説明

シート状接着剤、電子部品装置の製造方法及び電子部品装置

【課題】 電子部品素子を支持部材等に接合する際に好適に用いることができ、側方への接着剤のはみ出しが生じ難く、被着体同士を確実に接合し得るシート状接着剤、該シート状接着剤を用いた電子部品装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 熱硬化性樹脂を含むシート状接着剤であって、コーンプレート粘度計を用いて回転数1Hz及び昇温速度10℃/分で25℃から昇温した場合の最小溶融粘度が97PaS〜5100PaSの範囲にあり、上記最小溶融粘度を示した温度+50℃の温度における溶融粘度が0.1MPaS以上であるシート状接着剤103、並びにシート状接着剤の電子部品素子105の一面と該電子部品素子が搭載される支持部材102または他の電子部品素子との間に介在させ、電子部品素子を支持部材または他の電子部品素子に圧接させた後、該シート状接着剤を硬化させる、電子部品装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂を用いたシート状接着剤、シート状接着剤を用いた電子部品装置の製造方法及び電子部品装置に関し、より詳細には、被着体間において圧接された後に硬化される熱硬化性のシート状接着剤、並びに該シート状接着剤を用いた電子部品装置の製造方法及び電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子を基板に接合するに際しては、半導体素子を基板上に搭載した後、半導体素子の下面と基板との間の隙間に接着剤を注入し、硬化させる方法が広く用いられていた。このように、後で接着剤を注入して形成される接着剤層は、通常、アンダーフィルと称されている。アンダーフィルを形成することにより、半導体素子と基板の接合強度が高められ、かつ半導体素子と基板上の電極との電気的接続部分の信頼性が高められている。
【0003】
ところで、半導体素子などの電子部品素子の小型化に伴って、隙間が狭くなったり、電極間隔が狭くなり接合後に接着剤を注入し、アンダーフィルを形成することが困難となってきている。またチップの高機能化に伴いチップサイズが大きくなり、後でアンダーフィルを均一に大面積に注入することが困難になってきた。そのため、近年、シート状もしくはペースト状接着剤を半導体素子の一面と基板との間に介在させた状態で、半導体素子を基板側に圧接し、しかる後シート状もしくはペースト状接着剤を硬化させる方法が用いられてきている。このようなシート状もしくはペースト状接着剤を用いた電子部品素子の製造方法は、例えば下記の特許文献1や特許文献2に開示されている。
【0004】
図2(a)〜(c)は、従来のシート状接着剤を用いた電子部品装置の製造方法を説明するための各部分切欠正面断面図である。
【0005】
図2(a)に示すように、ステージ101上に基板102を配置する。他方、吸引治具104の下面に半導体素子105を吸引保持する。吸引治具104は、下面104aに開いた吸引孔104bを有する。吸引孔104bから吸引することにより、半導体素子105が下面104aに保持されている。半導体素子105の下面105aは、下方に突出するように金属バンプ106,107が設けられている。また、半導体素子105では、上面105b上に、図示しない電極等が形成されている。
【0006】
図2(b)に示すように、接合に際しては、吸引治具104を下方に移動させ、金属バンプ106,107を基板102の上面に圧接させる。この場合、金属バンプ106,107によりシート状接着剤103の一部が押し退けられ、金属バンプ106,107の先端が、基板102上の電極ランド(図示せず)に電気的に接続される。しかる後、加熱または光の照射等によりシート状接着剤103が硬化される。このようにして図2(c)に示すように、基板102上に、接着剤硬化物103Aにより半導体素子105が接着されている半導体装置108が得られる。
【特許文献1】特開平2−82633号公報
【特許文献2】特開2004−140366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図2(c)に示すように、上記製造方法では、圧接によりシート状接着剤の一部が横方向に染み出し、半導体素子105の側面から上面105bに至るように回り込むことがあった。他方、半導体素子105の上面105bには、図示しない電極等が配置されており、この電極が接着剤硬化物103Aにより被覆されると、該電極を他の電子部品素子や回路と電気的に接続することができなくなる。
【0008】
このような問題を解決するには、半導体素子105と基板102との間の隙間から接着剤103が側方にはみ出さないようにすることが求められる。しかしながら、硬化前には、上記金属バンプ106,107により、接着剤103を確実に押し退け、金属バンプ106,107の先端を基板103上の電極ランドに確実に接触させることが必要である。そのため、硬化前の接着剤103はある程度の流動性を有することが求められる。従って、流動性の低すぎる接着剤を用いることはできないので、接着剤103の側方へのはみ出しを確実に抑制することは困難であった。
【0009】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、電子部品素子の一面を電子部品素子が搭載される支持部材または他の電子部品素子に接着するのに好適に用いられ、接着剤の側方へのはみ出しを好適に抑制することができ、余分なはみ出しによる不良品が生じ難い、シート状接着剤、並びに該シート状接着剤を用いた電子部品装置の製造方法及び電子部品装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るシート状接着剤は、熱硬化性樹脂を含むシート状接着剤であって、コーンプレート粘度計を用いて回転数1Hz及び昇温速度10℃/分で25℃から昇温しつつ粘度を測定した場合の最小溶融粘度が40PaS〜5100PaSの範囲にあり、上記最小溶融粘度を示した温度+50℃の温度における溶融粘度が0.1MPaS以上であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るシート状接着剤のある特定の局面では、前記シート状接着剤が、熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂を含み、エポキシ樹脂100重量部に対し、数平均分子量10万〜25万のエポキシ含有ポリマー10〜50重量部と、イミダゾール系硬化剤0.5〜30重量部とを含む。
【0012】
本発明に係る電子部品装置の製造方法は、本発明に係るシート状接着剤を、電子部品素子の一面と、電子部品素子が搭載される支持部材または他の電子部品素子との間に介在させ、電子部品素子を支持部材または他の電子部品素子と圧接させる工程と、前記シート状接着剤を硬化させる工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る電子部品装置は、本発明のシート状接着剤の硬化物により電子部品素子が支持部材または他の電子部品素子に接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るシート状接着剤は、熱硬化性樹脂を含み、加熱により硬化し、硬化物を与える。そして、該シート状接着剤は、上記の条件で昇温した際の最小溶融粘度が40〜5100PaSの範囲にあり、(該最小溶融粘度時の温度+50℃)の温度における溶融粘度が0.1MPaS以上であるため、被着体間に圧接された状態で加熱された際に、接着剤の側方へのはみ出しが効果的に抑制される。
【0015】
例えば、電子部品素子の一面を、電子部品素子が搭載される支持部材または他の電子部品素子に上記シート状接着剤を介して圧接し、加熱により硬化させる場合、上記シート状接着剤の最小溶融粘度が40PaS以上であるため、25℃から昇温する過程において電子部品素子の一面と、支持部材または他の電子部品素子との間の隙間から側方にシート状接着剤がはみ出し難い。また、上記最小溶融粘度が5100PaS未満であるため、上記電子部品素子の一面と、支持部材または他の電子部品素子との間の隙間に充填され得るに必要な流動性を有する。従って、上記隙間が、シート状接着剤により確実に充填され、電子部品素子と、上記支持部材または他の電子部品素子とを良好に接合することができる。
【0016】
加えて、(上記最小溶融粘度を示す温度+50℃)の温度における溶融粘度が0.1MPaS以上とされているため、加熱に際し、熱硬化させようとした場合、初期にはシート状接着剤が流動化し、被着体間の隙間に確実に充填される。よって、被着体同士を確実に接合することが可能となる。
【0017】
本発明において、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂が含有されており、該エポキシ樹脂100重量部に対し、数平均分子量10万〜25万のエポキシ含有ポリマーを10〜50重量部及びイミダゾール系硬化剤を0.5〜30重量部含むシート状接着剤では、上記25℃から昇温した際の最小溶融粘度を上記特定の範囲とし、かつ最小溶融粘度を示す温度+50℃の温度における溶融粘度を0.1MPaS以上とすることができ、しかも、硬化後の接合強度を効果的に高めることが可能となる。
【0018】
本発明に係る電子部品装置の製造方法では、本発明のシート状接着剤を、電子部品素子の一面と、支持部材または他の電子部品素子との間に介在させ、電子部品素子を支持部材または他の電子部品素子に圧接させた後に、該シート状接着剤を硬化させている。従って、上記シート状接着剤が25℃から昇温した際の最小溶融粘度は上記特定の範囲にあり、かつ最小溶融粘度を示す温度+50℃の温度における溶融粘度が0.1MPaS以上とされているため、本発明に従って電子部品素子の一面と、支持部材または他の電子部品素子との間の空間から側方への接着剤のはみ出しを効果的に抑制することができると共に、電子部品素子と支持部材または他の電子部品素子とを強固にかつ確実に接合することが可能となる。
【0019】
本発明に係る電子部品装置では、本発明のシート状接着剤の硬化物により電子部品素子が支持部材または他の電子部品素子に接合されているので、電子部品素子と、支持部材または他の電子部品素子との間の隙間から側方への接着剤のはみ出しが生じ難い。従って、電子部品素子を外部と電気的に接続するための電極等が接着剤により覆われ難いので、他の電子部品素子や回路の電気的接続不良が生じ難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係るシート状接着剤の用途は特に限定されるわけではないが、例えば、電子部品素子の一面を電子部品素子が搭載される支持部材または他の電子部品素子にシート状接着剤を介して圧接し、接着する用途に好適に用いられる。このような用途では、電子部品素子を、支持部材または他の電子部品素子と確実に接合することが可能であると共に、接着剤が隙間から側方へはみ出さないことが強く求められる。すなわち、電子部品素子と支持部材または他の電子部品素子との隙間から側方に余分な接着剤がはみ出し、硬化すると、はみ出した接着剤硬化物が電子部品素子や他の電子部品素子上の電極等を被覆し、電気的接続不良が生じたりするおそれがある。
【0021】
本発明に係るシート状接着剤では、このような側方へのはみ出しが効果的に抑制され、例えば電子部品素子と、上記支持部材または他の電子部品素子との接合を確実に行うことができると共に、所望でない側方への接着剤のはみ出しによる電気的接続不良も引き起こし難い。
【0022】
以下、本発明のシート状接着剤の詳細を説明する。
【0023】
本発明のシート状接着剤は、熱硬化性樹脂を含み、加熱により硬化する硬化性の接着剤である。そして、常温、すなわち、25℃ではシート状の形状を有し、加熱により流動性を増し、最終的に硬化し、被着体同士を接合する。
【0024】
上記シート状接着剤では、コーンプレート粘度計を用いて1Hz及び昇温速度10℃/分の条件で25℃から昇温した際の最小溶融粘度が40PaS〜5100PaSの範囲にあり、上記最小溶融粘度+50℃の温度における溶融粘度が0.1MPaS以上である。
【0025】
上記のように、25℃から昇温した場合に、シート状接着剤は流動化する。そのため、被着体間の隙間にむらなく充填される。この場合、最小溶融粘度が40PaSよりも低いと、流動性が高くなりすぎ、隙間から側方へのはみ出しが生じることとなる。従って、最小溶融粘度は、40PaS以上であることが必要である。また、上記最小溶融粘度が高すぎると、加熱により流動性を示した段階において、粘度が低くならず、上記隙間を確実に充填することができなくなる。従って、最小溶融粘度は5100PaS以下であることが必要である。より好ましくは、上記最小溶融粘度は、40〜100PaSの範囲とされる。
【0026】
上記最小溶融粘度を示す温度については、25℃以上であれば特に限定されないが、熱硬化性のシート状接着剤であるため、加熱により硬化する温度よりも低い温度で、最小溶融粘度を示すこととなる。
【0027】
また、本発明に係るシート状接着剤では、最小溶融粘度を示した温度+50℃の温度における溶融粘度は、0.1MPaS以上であることが必要である。すなわち、上記最小溶融粘度を示した温度においては十分な流動性を示し、隙間にむらなく充填される。そして、さらに加熱された場合、熱硬化反応によりシート状接着剤が硬化し、硬化物を与える。この場合、硬化過程において最小溶融粘度を示した温度+50℃の温度における溶融粘度は0.1MPaS以上であることが必要であり、それによって、シート状接着剤が充填される隙間において、十分に接着剤が広がった状態で硬化されることとなる。0.1MPaS未満の場合には、接合すべき領域に十分に接着剤が濡れ広がらなくなる。好ましくは、最小溶融粘度を示す温度+50℃の温度における溶融粘度は、0.01MPaS以上とされる。
【0028】
なお、最小溶融粘度を示す温度+50℃の温度における溶融粘度の上限値については、特に限定されない。すなわち、この温度において硬化が完全に進行した場合、硬化物となり、溶融粘度をもはや測定することができない固形物となるからである。
【0029】
本発明に係るシート状接着剤は、上記最小溶融粘度範囲及び最小溶融粘度を示す温度+50℃の温度における上記溶融粘度を満たす限り、その組成については特に限定されない。すなわち、様々な熱硬化性の接着剤組成物により、本発明のシート状接着剤を構成することができる。従って、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂などの適宜の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0030】
好ましくは、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂が用いられる。この場合には、硬化物の機械的強度が高いので、被着体同士を強固に接合することができる。
【0031】
使用し得るエポキシ樹脂としては特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等のような芳香族エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、並びにこれらの水添化物、上記各種エポキシ基含有化合物にNBR、CTBN、ポリブタジエン、アクリルゴム等のゴム成分を含有させたゴム変成エポキシ樹脂;等、従来公知の各種エポキシ基含有化合物が挙げられる。
【0032】
上記エポキシ樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0033】
上記エポキシ樹脂系のシート状接着剤は、好ましくは、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ含有ポリマーを含む。
【0034】
エポキシ樹脂硬化剤についても特に限定されず、従来より周知のフェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、潜在性硬化剤(ジシアンジアミド等)、ジアミン系硬化剤、イミダゾール系、ホスフィン系などを用いることができる。
【0035】
また、上記エポキシ樹脂含有ポリマーとしては、特に限定されず、エポキシ基を有するアクリルポリマー、エポキシ含有ブタジエンゴム、ビスフェノール型高分子エポキシ樹脂、エポキシ含有フェノキシ樹脂、エポキシ含有ウレタン樹脂、エポキシ含有ポリエステル樹脂などを挙げることができる。
【0036】
前記エポキシ基含有ポリマーは、発明に係るシート状接着剤の溶融粘度を調整するために配合されている。すなわち、上記エポキシ基含有ポリマーを適宜配合することにより、シート状接着剤の硬化物性にさほど影響を与えることなく、上記最小溶融粘度を上記特定の範囲と補正することが容易となる。
【0037】
また、エポキシ基含有ポリマーは、官能基としてエポキシ基(グリシジル基)を有するので、シート状接着剤の加熱硬化に際し、エポキシ樹脂と同様に加熱により硬化反応に寄与し、強固な硬化物を与える。加えて、エポキシ樹脂と同様にエポキシ基を有するため、シート状接着剤中に含有されたとしても、貯蔵安定性を損ない難い。
【0038】
上記エポキシ基含有ポリマーの分子量は、好ましくは数平均分子量で10万〜25万の範囲である。また、エポキシ樹脂100重量部に対し、数平均分子量10万〜25万のエポキシ含有ポリマーは、好ましくは、10〜50重量部、より好ましくは15〜30部の割合で配合されることが望ましい。これは、アクリルポリマーが50重量部を超えると、流動性が低下するからである。また10重量部未満になると、流動が激しくシート製作が困難になったり、チップ端部からのはみ出た樹脂がきれいなフィレットを形成し難くなり、下層の他の電子部品素子や上層の他の電子部品素子へ薄く塗れ拡がったりする。
【0039】
数分子量が25万を超えると、流動性が低下するだけでなく、接続語の信頼性が低下することがある。数分子量が10万未満では、流動が激しくシート製作が困難になり、また、チップ端部からのはみ出た樹脂がきれいなフィレットを形成し難くなり、下層の他の電子部品素子や上層の他の電子部品素子へ薄く塗れ拡がったりする。
【0040】
また、発明に係るシート状接着剤では、詳しくは、上記硬化剤としてイミダゾール系硬化剤が用いられる。該イミダゾール系硬化剤は、エポキシ樹脂100重量部に対し、好ましくは、0.5〜30重量部の割合で配合される。0.5重量部未満では、硬化が十分に促進されないことがあり、30重量部を超えると、促進作用は飽和し、硬化物の物性が損なわれることがある。
【0041】
従って、本発明においては、より好ましくは、上記シート状接着剤は、エポキシ樹脂100重量部に対し、分子量10万〜25万の上記エポキシ含有ポリマー10〜50重量部とイミダゾール系硬化剤0.5〜30重量部とを含む組成を有する。
【0042】
本発明に係るシート状接着剤では、仕様に応じて、さらに、硬化促進剤、シランカップリング剤などの他の添加剤が添加されてもよい。
【0043】
必要に応じて添加される硬化促進剤についても、従来より公知のエポキシ樹脂系接着剤において用いられる2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2−へプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−アリール−4,5−ジフェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1)']−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−エチル−4'−メチルイミダゾリル−(1)']−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1)']−エチル−S−トリアジンイソシアヌール酸付加物、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどの硬化促進剤を用いることができる。
【0044】
また、前記シランカップリング剤としても特に限定されず、適宜のシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤を配合することにより、シリコンチップや基板の接着性をより一層高めることができ、望ましい。
【0045】
本発明に係るシート状接着剤では、上記のように、コーンプレート粘度計を用いて回転数1Hz、昇温速度10℃で25℃以上から200℃程度まで昇温した場合の最小溶融粘度が、40〜5100PaS、上記最小溶融粘度を示した温度+50℃の温度における溶融粘度が0.1MPaS以上である条件を満たしているため、硬化前にはある程度の柔軟性を有し、被着体同士をシート状接着剤を介して圧接させた際に、シート状接着剤が被着体の接合面に無理なく追随する。加えて、加熱により初期段階では流動性が高くなり、最小溶融粘度が上記特定の範囲とされていることにより上記隙間に無理なく充填され、しかも隙間から側方へのはみ出しは生じ難い。そして、さらに加熱を進めることにより、被着体同士が強固に接合される。
【0046】
従って、電子部品素子と、支持部材または他の電子部品素子との接合に用いた場合には、上記隙間の側方への接着剤へのはみ出しが生じ難いので、電子部品素子あるいは上記支持部材または他の電子部品素子の外表面の電極等が接着剤により被覆され難い。従って、電気的接続不良を確実に防止することができる。これを、本発明の実施形態を参照して、より具体的に説明する。
【0047】
本実施形態では、図1に示すように、シート状接着剤1は、図示しない半導体素子の矩形の底辺の4辺近傍に配置された外部電極に該当する位置を除くように、矩形形状から台形の切欠を1a〜1dを形成した形状を有する。この場合、シート状接着剤1の面積Sは、台形状の切欠が形成されている分だけ、切欠1c,1dが設けられていない場合の仮想電子部品素子の面積に比べ、その面積が小さくされている。そして、この面積Sとシート厚みHで形成される体積は、隙間体積Vの0.9V〜1.1Vの範囲であればよい。
【0048】
本実施形態では、切欠1a〜1dは、台形形状としているが、使用する半導体素子電極位置によって任意に設定することが可能である。図示しないが、半導体素子は、フェースダウン工法で基板上に圧接される。半導体素子の下面には、下方に突出している複数の金属バンプが設けられている。また、半導体素子は、上面側から吸引治具に保持される。吸引治具は、下面に開いた複数の吸引孔を有する。吸引孔から吸引することによって、半導体素子が下面に保持される。
【0049】
接合に際しては、吸引治具により保持された半導体素子を下面側からシート状接着剤1上に圧接する。その結果、金属バンプが硬化前のシート状接着剤1を押し退け、金属バンプの先端が基板の上面の電極ランドに当接され、電気的接続が果たされる。しかる後、加熱または光の照射等によりシート状接着剤1が硬化される。その結果、金属バンプが基板の上面に接着された状態で、半導体素子が基板上に確実に接着剤硬化物により接合される。
【0050】
この場合、上記シート状接着剤1の硬化前の面積Sが上記のように選ばれ、官能基含有アクリルポリマーを含み粘度を制御することで、接着剤の側方へのはみ出しが生じ難く、特に硬化物の半導体素子の上面への回り込みを確実に抑制することができる。よって、半導体素子の上面上に、外部と電気的接続を行うための電極等が形成されていたとしても、該電極等が接着剤硬化物により被覆され難い。
【0051】
上記実施形態では、シート状接着剤1を用いたが、予めシート状にされている必要はなく、支持部材または他の電子部品素子に接着剤を塗布することにより設けられたペースト状接着剤もしくはBステージ化されたペースト状接着剤であってもよい。もっとも、その場合においても、硬化前には、上記粘度が本発明の範囲にあり保形性を有することが必要であり、すなわち面積Sが上記範囲となるようにその形状が保たれるペースト状接着剤であることが必要である。
【0052】
また、上記実施形態では、底辺の4辺近傍にペリフェラル状に配置された外部電極を有する半導体素子を用いたため、シート状接着剤1は、電極該当位置を除くように矩形から台形の切欠1a〜1dを入れた形状とされていたが、本発明においては、シート状接着剤の平面形状は特に限定されない。すなわち、上記シート状接着剤は、長方形や正方形のような四角形の平面形状を有するものに限らず、三角形や五角形の平面形状を有するものであってもよい。
【0053】
また、電極がチップ中央などにある場合はその部分を孔として切り抜いてもよい。
【0054】
なお、切欠は、コーナー部分を除いた辺の部分に切欠を設けることが、望ましい。これは、コーナー部分を除いた辺の部分が圧接に際し最も側方にはみ出し易い部分であるためである。従って、好ましくは、切欠は、辺の中央部分に設けられることが望ましい。
【0055】
また、上記切欠の形状は、特に限定されず、台形に限定されず、円弧と弦とで囲まれた形状の逆ポアソンの組み合わせ、四角形や三角形等の直線を組み合わせてなる形状の切欠が設けられてもよい。
【0056】
上記実施形態の半導体装置の製造方法では、電子部品素子として半導体素子が用いられたが、本発明は、半導体素子以外の電子部品素子の製造方法にも用いることができ、それによって様々な電子部品装置を本発明により製造することができる。
【0057】
また、支持部材に代えて他の電子部品素子に電子部品素子がシート状接着剤により接合される用途にも本発明を適用することができる。
【0058】
次に、具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明をより明らかにする。
【0059】
(実施例1)
半導体素子として、下面の寸法が15mm×8mmの長方形であり、厚みが0.1mmの半導体素子を用意した。この半導体素子の下面から、複数の金属バンプが突出高さ0.025mm、径0.080mmとなるように設けられている。
【0060】
他方、半導体素子が搭載される基板として、すなわち、支持部材としてガラス基板を別途用意した。また、下記の表1に示すように、固形のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、品番:HP7200HH)45重量部と、液状のナフタレン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、品番:HP4032D)25重量部と、エポキシ基含有ポリマー(日本油脂社製、品番:G2050M、数平均分子量=20万)30重量部と、イミダゾール系硬化剤(ジャパンエポキシレジン社製、品番:YH−307)40重量部と、硬化促進剤としてのイソシアヌル変性固体分散型イミダゾール(四国化成社製、品番:2MAOK)0.3重量部と、シランカップリング剤(チッソ社製、品番:S320)2重量部と、ゴム粒子(アクリル系ゴム粒子、ガンツ化成社製、品番:AC4030)5重量部と、ヒュームドシリカ(トクヤマ社製、品番:MT10)4重量部とを混練してなるエポキシ接着剤組成物からなり、その寸法のシート状接着剤を用意した。
【0061】
上記シート状接着剤は、コーンプレート粘度測定において回転数1Hz、昇温速度10℃/分の条件で25℃から200℃まで昇温した際の溶融粘度は、最小溶融粘度は、170℃の温度で120PaSであり、かつ該最小溶融粘度を示した温度である170℃+50℃=220℃における溶融粘度は0.23MPaSであった。
【0062】
上記エポキシ樹脂系のシート状接着剤1を上記ガラス基板上に配置し、トムソン刃により、半導体素子の長辺に対応する辺には、下底寸法が13mm、上底寸法が10mm、高さが1.0mmの台形の切欠1a,1bを、半導体素子の短辺に対応する辺には下底寸法が5mm、上底寸法が3mm、高さが1.5mmの台形部分の切欠1c,1dを形成した。次に、シート状接着剤に、半導体素子を圧接させ、フリップチップボンダー(澁谷工業株式会社製DB−100)により半導体素子下面の複数の金属バンプがガラス基板に当接するように加圧し、加熱により硬化させた。
【0063】
上記のようにして接合して得られた半導体装置について、光学顕微鏡を用いて接着剤の側方へのはみ出し、特に半導体素子の上面への回り込みの有無を観察したところ、上面への回り込みは認められなかった。
【0064】
また、上記隙間への充填状態について、超音波探傷画像装置により評価した。その結果、充填状態は良好であった。なお、下記の表1においては充填状態の評価について、チップの充填率90〜100%である場合には良好であるとして、〇を付し、90%未満である場合には不良であるとして、×を付した。
【0065】
また、上記シート状接着剤の加熱硬化に際しての濡れ広がりを以下の要領で評価した。濡れ広がり:チップ端部からの最大ぬれ幅。下記の表1に結果を示す。なお、表1では、10μm以下である場合、濡れ広がりが良好であるとして〇を付し、10μmを超える場合には、濡れ広がり不良として×を付した。
【0066】
(実施例2〜5及び比較例1〜3)
使用したエポキシ樹脂系接着剤組成物を下記の表1に示すように変更したことを除いては、実施例1と同様にして、半導体素子をガラス基板上に接合し、評価した。結果を下記の表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
表1から明らかなように、最小溶融粘度が15PaSに留まっている比較例1では、濡れ広がり性が十分でなかった。これに対して、最小溶融粘度が40PaS以上である実施例1〜4では、濡れ広がり性が良好であった。
【0069】
また、比較例2では、最小溶融粘度が11000PaSと高すぎたためか、充填状態が良好ではなかった。これに対して、実施例1〜4では、最小溶融粘度が5100PaS以下であるため、隙間に確実に接着剤が充填されていた。
【0070】
また、比較例3では、最小溶融粘度を示した温度+50℃の温度における粘度が0.05MPaSと低かったためか濡れ広がり性が十分でなかった。これに対して、実施例1〜4では、最小溶融粘度+50℃の温度における溶融粘度が0.1MPaS以上であるため、濡れ広がり性も良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態に得るシート状接着剤の模式的平面図。
【図2】(a),(b)は、従来の電子部品装置の製造方法の一例を示す部分切欠正面図であり、(c)は従来の製造方法により得られた電子部品装置を示す正面断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1…シート状接着剤
1a〜1d…切欠


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂を含むシート状接着剤であって、コーンプレート粘度計を用いて回転数1Hz及び昇温速度10℃/分で25℃から昇温しつつ粘度を測定した場合の最小溶融粘度が40PaS〜5100PaSの範囲にあり、上記最小溶融粘度を示した温度+50℃の温度における溶融粘度が0.1MPaS以上であることを特徴とする、シート状接着剤。
【請求項2】
前記シート状接着剤が、熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂を含み、エポキシ樹脂100重量部に対し、平均分子量10万〜25万のエポキシ含有ポリマー10〜50重量部と、イミダゾール系硬化剤0.5〜30重量部とを含むことを特徴とする、請求項1に記載のシート状接着剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシート状接着剤を、電子部品素子の一面と、電子部品素子が搭載される支持部材または他の電子部品素子との間に介在させ、電子部品素子を支持部材または他の電子部品素子と圧接させる工程と、
前記シート状接着剤を硬化させる工程とを備えることを特徴とする、電子部品装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載のシート状接着剤の硬化物により電子部品素子が支持部材または他の電子部品素子に接合されていることを特徴とする、電子部品装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−9022(P2007−9022A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−190219(P2005−190219)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】