説明

シート折り装置及びこれを備えた後処理装置

【課題】シート折り装置1から排出されるシートSの排出方向を上向きに導き、排出されるシートSのスタック量を増加させ、又、簡易、安価な構成のシート折り装置1及びこのシート折り装置1を備えた後処理装置3を提供する。
【解決手段】シートSが装置内部に搬入され、搬入されたシートSを折り曲げる折曲部70と、折り曲げ処理済みのシートSを排出するための排出部80と、折曲部70から排出部80に向けてシートSを搬送するための排出搬送路90と、を備えたシート折り装置1において、排出搬送路90は、シートSの搬送を案内するためのガイド39を備えていて、排出搬送路90における上方に位置する上方ガイド92は、シート排出方向において、折曲部70と排出部80の間で局部的に下向きに膨らんで形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置内部に搬入されたシートに対し、特に、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置により画像が形成されたシートに対し、折り曲げ処理を行うシート折り装置、及び、これを備えた後処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像形成装置により画像が形成されたシートを装置内部に搬入し、中折り等のシートを折り曲げ処理を行うシート折り装置が用いられている。例えば、シート折り装置は、画像形成装置に隣接して設けられ、シートに対して穿孔処理(パンチ処理)、複数のシートをスタックし、そのシート束に対してステープル処理等の処理を行う後処理装置に内蔵されるような形で用いられる。
【0003】
具体的には、シート折り装置は、少なくとも、搬入されたシートを折り曲げるための折曲部、折り曲げられたシートをシート折り装置から排出するための排出部、折曲部から排出部までシートを搬送するための排出搬送路といった構成を備えている。その他の構成として、シート折り装置は、例えば、排出されるシートを受けるための排出トレイ、搬入されたシートを受け止めるための受止部材や、シートの幅方向(搬入方向に対し垂直な方向)に搬入されたシートの斜行補正や幅合わせ行うための幅合わせ部材等を備えることがある。これらの構成をとり、シート毎に、又は、ステープル処理済み等のシートの束に対し、シートの折り曲げ処理を行うようになっている。
【0004】
このような装置の一例として、特許文献1記載の発明が提案されている。特許文献1には、用紙折り手段と、用紙の先端を受け止める受止部材と、受止部材を移動させる受止部材移動手段と、一対の幅寄せ部材と、用紙の幅方向の幅合わせ及び斜行補正を行うための幅合わせ部材移動手段とを備えたシート折り装置において、一対の幅合わせ部材は、用紙搬入路における用紙折り手段の上流側に配置されているシート折り装置が記載されている(請求項1、図2参照)。
【特許文献1】特開2002−167120
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、図5及び6を用いて、従来のシート折り装置100における折り曲げ処理後のシートSのスタックにおける問題を説明する。図5(a)は、従来のシート折り装置100での排出トレイ101におけるシートSのスタックの状態を説明するための断面図である。図5(b)は、従来のシート折り装置100でのシートSの後端が折曲部を構成する折曲ローラ対102を通過している状態を示す断面図である。図6は、従来のシート折り装置100において、シートSが折曲ローラ対102を通過後の状態を示す断面図である。尚、従来例の説明におけるシート折り装置は、主としてシートSの束を折り曲げるものである。従って、図5(a)中のシートSは、通常複数のシートSが重ねられ、シートSの束を形成しているが、図面の記載の煩雑化を防ぐため、簡略化して示している。又、シート折り装置100におけるその他の部分は省略している。
【0006】
図5(a)に示すように、一般的に、従来のシート折り装置100は、折曲部を構成する折曲ローラ対102でシートS(シートSの束を含む。以下、説明の便宜のため、従来例の説明では、シートSには、シートSの束を含むものとする。)を折り曲げた後、排出部としての排出ローラ対103から排出部に隣接して設けられた排出トレイ101に排出する。
【0007】
図5(a)に示すように、一般的に、折り曲げられたシートSは、シートSの折り曲げ部分Fを先方にして排出トレイ101に排出される。そして、折り曲げられたシートSは、シートSの腰により折り曲げ部分Fがどうしても膨らんでしまう。従って、排出トレイ101にスタックされるシートSは水平に積み重ねられず、シートSの折り曲げ部分Fを弧とした略扇型状に積み重ねられる。そうすると、前に排出されたシートSが傾斜して積み重ねられていくから、新しく排出されるシートSは、前に排出されたシートSにぶつかり、傾斜に逆らいながら登るようにして積み重ねられてゆくことになる(図5(a)の破線矢印)。そして、傾斜がきつくなり、排出部から排出されるシートSが傾斜を登り切れなくなると、シートSは排出部を塞いでしまい、排出トレイ101へのシートSのスタックがそれ以上できない状態となる。
【0008】
このような、従来のシート折り装置100におけるシートSのスタックにおいて、排出トレイ101にスタックできる量を増やすためには、排出ローラ対103からのシート排出方向が問題となる。即ち、シートSの折り曲げ部分Fの排出方向が下向きになればなるほど、傾斜を登り切れないものとなり、その結果、登り切れなかったシートSが排出部を塞いでしまう。従って、シート排出方向が下向きであると排出トレイ101にスタックできるシートSの量は少なくなる。そのため、スタック量を増やすためには、シートSは上向きに排出されるようにした方がよい。
【0009】
そこで、図5(a)、(b)、図6に示すような従来のシート折り装置100を見てみると、シートSは、必ずしもシートSの折り曲げ部分Fが上向きに排出されるようにはなっておらず、むしろ、一般的には下向きに排出されるようになっているという問題がある。その主な理由は、図5(b)に示すように折り曲げられたシートSの後端が折曲ローラ対102を通過している状態から、図6に示すようにシートSが折曲ローラ対102を通過してしまうと、シートSの腰により、シートSが排出搬送路104内で膨らんでしまうためである。これにより、シートSの上側が膨らみ、シートSの折り曲げ部分Fが下を向くようになる。そうすると、シートSは下向きにして排出され、シートSのスタック量が少なくなってしまう。
【0010】
このように、シートSの折り曲げ部分Fが下向きに排出されると、排出トレイ101にスタックされるシートSの量は少なくなるという問題がある。ここで、特許文献1に記載の発明は、用紙の幅合わせ及び斜行補正を行うためのものであって、シートの排出方向は全く考慮されていない。しかも、折曲部と排出部の間に位置する排出搬送路にあっては、上方のガイドは、全体的に上方に膨らんで形成されており(特許文献1:図2参照)、上述の理由からシートの折り曲げ部分Fが下を向いて排出されることになりやすい。従って、上記問題には対応できないものである。
【0011】
更に、別の観点から説明する。排出部における排出ローラ対における各ローラの間隔は、固定できず、可変するものである必要がある。なぜなら、排出されるシートの厚さは、処理毎に異なるものであって、1枚当たりのシート厚や、一度に折り曲げるシートの枚数等の要因により、シートの厚さを固定できないためである。即ち、排出ローラ対の間隔よりもシート(束)の方が厚すぎれば、腰折れ(シートが搬送途中で詰まるようにして折れ曲がってしまうこと)、詰まりの原因となる。又、排出ローラ対の間隔よりもシート(束)の方が薄ければ、排出ローラ対において排出されるシートに対する圧力が弱くなり、排出トレイに排出されたシートが膨らみやすくなってしまい、排出トレイでのスタック量が減少する。
【0012】
そこで、折り曲げられたシートの厚さを考慮して、排出ローラ対の間隔を可変させるため、ソレノイドやモータを設けることがある。又、シートの排出能力を高めるため、別途モータを設けて排出ローラ対に駆動を与えることもある。しかし、これらの構成をとると、コストアップの原因となり、シート折り装置の機構が複雑化し、又、ソレノイドやモータの配置のためシート折り装置が大型化し得るという問題がある。
【0013】
この問題に対し、特許文献1に記載の発明は、上述のように用紙の幅合わせ及び斜行補正を行うためのものであって、排出部において、ソレノイドやモータを設けることについて一切記載されていない。従って、上記問題には対応できないものである。
【0014】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、シート折り装置から排出されるシートの排出方向を上向きに導くことにより、排出されるシートのスタック量を増やすことができ、又、スタック量を増やすための構成が簡易、安価であるシート折り装置及びこのシート折り装置を備えた後処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、シートが装置内部に搬入され、搬入されたシートを折り曲げる折曲部と、折り曲げ処理済みのシートを排出するための排出部と、前記折曲部から前記排出部に向けてシートを搬送するための排出搬送路と、を備えたシート折り装置において、前記排出搬送路は、シートの搬送を案内するためのガイドを備えていて、前記排出搬送路における上方に位置する上方ガイドは、シート排出方向において、前記折曲部と前記排出部の間で局部的に下向きに膨らんで形成されていることとした。
【0016】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の発明において、前記排出搬送路は、湾曲していて、前記排出搬送路の入口部分と出口部分における前記上方ガイドは、シート排出方向において、上向きに膨らんで形成され、前記排出搬送路の入口部分と出口部分の間において下向きに膨らんで形成されることとした。
【0017】
又、請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記排出部には、排出ローラ対が設けられており、前記排出ローラ対のうち、上方に位置する排出ローラのシート排出方向下流側に、下流ガイドが設けられており、前記下流ガイドは、シート排出方向において、下向きに膨らんで形成されていることとした。
【0018】
又、請求項4に係る発明は、請求項1乃至3いずれか1項に記載の発明において、前記排出搬送路における上方ガイド、及び、前記排出ローラ対のうち上方に位置する排出ローラは支点を有する回動部材に支持されており、排出されるシートの腰により、回動部材は回動するようになっていることとした。
【0019】
又、請求項5に係る発明は、画像形成装置により画像が形成されたシートをその装置内部に導入し、所定の処理を行う後処理装置であって、請求項1乃至4いずれか1項のシート折り装置を備えることとした。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明によれば、排出搬送路における上方のガイドは、シート排出方向において、前記折曲部と前記排出部の間で局部的に下向きに膨らんで形成されているから、排出搬送路内で折り曲げられたシートが膨らむことがない。従って、シートの折り曲げ部分が、排出部からのシートの排出方向において、下を向き難いものとなる。そうすると、既に排出されたシートにより形成された傾斜を、排出されているシートが登りやすくなり、排出トレイを大型化することなく、シートのスタック量が増加するシート折り装置が提供される。即ち、使用者は、頻繁に排出トレイからシートを取り除く必要がなくなり、使用者の利便性が向上する。
【0021】
請求項2に係る発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加え、前記排出搬送路の入口部分と出口部分における前記上方ガイドは、シート排出方向において、上向きに膨らんで形成されるから、折曲部から排出されたシートは、排出搬送路及び排出部に進入しやすくなっている。従って、排出搬送路及び排出部への進入に抵抗がないものとでき、排出搬送路内でのシートの腰折れ、詰まりを防止することができる。又、シートの折り曲げ部分は、下を向き難く、かつ、シートの排出は妨げられずスムーズになされるから、傾斜をシートが登りやすくなり、スタック量が増大される。
【0022】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明の効果に加え、上方に位置する排出ローラのシート排出方向下流側に、シート排出方向において、下向きに膨らんで形成されている下流ガイドを備えるから、下流ガイドは、排出ローラ対よりも下流側でシートの上方をしごいて、つぶすような働きを有する。従って、摩擦により、シートの上方の排出速度が遅れることになり、シートの排出方向が上方に導かれる。即ち、従来よりも、排出トレイにシートを多くスタックできるシート折り装置を提供することができる。尚、排出ローラ対よりも上流側でこのようなガイドを設けると、排出ローラ対へのシートの進入の妨げとなり得るが、排出ローラ対よりも下流側に設けるから、排出ローラ対でのシートの腰折れ、詰まりが生じない。
【0023】
請求項4記載の発明によれば、請求項1乃至3記載の発明の効果に加え、シートの有する腰により、回動部材を回動させるから、ソレノイドやモータを設けずに、排出ローラ対の間隔を適切なものとできる。即ち、排出するシートの厚さに従って、シートが有するシートの腰のみで、シート自ら回動部材を上下動させる。そうすると、従来のように、ソレノイドやモータを設ける必要がなくなるから、コスト面で有利であり、装置も大型化せず、機構も簡素化できるシート折り装置を提供できる。
【0024】
請求項5記載の発明によれば、請求項1乃至4いずれか1項に記載のシート折り装置を有する後処理装置を提供できる。即ち、排出トレイでのシートのスタック量が、排出トレイを大型化することなく増加した後処理装置を提供でき、又、後処理装置の製造に要するコストが安価で、小型化の要請に応じ、機構も簡素化された後処理装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図1〜4を参照しつつ説明する。尚、本実施形態に挙げるシート折り装置1は、画像形成装置2に外付けされる後処理装置3の下部に内蔵されるものについて説明する。但し、本実施の形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定するものではなく単なる説明例にすぎない。
【0026】
まず、図1を用いて、本発明の実施形態に係るシート折り装置1を内蔵した後処理装置3を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る後処理装置3の概略を説明するための模型的断面図である。
【0027】
後処理装置3は、画像形成装置2で画像が形成され排出されたシートSを、後処理装置3の右側面上部に設けられたシート導入口31から後処理装置3内に搬入する。そして、この搬入されたシートSに対してステープル処理等の所定の後処理を行う。後処理装置3は、後処理装置3内のシート搬送路32の最上流付近に設けられたパンチ部33、パンチ部33のシート搬送方向下流側には中間ローラ対34が設けられる。又、後処理装置3から排出されるシートS(シートSの束)を受け止めるために、後処理装置3の左側面部に設けられるメイン排出トレイ35、メイン排出トレイ35の上部に設けられるサブ排出トレイ36、中間ローラ対34から搬送されるシートSを一時退避しておくための退避ドラム37、後処理装置3に導入されたシートSをスタックしステープル処理を行うため装置内部中央に設けられるステープル処理部38、ステープル処理部38の下方に設けられるシート折り装置1等から構成される。
【0028】
前記パンチ部33は、所定のタイミングでシートSに対して、使用者の設定により穿孔処理を行うものである。前記中間ローラ対34は、退避ドラム37、メイン排出トレイ35、サブ排出トレイ36、ステープル処理部38等に向けて、シートSを搬送するためのものである。
【0029】
前記メイン排出トレイ35は、主としてステープル処理部38でステープル処理され、排出されるシートSの束を受け止めるためのものであり、排出されたシートSの束の部数の増加に従って最上位の位置から順次下降されるようになっており、複数のシートSの束を受けることができる。そして、シートSの束がメイン排出トレイ35から取り除かれると上昇し、基準位置に戻るようになっている。尚、後処理装置3で特に処理を施されることなく排出されるシートSや、パンチ処理だけが施されるシートSを受けるようにすることもできる。
【0030】
一方、前記サブ排出トレイ36は、後処理装置3で特に処理を施されることなく排出されるシートSや、パンチング処理だけが施されるシートSを受けるためのものである。前記退避ドラム37は、複数部のシートSの束に連続してステープル処理を施す場合に、前のシートSの束がステープル処理部38でステープル処理されている間、次のシートSの束の1枚目をドラム表面に巻きつけて待機させる。この退避ドラム37の働きにより、ステープル処理が行われる間、画像形成装置2からのシートSの排出を一時停止させる必要がなくなり、生産性が向上する。
【0031】
尚、パンチ部33を通過したシートSをステープル処理部38、退避ドラム37、メイン排出トレイ35、サブ排出トレイ36等、いずれの部分に搬送するかの振り分けは、後処理装置3内に複数設けられ回動自在に保持されたガイド39によりなされる。
【0032】
ステープル処理部38は、複数枚のシートSをスタックするスタック処理を行い、スタックされたシートSの束の先端をステープルで綴じる先端綴じ、シートSの束の長手方向の中央を短手方向に沿って2箇所ステープルで綴じる中央綴じなどの各種ステープル処理を行うことができる。例えば、先端綴じには、シートSの束の先端の中央近傍を長手方向に沿って2箇所綴じる先端中央綴じ、及びシートSの束の先端の一方の隅を斜め45°に1箇所綴じる先端斜め綴じなどが含まれる。スタック処理または先端綴じが行われたシートSの束は、上方へと搬送され、後処理装置3から排出される。
【0033】
ステープル処理部38は、大きく分けて2つの部材から構成されており、図2の下方に設けられたスタックトレイ40と、上方に設けられたカバートレイ41からなる。スタックトレイ40には、シート載置面42が、スタックトレイ40とカバートレイ41の間に挟まれるように設けられていて、このシート載置面42に複数のシートSが束としてスタックされる。シート載置面42に向けて搬送されてくるシートSを受け止めるために、スタックトレイ40には、ストッパ43が設けられている。
【0034】
このストッパ43は、スタックトレイ40の幅方向(図1の紙面に垂直な方向)の略中央に配置され、スタックトレイ40の表面及び裏面に臨むように設けられ、張架された無端状ベルト44に取り付けられる。ストッパ43は、使用されるシートSのサイズに対応し、シートSの後端、言い換えるとシートSの上端が一定位置でスタックされるように待機する。この無端状ベルト44は、駆動機構(不図示)により正逆回転自在に回転制御されるようになっており、これにより、処理する内容に合わせて、ストッパ43がスタックトレイ40の上方から下方へ、下方から上方へと移動され、併せて、スタックされたシートSの束がメイン排出トレイ35方向、又はシート折り装置1方向へ搬送されるようになっている。
【0035】
尚、スタックトレイ40には、無端状ベルト44に並列し、スタックトレイ40の表面及び裏面に臨むようにして第2の無端状ベルト(不図示)が設けられている。この第2の無端状ベルトには、略T字型に形成された突起部45が設けられている。突起部45は、駆動機構(不図示)により基準位置からスタックされたシートSを下方に搬送する方向への所定量の第2の無端状ベルトの回転により移動させられ、シートSの後端を軽く押圧してシートSの後端を揃える整合処理を行う。これにより、スタックされた複数枚のシートSの後端が不揃いになるのを防ぐ。尚、この動作は、シートSが1枚スタックされる毎に行われ、これによりステープル処理を的確に行える。
【0036】
又、カバートレイ41は、スタックトレイ40の上方に配置され、スタックされたシートSの束が確実にメイン排出トレイ35やシート折り装置1に向けて搬送されるようにガイドする役割を果たす。
【0037】
上記のような機構により、所定枚のシートSのスタックが完了すると、ステープル処理部38に設けられたステープル手段46により、スタックされたシートSの束にステープル処理が施される。
【0038】
ステープル処理部38の下方に、シートSの束の折曲処理を行うためシート折り装置1が配置されているが、シート折り装置1の詳細は後述する。尚、折曲処理が選択されていない場合、ステープル処理が施されたシートSの束は、上方に向けて搬送され、メイン排出トレイ35に排出される。
【0039】
次に、図2に基づき、本発明の実施形態に係るシート折り装置1の構造の概略について説明する。図2は、本発明の実施形態に係るシート折り装置1の構造を説明するための模型的断面図である。
【0040】
シート折り装置1は、後処理装置3の最下部に配されており、シート搬送方向において、ステープル処理部38よりも下流に設けられ、主として、中央綴じのステープル処理が施されたシートSの束が装置内部に搬入される。従って、本実施形態におけるシート折り装置1は、主としてシートSの束を折り曲げるものである。そして、折曲処理が選択されると、シートSの束に対し、中折り処理等の折り曲げ処理を行い、後処理装置3の一側面の下部に設けられた排出トレイ74に排出する。
【0041】
図2に示すように、シート折り装置1は、ケーシング1a内部に、シートS(シートSの束を含む。以下、説明の便宜のため、本実施形態に係るシート折り装置の説明では、シートSには、シートSの束を含むものとする。)を装置内部に搬入するためのシート搬入路50と、搬入されたシートSを載置するためのシート載置板51a、51bと、搬入されたシートSを整合するための整合部60と、シートSを折り曲げるための折曲部70と、折り曲げ処理済みのシートSを排出するための排出部80と、折曲部70から排出部80に向けてシートSを搬送するための排出搬送路90とを備えている。尚、搬入されたシートSの搬入、搬送、排出方向を破線で示している。
【0042】
前記シート搬入路50は、図2において、シート折り装置1の右方上部に設けられている。シート搬入路50は主として搬入ローラ対52及び搬入ガイド53、54で構成されている。この搬入ローラ対52及び搬入ガイド53、54により、ステープル処理部38を経たシートSが、シート折り装置1内に搬入される。具体的には、シート載置板51a、51b(後述)に向けてシートSを搬送する。
【0043】
搬入ローラ対52は、モータ等(不図示)により、回転駆動力を与えてもよいし、前段に位置するステープル処理部38の下端部に回転駆動する搬送ローラ対(不図示)を設ければ、あえて、モータを設けなくてもよい場合がある。搬入ガイド53、54は、更に複数設けてもよく、搬入ローラにシートSが的確に進入し、シート載置板51a、51bに向けて的確にシートSが搬送されるようにシートSを案内する。
【0044】
前記シート載置板51a、51bは、図2に示すように、シート折り装置1の内部の右上方から左下方にかけて設けられていて、クランク機構71(後述)を境として計2枚設けられている。即ち、シート搬送方向において、クランク機構71の上流側に51aが、下流側に51bが設けられている。2枚のシート載置板51a、51bは、板状の部材で構成され、シート搬送方向において、クランク機構71の上流側と下流側が1直線上になるように設けられている。又、シート載置板51a、51bは、シートSの幅方向(図2の紙面に垂直な方向)に伸びて形成されていて、シート折り装置1の内部を斜めに区切るように設けられている。そして、このシート載置板51a、51bに搬入されたシートSが載置されることになる。
【0045】
前記整合部60は、搬入されたシートSを的確に折り曲げることができるようにシート載置板51a、51bにおけるシートSの位置を整合するために設けられている。整合部60は、シートSの搬送方向と平行な方向(図2における左右方向)及びシートSの搬送方向と垂直な方向(図2の紙面に垂直な方向)にシートSの整合を行う。
【0046】
図2に示すように、シートSの搬入方向におけるシートSの先端と後端(図2における左右方向)を整合するために、シート搬送方向上流側には、押出部材61が、下流側には受止部材62がそれぞれ設けられている。
【0047】
押出部材61は、断面が略L字状に形成されている。そして、クランク機構71よりも上流側のシート載置板51aの下方に配された駆動プーリ63及び被駆動プーリ64に張架された無端状ベルト65に押出部材61は、取り付けられている。又、押出部材61は、シート載置板51aの幅方向(図2における紙面に垂直な方向)の略中央の位置でシート載置板51aの表面から突出するようになっている。
【0048】
そして、駆動プーリ63はシート載置板51aのシート搬送方向における略中央に、被駆動プーリ64はシート載置板51aの上流端近傍に設けられている。又、駆動プーリ63は、モータ(不図示)からの回転駆動力が駆動機構(不図示)により伝達されるものであり、正逆回転自在となっている。駆動プーリ63が回転駆動すると、これに併せて、同じく正逆回転自在に支持された被駆動プーリ64及び無端状ベルト65が従動し、押出部材61がシート載置板51a上から突出しつつシート搬送方向と平行な方向に移動するようになっている。
【0049】
一方、受止部材62は、クランク機構71よりも下流側のシート載置板51bの下方に配された駆動プーリ66及び被駆動プーリ67に張架された無端状ベルト68に取り付けられている。又、受止部材62は、シート載置板51bの幅方向(図2における紙面に垂直な方向)の略中央の位置でシート載置板51bの表面から突出するようになっている。
【0050】
そして、駆動プーリ66はシート載置板51bの上流端近傍に、被駆動プーリ67はシート載置板51bの下流端近傍に設けられている。又、駆動プーリ66は、モータ(不図示)からの回転駆動力が駆動機構(不図示)により伝達されるものであり、正逆回転自在となっている駆動プーリ66が回転駆動すると、これに併せて、同じく正逆回転自在に支持された被駆動プーリ67、無端状ベルト68が従動することで、受止部材62がシート載置板51a、51b上から突出しつつシート搬送方向と平行な方向に、シート載置板51bの全長にわたって移動するようになっている。
【0051】
これらの押出部材61及び受止部材62をシートSのサイズに合わせて移動させることで、搬入されたシートSは、シート搬送方向と平行な方向(シートSの長さ方向)でその位置が整合される。
【0052】
一方、シートSの搬送方向と垂直な方向(図2の紙面に垂直な方向)、即ちシートSの幅方向にシートSの整合を行うための部材として、シートSの搬送方向と平行な方向に一対の幅合わせ部材69a、69bが、クランク機構71を挟んだそれぞれのシート載置板51a、51b上に、幅方向に間隔をおいて設けられている(図2では片方は不可視)。この一対の幅合わせ部材69a、69bにより、用紙の幅合わせ及び斜行補正が行なわれる。特に、クランク機構71よりも上流側のシート載置板51a上に設けられた一対の幅合わせ部材69aは、ラックアンドピニオン機構(不図示)を有していて、このラックアンドピニオン機構は、正逆回転自在なモータ(不図示)に駆動連結されている。
【0053】
ラックアンドピニオン機構及びモータにより、搬入されるシートSのサイズに合わせて幅合わせ部材69aを幅方向に移動させることで、シートSの幅合わせ及び斜行補正といった整合がなされる。尚、シート搬送方向におけるクランク機構71よりも下流側の幅合わせ部材69bにもラックアンドピニオン機構及びモータを設けてもよいが、通常は、一方に設けるだけで整合処理は行える。
【0054】
前記折曲部70は、クランク機構71と、ブレード72と、折曲ローラ対73等から構成されている。図2に示すように、クランク機構71は、シート折り装置1内の中央下部に配され、シート載置板51a、51bの境目に位置している。クランク機構71は、モータ(不図示)から動力伝達機構(不図示)介して、回転駆動するようになっている。又、クランク機構71には、シートSを押し出すようにして当接するブレード72が取り付けられている。
【0055】
そして、クランク機構71及びブレード72の上方には、折曲ローラ対73が配されている。折曲ローラ対73のうち、一方の折曲ローラ73aが、モータ等の駆動源(不図示)から動力伝達機構(不図示)介して回転駆動するようになっている。そして他方の折曲ローラ73bは、圧接されていて、折曲ローラ73aに従動するようになっている。
【0056】
具体的なシートSの折り曲げ動作について説明すると、まず、クランク機構71により、シート載置板51a、51bよりも下方に位置するようにブレード72が待機される。そして、シートSがシート折り装置1に搬入後、シート載置板51a、51b上に載置され、更に整合部60で、その位置が整合されると、クランク機構71が回転し、ブレード72が突き出され、シートSに対し垂直にシートSを上方に押し出す(図2に示す位置)。ブレード72の押出先には折曲ローラ対73のニップ部が存在しているから、シートSは折り曲げられた状態で、折曲ローラ対73のニップに進入する。その後、クランク機構71は回転し続けて、ブレード72を元の待機位置まで戻す。以下、同様にして連続して折り曲げ処理ができるようになっている。
【0057】
前記排出部80及び排出搬送路90は、折り曲げられたシートSをシート折り装置1内から排出するためのものであるが、詳細は後述する。
【0058】
その他、シート折り装置1が備える構成としては、排出トレイ74及び押さえ部材75がある。排出トレイ74は、シート折り装置1から排出されるシートSを受け止めるためのものであり排出部80に隣接して設けられている。排出トレイ74において、シート排出方向下流端の位置は、シートSを受け止めることができるように垂直に壁部が設けられている。又、押さえ部材75は排出部80近傍から排出トレイ74方向に伸びるようにして設けられたアームに回動自在に取り付けられている。押さえ部材75は、排出部80から勢いよくシートSが排出されても、排出トレイ74から飛び出さないようにし、又、排出されたシートSを上方から押さえることによって、シートSの膨らみを軽減するためのものである。
【0059】
次に、図3及び4に基づき、本発明の実施形態に係るシート折り装置1の排出部80及び排出搬送路90について説明する。図3は、本発明の実施形態に係るシート折り装置1の排出部80及び排出搬送路90を拡大した断面図である。図4は、本発明の実施形態に係るシート折り装置1のシートSの排出を説明するための断面図である。
【0060】
まず、排出部80から説明する。排出部80は、シート折り装置1から折り曲げ処理後のシートSが排出される部分であり、主として排出ローラ対81から構成されている。排出ローラ対81は、排出トレイ74の一端の上方に隣接するように設けられ、本実施形態のシート折り装置1では、排出ローラ対81に対しては、駆動源からの動力が伝達されていない。
【0061】
排出ローラ対81は、上下に連なるようにして回転可能に支持されている2本の排出ローラ82、83から構成されている。上方の排出ローラ82は、上下方向に移動可能となっていて(移動方向を破線で図示)、排出ローラ対81に進入してくる折り曲げ処理済みのシートSの厚さに応じて、上方の排出ローラ82が移動する。即ち、上方の排出ローラ82は、進入してくる折り曲げられたシートSの腰の力だけで持ち上げられるようになっている。このように構成することで、折り曲げ処理毎に異なるシートSの厚さに対応できる。例えば、排出ローラ対81の各ローラの間隔が狭すぎることによるシートSの詰まりや、腰折れが防がれる。尚、下方の排出ローラ83は、回転軸が固定されている。
【0062】
又、排出ローラ対81は、折曲ローラ対73で折り曲げられたシートSを追加的に折り曲げるという機能も果たすものであるが、排出ローラ対81の各ローラの間隔が広すぎると、排出されるシートSの折りが弱くなり、排出後、排出トレイ74で必要以上にシートSが膨らんでしまう。しかし、本実施形態に係る排出ローラ対81では、排出されるシートSごとに、適切な排出ローラ対81の間隔が確保されるから、このような膨らみを防ぐことができる。
【0063】
そこで、上方の排出ローラ82が移動する機構について説明する。本実施形態におけるシート折り装置1には、回動部材84が設けられている。図3に示すように、回動部材84は、排出搬送路90(詳細は後述)の上方に位置するとともに、折曲ローラ73aの上方から、緩やかなカーブを描きつつ、上方の排出ローラ82を経て、排出ローラ82から図3における左方に突出するように設けられている。又、回動部材84は、折曲ローラ73aの上方に図3の支点Pを有していて、この支点Pを中心として、回動部材84は、回動可能となっている。
【0064】
そして、回動部材84は、上方の排出ローラ82を回転可能に支持している。このように構成しているから、排出ローラ対81に進入してくる折り曲げられたシートSの腰の力だけで、上方の排出ローラ82が持ち上げられるようになっている。従って、従来のように排出ローラ対81のローラの間隔を適切なものとするために、ソレノイドやモータを設ける必要がなく、本実施形態のシート折り装置1は、コスト面で有利であり、装置も大型化せず、機構も簡素化できる。尚、回動部材84には、シートSの搬送を案内するための上方ガイド(詳細は後述)が設けられていて、回動部材84は、排出部80及び排出搬送路90を形成するといえるものとなっている。
【0065】
次に、排出搬送路90について説明する。図3に示すように、排出搬送路90は、折曲ローラ対73から排出ローラ対81まで、折り曲げられたシートSを搬送するためのものである。排出搬送路90は、一定の曲率を有するように湾曲していて下方ガイド91及び上方ガイド92の二つのガイドを有している。
【0066】
下方ガイド91は、折曲ローラ73bから下方の排出ローラ83までを結ぶように、図3の紙面垂直方向に伸びて設けられている。下方ガイド91は、折り曲げられたシートSの下面部分と当接することによって、折り曲げられたシートSを排出ローラ対81に向けて案内する。
【0067】
上方ガイド92は、折曲ローラ73aから上方の排出ローラ82までを結ぶように設けられている。図3に示すように、上方ガイド92のシート搬送方向における断面は、緩やかなカーブを2つつなげたようになっており、言い換えると、図3において逆S字状となっていて、上方ガイド92は、シート排出方向において、折曲部70と排出部80の間で局部的に下向きに膨らんで形成されている。
【0068】
更に具体的にいうと、本実施形態における上方ガイド92は、排出搬送路90の入口部分92aと出口部分92bにおいては、シート排出方向において、上向きに膨らんで形成され、排出搬送路90の入口部分92aと出口部分92bの間において下向きに膨らんで形成される。又、図3に示すように、上方ガイド92は、上記した回動部材84の下面に取り付けられている。そして、上方ガイド92は、折り曲げられたシートSの上面部分と当接することによって、折り曲げられたシートSを排出ローラ対81に向けて案内する。これらの下方ガイド91及び上方ガイド92より、排出ローラ対81にシートSが進入する角度が、好適なものとされる。
【0069】
上方ガイド92をこのように形成すると、折り曲げられたシートSの搬送が理想的なものとなる。即ち、排出搬送路90への導入部分Aでは、上方ガイド92の入口部分92aが上方に膨らんでいるから折曲ローラ対73で折り曲げられたシートSが排出搬送路90に進入し易いようになっている。従って、シートSが排出搬送路90に導入されやすく、シートSの腰折れや詰まりが生じない。尚、同様に、上方ガイド92の出口部分92bは下方に膨らんでいるから、シートSが排出ローラ対81に進入し易いようになっている。
【0070】
そして、シートSが排出搬送路90を進むに従って、排出搬送路90の図3における上下方向の間隔は狭くなっている(図3にてB部分として図示)。従って、折り曲げられたシートSが排出搬送路90内で膨らむことを減少させることができ、シートSの折り曲げ部分が排出ローラ対81から排出される際に、下を向かないようにすることができる。ここで、排出搬送路90の途中が狭くなっているが(B部分)、折り曲げられたシートSが分厚い場合であっても、上方ガイド92は回動部材84に取り付けられているから、上方ガイド92を介し、シートSの腰の力により回動部材84が上方に回動し、上方ガイド92が、シートSの腰折れや詰まりを生じさせるほどの摩擦をシートSに与えない。このように、従来よりも上向きでシートSは排出されるとともに、排出搬送路90内を滑らかに搬送されるから、既に排出されたシートSにより形成された傾斜を、現在排出されているシートSが登りやすくなる。従って、傾斜を登り切れなかったシートSが、排出部80を塞いでしまうことがなくなり、排出トレイ74を大型化することなく、シートSのスタック量を増やすことができる。
【0071】
更に、図3に示すように、折り曲げられたシートSが排出される際に上方に向くようにするため、本実施形態におけるシート折り装置1には、排出ローラ対81のうち、上方に位置する排出ローラ82のシート排出方向下流側に、下流ガイド93が設けられている。又、下流ガイド93は、上記した回動部材84に取り付けられており、回動部材84の回動に伴って下流ガイド93も上下方向に移動するようになっている。更に、下流ガイド93は、シート排出方向において、下向きに膨らんで形成されている。
【0072】
このように、上方の排出ローラ82の下流側において、下流ガイド93を設けているから、排出されてくる折り曲げられたシートSの上部をしごいて、つぶすことができる。更に、下流ガイド93の存在により、排出されるシートSの上部を押さえるようにしているから、排出されるシートSは、その折り曲げ部分を上方に向くように導かれる。
【0073】
尚、排出ローラ対81に折り曲げられたシートSが進入する前、即ち、排出ローラ82の上流側に、本実施形態に係る下流ガイド93と同様のガイドを設けても同様の効果はあると考えられるが、そのようなガイドは、シートSの排出ローラ対81への進入時の抵抗となってしまい、シートSの腰折れ、詰まりの原因となる。従って、本実施形態では採用していない。
【0074】
更にいえば、下方に位置する排出ローラ83よりもシート排出方向下流側に、排出されるシートSの下面を支えるようなガイドを別途設け、シートSの排出方向を上向きに導くことも考えられる。しかし、このようなガイドは、排出の際、シートSの後端が残る場合があり、排出トレイ74にシートSが確実に排出されない原因となり、又、シートSのスタックの状態を乱す原因となる。そうすると、スタック量の減少の原因となり、弊害も多いから、本実施形態では採用していない。
【0075】
次に、図4に基づき、本発明の実施形態に係るシート折り装置1のシートSの排出について説明する。
【0076】
上述したように、折曲ローラ対73を通過したシートSは、排出搬送路90を経て、排出ローラ対81からシート折り装置1の外部に排出される。図4に示すように、排出搬送路90の導入部分Aは広くとられていて、腰折れや詰まりが生ずることなく、滑らかにシートSは排出搬送路90に導入される。排出搬送路90のシートSの導入部分Aよりも下流側に向かうに従い、上方ガイド92がシート搬送方向において下方に膨らむように形成されている(部分B)。そのため、折り曲げられたシートSの膨らみが減少する。又、シートSが膨らまないから、排出ローラ対81への進入も滑らかに行われ、排出ローラ対81をモータ等で回転駆動させる必要もなくなる。そして、従来よりも、シートSの排出方向が上を向く。
【0077】
折り曲げられたシートSは、排出ローラ対81に進入するが、上方の排出ローラ82は、シートSの腰の力で回動部材84により、上方に移動するようになっているから排出ローラ対81の間隔、圧力は、適正に保たれる。ここで、回動部材84を下方に向けてバネ(不図示)等により、シートSの腰折れ、詰まりが生じない程度に付勢してもよい。これにより、排出ローラ対81を通過するシートSに一定の圧力を与えることができ、排出ローラ対81でシートSを追加的に折り曲げることが可能となる。そして、図4に示すように、排出ローラ対81を通過しようとするシートSは、下流ガイド93の存在により、排出されるシートSは、更に上方を向くように導かれる。
【0078】
このようにして、シートSが装置内部に搬入され、搬入されたシートSを折り曲げる折曲部70と、折り曲げ処理済みのシートSを排出するための排出部80と、折曲部70から排出部80に向けてシートSを搬送するための排出搬送路90とを備えたシート折り装置1において、排出搬送路90は、シートSの搬送を案内するためのガイドを備えていて、排出搬送路90における上方に位置する上方ガイド92は、シート排出方向において、折曲部70と排出部80の間で局部的に下向きに膨らんで形成されるようにすれば、排出搬送路90内で折り曲げられたシートSが膨らむことがない。従って、シートSの折り曲げ部分が、排出部80からのシートSの排出方向において、下を向き難いものとなる。そうすると、既に排出されたシートSにより形成された傾斜を、排出されているシートSが登りやすくなり、排出トレイ74を大型化することなく、シートSのスタック量を増やすことができる。即ち、使用者は、頻繁に排出トレイ74からシートSを取り除く必要がなくなり、使用者の利便性が向上する。
【0079】
又、排出搬送路90は、湾曲していて、排出搬送路の入口部分92aと出口部分92bにおける上方ガイド92は、シート排出方向において、上向きに膨らんで形成され、排出搬送路90の入口部分92aと出口部分92bの間において下向きに膨らんで形成されるようにすれば、折曲部70から排出されたシートSは、排出搬送路90及び排出部80に進入しやすくなっている。従って、排出搬送路90及び排出部80への進入に抵抗がないものとでき、排出搬送路90内でのシートSの腰折れ、詰まりを防止することができる。又、シートSの折り曲げ部分は、下を向き難く、かつ、シートSの排出は妨げられずスムーズになされるから、傾斜をシートSが登りやすくなり、スタック量が増大される。
【0080】
又、排出部80に、排出ローラ対81を設け、排出ローラ対81のうち、上方に位置する排出ローラ82のシート排出方向下流側に、下流ガイド93を設け、下流ガイド93はシート排出方向において、下向きに膨らんで形成されるようにすれば、下流ガイド93は排出ローラ対81よりも下流側でシートSの上方をしごいて、つぶすような働きを有するものとなる。従って、シートSの上方の排出速度が遅れることになり、シートSの排出方向が上方に導かれる。即ち、従来よりも、排出トレイ74にシートSを多くスタックできるシート折り装置1を提供することができる。尚、排出ローラ対81よりも上流側でこのようなガイドを設けると、排出ローラ対81へのシートSの進入の妨げとなり得るが、排出ローラ対81よりも下流側に設けるから、排出ローラ対81でのシートSの腰折れ、詰まりが生じない。
【0081】
又、排出搬送路90における上方ガイド92、及び、前記排出ローラ対81のうち上方に位置する排出ローラ82は支点Pを有する回動部材84に支持されており、排出されるシートSの腰により、回動部材84を回動するようにすれば、ソレノイドやモータを設けずに、排出ローラ対81の間隔を適切なものとできる。即ち、排出するシートSの厚さに従って、シートSが有するシートSの腰の力のみで、シートS自ら回動部材84を上下動させる。そうすると、従来のように、ソレノイドやモータを設ける必要がなくなるから、コスト面で有利であり、装置も大型化せず、機構も簡素化できるシート折り装置1を提供できる。
【0082】
又、画像形成装置2により画像が形成されたシートSをその装置内部に導入し、所定の処理を行う後処理装置3に、上記の折り装置を備えるようにすれば、排出トレイ74でのシートSのスタック量が、排出トレイ74を大型化することなく増加した後処理装置3を提供でき、又、後処理装置3の製造に要するコストが安価で、小型化の要請に応じ、機構も簡素化された後処理装置3を提供できる。
【0083】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、シート折り装置及びシート折り装置を備えた後処理装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施形態に係る後処理装置の概略を説明するための模型的断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るシート折り装置の構造を説明するための模型的断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るシート折り装置の排出部及び排出搬送路を拡大した断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るシート折り装置のシートSの排出を説明するための断面図である。
【図5】(a)は、従来のシート折り装置でのシートの排出トレイにおけるスタックの様子を説明するための断面図である。(b)は、従来のシート折り装置でのシートの後端が折曲ローラ対を通過している状態を示す断面図である。
【図6】従来のシート折り装置において、シートが折曲ローラ対を通過後の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0086】
1 シート折り装置
3 後処理装置
70 折曲部
80 排出部
81 排出ローラ対(排出部80)
82、83 排出ローラ(排出ローラ対81)
84 回動部材
90 排出搬送路
92 上方ガイド
92a 入口部分(上方ガイド92)
92b 出口部分(上方ガイド92)
93 下流ガイド
P 支点
S シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが装置内部に搬入され、搬入されたシートを折り曲げる折曲部と、折り曲げ処理済みのシートを排出するための排出部と、前記折曲部から前記排出部に向けてシートを搬送するための排出搬送路と、を備えたシート折り装置において、
前記排出搬送路は、シートの搬送を案内するためのガイドを備えていて、
前記排出搬送路における上方に位置する上方ガイドは、シート排出方向において、前記折曲部と前記排出部の間で局部的に下向きに膨らんで形成されていることを特徴とするシート折り装置。
【請求項2】
前記排出搬送路は、湾曲していて、
前記排出搬送路の入口部分と出口部分における前記上方ガイドは、シート排出方向において、上向きに膨らんで形成され、前記排出搬送路の入口部分と出口部分の間において下向きに膨らんで形成されることを特徴とする請求項1記載のシート折り装置。
【請求項3】
前記排出部には、排出ローラ対が設けられており、
前記排出ローラ対のうち、上方に位置する排出ローラのシート排出方向下流側に、下流ガイドが設けられており、
前記下流ガイドは、シート排出方向において、下向きに膨らんで形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のシート折り装置。
【請求項4】
前記排出搬送路における上方ガイド、及び、前記排出ローラ対のうち上方に位置する排出ローラは支点を有する回動部材に支持されており、
排出されるシートの腰により、前記回動部材は回動するようになっていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載のシート折り装置。
【請求項5】
画像形成装置により画像が形成されたシートをその装置内部に導入し、所定の処理を行う後処理装置であって、請求項1乃至4いずれか1項のシート折り装置を備えたことを特徴とする後処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−105798(P2008−105798A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289633(P2006−289633)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】