説明

シート測定装置および画像形成装置

【課題】搬送されるシートに接触して回転する回転体の外径異常を検出する。
【解決手段】シートの搬送に伴って回転する第1ロール110と第1ロール110の回転に伴って回転する第2ロール120とを備え、第2ロール120の回転量を用いてシートSの搬送方向長さであるシート長を算出する測長装置100において、シートSを搬送した際の第1ロール110の回転量および第2ロール120の回転量に基づいて第1ロール110における周方向の半径分布を演算し、得られた半径分布に基づいて、摩耗等によって第1ロール110の第1周面部113に生じた異常を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート測定装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公報記載の従来技術として、搬送されるシートから駆動力を受けて回転する回転体に複数のスリットを設け、回転体におけるスリットの形成位置を挟んで発光部と受光部とを配置することで回転体の回転量を検出し、得られた回転量を用いてシートの搬送方向長さを得るものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−171035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、搬送されるシートに接触して回転する回転体の外径異常を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、搬送されるシートに接触する第1周面部を備え、当該シートの搬送に伴って回転する第1回転体と、前記第1周面部とは異なる材料で構成され且つ当該第1周面部に接触する第2周面部を備え、前記第1回転体の回転に伴って回転する第2回転体と、前記第1回転体の回転量である第1回転量を検知する第1回転量検知手段と、前記第2回転体の回転量である第2回転量を検知する第2回転量検知手段と、前記第2回転量を用いて、搬送される前記シートに関する演算を実行するシート演算手段と、前記第1回転量および前記第2回転量を用いて、前記第1回転体における周方向の半径分布を演算する半径分布演算手段と、前記半径分布に基づいて、前記第1回転体に生じた異常を検出する異常検出手段とを含むシート測定装置である。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記異常検出手段は、前記第1回転体における周方向の半径分布の基準を取得し、前記半径分布および当該半径分布の基準を用いて、前記第1回転体に生じた異常を検出することを特徴とする請求項1記載のシート測定装置である。
請求項3記載の発明は、前記半径分布演算手段は、前記第2回転体および前記第2回転量検知手段に起因して前記第2回転量に重畳される誤差を補正するための第2回転体補正値を取得し、前記第1回転量と当該第2回転体補正値に基づいて補正された前記第2回転量とを用いて、前記半径分布を演算することを特徴とする請求項1または2記載のシート測定装置である。
請求項4記載の発明は、搬送されるシートの搬送方向先端および搬送方向後端を検出する端部検出手段をさらに含み、前記シート演算手段は、前記第2回転量および前記端部検出手段による検出結果に基づいて、前記シートの搬送方向長さを演算することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のシート測定装置である。
請求項5記載の発明は、前記第2回転体の温度を検出する温度検出手段をさらに含み、前記シート演算手段は、前記温度検出手段による検出結果に基づいて前記シートに関する演算において補正を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のシート測定装置である。
請求項6記載の発明は、前記第2回転体において前記第2周面部を構成する材料が、前記第1回転体において前記第1周面部を構成する材料よりも熱膨張係数が低いことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のシート測定装置である。
請求項7記載の発明は、前記第2回転体において前記第2周面部を構成する材料が金属であり、前記第1回転体において前記第1周面部を構成する材料が弾性体であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のシート測定装置である。
請求項8記載の発明は、前記シート演算手段は、前記第1回転体における周方向の半径分布に起因して前記第2回転量に重畳される誤差を補正するための第1回転体補正値を取得し、前記第2回転量および当該第1回転体補正値を用いて、搬送される前記シートに関する演算を実行し、前記半径分布演算手段は、前記第1回転体における周方向の新たな半径分布を演算し、前記第1回転体補正値を、前記新たな半径分布に基づいて得られた新たな第1回転体補正値に更新する更新手段をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載のシート測定装置である。
【0007】
請求項9記載の発明は、搬送されるシートに接触する第1周面部を備え、当該シートの搬送に伴って回転する第1回転体と、前記第1周面部とは異なる材料で構成され且つ当該第1周面部に接触する第2周面部を備え、前記第1回転体の回転に伴って回転する第2回転体と、前記第1回転体の回転量である第1回転量を検知する第1回転量検知手段と、前記第2回転体の回転量である第2回転量を検知する第2回転量検知手段と、前記第2回転量を用いて、搬送される前記シートに関する演算を実行するシート演算手段と、前記シート演算手段による演算結果に基づいて前記シートに画像を形成する画像形成手段と、前記第1回転量および前記第2回転量を用いて、前記第1回転体における周方向の半径分布を演算する半径分布演算手段と、前記半径分布に基づいて、前記第1回転体に生じた異常を検出する異常検出手段とを含む画像形成装置である。
【0008】
請求項10記載の発明は、前記異常検出手段は、前記第1回転体における周方向の半径分布の基準を取得し、前記半径分布および当該半径分布の基準を用いて、前記第1回転体に生じた異常を検出することを特徴とする請求項9記載の画像形成装置である。
請求項11記載の発明は、前記半径分布演算手段は、前記第2回転体および前記第2回転量検知手段に起因して前記第2回転量に重畳される誤差を補正するための第2回転体補正値を取得し、前記第1回転量と当該第2回転体補正値に基づいて補正された前記第2回転量とを用いて、前記半径分布を演算することを特徴とする請求項9または10記載の画像形成装置である。
請求項12記載の発明は、搬送されるシートの搬送方向先端および搬送方向後端を検出する端部検出手段をさらに含み、前記シート演算手段は、前記第2回転量および前記端部検出手段による検出結果に基づいて、前記シートの搬送方向長さを演算することを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項記載の画像形成装置である。
請求項13記載の発明は、前記第2回転体の温度を検出する温度検出手段をさらに含み、前記シート演算手段は、前記温度検出手段による検出結果に基づいて前記シートに関する演算において補正を行うことを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項記載の画像形成装置である。
請求項14記載の発明は、前記画像形成手段は、前記シートの一方の面に画像を形成するとともに、表裏が反転された当該シートの他方の面に画像を形成し、当該シートの当該他方の面に画像を形成する際に、前記シート演算手段による演算結果に基づく画像形成条件の調整を行うことを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、搬送されるシートに接触して回転する第1回転体の外径異常を検出することができる。
請求項2記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、第1回転体における外径異常の検出精度を高めることができる。
請求項3記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、第2回転体側に起因する測定精度の低下を抑制することができる。
請求項4記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、得られるシートの搬送方向長さに含まれる誤差を低減することができる。
請求項5記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、第2回転体の温度変化に起因する測定精度の低下を抑制することができる。
請求項6記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、周囲の温度変化に起因する測定精度の低下を抑制することができる。
請求項7記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、すべりに起因する測定精度の低下を抑制することができる。
請求項8記載の発明によれば、本構成を有しない場合と比較して、搬送されるシートに伴って回転する第1回転体によりシートに関する測定を行う場合に、第1回転体の半径分布に起因して測定結果に含まれる誤差の低減を図ることができる。
請求項9記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、搬送されるシートに接触して回転する第1回転体の外径異常を検出することができる。
請求項10記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、第1回転体における外径異常の検出精度を高めることができる。
請求項11記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、第2回転体側に起因する測定精度の低下を抑制することができる。
請求項12記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、得られるシートの搬送方向長さに含まれる誤差を低減することができる。
請求項13記載の発明によれば、第2回転体の温度変化に起因する測定精度の低下を抑制することができる。
請求項14記載の発明によれば、本構成を有していない場合と比較して、シートの両面にそれぞれ形成される画像の位置ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態が適用される画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】(a)は測長装置を画像形成装置の手前側からみた側面図であり、(b)は(a)をIIB方向からみた上面図である。
【図3】図2をIII方向(シートの搬送方向下流側)からみた正面図である。
【図4】制御部の構成の一例を示すブロック図である。
【図5】シートの両面に画像形成を行う場合における制御部の処理の内容の一例を示すフローチャートである。
【図6】シートが測長装置を通過する前後において出力される、上流側エッジ信号と、下流側第1エッジ信号と、下流側第2エッジ信号と、第2A相信号と、第2Z相信号と、第1Z相信号と、第1温度信号と、第2温度信号との関係の一例を示すタイミングチャートである。
【図7】処理部が実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】第2ロール回転補正係数テーブルの作成手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】図8に示すステップ303における処理の内容を説明するための図である。
【図10】測長装置を用いた測定における誤差の発生理由を説明するための図である。
【図11】(a)は第1ロール半径データの一例を示す図であり、(b)は第2ロール外径・スリット補正データの一例を示す図である。
【図12】第1ロール半径データの更新手順の一例を示すフローチャートである。
【図13】図12に示すステップ401からステップ409までにおける処理の内容を説明するための図である。
【図14】図12に示すステップ418における処理の内容を説明するための図である。
【図15】図12に示すステップ419からステップ423までにおける処理の内容を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態が適用される画像形成装置の一例を示す概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、所謂タンデム型の構成を有するものであって、例えば電子写真方式にて各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット10(10Y、10M、10C、10K)を備えている。また、画像形成装置は、各画像形成ユニット10にて形成された各色成分トナー像を順次転写(一次転写)して保持させる中間転写ベルト20と、中間転写ベルト20上に転写された重ね画像をシートSに一括転写(二次転写)させる二次転写装置30とを備えている。さらに、画像形成装置は、二次転写装置30に向けてシートSを供給するシート供給装置40と、二次転写装置30で二次転写された画像をシートSに加熱定着させる定着装置50と、画像が定着されたシートSを冷却する冷却装置55と、冷却されたシートSに生じるカールを補正するカール補正装置60とを備えている。なお、本実施の形態では、画像形成ユニット10、中間転写ベルト20および二次転写装置30が、画像形成手段として機能している。
【0012】
これらのうち、各画像形成ユニット10は、回転可能に取り付けられた感光体ドラム11と、感光体ドラム11の周囲に設けられた、感光体ドラム11を帯電する帯電装置12、感光体ドラム11を露光して静電潜像を書き込む露光装置13、感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像装置14、感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト20に転写する一次転写装置15、感光体ドラム11上の残留トナーを除去するドラム清掃装置16とを、それぞれが備えている。なお、以下の説明においては、各画像形成ユニット10を、それぞれ、イエロー画像形成ユニット10Y、マゼンタ画像形成ユニット10M、シアン画像形成ユニット10C、黒画像形成ユニット10Kと呼ぶ。
【0013】
また、中間転写ベルト20は、3本のロール部材21〜23に掛け渡されて回転するように構成されている。これらのうち、ロール部材22は、中間転写ベルト20を駆動するようになっている。また、ロール部材23は、中間転写ベルト20を挟んで二次転写ロール31に対向配置されており、これら二次転写ロール31およびロール部材23によって二次転写装置30が構成されている。なお、中間転写ベルト20を挟んでロール部材21と対向する位置には、中間転写ベルト20上の残留トナーを除去するベルト清掃装置24が設けられている。
【0014】
また、シート供給装置40は、シートSを収容するシート収容部41と、このシート収容部41に収容されたシートSを取り出して搬送する取り出しロール42とを備えている。そして、シート供給装置40より供給されたシートSの搬送路には、複数の搬送ロール43が設けられている。なお、シートSを構成する材料としては、各種紙材で構成されるものは勿論のこと、紙材の他に例えばOHPシート等に用いられる樹脂製のものであってもよく、紙材の表面に樹脂被膜のコーティングを施したものであってもよい。
【0015】
さらに、定着装置50は、シートSを加熱する加熱源を備えており、本実施の形態では、シートSに転写された画像を加熱・加圧することで定着するようになっている。
さらにまた、冷却装置55は、定着装置50によって加熱されたシートSを冷却する機能を有するものであって、例えば、シートSを挟むように配置された2つの金属ロール等の間に、シートSを接触させて通過させる構成を採用してよい。
そして、カール補正装置60は、シートSに生じたカール(湾曲)を補正する機能を有するものであればよい。
【0016】
ここで、本実施の形態の画像形成装置は、シート供給装置40から供給されたシートSの片面に画像を形成することができるのに加え、片面に画像を形成したシートSを反転搬送して、このシートSの他面にさらに画像を形成することができるように構成されている。このため、画像形成装置は、定着装置50、冷却装置55およびカール補正装置60を通過したシートSの表裏および搬送方向の先後端を反転させて再度二次転写装置30へと戻す反転搬送機構70を備えている。この反転搬送機構70は、カール補正装置60よりもシートSの搬送方向下流側に設けられ、シートSの進行方向を画像形成装置の外部に排出するための搬送路と反転搬送するための搬送路とに切り替えるための切り替え装置71を備えている。また、反転搬送機構70は、シートSを反転搬送するための搬送路内に設けられ、シートSの搬送方向を反転させることで、再度二次転写装置30に向かうシートSの表裏を反転させる反転装置72をさらに備えている。なお、シートSを反転搬送するための搬送路にも、複数の搬送ロール43が取り付けられている。
【0017】
さらに、本実施の形態の画像形成装置は、カール補正装置60よりもシートSの搬送方向下流側であって切り替え装置71よりもシートSの搬送方向上流側となる部位に設けられ、搬送されてくるシートSの搬送方向長さを測定する測長装置100をさらに備えている。なお、測長装置100の取り付け位置は、この部位に限られるのではなく、シートSを反転搬送するための搬送路に取り付けるようにしてもかまわない。
【0018】
そして、この画像形成装置は、画像形成装置を構成する各装置および各部の動作を制御する制御部80と、ユーザから受けた指示を制御部80に出力するとともに制御部80から受けた指示を図示しない画面等を介してユーザに提示するユーザインタフェース部(UI)90とをさらに備えている。
【0019】
図2および図3は、図1に示す画像形成装置に設けられた測長装置100の構成の一例を示すものである。ここで、図2(a)は測長装置100を画像形成装置の手前側(図1参照)からみた側面図であり、図2(b)は図2(a)をIIB方向からみた上面図である。また、図3は、図2(a)をIII方向すなわちシートSの搬送方向下流側からみた正面図である。
【0020】
測長装置100は、搬送路44の上方において第1回転軸110aを中心に回転する第1ロール110と、この第1ロール110の上方において第1ロール110に接触し第2回転軸120aを中心に回転する第2ロール120と、第1ロール110および第2ロール120を支持する支持機構130と、搬送路44を挟んで第1ロール110に対向し第3回転軸140aを中心に回転する第3ロール140とを備えている。また、測長装置100は、第1ロール110の回転数および回転量を検出する第1回転検出部170と、第2ロール120の回転数および回転量を検出する第2回転検出部180とをさらに備えている。
【0021】
第1回転体の一例としての第1ロール110は、第1回転軸110aの周囲に設けられた第1ロール本体111と、第1ロール本体111の外周面に形成される表面層112とを備えている。そして、第1ロール110の外周面には、表面層112で構成された第1周面部113が形成されている。本実施の形態において、第1ロール本体111および表面層112は、ともにゴム等の弾性体から構成されており、第1ロール本体111よりも表面層112の硬度が高く設定されている。なお、この例では、第1ロール110として2層構成のものを用いているが、単層あるいは3層以上のものを用いてもよい。また、第1ロール本体111および表面層112については、ゴム以外に例えばプラスチックで構成されていてもよく、それぞれが異なる材料で構成されていてもよい。さらに、第1ロール本体111については、例えばアルミニウム等の金属で構成されるものであってもよい。
【0022】
第2回転体の一例としての第2ロール120は、第2回転軸120aの周囲に設けられ、外周面も含めて例えばアルミニウム等の金属で構成された第2ロール本体121を有している。そして、第2ロール120の外周面には、第2ロール本体121で構成された第2周面部122が形成されている。
このように、本実施の形態では、搬送されてくるシートSと接する第1ロール110の第1周面部113が金属よりも摩擦係数の高いゴムで構成される一方、この第1ロール110の第1周面部113と接する第2ロール120の第2周面部122はゴムよりも熱膨張係数の小さい金属で構成されている。
【0023】
次に、支持機構130は、第1ロール110よりもシートSの搬送方向上流側且つ搬送路44の上方において第1回転軸110aおよび第2回転軸120aと同じ方向に伸びる支持軸130aと、支持軸130aを中心として回転可能に設けられた第1アーム131aおよび第2アーム132aとを備えている。ここで、支持軸130aは、測長装置100の筐体(図示せず)に固定支持されている。
【0024】
第1アーム131aは、シートSの搬送方向に沿って伸びる形状を有しており、シートSの搬送方向中流部側には支持軸130aが取り付けられるとともに、シートSの搬送方向下流側の端部には第1ロール110の第1回転軸110aが回転可能に取り付けられている。また、第1アーム131aのうち、支持軸130aの取り付け位置よりもシートSの搬送方向上流側の端部には穿孔が形成されており、この穿孔には第1バネ131bの一端が取り付けられている。この第1バネ131bは上方に向かって伸びる引張バネにて構成されており、第1バネ131bの他端側は測長装置100の筐体に取り付けられている。これにより、第1アーム131aには、第1バネ131bによって、支持軸130aを中心とし図2(a)において時計回り方向の力が加えられることになり、その結果、第1ロール110が第3ロール140(搬送路44側)に押し付けられるようになっている。なお、第1アーム131aおよび第1バネ131bは、第1ロール110の軸方向両端側にそれぞれ配置されている。また、本実施の形態では、第1アーム131aおよび第1バネ131bによって、第1ロール110を支持する第1支持部131が構成されている。
【0025】
次に、第2アーム132aは、上方に向かって立ち上がった後にシートSの搬送方向下流側に向かって屈曲するL字状の形状を有しており、下方となる一端側には支持軸130aが取り付けられるとともに、一端からみて上方且つシートSの搬送方向下流側となる他端側には第2ロール120の第2回転軸120aが回転可能に取り付けられている。また、第2アーム132aの上方側の端部には第2バネ132bの一端が取り付けられている。この第2バネ132bは上方に向かって伸びる圧縮バネにて構成されており、第2バネ131bの他端側は測長装置100の筐体に取り付けられている。これにより、第2アーム132aには、第2バネ132bによって、支持軸130aを中心とし図2(a)において時計回り方向の力が加えられるようになり、その結果、第2ロール120が第1ロール110側に押し付けられるようになっている。なお、第2アーム132aおよび第2バネ132bは、第2ロール120の軸方向両端側にそれぞれ配置されている。また、本実施の形態では、第2アーム132aおよび第2バネ132bによって、第2ロール120を支持する第2支持部132が構成されている。
【0026】
第3ロール140は、外周面も含めて例えばアルミニウム等の金属で構成されており、第1ロール110との対向部にシートSが存在する場合にはシートと接し、シートSが存在しない場合には第1ロール110と接するようになっている。なお、本実施の形態では、搬送路44を挟んで第1ロール110と対向する位置に第3ロール140を配置しているが、これに限られるものではなく、板金で構成された板材等、固定された部材を配置するようにしてもかまわない。
【0027】
さらに、測長装置100は、第1ロール110とシートS(あるいは第3ロール140)とが接する部位よりもシートSの搬送方向上流側において、シートSの搬送方向先端および後端の通過を検知する上流側検知センサ150と、第1ロール110とシートS(あるいは第3ロール140)とが接する部位よりもシートSの搬送方向下流側において、シートSの搬送方向先端および後端の通過を検知する下流側第1検知センサ151および下流側第2検知センサ152とを備えている。本実施の形態において、上流側検知センサ150、下流側第1検知センサ151および下流側第2検知センサ152は、それぞれ、LED(Light Emitting Diode)とフォトセンサとを有する光電センサからなり、搬送されるシートSが対向位置を通過するのを光学的に検出している。なお、上流側検知センサ150、下流側第1検知センサ151および下流側第2検知センサ152は、それぞれ、測長装置100の筐体(図示せず)に取り付けられている。
【0028】
特に、上流側検知センサ150および下流側第1検知センサ151は、シートSの搬送方向に沿って設けられた共通の取付部材190に取り付けられており、その結果、上流側検知センサ150および下流側第1検知センサ151は、シートSの搬送方向に沿う直線上に配置されるようになっている。また、下流側第1検知センサ151および下流側第2検知センサ152は、シートSの搬送方向に対し直角を成す方向に、シートSのうち第1ロール110と接触した部位を跨ぐように、並べて取り付けられている。なお、以下の説明においては、基準となる温度における、上流側検知センサ150による検出位置と下流側第1検知センサ151による検出位置との距離を、基準ギャップ長Lg0と称する。また、本実施の形態では、これら上流側検知センサ150、下流側第1検知センサ151および下流側第2検知センサ152が、端部検出手段として機能している。
【0029】
さらにまた、測長装置100は、取付部材190周囲の雰囲気温度を測定する第1温度センサ161と、第2ロール120周囲の雰囲気温度を測定する温度検出手段の一例としての第2温度センサ162とをさらに備える。ここで、第1温度センサ161は測長装置100の筐体(図示せず)に取り付けられており、第2温度センサ162は支持機構130に設けられた第2アーム132aに取り付けられている。なお、第1温度センサ161および第2温度センサ162は、周囲の雰囲気温度以外に取付部材190および第2ロール120の表面温度を測定するものでもよく、取付部材190および第2ロール120の内部温度を測定するものでもよい。また、本実施の形態の測長装置100は、定着装置50で加熱されたシートSが通過することになるため、測長装置100を通過するシートSの枚数が増加するのに伴い、測長装置100内の温度が変動する場合がある。また、この例では、シートSが、定着装置50および冷却装置55を通過した後に測長装置100に到達することになるが、その冷却が不十分となる場合には、熱を蓄積した状態で測長装置100内に侵入することになる。
【0030】
また、第1回転量検知手段の一例としての第1回転検出部170は、第1ロール110の第1回転軸110aに取り付けられ、第1ロール110とともに回転する円盤状の第1エンコーダホイール171と、第1エンコーダホイール171の側面と対向するように、支持機構130の第1アーム131aに取り付けられた第1光学検出部172とを備えている。ここで、第1エンコーダホイール171には、その側面(表裏面)を貫通するように、円周方向に等間隔となるように形成された複数の第1A相用スリット171aと、第1A相用スリット171aよりも半径方向外側となる位置に円周方向に1箇所だけ形成された第1Z相用スリット171zとを備えている。そして、第1光学検出部172は、第1ロール110を介した第1エンコーダホイール171の回転に伴う、複数の第1A相用スリット171aおよび単数の第1Z相用スリット171zの通過を、それぞれ光学的に検知するようになっている。また、この例では、第1エンコーダホイール171に、合計n個の第1A相用スリット171aが形成されているものとする。
【0031】
一方、第2回転量検知手段の一例としての第2回転検出部180は、第2ロール120の第2回転軸120aに取り付けられ、第2ロール120とともに回転する円盤状の第2エンコーダホイール181と、第2エンコーダホイール181の側面と対向するように、支持機構130の第2アーム132aに取り付けられた第2光学検出部182とを備えている。ここで、第2エンコーダホール181には、その側面(表裏面)を貫通するように、円周方向に等間隔となるように形成された複数の第2A相用スリット181aと、第2A相用スリット181aよりも半径方向外側となる位置に円周方向に1箇所だけ形成された第2Z相用スリット181zとを備えている。そして、第2光学検出部182は、第2ロール120を介した第2エンコーダホイール181の回転に伴う、複数の第2A相用スリット181aおよび単数の第2Z相用スリット181zの通過を、それぞれ光学的に検出するようになっている。また、この例では、第2エンコーダホイール181に、合計m個の第2A相用スリット181aが形成されているものとする。
【0032】
なお、本実施の形態では、第1回転検出部170および第2回転検出部180を、それぞれ、インクリメンタル型のロータリエンコーダを用いて実現しているが、これに限られるものではなく、各ロールの回転量を1周(2π(rad))未満を単位として測定できるものであればよい。また、本実施の形態では、第1回転検出部170および第2回転検出部180を、光量変動を利用したもので構成していたが、これに限られるものではなく、例えば磁気変動を利用したものでもかまわない。
【0033】
図4は、図1に示す制御部80の構成の一例を示すブロック図である。
この制御部80は、UI90や画像形成装置に接続された外部機器(図示せず)から出力される指示を受け付ける受付部81と、受付部81を介して印刷指示を受け付けた場合に、指示とともに送られてくる画像データに基づいて、イエロー、マゼンタ、シアンおよび黒の各色の画像信号を作成する画像信号作成部82とを備える。また、制御部80は、画像信号作成部82で作成された各色の画像信号を各画像形成ユニット10(より具体的には、各画像形成ユニット10に設けられた露光装置13)に出力するタイミングを調整し、また、画像信号作成部82で作成された各色の画像信号の副走査方向(シートSの搬送方向に対応する方向)倍率を調整する画像信号出力調整部83をさらに備えている。さらに、制御部80は、各画像形成ユニット10(10Y、10M、10C、10K)、二次転写装置30、シート供給装置40、定着装置50、冷却装置55、カール補正装置60、反転搬送機構70等、画像形成装置を構成する各部の動作を制御する動作制御部84を備えている。
【0034】
また、本実施の形態の制御部80は、測長装置100から入力される各種信号に基づき、各種演算処理を施す処理部85をさらに備えている。この処理部85は、測長装置100を通過するシートSの搬送方向長さであるシート長Lを演算する長さ演算部851と、そのときのシートの搬送速度であるシート速度Vを演算する速度演算部852と、シートSの通過に伴って第1ロール110の半径を演算する第1ロール半径演算部853と、長さ演算部851、速度演算部852および第1ロール半径演算部853のそれぞれにおける演算で使用される各種データを記憶する記憶部854と、第1ロール半径演算部853による演算結果に基づいて、第1ロール110が寿命に到達したか否かを判定する判定部855と、第1ロール演算部853による演算結果に基づいて、記憶部854に記憶されるデータの一部を更新する更新部856とを備えている。なお、本実施の形態では、長さ演算部851および速度演算部852がシート演算手段の一例として、第1ロール半径演算部852が半径分布演算手段の一例として、判定部855が異常検出手段の一例として、更新部856が更新手段の一例として、それぞれ機能している。
【0035】
そして、処理部85には、上流側検知センサ150から出力される上流側エッジ信号Suと、下流側第1検知センサ151から出力される下流側第1エッジ信号Sd1と、下流側第2検知センサ152から出力される下流側第2エッジ信号Sd2とが入力される。また、処理部85には、第1回転検出部170の第1光学検出部172から出力される、第1A相用スリット171aの検出結果である第1A相信号Sa1と、第1Z相用スリット171zの検出結果である第1Z相信号Sz1とが入力される。さらに、処理部85には、第2回転検出部180の第2光学検出部182から出力される、第2A相用スリット181aの検出結果である第2A相信号Sa2と、第2Z相用スリット181zの検出結果である第2Z相信号Sz2とが入力される。さらにまた、処理部85には、第1温度センサ161から出力される第1温度信号St1と、第2温度センサ162から出力される第2温度信号St2とが入力される。
【0036】
ここで、長さ演算部851で算出されたシート長Lは、画像信号出力調整部83に出力されて画像信号の出力調整に利用され、また、動作制御部84に出力されて画像形成装置を構成する各部の動作制御に利用される。これに対し、速度演算部852で算出されたシート速度V(速度情報)は、外部に出力されて各種処理に利用される。
【0037】
そして、制御部80は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等を備えており、CPUは、予めROMに記憶されたプログラムに従い、RAMとの間でデータのやりとりを行いながら処理を実行するようになっている。
【0038】
図5は、図1に示す画像形成装置を用いて、シートSの両面に画像形成を行う場合における制御部80の処理の内容の一例を示すフローチャートである。以下では、図5と図1〜図4とを参照しつつ説明を行う。
UI90あるいは外部機器より受付部81が印刷要求の指示を受け付けると(ステップ101)、動作制御部84は、画像形成装置を構成する各部を起動してウォームアップ動作を実行させ、画像信号作成部82は、入力される画像データに基づいてシートSの第1面に形成する各色の第1面の画像信号を作成する。次に、動作制御部84は、シート供給装置40よりシートSの供給を開始させ、画像信号出力調整部83は、画像信号作成部82で作成された各色の第1面の画像信号を、シートSの供給に同期させて各画像形成ユニット10(より詳細には各画像形成ユニット10に設けられた露光装置13)に出力する(ステップ102)。
【0039】
これに伴い、各画像形成ユニット10では、各色の第1面の画像信号に応じた画像(この例ではトナー像)の形成が行われる。具体的に説明すると、動作制御部84は、各画像形成ユニット10の感光体ドラム11を回転させ、回転する感光体ドラム11を帯電装置12によって帯電させた後、露光装置13からの各色の第1面の画像信号に対応するビームにより露光させることで、感光体ドラム11の表面に静電潜像を形成させる。次に、動作制御部84は、各感光体ドラム11に形成された静電潜像を、対応する各色の現像装置14によってそれぞれ現像させることで、各色の第1面の画像を形成させる。そして、動作制御部84は、各感光体ドラム11とともに回転駆動される中間転写ベルト20に対し、各一次転写装置15を用いて、各感光体ドラム11に形成された第1面の画像を順次一次転写させる(ステップ103)。一次転写されることで中間転写ベルト20上に重ね合わされた第1面の画像は、中間転写ベルト20のさらなる回転に伴って、二次転写装置30における二次転写ロール31とロール部材23との対向位置である二次転写位置へと向かう。
【0040】
一方、シート供給装置40から供給されたシートSは、搬送ロール43により搬送されて二次転写位置に到達する。そして、動作制御部84は、二次転写装置30を用いて、中間転写ベルト20上に形成された第1面の画像を、シートSの第1面に二次転写させる(ステップ104)。
【0041】
次に、動作制御部84は、第1面に画像が転写されたシートSに対し、定着装置50を用いて例えば加熱および加圧を行うことで第1面の画像をシートSに定着させ、さらに、定着装置50によって加熱されたシートSを、冷却装置55を用いて冷却させる(ステップ105)。そして、冷却装置55を通過したシートSは、カール補正装置60によってカールが補正された状態でさらに搬送されていく。
【0042】
第1面に画像が定着された片面記録済みのシートSは、冷却装置55からカール補正装置60を経て測長装置100に搬送される。測長装置100では、片面記録済みのシートSの搬送に伴って第1ロール110および第2ロール120が回転し、第1回転検出部170の第1光学検出部172からは第1ロール110の回転量に応じた第1A相信号Sa1および第1Z相信号Sz1が出力され、第2回転検出部180の第2光学検出部182からは第2ロール120の回転量に応じた第2A相信号Sa2および第2Z相信号Sz2が出力される。また、上流側検知センサ150からは上流側エッジ信号Suが出力され、下流側第1検知センサ151からは下流側第1エッジ信号Sd1が出力され、下流側第2検知センサ152からは下流側第2エッジ信号Sd2が出力される。
【0043】
測長装置100から出力される各種信号は、処理部85に入力される。そして、処理部85に設けられた長さ演算部851は、測長装置100から入力される各種信号と記憶部853に記憶された算出用のデータとを用いて、測長装置100を通過した片面記録済みのシートSのシート長Lを算出する(ステップ106)。その後、長さ演算部851は、算出したシート長Lを、画像信号出力調整部83および動作制御部84に出力する。なお、長さ演算部851における具体的な処理の内容については後述する。
【0044】
次に、画像信号出力調整部83は、処理部85(長さ演算部851)から受け取ったシート長Lに基づいて、画像信号作成部82で作成される各色の第2面の画像信号を各画像形成ユニット10に設けられた露光装置13に出力するタイミング(露光装置13による感光体ドラム11への書き出し位置)と、画像信号作成部82で作成される各色の第2面の画像信号の副走査方向倍率(拡縮量)とを算出する(ステップ107)。
【0045】
一方、動作制御部84は、片面記録済みのシートSの搬送方向先端が到達するまでに、反転搬送するための搬送路側に切り替え装置71を切り替えさせるとともに、反転装置72に搬入されてくるシートSを、その進行方向を反転させることで表裏を反転させて排出させる。その結果、片面記録済みのシートSは、反転搬送機構70により、二次転写装置30よりも搬送方向上流側の搬送路に向けて反転搬送される(ステップ108)。
【0046】
続いて、画像信号作成部82は、入力される画像データに基づいてシートSの第2面に形成する各色の第2面の画像信号を作成する。また、動作制御部84は、反転搬送される片面記録済みのシートSをさらに搬送し、画像信号出力調整部83は、画像信号作成部82で作成された各色の第2面の画像信号を、ステップ107で算出された書き出し位置と拡縮量とに応じて調整した後に、反転搬送される片面記録済みのシートSの供給に同期させて各画像形成ユニット10(より詳細には各画像形成ユニット10に設けられた露光装置13)に出力する(ステップ109)。
【0047】
これに伴い、各画像形成ユニット10では、各色の第2面の画像信号に応じた画像の形成が行われる。具体的に説明すると、動作制御部84は、各画像形成ユニット10の感光体ドラム11を回転させ、回転する感光体ドラム11を帯電装置12によって帯電させた後、露光装置13からの各色の第2面の画像信号に対応するビームにより露光させることで、感光体ドラム11の表面に静電潜像を形成させる。次に、動作制御部84は、各感光体ドラム11に形成された静電潜像を、対応する各色の現像装置14によってそれぞれ現像させることで、各色の第2面の画像を形成させる。そして、動作制御部84は、各感光体ドラム11とともに回転駆動される中間転写ベルト20に対し、各一次転写装置15を用いて、各感光体ドラム11に形成された第2面の画像を順次一次転写させる(ステップ110)。一次転写されることで中間転写ベルト20上に重ね合わされた第2面の画像は、中間転写ベルト20のさらなる回転に伴って二次転写位置へと向かう。
【0048】
一方、反転搬送される片面記録済みのシートSは、搬送ロール43により搬送されて再び二次転写位置に到達する。そして、動作制御部84は、二次転写装置30を用いて、中間転写ベルト20上に形成された第2面の画像を、シートSの第2面に二次転写させる(ステップ111)。
【0049】
次に、動作制御部84は、第2面に画像が転写されたシートSに対し、定着装置50を用いて例えば加熱および加圧を行うことで第2面の画像をシートSに定着させ、さらに、定着装置50によって加熱されたシートSを、冷却装置55を用いて冷却させる(ステップ112)。そして、冷却装置55を通過したシートSは、カール補正装置60によってカールが補正された状態でさらに搬送されていく。
【0050】
また、動作制御部84は、第1面および第2面に画像が定着された両面記録済みのシートSの搬送方向先端が到達するまでに、画像形成装置の外部に排出するための搬送路側に切り替え装置71を切り替えさせており、両面記録済みのシートSは、搬送に伴って画像形成装置の外部に排出されて(ステップ113)、一連の動作を完了する。
【0051】
上記した手順による両面画像形成が、複数のシートSに対して行われると、それぞれに両面画像を形成した複数のシートSを束ねて1つの冊子が作成される。その際、複数のシートS間においてシート長Lにばらつきが生じていても、測長装置100により測定されたシート長Lに基づいて書き出し位置や副走査倍率等の形成条件が調整されるので、左右見開きまたは上下見開きとした場合におけるシート間の記録位置のずれ量が低減され、シート長Lに基づく調整を行わない場合に比べて高品質の冊子が作成される。
【0052】
なお、ここでは、画像信号出力調整部83により、露光装置13に供給する第2面の画像信号の出力調整を行うことで、シートSの第1面および第2面に形成される画像のずれを抑制するようにしていたが、これに限られるものではない。例えば中間転写ベルト20の移動速度に対する各感光体ドラム11の回転速度を調整することで、副走査方向の倍率調整を行うようにしてもよい。
【0053】
図6は、シートSが測長装置100を通過する前後において出力される、上流側エッジ信号Suと、下流側第1エッジ信号Sd1と、下流側第2エッジ信号Sd2と、第2A相信号Sa2と、第2Z相信号Sz2と、第1Z相信号Sz1と、第1温度信号St1と、第2温度信号St2との関係を示すタイミングチャートである。なお、図6においては、第1A相信号Sa1の記載を省略している。
【0054】
測長装置100にシートSが進入する前の初期状態では、シートSが存在しないために、上流側エッジ信号Suと、下流側第1エッジ信号Sd1と、下流側第2エッジ信号Sd2とが、それぞれハイレベル(H)となっている。また、初期状態においては、第1ロール110および第2ロール120が停止しているために、第2A相信号Sa2と、第2Z相信号Sz2と、第1Z相信号Sz1とが、それぞれあるレベル(この例ではローレベル(L))を維持している。
【0055】
次に、シートSの搬送に伴い、シートSの搬送方向先端(以下、単に「先端」という)が上流側検知センサ150による検出位置に到達すると、上流側エッジ信号Suがハイレベルからローレベルに移行する。
【0056】
続いて、搬送されるシートSの先端が第1ロール110との対向部に到達すると、第1ロール110がシートSから受ける力によって回転し始め、第1ロール110と接触する第2ロール120、および、シートSを挟んで第1ロール110に対向配置される第3ロール140も回転し始める。これに伴い、第1ロール110とともに第1エンコーダホイール171も回転を開始し、第2ロール120とともに第2エンコーダホイール181も回転を開始する。その結果、第2A相信号Sa2(および図示しない第1A相信号Sa1)がそれぞれハイレベルとローレベルとを繰り返すようになる。ただし、第1ロール110は、回転開始直後に直ちにシートSに追従できるようになるわけではなく、徐々に増速されていくことになる。したがって、第1ロール110の回転に伴って回転する第2ロール120も徐々に増速されていくことになり、結果として第2A相信号Sa2(および図示しない第1A相信号Sa1)におけるハイレベル−ローレベル間の移行間隔が徐々に短くなっていく。なお、以下の説明においては、第2A相信号Sa2がローレベルからハイレベルへと移行する(以下では、『立ち上がる』と称する)ときから、次に立ち上がるまでを、『1パルス』と称する。
【0057】
その後、搬送されるシートSの先端が下流側第1検知センサ151による検出位置に到達する第1時刻te1において、下流側第1エッジ信号Sd1がハイレベルからローレベルに移行する。また、この例では、これに続いて、搬送されるシートSの先端が下流側第2検知センサ152による検出位置に到達する第2時刻te2において、下流側第2エッジ信号Sd2がハイレベルからローレベルに移行する。
【0058】
ここで、シートSの先端が下流側第1検知センサ151、下流側第2検知センサ152のどちらに先に検知されるかは、搬送されるシートSの姿勢(斜行状態)によって変わる。図6は、下流側第1検知センサ151が、下流側第2検知センサ152よりも先にシートSの先端を検知した場合を例示するものであるが、両者の前後関係が逆転する場合もあり得る。ただし、本実施の形態においては、前後関係とは無関係に、上流側検知センサ150の下流側に配置された下流側第1検知センサ151によってシートSの先端が検知された時刻を第1時刻te1とし、下流側第2センサ152によってシートSの先端が検知された時刻を第2時刻te2としている。ここで、下流側第1検知センサ151は下流側第1エッジ信号Sd1としてアナログ信号を出力しており、また、下流側第2検知センサ152は下流側第2エッジ信号Sd2としてアナログ信号を出力していることから、本実施の形態では、それぞれにおけるハイレベルとローレベルとの中間値を閾値として、第1時刻te1と第2時刻te2とを決定している。
【0059】
第1時刻te1および第2時刻te2において、上流側エッジ信号Suはローレベルを維持している。また、第1ロール110が、第2時刻te2までにシートSに追従して回転するようになり、第2ロール120も、第1ロール110を介してシートSに追従して回転するようになる。
【0060】
第2時刻te2の後、シートSの搬送方向後端(以下、単に「後端」という)が上流側検知センサ150による検出位置に到達する第3時刻te3において、上流側エッジ検知信号Suがローレベルからハイレベルに移行する。本実施の形態では、上述した理由により、ローレベルとハイレベルとの中間値を閾値として、第3時刻te3を決定している。
【0061】
第3時刻te3において、シートSは第1ロール110と第3ロール140との対向部を通過し続けており、これによって第1ロール110および第2ロール120は回転し続けている。また、第3時刻te3において、下流側第1エッジ信号Sd1および下流側第2エッジ信号Sd2はローレベルを維持している。
【0062】
第3時刻te3の後、搬送されるシートSの後端が第1ロール110との対向部を通過すると、第1ロール110はシートSから力を受けなくなり、これに伴って第2ロール120は第1ロール110から力を受けなくなる。ただし、第1ロール110は直ちに回転を停止するのではなく、徐々に減速されてから停止することになるため、結果として第2A相信号Sa2(および第1A相信号Sa1)におけるハイレベル−ローレベルの移行間隔が徐々に長くなっていき、最終的にはレベルが変化しなくなる(この例ではローレベルとなっている)。
【0063】
そして、搬送されるシートSの後端が下流側第1検知センサ151による検出位置を通過すると、下流側第1エッジ信号Sd1がローレベルからハイレベルに移行し、さらに、搬送されるシートの後端が下流側第2検知センサ152による検出位置を通過すると、下流側第2エッジ信号Sd2がローレベルからハイレベルに移行する。このようにして、1枚のシートSが測長装置100を通過することにより、測長装置100から出力される各信号(第1温度信号St1、第2温度信号St2を除く)は初期状態に戻り、次のシートSの搬送を待つことになる。
【0064】
ここで、下流側第1検知センサ151によってシートSの先端が検知される第1時刻te1と、第2A相信号Sa2が立ち上がるタイミングとは、必ずしも一致しない(図6左下側の拡大図参照)。以下の説明においては、第1時刻te1からその直後に第2A相信号Sa2が立ち上がるまでの期間を先端側端数パルス期間T1と称し、先端側端数パルス期間T1を含む第2A相信号Sa2の1パルス分の期間を先端側1パルス期間T2と称する。
一方、上流側検知センサ150によってシートSの後端が検知される第3時刻te3と、第2A相信号Sa2が立ち上がるタイミングとは、必ずしも一致しない(図6右下側の拡大図参照)。以下の説明においては、第3時刻te3からその直前に第2A相信号Sa2が立ち上がるまでの期間を後端側端数パルス期間T3と称し、後端側端数パルス期間T3を含む第2A相信号Sa2の1パルス分の期間を後端側1パルス期間T4と称する。
また、以下の説明においては、第1時刻te1から第2時刻te2に至る期間を、斜行検出期間T5と称する。なお、斜行検出期間T5は、第1時刻te1を基準として算出されるため、正の値をとる場合(第1時刻te1よりも第2時刻te2が後になる場合)と負の値をとる場合(第1時刻te1よりも第2時刻te2が前となる場合)とが存在する。
【0065】
また、上述した説明では触れていなかったが、第1ロール110の回転に伴って第1エンコーダホイール171が1回転する毎に、第1Z相信号Sz1が一時的にローレベルからハイレベルに移行することを繰り返すことになる。また、第2ロール120の回転に伴って第2エンコーダホイール181が1回転する毎に、第2Z相信号Sz2が一時的にローレベルからハイレベルに移行することを繰り返すことになる。なお、この例では、図2等から明らかなように、第1ロール110に比べて第2ロール120が小径であるため、第1Z相信号Sz1の1周期に比べて第2Z相信号Sz2の1周期がより短くなっている。
【0066】
図7は、処理部85が実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。
処理部85は、UI90を介してキャリブレーションモードの設定がなされたか否かを判断する(ステップ201)。なお、キャリブレーションモードの設定がなされた場合、本実施の形態の画像形成装置は、測長装置100を介したシートSの搬送を実行させる。なお、搬送されるシートSには、画像の形成を行ってもよいし、行わなくてもよい。
【0067】
ステップ201において肯定の判断がなされた場合、シートSが測長装置100を通過するのに伴い、処理部85には、図6に示したような、上流側エッジ信号Su、下流側第1エッジ信号Sd1、下流側第2エッジ信号Sd2、第1A相信号Sa1、第1Z相信号Sz1、第2A相信号Sa2、第2Z相信号Sz2、第1温度信号St1、第2温度信号St2が入力されてくる(ステップ202)。
そして、処理部85に設けられた第1ロール半径演算部853は、これら各種信号と記憶部854から読み込んだ各種データとに基づいて、第1ロール半径データr1_newを算出し、算出された第1ロール半径データr1_newを更新部856が記憶部854に記憶させることにより、第1ロール半径データr1_newの更新を行う(ステップ203)。なお、第1ロール半径データr1_newおよびステップ203の詳細については後述する。
【0068】
次に、処理部85に設けられた判定部855は、第1ロール半径演算部853によって算出された第1ロール半径データr1_newに基づき、第1ロール110における外径異常の検出を実行する(ステップ204)。
【0069】
ステップ204において否定の判断すなわち外径異常が検出されなかった場合、処理部85は、キャリブレーションモードにおける一連の処理を完了する。
これに対し、ステップ204において肯定の判断すなわち外径異常が検出された場合、判定部855は、動作制御部84に制御信号を出力して画像形成装置の動作を停止させ(ステップ205)、UI90に制御信号を出力し、UI90を介した故障通知を行わせ(ステップ206)、その後処理を完了する。
【0070】
一方、ステップ201において否定の判断がなされた場合、処理部85は、UI90等を介して画像形成動作すなわちジョブの開始要求が受け付けられたか否かを判断する(ステップ207)。
【0071】
ステップ207において肯定の判断がなされた場合、画像形成動作に伴ってシートSが測長装置100を通過するのに伴い、処理部85には、図6に示したような、上流側エッジ信号Su、下流側第1エッジ信号Sd1、下流側第2エッジ信号Sd2、第1A相信号Sa1、第1Z相信号Sz1、第2A相信号Sa2、第2Z相信号Sz2、第1温度信号St1、第2温度信号St2が入力されてくる(ステップ208)。
そして、処理部85に設けられた第1ロール半径演算部853は、これら各種信号と記憶部854から読み込んだ各種データとに基づいて、第1ロール半径データr1_newを算出し、算出された第1ロール半径データr1_newを更新部856が記憶部854に記憶させることにより、第1ロール半径データr1_newの更新を行う(ステップ209)。
【0072】
次に、処理部85に設けられた判定部855は、第1ロール半径演算部853によって算出された第1ロール半径データr1_newに基づき、第1ロール110における外径異常の検出を実行する(ステップ210)。なお、ステップ209およびステップ210における処理の内容は、上述したステップ203およびステップ204で実行されるものと同じである。
【0073】
ステップ210において否定の判断すなわち外径異常が検出されなかった場合、処理部85に設けられた長さ算出部851は、外部から入力される各種信号と、記憶部854から読み込んだ各種データ(ステップ209で更新された第1ロール半径データr1_newを含む)とに基づいて、シートSの搬送方向長さであるシート長Lを算出する(ステップ211)。
そして、処理部85は、ジョブが終了したか否かの判断を行う(ステップ212)。ステップ212において否定の判断がなされた場合には、ステップ208に戻って、次のシートSのシート長Lの算出を行い、ステップ212において肯定の判断がなされた場合には、ジョブにおける一連の処理を完了する。また、上記ステップ207において否定の判断がなされた場合には、シート長Lの算出を行うことなく処理を完了する。
【0074】
一方、ステップ210において肯定の判断すなわち外径異常が検出された場合、判定部855は、動作制御部84に制御信号を出力して画像形成装置の動作を停止させ(ステップ205)、UI90に制御信号を出力し、UI90を介した故障通知を行わせ(ステップ206)、その後処理を完了する。
【0075】
次に、長さ演算部851におけるシート長Lの算出手順(ステップ211)について、図4および図6等を参照しつつ、具体的に説明を行う。本実施の形態では、測長装置100を用いたシートLの算出において、第1ロール110の外径のむらに起因する誤差や、第2ロール120の外径のむらおよび測長で使用される第2A相用スリット181aの形成位置のずれに起因する誤差を低減するための補正を行っている。
【0076】
測長装置100をシートSが通過することに伴い、長さ演算部851には、図6に示したような、上流側エッジ信号Su、下流側第1エッジ信号Sd1、下流側第2エッジ信号Sd2、第2A相信号Sa2、第2Z相信号Sz2、第1Z相信号Sz1、第1温度信号St1、第2温度信号St2が入力されてくる。
【0077】
長さ演算部851は、下流側第1エッジ信号Sd1から第1時刻te1を、下流側第2エッジ信号Sd2から第2時刻te2を、上流側エッジ信号Suから第3時刻te3を、それぞれ取得する。
次に、長さ演算部851は、第1時刻te1と第2時刻te2とに基づいて斜行検出期間T5を算出し、第1時刻te1と第3時刻te3と第1温度信号St1とに基づいて第1温度Temp1を算出し、第1時刻te1と第3時刻te3と第2温度信号St2とに基づいて第2温度Temp2を算出する。ここで、第1温度Temp1は、第1時刻te1から第3時刻te3に至る期間における第1温度信号St1の平均値として求められ、第2温度Temp2は、第1時刻te1から第3時刻te3に至る期間における第2温度信号St2の平均値として求められる。
【0078】
続いて、長さ演算部851は、第1時刻te1と第3時刻te3と第2A相信号Sa2と第2Z相信号Sz2とに基づいて、第2ロール120の第2ロール回転数Nを計数する。ここで、第2ロール回転数Nは、第1時刻te1から第3時刻te3に至る期間における第2ロール120の総回転数を表す値であり、この例では最初を0回転目としている。なお、図6に示す例では、0回転目(図6においては<0>で示す)から3回転目(図6においては<3>で示す)まで(N=3)となっている。また、以下では、第1時刻te1から第3時刻te3に至る期間における第2ロール120の回転を『j回転目』として表現する。したがって、jは0≦j≦N(jおよびNはともに整数)の範囲となる。
【0079】
さらに、長さ演算部851は、第1時刻te1と第3時刻te3と第2A相信号Sa2と第2Z相信号Sz2とに基づいて、初期パルス数n1と末期パルス数n2とを計数する。ここで、初期パルス数n1は、第2ロール120が0回転目(j=0)の間に計数される第2A相信号Sa2のパルスの数である。ただし、初期パルス数n1は、第1時刻te1直後の端数(整数未満)のパルスを除外した整数で表される。一方、末期パルス数n2は、第2ロール120が最終回転目(この例ではj=N=3)の間に計数される第2A相信号Sa2のパルスの数である。ただし、末期パルス数n2は、第3時刻te3直前の端数(整数未満)のパルスを除外した整数で表される。
【0080】
さらにまた、長さ演算部851は、第1時刻te1と第2A相信号Sa2とに基づいて、先端側端数パルス期間T1と先端側1パルス期間T2とを取得し、第3時刻te3と第2A相信号Sa2とに基づいて、後端側端数パルス期間T3と後端側1パルス期間T4とを取得する。
【0081】
次に、長さ演算部851は、第1ロール110の外径に起因する誤差や、第2ロール120の外径のむらおよび測長で使用される第2A相用スリット181aの形成位置のずれに起因する誤差を補正するための第2ロール回転補正係数テーブルR[j,i]を作成する。この第2ロール回転補正係数テーブルR[j,i]は、第1時刻te1から第3時刻te3に至る期間における、第1ロール110と第2ロール120とのロール間位相差(図6に示すΔθ=x[j]を参照)に基づいて作成される。なお、第2ロール回転補正係数テーブルR[j,i]の作成手順については後述する。
【0082】
そして、長さ演算部851は、上述した手順で得られた各種数値および各種データを用いて、シート長Lの算出を行う。以下には、シート長Lの算出において用いられる複数の数式を示す。
【0083】
【数1】

【0084】
シート長Lは、式(1)に示すように、補正測定長Lmおよび斜行検出期間T5を変数とするスキュー補正関数f4として表される。そして、補正測定長Lmは、式(2)に示すように、補正ギャップ長Lgとロール測定長Lrとの和で表される。
【0085】
ここで、補正ギャップ長Lgは、シートSが上流側検知センサ150および下流側第1検知センサ151のいずれか一方のみによって検知されている期間に対応して、上流側検知センサ150と下流側第1検知センサ151との距離である基準ギャップ長Lg0(図2(b)参照)に基づいて求められる。これに対し、ロール測定長Lrは、シートSが上流側検知センサ150および下流側検知センサ151によって検知されている期間すなわち第1時刻te1から第3時刻te3に至る期間に対応して、第1ロール110の回転に伴う第2ロール120の回転量に基づいて求められる。
【0086】
より具体的に説明すると、補正ギャップ長Lgは、式(3)に示すように、基準ギャップ長Lg0と取付部材190の熱膨張係数αと第1温度Temp1とを乗算することによって得られる。なお、基準ギャップ長Lg0および熱膨張係数αは、記憶部854に予め記憶されている。
【0087】
一方、ロール測定長Lrは、式(4)に示すように、ロール第1パルス数Y1とロール第2パルス数Y2とロール第3パルス数Y3とを加算したものに、第2A相用スリット181aの分解能λ(図6参照)と第2ロール120の熱膨張係数βと第2温度Temp2とを乗算することによって得られる。なお、分解能λおよび熱膨張係数βは、記憶部854に予め記憶されている。
【0088】
ここで、ロール第1パルス数Y1は、先端側端数パルス期間T1の終了後から後端側端数パルス期間T3の開始前までの期間における第2A相信号Sa2のパルス数に対応する。また、ロール第2パルス数Y2は、先端側端数パルス期間T1における第2A相信号Sa2のパルス数に対応する。さらに、ロール第3パルス数Y3は、後端側端数パルス期間T3における第2A相信号Sa2のパルス数に対応する。
【0089】
これらのうち、ロール第1パルス数Y1は、式(5)に示すように、第2ロール120の第2ロール回転数N、初期パルス数n1、末期パルス数n2、および各ロール間位相差x[j](0≦j<N)を変数とするロール・エンコーダ補正関数f1として表される。
また、ロール第2パルス数Y2は、式(6)に示すように、先端側端数パルス期間T1と先端側1パルス期間T2との比、初期パルス数n1、および0番目のロール間位相差x[0]を変数とする先端パルス数計算関数f2として表される。
さらに、ロール第3パルス数Y3は、式(7)に示すように、後端側端数パルス期間T3と後端側1パルス期間T4との比、末期パルス数n2、およびN番目のロール間位相差x[N]を変数とする後端パルス数計算関数f3として表される。
【0090】
本実施の形態では、シート長Lの算出においてロール測定長Lrの算出に用いられる第2A相信号Sa2のパルス数を、ロール間位相差x[j]に基づいて得られるロール第2ロール回転補正係数テーブルR[j,i]を用いて補正し、ロール第1パルス数Y1、ロール第2パルス数Y2、およびロール第3パルス数Y3を得ている。
【0091】
図8は、第2ロール回転補正係数テーブルR[j,i]の作成手順の一例を示すフローチャートである。また、図9は、図8に示すステップ303における処理の内容を説明するための図である。また、図10および図11は、図8に示すステップ307における処理の内容を説明するための図である。
【0092】
長さ演算部851は、まず、第1時刻te1と第3時刻te3と第2Z相信号Sz2とに基づいて、第2ロール120の第2ロール回転数Nを計数する(ステップ301)。次に、長さ演算部851は、j=0に設定を行い(ステップ302)、j番目の第2Z相信号Sz2の立ち上がりを基準とし、第2A相信号Sa2のj番目における第2ロールパルス間隔p2[j,i](0≦i≦n)を算出する(ステップ303:図9も参照)。続いて、長さ演算部851は、j番目の第2Z相信号Sz2の立ち上がりから第1Z相信号Sz1の立ち上がりまでに至る期間における第2A相信号Sa2のパルスのカウント数をΔθ=x[j]として算出する(ステップ304:図9参照)。
【0093】
次いで、長さ演算部851は、記憶部854から第1ロール半径データr1_new[i](0≦i<INT(n*r1/r2))を読み込む(ステップ305:図11(a)参照)。また、長さ演算部851は、記憶部854から第2ロール外径・スリット補正データr2[i](0≦i≦n)を読み込む(ステップ306:図11(b)参照)。
【0094】
その後、長さ演算部851は、ステップ305で読み込んだ第1ロール半径データr1_new[i]から取得した2つのデータ(r1_new[i](x[j]≦i≦x[j]+n−1(mod INT(n*r1/r2)))およびr1_new[g](x[j]+θ10≦g≦x[j]+θ10+n−1(mod INT(n*r1/r2)))(ともに図11(a)参照)と、ステップ306で読み込んだ第2ロール外径・スリット補正データr2[i](0≦i<n)(図11(b)参照)とに基づき、第2ロール回転補正係数テーブルR[j,i]=r2[i]*r1_new[g]/r1_new[i]を作成する(ステップ307)。
【0095】
続いて、長さ演算部851は、ステップ303で得られた第2ロールパルス間隔p2[j,i]と、ステップ307で得られた、第2ロール回転補正係数テーブルR[j,i]とを用いて、それぞれのパルス間隔の補正を行うことで、j番目の回転に対応する補正後の第2ロールパルス間隔p2[j,i]”=p2[j,i]*R[j,i](0≦i≦n)を算出する(ステップ308)。そして、長さ演算部851は、jをj+1に更新し(ステップ309)、更新後のjの値が第2ロール回転数N以下であるか否かを判断する(ステップ310)。ステップ310において肯定の判断がなされた場合は、ステップ303に戻って処理を続行する。
【0096】
一方、ステップ310において否定の判断がなされた場合、長さ演算部851は、第2ロール回転数Nのそれぞれにおいてステップ308で求められた補正後の第2ロールパルス間隔p2[j,i]”(0≦j≦N、0≦j<n)に基づき、第1時刻te1から第3時刻te3に至る期間における補正後の第2A相信号Sa2の立ち上がりタイミングt2[i]”を算出し(ステップ311)、一連の処理を完了する。
【0097】
ここで、図10および図11について説明を行う。図10は、測長装置100を用いた測定における誤差の発生理由を説明するための図である。また、図11(a)は第1ロール半径データr1_new[i]の一例を示す図であり、図11(b)は第2ロール外径・スリット補正データr2[i]の一例を示す図である。なお、図10では、第1エンコーダホイール171および第2エンコーダホイール181についてはその記載を省略する一方、これらに設けられる第1A相用スリット171aおよび第1Z相用スリット171z、第2A相用スリット181a、第2Z相用スリット181zについては模式的な記載を行っている。
【0098】
なお、以下の説明においては、シートSと第1ロール110との接触部位をシートニップ部Nsと呼び、第1ロール110と第2ロール120との接触部位をロールニップ部Nrと呼ぶ。また、第1回転軸110aからシートニップ部Nsに至る部位での第1ロール110の半径を第1シートニップ半径R11と呼び、第1回転軸110aからロールニップ部Nrに至る部位での第1ロール110の半径を第1ロールニップ半径R12と呼ぶ。一方、第2回転軸120aからロールニップ部Nrに至る部位での第2ロール120の半径を第2ロールニップ半径R20と呼ぶ。
【0099】
また、第1ロール110側において、第1回転軸110aを中心とし、第1Z相用スリット171zの位置と第1光学検出部172による第1Z相用スリット171zの検出位置との成す角度を第1ロール回転角度θ1と呼ぶ。さらに、第1ロール110側において、第1回転軸110aを中心とし、第1光学検出部172による第1Z相用スリット171zの検出位置とシートニップ部Nsとの成す角度を第1ロール第1設定角度θ11と呼ぶ。さらにまた、第1ロール110側において、第1回転軸110aを中心とし、シートニップ部Nsとロールニップ部Nrとの成す角度を第1ロール第2設定角度θ12と呼ぶ。また、第1ロール第1設定角度θ11と第1ロール第2設定角度θ12とを加算したもの、すなわち、第1回転軸110aを中心とし、第1光学検出部172による第1Z相用スリット171zの検出位置とロールニップ部Nrとの成す角度を第1ロール設定角度θ10と呼ぶ。なお、第1ロール回転角度θ1、第1ロール第1設定角度θ11および第1ロール第2設定角度θ12は、第1ロール110の回転方向(図10において反時計回り方向)とは反対側に向かう方向(図10において時計回り方向)を正として定義される。また、第1ロール回転角度θ1の大きさは第1ロール110の回転に伴って変化するが、第1ロール第1設定角度θ11および第1ロール第2設定角度θ12の大きさは固定である。
【0100】
一方、第2ロール120側において、第2回転軸120aを中心とし、第2Z相用スリット181zの位置と第2光学検出部182による第2Z相用スリット181zの検出位置との成す角度を第2ロール回転角度θ2と呼ぶ。さらに、第2ロール120側において、第2回転軸120aを中心とし、第2光学検出部182による第2Z相用スリット181zの検出位置とロールニップ部Nrとの成す角度を第2ロール設定角度θ20と呼ぶ。なお、第2ロール回転角度θ2および第2ロール設定角度θ20は、第2ロール120の回転方向(図10において時計回り方向)とは反対側に向かう方向(図10において反時計回り方向)を正として定義される。また、第2ロール回転角度θ2の大きさは第2ロール120の回転に伴って変化するが、第2ロール設定角度θ20の大きさは固定である。
【0101】
本実施の形態で用いる第1ロール110および第2ロール120は、予め決められた許容範囲内の精度で製造されている。このため、第1ロール110における第1シートニップ半径R11と第1ロールニップ半径R12とが異なっている場合があり得る。また、測定動作において第1ロール110が回転することから、第1シートニップ半径R11と第1ロールニップ半径R12との関係が、第1ロール110の回転に伴って刻々と変化し得る。また、測定動作において第2ロール120も回転することから、第2ロールニップ半径R20も、第2ロール120の回転に伴って刻々と変化し得る。さらに、設計時における第1ロール110の半径と第2ロール120との半径とが異なっている場合(この例では第2ロール120よりも第1ロール110の方が大径である)には、第1ロール110および第2ロール120それぞれの状態(位相)により、第1ロールニップ半径R12と第2ロールニップ半径R20との関係も、第1ロール110および第2ロール120の回転に伴って刻々と変化し得る。
【0102】
また、本実施の形態で用いる第2エンコーダホイール181も、予め決められた許容範囲内の精度で製造されている。このため、第2エンコーダホイール181において円周方向に等間隔とすべく設けられた複数の第2A相用スリット181aも、それぞれにおける間隔が設計値からずれている場合があり得る。
【0103】
例えば第1ロール110において偏心が生じていると、シートニップ部Nsにおける第1周面部113の表面速度(シートニップ速度と称する)と、ロールニップ部Nrにおける第1周面部113の表面速度(ロールニップ速度と称する)とに差異が生じる。より具体的に説明すると、ロールニップ速度は、シートニップ速度に(第1ロールニップ半径R12/第1シートニップ半径R11)を乗じたもので表される。
【0104】
また、第2ロール120において偏心が生じていると、シートニップ部Nsに対応する位置における第2エンコーダホイール181の回転量と、第2光学検出部182に対応する位置における第2エンコーダホイール181の回転量とに差異が生じる。そして、第2エンコーダホイール181に設けられた複数の第2A相用スリット181aの形成間隔が均等でない場合には、このことに起因する差異が、さらに重畳されることになってしまう。
【0105】
そこで、本実施の形態では、画像形成装置を出荷する前に、測長装置100を用いて、第1Z相用スリット171zの形成位置を基準とし、第1ロール110の位相(回転角度)と第1ロール110の半径分布とを対応付けるための測定を行い、その結果を、半径分布の基準の一例としてのイニシャル第1ロール半径データr1_init[i]として記憶部854に記憶させている。また、半径分布の基準の一例としてのイニシャル第1ロール半径データr1_init[i]は、最初の第1ロール半径データr1_new[i]としても使用される。
【0106】
また、本実施の形態では、画像形成装置を出荷する前に、測長装置100を用いて、第2Z相用スリット181zの形成位置を基準とし、第2ロール120の位相(回転角度)と第2ロール120の半径分布および第2エンコーダホイール181において隣接する第2A相用スリット181a間の間隔分布とを対応付けるための測定を行い、その結果を正負反転させ且つ規格化して得られた第2ロール外径・スリット補正データr2[i]を、記憶部854に記憶させている。
【0107】
図11(a)は上述した第1ロール半径データr1_new[i]の一例を示しており、図11(b)は上述した第2ロール外径・スリット補正データr2[i]の一例を示している。なお、これら第1ロール半径データr1_new[i]および第2ロール補正データr2[i]は、それぞれ、数値同士を対応付けたデータとして記憶部854に記憶されるものであるが、ここでは、理解を助けるために、それぞれをグラフ化して示している。
【0108】
図11(a)において、横軸は第1ロール回転角度θ1(rad)であり、縦軸は第1ロール110の半径(mm)である。ここで、図10および図11(a)を参照して説明すると、第1ロール回転角度θ1が例えばπ/2(rad)であるとき、第1ロール110におけるシートニップ部Nsは、第1ロール回転角度θ1から第1ロール第1設定角度θ11(図11(a)に示す例ではπ(rad))だけ遅れた位置となるので、そのときの第1シートニップ半径R11はθ1=3π/2(rad)での大きさとなる。また、第1ロール110のロールニップ部Nrは、第1ロール回転角度θ1から第1ロール第1設定角度θ11(図11(a)に示す例ではπ(rad))および第1ロール第2設定角度θ12(図11(a)に示す例では3π/4(rad))だけ遅れた位置となるので、そのときの第1ロールニップ半径R12は、θ1=9π/4(rad)すなわちθ1=π/4(rad)での大きさとなる。第1ロール回転角度θ1は、第1ロール110の回転に伴って変化するが、第1ロール第1設定角度θ11および第1ロール第2設定角度θ12(したがって第1ロール設定角度θ10も)は変わらないため、第1Z相用スリット171zを利用して第1ロール11の第1ロール回転角度θ1を把握することで、そのときの第1シートニップ半径R11および第1ロールニップ半径R12を得ることが可能になる。
【0109】
一方、図11(b)において、横軸は第2ロール回転角度θ2(rad)であり、縦軸は補正係数である。ここで、図10および図11(b)を参照して説明すると、第2ロール回転角度θ2が例えばπ/2(rad)であるとき、第2ロール120におけるロールニップ部Nrは、第2ロール回転角度θ2から第2ロール設定角度θ20(図11(b)に示す例では5π/4(rad))だけ遅れた位置となるので、そのときの補正係数はθ2=7π/4(rad)での大きさとなる。
【0110】
そして、本実施の形態では、長さ演算部851におけるシート長Lの算出において、得られた各ロール間位相差x[j]に基づき、記憶部854から読み出した第1ロール半径データr1_new[i]および第2ロール外径・スリット補正データr2[i]を対応付けて作成した第2ロール回転補正係数テーブルR[j,i]を、ロール第1パルス数Y1、ロール第2パルス数Y2、およびロール第3パルス数Y3の算出に用いている。これにより、算出されるロール測定長Lrに対する、第1ロール110、第2ロール120および第2エンコーダホイール181の精度に起因する誤差の混入、ひいては、ロール測定長Lrを用いて算出されるシート長Lに対する誤差の混入が抑制されるようになっている。
【0111】
また、本実施の形態では、速度演算部852におけるシート速度Vの算出においても、各ロール間位相差x[j]に基づき、記憶部854から読み出した第1ロール半径データr1_new[i]および第2ロール外径・スリット補正データr2[i]を対応付けて作成した第2ロール回転補正係数テーブルR[j,i]を利用している。このため、シート速度Vに対する誤差の混入も抑制される。
【0112】
さて、本実施の形態では、上述したように、第1ロール110の表面層112をゴム等の弾性体で構成することで、搬送されるシートSに対する第1ロール110の追従性を高めている。一方、第1ロール110の表面層112を弾性体で構成する場合、表面層112を金属等で構成する場合と比較して摩耗が生じやすくなる。ここで、第1ロール110の表面層112には、表面層112が全周に亘って摩耗する全体摩耗と、表面層112の周面の一部が摩耗する局所摩耗とが生じ得る。そして、第1ロール110の表面層112の摩耗に伴って第1ロール110の半径分布に変化が生じると、現状での第1ロール110の半径分布と、記憶部854に記憶される第1ロール半径データr1_new[i]とのずれが大きくなり、上述したシート長Lの算出やシート速度Vの算出において、誤差が増大する要因となり得る。また、第1ロール110に局所摩耗が生じた場合には、第1ロール110の回転に伴って第1ロール110および第2ロール120に振動が発生し、上述したシート長Lの算出やシート速度Vの算出において、誤差が増大する要因となり得る。
【0113】
そこで、本実施の形態では、図7を用いて説明したように、第1ロール半径データr1_new[i]の更新を行うとともに、更新された第1ロール半径データr1_new[i]に基づき、第1ロール110における外径異常の検出を行っている。
【0114】
図12は、図7に示すステップ203およびステップ209における、第1ロール110の第1ロール半径データr1_new[i]の更新手順の一例を示すフローチャートである。また、図13は、図12に示すステップ401からステップ409までにおける処理の内容を説明するための図である。さらに、図14は、図12に示すステップ418における処理の内容を説明するための図である。さらにまた、図15は、図12に示すステップ419からステップ423までにおける処理の内容を説明するための図である。
【0115】
第1ロール半径演算部853は、まず、第1時刻te1と第3時刻te3と第2A相信号Sa2と第2Z相信号Sz2とに基づいて、第2ロール120の第2ロール回転数Nを算出する(ステップ401)。次に、第1ロール半径演算部853は、第2Z相信号Sz2の立ち上がりを基準とし、第2A相信号Sa2における第2ロールパルス間隔p2[j,i](0≦j≦N、0≦i≦n)を算出する(ステップ402)。
【0116】
続いて、第1ロール半径演算部853は、記憶部854から第2ロール外径・スリット補正データr2[i](0≦i≦n)を読み込む(ステップ403:図11(b)参照)。
そして、第1ロール半径演算部853は、ステップ402で得られた第2ロールパルス間隔p2[j,i]とステップ403で読み込んだ第2ロール外径・スリット補正データr2[i]とを用いて、それぞれのパルス間隔の補正を行うことで、補正後の第2ロールパルス間隔p2[j,i]’=p2[j,i]*r2[i](0≦j≦N、0≦i≦n)を算出する(ステップ404:図13参照)。なお、この補正においては、第2ロール回転補正係数テーブルR[j,i]を用いていないことから、第1ロール半径データr1_new[i]は加味されていない。
【0117】
次いで、第1ロール半径演算部853は、ステップ404で求められた補正後の第2ロールパルス間隔p2[j,i]’(0≦j≦N、0≦j<n)に基づき、第1時刻te1から第3時刻te3に至る期間における補正後の第2A相信号Sa2の立ち上がりタイミングt2[i]’を算出する(ステップ405:図13参照)。
【0118】
また、第1ロール半径演算部853は、第1時刻te1と第3時刻te3と第1Z相信号Sz1とに基づいて、第1ロール110の第1ロール回転数Mを算出する(ステップ406)。次に、第1ロール半径演算部853は、第1Z相信号Sz1の立ち上がりを基準とし、第1A相信号Sa1における第1ロールパルス間隔p1[j,i](0≦j≦M、0≦i≦m)を算出する(ステップ407:図13参照)。
【0119】
続いて、第1ロール半径演算部853は、記憶部854から第2ロール半径データを読み込む(ステップ408)。なお、この第2ロール半径データは、第2ロール120における、第2ロール回転角度θ2と第2ロール120の半径とを対応付けたものである。
そして、第1ロール半径演算部853は、ステップ407で求められた第1ロールパルス間隔p1[j,i]と、ステップ405で求められた補正後の第2A相信号Sa2の立ち上がりタイミングt2[i]’と、ステップ408で読み込まれた第2ロール半径データの平均値とを用いて、第1ロールパルス間距離d1[j,i](1≦j≦M、0≦i<m)を算出する(ステップ409)。その後、第1ロール半径演算部853は、記憶部854から更新用データ格納数kを読み込む(ステップ410)。
【0120】
次に、第1ロール半径演算部853は、更新用データe[j,i](k≦j<k+M、0≦i<m)に、ステップ409で求められた第1ロールパルス間距離d1[j,i](1≦j≦M、0≦i<m)を代入し、記憶部854に格納させる(ステップ411)。それから、第1ロール半径演算部853は、更新用データ格納数kをk+Mに更新し(ステップ412)、更新用データ数Kを記憶部854から読み込む(ステップ413)。そして、第1ロール半径演算部853は、ステップ412で更新した更新用データ格納数kが、ステップ413において読み込んだ更新用データ数K以上となっているか否かを判断する(ステップ414)。
【0121】
ステップ414において肯定の判断を行った場合、第1ロール半径演算部853は、更新用データ格納数kを0に設定し(ステップ415)、ステップ411で記憶部854に格納させていた更新用データe[j,i](0≦j<K、0≦i<m)を読み込む(ステップ416)。それから、第1ロール半径演算部853は、ステップ416で読み出したK個の更新用データe[j,i](0≦j<K、0≦i<m)から平均化を行い、第1ロールパルス間距離の平均値d_avg[i](0≦i<m)を算出する(ステップ417:図14上段参照)。続いて、第1ロール半径演算部853は、ステップ417で算出した第1ロールパルス間距離の平均値d_avg[i](0≦i<m)の配列数を、mからINT(n*r1/r2)に変換することにより、変換後の第1ロールパルス間距離の平均値d_avg[i]’(0≦i<INT(n*r1/r2))を算出する(ステップ418:図14下段参照)。続いて、第1ロール半径演算部853は、記憶部854からイニシャル第1ロールパルス間距離d_init[i](0≦i<INT(n*r1/r2))を読み込む(ステップ419:図15上段参照)。
【0122】
そして、第1ロール半径演算部853は、ステップ418で得られた変換後の第1ロールパルス間距離の平均値d_avg[i]’(0≦i<INT(n*r1/r2))と、ステップ419で読み込んだイニシャル第1ロールパルス間距離d_init[i](0≦i<INT(n*r1/r2))との差分をとり、第1ロール摩耗量データΔr1[i](0≦i<INT(n*r1/r2))を算出する(ステップ420:図15中段左側参照)。
【0123】
続いて、第1ロール半径演算部853は、記憶部854からイニシャル第1ロール半径データr1_init[i](0≦i<INT(n*r1/r2))を読み込む(ステップ421:図15中段右側参照)。それから、第1ロール半径演算部853は、ステップ421で読み込んだイニシャル第1ロール半径データr1_init[i](0≦i<INT(n*r1/r2))と、ステップ420で求められた第1ロール摩耗量データΔr1_init[i](0≦i<INT(n*r1/r2))との差分をとることで、新たな第1ロール半径データr1_new[i](0≦i<INT(n*r1/r2))を算出し(ステップ422:図15下段参照)、得られた新たな第1ロール半径データr1_new[i](0≦i<INT(n*r1/r2))を記憶部854に格納させて(ステップ423)、一連の処理を完了する。なお、上記ステップ414において否定の判断を行った場合は、上述した処理を行わず、そのまま終了する。
【0124】
そして、図7に示すステップ204およびステップ210における、第1ロール110の外径異常検出は、次のようにして行われる。
まず、判定部855は、第1ロール半径演算部853から、更新された第1ロール半径データr1_new[i](図15下段参照)を取得する。次に、判定部855は、更新された第1ロール半径データr1_new[i]が、第1ロール110の半径の設計値(例えば15.0mm)に対して予め決められた範囲(例えば15.0±0.3mm)から、外れているか否かを判断する。更新された第1ロール半径データr1_new[i]の少なくとも一部が、第1ロール110の半径の設計値に対して予め決められた範囲から外れている場合、判定部855は、第1ロール110に外径異常が発生していると判定し、UI90を介した故障通知を行わせる。また、判定部855は、更新された第1ロール半径データr1_new[i](図15下段参照)を用いて現状の第1ロール110を構成する第1周面部113の周長を算出し、得られた周長が、第1ロール110の周長の設計値(第1ロール110の半径の設計値が15.0mmの場合は約92.25mm)に対して予め決められた下限値(例えば91.0mm)を下回っているか否かを判断する。得られた第1ロール110の周長が、この下限値を下回っている場合、判定部855は、第1ロール110に外径異常が発生していると判定し、UI90を介した故障通知を行わせる。なお、この例では、第1ロール半径データr1_new[i]に基づいて第1回転体補正値が得られ、また、第2ロール外径・スリット補正データr2[i]に基づいて第2回転体補正値が得られていることになる。
【符号の説明】
【0125】
10(10Y、10M、10C、10K)…画像形成ユニット、20…中間転写ベルト、30…二次転写装置、40…シート供給装置、50…定着装置、70…反転搬送機構、80…制御部、81…受付部、82…画像信号作成部、83…画像信号出力調整部、84…動作制御部、85…処理部、90…ユーザインタフェース部(UI)、100…測長装置、110…第1ロール、120…第2ロール、130…支持機構、140…第3ロール、150…上流側検知センサ、151…下流側第1検知センサ、152…下流側第2検知センサ、161…第1温度センサ、162…第2温度センサ、170…第1回転検出部、171…第1エンコーダホイール、171a…第1A相用スリット、171z…第1Z相用スリット、172…第1光学検出部、180…第2回転検出部、181…第2エンコーダホイール、181a…第2A相用スリット、181z…第2Z相用スリット、182…第2光学検出部、190…取付部材、851…長さ演算部、852…速度演算部、853…第1ロール半径演算部、854…記憶部、855…判定部、856…更新部、Su…上流側エッジ信号、Sd1…下流側第1エッジ信号、Sd2…下流側第2エッジ信号、Sa1…第1A相信号、Sz1…第1Z相信号、Sa2…第2A相信号、Sz2…第2Z相信号、St1…第1温度信号、St2…第2温度信号、S…シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるシートに接触する第1周面部を備え、当該シートの搬送に伴って回転する第1回転体と、
前記第1周面部とは異なる材料で構成され且つ当該第1周面部に接触する第2周面部を備え、前記第1回転体の回転に伴って回転する第2回転体と、
前記第1回転体の回転量である第1回転量を検知する第1回転量検知手段と、
前記第2回転体の回転量である第2回転量を検知する第2回転量検知手段と、
前記第2回転量を用いて、搬送される前記シートに関する演算を実行するシート演算手段と、
前記第1回転量および前記第2回転量を用いて、前記第1回転体における周方向の半径分布を演算する半径分布演算手段と、
前記半径分布に基づいて、前記第1回転体に生じた異常を検出する異常検出手段と
を含むシート測定装置。
【請求項2】
前記異常検出手段は、前記第1回転体における周方向の半径分布の基準を取得し、前記半径分布および当該半径分布の基準を用いて、前記第1回転体に生じた異常を検出することを特徴とする請求項1記載のシート測定装置。
【請求項3】
前記半径分布演算手段は、前記第2回転体および前記第2回転量検知手段に起因して前記第2回転量に重畳される誤差を補正するための第2回転体補正値を取得し、前記第1回転量と当該第2回転体補正値に基づいて補正された前記第2回転量とを用いて、前記半径分布を演算することを特徴とする請求項1または2記載のシート測定装置。
【請求項4】
搬送されるシートの搬送方向先端および搬送方向後端を検出する端部検出手段をさらに含み、
前記シート演算手段は、前記第2回転量および前記端部検出手段による検出結果に基づいて、前記シートの搬送方向長さを演算することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のシート測定装置。
【請求項5】
前記第2回転体の温度を検出する温度検出手段をさらに含み、
前記シート演算手段は、前記温度検出手段による検出結果に基づいて前記シートに関する演算において補正を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のシート測定装置。
【請求項6】
前記第2回転体において前記第2周面部を構成する材料が、前記第1回転体において前記第1周面部を構成する材料よりも熱膨張係数が低いことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のシート測定装置。
【請求項7】
前記第2回転体において前記第2周面部を構成する材料が金属であり、前記第1回転体において前記第1周面部を構成する材料が弾性体であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のシート測定装置。
【請求項8】
前記シート演算手段は、前記第1回転体における周方向の半径分布に起因して前記第2回転量に重畳される誤差を補正するための第1回転体補正値を取得し、前記第2回転量および当該第1回転体補正値を用いて、搬送される前記シートに関する演算を実行し、
前記半径分布演算手段は、前記第1回転体における周方向の新たな半径分布を演算し、
前記第1回転体補正値を、前記新たな半径分布に基づいて得られた新たな第1回転体補正値に更新する更新手段をさらに含むこと
を特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載のシート測定装置。
【請求項9】
搬送されるシートに接触する第1周面部を備え、当該シートの搬送に伴って回転する第1回転体と、
前記第1周面部とは異なる材料で構成され且つ当該第1周面部に接触する第2周面部を備え、前記第1回転体の回転に伴って回転する第2回転体と、
前記第1回転体の回転量である第1回転量を検知する第1回転量検知手段と、
前記第2回転体の回転量である第2回転量を検知する第2回転量検知手段と、
前記第2回転量を用いて、搬送される前記シートに関する演算を実行するシート演算手段と、
前記シート演算手段による演算結果に基づいて前記シートに画像を形成する画像形成手段と、
前記第1回転量および前記第2回転量を用いて、前記第1回転体における周方向の半径分布を演算する半径分布演算手段と、
前記半径分布に基づいて、前記第1回転体に生じた異常を検出する異常検出手段と
を含む画像形成装置。
【請求項10】
前記異常検出手段は、前記第1回転体における周方向の半径分布の基準を取得し、前記半径分布および当該半径分布の基準を用いて、前記第1回転体に生じた異常を検出することを特徴とする請求項9記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記半径分布演算手段は、前記第2回転体および前記第2回転量検知手段に起因して前記第2回転量に重畳される誤差を補正するための第2回転体補正値を取得し、前記第1回転量と当該第2回転体補正値に基づいて補正された前記第2回転量とを用いて、前記半径分布を演算することを特徴とする請求項9または10記載の画像形成装置。
【請求項12】
搬送されるシートの搬送方向先端および搬送方向後端を検出する端部検出手段をさらに含み、
前記シート演算手段は、前記第2回転量および前記端部検出手段による検出結果に基づいて、前記シートの搬送方向長さを演算することを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記第2回転体の温度を検出する温度検出手段をさらに含み、
前記シート演算手段は、前記温度検出手段による検出結果に基づいて前記シートに関する演算において補正を行うことを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記画像形成手段は、前記シートの一方の面に画像を形成するとともに、表裏が反転された当該シートの他方の面に画像を形成し、当該シートの当該他方の面に画像を形成する際に、前記シート演算手段による演算結果に基づく画像形成条件の調整を行うことを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−121661(P2012−121661A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272524(P2010−272524)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】