説明

シート状樹脂成形物、ロール状物、及び多層構造体

【課題】
小径のロールで巻き取ることが可能で、高い曲げ弾性率を有するシート状樹脂成形物を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、曲げ弾性率が200MPa以上および体積平均厚さが150μm以上であり、横手方向に連続した凹部が0.5〜10cmの間隔毎に設けられ、該凹部の最深部分における厚さが体積平均厚さの1/3以下で、且つ、300μm以下であるシート状樹脂成形物に関する。シート状樹脂成形物を構成する樹脂は、ビニルアルコール単位10〜50モル%を含有するポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に建築用合わせガラス、自動車用フロントガラスおよび太陽電池モジュール等の多層構造体の一層として使用されるシート状樹脂成形物、及び、シート状樹脂成形物からなるロール状物に関する。また、本発明は、前記シート状樹脂成形物を少なくとも一層に用いた多層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
建築用合わせガラスおよび自動車用フロントガラスには、2枚のガラスの間にシート状樹脂成形物(又はフィルム)を挟み、中間層として用いることにより、ガラスが割れた際にガラス破片が飛散しない、または人や物などがガラスを突き抜けて外部に飛び出さない等の優れた機能を持たせることができる。
【0003】
建築用合わせガラスや自動車用フロントガラスなどには、2枚の無機ガラス又は有機ガラスの間に、ガラスの割れ強度向上、割れたガラスの飛散防止および衝撃物の貫通防止の為、ガラスと適度に接着する、透明性の高い樹脂層が貼りあわされている。また太陽電池モジュールには、2枚のガラスまたは耐候性プラスチックシート(又はフィルム)の間に、太陽電池セル(結晶系シリコン、薄膜系シリコン、金属化合物薄膜、有機薄膜、及び、透明又は不透明電極層)を配し、その隙間を樹脂(又はフィルム)により充填し(封止材)、かつ、両ガラス面等を接着する構成が採用されている。しかしながら、前記構成の構造体に対して耐荷重性が求められるなど、面強度への高い要求があり、ガラスはある程度厚いものを使用する必要があった。
【0004】
これに対し、非特許文献1及び非特許文献2には、中間層または封止材をある程度以上の曲げ弾性率にすることにより、合わせガラスの強度を向上させるか、あるいは同程度の強度を維持しつつガラスの厚さを薄くできることが記載されている。
【0005】
さらに非特許文献1及び非特許文献2に示されるように、前記中間層が室温などの使用温度下で、ある程度以上の曲げ弾性率を有することにより、より薄いガラスを用いた場合であっても、十分な強度を発現することが知られている。
【0006】
しかしながら、前記中間層として用いるシート状樹脂成形物は、ラミネート時に未充填部分を発生させないようある程度の厚さが必要であるため、シートが曲げにくくなり小径のロールに巻きとれない、または巻き取っても巻きグセが付くといった問題があった。そのため、シート状樹脂成形物は枚葉または大口径ロールで輸送、ハンドリングせざるを得ず、スペースが非効率となるだけでなく、こまめな寸法変化に対応しにくいという問題があった。以上の問題は、両面ガラスタイプの太陽電池モジュールにおける強度向上という要求に対しても同様である。
【0007】
また、一方で、特許文献1〜3では、ブロッキング性を防止したり、脱気性を向上させる、或いはモアレ現象を防止するなどの別の目的で、表面に単にエンボス加工を行なうことが記載されているが、十分な曲げ弾性率を有するものではなかったり、或いは、高い曲げ弾性率を有するシート状の樹脂を小径で巻き取ることができるようなものではなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】デュポン社、「デュポン セントリーグラス(DuPont SentryGlas)」、[Online]、[2010年9月検索]、インターネット<http://www2.dupont.com/DuPont_Home/ja_JP/assets/pdf/ProductsandSevices/2008SGP_brochure.pdf>
【非特許文献2】デュポン社、「セントリーグラス 技術特性(SentryGlas 技術特性)」、[Online]、[2010年9月検索]、インターネット<http://www2.dupont.com/DuPont_Home/ja_JP/assets/pdf/ProductsandSevices/2008SGP_technical.pdf>
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−256043号公報
【特許文献2】特開2003−128442号公報
【特許文献3】特開2008−156811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、建築用合わせガラスや自動車用フロントガラス、太陽電池モジュールなどの多層構造体の一層として使用されるシート状樹脂成形物について、曲げ弾性率が200MPa以上を有するシート状樹脂成形物の表面の一部を横手方向に連続して薄くすることで、シート状樹脂成形物を曲げることを可能とし、小径ロール(巻き芯)への巻き取りができるようにしたものである。さらに、他の構造体をラミネートする際に、シート状樹脂成形物の樹脂成分を流動させることにより、その凹部の空隙を満たすことができ、ハンドリング効率を大幅に向上させ、かつ多層構造体に要求される強度を維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上述の高い曲げ弾性率と、小径ロールへの巻き取りを両立させるという課題について検討した結果、後述するようなガラス等の両側層との接着力が優れ、かつ高い曲げ弾性率を有するシート状樹脂成形物に、横手方向に連続した特定の凹部を設けることで、これらの課題を達成できる事を見出した。これらの知見に基づいてさらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。本発明は、主に建築用合わせガラス、自動車用フロントガラスおよび太陽電池モジュール等の多層構造体の一層(中間層)として使用されるシート状樹脂成形物からなるロール状物であって、そのシート状樹脂成形物の曲げ弾性率が高いために、小径のロール状に巻けないという問題を、シート状樹脂成形物の形状を工夫する事により解決したもので、素材の取り扱い性を改善する技術に関するものである。
【0012】
本発明は、曲げ弾性率が200MPa以上および体積平均厚さが150μm以上であり、横手方向に連続した凹部が0.5〜10cmの間隔(D)毎に設けられ、該凹部の最深部分における厚さ(d)が体積平均厚さの1/3以下で、且つ、300μm以下であるシート状樹脂成形物に関する。
【0013】
シート状樹脂成形物を構成する樹脂は、ビニルアルコール単位10〜50モル%を含有するポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。
【0014】
可塑剤の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対し15質量部以下であることが好ましい。
【0015】
シート状樹脂成形物を構成する樹脂は、不飽和カルボン酸モノマー単位1〜40質量%を含み、さらに、不飽和カルボン酸モノマー単位の少なくとも一部がカルボキシルイオンの対イオンとして金属原子を有することが好ましい。
【0016】
前記樹脂は、さらにエチレンモノマー単位を含むことが好ましい。
【0017】
凹部が溝状であることが好ましい。
【0018】
前記凹部の溝幅(w)が10μm以上であり、且つ前記凹部の間隔(D)に対して1/2以下であることが好ましい。
【0019】
前記凹部における溝幅(w)と凹部の間隔(D)の比w/Dが1/2〜1/300であることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、前記シート状樹脂成形物を巻き芯に巻きつけて得られるロール状物に関する。巻き芯の外径(r)は、前記凹部の間隔の5倍以上であることが好ましい。
【0021】
さらに、本発明は、前記シート状樹脂成形物に対して脱気および熱プレスを行なうことにより、シート状樹脂成形物の凹部と凸部を平準化すると共に、シート状樹脂成形物の片面又は両面の略全体にわたって構造体を沿わせることで、構造体をラミネートして得られる多層構造体に関する。前記構造体は、ガラスであることが好ましい。
【0022】
さらに、本発明は、前記ロール状物を形成するシート状樹脂成形物に対して脱気および熱プレスを行なうことにより、シート状樹脂成形物の凹部と凸部を平準化すると共に、シート状樹脂成形物の片面又は両面の略全体にわたって構造体を沿わせることで、構造体をラミネートして得られる多層構造体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明のシート状樹脂成形物は、曲げ弾性率が高く、かつ小径ロールへの巻き取りが可能であるため、ハンドリング効率を大幅に向上させることが可能なシート状樹脂成形物を提供することができる。また、本発明のシート状樹脂成形物は、建築用合わせガラス、自動車用フロントガラス及び太陽電池モジュール等の多層構造体の一層として好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態にかかるロール状物を表す図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるシート状樹脂成形物の上面図の一例である。
【図3】本発明の実施形態にかかるシート状樹脂成形物の凹部付近の断面図の一例である。
【図4】本発明の実施形態にかかるシート状樹脂成形物の上面図の一例である。
【図5】本発明の実施形態にかかるシート状樹脂成形物の凹部付近の断面図の一例である。
【図6】本発明の実施形態にかかるシート状樹脂成形物の上面図の一例である。
【図7】本発明の実施形態にかかるシート状樹脂成形物の凹部付近の断面図の一例である。
【図8】本発明の実施形態にかかるシート状樹脂成形物の上面図の一例である。
【図9】本発明の実施形態にかかるシート状樹脂成形物の凹部付近の断面図の一例である。
【図10】本発明の実施形態にかかるシート状樹脂成形物の上面図の一例である。
【図11】本発明の実施形態にかかるシート状樹脂成形物の凹部付近の断面図の一例である。
【図12】本発明の実施形態にかかるシート状樹脂成形物の上面図の一例である。
【図13】本発明の実施形態にかかるシート状樹脂成形物の凹部付近の断面図の一例である。
【図14】本発明の実施形態にかかるシート状樹脂成形物の上面図の一例である。
【図15】本発明の実施形態にかかるシート状樹脂成形物の凹部付近の断面図の一例である。
【図16】本発明の実施形態にかかるシート状樹脂成形物の上面図の一例である。
【図17】本発明の実施形態にかかるシート状樹脂成形物の凹部付近の断面図の一例である。
【図18】本発明の実施形態にかかるシート状樹脂成形物の上面図の一例である。
【図19】本発明の実施形態にかかるシート状樹脂成形物の凹部付近の断面図の一例である。
【図20】本発明の実施形態にかかるシート状樹脂成形物の凹部における断面図の一例である。
【図21】本発明の実施形態にかかるシート状樹脂成形物の成形に用いられる金属製ロールを表す図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、建築用合わせガラス、自動車用フロントガラスおよび太陽電池モジュールなどの多層構造体の強度を高めるために、その一層として使用されるシート状樹脂成形物(又はフィルム)の曲げ弾性率を高める一方で、小径のロールに巻き取ることを可能にしたもので、ハンドリング性の優れた、シート状樹脂成形物を提供するものである。
【0026】
(樹脂)
本発明のシート状樹脂成形物に使用される樹脂は、均一な厚さを持った(凹部を有さない状態の)試料について、JIS K7171の規定に基づき測定した曲げ弾性率が、200MPa以上である要件を満たしていれば特に限定されないが、後述するポリビニルアセタール樹脂または不飽和カルボン酸共重合体が好ましい。
【0027】
本発明のシート状樹脂成形物に使用される樹脂は、水酸基又はカルボキシル基といった極性基を所定量含有させることで、シート状樹脂成形物に設けられた凹部を、熱プレスにより修復し易くしたものである。本発明のシート状樹脂成形物に使用される樹脂は、極性基含有モノマーを有することが好ましく、ビニルアルコールモノマー単位であれば1モル%以上有することが好ましく、5モル%以上有することがより好ましく、カルボキシル基含有モノマー単位であれば1質量%以上有することが好ましく、2質量%以上有することがより好ましい。
【0028】
(ポリビニルアセタール樹脂)
本発明に使用される、曲げ弾性率が200MPa以上のポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂の重合度、アセタール化度を最適化し、可塑剤を少量使用するか、或いは、全く使用しないことで、得ることができる。ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度は800〜4000であることが好ましく、1000〜3000であることがより好ましい。また、ポリビニルアセタール樹脂の平均アセタール化度(ビニルアセタール単位含有量)は、50〜90モル%であることが好ましく、55〜88モル%であることがより好ましく、60〜85モル%であることが特に好ましい。
【0029】
本発明のシート状樹脂成形物に使用されるポリビニルアセタール樹脂は、JIS K6728(1977年)の規定に基づき測定したビニルアルコール単位量が10〜50モル%であることが好ましく、12〜45モル%がより好ましく、15〜40モル%がさらに好ましい。ビニルアルコール単位量が50モル%よりも多いと、吸湿性が高くなり、吸収した水による金属腐食や、絶縁性の低下、可塑化ポリビニルアセタールフィルムの基材からの剥離が起こる原因となるおそれがある。一方、ビニルアルコール単位量が10モル%よりも少ないと、熱プレス時における、シート状樹脂成形物に設けられた凹部の修復が十分でなくなったり、力学的強度の低下、基材への接着性不良等の問題が生じるおそれがある。
【0030】
本発明に使用されるポリビニルアセタール樹脂は、JIS K6728(1977年)の規定に基づき測定したビニルエステル単位量が4モル%以下であることが好ましく、2モル%以下がより好ましく、1モル%以下がさらに好ましい。酢酸ビニル単位量が4モル%を超えると、熱による分解、水分による加水分解により、腐食性物質である酢酸が発生するおそれがある。また、酢酸の脱離によるオレフィンの生成により、ポリビニルアセタール樹脂が着色し易くなるおそれがある。なお、上記アセタール化度、ビニルアルコール単位含有量およびビニルエステル単位含有量の値は、アセタール化度(ビニルアセタール単位含有量)、ビニルアルコール単位含有量およびビニルエステル単位含有量の合計量に対する値である。
【0031】
本発明に使用されるポリビニルアセタール樹脂は、21.6kg負荷の状態で、150℃(2mmのノズル)で測定したメルトフローインデックスが15〜40g/10分であることが好ましく、20〜35g/10分がより好ましい。また、それに加えて、120℃で測定したメルトフローインデックスが0.5〜5g/10分であることが好ましく、1〜4g/10分がより好ましい。さらに、それに加えて、100℃で測定したメルトフローインデックスが0.05〜1g/10分であることが好ましく、0.10〜0.6g/10分がより好ましい。
【0032】
ポリビニルアセタール樹脂は、水の存在下、酸により分解してアルデヒド類を生じるため、アルカリタイター値が正の値になるよう、調整することが好ましい。アルカリ洗浄後のポリビニルアセタール樹脂のアルカリタイター値は、0.1〜30であることが好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。アルカリタイター値が0.1未満であると、耐加水分解性が低下するおそれがあり、逆にアルカリタイター値が30を超えると、フィルム製造時に着色が起こりやすくなるおそれがある。ここで、アルカリタイター値とは、100gのPVB中のアルカリ滴定に要する0.01モル/L塩酸量で規定される値(mL)である。
【0033】
また、ポリビニルアセタール樹脂の酸価は3.0meq/kg以下であることが好ましく、1.5meq/kg以下がより好ましく、1.0meq/kg以下が特に好ましい。酸価が3.0meq/kgを超える場合、得られるシート状樹脂成形物中の酸成分量が多くなって着色したり、該シート状樹脂成形物を用いた太陽電池の電極が腐食し、寿命を低下させる原因となることがある。ここで、酸価の測定方法は、JIS K6728(1977年)の規定に記載の方法による。
【0034】
本発明に使用されるポリビニルアセタール樹脂中に含まれる、アセタール化触媒由来の塩化物イオン、硫酸イオンおよび硝酸イオンの量は、100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下がより好ましく、20ppm以下がさらに好ましい。これらの強酸イオンの含有量が100ppmを超えると、太陽電池モジュール等に使用される金属成分が腐食するおそれがある。
【0035】
本発明で使用されるポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコール樹脂とアルデヒド類とから、公知の方法により製造されるものである。
【0036】
ポリビニルアルコール樹脂は、例えば、ビニルエステル系単量体を重合し、得られた重合体をけん化することによって得ることができる。ビニルエステル系単量体を重合する方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等、従来公知の方法を適用することができる。重合開始剤としては、重合方法に応じて、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤等が適宜選ばれる。けん化反応は、従来公知のアルカリ触媒または酸触媒を用いる加アルコール分解、加水分解等が適用でき、この中でもメタノールを溶媒とし苛性ソーダ(NaOH)触媒を用いるけん化反応が簡便であり最も好ましい。本発明に使用されるポリビニルアルコール樹脂のけん化度には特に制限はないが、分解により生じるカルボン酸量を低減する観点から、95モル%以上であることが好ましく、98モル%以上がより好ましく、99モル%以上がさらに好ましい。
【0037】
ビニルエステル系単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられるが、とりわけ酢酸ビニルが好ましい。前記ビニルエステル系単量体を重合する場合、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸等のチオール化合物や、その他の連鎖移動剤の存在下で行ってもよい。
【0038】
また、前記ビニルエステル系単量体を重合する場合、本発明の主旨を損なわない範囲で他の単量体と共重合させることもできる。他の単量体の例としては、例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等のα−オレフィン;アクリル酸またはその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩またはその4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩またはその4級塩、N−メチロールメタクリルアミドまたはその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸、その塩、そのエステルまたはその無水物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等が挙げられる。これらの単量体単位は通常ビニルエステル系単量体に対して20モル%未満、より好ましくは10モル%未満の割合で用いられる。
【0039】
一方、アルデヒド類としては、炭素数1〜12のアルデヒド化合物が通常用いられ、好ましくは炭素数1〜6の飽和アルキルアルデヒド化合物であり、より好ましくは炭素数1〜4の飽和アルキルアルデヒド化合物である。これらのアルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。アルデヒド類は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。さらに、多官能アルデヒド類やその他の官能基を有するアルデヒド類等を全アルデヒド類の20質量%以下の範囲で少量併用してもよい。これらの中でも、ブチルアルデヒドが、太陽電池モジュールや合わせガラスの用途に使用される際のフィルムの力学物性の観点から好ましい。
【0040】
ポリビニルアセタール樹脂の製造方法としては、特に制限はないが、例えば、ポリビニルアルコール樹脂溶液中で、アルデヒド化合物を酸性条件下に反応させる方法が挙げられる。
【0041】
ポリビニルアセタール樹脂を製造するための溶媒には、特に制限はないが、工業的に大量に製造する上で、水を用いることが好ましく、ポリビニルアルコール樹脂を反応前に予め高い温度、例えば、90℃以上の温度で充分に溶解しておくことが好ましい。また、水溶液の濃度は、5〜40質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましく、8〜15質量%がさらに好ましい。濃度が5質量%未満であると、生産性が悪くなるおそれがある。一方、濃度が40質量%を超えると、反応中の攪拌が困難となり、またポリビニルアルコール樹脂の分子間水素結合によるゲル化が起こり、反応にむらができるおそれがある。
【0042】
ポリビニルアルコール樹脂水溶液に、アルデヒド類を反応させるための触媒としては、特に限定されず、有機酸および無機酸のいずれでも使用可能であり、例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸、炭酸等が挙げられる。中でも無機酸が好ましく、特に塩酸、硫酸および硝酸が、充分な反応速度が得られることと、反応後の洗浄が容易であることから好ましい。反応に使用する酸の濃度は、用いる酸の種類によるが、塩酸、硫酸および硝酸の場合、0.01〜5モル/Lであることが好ましく、0.1〜2モル/Lがより好ましい。酸の濃度が0.01モル/L未満であると反応速度が遅く、目的のアセタール化度、目的の物性のポリビニルブチラール樹脂を得るのに時間がかかるおそれがある。酸の濃度が5モル%を超えると、反応を制御することが困難であると共に、アルデヒドの2量体や3量体が生成しやすくなるおそれがある。
【0043】
反応の手順としては公知の方法が挙げられるが、例えば、ポリビニルアルコール樹脂水溶液に上記触媒を添加してからアルデヒド類を添加する方法、アルデヒド類を先に添加した後に上記触媒を添加する方法等が挙げられる。また、添加するアルデヒド類または酸触媒を、一括添加、逐次添加または分割添加する方法や、酸触媒またはアルデヒド類を含む溶液にポリビニルアルコール水溶液とアルデヒド類または酸触媒の混合溶液を添加する方法等も挙げられる。
【0044】
反応温度としては特に制限はないが、後述のフィルム製造工程を考慮すると、反応後に洗浄しやすい、多孔質状のポリビニルアセタール樹脂を生成させることが好ましい。このようなポリビニルアセタール樹脂を得るためには、反応途中でポリビニルアセタール粒子が析出するまでは0〜40℃の比較的低温で反応を行うことが好ましく、5〜20℃がより好ましい。反応温度が40℃を超えると、ポリビニルアセタール樹脂が融着し、多孔質となり難くなるおそれがある。その後、反応を追い込んで生産性を上げるため、反応温度を50〜80℃とすることが好ましく、65〜75℃がより好ましい。
【0045】
上述のとおりポリビニルアセタール樹脂の粒子は、残存する酸やアルデヒド類等を効率的に除去するため、多孔質状であることが好ましい。特に、ポリビニルアセタール樹脂の平均一次粒子径が5μm以下であることが好ましい。多孔質状のポリビニルアセタール樹脂を得るには、反応温度のみならず、反応液の粘度、攪拌速度、攪拌翼の形状、反応容器形状、反応速度、触媒およびアルデヒド類の添加方法を調整することも重要である。
【0046】
反応後に残存アルデヒドおよび残存酸触媒を除去する方法としては、公知の方法が挙げられる。例えば、反応により得られたポリビニルアセタール樹脂は、アルカリ化合物により中和されるが、アルカリ中和前に、樹脂中に残存するアルデヒド類をできるだけ除去しておくことが好ましい。このため、アルデヒドの反応率が高くなる条件で反応を追い込む方法、水または水/アルコール混合溶媒等により充分に洗浄する方法、化学的にアルデヒドを処理する方法等が有用である。アルカリ中和に使用されるアルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物やアンモニア、トリエチルアミン、ピリジン等のアミン系化合物等が挙げられる。これらの中でも、着色の観点から無機金属の水酸化物が好ましく、アルカリ金属の水酸化物が特に好ましい。
【0047】
必要に応じて、得られたポリビニルアセタール樹脂のガラス等に対する接着性を向上させることも可能である。接着性を改良する方法としては、通常、合わせガラスの接着性改良剤として使用される添加剤を添加する方法、接着性を向上させるための各種添加剤を添加する方法等が挙げられる。
【0048】
前記ポリビニルアセタール樹脂には、さらに、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料、高分子繊維、機能性無機化合物等を、必要に応じて添加しても良い。また、必要に応じて、可塑剤や各種添加剤を抽出し、又は、洗浄することで、一旦、これらの添加剤の含有量を低減させてから、可塑剤や各種添加剤等を、再度、添加しても良い。
【0049】
前記ポリビニルアセタール樹脂に使用される可塑剤は特に制限はないが、例えば、トリエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジ−(2−ブトキシエチル)−アジピン酸エステル(DBEA)、ジ−(2−ブトキシエチル)−セバシン酸エステル(DBES)、ジ−(2−ブトキシエチル)−アゼライン酸エステル、ジ−(2−ブトキシエチル)−グルタル酸エステル、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−アジピン酸エステル(DBEEA)、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−セバシン酸エステル(DBEES)、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−アゼライン酸エステル、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−グルタル酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−アジピン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−セバシン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−アゼライン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−グルタル酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−アジピン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−セバシン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−アゼライン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−グルタル酸エステル、ジ−(2−ブトキシエチル)−フタル酸エステル及び/又はジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−フタル酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、分子を構成する炭素数及び酸素数の和が28以上の可塑剤であることが好ましい。例えば、トリエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−アジピン酸エステル、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−セバシン酸エステルなどが挙げられ、これら2種以上を併用して用いてもよい。可塑剤の含有量は、得られるシート状樹脂成形物が高い曲げ弾性率を有する観点から、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、可塑剤を使用しないことが特に好ましい。15質量部を超えると、シート状樹脂成形物の曲げ弾性率が低すぎるため、該シート状樹脂成形物を用いた多層構造体の強度が不十分となるおそれがある。
【0050】
また、前記のポリビニルアセタール樹脂は、酸化防止剤を含んでいても良い。使用される酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
【0051】
フェノール系酸化防止剤の例としては、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート又は2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどのアクリレート系化合物、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−)ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン又はトリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン又は2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物などがある。
【0052】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド又は10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンなどのモノホスファイト系化合物、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(ジフェニルモノアルキル(C12〜C15)ホスファイト)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン又はテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスファイトなどのジホスファイト系化合物などがある。これらの中でもモノホスファイト系化合物が好ましい。
【0053】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどがある。
【0054】
これらの酸化防止剤は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化防止剤の配合量は、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して0.001〜5質量部、好ましくは0.01〜1質量部の範囲である。
【0055】
また、前記のポリビニルアセタール樹脂(又はシート)は、紫外線吸収剤を含んでいても良い。使用される紫外線防止剤としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α’ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール又は2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート又は4−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)−1−(2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのヒンダードアミン系紫外線吸収剤、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート又はヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート系紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの紫外線吸収剤の添加量は、ポリビニルアセタール樹脂に対して質量基準で10〜50000ppmであることが好ましく、100〜10000ppmの範囲であることがより好ましい。また、これら紫外線吸収剤は2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0056】
また、前記のポリビニルアセタール樹脂(又はシート)は、接着性改良剤を含んでいても良い。使用される接着性改良剤としては、例えば、WO03/033583A1に開示されているものを使用することができ、有機酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩が好ましく使用され、なかでも、酢酸カリウム及び/又は酢酸マグネシウムなどが好ましい。また、シランカップリングなどの他の添加剤を添加しても良い。接着性改良剤の最適な添加量は、使用する添加剤により異なり、また得られるモジュールや合わせガラスが使用される場所によっても異なるが、得られるフィルムのガラスへの接着力が、パンメル試験(Pummel test;WO03/033583A1等に記載)において、一般には3〜10になるように調整することが好ましく、特に高い耐貫通性を必要とする場合は3〜6、高いガラス飛散防止性を必要とする場合は7〜10に調整することが好ましい。高いガラス飛散防止性が求められる場合は、接着性改良剤を添加しないことも有用な方法である。
【0057】
また、前記のポリビニルアセタール樹脂(又はシート)に、高分子繊維、無機フィラー、ガラスファイバーなどの無機物繊維などを他の物性を損なわない範囲で添加することは弾性率を向上させる点で好ましい。高分子繊維としては、ポリビニルアルコール繊維、アクリル、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維、レーヨンなどの天然繊維、無機フィラーとしては、シリカ微粉、シリカビーズ、ガラス繊維、アルミナ繊維、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カオリン、クレー、天然珪酸カリシウム、合成珪酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化インジウム類、酸化錫、酸化チタン、酸化鉄、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、シリチン、セピオライト、タルク、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チッ化ホウ素、ハイドロタルサイト、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、天然マイカ、合成マイカ、モンモリロナイトなどの層状鉱物、硫酸バリウムなどが挙げられる。配合率は特に制限されないが、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して、10〜200質量部であることが好ましく、20〜150質量部であることがさらに好ましい。
【0058】
(不飽和カルボン酸共重合体)
本発明に使用される曲げ弾性率が200MPa以上の不飽和カルボン酸共重合体は、例えば、不飽和カルボン酸共重合体のモノマーの種類、重合度、共重合率等を最適化し、不飽和カルボン酸モノマー単位中のカルボキシル基を、金属原子を有する塩基で中和して、アイオノマーとすることにより得ることができる。
【0059】
本発明のシート状樹脂成形物に使用される不飽和カルボン酸共重合体としては、カルボン酸、カルボン酸塩及びカルボン酸無水物からなる群より選ばれる官能基を有する不飽和カルボン酸モノマー単位を1〜40質量%含有する共重合体が挙げられる。また、不飽和カルボン酸モノマー単位を2〜30質量%含有する共重合体がより好ましい。不飽和カルボン酸モノマー単位の含有量が1質量%未満となると、熱プレス時における、シート状樹脂成形物に設けられた凹部の修復が十分でなくなったり、ガラスや太陽電池セルとの接着力が不十分となる傾向にあり、一方、40質量%を超えると、変色や強度低下となる傾向にある。
【0060】
前記不飽和カルボン酸モノマーとしては、不飽和カルボン酸、その塩またはその無水物が好ましく、不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられ、とくにアクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。前記不飽和カルボン酸共重合体の共重合成分は特に限定されないが、ラミネート適性、100℃までの耐熱性、常温付近での強靭性の点からエチレンを好適に使用することができ、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体としては、エチレン−アクリル酸共重合体およびエチレン−メタクリル酸共重合体等が好ましい。
【0061】
また、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体の塩の好適な例は、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーである。アイオノマー中の金属原子(カルボキシルイオンの対イオンとしての金属原子)としては、リチウム、ナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムなどの多価金属が挙げられる。このようなアイオノマーは、透明性、高温における貯蔵弾性率が高いため好ましい。中でも、リチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛が好ましい。中和度としては、例えば、5〜95モル%であることが望ましいが、接着性等を勘案すると、あまり中和度の高いものを使用するのは得策ではなく、例えば、中和度が10〜80モル%であることがより好ましく、15〜70モル%であることが特に好ましい。
【0062】
本発明においてエチレン−不飽和カルボン酸共重合体として、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体またはそのアイオノマーを用いる場合、不飽和カルボン酸モノマー単位の含有量は、1〜40質量%が好ましく、2〜30質量%がさらに好ましい。得られる共重合体の透明性、接着性、後述する再溶融接着の観点から、不飽和カルボン酸モノマー単位の含有量が1質量%以上であることが好ましい。不飽和カルボン酸モノマー単位の含有量が30質量%を超えると、透明性に関してはより優れたものが得られるが、融点が低くなったり、吸湿性が増すという問題が発生したり、或いは、接着性についても不十分なものとなる傾向にある。エチレン−不飽和カルボン酸共重合体またはそのアイオノマーを用いる場合、エチレンモノマー単位の含有量は、60〜99質量%が好ましく、70〜98質量%がさらに好ましい。エチレンモノマー単位の含有量が、60質量%より少ない場合は、変色し易く、強靭性が不十分となる傾向にあり、99質量%より多い場合は、ガラスなどとの接着力が不足する傾向にある。
【0063】
エチレン−不飽和カルボン酸共重合体の融点は55℃以上、好ましくは60℃以上、特に好ましくは70℃以上であることが望ましい。エチレン−不飽和カルボン酸共重合体やそのアイオノマーの融点が低すぎると、耐熱性が充分でなく、太陽電池素子封止材に用いた場合、太陽電池使用時における温度上昇により封止材層が変形したり、太陽電池モジュールを加熱圧着法で製造するときに、これら封止材が必要以上に流れ出してバリを生じたりする恐れがある。
【0064】
また、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体としては、成形加工性、機械的強度などを考慮すると、JIS K7210(1999年)の規定に基づき測定した、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(MFR、以下同じ)が1〜300g/10分、とくに5〜100g/10分のものを使用するのが好ましい。
【0065】
本発明において、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体としては、極性モノマー以外のモノマーを含有していてもよく、例えば、ビニルエステルや(メタ)アクリル酸エステルなどが共重合されたものを使用したときに、柔軟性付与の効果が得られる。その含有量は、本発明の目的を損なわない範囲で使用することが好ましい。
【0066】
このような、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体は、高温、高圧下のラジカル共重合により得ることができる。また、該共重合体のアイオノマーは、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体と金属化合物を反応させることによって得ることができる。
【0067】
本発明においては、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体組成物がアミノ基を含有するアルコキシシランを含有していてもよい。該アミノ基を含有するアルコキシシランとしては、具体的には、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン又はN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシキシシランなどのアミノトリアルコキシシラン類、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロプルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロプルメチルジエトキシシラン、3−メチルジメトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、又は3−メチルジメトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンなどのアミノ−ジアルコキシシラン類などを挙げることができる。
【0068】
これらの中でも、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、又は、3−アミノプロピルメチルジエトキシシランなどが好ましい。
【0069】
エチレン−不飽和カルボン酸共重合体組成物にジアルコキシシランを用いた場合には、シート成形時の加工安定性を維持することができるので、より好ましい。
【0070】
アミノ基を有するアルコキシシランは、接着性改良効果及びシート成形時の加工安定性の観点から、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体100質量部に対し、3質量部以下(0〜3質量部)、好ましくは0.03〜3質量部、とくに0.05〜1.5質量部の割合で配合される。
【0071】
また、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体組成物には、太陽光線中の紫外線に基づく封止材の劣化を防ぐために、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの耐候安定剤の少なくとも一種を配合するのが効果的である。酸化防止剤として、例えば、各種ヒンダードフェノール系やホスファイト系のものを好適に使用することができる。また、光安定剤としては、ヒンダードアミン系のものを好適に使用することができる。
【0072】
紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第3ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−第3オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系、フェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレートなどのサリチル酸エステル系のものなどが使用できる。これら、耐候安定剤は、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体100質量部に対し、5質量部以下、特に、0.1〜3質量部の割合で配合するのが効果的である。
【0073】
更に、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体組成物には、その使用目的を損なわない範囲において、任意の他の添加剤を配合することができる。そのような他の添加剤としては、公知の各種添加剤を使用することができる。他の添加剤の例としては、顔料、染料、滑剤、ブロッキング防止剤、無機充填剤、ハロゲンキャッチャーなどを例示することができる。
【0074】
本発明において、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体組成物を太陽電池セル封止材として用いる場合は、例えば、変色防止剤として、カドミウム、バリウム等の金属の脂肪酸塩を配合することができる。また、下部の裏面保護材側の封止材として用いる場合においては、透明性は要求されないので、着色や発電効率の向上などの目的で、顔料、染料、無機充填剤などを配合することができる。例えば、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの白色顔料、ウルトラマリンなどの青色顔料、カーボンブラックのような黒色顔料などのほか、ガラスビーズや光拡散剤などを例示することができる。とくに酸化チタンのような無機顔料を配合する系に適用すると、絶縁抵抗低下の防止効果が優れているので好ましい。無機顔料の好適な配合量は、不飽和カルボン酸共重合体100質量部に対し、100質量部以下、好ましくは0.5〜50質量部、特に好ましくは4〜50質量部である。
【0075】
(シート又はフィルムの製造)
これらの樹脂に、必要に応じて添加剤を添加し、シート又はフィルムを製造する方法は特に制限はなく、公知の方法が用いられるが、一般的なT−ダイ押出機、カレンダー成形機によりシート状樹脂成形物を製造する方法が好適に用いられる。押出し時の樹脂または重合体の温度は、ポリビニルアセタール樹脂については150〜250℃が好ましく、180〜230℃がより好ましい。そして、不飽和カルボン酸共重合体については、100〜250℃が好ましい。樹脂または重合体の温度が高くなりすぎると樹脂または重合体が分解を起こし、揮発性物質が揮発することがある。逆に温度が低すぎると、未溶融物や混合不良による組成の不均一が発生する。若干ならが発生する揮発性物質を効率的に除去するためには、押出機のベント口から減圧により、揮発性物質を除去することが好ましい。
【0076】
上記のシート状樹脂成形物は、後述のように、片側に少なくとも1層以上の構造体がラミネートされて多層構造体となる。ラミネート後に、凹部分の空隙が残ると構造物全体の強度が大幅に低下する。本発明ではこの問題点を、脱気、熱プレスによりその部分に樹脂を流動せしめることが重要な特長である。
【0077】
ラミネートの方法は、脱気後、加熱、プレス行う方法であれば特に制限無いが、シート状樹脂成形物はこの工程中に流動し凹部が流動しある程度均一化し、その両面が構造体に略全面で接触する。両側がフロートガラスなどの平面の構造体で均一にプレスされればシート状樹脂成形物は、ほぼ均一な厚さになり、片側がフィルムなど変形可能なものであったり、太陽電池の配線などの凹凸部が存在する場合はその凹凸や変形に沿って最終厚さパターンが形成され中間の樹脂層あるいは封止層となる。
【0078】
この際、シートの凸部分から凹部分へ、あるいは周辺や間に配される配線等の隙間部分に樹脂が両側から流れ込み、ある面で再接触して再接合し一体化する箇所が発生することがあるが、この部分での再接合(一体化)が不十分であればそこを基点として強度低下が発生する。この問題は、ラミネート条件を調整することで解決しうるが、前述したような極性基を持つ樹脂を使用することで再結合が進みやすくなるため好ましい。ラミネート時の条件は詳しく後述するが真空ラミネーターの場合では、熱板温度としては、100〜200℃が好ましく、130〜180℃がより好ましい。また、ラミネート時の熱板温度が高くなりすぎると、樹脂が分解を起こす傾向にある。また、ラミネート時の最大真空度は50〜100KPaであることが好ましく、60〜98KPaであることがより好ましい。真空度が十分に高くない場合は、ラミネート後の成形物に気泡が残りやすくなる傾向にある。
【0079】
(シート状樹脂成形物)
本発明で使用されるシート状樹脂成形物の曲げ弾性率は、得られる多層構造体が目的の強度を満たすために、凹部を設ける前におけるシート状樹脂成形物の弾性率、或いは、シート状樹脂成形物の凹部と凸部を平準化した際の曲げ弾性率が200MPa以上であることが必要であるが、より好ましくは、250MPa以上である。ここで、曲げ弾性率は、JIS K7171で測定される値である。該曲げ弾性率が200MPa未満であると、多層構造体の曲げ強度が著しく低下する。
【0080】
また、本発明で使用されるシート状樹脂成形物の厚さは、体積平均厚さで150μm以上であるが、より好ましくは、200μm以上である。ここで、体積平均厚さとは、凹部が設けられたシート状樹脂成形物を熱プレス等することで、シートの面積を変えることなく、凸部と凹部が平準化され、均一な厚さとなった場合における厚さをいう。体積平均厚さが150μm未満であると、ラミネート時に空隙部分に流れ込む樹脂が局部的に不足し、未充填部分が発生してしまう。この未充填部分は、外観不良、強度低下、太陽電池の出力低下の原因となるため避けなければならない。
【0081】
上記のような高弾性率で厚いシートは、曲げにくく、あるいは曲げても破断したり、再度巻き出した際に巻きグセが残ってしまうため、一枚ごとに切断し枚様で取り扱うか、大きな口径のロールで巻き取る必要があった。この結果、輸送、保管、ハンドリング性が悪くなり効率が著しく低下する。本発明は、このような問題を解決し、破断することなく小口径で巻き取れ、かつ、巻き出した際に巻きグセが残らない、あるいは問題ないレベルであるシート状樹脂成形物を得るために、該シート状樹脂成形物に、曲げを容易にする為の凹部を持たせる技術に関する。
【0082】
本発明に用いられるシート状樹脂成形物は、横手方向に連続した凹部が0.5〜10cm毎の間隔(D)で設けられ、該凹部の最深部分における成形物の厚さ(d)が、体積平均厚さの1/3以下で、且つ、300μm以下であることが重要である。凹部と凹部の間隔(D)は、0.5〜10cmが好ましく、1〜8cmがより好ましい。凹部と凹部の間隔(連続する凹部の繰り返しの幅(繰り返し単位))が0.5cmより小さくなると、ロールが破断し易い、ミゾの成形が困難になるなどの問題が生じ、10cmを超えると、シート状樹脂成形物を小径で巻き取りにくく、特に複数回巻き重ねて行くと空隙が大きくなり空間利用効率が低下する。なお、繰り返し単位は同じ間隔である必要なく徐々に間隔を狭く(ロール状物の内側になるほど間隔を狭く)することも可能である。繰り返し単位は細かいほど、小さくあるいは、巻き重ねた際の空間を小さくできるため効率的である。このことは、巻き取り時にロールが破断せず、ラミネート時の流動性、スペース充填性に支障の無い限り、各凹部の断面積が小さく、かつ繰り返し間隔が小さい程好ましい事を示唆している。
【0083】
本発明で使用されるシート状樹脂成形物に設けた、凹部の最深部分(厚さが最薄部分)における成形物の厚さ(d)は、体積平均厚さの1/3以下であるが、1/4以下であることがより好ましい。凹部の最深部分における成形物の厚さ(d)は、300μm以下であるが、200μm以下であることが好ましい。凹部の最深部分における成形物の厚さ(d)が体積平均厚さの1/3または300μmのいずれか一方を超えると、曲げるための力が強くなり過ぎる、曲げた際破断する、再度巻き出した際に巻きグセが残るなどの問題が生じる。
【0084】
本発明のシート状樹脂成形物の形状としては、例えば、図2〜20で表される形状が挙げられるが、特にこれらに限定されない。ここで、横手方向とは、シート状樹脂成形物と同一平面上で巻き取り方向とは垂直な方向を意味する。図2は、本発明で使用されるシート状樹脂成形物の上面図であり、シート状樹脂成形物の一方の面に溝状の凹部が設けられた場合を表す図である。図3は、図2のシート状樹脂成形物の横手方向に垂直な面による断面図のうち、凹部付近の一部を表す図である(図2におけるA−A断面図の一部である)。シート状樹脂成形物11は、一方向が他方向より長い略長方形の形状をしたシート状の成形物である。シート状樹脂成形物11の長手方向が、巻取方向となる。また、シート状樹脂成形物11の一方の面上に、この巻取方向とは垂直な横手方向に直線状に連続した溝状の凹部13が設けられている。凹部13は凸部12からは窪んでいる。凹部13は、長手方向に沿って、シート状樹脂成形物11の一方から他方に至るまで、所定の間隔毎に複数、並んでいる。凹部13は2つの傾斜する平面により形成されており、2つの傾斜する平面の交差する箇所が、シート状樹脂成形物11の最深部分となる。図3に示すように、最深部分の厚さ(d)は、凹部13が設けられた面(表面)とは逆側の裏面から最深部分までの厚さ方向における最短の距離である。このように、シート状樹脂成形物11の一方の面に溝状の凹部13を設けることは、溝を成形しやすい、シートを小さな力で曲げやすい等の点で好ましい。
【0085】
なお、本発明では、最も近い隣り合う凹部13と凹部13の間隔(溝間距離D)が0.5〜10cmであることが必要であるが、ここで、隣り合う凹部13と凹部13の間隔とは、例えば、凸部12の巻取方向における幅をいうのではなく、巻取方向からみて凹部13aの最も手前側(図2では下側)の点と、凹部13aと隣り合う凹部13bの最も手前の側(図2では下側)の点との距離をいう(以下、図4〜11、図18〜20にて同じ)。
【0086】
図4は、本発明で使用されるシート状樹脂成形物の上面図であり、シート状樹脂成形物に溝状の凹部が設けられた場合であって、溝が曲面により形成されている場合を表す図である。図5は、図4のシート状樹脂成形物の横手方向に垂直な面による断面図のうち、凹部付近の一部を表す図である(図4におけるA−A断面図の一部である)。凹部13が曲面により形成されていることは、曲げたときの応力集中が少なくシートが破断しにくい点で好ましい。
【0087】
図6は、本発明で使用されるシート状樹脂成形物の上面図であり、シート状樹脂成形物に溝状の凹部が設けられた場合で、凹部が直線状でなくジグザグ状に形成されている場合を表す図である。図7は、図6のシート状樹脂成形物の横手方向に垂直な面による断面図のうち、凹部付近の一部を表す図である(図6におけるA−A断面図の一部である)。凹部13はジグザグ状に、一定の距離ごとに方向を変えながら、シート状樹脂成形物11を横断している。各凹部13は、ジグザグ状の形状を取ってはいるが、相互に平行に形成されている。このように、凹部13がジグザグ状に形成されていることは、ラミネート時にフィルムが移動しにくい点で好ましい。なお、図6では、角度の異なる直線状の溝が複数連なることで、1つのジグザグ状の凹部13を形成しているが、凹部13は、例えば、緩やかに方向を変えながら(蛇行しながら)、シート状樹脂成形物11を横断するような構成とすることもできる。
【0088】
図8は、本発明で使用されるシート状樹脂成形物の上面図であり、シート状樹脂成形物に溝状の凹部が設けられた場合で、溝状の凹部が両面に交互に形成されている場合を表す図である。図9は、図8のシート状樹脂成形物の横手方向に垂直な面による断面図のうち、凹部付近の一部を表す図である(図8におけるA−A断面図の一部である)。図8から分かるように、シート状樹脂成形物11の一方の面(表面)には、溝間距離(D)ごとに等間隔で凹部13が直線状に形成されており、他方の面(裏面)においても同様に溝間距離(D)ごとに等間隔で凹部13が形成されている。裏面の凹部13が、表面における凹部13と凹部13の中央の位置となるように設けられており、表面と裏面で、巻取方向に沿って交互に凹部13が形成されている。このように両面に凹部13を設けることは、表面、裏面のいずれを内側として巻き芯に巻きつけるかについて自由に選択ができる点、また、溝深さを小さくできシートが破断しにくい点で好ましい。なお、図9では、表面の凹部13と裏面の凹部13の深さや溝の幅が同じであるが、内側となる面の凹部13を外側の面よりも、幅を大きくし、また、より深くするなど、適宜、凹部13の溝の幅や深さを調整することも可能である。
【0089】
図10は、本発明で使用されるシート状樹脂成形物の上面図であり、シート状樹脂成形物に溝状の凹部が設けられた場合で、且つ、溝状の凹部が両面に形成されている場合を表す図である。図11は、図10のシート状樹脂成形物の横手方向に垂直な面による断面図のうち、凹部付近の一部を表す図である(図10におけるA−A断面図の一部である)。図11から分かるように、シート状樹脂成形物11の表面に溝間距離(D)ごとに凹部13が直線状に形成されており、裏面には、表面の裏側の同じ位置に、溝間距離(D)ごとに等間隔で凹部13が形成されている。図11から分かるように、最深部分の厚さ(d)は、凹部13一方の面の最深部分から他方の面の最深部分までの厚さ方向における最短距離である。なお、図11では、表面と裏面の凹部13の深さは同じであるが、一方の凹部13の深さを浅くし、一方の凹部13の深さをより深くすることも可能である。このように両面に凹部13を設けることは、表面、裏面のいずれを内側として巻き芯に巻きつけるかについて自由に選択ができる点で好ましい。また、表面の凹部13の裏側の同じ位置に凹部13を設けることは、一方の溝を浅く出来るため溝成形しやすく、また、容易に曲げられる点で好ましい。
【0090】
図2〜11では、凹部を細長い溝状に形成したが、これらの溝の幅(w)は、100μm以上、かつ溝間距離(D)に対して1/2以下であることが好ましく、200μm以上、かつ溝間距離(D)に対して1/10以下であることがより好ましい。ここで、溝の幅(w)とは、図2〜11に示すように、巻取方向と平行な方向における、凹部13により遮られたシート表面の凸部12間の距離をいう。溝の幅(w)が100μmより小さくなると、凹部13を内側にしてシート状樹脂成形物11を十分に折り曲げることができず、小径のロール状物を得ることができなくなり、溝の幅(w)が溝間距離(D)に対して1/2より大きくなると、シート状樹脂成形物11の力学的強度が低下したり、曲げにくくなる傾向にある。
【0091】
シート状樹脂成形物11に溝を設けた場合、溝の幅(w)と溝の深さの比は、1/1〜1/10であることが好ましく、1/2〜1/8であることがより好ましい。溝の幅(w)と溝の深さの比が、1/10より小さくなると、凹凸部を形成しにくくなり、1/1より大きくなると、曲げ難くなる傾向にある。また、溝の幅(w)と溝間距離(D)の比は、1/2〜1/300であることが好ましく、1/10〜1/100であることがより好ましい。溝の幅(w)と溝間距離(D)の比が、1/2より大きく(分母が2より小さく)なると、破断しやすくなり、1/300より小さく(分母が300より大きく)なると、曲げ難くなる傾向にある。
【0092】
図12は、本発明で使用されるシート状樹脂成形物の上面図であり、シート状樹脂成形物に四角錐台状のエンボス加工を行なうことで、凹部が設けられた場合を表す図である。
図13は、図12のシート状樹脂成形物の横手方向に垂直な面による断面図のうち、凹部付近の一部を表す図である(図12におけるA−A断面図の一部である)。この場合、四角錐台の上面が凸部12であり、四角錐台の上面以外の部分が凹部13となる。このように、四角錐台状のエンボス加工を行なうことは、任意に曲げ易く、脱気し易い点で好ましい。なお、図12のシート状樹脂成形物11の場合、隣り合う凹部13と凹部13の間隔(D)は、四角錐台の底面における一辺の長さに相当する。
【0093】
図14は、本発明で使用されるシート状樹脂成形物の上面図であり、シート状樹脂成形物に円錐台状のエンボス加工を行なうことで、凹部が設けられた場合を表す図である。図15は、図14のシート状樹脂成形物の横手方向に垂直な面による断面図のうち、凹部付近の一部を表す図である(図14におけるA−A断面図の一部である)。この場合、円錐台の上面が凸部12であり、円錐台の底面以外の部分が凹部13となる。このように、円錐台状のエンボス加工を行なうことは、任意に曲げ易く、脱気し易く、ラミネート時に樹脂の均一化がし易い、平滑なシートを製膜し後から凸状部分を付着させる加工も可能である点で好ましい。なお、図14のシート状樹脂成形物11の場合、隣り合う凹部13と凹部13の間隔(D)は、円錐台の底面の直径に相当する。
【0094】
図16は、本発明で使用されるシート状樹脂成形物の上面図であり、シート状樹脂成形物にスリット状の溝が設けられた場合を表す図である。図17は、図16のシート状樹脂成形物の横手方向に垂直な面による断面図のうち、凹部付近の一部を表す図である(図16におけるA−A断面図の一部である)。このスリット状の溝の幅(w)は、10〜100μmであることが好ましく、20〜90μmであることがより好ましい。この場合、スリット状の溝が設けられた面を内側にして巻き取りを行なうことができないため、溝の設けられた面を外側にして巻き取りが行なわれる。このようにスリット状の溝を設ける場合、熱プレスでスリットによる隙間を容易に埋めることができるため好ましい。また、溝の幅(w)と溝間距離(D)の比は、1/2〜1/300であることが好ましく、1/10〜1/100であることがより好ましい。溝の幅(w)と溝間距離(D)の比が、1/2より大きく(分母が2より小さく)なると、破断しやすくなり、1/300より小さく(分母が300より大きく)なると、曲げ難くなる傾向にある。
【0095】
図18は、本発明で使用されるシート状樹脂成形物の上面図であり、シート状樹脂成形物に溝状の凹部が設けられた場合で、凹部におけるシート状樹脂成形物11の厚さ、すなわち凹部の深さが変化する場合を表した図である。図19は、図18のシート状樹脂成形物の横手方向に垂直な面による断面図のうち、凹部付近の一部を表す図である(図18におけるA−A断面図の一部である)。図20は、図18のシート状樹脂成形物の凹部おける、巻取方向に垂直な面による断面図の一部を表す図である(図18におけるB−B断面図の一部である)。本発明では、凹部13の「最深部分における厚さ」が体積平均厚さの1/3以下で、且つ、300μm以下であることが必要であるが、最深部分の厚さが変化する場合における、「最深部分における厚さ」とは、図20に示すように、凹部を形成する2つの傾斜面が交差する最深部分において、最も厚い部分の厚さ(最大厚さ)を言う。なお、凹部13の最深部分において、最も薄い部分の厚さと最大厚さとの比は、1/4〜1/20であることが好ましい。また、シート状樹脂成形物の最深部分は、図20のように、緩やかに、厚く、薄く、厚く、薄くといった状態を繰り返す波形で変化させるだけでなく、シート状樹脂成形物11の横手方向の中央部分を薄くし、端部分に近づくにつれて緩やかに厚くなるといった変化をもたせることもできる。このように、横手方向における位置に応じて、最深部分の厚さを変化させることは、最薄部分に破断が生じた際、幅方向に伝播しシートが破断し難くなる点で好ましい。
【0096】
これらのシート状樹脂成形物11の形状は、目的に支障ない範囲で、同じ凹部13内に2種類以上の形状が複合されていても良く(例えば、横手方向の中央部分が図3のような凹部13の形状で、その最深部分が途中から端部に向かって図17のようなスリットとなるなど)、また、凹部13毎に異なる2種類以上の形状を有する凹部13が用いられていても良い(例えば、図2の凹部13と、図6の凹部13の形状が繰り替えしされるなど)。また、本発明の目的を達成できる限り、凹部13を有している面を巻き取りの内側、外側のいずれとしても良いが、図16、図17のように凹部13がスリットの場合は、巻き取りの外側にスリットを設ける必要がある。
【0097】
凹部を付与する方法は、特に限定されないが、予めシートの凹凸と反対の凹凸を持たせた2本のロール上に溶融状態で押出し、形状を付与する方法、一旦平坦なシートを成形した後、冷却固化する前に同様な凹凸ロール間を通過させ形状を付与する方法、一旦冷却した後、再度過熱し柔軟化させ同様な凹凸ロール間を通過させ形状を付与する方法、同様な凹凸ロールを加熱させてその間を通過させて形状を付与する方法、あるいはこれらを複合する方法、レーザーまたは刃物等で表面を削除するか、凹部、切れ込みを発生させる方法が例示される。更に、予め、上記成形方法で、最終形状の最も薄い厚さでシートを成形し、その上に同様の樹脂を別途、押出して凸部を形成する方法などが挙げられる。
【0098】
図21は、本発明で凹部を付与する際に使用される金属製ロール15の正面図およびA−A断面図の一例である。金属製ロール15に用いられる金属の種類は特に限定されず、一般的に使用されているロールを用いることができる。ここで、金属製ロール15aは凸部を有さない平面が平坦なロールであり、金属製ロール15bは三角形状の凸部を有するロールである。仮に、本発明に用いられる賦形前シートを金属製ロール15aおよび15bの間を巻取方向に向かって通すことで、賦形シートが得られる。得られる賦形シートの溝の幅(w)および溝間距離(D)は2個のロール間距離等によって適宜設定できるが、金属製ロール15bの凸部がシートに完全に賦形され、その後シートが寸法変化しない場合は、図21に示すw(巻取方向における、一つの凸部の端部間のロール表面上の距離)およびD(巻取方向における、隣り合う凸部の同じ側の端部間のロール表面上の距離)がそれぞれ、賦形シートの溝の幅(w)および溝間距離(D)となる。なお、図21に示すDにおいて、隣り合う凸部の同じ側の端部間とは、ある凸部のロールの回転方向側の端部と、これと隣り合う凸部の回転方向側の端部間(又は、ある凸部のロールの回転方向とは逆側の端部と、これと隣り合う凸部の回転方向とは逆側の端部間)をいう。
【0099】
本発明のシート状樹脂成形物は多層構造体においても、各層を平均体積化した多層全体厚さの曲げ弾性率が200MPa以上、より好ましくは250MPa以上である場合、同様な凹部を設けることにより、同様な効果を期待できる。凹部と非凹部の多層厚さ比率は、機能を保持できる範囲であれば特に制限が無いが、その厚さ比率を同じにすることが最終構造での性能を発現しやすくなるため好ましい。
【0100】
(ロール状物)
本発明のシート状樹脂成形物は上述のように特定の凹部を有するため、ロールに巻きつけロール状物とすることができる。図1は、本発明の実施形態にかかるロール状物を表す図である。ロール状物1は、外径(r)を有する円筒状の巻き芯14と、略長方形の形状を有するシート状のシート状樹脂成形物11から構成される。シート状樹脂成形物11は、通常、いずれか一方が長い細長の略長方形状であり、長手方向に沿って、巻き芯14に巻きつけられる。シート状樹脂成形物11は、長方形上の一方の面、あるいは両面に、巻取方向とは垂直な横手方向に連続した凹部が設けられており、その凹部に沿って、折り曲げることが可能である。シート状樹脂成形物11が凹部にて内側(巻き芯14側)に折り曲げられると、凹部が存在する面とは逆の外側の面に屈折点11aが生じる。シート状樹脂成形物11に、凹部が所定の間隔で複数設けられていることにより、巻き芯14への巻きつけが可能となる。
【0101】
ロールの形状は特に限定されないが、操作性の観点から中が空洞となっている円筒状が好ましい。また、ロール、すなわち巻き芯の外径(r)は、特に限定されないが、7〜60cmであることが好ましく、10〜40cmであることがより好ましい。巻き芯の外径(r)が10cm未満の場合は、高い曲げ弾性率を有するシート状樹脂成形物が破断して巻き取れないおそれがあり、また、60cmを超える場合は、得られるロール状物が大きくなるため非効率となり、取り扱い性が煩雑となる傾向がある。巻き芯の外径(r)は、隣り合う凹部間の間隔(D)の5倍以上であることが好ましい。巻き芯の外径(r)が、隣り合う凹部間の間隔(D)の5倍未満となると、高い曲げ弾性率を有するシート状樹脂成形物が破断して巻き取れないおそれがある。
【0102】
また、ポリビニルアセタール樹脂で可塑剤を含む場合は、ロール状にして保管した場合、通常温度で表面どうしがブロッキングして巻き出せなくなる問題があり、5℃などの低温度で保管する必要があったが、本発明のロール状物はこの問題が無く、より高い温度で保管可能な事もエネルギー効率の点から好ましい。
【0103】
(多層構造体)
本発明のシート状樹脂成形物は、片側に少なくとも1層以上の構造体が配置されて多層構造体となるが、特に両側を無機ガラスまたは有機ガラスとする場合が強度面、透明性の面から好ましく、これらは建築用合わせガラス、自動車用フロントガラスなどの安全ガラスおよび、太陽電池モジュールとして使用される。ここで、両側に配置されるガラスの種類は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0104】
本発明に使用されるガラスは、特に制限はないが、フロートガラス、強化ガラス、網入りガラス、ポリカーボネートやアクリル樹脂など有機ガラスなどが使用できる。また、太陽電池モジュールの場合は、耐候性プラスチックフィルムを片側に用いることも可能である。ガラスの厚さは特に制限はないが、1〜10mmが好ましく、2〜6mmがより好ましい。本発明の建築用合わせガラス、自動車用フロントガラス、太陽電池モジュールは、公知の方法により製造され、その充填材として本発明のシート状樹脂成形物(又はフィルム)が使用される。
【0105】
2枚のガラスの間には、装飾性、機能性物質を配する事も可能である。配するものは特に限定されないが、装飾の為の金網や金属箔、光散乱材のための金属あるいは金属化合物、熱線吸収のための透明金属化合物、微粉末、他の有機、無機装飾物、印刷したプラスチックフィルム、熱センサー、光センサー、圧力センサー、薄膜静電容量センサー、液晶表示フィルム、エレクトロルミネッセンス機能膜、発光ダイオード、カメラ、ICタグ、アンテナ等、および、それらを接続するための電極や配線等が挙げられる。
【0106】
本発明で使用される太陽電池セルのタイプとしては、特に限定されないが、結晶型セルと薄膜型セル等が挙げられ、結晶型セルとしては、単結晶シリコン、多結晶シリコン等が、薄膜型セルとしては、アモルファスシリコン及びそれと多結晶薄膜等との積層物等の薄膜シリコンタイプ、CIS、CIGS、CdTe、GaAsなどを使用した化合物半導体タイプ、その他、有機太陽電池タイプなどが挙げられる。
【0107】
結晶型セルの場合、本発明のシート状樹脂成形物が、ガラスなどの表面透明基板と結晶型セルの間、及び/又は、結晶型セルと裏面ガラス若しくはバックシートとの間に挿入され、ラミネートされることで、本発明の多層構造体である太陽電池モジュールを得ることができる。また、薄膜タイプのいわゆるスーパーストレートタイプの場合、太陽電池セルが装着された表面透明基板と裏面ガラス又はバックシートとの間に、本発明のシート状樹脂成形物が挿入される。サブストレートタイプの場合は、表面透明基板と、太陽電池セルが装着された基板との間に、本発明のシート状樹脂成形物が挿入される。さらに、これらの積層体に対して、更に透明基板やバックシート、その他の補強基板等との積層用の接着層として本発明のシート状樹脂成形物を使用することもできる。
【0108】
本発明の多層構造体である太陽電池モジュールは、上記充填材の全て又は一部に本発明のシート状樹脂成形物を使用する以外は、太陽電池モジュールの構造として公知の構造をとることができる。
【0109】
本発明の多層構造体である合わせガラスは、無機ガラス又は有機ガラスからなる2枚以上のガラスの間に本発明のシート状樹脂成形物を挿入し、溶融積層したものである。ここで、用いる2枚以上のガラスは同じであってもよく、異なっていてもよい。また、該合わせガラスの内部に、本発明のポリビニルアセタールフィルムと接する位置に機能性ユニットを備えたものにおいて、本発明のポリビニルアセタールフィルムの使用は特に有用である。
【0110】
本発明に使用されるバックシートは、特に限定されないが、耐候性に優れ、透湿度の低いものが好ましく使用され、ポリエステル系フィルム,フッ素系樹脂フィルム、及びそれらの積層物、及びそれらに無機化合物が積層されたものなどが使用できる。
【0111】
本発明に使用されるバックシートは、本発明のシート状樹脂成形物とのラミネート体において、例えば、180℃剥離試験での剥離強度が5N/cm以上であることが好ましく、7N/cm以上がより好ましく、10N/cm以上が更に好ましい。
【0112】
その他、本発明の多層構造体である建築用合わせガラス、自動車用フロントガラス、太陽電池モジュールには、公知のフレームやシーリング剤、ジャンクションボックス、取り付け治具及び架台、反射防止膜、太陽熱を利用した各種設備、雨樋構造などと組み合わせることが可能である。
【0113】
本発明の多層構造体である建築用合わせガラス、自動車用フロントガラス、太陽電池モジュールを得るためのラミネート方法は、公知の方法を取ることが可能であり、例えば、真空ラミネーター装置を用いる方法、真空バッグを用いる方法、真空リングを用いる方法、ニップロールを用いる方法等が挙げられる。また、仮圧着後に、オートクレーブ工程に投入する方法も付加的に行なうことができる。
【0114】
真空ラミネーター装置を用いる場合、例えば、太陽電池の製造に用いられる公知の装置を使用し、1〜100KPaの減圧下(数段のステップ方式の場合は最大真空度が50〜100KPaであることが好ましく、60〜98KPaがより好ましい)、100〜200℃、特に130〜180℃の温度でラミネートされる。真空バッグ又は真空リングを用いる方法は、例えば、EP1235683B1に記載されており、例えば、約20KPaの圧力下、130〜165℃でラミネートされる。
【0115】
ニップロールを用いる場合、例えば、ポリビニルアセタール樹脂の流動開始温度以下の温度で1回目の仮圧着した後、さらに流動開始温度に近い条件で仮圧着する方法が挙げられる。具体的には、例えば、赤外線ヒーターなどで30〜90℃に加熱した後、ロールで脱気し、さらに50〜140℃に加熱した後ロールで圧着して接着又は仮接着させる方法が挙げられる。
【0116】
仮圧着後に付加的に行なわれるオートクレーブ工程は、モジュールや合わせガラスの厚さや構成にもよるが、例えば、約1〜1.5MPaの圧力下、130〜145℃の温度で約2時間実施される。
【0117】
本発明の多層構造体である建築用合わせガラス、自動車用フロントガラスは、窓、フロントガラス、壁、屋根、サンルーム、防音壁、ショーウィンドー、バルコニー、手すり壁等の部材として、または会議室などの仕切りガラス部材等として使用でき、家電製品として使用することもできる。
【実施例】
【0118】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。なお、以降の実施例において、「%」および「部」は、特に記載がない限り、それぞれ「質量%」および「質量部」を意味する。揮発分は、シート状樹脂成形物100gを140℃で30分加熱し、式(1)により求めた。
【0119】
【数1】

【0120】
ポリビニルアセタール樹脂におけるビニルエステル単位の含有率はJIS K6728(1977年)の規定に基づき測定した。ポリビニルアセタール樹脂におけるビニルアルコール単位の含有率はJIS K6728(1977年)の規定に基づき測定した。
【0121】
(実施例1)
攪拌機を取り付けた2m反応器に、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記することがある)(PVA−1:重合度1700、けん化度99モル%)7.5%の水溶液1700kgと、ブチルアルデヒド74.6kg、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.13kgを仕込み、全体を14℃に冷却した。これに、濃度20質量%の塩酸160.1Lを添加して、PVAのブチラール化を開始した。塩酸の添加が終了してから10分後、90分かけて65℃まで昇温し、更に120分反応を行った。その後、室温まで冷却して析出した樹脂をろ過し、イオン交換水(樹脂に対して10倍量のイオン交換水で10回)で洗浄した。その後、0.3質量%水酸化ナトリウム溶液を用いて充分に中和を行い、さらに、樹脂に対して10倍量のイオン交換水で10回洗浄し、脱水したのち、乾燥させ、ポリビニルブチラール(以下、PVBと略記することがある)樹脂(PVB−1)を得た。得られたPVB樹脂は、酢酸ビニル(ビニルエステル)単位0.9モル%、ビニルアルコール単位28.5モル%であった。また、PVB樹脂の平均アセタール化度は70.6モル%であった。
【0122】
ここで得られたPVB樹脂(PVB−1)を、L/D44、スクリュー径30mm、ツーチップのニーディングディスクを先端より20〜30cmの位置に配した同方向二軸押出機を用いて、押出機のベント口1つを真空ポンプに接続し、減圧により揮発分を除去しながら、吐出量8kg/hr、回転数250rpmで混練押出を行い、樹脂温度が240±5℃になるように調整して、ペレットを製造し、更に40mm径のフルフライト1軸押出機、55cm幅のコートハンガーダイで製膜して厚さ410μm、幅約50cmのフィルムを得両端を約3cmトリムカットし幅44cmで、長さ3mのフラットなPVBシート(SE−1)を製造した。SE−1の揮発分は0.4%、曲げ弾性率は800MPaであった。
【0123】
このシートを、再度140℃で50分加熱後、図21に示すような横手方向に高さ303μm、底辺長300μmの三角形断面の凸部を直線的に連続して持ち、周期が2cmの凸部をもつ直径40cmの金属製ロールとその反対に、フラットな表面を持つ同直径の金属製ロールを、両ロール間の隙間を最大部分(凸部がない表面がその反対側のロールに正対した際のロール間の最短距離)403μmにし、60℃に保ちながら、ロール表面の線速度が1m/分になるように、上記のシートを挿入し、凹凸を賦形した。なお、上記対の金属製ロールを金属製ロール−1とした。
【0124】
これにより体積平均厚さ400μm、最厚部分403μm、凹部の最深部分(d:シートの最薄部分)100μm、凹部の間隔(D)2cm、凹部の幅(w)400μm、平均幅44.2cmおよび長さ約3mの賦形シート状樹脂成形物(PS−1)を得た。
【0125】
このシートPS−1は、幅方向に5kg以下の力を加えることで曲げることが可能で、外径(r)が6インチである円筒状の巻き芯に、破断無く巻きつけることが可能であった。その巻き取ったシートを防湿包装し20℃で20日保管後、巻き出したところ、シートの巻きグセは強くなく3kg/mの重量物を乗せることで、フラットなガラス面にほぼ沿わせることが出来た。
【0126】
上記のシートPS−1を20×20cmに切り出し、旭ガラス株式会社製フロート板ガラス3.2mm×20cm×20cmのガラス2枚に挟み、ガラス/PS−1/ガラスの様に重ね、バキュームラミネーターを用いて熱板温度145℃、最大真空度90KPa、ラミネート時間30分で、合わせガラスを作製した。合わせガラスには気泡は見られなかった。また同様に30mm×70mmの合わせガラスを作成し、25℃にてJIS K7244−4(1999年制定)により測定した破断荷重は1.15kNであった。
【0127】
(実施例2)
実施例1のシートPS−1を2枚用い、その間に、厚さ200μmの結晶シリコンセルに電流を取り出す為、はんだコートした銅線(厚さ0.3mm×幅5mm)をはんだ付けした物を間に配して、ガラス/PS−1/結晶セル/PS−1/ガラスになるように重ね、他は同様にして結晶シリコン型太陽電池モジュールを作製した。得られたモジュールに気泡は無く、変色、腐食も見られなかった。このモジュールを標準光にて初期の発電量を測定した後、80℃、85%RHの恒温チャンバー内に1000時間保持した。保持後の外観に変化は見られず、発電量の低下は5%であった。
【0128】
(実施例3)
実施例1で得た、賦形前シートSE−1を、超硬刃を持つナイフを治具で固定し、シートの横手方向に深さ280μmの直線的な切れ込みを10mm間隔で入れることで、体積平均厚さ408μm、最厚部分410μm、最薄部分(d)120μm、最薄部分の間隔(D)10mm、凹部の幅(w)100μm、平均幅44cmおよび長さ約3mの賦形シート状樹脂成形物(PS−3)とした。
【0129】
次にPS−3を、切れ込みを入れた面が外側になるように、外径(r)が6インチである円筒状の巻き芯に巻きつけたところ、幅方向に5kg以下を加えることで曲げることが可能で、該巻き芯に、破断無く巻きつけることが可能であった。その巻き取ったロールを防湿包装し20℃で20日保管後、巻きだしたところ、シートの巻きグセは弱く3kg/mの重量物を乗せることで、フラットなガラス面にほぼ沿わせることが出来た。
【0130】
次に、PS−3を用いて実施例1と同様にして、合わせガラスを作製した。合わせガラスには気泡は見られなかった。また実施例1と同様に別途合わせガラスを作り破断荷重を測定したところ1.22kNであった。
【0131】
(実施例4)
実施例1で使用したPVB樹脂(PVB−1)100質量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキサノエート)4.5質量部を混合した以外は実施例1と同様にして、厚さ412μm、幅44cm、長さ3mのフラットなPVBシート(SE−4)を得た。SE−4の揮発分は0.4%、曲げ弾性率は400MPaであった。このシートに実施例1と同様に凹凸を賦形し、体積平均厚さ400μm、最厚部分403μm、最薄部分(d)100μm、凹部の間隔(D)2cm、凹部の幅(w)400μm、平均幅44.3cmおよび長さ約3mの賦形シート状樹脂成形物(PS−4)を得た。
【0132】
このシートPS−4は、幅方向に5kg以下を加えることで曲げることが可能で、外径(r)が6インチである円筒状の巻き芯に、破断無く、巻きつけることが可能であった。その巻き取ったシートを防湿包装し20℃で20日保管後、巻き出したところ、シートの巻きグセは強くなく、3kg/mの重量物を乗せることで、フラットなガラス面にほぼ沿わせることが出来た。
【0133】
上記のシートPS−4を実施例1と同様にして合わせガラスを作製した。合わせガラスには気泡は見られなかった。また実施例1と同様に測定した破断荷重は1.02kNであった。
【0134】
さらにこのシートPS−4を実施例2と同様にして結晶シリコン型太陽電池モジュールを作製した。モジュールには気泡は無く、変色、腐食も見られなかった。このモジュールを標準光にて初期の発電量を測定した後、80℃、85%RHの恒温チャンバー内に1000時間保持した。保持後の外観に変化は見られず、発電量の低下は5%であった。
【0135】
(実施例5)
実施例1のPVB樹脂に替えて、メタクリル酸2.4質量%、アクリル酸エステル20.0質量%およびエチレン77.6質量%であり、かつ亜鉛での中和度70モル%、MFR1.3g/10分(190℃、2.16kg)である不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーを使用した以外は実施例1と同様にして、厚さ408μm、幅44cm、長さ3mのフラットなシート状樹脂成形物(SE−5)を得た。SE−5の揮発分は0.1%以下で、曲げ弾性率は350MPaであった。このシートに実施例1と同様に凹凸を賦形し、体積平均厚さ400μm、最厚部分403μm、最薄部分(d)100μm、凹部の間隔(D)2cm、凹部の幅(w)400μm、平均幅44.1cmおよび長さ約3mの賦形シート状樹脂成形物(PS−5)を得た。
【0136】
次にPS−5を外径(r)が6インチである円筒状の巻き芯に巻きつけたところ幅方向に5kg以下を加えることで曲げることが可能で、該巻き芯に、破断無く巻きつけることが可能であった。その巻き取ったシートを防湿包装し20℃で20日保管後、巻きだしたところ、シートの巻きグセは強くなく、3kg/mの重量物を乗せることで、フラットなガラス面にほぼ沿わせることが出来た。
【0137】
次にPS−5を用いて実施例1と同様にして、合わせガラスを作製した。合わせガラスには気泡は見られなかった。また実施例1と同様に測定した破断荷重は1.06kNであった。
【0138】
(比較例1)
実施例1で得た、賦形前シート(SE−1)を外径(r)が6インチである円筒状の巻き芯に巻きつけようとしたところ、15Kg以上の力が必要であり、シートが破断し、巻き取れなかった。
【0139】
(比較例2)
実施例1の凸部ロールに替え、高さ100μm、底辺の幅130μmの断面形状の凸部が2cm間隔である金属製ロール−2を用いて最大間隙403μmで凹凸を賦形した以外は実施例1と同様にして、体積平均厚さ402μm、最厚部分403μm、最薄部分(d)303μm、凹部の間隔(D)2cm、凹部の幅(w)130μm、平均幅44.5cmおよび長さ約3mの賦形シート状樹脂成形物PS−2’を得た。これを外径(r)が6インチである円筒状の巻き芯に巻きつけようとしたところ、15kg以上の力が必要であり、シートが破断し、巻き取れなかった。
【0140】
(比較例3)
実施例1で用いたPVB樹脂(PVB−1)100質量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキサノエート)30質量部を混合した以外は実施例1と同様にして、厚さ416μm、幅44cm、長さ3mのフラットなPVBシート(SE−3’)を得た。SE−3’の揮発分は0.4%、曲げ弾性率は20MPaであった。このフラットなSE−3’シートを用いて、実施例1と同様に合わせガラスを作製しその破断荷重を測定したところ、0.29kNであった。
【0141】
実施例1〜5および比較例1〜3における、シート状樹脂組成物、ロール状物および多層構造体について表1にまとめた。
【0142】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0143】
また、本発明は、高い曲げ弾性率で150μm以上のシートの、表面の一部を薄くする事により、その部分を曲げ易くすることにより、ハンドリング効率を大幅に向上させたシート状樹脂成形物を提供するものである。本発明のシート状樹脂成形物を建築用合わせガラス中間膜用シート状樹脂成形物、自動車フロントガラス中間膜用シート状樹脂成形物、又は太陽電池モジュール封止材用シート状樹脂成形物として使用することにより、高強度を持った多層構造体を効率よく製造することができる。
【符号の説明】
【0144】
1 ロール状物
11 シート状樹脂成形物
12 凸部
13 凹部
14 巻き芯
15 金属製ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ弾性率が200MPa以上および体積平均厚さが150μm以上であり、横手方向に連続した凹部が0.5〜10cmの間隔(D)毎に設けられ、該凹部の最深部分における厚さ(d)が体積平均厚さの1/3以下で、且つ、300μm以下であるシート状樹脂成形物。
【請求項2】
シート状樹脂成形物を構成する樹脂が、ビニルアルコール単位10〜50モル%を含有するポリビニルアセタール樹脂である、請求項1に記載のシート状樹脂成形物。
【請求項3】
可塑剤の含有量が、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対し15質量部以下である、請求項2に記載のシート状樹脂成形物。
【請求項4】
シート状樹脂成形物を構成する樹脂が、不飽和カルボン酸モノマー単位1〜40質量%を含み、さらに、不飽和カルボン酸モノマー単位の少なくとも一部がカルボキシルイオンの対イオンとして金属原子を有する、請求項1に記載のシート状樹脂成形物。
【請求項5】
前記樹脂が、さらにエチレンモノマー単位を含む、請求項4に記載のシート状樹脂成形物。
【請求項6】
凹部が溝状である請求項1〜5のいずれかに記載のシート状樹脂成形物。
【請求項7】
前記凹部における溝の幅(w)が10μm以上であり、且つ前記凹部の間隔(D)に対して1/2以下である、請求項6に記載のシート状樹脂成形物。
【請求項8】
前記凹部における溝の幅(w)と凹部の間隔(D)の比w/Dが1/2〜1/300である、請求項7に記載のシート状樹脂成形物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のシート状樹脂成形物を巻き芯に巻きつけて得られるロール状物。
【請求項10】
巻き芯の外径(r)が、前記凹部の間隔(D)の5倍以上である、請求項9に記載のロール状物。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載のシート状樹脂成形物に対して脱気および熱プレスを行なうことにより、シート状樹脂成形物の凹部とその他の凸部を平準化すると共に、シート状樹脂成形物の両面の略全体にわたって構造体を沿わせることで、構造体をラミネートして得られる多層構造体。
【請求項12】
前記構造体が、ガラスである請求項11に記載の多層構造体。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれかに記載のシート状樹脂成形物に対して脱気および熱プレスを行なうことにより、シート状樹脂成形物の凹部とその他の凸部を平準化すると共に、シート状樹脂成形物の両面の略全体にわたって構造体を沿わせることで、構造体をラミネートして得られる多層構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−92202(P2012−92202A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239871(P2010−239871)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】