説明

シート抵抗測定用端子およびこれを用いた測定リード

【課題】 従来の日本工業規格K7194に基づくシート抵抗用測定端子を用いた測定では、測定後に抵抗率補正係数を掛けて測定値を補正する必要があり、装置コストや手間、誤認といった問題があった
【解決手段】4端子法を用いて、薄膜の抵抗測定を測定するために用いる測定用端子において、測定した電圧値を電流値で除したものと薄膜のシート抵抗値とが等しくなるように4本の測定用端子位置を固定した。このことにより、測定の読み取り値がそのままシート抵抗値を示すこととなり、演算のための装置が不要となり、測定時における誤認が防げるようになった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4端子法を用いて薄膜のシート抵抗測定を行う際に用いる測定用端子と、この測定端子を用いた測定リードに関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置やタッチパネル等に限らず、様々な産業分野で導電性薄膜が利用されている。そして、導電性薄膜の製造には様々な成膜装置が用いられ、この導電性薄膜の品質評価においは、膜の電気抵抗を示す指針であるシート抵抗値の測定が行われる。
【0003】
シート抵抗値の測定法としては、2点間に一定電流を流し、一定距離離れた電極間にかかる電圧値を測定し、オームの法則(抵抗値=電圧値/電流値)によりこの電圧値を電流値で割ったものをもとにして計算される。そして、シート抵抗値の測定方法としては単純な2端子法よりも4端子法の方が優れていることが知られている。
【0004】
これは、2端子法では同一の端子で電流値と電圧値を測定するため、端子と物質間の接触抵抗の影響を直接受けてしまうからである。4端子法では電圧値を専用の別端子で測定するためにこの影響が出ない。
【0005】
そして、この4端子法によるシート抵抗値の測定方法としては非特許文献1が信頼性の高い方法として知られている。
【0006】
この場合、図2に示すように電流印加用端子1aと電圧測定用端子2aと電圧測定用端子2bと電流印加用端子1bとが、それぞれ等間隔(5mm)に配置されている。
【0007】
そして、電流印加用端子1aおよび電流印加用端子1b間に一定の電流値を流し、電圧測定用端子2aと電圧測定用端子2b間の電圧値を測定する。
【0008】
この測定法において、標準試料サイズ50mm×80mmの板に関して各種薄膜の厚みと形状の影響のデータがとられており、これにより、抵抗率補正係数の値が求められている。
【0009】
シート抵抗値を求めるには4端子を用いて測定した電圧値(V)を電流値(I)で除して、抵抗率補正係数をかける必要がある。抵抗率補正係数は資料の形状や寸法、測定する位置により異なるが、試料が十分大きい場合(標準試料サイズ)には工業的に形成される薄膜の膜厚が試料に対して十分薄い(1.1mm以下)ことから、中央部での測定で補正係数としては4.2を用いればほぼ正しいシート抵抗値が求められる。
【0010】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【非特許文献】日本工業規格K7194「導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この日本工業規格K7194を用いた測定では、実際のシート抵抗値を得るためには、測定により出力されるデータに必ず、抵抗率補正係数を掛ける必要がある。
【0012】
そして、人間の手計算による補正の場合、中央部を測定し、測定値に単純に4.2を掛けるというつかわれ方をしてきた。これは、測定物が標準試料サイズより十分に薄い膜(1.1mm以下)であって、測定箇所を中央部に限定すれば、抵抗率補正係数は一定値(4.2)としてよいためである。
【0013】
つまり、測定装置内に演算回路を設けて補正するか、出力値を人間の計算により補正する必要があり、装置の場合には専用機が必要でコスト高となり、人間による場合には手間と誤認の原因となっていた。
【0014】
本発明は、このような従来の測定端子が有していた問題を解決しようとするものであり、4端子測定が可能なデジタルマルチメータに本発明によるシート抵抗測定用端子を持つ測定リードを繋ぐだけでデジタルマルチメータの抵抗値の読み取り値がそのままシート抵抗値を示すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、測定のための4本の端子の位置を測定した電圧値を電流値で除したものと薄膜のシート抵抗値とが等しくなるように固定してあることを特徴とする測定用端子である。
【0016】
また、本発明による測定用端子は表面に貴金属材料を使用していることが望ましい。
【0017】
さらに、本発明による測定用端子は測定用端子内にバネ機構を具備することが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明による測定用端子は測定のための4本の端子の位置を測定した電圧値を電流値で除したものと薄膜のシート抵抗値とが等しくなるように固定されている。このため、本発明による測定用端子を用いた測定リードをデジタルマルチメータに接続して4端子の抵抗測定を行えば、デジタルマルチメータにおいてシート抵抗値をそのまま表示できることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明によるシート抵抗測定用端子を示す平面図である。
【図2】従来のシート抵抗測定用端子を示す平面図である。
【図3】本発明によるシート抵抗測定用測定リードを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図3に基づいて説明する。
【0021】
図1は本発明のシート抵抗測定用端子を示す平面図である。従来のシート抵抗測定用端子では、4つの端子が電流印加用端子1b,電圧測定用端子2b,電圧測定用端子2a,電流印加用端子1aの順序で等間隔に並んでいる。
【0022】
この順序は、図2に示した従来のシート抵抗測定用端子と同じであるが、本発明によるシート抵抗測定用端子では、それぞれの端子の間隔を実験的に調整し、電圧測定用端子2aおよび電圧測定用端子2bで測定した電圧値を電流印加用端子1aおよび電流印加用端子1bに流れる電流値で除したものと薄膜のシート抵抗値とが等しくなる位置に端子を固定してある。
【0023】
図3は本発明によるシート抵抗測定用端子を用いて作成した測定用リードの例である。
【0024】
抵抗測定用端子を端子固定部材3により特定位置に固定してあり、その抵抗測定用端子とデジタルマルチメータに接続するために接続端子6とを接続線5により接続してある。そして、これら接続線5を保護部材4により纏めてある。
【0025】
また、抵抗測定用端子それぞれはバネ機構を持ち、測定する薄膜に抵抗測定用端子を押しつけた際、膜を壊さない程度の一定圧力で膜に接触するようになっている。膜と端子との接触抵抗を少なくし、また耐食性を加味して抵抗測定用端子は、貴金属メッキを施してある。
【0026】
この測定リードを用い、デジタルマルチメータで4端子法による抵抗測定を行うことにより抵抗測定値がそのまま膜のシート抵抗値を示すこととなる。
【0027】
ここでは、接続線5を保護部材4で纏めたが必ずしも保護部材4必要ではない。また、測定端子におけるバネ機構と貴金属メッキもあった方が望ましいが必ずしも必要というわけではない。したがって、これらによって本発明の範囲が制限を受けることはない。
【実施例】
【0028】
本発明の実施例として、図1において電流印加用端子1bと電圧測定用端子2bとの間隔が2mm、電圧測定用端子2aと電流印加用端子1aとの間隔が2mmであるものを作成した。
【0029】
つぎに、電圧測定用端子2bと電圧測定用端子2aとの間隔を実験的に変えながら4端子法による抵抗測定を行った結果、電圧測定用端子2bと電圧測定用端子2aとの間隔が28mmのときにシート抵抗値の値と4端子法による抵抗測定の値が一致した。
【0030】
ここで、4本のシート抵抗測定用端子間の位置関係の例を示したが、本発明はこの位置関係だけに限定されるものではなく、他の位置関係、例えば電流印加用端子1bと電圧測定用端子2bとの間隔と電圧測定用端子2aと電流印加用端子1aとの間隔が異なっていても問題ない。また、必ずしも4本のシート抵抗測定用端子が一直線上に並んでいる必要もない。
【0031】
つまり、本発明によるシート抵抗測定用端子は4端子法による抵抗測定の値と実際のシート抵抗値とが一致する関係にあれば、いかなる位置関係にあっても構わないのである。
【符号の説明】
【0032】
1a,1b 電流印加用端子
2a,2b 電圧測定用端子
3 端子固定部材
4 保護部材
5 接続線
6 接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4端子法を用いて薄膜の抵抗測定を測定するために用いる測定用端子であって、測定した電圧値を電流値で除したものと薄膜のシート抵抗値とが等しくなるように4本の測定用端子位置を固定してあることを特徴とする測定用端子。
【請求項2】
請求項1に記載の測定用端子であって、測定用の4本の測定用端子間が等間隔でないことを特徴とする測定用端子。
【請求項3】
請求項1および請求項2に記載の測定用端子であって、測定用端子の材料が貴金属であることを特徴とする測定用端子。
【請求項4】
請求項1から請求項3に記載の測定用端子であって、測定用端子内にバネ機構を具備することを特徴とする測定用端子。
【請求項5】
請求項1から請求項4に記載の測定用端子を用いた測定リード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−137774(P2011−137774A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299554(P2009−299554)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(508025873)アステラテック株式会社 (2)
【Fターム(参考)】