説明

シート状パック剤及びその製造方法

【課題】
本発明の課題は、剥離後も長時間にわたって皮膚保湿効果を維持できる、皮膚保湿の持続性に優れたシート状パック剤を提供することである。
【解決手段】
支持体、基剤及び剥離ライナーを備えてなるシート状パック剤であって、前記基剤がハイドロゲル及びオイルゲルのハイブリッドゲルを含有する、前記シート状パック剤により上記課題は解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧品、医薬品、医薬部外品又は雑品用途として好適に使用し得るシート状パック剤及びその製造方法に関する。更に詳しくは、皮膚保湿の恒常性改善や皮膚有効成分の経皮吸収性に優れると共に、皮膚刺激を生じることのない安全性の高いシート状パック剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、顔や体の美容を目的としたシート状パック剤が利用されている。従来より用いられているテープ剤や湿布剤等のシート状貼付剤が、腰痛、肩こり、打ち身、捻挫等の治療や足の疲れを癒す等の用途に用いられるのに対し、シート状パック剤は、皮膚の状態を整えるために用いられ、特に顔や体の保湿効果を高める技術的工夫がなされている。例えば、簡便に使用でき、かつ肌に対する適度な粘着性や保湿性を有し、使用感やパック効果に優れる高含水のシート状パック剤(特許文献1参照)、また、撥水性、保湿性および被膜性を向上し、保存安定性に優れ、良くのびて馴染みやすいなどの使用感に優れた外用ゲル状組成物、および外用ゲル状組成物の撥水性、保湿性および被膜性を向上させる方法(特許文献2参照)、さらに、新規なデキストリン脂肪酸エステル及び該デキストリン脂肪酸エステルを含有する組成物(特許文献3参照)等が提案されてきた。
【0003】
一方、皮膚においては、10〜20%程度の角質層水分量、常時0.4〜0.05mg/cmの表皮脂質、および天然保湿因子(アミノ酸、尿素、乳酸など)が存在し、かつ常時4.2〜6.4の弱酸性pH(酸性膜作用による細菌の繁殖予防など)であることが理想的な状態(健常皮膚)である。このバランスが欠けると極度の皮膚乾燥、皮脂過多、肌荒れ、吹き出物、ニキビなどの肌トラブルを生じ易くなり、このバランスを改善・維持することにより、皮膚保湿の恒常性が生み出される。
しかしながら、従来のシート状パック剤は高含水による水分補給や、油分による肌保護といった手段により一時的な皮膚保湿効果は期待できるものの、その持続性あるいは恒常的な改善効果としては未だ不十分であり、さらなる改善の必要があった。また、皮膚保湿を目的としては、従来からローションやクリーム、ゲルなどの皮膚への塗布を目的とした外用組成物が数多く開発されているものの、これらはそれぞれ、ローションは一時的な水分の補給には優れているが直接的には皮膚の乾燥を防ぐ効果は期待できず、クリームは皮膚を乾燥から保護することはできるが水分を補給することはできず、またゲルは支持体と基剤を備えるシート状パック剤に比べてODT(密封包帯法)効果が期待できないため、皮膚への水分補給や有効成分の浸透が不十分であるとともに、配合可能な成分が制限される、といった欠点を有していることから、水分の補給と乾燥からの保護という効果を併せ持ち、有効成分の皮膚浸透性が良好であって、かつ短時間の貼付で長時間保湿効果が持続する、優れた皮膚保湿効果を有するシート状パック剤の開発が望まれていた。
【特許文献1】特許3553174号公報
【特許文献2】特開2004−75540号公報
【特許文献3】特許3019191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の課題は、剥離後も長時間にわたって皮膚保湿効果を維持できる、皮膚保湿の持続性に優れたシート状パック剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、シート状パック剤の基剤にハイドロゲル及びオイルゲルのハイブリッドゲルを含有させることにより、従来のシート状パック剤を上回るODT(密封包帯法)効果が得られ、皮膚からの老廃物分泌が促進された結果、皮膚保湿の持続性および恒常性が実現されるとともに、皮膚有効成分の放出性および経皮吸収性も改善され、かつ皮膚刺激を生じることのない安全性の高いシート状パック剤を提供することが可能となることを初めて見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、支持体、基剤及び剥離ライナーを備えてなるシート状パック剤であって、前記基剤がハイドロゲル及びオイルゲルのハイブリッドゲルを含有する、前記シート状パック剤に関する。
また、本発明は、オイルゲルが、多価アルコール脂肪酸エステル及びデキストリン脂肪酸エステルを含有する、前記のシート状パック剤に関する。
さらに、本発明は、多価アルコール脂肪酸エステルの配合量が、基剤全体の1〜20質量%である、前記のシート状パック剤に関する。
また本発明は、多価アルコール脂肪酸エステルがトリ2−エチルヘキサン酸グリセリルである、前記のシート状パック剤にも関する。
【0007】
さらにまた、本発明は、デキストリン脂肪酸エステルの配合量が、基剤全体の0.05〜3質量%である、前記のシート状パック剤に関する。
また、本発明は、デキストリン脂肪酸エステルが、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、及び、パルミチン酸/オクタン酸デキストリンから選ばれる1種又は2種以上である、前記のシート状パック剤にも関する。
さらに本発明は、デキストリン脂肪酸エステルのゲル強度が10〜300gである、前記のシート状パック剤にも関する。
またさらに、本発明は、ハイドロゲルが、グリコール類及び/又は多価アルコール類を含有する、前記のシート状パック剤に関する。
そしてさらに、本発明は、ハイドロゲルとオイルゲルを均一混合し、ハイドロゲル中に存在する多価金属化合物及びその他の架橋剤の経時反応型架橋により、三次元包接構造体を形成させてハイブリッドゲルを得る、シート状パック剤の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシート状パック剤は以下の優れた特徴を示し、化粧品、医薬品、医薬部外品又は雑品用途として好適に使用することが可能であり、産業上極めて有用なものである。
a.従来のシート状パック剤を大きく上回るODT(密封包帯法)効果が得られ、皮膚からの老廃物分泌が促進される。
b.皮膚への水分補給と皮膚からの水分蒸散抑制に優れる。
c.シート状パック剤を剥離した後も、長時間に渡り、皮膚の水分含有量および皮脂量を貼付前よりも増加した状態で維持することができるため、皮膚保湿効果が持続し、皮膚保湿の恒常性改善に優れる。
d.数分から数十分程度の短時間の貼付で、長時間に渡る持続的な皮膚保湿効果を得ることができる。
e.配合した皮膚への有効成分や薬物の放出性に優れるため、充分な経皮吸収性を備えており、これら配合成分の効果が充分に発揮される。
f.質感や粘着性などの使用感およびしっとり感などの効果感にも優れる。
g.皮膚に対する安全性および経時的安定性に優れ、ほとんど皮膚刺激を生じない。
なお、かかる効果を奏するシート状パック剤は、本発明により初めて実現されたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のシート状パック剤は、支持体、基剤及び剥離ライナーを備えてなるシート状パック剤であって、前記基剤がハイドロゲル及びオイルゲルのハイブリッドゲルを含有するシート状パック剤である。
本発明のシート状パック剤におけるハイブリッドゲルとは、水、水溶性高分子及び水溶性成分を主体とするハイドロゲルと、脂質成分や脂溶性成分を主体とするオイルゲルとのハイブリッドなゲル構造体を示すものをいう。すなわち、ハイドロゲルとオイルゲルとの複合ゲルを調製し、ハイドロゲルの三次元架橋によりネットワーク形成し、オイルゲルを包接したゲル構造体である。また、本発明のシート状パック剤において、ハイブリッドゲルにおけるハイドロゲルとオイルゲルの質量比は特に限定されないが、好ましくは70:30〜99:1であり、より好ましくは80:20〜95:5であり、特に好ましくは85:15〜95:5である。これは、ハイドロゲルとオイルゲルの質量比において、オイルゲルの割合が70:30(30%)を超えると油性成分による皮膚表面の被膜作用が過剰になるため、シート状パック剤から皮膚への水分補給がかえって遮蔽され望ましい保湿効果が得られない傾向にあり、オイルゲルの占める割合が99:1(1%)未満であると皮膚への水分補給は十分なされるが、油性成分による皮膚表面の被膜作用が不十分となるため、シート状パック剤剥離後に水分が蒸散し保湿効果が持続しない傾向にあることによる。
【0010】
本発明のシート状パック剤に用いられるハイドロゲルは、水を分散媒とするゲルであれば特に限定されないが、例えば水溶性高分子を架橋構造の導入により一部不溶化し、これを水、グリコール類および/又は多価アルコール類で膨潤させた構造体などが好適に用いられる。架橋構造の形成には、多価金属化合物が利用でき、必要に応じて金属イオン封鎖剤、pH調整剤を加えてもよい。また、前記架橋構造を導入する代わりに、水溶性高分子に疎水性基あるいは結晶構造等を導入したゲルとしてもよい。
【0011】
本発明においてハイドロゲルに利用できる水溶性高分子としては、ポリアクリル酸部分中和物、ポリアクリル酸完全中和物、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ゼラチン、カゼイン、プルラン、寒天、デキストラン、アルギン酸ソーダ、可溶性デンプン、カルボキシデンプン、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルエーテル、ポリマレイン酸共重合体、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、イソブチレン無水マレイン酸共重合体、ポリエチレンイミン等が挙げられる。中でも、好ましい水溶性高分子はポリアクリル酸部分中和物であり、中和度が30〜80%のナトリウム塩であって、平均重合度が1,000〜100,000のものが、特に好適に用いられる。
前記水溶性高分子の配合量としては、シート状パック剤の基剤全体を基準として好ましくは3〜10質量%、さらに好ましくは4〜8質量%である。これは、配合量が3質量%未満であると、製剤の粘着性、凝集性、保型性、吸水能が低下し、膏体の不均一化、製造時の支持体裏じみ(染み出し)や舌出し(はみ出し)、展延性や作業性の低下、使用感の低下、経皮吸収性の低下、油分のブリードを生じる傾向にあり、また、配合量が10質量%を越えると、製剤の粘着性、凝集性、保型性を低下させ、膏体の不均一化、展延性や作業性の低下、使用感の低下、保湿効果の低下、経皮吸収性の低下、油分のブリードを生じる傾向にあるためである。
【0012】
本発明にのシート状パック剤に使用するオイルゲルは、液状油性成分を分散媒とするゲルであれば特に限定されないが、例えばショ糖脂肪酸エステル、有機ベントナイト、デキストリン脂肪酸エステル等をゲル化剤として、前記液状油性成分に分散して形成されたゲル構造体などが好適に用いられる。
本発明においてオイルゲルに用いられる液状油性成分としては、多価アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。本発明に用いられるオイルゲルに好適な多価アルコール脂肪酸エステルとしては、トリイソステアリン酸ジグリセリル、ジカプリン酸プロピレングリコール、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、モノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、2−エチルヘキサン酸2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールが挙げられ、この群から選ばれる1種もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、特に好ましい多価アルコール脂肪酸エステルとしては、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルが挙げられる。
【0013】
本発明において用いられるトリ2−エチルヘキサン酸グリセリルとしては、けん化価(化粧品種別配合成分規格(粧配規)「トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル」のけん化価試験法に準じる)が340〜370であるものが好ましく、また、その比重(20℃)は0.949〜0.959であるものが好ましい。
本発明において用いられる多価アルコール脂肪酸エステルは、シート状パック剤の基剤全体を基準として好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは5〜15質量%で配合される。これは、多価アルコール脂肪酸エステルの配合量が1質量%以下になると、展延性や作業性の低下、使用感や保湿効果の低下、皮膚安全性の低下および経皮吸収性の低下を生じる傾向にあり、一方で、配合量が20質量%を超えると製剤の粘着性、凝集性、保型性、吸水能を低下させ、膏体の不均一化、製造時における支持体の裏じみ(染み出し)や舌出し(はみ出し)、油分のブリード、展延性や作業性の低下、使用感や保湿効果の低下、皮膚安全性の低下および経皮吸収性の低下を生じ易くなることによる。
【0014】
本発明のシート状パック剤に用いられるオイルゲルのゲル化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、有機ベントナイト、デキストリン脂肪酸エステル等が挙げられるが、これらのうちでもデキストリン脂肪酸エステルが特に好ましい。更に、デキストリン脂肪酸エステルのうち、ゲル強度が10〜300gであるものが好ましく、30〜250gであるものがより好ましい。本明細書において、デキストリン脂肪酸エステルのゲル強度とは、以下の試験法により得られる値をいう。 <ゲル強度試験法>
デキストリン脂肪酸エステル5gを内径45mmの平底容器に精秤し、流動パラフィン(#70)45gを加えて分散させ、ゆるやかにかき混ぜながら90℃まで加熱して溶解する。その後直ちに30℃の恒温槽にて24時間静置しゲルを形成させる。このゲルを温度変化が生じないように手早くレオメーター(サン科学製、SUN RHEO METER CR−200D・CR−500DX)にセットし、次の条件でゲル強度を測定する。尚、初期のピークすなわち降伏値(g)をゲル強度とする。
測定条件は、
温度:30℃
アダプター:φ20mm、厚さ2mmの円盤
架台上昇速度:60mm/min
である。
【0015】
さらに、本発明において用いるデキストリン脂肪酸エステルとしては、パルミチン酸デキストリン、パルミチン酸/オクタン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリンが好ましい例として挙げられ、これらの群から選ばれる1種もしくは2種以上を組み合わせて用いることができるが、パルミチン酸デキストリンを単独で用いるのが特に好ましい。
本発明に用いるパルミチン酸デキストリンとしては、酸価(医薬品添加物規格(薬添規)「パルミチン酸デキストリン」の酸価試験法に準じる)が、好ましくは38以下であり、より好ましくは10以下である。また、パルミチン酸デキストリンの融点(薬添規「パルミチン酸デキストリン」確認試験(3)に準じる)としては、50〜63℃であることが好ましい。これは、前記のパルミチン酸デキストリンの酸価、融点、または上記のゲル強度の範囲外のものを用いた場合には、油分のブリードを生じる恐れがあるためである。
また、本発明のデキストリン脂肪酸エステルの配合量は、シート状パック剤の基剤全体を基準として0.05〜3質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜2質量%である。これは3質量%を超えると基剤の粘度が増加して堅くなり、粘着性、凝集性、吸水能の低下を招くため、保湿効果や使用感が劣ったものとなる傾向にあり、また、0.05質量%未満であると油性成分を基剤中に十分保持できず、油性成分がブリード(浸出)して皮膚にべたつきを生じ、使用感が好ましくないものとなる傾向にあることによる。
【0016】
本発明のハイブリッドゲルには、さらにグリコール類および/又は多価アルコール類を配合してもよく、これらのうちの1種を単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。グリコール類は、水溶性高分子、保湿成分、架橋剤、美肌成分、防腐剤等の分散・溶解剤あるいは可塑剤として用いられるとともに、水の放出性や揮散性を促進させることができる。このようなグリコール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテル構造を有するものが好ましく、平均分子量が200〜600のポリエチレングリコール、平均分子量が500〜3000のポリプロピレングリコールが特に好ましい。また、これらグリコール類は、一般に用いられる低分子量の多価アルコールと比較して水酸基が少ないため親水性に劣り、水を除いた基剤成分の臨界相対湿度を低下させるため、使用時においてより多くの水を外部に放出することができる。その結果、肌に潤いを与え、また外部に水が揮散することにより気化熱を奪い、顔の火照りや炎症を抑えると同時に心地よい清涼感を与えることができる。
【0017】
一方、多価アルコール類は、水溶性高分子、保湿成分、架橋剤、美肌成分、防腐剤等の分散・溶解剤あるいは可塑剤として用いられるとともに、水の放出性や揮散性を抑制させることができる。このような多価アルコール類としては、1分子中2〜3個の水酸基を持つ低分子量の多価アルコールが挙げられ、特に好ましい例としては、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンおよび濃グリセリンが挙げられる。これら多価アルコール類は、親水性に優れるため、水を除いた基剤成分の臨界相対湿度を向上させることができ、使用時において水の放出や揮散を抑制することができる。
グリコール類および/又は多価アルコール類の基剤全体量に対する配合量は、好ましくは5〜50質量%であり、さらに好ましくは10〜30質量%である。これは、配合量が5質量%未満では、製剤の粘着性や凝集性、使用前における保水性および保型性の低下やゲルの不均一化、作業性の低下、使用時の使用感の低下、保湿効果の低下、経皮吸収性の低下、油分のブリードを招く傾向が認められ、一方、配合量が50質量%を越えると、製剤の粘着性や凝集性および保型性が低下する傾向にあることによる。これらグリコール類および/又は多価アルコール類と水との配合バランスにより、肌に対する適度な保湿性と粘着性を与えることができる。
【0018】
また、本発明のシート状パック剤に用いられる水は、精製水や滅菌水、天然水、常水であることが好ましい。水は水溶性高分子、保湿成分、架橋剤、防腐剤、グリコ−ル類および多価アルコール等の分散・溶解剤として働き、特にポリアクリル酸部分中和物等の水溶性高分子、金属イオン封鎖剤を均一溶解させるために重要な役割を果たしている。また、水自身も使用時および使用後の使用感を著しく向上させ、保湿成分とともに皮膚へ移行し潤いやハリを与えるなどの効果、皮膚刺激性の緩和や皮膚柔軟化作用による薬効成分吸収性を向上させる作用がある。
したがって、本発明において水の配合量は、シート状パック剤の基剤全体を基準として好ましくは20〜80質量%、さらに好ましくは30〜70質量%、特に好ましくは40〜60質量%の範囲である。水の配合量が20質量%未満になると、製剤の粘着性、凝集性、保型性、吸水能が低下し、膏体の不均一化、展延性や作業性の低下、使用感の低下、保湿効果の低下、経皮吸収性の低下および皮膚安全性の低下を生じる要因となり、また、配合量が80質量%以上では製剤の粘着性、凝集性、保型性、吸水能を低下させ、膏体の不均一化、製造時の支持体の裏じみ(染み出し)や舌出し(はみ出し)、展延性や作業性の低下、使用感の低下、経皮吸収性の低下、油分のブリードおよび皮膚安全性の低下を生じ易くなるからである。
【0019】
本発明のシート状パック剤には、さらに架橋剤として多価金属化合物を配合することができ、例えば、合成ケイ酸アルミニウムとメタケイ酸アルミン酸マグネシウムとの組み合わせ等が好ましい例として挙げられる。中でも、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムとしては、Fuchs法による制酸力(pH=3以上)が1gあたり0.1N塩酸消費量200ml以上であるものが好ましい。合成ケイ酸アルミニウムの配合量は、基剤全体を基準として好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは1〜6質量%である。メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの配合量は基剤全体を基準として好ましくは0.01〜1質量%、より好ましくは0.1〜0.6質量%である。これは、多価金属化合物として組み合わせ使用する合成ケイ酸アルミニウムの配合量、ならびにメタケイ酸アルミン酸マグネシウムのFuchs法による制酸力と配合量が、それぞれの範囲を逸脱すると製造時の支持体裏じみ(染み出し)や舌出し(はみ出し)、展延性や作業性の低下、貼付時および保存時の物性変化、粘着力不足による捲れや再付着不良、粘着力過多による膏体残りや人体適用時の発赤・カブレやうっ血、保湿効果の低下、経皮吸収性の低下、油分のブリード等を生じやすい傾向にあることによる。
【0020】
また、さらに本発明のシート状パック剤には金属イオン封鎖剤を配合してもよく、好ましい金属イオン封鎖剤としては、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、トリメタリン酸、ヘキサメタリン酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ、テトラポリリン酸ソーダから選ばれる1種もしくは2種以上の組み合わせが挙げられる。これらのうち、特に好ましいものはエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムである。また、用いられる金属イオン封鎖剤の炭酸カルシウム−キレート力(CaCOC.Vmg/g)は100以上であることが好ましい。本発明においては、金属イオン封鎖剤は主に2価金属イオンの作用阻害を目的として配合するため、前記の炭酸カルシウム−キレート力を満たすものが望ましい。
金属イオン封鎖剤の配合量としては、基剤全量を基準として好ましくは0.005〜1質量%、さらに好ましくは0.1〜0.6質量%である。これは、金属イオン封鎖剤の炭酸カルシウム−キレート力および配合量がこの範囲を逸脱すると、製造時の支持体の裏じみ(染み出し)や舌出し(はみ出し)、展延性や作業性の低下、貼付時および保存時の物性変化、粘着力不足による捲れや再付着不良、粘着力過多による膏体残りや人体適用時の発赤・カブレやうっ血、保湿効果の低下、経皮吸収性の低下、油分のブリード等の問題点を招く傾向があることによる。また、特に製造時の展延状態と展延可能な時間にも大きく影響するのでこれらに配慮する必要がある。
本発明のシ−ト状パック剤は、上記の粘着剤(基剤)成分に加えて、貼付剤の用途に応じ、公知の架橋剤、防腐剤、薬効成分、美肌成分、保湿成分、酸化防止剤、粘着付与剤、溶解剤、色素、香料、界面活性剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、冷感付与成分、温感付与成分およびpH調整剤等を適宜適量配合することができる。
【0021】
架橋剤としては、水難溶性アルミニウム化合物や多官能性エポキシ化合物を単独で又は2種以上配合して用いることができる。水難溶性アルミニウム化合物としては、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムゲル、含水ケイ酸アルミニウム、カオリン、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよく、または2種以上を配合して用いてもよい。水難溶性アルミニウム化合物を用いることにより、制酸作用による皮膚刺激性の抑制効果や微量のアルミニウムイオンによる皮膚収れん作用に加え、初期物性には充填剤としてゲルに適度な強度を与えると共に、経時変化でアルミニウムイオンが製剤内に溶出し、高分子の経時分解および高分子間共有結合架橋部の経時切断によるゲル強度の低下を補う機能を呈することができる。更にはpHの調整によりそのアルミニウム溶出速度を制御することも可能である。
【0022】
多官能性エポキシ化合物としては、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。これら多官能性エポキシ化合物のうち1種を単独で用いてもよく、または2種以上を配合して用いてもよい。多官能性エポキシ化合物を用いることにより、優れた吸水能と保型性を得ることができ、カルボキシル基、アミノ基または水酸基等を有する水溶性高分子と効率よく共有結合を生起し、ゲル強度を高めることができる。
【0023】
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル(例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン)、1,2−ペンタンジオール、安息香酸、安息香酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸、ソルビン酸塩、デヒドロ酢酸塩、4−イソプロピル−3−メチルフェノール、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、フェノール、ヒノキチオール、クレゾール、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4’−トリクロロカルバニド、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を配合して用いることができる。これらの中でもパラオキシ安息香酸エステルが好ましい。
【0024】
薬効成分としては経皮吸収可能な薬物であれば特に限定されることなく、例えば、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、フルオシノロンアセトニド、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、酪酸クロベタゾン、コハク酸プレドニゾロン等のステロイド系抗炎症剤、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、インドメタシン、ケトプロフェン、ジクロフェナク、イブプロフェン、フルルビプロフェン、フェルビナク、ケトロラク、ロキソプロフェン、スプロフェン、プラノプロフェン、チアプロフェン、フルフェナム酸、テニダップ、アスピリン、アクタリット、ミゾリビン、オキサプロジン、モフェゾラク、エトドラク、オーラノフィン、インドメタシンファネルシル等の非ステロイド系抗炎症剤およびそのエステル誘導体、トラニラスト、アゼラスチン、ケトチフェン、イブジラスト、オキサトミド、エメダスチン、エピナスチン等の抗アレルギー剤、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、プロメタジン、トリペレナミン等の抗ヒスタミン剤、クロルプロマジン、ニトラゼパム、ジアゼパム、フェノパルビタール、レセルピン等の中枢神経作用薬、
【0025】
インシュリン、テストステロン、ノルエチステロン、メチルテストステロン、プロゲステロン、エストラジオール等のホルモン剤、クロニジン、レセルピン、硫酸グアネチジン、エホニジピン、アルプレノロール、ニフェジピン等の抗高血圧症剤、ジギトキシン、ジゴキシン等の強心剤、塩酸プロプラノロール、塩酸プロカインアミド、アジマリン、ピンドロール、塩酸ツロブテロール等の抗不整脈用剤、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、塩酸パパベリン、ニフェジピン、ジルチアゼム、ニコランジル等の冠血管拡張剤、リドカイン、プロカイン、塩酸プロカイン、ベンゾカイン、テトラカイン等の局所麻酔剤、モルヒネ、アスピリン、コデイン、アセトアニリド、アミノピリン等の鎮痛剤、チザニジン、エペリゾン、トルペリゾン、イナペリゾン、ダントロレン等の筋弛緩剤、アセトフェニルアミン、ニトロフラゾン、ペンタマイシン、ナフチオメート、ミコナゾール、オモコナゾール、クロトリマゾール、塩酸ブテナフィン等の抗真菌剤、5−フルオロウラシル、ブスルファン、アクチノマイシン、プレオマイシン、マイトマイシン等の抗悪性腫瘍剤、塩酸テロリジン、塩酸オキシブチニン等の尿失禁症剤、ニトラゼパム、メプロバメート等の抗てんかん剤、クロルゾキサゾン、レポドパ、アマンタジン、塩酸セレギリン、塩酸ラノラジン、塩酸ロピニロール等の抗パーキンソン剤、グラニセトロン、アザセトロン、オンダンセトロン、ラモセトロン等の制吐剤、オキシブチン等の頻尿治療剤、ニフェジピン等のCa拮抗剤、フェンタニール、モルヒネ、イミビラミン等の向精神薬、ジフェニドール、ベタヒスチン等の抗めまい剤、ベンゾチアゼピン等の心臓・血管系薬剤、ケトチフェン、ツロブテロール、トラニラスト等の鎮咳去痰剤、
【0026】
ビンポセチン、ニセルゴリン、ニコランジル、マレイン酸クレンチアゼム、塩酸ファスジル、塩酸ベニジピン、塩酸エホニジピン等の脳循環改善剤、ドコサヘキサエン酸、塩酸ビンコナート、フマル酸ネブラセタム等の脳血管性痴呆剤、塩酸ドネペジル、塩酸アミリジン、塩酸メマンチン等のアルツハイマー治療剤、ルーティイナイジングホルモン−リリージングホルモン、サイロトロビンリリージングホルモン等のポリペプチド系ホルモン剤、ポリサッカライド類、オーラノフィン、ロベンザリット等の免疫調節剤、ウルソデスオキシコール酸等の利胆剤、ヒドロフルメチアジド等の利尿剤、トルブタミド等の糖尿病用剤、コルヒチン等の痛風治療剤、ニコチン等の禁煙補助剤、更にはビタミン類、プロスタグランジン類、興奮覚醒剤、催眠鎮静剤、自律神経用剤、末梢血管拡張剤等の薬物が挙げられる。
【0027】
美肌成分としては、アラントイン、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、パパイン酵素、L−アルギニン、アルブチン、フラボノイド、コラーゲン、ヨーグルトエキス、レシチン、エラグ酸、アミノ酸類、コウジ酸、タンパク質、糖類、ホルモン類、水溶性プラセンタエキス等の胎盤抽出物、シルクあるいはシルク抽出物、またはアロエ、ヘチマおよびカンゾウ等の各種生薬や和漢植物からの抽出成分、またはアシタバエキス、アスパラサスリネアリスエキス、アセンヤクエキス、アボガドエキス、アマチャエキス、アマチャヅルエキス、アルテアエキス、アルニカエキス、アルモンドエキス、アロエエキス、アンソッコウエキス、イザヨイバラエキス、イタドリエキス、イチョウエキス、イラクサエキス、イリス根エキス、ウーロン茶エキス、ウイキョウエキス、ウコンエキス、エイジツエキス、エゾウコギエキス、エチナシ葉エキス、エンドウエキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オウレンエキス、オオアザミエキス、オオバナサルスベリエキス、オオムギエキス、オオムギ発酵エキス、オクラエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、オノニスエキス、オランダカラシエキス、オレンジエキス、オレンジフラワー水、海藻エキス、カキタンニン、カッコンエキス、カノコソウエキス、ガマエキス、カモミラエキス、カモミラ水、カラスムギエキス、カリンエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、カンゾウ抽出液、キイチゴエキス、ギンナンエキス、バナバ茶エキス、エンジュエキス、ソバエキス、ネロリエキス、モクレンエキス、セイヨウニワトコエキス、ハイビスカスエキス、コケモモエキス、タラエキス、グァバフェノン、クジン、ノゲイトウ、ムクナエキス、メロスリアエキス、ユリ球根エキス、
【0028】
ラズベリーエキス、ルムプヤン、グリーンティーエキス、アップルフェノン、トウキエキス、アプリコットエキス、ティートリーエキス、ピーチエキス、マカデミアオイル、アーモンドオイル、キウイエキス、キナエキス、キューカンバーエキス、キョウニンエキス、クインスシードエキス、クチナシエキス、クマザサエキス、クミンエキス、クララエキス、クルミ殻エキス、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、クロレラエキス、クワエキス、クワ葉エキス、ケイケットウエキス、ケイヒエキス、ゲンチアナエキス、ゲンノショウコエキス、ケンポナシエキス、コーヒーエキス、紅茶エキス、コウホネエキス、ゴボウエキス、コムギ胚芽エキス、コメヌカエキス、コメヌカ発酵エキス、コンフリーエキス、サイシンエキス、サフランエキス、サボンソウエキス、サンザシエキス、サンショウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シソエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、シャクヤクエキス、ジュズダマエキス、ショウキョウエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、シラカバ樹液、スイカズラエキス、スギナエキス、ステビアエキス、セージエキス、セージ水、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウネズエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、ゼニアオイエキス、セロリエキス、センキュウエキス、センキュウ水センブリエキス、ダイズエキス、タイソウエキス、タイムエキス、チャエキス、チャ実エキス、チョウジエキス、チョレイエキス、チンピエキス、ツバキエキス、ツボクサエキス、デュークエキス、テルミナリアエキス、テンチャエキス、トウガシエキス、トウガラシエキス、トウキエキス、トウキンセンカエキス、トウキ水、冬虫夏草エキス、トウニンエキス、トウヒエキス、トウモロコシエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、トルメンチラエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ニンニクエキス、ノバラエキス、バクガエキス、バクガ根エキス、バクモンドウエキス、パセリエキス、蒸留ハッカ水、ハマナシエキス、ハマメリスエキス、ハマメリス抽出液、
【0029】
バラエキス、パリエタリアエキス、ヒキオコシエキス、ヒノキ水、ビャクダンエキス、ビワ葉エキス、フキタンポポエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、ブドウ水、ブドウ葉エキス、ブナエキス、プルーンエキス、ヘイフラワーエキス、ヘチマエキス、ヘチマ水、ベニバナエキス、ボタンエキス、ホップエキス、マツエキス、マツリカエキス、マリアアザミエキス、マロニエエキス、ムクロジエキス、ムラサキセンブリエキス、ムラヤコエンジーエキス、メリッサエキス、メリロートエキス、モモ葉エキス、モヤシエキス、ヤグルマギクエキス、ヤグルマキク水、ユーカリエキス、ユーカリ水、ユキノシタエキス、ユズエキス、ユリエキス、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ヨモギ水、ラベンダーエキス、ラベンダー水、藍藻エキス、リンゴエキス、リンゴ水、レイシエキス、レタスエキス、レモンエキス、レンゲソウエキス、ローズマリーエキス、ローズマリー水、ローズ水、ローマカミツレエキス、ロッグウッドエキス、ワレモコウエキス、メマツヨイグサ種子エキス、月見草抽出物等の植物性抽出物、またはビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンEおよびその他のビタミン類やアスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸リン酸ナトリウム、アスコルビン酸−2−グルコシド、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル(テトライソパルミチン酸アスコルビル)等のビタミンC誘導体等が挙げられる。
【0030】
また、さらに塩酸ジフェンヒドラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、塩酸トリプロリジン、メキタジン、マレイン酸クロルフェニラミン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、フマル酸クレマスチン、塩酸プロメタジン、トラニラスト、クロモグリク酸ナトリウム、ケトチフェン、アリルスルファターゼB、ブフェキサマック、ベンダザック、フルフェナム酸ブチル、イブプロフェン、インドメタシン、アスピリン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ピロキシカムおよび2−ピリジンメチルメフェナム酸、5,6−デヒドロアラキドン酸、5,6−メタノ−LTA、エスクレチン、ユーパチリン、4−デメチルユーパチリン、カフェイン酸、ベノキサプロフェン、アルブチン、α―アルブチン、β−アルブチン(4−ヒドロキシフェニル―β―D−グルコピラノシド)等の美白作用を有する薬物、α−リポ酸、ユビデカレノン、ポリフェノール等の抗酸化作用を有する薬物を用いることもでき、これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて配合することもできる。
【0031】
保湿成分としては、サクシニルケフィラン水溶液、アセチルケフィラン水溶液、マレイルケフィラン水溶液、麦芽根エキス、エイジツエキス、オレンジエキス、オレンジ果汁、キイチゴエキス、キウイエキス、キューカンバーエキス、クチナシエキス、グレ−プフル−ツエキス、サンザシエキス、サンショウエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウネズエキス、タイソウエキス、ナツメエキス、デュークエキス、トマトエキス、ブドウエキス、ヘチマエキス、ライム果汁、リンゴエキス、リンゴ果汁、レモンエキス、レモン果汁等を1種又は2種以上配合することができる。また、フルーツエキス(果汁)類は香料としての作用効果も有するものである。
【0032】
酸化防止剤としては、アスコルビン酸、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、ノルジヒドログアヤレチン酸、トコフェロール、酢酸トコフェロール、亜硫酸水素ナトリウム等を配合することができる。
粘着付与剤としてはゼラチン、カゼイン、プルラン、寒天、デキストラン、アルギン酸ソーダ、可溶性デンプン、カルボキシデンプン、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルエーテル、ポリマレイン酸共重合体、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、イソブチレン無水マレイン酸共重合体、ポリエチレンイミン等を配合できる。
また、溶解剤としてはベンジルアルコール、ピロチオデカン、ハッカ油、ミリスチン酸イソプロピル、クロタミトン、N−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン類、高級アルコール類、アジピン酸ジエチル、アジピン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ(2−ヘプチルウンデシル)、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル等の多塩基酸類等を配合できる。
【0033】
色素としては、赤色2号(アマランス)、赤色3号(エリスロシン)、赤色102号(ニューコクシン)、赤色104号の(1)(フロキシンB)、赤色105号の(1)(ローズベンガル)、赤色106号(アシッドレッド)、黄色4号(タートラジン)、黄色5号(サンセットエローFCF)、緑色3号(ファストグリーンFCF)、青色1号(ブリリアントブルーFCF)、青色2号(インジゴカルミン)等の法定色素を配合できる。特に色素については限定されないが、製剤イメージに大きく影響を与えず、使用感や肌の活性化感の向上につながるものが好ましい。
【0034】
界面活性剤としては、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルサルフェート塩、2−エチルヘキシルアルキル硫酸エステルナトリウム塩、ノルマルドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ポリオキシエチレンドデシルモノメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(80)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミネート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、グリセロールモノステアレート、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオクタデシルアミン等の非イオン界面活性剤を配合することができる。
【0035】
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エステル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、サリチル酸エステル、アントラニル酸メンチル、ウンベリフェロン、エスクリン、ケイ皮酸ベンジル、シノキサート、グアイアズレン、ウロカニン酸、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ジオキシベンゾン、オクタベンゾン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、スリソベンゾン、ベンゾレソルシノール、オクチルジメチルパラアミノベンゾエート、エチルヘキシルパラメトキシサイナメート等を配合することができる。
また、無機充填剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、含水シリカ、炭酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、ケイ酸マグネシウム、含水ケイ酸マグネシウム、ケイソウ土、無水ケイ酸、ベントナイト等を配合できる。
【0036】
冷感付与成分としては、テルペン系炭化水素化合物、メントール類縁化合物等を挙げることができ、具体的にはリモネン、テルピノレン、メンタン、テルピネン等のp−メンタン及びそれから誘導される単環式モノテルペン系炭化水素化合物等や、メントール類縁化合物としてはl−メントール、d−メントール、dl−メントール、イソプレゴール、3,l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、1−(2−ヒドロキシフェニル)−4−(3−ニトロフェニル)−1,2,3,6−テトラヒドロキシピリミジン−2−オン、エチルメンタンカルボキサミド、p−メンタン−3,8−ジオール、3,8−ジヒドロキシ−p−メンタン−3−9−ジオール、トリアルキル置換シクロヘキサンカルボキシアマイド等を配合することができる。
【0037】
さらに、温感付与成分としてはカプサイシン、カプサイシノイド、ジヒドロキシカプサイシン、カプサンチン等のカプサイシン類似体、カプシコシド、トウガラシエキス、トウガラシチンキ、トウガラシ末等のトウガラシ由来成分、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸β−ブトキシエチル、N−アシルワニルアミド、ノニル酸ワニルアミド等を配合することができる。
また、pH調整剤としては酢酸、蟻酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、安息香酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸、塩酸、硝酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等を配合することができる。膏体のpH値は、製造時の展延状態と展延可能な時間に影響するだけでなく、皮膚刺激等の安全性、保湿効果、経皮吸収性、油分のブリードにも影響するので配慮することが望まれ、したがって、本願発明のシート状パック剤の基剤を構成する上記の必須成分およびその他公知の成分を適宜適量配合した膏体のpHは、好ましくは4〜8、より好ましくは5〜7の範囲となるように調整される。
【0038】
さらに、本願発明のシート状パック剤を構成するハイブリッドゲルは上述の必須成分に併せて、次に説明する製造方法により達成できるものである。まず、オイルゲルの必須成分を溶解させ、長鎖アルキル基の結晶化やデキストリン中の残存水酸基間の水素結合によりオイルゲルを形成させる。次に、別に調製するハイドロゲルと前記オイルゲルを均一混合し、水素結合や疎水結合等による擬似架橋体を形成させる。更に、ハイドロゲル中に存在する多価金属化合物およびその他架橋剤の経時反応型架橋により複雑な三次元包接構造体を形成することで安定なハイブリッドゲルを得ることができる。
なお、上述の必須成分および製造方法により達成される本願発明のシート状パック剤は、シート状パック剤ならではの剤型メリットに併せて、そのゲル構成がハイドロゲルとオイルゲルのハイブリッドゲルであることから、それぞれが持つ次の様な効果を発揮できる。
1.ODT効果による美肌成分や薬物等の経皮吸収促進、皮膚からの老廃物を分泌促進。
2.ハイドロゲルによる水溶性の成分や薬物の放出、水分補給。
3.オイルゲルによる脂溶性の成分や薬物の放出、皮膚からの水分蒸散抑制や外界からの肌保護。
【0039】
本発明のシート状パック剤は前述の基剤成分に加え、支持体および剥離ライナーを備えてなる。
支持体としては、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレ−ト、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、レーヨン、パルプ、綿などの素材から選ばれる1種もしくは2種以上を組み合わせたものであり、織布あるいは絡合、熱融着、圧着あるいはバインダー接着にて製した不織布が挙げられる。特にポリエステルの不織布が好適に用いられる。このとき支持体の目付は20〜200g/mであることが好ましく、より好ましくは40〜120g/m、更に好ましくは80〜120g/mである。支持体の目付が80g/m以下になるにつれ、破れなどの形状破壊、粘着剤塗布時の染み出しによる外観不良や成型不良、貼付時の貼りづらさを招く傾向が見られ、20g/m未満では特にその傾向が著しいためである。また支持体の目付が120g/mを超えるにつれ、支持体の伸縮性不良や柔軟性不良による使用性低下、貼付時の捲れ、更にはコストアップを招く傾向が見られ、200g/mを越えると特にその傾向が著しい。更に、支持体の厚みは接触面積5cmあたり0.98Nの押圧で測定するとき0.1〜1.5mmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.0mmである。支持体の厚みが0.5mm以下になるにつれ、破れなどの形状破壊、粘着剤塗布時の染み出しによる外観不良や成型不良、貼付時の貼りづらさを招く傾向が見られ、0.1mm未満では特にその傾向が著しい。また支持体の厚みが1.0mmを超えるにつれ、支持体の伸縮性不良や柔軟性不良による使用性低下、貼付時の捲れ、更にはコストアップを招く傾向が見られ、1.5mmを越えると特にその傾向が著しい。更にまた、支持体の色については特に限定されないが、製剤イメージに大きく影響を与え、美観や人体適用時の使用感向上につながるものであるので、白色、肌色、黄色、赤色、橙色、緑色、青色、ピンク色、水色、茶色等が好ましい例として挙げられ、必要に応じ濃淡を調整したものがより好ましい。また印刷やエンボス等の加工も適宜可能である。
【0040】
剥離ライナーとしては、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレ−ト、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミドなどの素材から選ばれる1種もしくは2種以上を組み合わせて成型したものが挙げられる。特にポリエチレンテレフタレートが好適に用いられる。このとき剥離ライナーの厚みは、好ましくは20〜150μmであり、より好ましくは40〜120μm、更に好ましくは50〜100μmである。厚みが50μm未満になるにつれ、強度低下による破れなどの形状破壊を招いたり、製造時の作業性やライン適性の低下を招く傾向が見られ、特には貼付時の貼りづらさを招く傾向が見られ、20μm未満では特にその傾向が著しい。また厚みが100μmを超えるにつれ、フィルムの裁断適性不良、貼付時の捲れ、コストアップを招く傾向が見られ、150μmを越えると特にその傾向が著しい。また、これら剥離性フィルムには剥離性向上、貼付性向上や剥離性向上を目的とする割線、ミシン目、印刷、離型処理等の加工や外観性向上、ズレ防止を目的とするエンボス加工等が適宜可能である。
【0041】
次に、本発明のシート状パック剤の製造方法について更に詳述する。本願発明シート状パック剤を構成するハイブリッドゲルは上述の必須成分に併せて、次に説明する製造方法により達成できるものである。まず、オイルゲルの必須成分を溶解させ、長鎖アルキル基の結晶化やデキストリン中の残存水酸基間の水素結合によりオイルゲルを形成させる。次に、別に調製するハイドロゲルと前記オイルゲルを均一混合し、水素結合や疎水結合等による擬似架橋体を形成させる。更に、ハイドロゲル中に存在する多価金属化合物およびその他架橋剤の経時反応型架橋により複雑な三次元包接構造体を形成することで安定なハイブリッドゲルを得ることができる。尚、ハイドロゲルとオイルゲルの均一混合においてはヘンシェルミキサー等の高粘度用高速攪拌機やプラネタリー式ニーダー等の高粘度用低速撹拌機を用い、前述した成分を均一に混合および/又は溶解する。次に、粘着剤膏体をドクターブレード式展膏機あるいはロールコーター式の展膏機を用い、前述の支持体上に直接展延して前述の剥離性フィルムを貼着するか、あるいは剥離性フィルム上に展延して支持体を貼着し転写する。そして更に、適宜所定の形状に裁断する。尚、シ−ト状パック剤は、保存中の汚染、揮発性物質の蒸散等による効果の減少等を防止する意味から、使用時まで密封性の袋または容器に保存しておくことが望ましい。
【実施例】
【0042】
以下、本発明のシ−ト状パック剤について、実施例及び試験例によって更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
実施例1.本発明のシ−ト状パック剤
オイルゲルの必須成分であるトリ2−エチルヘキサン酸グリセリル10質量%およびパルミチン酸デキストリン1質量%と、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル0.01質量%を70℃〜90℃で溶解後、室温に戻し、長鎖アルキル基の結晶化やデキストリン中の残存水酸基間の水素結合によりオイルゲルを形成させる。次に、別に精製水52.14質量%、ポリアクリル酸部分中和物6.5質量%、合成ケイ酸アルミニウム4質量%、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.4質量%、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.35質量%、メチルパラベン0.2質量%、乳酸0.1質量%、濃グリセリン10質量%、ポリエチレングリコール(400)15質量%、水溶性プラセンタエキス0.2質量%、アラントイン0.1質量%を混合して均一に分散・溶解させ、ハイドロゲルを調製した。前記のハイドロゲルとオイルゲルとを均一混合し、ハイドロゲル中に存在する多価金属化合物の経時架橋反応により三次元包接構造体のハイブリッドゲルを得た。
次に、これを714g/mの割合になるように剥離ライナー上に展延し、支持体を貼着し転写した。その後、顔の形に裁断し、本発明のシート状パック剤(実施例1)を得た。
【0043】
比較例1.従来のシート状パック剤
精製水77.6質量%、ゼラチン1質量%、ポリアクリル酸部分中和物6質量%、合成ケイ酸アルミニウム4質量%、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.4質量%、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.35質量%、メチルパラベン0.25質量%、乳酸0.1質量%、ポリエチレングリコール(400)10質量%、水溶性プラセンタエキス0.2質量%、アラントイン0.1質量%、を均一に分散・溶解するまで攪拌した。次に、これを1000g/mの割合になるように剥離ライナー上に展延し、支持体を貼着し転写した。その後、顔の形に裁断し、シート状パック剤(比較例1)を得た。
【0044】
試験例1.使用試験
本発明のシート状パック剤(実施例1)および従来のシート状パック剤(比較例1)について40名の被験者を用い、使用比較試験を実施した。被験者に試料を各1枚渡し、風呂上り洗顔後に顔に30分間貼付させ(1日に実施例1または比較例1のシート状パック剤いずれか1枚)、それぞれ絶対評価を行った。その後、被験者に〔質感〕〔付着性〕〔しっとり感〕〔翌朝の化粧のり〕〔保湿効果の比較〕〔使用意向の比較〕の項目について評価させた。表1に〔質感〕、表2に〔付着性〕、表3に〔しっとり感〕、表4に〔翌朝の化粧のり〕、表5に〔保湿効果の比較〕、表6に〔使用意向の比較〕の結果を示す。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
【表5】

【0050】
【表6】

【0051】
表1〜表6の結果より明らかなように、本発明のシート状パック剤(実施例1)は、使用時の質感および付着性、また、剥離後のしっとり感、翌朝の化粧のり、保湿効果のいずれについても、従来のシート状パック剤(比較例1)と比べて極めて優れていることが理解される。さらに使用意向についても、本発明のシート状パック剤(実施例1)が従来のシート状パック剤(比較例1)を大きく上回る結果となっている。
【0052】
試験例2.皮膚状態測定
実施例1および比較例1のシート状パック剤について健常成人の女性被験者A〜Eの5名を用い、各試料使用後の皮膚状態について肌質(表皮角質層水分・表皮皮脂・皮膚表面温度)の測定を実施した。被験者の両上腕外側を用い、以下の手順で実施した。
(1)肌を洗浄する。(試験開始30分前にエチルアルコールで貼付部位を拭き取る。)
(2)試験前の肌質測定を行う。
(3)両上腕外側にφ45mmサイズにくり抜いた各試料を30分間貼付する。
(4)剥離直後の肌質測定を行う。
(5)剥離30分後の肌質測定を行う。
(6)剥離1時間後の肌質測定を行う。
(7)剥離6時間後の肌質測定を行う。
なお、試験には株式会社アミックグループ製SKICOS301を使用した。また測定は25℃−55%Rh人工気象室内で実施し、被験者を測定5分前に入室させた。表7に〔表皮角質層水分〕、表8に〔表皮皮脂〕、表9に〔皮膚表面温度〕の測定結果を示す。
【0053】
【表7】

【0054】
【表8】

【0055】
【表9】

【0056】
表7の結果から明らかなように、本発明のシート状パック剤(実施例1)を用いた場合には、表皮角質層水分が剥離直後において試験前よりも約50〜70%程度も増加しており、さらに剥離6時間後においても、被験者5人全員について約10〜30%増加していた。一方、従来のシート状パック剤(比較例1)を用いた場合には、いずれも剥離直後は表皮角質層水分は試験前よりも約40〜60%程度増加しているものの、その持続性は乏しく、剥離6時間後には、被験者5人のうちの2人は試験前よりも減少しているかまたは試験前と同じであって、試験前よりも増加している他の被験者もその水分量は約10%程度しか増加していなかった。したがって、本発明のシート状パック剤(実施例1)は従来のシート状パック剤(比較例1)に比べて表皮角質層水分を補充・維持する効果に極めて優れ、皮膚保湿性を大きく改善するとともに、皮膚保湿の恒常性の維持にも有用であることが理解される。
【0057】
また、表8の結果から明らかなように、本発明のシート状パック剤(実施例1)は従来のシート状パック剤(比較例1)を大きく上回るODT(密封包帯法)効果が得られ、皮膚からの老廃物分泌が促進された結果、優れた表皮皮脂の補充・維持効果が得られることが理解される。従来のシート状パック剤(比較例1)では、その使用によってもほとんど表皮皮脂が変化しないのに対し、本発明のシート状パック剤(実施例1)は剥離直後には極めて多くの皮脂が観察され、次第に時間を経て減少するものの、剥離6時間後にあっても被験者5人のうちの3人は試験前よりも数倍以上まで増加していた。よって、本発明のシート状パック剤(実施例1)は従来のシート状パック剤(比較例1)に比べて表皮皮脂を補充・維持する効果により、皮膚保湿性を改善し、皮膚保湿の恒常性を維持し得るものであることが示された。
また、表9の結果から、本発明のシート状パック剤(実施例1)は従来のシート状パック剤(比較例1)と同様に、適度な冷却作用があり、顔のほてりや疲れを鎮め、心地よい使用感を有することが示された。
【0058】
試験例3.セルロース膜透過試験
本発明のシート状パック剤(実施例1)について、美肌成分の1つであるアラントインのセルロース膜透過性を図1の装置を用いて以下の手順で調べた。
(1)φ45mmサイズの試料をセルロース膜(株式会社ユニフレックス CUPROPHAN MEMBRANE)に貼着し、ガラスセルにセットした。
(2)200mlビーカーに蒸留水(約90ml)を入れ恒温槽で32℃に保温した。
(3)試料(本発明のシート状パック剤(実施例1))をセットしたガラスセルを200mlビーカーの32℃の蒸留水に浸漬した。
(4)浸漬時間を15分、30分および60分とする各試験について、それぞれガラスセルを除去し、200mlビーカー内の蒸留水全量をサンプリングして100mlにし、HPLCサンプルとした。
(5)HPLC測定にはアラントイン2mg/100ml標準液を調製し定量した。
【0059】
また、アラントインのHPLC定量条件は以下のとおりであった。
機器:島津製作所製 高速液体クロマトグラフ LC−10A
カラム:Shodex Asahipak NH2P−50 4E
カラム温度:40℃
波長:220nm
移動相:CHCN/HO=4/1
流速:1.0ml/min
注入量:20μl
表10に〔アラントイン透過量〕の試験結果を示す。
【0060】
【表10】

【0061】
表10の結果から、本発明のシート状パック剤(実施例1)中に含有されるアラントインのうち、15分後には約50%、60分後には約75%がシート状パック剤から放出されてセルロース膜を透過したことが明らかになった。したがって、本発明のシート状パック剤は、有効成分の放出性に優れていることから、皮膚への透過性に優れ、有効成分の皮膚への効果が充分に発揮できるものであることが示された。
【0062】
試験例4.皮膚安全性試験
本発明のシート状パック剤(実施例1)、実施例1を50℃で1ヶ月間保存した経時品(実施例1の50℃1ヶ月経時品)および従来のシート状パック剤(比較例1)について、48時間クローズドパッチテストを実施した。試験は成人男性30名の背部に各パック剤を48時間貼付し、剥離1時間後および剥離24時間後の皮膚刺激を判定した。表11に結果を示す。
【0063】
【表11】

【0064】
表11の結果から明らかなように、本発明のシート状パック剤は、従来のシート状パック剤よりもさらに一層皮膚刺激を生じにくく、50℃で1ヶ月間保存した経時品であってもほとんど皮膚刺激を生じないことから、皮膚安全性に優れるとともに、含有成分の経時的安定性にも極めて優れていることが示された。
したがって上記のとおり、本発明のシート状パック剤は、表皮角質層水分および皮脂の補充・維持効果に優れた、皮膚保湿の恒常性改善に極めて有効なものであるとともに、皮膚への有効成分の放出性および経皮吸収性にも優れ、かつ良好な使用感、皮膚安全性および経時的安定性を備えたものであることが明らかになった。さらにまた、本発明のシート状パック剤を継続的に使用することにより、皮膚保湿の恒常性を定常的に維持し得ることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0065】
上記のとおり、本発明によれば、皮膚保湿の恒常性改善や皮膚有効成分の経皮吸収性に優れると共に、皮膚刺激を生じることのない安全性の高いシート状パック剤を提供することができることから、化粧品、医薬品、医薬部外品又は雑品用途への応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】膜透過試験装置を表す図である。
【符号の説明】
【0067】
1:ガラスセル
2:セルロース膜
3:マグネチックスターラー
4:試料(本発明のシート状パック剤)
5:200mlビーカー
6:蒸留水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、基剤及び剥離ライナーを備えてなるシート状パック剤であって、前記基剤がハイドロゲル及びオイルゲルのハイブリッドゲルを含有する、前記シート状パック剤。
【請求項2】
オイルゲルが、多価アルコール脂肪酸エステル及びデキストリン脂肪酸エステルを含有する、請求項1に記載のシート状パック剤。
【請求項3】
多価アルコール脂肪酸エステルの配合量が、基剤全体の1〜20質量%である、請求項2に記載のシート状パック剤。
【請求項4】
多価アルコール脂肪酸エステルがトリ2−エチルヘキサン酸グリセリルである、請求項2または3に記載のシート状パック剤。
【請求項5】
デキストリン脂肪酸エステルの配合量が、基剤全体の0.05〜3質量%である、請求項2〜4のいずれかに記載のシート状パック剤。
【請求項6】
デキストリン脂肪酸エステルが、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、及び、パルミチン酸/オクタン酸デキストリンから選ばれる1種又は2種以上である、請求項2〜5のいずれかに記載のシート状パック剤。
【請求項7】
デキストリン脂肪酸エステルのゲル強度が10〜300gである、請求項2〜6のいずれかに記載のシート状パック剤。
【請求項8】
ハイドロゲルが、グリコール類及び/又は多価アルコール類を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載のシート状パック剤。
【請求項9】
ハイドロゲルとオイルゲルを均一混合し、ハイドロゲル中に存在する多価金属化合物及びその他の架橋剤の経時反応型架橋により、三次元包接構造体を形成させてハイブリッドゲルを得る、シート状パック剤の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−206540(P2006−206540A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−23562(P2005−23562)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000160522)久光製薬株式会社 (121)
【Fターム(参考)】