部20最上流の第1印刷装置21aとの中間に設備されるもので、フィーダボード11aに沿って、シート1の進行方向に沿って走行する複数組のシート搬送ベルト12が配設されている。
【0004】
各シート搬送ベルト12は、駆動ローラ13と複数組のガイドローラ14とに巻回されたエンドレスのベルトであり、モータにより駆動ローラ13が回転することによって機械速度に対応した所定の速度で走行すべく構成されている。一部のシート搬送ベルト12には、ベルト面の全域にわたって複数個の孔が穿設され、吸引口が設けられたサクションボックス15の表面へ摺接して走行するよう配置され、真空吸着ベルトとして機能するように構成されている。また、フィーダボード11bの下流端に近接して、幅方向両側に図示省略した横針装置が設備されている。
【0005】
これにより、給紙装置10から送り出されたシート1は、フィーダボード11bの下流端に設置された前当9に当接し、シート1の前端停止位置と走行方向角度が揃えられた後、シート1はフィーダボード11bと第1印刷装置21aとの間に設備されたシート受け渡し装置2により第1中間胴22へ受け渡される。
シート受け渡し装置2には、スイングアーム7が備えられ、は、シート受け渡し装置2の駆動部に連結した図示省略の駆動手段を介し、図8中に二点鎖線で示す待機位置と実線で示す作動完了位置との間を、支点軸8を回転中心として往復揺動できるよう構成されている。シート1はスイングアーム7の先端のスイング爪5と爪座6とによって前端を把持されると同時に、前当9が二点鎖線で示した退避位置へ動き、さらに、スイングアーム7も支点軸8を中心に実線で示す作動完了位置へと揺動し始める。その後、シート1はスイングアーム7の揺動途上においてスイング爪5から、スイングアーム7と同期回転する第1中間胴22の第1中間胴爪(図示略)に受け渡される(図7参照)。
【0006】
その後は、第1中間胴22によって回転移送された後、第1印刷装置21aの第1圧胴24aに具備された爪(図示略)に把持されて走行し、シート1は第1印刷装置21aにおいて1色目の印刷が施される。スイングアーム7は、シート1を第1中間胴22に引き渡した後、実線で示す作動完了位置まで移動し、再度二点鎖線で示す待機位置に復帰して後続のシート1を把持するため待機する。
【0007】
続いて、シート1は、第1中間胴22の第1中間胴爪(図示略)を介して第1印刷装置21aの第1圧胴24aの第1圧胴爪(図示略)に受け渡された後、次の中間胴25へ送り込まれ、下流に位置する印刷装置21bの第2圧胴24bへと順次受け渡されて行く。印刷装置部20は、シート1へ所定の印刷を施すユニットであり、図示省略のインキ溜に供給されたインキは、図示省略のインキローラ群を順次転移する過程で適度に練られ、インキ被膜として版胴27に装着した刷版28へ転移供給されて、更に絵柄として下流のブランケット胴29外周面に転移される。その後、このインキが、ブランケット胴29と圧胴24との間を走行するシート1の表面へ転写されて、所定の印刷が完了する。
【0008】
なお、1組の印刷装置21においては一色のみの印刷しかできない。そこで、多色印刷を施す枚葉印刷機では、シート走行方向に沿ってインキ色の異なる複数組の印刷装置21a〜21nが並設された印刷装置部(印刷装置群)として構成し、各印刷装置21を順次通紙させることによって目的とする多色印刷を行うようになっている。
次に、上述のように印刷を終えたシート1は、最終印刷装置21nの圧胴24nから従動軸33で駆動されているエンドレスチェン(シート搬送部)31に具備された図示省略したチェングリッパにより排紙装置30まで搬送され、排紙装置30下方に設けたシート積重装置32のテーブル上に積重される。ここで、所定量積重されると外部へ搬出されることになる。
【0009】
ところで、枚葉印刷機においては、印刷に供するシート1は必ずしも平滑な形状とは限らず、例えば、前当9に当接するシート前端(咥え側)は波打ち,上反り,あるいはシートの端部がカールしたもの等変形したものがある。そこで、従来から、フィーダボード11の下流端にシート前端を押さえる紙押さえ装置が設備されており、給紙装置10から送り出されたシート1の変形状態を矯正し、シート1が前当9に接触した後、確実にシート受け渡し装置2へ引き渡すことができるようにしている。かかる技術については、特許文献1,2にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−225228号公報
【特許文献2】特開2003−146479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、枚葉印刷機の給紙装置では、シート1が1枚ずつ所定量のズレを有してシート受け渡し装置2に供給されなくてはならないが、ほとんどズレがない状態で重なって(一般には、2枚重なり)供給されることがある。このように、シート1が重なった状態でシート受け渡し装置2に供給されると、シートの受け渡しに支障をきたすだけでなく、シート受け渡し装置2近傍での紙詰まりの原因にもなり、また、印刷装置20まで支障なく供給されても、印刷装置20において紙詰まりや印刷不良の原因になる。
【0012】
そこで、シート1が複数枚重なってフィーダボード11bに進入したか否かを検出するセンサ(2枚検知センサ)が、フィーダボード11b付近に装備される。
このような2枚検知センサには、様々な方式のものがあり、例えば、シート1の表面に光を照射する光源と、この光照射によるシート1の表面からの反射光を受光して光電変換する方式の光電式二枚検知器(光電式二枚センサ)や、シート1に超音波を照射する音源と、音源に対してシート1を挟むように配置され、シート1を透過した超音波を受信して電気信号に変換する超音波式二枚検知器(超音波式二枚センサ)などがある。
【0013】
光電式二枚センサは、シート1の片面側のみに光源と受光部とを配置すればよいので、設置は容易であるが、反射光に基づいて厚みを検知してシート1が重なっているかを判別するので、印刷された絵柄によって反射光の光量が変化するとこれを厚みの変化と読み取ってしまうことがあり、絵柄のない部分にしか適用できない。ただし、絵柄のないシート1に対する検出精度は比較的高い。
【0014】
この点、超音波式二枚センサは、シート1を挟むように音源と超音波を受信部とを配置し、また、フィーダボード11bには超音波が通過しうる穴を穿設する必要があるが、超音波がシート1を通過する量は印刷された絵柄に左右されず、シート1の厚みのみに対応するので、絵柄のある部分にも支障なく適用でき、両面印刷の際の片面を印刷したシート1を給紙する場合にも適用することができる。
【0015】
ただし、超音波式二枚センサは、シート1の面に対して直角な方向に超音波を照射するよりも、シート1の面に対して斜めに傾斜した方向に超音波を照射した方が、シート1の表面からの反射音の影響がなく、安定して検知することができる。そこで、一般には、例えば図9に示すように、超音波式二枚センサを配置している。
つまり、図9に示すように、フィーダボード11bを構成する板金プレート111には、超音波が通過しうる穴41が穿設され、フィーダボード11bの下流端の上方に幅方向に延在して備えられた支持用バー42には、センサブラケット43aを介して超音波を発する音源部44aと、センサブラケット43bを介して超音波を受信する受信部44bと、が設置されており、音源部44aと受信部44bとにより超音波式二枚センサ44が構成されている。ここでは、音源部44aはフィーダボード11bの上方に配置され、受信部44bはフィーダボード11bの下方に配置されているが、逆であってもよい。
【0016】
音源部44aは、フィーダボード11bの面、つまり、フィーダボード11b上を走行するシート1の面に対して斜めに傾斜した方向に超音波を照射し、受信部44bはこれに応じて、シート1の面に対して斜めに傾斜した方向に受音部を向けている。もちろん、フィーダボード11bの超音波通過穴41は音源部44aと受信部44bとを結ぶ直線上に配置されている。これにより、シート1の表面からの反射音に影響されることなく、シート1の厚みを安定して検知することができ、予め入力されたシート1の厚みに基づいて、シート1が重なっているか否かを判別することができる。
【0017】
なお、図9に示す例では、フィーダボード11は、その幅方向中央を板金プレート111で構成され、幅方向中央を、幅方向に伸縮可能なパンタグラフ式プレート112で構成されている。また、支持用バー42には、前当9に当接するシートの前端(咥え側)を押さえる紙押さえ装置50が複数設備されている。
ところで、超音波式二枚センサ44の音源部44aや受信部44bは、可能な限りシート1に接近させた方が検出精度を向上させることができるが、この場合、シート1の上面側の音源部44a又は受信部44b(以下、これらを総称して「センサ」という)やこれを支持するセンサブラケット43a,43bが、フィーダボード11b上のシート1の軌道に接近することになるので、シート1の挙動によっては、センサ44a,44bやセンサブラケット43a,43bと接触してしまい、印刷物の商品性を損なってしまうことが判明した。
【0018】
つまり、シート1がスイングアーム7のスイング爪5に支持されて、スイングアーム7の揺動によって搬送される際に、シート1の後端部が浮き上がり易く、これによって、シート1の後端部がセンサ44a,44bやセンサブラケット43a,43bと接触して傷付いてしまうことが判明した。特に、シート1が厚みのある場合に、このような接触による傷付きが発生しやすいこともわかった。
【0019】
これは、シート1に厚みがあると、その剛性も高くなるため、シート1の後端部が浮き上がり易いだけでなく、センサ44a,44bやセンサブラケット43a,43bとの接触時にも、強く接触(つまり、衝突)してしまうためと考えられる。
特に、センサ44a,44bを傾斜して配置するため、センサブラケット43a,43bも傾斜し、センサブラケット43a,43bの角部がシート1により接近することになり、この点からも、接触によるシート1の傷付きが発生しやすいこともわかった。
【0020】
この対策として、印刷機の回転数を落として、跳ね上げ量を少なくして対応するか、ソフトクロス等の張物をセンサブラケット43a等に被覆して対応することが考えられるが、印刷機の回転数を落とせば当然ながら生産性が低下し、ソフトクロスのような張物は、消耗品のためすぐに磨耗する上、貼り付けつるために使用する両面テープの清掃等など、手間が掛かるといった課題が生じる。
【0021】
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、枚葉印刷機の印刷装置に給紙されるシートがフィーダボード上のセンサ等の機器類と接触して傷付くことを防止することができるようにした、シート後端押さえ装置及び枚葉印刷機の給紙装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目標を達成するため、本発明のシート後端押さえ装置は、枚葉印刷機の給紙装置のフィーダボード上に、移送される枚葉状のシートの軌道に接近して配置され、移送される前記シートの後端部の浮き上がりを抑制するシート後端押さえ部材と、前記シート後端押さえ部材を弾性的に支持する支持部材とを備えていることを特徴としている(請求項1)。
前記支持部材は、前記フィーダボード上の支持部に対して着脱可能な着脱構造を有していることが好ましい(請求項2)。
【0023】
また、前記支持部材は、前記フィーダボード上の支持部に、前記シートの移送される方向に位置調整可能とする位置調整機構を有していることが好ましい(請求項3)。
前記シート後端押さえ部材は、前記シートの移送方向に回転自在なコロであって、前記支持部材は、前記コロを前記シートの軌道に対して離接する方向に弾性支持することが好ましい(請求項4)。
【0024】
前記コロは、ゴム硬度30°以下の軟質ゴムにより形成されていることが好ましい(請求項5)。
また、前記シート後端押さえ部材は、前記フィーダボード上に、前記シートの軌道に接近するように突設された突設部材に隣接して配置されていることが好ましい(請求項6)。
【0025】
あるいは、前記シート後端押さえ部材は、前記突設部材を挟んで対を成して配置されていることが好ましい(請求項7)。
さらに、移送される前記シートの2枚検知を行う超音波センサが、その発信部及び受信部のうちの一方が前記フィーダボード上方の支持部にセンサブラケットを介して装備され他方が前記フィーダボード下方に装備されて備えられ、前記突設部材は、前記センサブラケットであることが好ましい(請求項8)。
【0026】
また、前記シート後端押さえ部材は、前記フィーダボードの下流端に装備される前当てに移送されるシートの前端が確実に当接するように、前記シートの先端を押さえるシート先端押さえ部材よりも、前記フィーダボードの上流側に配置されていることが好ましい(請求項9)。
この場合、前記シート後端押さえ部材の前記支持部材には、前記シート先端押さえ部材を弾性的に支持する支持部材が流用されていることが好ましい(請求項10)。
【0027】
また、本発明の枚葉印刷機の給紙装置は、請求項1〜10の何れか1項に記載のシート後端押さえ装置を有することを特徴としている(請求項11)。
【発明の効果】
【0028】
本発明のシート後端押さえ装置(請求項1)及びこれを備えた枚葉印刷機の給紙装置(請求項11)によれば、フィーダボード上を移送される枚葉状のシートの後端部が浮き上がろうとすると、シートの後端部に後端押さえ部材が弾性的に接触するので、シートの後端部を傷つけることなく、シートの後端部の浮き上がりが抑制され、シートの後端部の周辺機器との接触による傷付きを防止することができる。
【0029】
本発明のシート後端押さえ装置(請求項2)及びこれを備えた枚葉印刷機の給紙装置(請求項11)によれば、支持部材は着脱可能なので、不用な場合はシート後端押さえ装置を取り外すことができ、これにより、後端押さえ部材のシートへの不要な接触を回避することができる。
本発明のシート後端押さえ装置(請求項3)及びこれを備えた枚葉印刷機の給紙装置(請求項11)によれば、支持部材をシートの移送方向に位置調整して、後端押さえ部材をシートに応じた最適位置に設定することができ、シートの後端部の浮き上がりを適切に抑制することができる。
【0030】
本発明のシート後端押さえ装置(請求項4)及びこれを備えた枚葉印刷機の給紙装置(請求項11)によれば、シート後端押さえ部材としてのコロがシートの移送に応じて適宜回転しながらシートに接触し、シートの後端部の浮き上がりを抑制するので、シート後端押さえ部材がシートに接触することによるシートへの悪影響を回避することができる。
本発明のシート後端押さえ装置(請求項5)及びこれを備えた枚葉印刷機の給紙装置(請求項11)によれば、コロが軟質ゴムにより形成されるため、シート後端押さえ部材がシートに接触することによるシートへの悪影響を一層回避することができる。
【0031】
本発明のシート後端押さえ装置(請求項6,7)及びこれを備えた枚葉印刷機の給紙装置(請求項11)によれば、シートの突設部材への接触を確実に回避することができる。
本発明のシート後端押さえ装置(請求項8)及びこれを備えた枚葉印刷機の給紙装置(請求項11)によれば、シートのセンサブラケットへの接触を確実に回避することができる。
【0032】
本発明のシート後端押さえ装置(請求項10)及びこれを備えた枚葉印刷機の給紙装置(請求項11)によれば、装置コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は本発明の一実施形態にかかる枚葉印刷機の給紙装置の要部(シート後端押さえ部材を有するフィーダボード部分)の断面図である。
【図2】図2は本発明の一実施形態にかかる枚葉印刷機の給紙装置の要部(フィーダボード部分の下流端部)の上面図である。
【図3】図3は本発明の一実施形態にかかる枚葉印刷機の給紙装置の要部(フィーダボード部分の下流端部)の斜視図である。
【図4】図4は本発明の一実施形態にかかる枚葉印刷機の給紙装置の要部(シート後端押さえ部材を有するフィーダボード部分)を、フィーダボード部分を水平にして示す拡大断面図である。
【図5】図5は本発明の一実施形態にかかる枚葉印刷機の給紙装置の要部(第1のシート先端押さえ部材を有するフィーダボード部分)の断面図である。
【図6】図6は本発明の一実施形態にかかる枚葉印刷機の給紙装置の要部(第2のシート先端押さえ部材を有するフィーダボード部分)の断面図である。
【図7】一般的な枚葉印刷機を示す全体概略構成図である。
【図8】一般的な枚葉印刷機における給紙装置の側面図である。
【図9】本発明の課題を説明する枚葉印刷機の給紙装置の要部(フィーダボード部分の下流端部)の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面により、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
図1〜図6は本発明の一実施形態に係る枚葉印刷機の給紙装置を説明するものであり、これらの図、及び、背景技術の欄で説明した図7に基づいて説明する。
まず、本実施形態に係る枚葉印刷機全体を説明すると、図7に示すように、枚葉印刷機は、主な構成要素として、フィーダボード11を有する給紙装置10,複数組の印刷装置21a〜21n(個々に区別しない場合は符号21で示す)からなる印刷装置部20,シート搬送部31とシート積重部32とを備えた排紙装置30などから構成されている。給紙装置10は、被印刷物となる枚葉状のシート1を給紙テーブル10a上に積重させておき、印刷に伴う消費速度に対応して最上段側のシート1から1枚ずつ順次次工程へ供給する。
【0035】
この給紙装置10には、図1,図7に示すように、給紙装置10の下流端と印刷装置部20最上流の第1印刷装置21aとの中間に配置されてフィーダボード11が設備される。このフィーダボード11は、上流側フィーダボード11aと下流側フィーダボード(レジスタボード)11bとからなり、給紙装置10の下流端と印刷装置部20最上流の第1印刷装置21aとの中間に設備されるもので、フィーダボード11aに沿って、シート1の進行方向に沿って走行する複数組のシート搬送ベルト12が配設されている。
【0036】
各シート搬送ベルト12は、駆動ローラ(図示略)と複数組のガイドローラ14とに巻回されたエンドレスのベルトであり、モータにより駆動ローラが回転することによって機械速度に対応した所定の速度で走行すべく構成されている。一部のシート搬送ベルト12には、ベルト面の全域にわたって複数個の孔が穿設され、吸引口が設けられたサクションボックス(図示略)の表面へ摺接して走行するよう配置され、真空吸着ベルトとして機能するように構成されている。また、フィーダボード11bの下流端に近接して、幅方向両側に図示省略した横針装置が設備されている。
【0037】
これにより、給紙装置10から送り出されたシート1は、フィーダボード11bの下流端に設置された前当9に当接し、シート1の前端停止位置と走行方向角度が揃えられた後、シート1はフィーダボード11bと第1印刷装置21aとの間に設備されたシート受け渡し装置2により第1中間胴22へ受け渡される。
シート受け渡し装置2には、スイングアーム7が備えられ、は、シート受け渡し装置2の駆動部に連結した図示省略の駆動手段を介し、図1中に二点鎖線で示す待機位置と実線で示す作動完了位置との間を、支点軸8を回転中心として往復揺動できるよう構成されている。シート1はスイングアーム7の先端のスイング爪5と爪座6とによって前端を把持されると同時に、前当9が二点鎖線で示した退避位置へ動き、さらに、スイングアーム7も支点軸8を中心に実線で示す作動完了位置へと揺動し始める。その後、シート1はスイングアーム7の揺動と共に位相差され、スイングアーム7の揺動途上においてスイング爪5から、スイングアーム7と同期回転する第1中間胴22の第1中間胴爪(図示略)に受け渡される(図7参照)。
【0038】
シート1は、この移送時に、フィーダボード11bの下流端に幅方向に複数並んで装備されたガイドコロ9´に案内されて、フィーダボード11bの下流端に対して滑らかに摺動するが、このように、ガイドコロ9´に沿って引き込まれるため、シート1は、図1に二点鎖線で示すように、フィーダボード11bから浮くように反って引き込まれる。
その後は、第1中間胴22によって回転移送された後、第1印刷装置21aの第1圧胴24aに具備された爪(図示略)に把持されて走行し、シート1は第1印刷装置21aにおいて1色目の印刷が施される。スイングアーム7は、シート1を第1中間胴22に引き渡した後、実線で示す作動完了位置まで移動し、再度二点鎖線で示す待機位置に復帰して後続のシート1を把持するため待機する。
【0039】
続いて、シート1は、第1中間胴22の第1中間胴爪(図示略)を介して第1印刷装置21aの第1圧胴24aの第1圧胴爪(図示略)に受け渡された後、次の中間胴25へ送り込まれ、下流に位置する印刷装置21bの第2圧胴24bへと順次受け渡されて行く。印刷装置部20は、シート1へ所定の印刷を施すユニットであり、図示省略のインキ溜に供給されたインキは、図示省略のインキローラ群を順次転移する過程で適度に練られ、インキ被膜として版胴27に装着した刷版28へ転移供給されて、更に絵柄として下流のブランケット胴29外周面に転移される。その後、このインキが、ブランケット胴29と圧胴24との間を走行するシート1の表面へ転写されて、所定の印刷が完了する。
【0040】
なお、多色印刷を施す枚葉印刷機では、シート走行方向に沿ってインキ色の異なる複数組の印刷装置21a〜21nが並設された印刷装置部(印刷装置群)として構成し、各印刷装置21を順次通紙させることによって目的とする多色印刷を行うようになっている。
次に、上述のように印刷を終えたシート1は、最終印刷装置21nの圧胴24nから従動軸33で駆動されているエンドレスチェン(シート搬送部)31に具備された図示省略したチェングリッパにより排紙装置30まで搬送され、排紙装置30下方に設けたシート積重装置32のテーブル上に積重される。ここで、所定量積重されると外部へ搬出されることになる。
【0041】
また、両面印刷を行う場合には、一面を印刷されてシート積重装置32のテーブル上に積重されたシート1を、再び給紙装置10の給紙テーブル10a上に積重させて、上記の一面への印刷と同様に、他面に対して印刷を行うようにする。
このような枚葉印刷機の給紙装置では、シート1が1枚ずつ所定量のズレを有してシート受け渡し装置2に供給されなくてはならないが、ほとんどズレがない状態で重なって(一般には、2枚重なり)供給されることがある。このように、シート1が重なった状態でシート受け渡し装置2に供給されると、シートの受け渡しに支障をきたしだけでなく、シート受け渡し装置2近傍での紙詰まりの原因にもなり、また、印刷装置20まで支障なく供給されても、印刷装置20において紙詰まりや印刷不良の原因になる。
【0042】
そこで、シート1が複数枚重なってフィーダボード11bに進入したか否かを検出するセンサ(2枚検知センサ)が、フィーダボード11b付近に装備される。本実施形態では、シート1の表面に光を照射する光源と、この光照射によるシート1の表面からの反射光を受光して光電変換する方式の光電式二枚検知器(光電式二枚センサ)74と、シート1に超音波を照射する音源と、音源に対してシート1を挟むように配置され、シート1を透過した超音波を受信して電気信号に変換する超音波式二枚検知器(超音波式二枚センサ)44とを共に装備している。
【0043】
印刷されていないシート1を給紙する場合には、検出精度が比較的高い光電式二枚センサ74を用い、裏面を印刷されているシート1を給紙する場合には、印刷されていても検出可能な超音波式二枚センサ44を用いるようにしている。
この点、超音波式二枚センサ44は、図1〜図4に示すように、シート1を挟むように超音波を発する音源部44aとこの超音波を受信する受信部44bとを配置し、また、フィーダボード11bには超音波が通過しうる穴41を穿設する必要があるが、超音波がシート1を通過する量は印刷された絵柄に左右されず、シート1の厚みのみに対応するので、絵柄のある部分にも支障なく適用でき、両面印刷の際の片面を印刷したシート1を給紙する場合にも適用することができる。
【0044】
ただし、超音波式二枚センサ44は、シート1の面に対して直角な方向に超音波を照射するよりも、シート1の面に対して斜めに傾斜した方向に超音波を照射した方が、シート1の表面からの反射音の影響がなく、安定して検知することができる。そこで、超音波式二枚センサは、超音波の発進軸及び受信軸をシート1の面に対して傾斜して配置している。
【0045】
つまり、図3に示すように、フィーダボード11bを構成する板金プレート111には、超音波が通過しうる穴41が穿設され、フィーダボード11bの下流端の上方に幅方向に延在して備えられた支持用バー42には、センサブラケット43aを介して超音波を発する音源部44aと、センサブラケット43bを介して超音波を受信する受信部44bと、が設置されており、音源部44aと受信部44bとにより超音波式二枚センサ44が構成されている。ここでは、音源部44aはフィーダボード11bの上方に配置され、受信部44bはフィーダボード11bの下方に配置されているが、逆であってもよい。なお、フィーダボード11bは、図1に示すように支持体110に支持されている。
【0046】
音源部44aは、フィーダボード11bの面、つまり、フィーダボード11b上を走行するシート1の面に対して斜めに傾斜した方向に超音波を照射し、受信部44bはこれに応じて、シート1の面に対して斜めに傾斜した方向に受音部を向けている。もちろん、フィーダボード11bの超音波通過穴41は音源部44aと受信部44bとを結ぶ直線上に配置されている。これにより、シート1の表面からの反射音に影響されることなく、シート1の厚みを安定して検知することができ、予め入力されたシート1の厚みに基づいて、シート1が重なっているか否かを判別することができる。
【0047】
なお、ここでは、フィーダボード11bは、その幅方向中央を板金プレート111で構成され、幅方向中央を、幅方向に伸縮可能なパンタグラフ式プレート112で個性されている。また、支持用バー42には、前当9に当接するシートの前端(咥え側)を押さえる紙押さえ装置(シート前端押さえ装置)50が複数設備されている。
このような超音波式二枚センサ44の音源部44aや受信部44bは、可能な限りシート1に接近させた方が検出精度を向上させることができるが、この場合、シート1の上面側の音源部44a又は受信部44b(以下、これらを総称して「センサ」という)やこれを支持するセンサブラケット43a,43bが、フィーダボード11b上のシート1の軌道に接近することになるので、シート1の挙動によっては、フィーダボード11bのシート1側(つまり、上方)に装備されたセンサ44aやセンサブラケット43a、特に、よりシート1の軌道に接近しているセンサブラケット43aと接触してしまい、印刷物の商品性を損なってしまう場合がある。
【0048】
このようなシート1のセンサブラケット43aへの接触は、シート1が、その前端をスイングアーム7の先端のスイング爪5と爪座6とによって把持されて、スイングアーム7の旋回によって第1中間胴22の第1中間胴爪(図示略)に受け渡されていく際に、シート1の後端において発生する。これは、シート1の前端を受け取る第1中間胴22の第1中間胴爪が、フィーダボード11bの上面(つまり、シート1をガイドするガイド面)の延長面上よりも下方に位置するため、この受け渡し時に、図1中に二点鎖線で示すように、シート1の前端が、フィーダボード11bの上面よりも下方に下がっていくことになり、シート1の剛性や慣性によって、シート1の後端は、これと逆に、フィーダボード11bの上面よりも上方に浮き上がってしまうためと考えられる。
【0049】
そこで、このセンサブラケット43aへのシート1の接触を防止するために、フィーダボード11b上のシート軌道に接近して、移送されるシートの後端部の浮き上がりを抑制するシート後端押さえ部材としてのコロ61を備えたシート後端押さえ装置60が装備されている。
シート後端押さえ装置60は、コロ61と、コロ61を支持する支持部材としての板バネ62及び第1〜3ブラケット63,65,67を備えている。
【0050】
第1ブラケット63は、プレートを湾曲形成されており、先端部に板バネ62が第1ブラケット63を延長するように固設され、第1ブラケット63の先端に、コロ61が回転自在に枢支されている。つまり、シート1の進行方向後方に向かいように延びた板バネ62は、弾性変形により、コロ61をシート1と直行する方向に弾性的に移動可能に支持している。コロ61は、外周部がゴム硬度30°以下の軟質ゴムによって形成され、また、外周部は走行するシート1の走行方向に沿って回転する。
【0051】
第1ブラケット63には、軸部64が設けられ、この軸部64は第2ブラケット65の形成された軸穴(図示略)に挿嵌されて締結ネジ64a等の固定手段によって第2ブラケット65に係止される。特に、軸部64及び第2ブラケット65の軸穴は、シート1の進行方向に沿うように配置され、第2ブラケット65の軸穴に対して軸部64をその軸方向に位置調整することにより、第1ブラケット63及びコロ61がシート1の進行方向前方又は後方に位置調整される。
【0052】
第2ブラケット65は、下端部に上記の軸穴が形成され、中間部を第3ブラケット67のピン67aに揺動自在に係止され、上端部を第3ブラケット67と間に介装された位置調整部材66によって係止されている。つまり、第2ブラケット65は、第3ブラケット67に対して、下端部及び上端部がシート1の進行方向前方又は後方に揺動可能に支持され、上端部の位置を位置調整部材66によって調整されることで、つまり、第1ブラケット63の支持位置を変更できるようになっている。
【0053】
第2ブラケット65の下端部がシート1の進行方向に対して後方に位置調整されると、コロ61は、シート1の進行方向後方に位置調整されると共にシート1から(即ち、フィーダボード11bから)離隔する方向に位置調整される。逆に、第2ブラケット65の下端部がシート1の進行方向に対して前方に位置調整されると、コロ61は、シート1の進行方向前方に位置調整されると共にシート1に(即ち、フィーダボード11bに)接近する方向に位置調整される。
【0054】
なお、ここでは、コロ61の前後方向位置への調整と、コロ61の上下方向位置(シート1或いはフィーダボード11bに対して接近する方向への位置)への調整とをいずれもできるようにそれぞれの調整機構が装備されているが、これらの機構は必要に応じて装備すればよい。特に、コロ61の前後方向位置への調整はより必要度が高いので、コロ61の前後方向位置への調整機構のみを設け、コロ61の上下方向位置への調整機構は省くことも考えられる。
【0055】
第3ブラケット67は、板状部67bを備え、この板状部67bの端部には、幅方向中央に端部側に開口した切欠部67c形成される。一方、支持用バー42の上面は、フィーダボード11bの上面と平行に配設され、この支持用バー42の上面には、この上面に対して直行するように配向された係止ピン69が突設され、この係止ピン69の上方には、支持用バー42の上面との間に板状部材を圧着できるように、支持用バー42の軸方向に移動可能な可動部材68が装備されている。この可動部材68の移動は、操作レバー68aによって操作できるようになっている。
【0056】
第3ブラケット67は、板状部67bを、切欠部67b内に係止ピン69が貫通するように配置され、板状部67bを可動部材68と支持用バー42の上面との間に圧接されて固定される。逆に、可動部材68を支持用バー42の上面から離隔させることにより、第3ブラケット67は、板状部67bの固定を解除され、支持用バー42から自由に取り外すことができるようになっている。
【0057】
ところで、本実施形態では、このようなシート後端押さえ装置60の多くの部材が、前当9に当接するシートの前端(咥え側)を押さえるシート前端押さえ装置50,50´の部材を流用して形成されており、部品コストの低減化が図られている。
ここで、シート前端押さえ装置50の構成を説明する。
シート前端押さえ装置50は、図5に示すように、コロ51と、コロ51を支持する支持部材としての板バネ52及び第1〜3ブラケット53,55,57を備え、さらに、軸部54,位置調整部材56を備えている。また、係止ピン59及び操作レバー58aを有する可動部材58も装備されている。
【0058】
そして、シート後端押さえ装置60のコロ61,第1〜3ブラケット63,65,67には、シート前端押さえ装置50のコロ51,第1〜3ブラケット53,55,57が、シート後端押さえ装置60の軸部64,位置調整部材66,可動部材68,係止ピン69には、シート前端押さえ装置50の軸部54,位置調整部材56,可動部材58,係止ピン59がそれぞれ流用されている。
【0059】
ただし、シート後端押さえ装置60のコロ61は、支持用バー42の直下よりもシート移動方向上流側に配置されるのに対して、シート前端押さえ装置50のコロ51は、支持用バー42の直下若しくは直下よりもシート移動方向下流側に配置されるので、シート後端押さえ装置60の第1ブラケット63の第2ブラケット65への取り付けは、シート前端押さえ装置50の第1ブラケット53の第2ブラケット55への取り付けとは逆向き設定されている。
【0060】
また、シート前端押さえ装置としては、図6に示すように、シート押さえ部材としてのプレート部51´をそなえた支持部材としての板バネ52´と、シート前端押さえ装置50´と同様な第1〜3ブラケット53´,55´,57´を備え、さらに、軸部54´,位置調整部材56´を備えた、シート前端押さえ装置50´も装備可能である。この場合も、シート前端押さえ装置50´は、プレート部51´をそなえた板バネ52´を除いた各部材は、シート前端押さえ装置50のものを流用できる。
【0061】
このようなプレート部51´の場合、シート1を押さえるシート前端押さえ装置50´は、光電式二枚センサ74のように、シート1に接近して配置されたものにおいて、シート1との隙間に容易に挿入させて設置することができる。
本発明の一実施形態にかかる枚葉印刷機の給紙装置は上述のように構成されているので、フィーダボード11b上を移送されるシート1の後端部が浮き上がろうとすると、シート1の後端部にコロ61が弾性的に接触するので、シート1の後端部を傷つけることなく、シート1の後端部の浮き上がりが抑制され、シート1のセンサブラケット63aとの接触を防止してこの接触によるシート1の傷付きを防止することができる。しかも、張物と異なり、十分な耐久性を持ってシート1の傷付きを防止することができる。
【0062】
なお、このようなシート1の浮き上がりは、シート1の厚みがあるほど、また、シート1の搬送速度が高いほど大きく、且つ、早期(シート1が多くフィーダボード11b上に残っているうち)に発生するので、シート後端押さえ装置60の位置調整や、シート後端押さえ装置60の要不要が発生する。
そこで、例えば紙の腰の強い特殊厚紙(t0.6以上)のようにシート1の厚みが極めて大きく剛性も高い場合、第2ブラケット65の軸穴に対して軸部64をより浅く配置して、第1ブラケット63及びコロ61をシート1の進行方向前方に位置調整する。つまり、紙厚が厚くなるなどによって紙の剛性が上がると、紙の浮き上がり量が多くなるが、このようにして、コロ61を前当9に接近させることにより、こうした紙の大きな浮き上がりをより抑えることができる。また、紙種により紙の剛性は違うため、紙種によっても前後調整をする必要がある。
これにより、シート1が多くフィーダボード11b上に残っている早期にシート1の後端の浮き上がりが発生した場合にも、シート1の後端部の浮き上がりが抑制され、シート1のセンサブラケット63aとの接触を防止することができる。
【0063】
一方、シート1の剛性が上記ほどまでは大きくない場合、つまり、シート1の厚みがやや大きく剛性もやや高い程度の場合には、紙の浮き上がり量がそれほど多くないので、シート1の浮き上がりはシート1の中間部では支障がないが、後端側ではセンサ等と干渉するおそれが生じる。この場合には、第2ブラケット65の軸穴に対して軸部64を深く配置して、第1ブラケット63及びコロ61をシート1の進行方向後方に位置調整する。これにより、シート1の浮き上がりが適切に抑制され、シート1のセンサブラケット63aとの接触を防止することができる。
【0064】
このようにして、支持部材である第1ブラケット63をシート1の移送方向に位置調整して、コロをシート1に応じた最適位置に設定することができ、シート1の後端部の浮き上がりを適切に抑制することができる。
また、シート1の厚みがやや小さく剛性もやや低い場合には、シート後端の浮き上がりの問題は発生せず、シート後端押さえ装置60が不要となるので、シート後端押さえ装置60を取り外してしまう。
【0065】
このようにして、支持部材である第3ブラケット63は着脱可能なので、不用な場合はシート後端押さえ装置60を取り外すことができ、これにより、コロ61のシート1への不要な接触を回避することができる。
また、第2ブラケット65の位置調整(揺動調整)によって、コロ61のシート1との距離を調整することができるので、例えば、紙厚紙種等に応じてコロ61のシート1との距離を調整することができる。なお、剛性の高いシートとしては、例えばフィルムや、ボール紙のような厚紙がある。
【0066】
また、シート後端押さえ部材としてのコロ61がシートの移送に応じて適宜回転しながらシート1に接触し、シート1の後端部の浮き上がりを抑制するので、シート後端押さえ部材がシート1に接触することによるシート1への悪影響を回避することができる。
さらに、コロ61が軟質ゴムにより形成されるため、これによっても、シート後端押さえ部材がシート1に接触することによるシート1への悪影響を一層回避することができる。
また、本シート後端押さえ装置60には、シート前端押さえ装置50,50´の部材の多くが流用されているので、部品コストを低減することができる。
【0067】
(その他)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0068】
例えば、シート後端押さえ部材としては、コロ61に限定されず、たとえば、図6のシート前端押さえ部材50´のようなプレート部51´をシート押さえ部材として備えてもよい。この場合、シート前端押さえ部材50´の場合も必要であるが、当然ながら、プレート部51´をシート1が摺接してもシート1を傷つけないような表面が滑らかなもの(例えば、シリコンコーティングしたもの)が好適である。
【0069】
また、本実施形態では、シート後端押さえ部材61が、シート1の軌道に接近するように突設された突設部材であるセンサブラケット43aに隣接して1つだけ配置されているが、シート後端押さえ部材は、フィーダボード上に、突設部材であるセンサブラケット43aを挟んで対を成して配置してもよい。この場合、1つだけ設置する場合よりも、突設部材であるセンサブラケット43aに対して離隔させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
枚葉印刷機において、枚葉状シートの2枚センサ類等との干渉による傷付きを防止するために広く適用することができ、特に、厚紙を使用する場合に好適であるが、厚紙に限らず、上記の傷付きが発生しやすくなる高速での印刷を行う枚葉印刷機に適用することが好適である。
【符号の説明】
【0071】
1 枚葉状のシート
2 シート受け渡し装置
5 スイング爪
6 爪座
7 スイングアーム
8 支点軸
9 前当
9´ ガイドコロ
10 給紙装置
10a 給紙テーブル
11 フィーダボード
11a 上流側フィーダボード
11b 下流側フィーダボード(レジスタボード)
12 シート搬送ベルト
14 ガイドローラ
20 印刷装置部
21,21a〜21n 印刷装置
22 第1中間胴
24,21a〜21n 圧胴
25 中間胴
27 版胴
28 刷版
29 ブランケット胴
30 排紙装置
31 シート搬送部
32 シート積重部
33 従動軸
41 穴
42 支持用バー
43a,43b センサブラケット
44 超音波式二枚検知器(超音波式二枚センサ)
44a 音源部
44b 受信部
50,50´ シート前端押さえ装置
51 シート前端押さえ部材としてのコロ
52 板バネ
60 シート後端押さえ装置
61 シート後端押さえ部材としてのコロ
52,52´,62 支持部材としての板バネ
53,53´,63 支持部材としての第1ブラケット
54,54´,64 軸部
54a,54a´,64a 締結ネジ
55,55´,65 支持部材としての第2ブラケット
56,56´,66 位置調整部材
57,57´,67 支持部材としての第3ブラケット
57a,57a´,67a ピン
57b,57b´,67b 板状部
57c,57c´,67c 切欠部
58,58´,68 可動部材
58a,58a´,68a 操作レバー
59,59´,69 係止ピン
74 光電式二枚検知器(光電式二枚センサ)
111 板金プレート
112 パンタグラフ式プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉印刷機の給紙装置のフィーダボード上に、移送される枚葉状のシートの軌道に接近して配置され、移送される前記シートの後端部の浮き上がりを抑制するシート後端押さえ部材と、前記シート後端押さえ部材を弾性的に支持する支持部材とを備えている
ことを特徴とする、シート後端押さえ装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記フィーダボード上の支持部に対して着脱可能な着脱構造を有している
ことを特徴とする、請求項1記載のシート後端押さえ装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記フィーダボード上の支持部に、前記シートの移送される方向に位置調整可能とする位置調整機構を有している
ことを特徴とする、請求項1又は2記載のシート後端押さえ装置。
【請求項4】
前記シート後端押さえ部材は、前記シートの移送方向に回転自在なコロであって、
前記支持部材は、前記コロを前記シートの軌道に対して離接する方向に弾性支持する
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のシート後端押さえ装置。
【請求項5】
前記コロは、ゴム硬度30°以下の軟質ゴムにより形成されている
ことを特徴とする、請求項4記載のシート後端押さえ装置。
【請求項6】
前記シート後端押さえ部材は、前記フィーダボード上に、前記シートの軌道に接近するように突設された突設部材に隣接して配置されている
ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載のシート後端押さえ装置。
【請求項7】
前記シート後端押さえ部材は、前記突設部材を挟んで対を成して配置されている
ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載のシート後端押さえ装置。
【請求項8】
移送される前記シートの2枚検知を行う超音波センサが、その発信部及び受信部のうちの一方が前記フィーダボード上方の支持部にセンサブラケットを介して装備され他方が前記フィーダボード下方に装備されて備えられ、
前記突設部材は、前記センサブラケットである
ことを特徴とする、請求項6又は7記載のシート後端押さえ装置。
【請求項9】
前記シート後端押さえ部材は、前記フィーダボードの下流端に装備される前当てに移送されるシートの前端が確実に当接するように、前記シートの先端を押さえるシート先端押さえ部材よりも、前記フィーダボードの上流側に配置されている
ことを特徴とする、請求項1〜8の何れか1項に記載のシート後端押さえ装置。
【請求項10】
前記シート後端押さえ部材の前記支持部材には、前記シート先端押さえ部材を弾性的に支持する支持部材が流用されている
ことを特徴とする、請求項9記載のシート後端押さえ装置。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載のシート後端押さえ装置を有する
ことを特徴とする、枚葉印刷機の給紙装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−195576(P2010−195576A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45702(P2009−45702)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】