説明

シート給送装置及び画像形成装置

【課題】シートを重ね合わせて給送する際、重ね合わせ部分のばらつきを低減させることのできるシート給送装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】吸着搬送ベルト21にシート35を吸着させる際、吸引シャッタ37を、負圧を遮断する遮断位置から負圧によりシートを吸着させる吸着位置に切換える。そして、重なりながら搬送されたシートの枚数が所定枚数に達して次のシートを吸着する際、吸引シャッタ37を吸着位置に切り換えるタイミングを、先に吸着された先行シート35aと後続シート35bとが重なるタイミングよりも遅らせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート給送装置及び画像形成装置に関し、特にシートに空気を吹き付けることによりシートを分離給送するようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複写機等の画像形成装置においては、複数のシートを支持するトレイに積載されたシートを1枚ずつ給送するシート給送装置を備えている。このようなシート給送装置としては、トレイに支持されたシート束の端部にエアを吹き付けてシートを複数枚浮上させ、上方に配された吸着給送ベルトにシートを吸着させて1枚ずつ給送するエア給紙方式のものがある(特許文献1参照)。
【0003】
このエア給紙方式のシート給送装置は、トレイ上のシート束の先端側端部にエアを吹き付けてシートを浮上させることによりシートを捌き、浮上したシートの最上位のシートを負圧により吸着搬送ベルトに吸着させる。さらに、シートが吸着された吸着搬送ベルトを回転させることにより、シートが1枚ずつに分離されて下流側に送られる。このようにして、シートが1枚ずつ分離されて画像形成部に向けられて送られる。このエア給紙方式のシート給送装置は、一般的な摩擦分離方式のシート給送装置よりも耐久性が良い。そのため、このエア給紙方式のシート給送装置は、POD(Print On Demand)という、電子写真方式の画像形成装置を用いて簡易製本(冊子やカタログ等の軽印刷)を行う分野で利用されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−272019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、画像形成装置において生産性(単位時間当たりの画像形成枚数)を高めることがユーザから望まれてきている。特に、前述したPODの分野では、大量の軽印刷を行う必要があるため、生産性の向上が図られたシート給送装置が望まれている。一般的に生産性を高めるためには、シート給送装置の単位時間当たりのシートの給送枚数を増加する必要がある。このため、従来のエア給紙方式のシート給送装置においては、シートを一枚ずつ分離した後、分離したシートに次のシートの一部を重ね合わせて搬送するようにしたものがある。
【0006】
しかし、このようなシート給送装置において、給送枚数を増加させるためには、シートを重ね合わせて搬送するだけでなく、送り出されるシートの給送速度を速くしなければならない。そして、シートの送り出しを速くするためには、シートの浮上を速くし、且つ、吸着搬送ベルトの搬送速度を速くする必要がある。
【0007】
ここで、シートの浮上を速くするためには、吹き付けるエアの風速(風量)を速く(多く)する必要があるが、風速(風量)を速く(多く)すると薄い(坪量が小さい)シートでは、シートが一度に浮上してしまい確実に捌くことができなくなる。これにより複数のシートが吸着搬送ベルトに吸着されてしまい、シートが重送してしまうという問題が生じる。
【0008】
また、吸着搬送ベルトの搬送速度を速くし過ぎると、厚い(坪量の大きい)シートでは、慣性力によりベルトに確実に吸着されない状態で送られる場合がある。つまり、シートが順次給送されて最上位のシートの位置が低くなったとき、最上位のシートの位置が、確実に吸着が行われる高さに上昇するまでにシートの吸着が開始される場合がある。この場合には、シートの給送遅れが生じ、ジャムとなってしまうおそれがある。このように、シートの坪量によっては、シートを重ね合わせて給送する際、重ね合わせ部分にばらつきが生じ、シートの重送やジャム等が発生するおそれがある。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、シートを重ね合わせて給送する際、重ね合わせ部分のばらつきを低減させることのできるシート給送装置及び画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、シートを支持する昇降可能なトレイと、前記トレイに支持されたシートの側端にエアを吹き付けてシートを浮上させるエア吹き付け部と、浮上させたシートを吸着して搬送する吸着搬送機構とを備え、エアの吹き付けで浮上したシートを前記吸着搬送機構により吸着して給送するシート給送装置において、前記吸着搬送機構は、エアの吹き付けで浮上したシートを吸着して搬送する吸着搬送部と、前記吸着搬送部にシートを吸着させるための負圧を発生する負圧発生部と、前記負圧発生部によって発生した負圧によりシートを吸着させる吸着位置及び負圧を遮断する遮断位置に切換可能な吸着切換部と、前記吸着搬送部に先に吸着された先行シートに後続シートが一部重なりながら搬送されるように前記吸着切換部を前記遮断位置から前記吸着位置に切り換える制御部と、を備え、前記制御部は、重なりながら搬送されたシートの枚数が所定枚数に達して次のシートを吸着する際、前記吸着切換部を前記吸着位置に切り換えるタイミングを、先行シートに後続シートが重なる第1タイミングよりも遅い第2タイミングに変更し、次のシートの吸着の後、前記第1タイミングに戻すことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のように、重なりながら搬送されたシートの枚数が所定枚数に達して次のシートを吸着する際、吸着切換部を吸着位置に切り換えるタイミングを遅らせることにより、シートを重ね合わせて給送する際、重ね合わせ部分のばらつきを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るシート給送装置を備えた画像形成装置の概略構成図。
【図2】上記画像形成装置のシート給送ユニットに設けられた下シート給送装置の構成を示す図。
【図3】上記シート給送装置に設けられた吸着搬送ユニットのシート吸着搬送動作を説明する図。
【図4】上記シート給送ユニットの制御ブロック図。
【図5】上記シート給送装置のシート重ね合わせ搬送動作を説明する図。
【図6】上記シート給送装置のシートの坪量毎の吸着時間、搬送速度及び吸着までの先行シートの搬送距離を示したテーブル。
【図7】上記シート給送装置のシート重ね合わせ搬送動作の際、シートの給紙毎に最上位シートの位置が下がる様子を説明する図。
【図8】上記シート給送装置のシート重ね合わせ搬送動作の際、シートの給紙毎のシート間の重ね合わせ量が減少する様子を説明する図。
【図9】シートの坪量毎におけるシート束間隔及びシートの坪量毎におけるシート重ね合わせ量を設定するためのテーブル。
【図10】上記シート給送装置による分割型重ね合わせ給紙制御を説明する第1のフローチャート。
【図11】上記割型重ね合わせ給紙制御を説明する第2のフローチャート。
【図12】上記分割型重ね合わせ給紙を説明するタイミングチャート。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係るシート給送装置による分割型重ね合わせ給紙制御を説明する第1のフローチャート。
【図14】上記分割型重ね合わせ給紙制御を説明する第2のフローチャート。
【図15】分割型重ね合わせ給紙の際、引抜センサが検知する信号波形を示す図。
【図16】本発明の第3の実施の形態に係るシート給送装置による分割型重ね合わせ給紙を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係るシート給送装置を備えた画像形成装置の概略構成図である。図1において、300Aは画像形成装置であり、この画像形成装置300Aは、画像形成装置本体(以下、装置本体という)300、シート給送ユニット301、シート処理装置304により構成される。そして、ユーザにより操作部302、あるいは不図示の外部ホストPCにて設定されたシート処理設定と、リーダ部303あるいは外部ホストPCより送られる画像情報に基づき、シートの給紙搬送、画像形成、ステイプル等の処理が実施される。
【0014】
シート給送ユニット301は、上及び下シート給送装置311,312を備えている。このシート給送装置311,312には、シート束を格納するシート収納庫10,11と、シート収納庫10,11に格納されたシートを給送する吸着搬送ユニット51,52が設けられている。ここで、本実施の形態では、吸着搬送ユニット51,52は、エア給紙方式のものであり、シート給送動作の際には、シートを無端ベルトに吸着しながらシートを給送する。
【0015】
ここで、シート給送ユニット301は、装置本体300からのシート要求情報に従い、各シート収納庫10,11のシートを順次給紙搬送し、完了後に装置本体300へ準備完了を通知する。装置本体300は、シート給送ユニット301からの準備完了を受け、受渡し要求を通知する。シート給送ユニット301は、受渡し要求の通知ごとに、順次装置本体300へ1枚ずつシートを分離給送し、要求されたシート数を給送した後に動作を終了し、スタンバイ状態となる。
【0016】
なお、上シート給送装置311の吸着搬送ユニット51により搬送されたシートは、上部搬送部317、合流搬送部319を経て装置本体300に給送される。また、下シート給送装置312の吸着搬送ユニット52により搬送されたシートは下部搬送部318、合流搬送部319を経て装置本体300に給送される。なお、各搬送部317〜319には不図示の搬送用のステッピングモータが設けられており、それらモータを搬送制御部が制御して各部の搬送ローラを回転させることでシートの給送を行っている。
【0017】
なお、シート給送ユニット301の上面には、重送やジャム等による異常シートを強制排出するエスケープトレイ101が備えられている。102はエスケープトレイ101への排出シートの満載を検知するために設けられている満載検知センサである。また、シート給送ユニット301の各搬送経路上には不図示の搬送センサが複数設けられており、この搬送センサにより、各搬送経路をシートが通過するのを検知する。
【0018】
装置本体300は、シート給送ユニット301により給送されたシートに画像を形成するためのものであり、上面にはユーザが動作設定を行うための操作部302が設けられ、上部には原稿画像を読み取るためのリーダ部303が配置されている。また、この装置本体300は、感光体ドラム353、レーザスキャナユニット354、現像部352、中間転写ベルト355等を備えた画像形成部である作像部307と、定着部308と、反転搬送部309等を備えている。
【0019】
そして、装置本体300では、シート給送ユニット301からシートを受けとった後、シートを作像部307に案内する第1の搬送路である搬送パス391に設けられた各搬送部を制御してシート搬送を行う。そして、画像基準センサ305でのシート検知を起点として、作像部307にて受信した画像データに基づく画像形成動作を行う。なお、ジャムセンサ503が異常シートを検知すると、切換部材310を切り換えてシートを作像部307の手前で第2の搬送路であるエスケープパス390に案内した後、排出部であるエスケープトレイ101へ排出する。
【0020】
ここで、画像形成動作の際は、画像基準センサ305がシートを検知すると、レーザスキャナユニット354を構成する不図示の半導体レーザの点灯、光量制御が実施されると共に、不図示のポリゴンミラーを回転制御するスキャナモータが制御される。これにより、画像データに基づいたレーザ光が感光体ドラム353に照射され、感光体ドラム353上に潜像画像が形成される。
【0021】
次に、現像部352において、トナーボトル351からトナーが給送されることにより感光体ドラム353上の潜像画像が現像され、現像されたトナー画像を中間転写ベルト355へ1次転写する。この後、中間転写ベルト355上に転写されたトナー画像をシートに2次転写することにより、シート上にトナー画像が形成される。なお、2次転写位置の直前にレジ制御部306が設けられている。そして、このレジ制御部306により、転写位置直前のシートに対してシートの持つ斜行の補正や、中間転写ベルト355に形成されたトナー画像とシート先端位置を微調整して合せるシート搬送制御を、シートを停止させることなく行っている。
【0022】
次に、2次転写後のシートは定着部308に搬送され、定着部308において熱と圧力とを加えられることによりトナーが溶融し、シート上に定着される。なお、定着後のシートは、裏面に継続して印字(画像形成)する又はシートの表裏を反転させる場合は反転搬送部309へ、印字終了であれば下流のシート処理装置304へ搬送される。そして、シート処理装置304は、装置本体300から排出された画像形成後のシートに対して、操作部302にてユーザにより設定された所望の処理(折り、ステイプル、穴あけ)を実施した後、成果物としてシートを排紙トレイ360へ順次出力する。
【0023】
図2は、シート給送ユニット301に設けられた下シート給送装置312の構成を示す図である。なお、上シート給送装置311も同様の構成である。シート収納庫11は複数のシート35が載置支持される昇降可能なトレイ12、シートのシート給送方向上流側端である後端に当接し、後端位置を規制する後端規制部材である後端規制板13を備えている。またシート収納庫11は、シート35のシート給送方向下流側端である先端を規制する先端規制板11a、シート35のシート給送方向と直交する方向である幅方向の位置を規制する側端規制板14,16、スライドレール15等を備えている。
【0024】
そして、後端規制板13の上部には最上位シート35aの後端部を押さえてシートを分離させる押圧部材であるシート後端押さえ17が上下方向にスライド可能に、かつ回動自在に設けられている。なお、トレイ12の上昇に伴ってシート後端押さえ17が所定位置よりも上方に上昇すると、後述するCPUは不図示の後端紙面検知センサからの信号に基づき最上位シート35aの上面(以下、シート面という)が高いと判断し、トレイ12を下げるように制御する。
【0025】
このシート収納庫11は、スライドレール15によりシート給送ユニット301から引き出し可能となっており、シート収納庫11が引き出されたときにトレイ12が所定の位置まで下降してシートの補充や交換等を行うことができる。さらに、このシート収納庫11の上部にはシートを1枚ずつ分離して給送するためのエア給紙方式のシート給送機構(以下、エア給紙機構という)150が配置されている。このエア給紙機構150は、トレイ12に積載されたシート35を吸着搬送する吸着搬送機構151と、トレイ上のシート束の上部部分を浮上させて捌くと共に、シート35を1枚ずつ分離するためのエア吹き付け部152とを備えている。
【0026】
吸着搬送機構151は、ベルト駆動ローラ41に掛け渡されると共にシート35を吸着して図中右方向に給送する吸着搬送部を構成する吸着搬送ベルト21と、シート35を吸着搬送ベルト21に吸着させるための負圧を発生する吸引ファン36を備えている。また、吸着搬送ベルト21の内側に配置され、吸着搬送ベルト21に形成されている不図示の吸引穴を介してエアを吸引するための吸引ダクト34を備えている。さらに、吸引ダクト34に配置され、吸着搬送ベルト21の吸着動作をON/OFFするための吸引シャッタ37を備えている。
【0027】
また、エア吹き付け部152は、捌きファン420、捌きファン420の排気を捌きエアとしてシート先端部に吹き付けるノズルを持った捌きダクト431とで構成され、図中矢印C方向(略水平方向)に捌きエアを吹き付ける捌き部を備えている。また、エア吹き付け部152は、分離ファン430、分離ファン430の排気を分離エアとしてシート先端部に吹き付けるノズルを持った分離ダクト432で構成され、図中Dの方向に分離エアを吹き付ける分離部を備えている。
【0028】
そして、捌きファン420により吸い込まれたエアは捌きダクト431から矢印C方向に吹き付けられ、トレイ12上に積載されているシート35の上部のうち数枚を浮上させる。また、分離ファン430により吸い込まれたエアは分離ダクト432から矢印D方向に吹き付けられ、捌き部により浮上した最上位のシート35aを他のシートから分離して吸着搬送ベルト21に吸着させる。そして、このように吸着搬送ベルト21に吸着されたシート35aは、吸着搬送ベルト21によって搬送方向下流の引抜ローラ対42へと送られる。
【0029】
次に、このように構成されたシート給送ユニット301(エア給紙機構150)のシート給送動作について説明する。まず、ユーザがシート収納庫11を引き出してシート35をセットし、シート収納庫11を格納すると、図3の(a)に示すようにトレイ12が矢印A方向に上昇し始める。やがて、吸着搬送ベルト21との距離がBとなる給送可能位置に達すると、後述するCPUは、この位置でトレイ12を停止させ、この後、給送を開始するためのシート給送信号に備える。
【0030】
次に、シート給送信号を検知すると、捌きファン420及び分離ファン430が作動し、図3の(b)に示すようにエアを矢印U方向から捌きダクト431及び分離ダクト432に吸い込む。そして、このエアは捌きダクト431及び分離ダクト432のノズルからそれぞれ矢印C及びD方向からシート束に吹き付けられる。これにより、シート束のうちの上位の数枚のシート35cが浮上する。
【0031】
また、CPUは負圧発生部である吸引ファン36を作動させ、図中F方向にエアを吐き出す。この際、吸引ファン36によって発生した負圧によりシートを吸着させる吸着位置及び負圧を遮断する遮断位置に切換可能な吸着切換部である吸引シャッタ37は、まだ閉じられている。このため、最上位シート35aが吸着搬送ベルト21に吸着されることはない。また、この場合、CPUはシート後端押さえ17の位置を検知する不図示の後端紙面検知センサと紙面検知部である紙面検知センサ153とにより最上位シート35aの紙面を検出している。そして、CPUはシート後端押さえ17と吸着搬送ベルト21の垂直方向の距離がVとなるようにトレイ12の位置を制御する。
【0032】
次に、シート給送信号を検知してから所定時間が経過し、上位の数枚のシート35cの浮上が安定したところで、CPUは、後述する吸着ソレノイドを駆動し、吸引シャッタ37を図3の(b)に示す矢印G方向に回転させ、吸着位置に移動させる。これにより、図3の(c)に示すように吸着搬送ベルト21に設けられた吸引穴から矢印H方向へエアが吸引され、吸引力が発生する。そして、この吸着力と分離エアにより最上位シート35aのみが吸着搬送ベルト21に吸着される。
【0033】
続いて、CPUは、後述する給紙モータを駆動し、ベルト駆動ローラ41を図3の(d)に示す矢印J方向に回転させる。これにより、吸着搬送ベルト21に吸着された状態で最上位シート35aが矢印K方向に給送され、この後、図2に示す引抜ローラ対42により図1に示す下部搬送部318、合流搬送部319を経て装置本体300に搬送される。なお、この引抜ローラ対42の下流には引抜ローラ対42により搬送されたシートを検知する検知部である引抜センサ43が設けられており、この引抜センサ43によりCPUはシート35aの通過をモニタする。
【0034】
図4は、本実施の形態に係るシート給送ユニット301の制御ブロック図である。図4において、1はシート給送ユニット301を制御する制御部であるCPUであり、本実施の形態において、このCPU1は装置本体300に設けられている。このCPU1には、モータやファンといったシート給送ユニット301の各種負荷を駆動する駆動回路へ駆動開始指令を出力して各種負荷を駆動する専用のASIC2が接続されている。
【0035】
また、CPU1には、シートのサイズ、坪量、表面性等のシート情報を入力可能なシート情報設定部である操作部(DISP)302が接続されており、内部にはカウンタNが設けられている。また、CPU1には、操作部302で入力された各種データ、ファン調整に用いる目標値やPWM値等を保管する記憶手段(Memory)3が接続されている。
【0036】
そして、CPU1は記憶手段3内に保管したデータを参照し、ユーザが操作部302から入力したシート情報に応じて、吸着搬送ベルト21とシート収納庫11の最上位シート35aとの距離Bを調整する。なお、操作部302の代わりに、シート情報として少なくともシートのサイズ情報、坪量情報、表面性情報の1つを検知する不図示の検知部を設け、この入力部としての検知部からシート情報をCPU1に入力するようにしても良い。
【0037】
ASIC2は、後述するように吸着搬送ベルト21に吸着されるシートに応じて先に吸着された先行シートに後続シートの一部が所定の重なり量で重なりながら搬送されるように後続シートが吸着されるタイミングを制御する。そして、このASIC2には、シート収納庫11(10)の開閉状態を検知するシート収納部開閉センサ48、シート収納庫11(10)内のトレイ12の位置を検知する下位置検知センサ55、上位置検知センサ57が接続されている。また、ASIC2には、トレイ12上に積載されているシート上面を検出する紙面検知センサ18、トレイ12上のシートの有無を検出する紙有無検知センサ56が接続されている。
【0038】
また、ASIC2には、既述した引抜センサ43、吸引ファン36によりシートが吸着された場合の吸引ダクト内の負圧状態をモニタし、シート吸着が完了したことを検出する吸着完了センサ58が接続されている。そして、このASIC2はシート給送ユニット301の各負荷を駆動する駆動回路へ駆動開始指令を出力するだけでなく、捌きファン420、分離ファン430、吸引ファン36の回転数信号(FG)を受け、目標の回転数でファンが回転するようにPWM制御を行う。
【0039】
なお、図4において、22Aは捌きファン420に、ASIC2より出力されたPWM信号を送ると共に電源供給を行う捌きファン駆動回路(driver)である。22Bは分離ファン430に、ASIC2より出力されたPWM信号を送ると共に電源供給を行う捌きファン駆動回路(driver)である。40は吸引ファン36にASIC2より出力されたPWM信号を送ると共に電源供給を行う吸引ファン駆動回路(driver)である。
【0040】
39は吸引ダクト34内の吸引シャッタ37を開閉する吸引ソレノイド38の駆動回路(driver)、46はベルト駆動ローラ41を駆動する給紙モータ44を駆動する駆動回路(driver)である。47は引抜ローラ対42を駆動する引抜モータ45を駆動する駆動回路(driver)である。これらの給紙モータ44、引抜モータ45はパルスモータであり、それぞれの駆動回路39,46,47に対してASIC2より制御パルスが与えられ、そのパルス数によりモータ回転量が制御される。20はトレイ12を昇降させるリフター駆動手段であるリフターモータ19を駆動する駆動回路(driver)である。このリフターモータ19はDCモータであり、ON―OFFにて駆動制御される。
【0041】
なお、本実施の形態において、モータ、ファン、センサといったシート給送装置の各種負荷をCPU1から専用のASIC2を経由し制御したが、CPU1で直接制御してかまわない。また、本実施の形態では、シートのサイズ、坪量、表面性等のシート情報を入力可能な設定部として操作部302を設け、この操作部302で入力された各種データ、ファン調整に用いる目標値やPWM値等を記憶する記憶手段3をCPU1と直接接続している。しかし、シート給送装置を備えた画像形成システム内の別の装置、例えば画像形成装置の持つ操作部302を記憶手段として用いてシート情報の入力及び保管を行っても構わない。
【0042】
ところで、本実施の形態において、制御部であるCPU1はASIC2を介して後続シートを吸着させるタイミングを調整し、先行シートに後続シートを一部重ねながら搬送する重ね合わせ搬送を行うようにしている。この結果、シート給送ユニット301から作像部307までの搬送経路が比較的短い装置においても、給紙搬送速度を低減した状態で高い生産性を確保でき、省エネ、低稼動音にてシート給紙及び搬送を行うことが可能となる。
【0043】
次に、このようなシートの重ね合わせ搬送動作について図5を用いて説明する。既述した吸着搬送ベルト21による吸着搬送動作により、図5の(a)に示すように実線で示す先行シート(最上位シート)35aが所定量搬送され、例えば先端が引抜ローラ対42に達すると、吸引シャッタ37が閉じる。なお、先行シート35aの先端が引抜ローラ対42に達した後、所定距離進んだ後に吸引シャッタ37を閉じるように制御しても構わない。
【0044】
そして、この後、先行シート35aが所定位置に到達した時点で、再び吸引シャッタ37を図5の(b)に示すように矢印G方向に回転させる。これにより、点線で示す最上位シート35aの次のシート(後続シート)35bが吸着搬送ベルト21により吸着され、先行シート35aに、後続シート35bが瓦状態で積み重なって搬送される。このように、本実施の形態においては、先行シート35aを搬送する途中で、一旦、吸引シャッタ37を閉じ、この後、吸引シャッタ37を開放することにより、2枚のシート35a,35bを瓦状態に積み重ねて搬送する。
【0045】
そして、この吸引シャッタ37の閉鎖、開放のタイミングを設定することにより、シート間の重なり量Xを予め決められた値として2枚のシート35a,35bを搬送することができる。つまり、CPU1(ASIC2)により、シート間の重なり量が予め決められた値になるように吸引シャッタ37の駆動タイミングを制御することで最適な重なり量Xを作り出すことが可能となる。この後、先行シート35aと後続シート35bは、図5の(c)に示すように最適な重なり量Xを保持した瓦状態で、吸着搬送ベルト21によってK方向に搬送される。なお、以降、ジョブが終了するまで、図5に示す動作が繰り返される。
【0046】
なお、シートが順次給送されると、最上位のシート35aの高さが次第に低くなり、これに伴いシートを吸着する時間が長くなるので、重なり量Xはシートの搬送中に、次第にずれて(Xの値が小さくなって)いく可能性がある。このため、例えば引抜センサ43にてシートの厚みを検知することにより、シートの重なり量(重なり範囲のシート搬送方向の距離)を検出する。そして、この引抜センサ43の検出結果に基づいて、後続シートを吸着する際の吸引シャッタ37の駆動タイミングを制御するようにしても良い。
【0047】
これにより、最適な重なり量Xを維持した状態での安定したシートの給送が可能となる。なお、操作部302で設定したシート情報(設定情報)に基づいて、吸引シャッタ37の駆動タイミングを制御することにより、先行シート35aと後続シート35bの最適な重なり量Xを維持することも可能である。
【0048】
ところで、シートの坪量に応じて、シートを吸着するのに要する時間である吸着時間t、すなわち吸引ソレノイド38をONしてから吸着完了センサ58がONとなるまでの時間tが異なる。また、本実施の形態において、吸着搬送ベルト21を常時一定速度Vで駆動しているため、後続シート35bを吸着搬送ベルト21に吸着するまでの間に、先行シートはV×tだけ進んでしまう。このため、吸着時間tが異なると、重なり量Xが異なるようになる。そこで、坪量によらず、2枚のシートの重なり量Xを一定にするためには、吸引シャッタ37をONするタイミングをシートの坪量に応じた吸着時間に応じて制御(調整)する必要がある。
【0049】
ここで、シート35のシート搬送方向の長さをLとすると、吸引シャッタ37をONするタイミングは、先行シートが吸着搬送ベルト21に吸着された後、L1(=L−X−V×t)だけ進んだ後とする。なお、吸着時間tは、吸引ソレノイド38の応答時間、吸引シャッタ37の応答時間及びシート35bが吸着搬送ベルト21に吸着するまでの時間を含んでいるものとする。
【0050】
本実施の形態においては、図6に示すシートの坪量毎の吸着時間テーブルが記憶手段3に記憶されている。例えば、A4サイズ(シート搬送方向長さ=210mm)のシート(普通紙)の吸着時間は60msecである。そして、このA4サイズのシート(普通紙)を360mm/secで50mmの重ね合せ搬送する場合、吸引シャッタ37をONするタイミングは以下の式から138.4mmとなる。
L1=210−50−360×0.06=138.4mm
【0051】
つまり、吸着時間が60msecのシートを重ね合せ搬送する場合には、先行シートを138.4mm吸着搬送した後、すなわち先行シートの後端と後続シートの先端の距離が(50+21.6)mmとなったときに、吸引シャッタ37をONするようにする。また、本実施の形態において、吸引シャッタ37のOFFタイミングは、図5の(b)に示すように、次シート(点線)の先端が引抜ローラ対42に到達した後、所定距離搬送してからとしている。
【0052】
また、検討データなどから図6に示すように超薄紙の吸着時間を20msec、超厚紙の吸着時間を100msecと設定している。この場合、最適な重なり量を仮に50mmとすると、先行シートの後端と次シートの先端の距離が超薄紙では(50+7.2)mm、超厚紙では(50+36)mmとなった場合に吸引シャッタ37をONするように制御することになる。
【0053】
なお、本実施の形態では吸着搬送ベルト21を常に駆動させ、吸引シャッタ37のON−OFFのみでシートの吸着搬送動作を行っている。しかし、吸着搬送ベルト21の駆動もON−OFF制御すると共に、吸引シャッタ37と吸着搬送ベルト21を、それぞれ独立に制御させてシートを吸着搬送させても構わない。
【0054】
ところで、既述したようにシートが順次給送されるに連れて最上位のシートの高さが低くなると、吸着搬送ベルトと最上位のシートとの間隔が広がる。そして、このように吸着搬送ベルトと最上位のシートとの間隔が広がると、吸着搬送ベルトの吸引力が最上位シートに及ぼす力が徐々に弱まり、ある程度の枚数のシートを給送すると吸着搬送ベルトに吸着できなくなる。そこで、これを防止するためシート収納庫11内の最上位シートの高さを検知し、最上位シートの高さが所定値になっていない場合、所定値になるようにトレイ12を上昇させるような制御を行っている。
【0055】
しかし、最上位シート近傍のシート群は常時エアに吹き付けられているため、紙面位置が上下するため、紙面位置を高精度に検出することは非常に困難である。また、特にシート搬送速度が速い場合、シート収納庫11内のシートが次々に給紙されて最上位のシートの高さが低くなると、最上位シートが適切な紙面位置へ移動する前に吸着動作が行われてしまう。この場合、シート収納庫11内に集積されている最上位のシートと吸着搬送ベルトとの間隔が広がる。その結果、吸着時間が増え、重ね合わせる部分の長さも短くなり、重ね合わせた部分の長さがばらついてしまう。
【0056】
これを図7及び図8を用いて詳細に説明する。図7の(a)は、1枚目の最上位シート35aが吸着搬送ベルト21に吸着された状態で搬送されている状態を示している。ここで吸着搬送ベルト21は常時駆動されているものとする。そして、1枚目のシート35aの先端が引抜センサ43に達すると吸引シャッタ37が閉じるように制御される。この後、1枚目のシート35aが引抜ローラによって所定量搬送されると、1枚目のシート35aの後端と2枚目のシート35bの先端が所定量L1だけ重なるように吸引シャッタ37を開く。
【0057】
これにより、図7の(b)及び図8の(a)のように1枚目のシート35aと2枚目のシート35bは所定量L1だけ重なった状態で吸着搬送ベルト21によって搬送される。続いて、2枚目のシート35bの先端が引抜センサ43に達すると、吸引シャッタ37が閉じる。この後、2枚目のシート35bが引抜ローラによって所定量搬送されると、図7の(c)に示すように、2枚目のシート35bの後端と3枚目のシート35cの先端が所定量L1だけ重なるように吸引シャッタ37を開く。
【0058】
しかし、このとき3枚目のシート35cは十分に浮上することができず、吸着搬送ベルト21の距離はh2(>h1)である。このため、吸引シャッタ37が開いてから3枚目のシート35cが吸着搬送ベルト21に吸着されるまでの時間が2枚目のシート35bの場合と比較して長くなる。この結果、実際には図8の(a)に示すように、2枚目のシート35bと3枚目のシート35cは所定量L1よりも小さい値であるL2の重なり量となってしまう。更に、3枚目のシート35cの先端が引抜センサ43に達すると、吸引シャッタ37が閉じる。この後、3枚目のシート35cが引抜ローラによって所定量搬送されると、3枚目のシート35cの後端と4枚目のシート35dの先端が所定量L1だけ重なるように吸引シャッタ37を開く。
【0059】
しかし、この場合も、4枚目のシート35dは十分に浮上することができず、吸着搬送ベルト21の距離はh3(>h2)である。このため、吸引シャッタ37が開いてから4枚目のシート35dが吸着搬送ベルト21に吸着されるまでの時間が3枚目のシート35cの場合と比較して長くなる。この結果、実際には図8の(a)に示すように、3枚目のシート35cと4枚目のシート35dは所定量L2よりも小さい値であるL3の重なり量となってしまう。つまり、先行シートが給送されると、特に坪量が大きなシートの場合、後続シートが吸着搬送ベルト21との距離がh1となるまでに吸着されるようになる。この結果、最上位のシートの高さが次第に低くなり、これに伴い重ね合わせ量はL1>L2>L3となり、重ね合わせ量のばらつきが生じる。
【0060】
そこで、本実施の形態においては、このような坪量が大きさによる重ね合わせ量のばらつきを低減するため、例えば引抜センサ43によってシートの搬送枚数を検知し、検知枚数が所定値に達すると、次のシートの吸着を一定時間遅らせるように制御する。即ち、連続的にシートを吸着搬送ベルトに吸着させるのではなく、1つのジョブの中で引抜センサ43によって検知した搬送枚数が所定値に達すると、シートの吸引動作を一定時間停止させるように制御する。そして、一定時間が経過した後、吸引シャッタ37を開き、重ね合わせ給紙を開始させる。これにより、次に吸着されるシートを吸着搬送ベルト21との距離がh1となるまで浮上させることができる。ここで、ジョブとはユーザが設定するシート出力形態になるように画像形成装置が実行する1連の動作のことを指す。
【0061】
なお、本実施の形態において、引抜センサ43は後述する図12に示すように、通過するシートの厚さに応じて出力の大きさが変化するようになっている。このため、出力の大きさの変化によりシートの重なり状態を検知することができ、出力の大きさの変化によりシートの搬送枚数を検出できる。
【0062】
このように制御することにより、図8の(b)に示すようにN枚(N=3)を重ね合わせたシート群を1セットとする分割型重ね合わせ給紙が実現される。ただし、一定時間は先行するシート群の後端と後続するシート群の先端が、図8の(b)に示すように所定距離間隔Mだけ開くように制御される必要がある。なお、この所定距離間隔Mは、図9の(a)に示すように、シートの坪量毎に予め決められており、決められた所定距離間隔Mとなるように吸引ソレノイド38が制御される。
【0063】
例えば、図9の(a)に示すように、坪量の小さい超薄紙の場合は、最上位シートが所望の位置へ移動する時間が短いため距離間隔Mの値を小さく、坪量の大きい超厚紙の場合は、最上位シートが所望の位置へ移動する時間が長いため、距離間隔Mの値が大きい。すなわち、シートの厚さが厚いほど、すなわちシートの坪量が大きいほどシート群の後端と後続するシート群の先端の距離間隔Mを大きく設定している。ここでは、シートの坪量毎にシート群の後端と後続するシート群の先端の距離間隔Mが予め決められているが、シートのマテリアルなども考慮して決めても構わない。
【0064】
次に、このような本実施の形態に係る分割型重ね合わせ給紙制御について図10、図11に示すフローチャート及び図12に示すタイミングチャートを用いて説明する。シートを給送する場合、まずユーザがシート収納庫11を引き出してシート35をセットする。そして、シート収納庫11を格納すると、図3の(a)に示すようにリフターモータ19によってトレイ12が上昇し、吸着搬送ベルト21と最上位シート35aとの距離がBになる位置で停止する。
【0065】
次に、CPU1は給送信号を受信すると、まずCPU1内部にあるカウンタNを初期化する(N=0)(S102)。次に、吸引ファン駆動回路40に制御信号を入力し、吸引ファン36をON(駆動)させる(S103)。次に、捌きファン駆動回路22Aに制御信号を入力し、捌きファン420をON(駆動)させ(S104)、シート先端側にエアを送り込みシートの捌きを開始する。また、分離ファン駆動回路22Bに制御信号を入力し、分離ファン430をON(駆動)させ(S105)、分離エアによりシートを分離する。なお、吸引ファン36、捌きファン420、分離ファン430の起動は同時でも、タイミングをずらしても構わない。
【0066】
次に、吸引シャッタ駆動回路39に制御信号を入力し、吸引シャッタ37を開く(S106)。これにより、分離ファン430からのエアにより分離された先行シートが吸着搬送ベルト21に吸着される。そして、先行シートが吸着搬送ベルト21に吸引され、先行シートの吸着状態を検知する吸着完了センサ58がONすると、すなわち先行シートの吸着が完了すると(S107のY)、吸着搬送ベルト21の回転を開始し(S108)、先行シートを搬送する。また、吸着搬送ベルト21の回転と同時に引抜ローラ対42の回転を開始する(S109)。
【0067】
ここで、吸着搬送ベルト21の回転と引抜ローラ対42の起動は同時でも、タイミングをずらしても良いが、搬送されるシートの先端が引抜ローラ対42に達した時に吸着搬送ベルト21と引抜ローラ対42の速度は等しくなっている必要がある。そして、引抜ローラ対42に達した先行シートの先端を検知して引抜センサ43がONすると(S110のY)、CPU1内部にあるカウンタNが更新される(N=N+1)(S111)。つまり、カウンタNの値は、最初のシートが搬送されたことを示す値である1となる。
【0068】
次に、このように先行シートの先端が検知されると、吸引シャッタ37を閉じる(S112)。そして、吸引シャッタ37が閉じられると、吸引ダクト内の負圧状態をモニタし、シート吸着が完了したことを検出する吸着完了センサ58はOFFする。この後、CPU1内部にあるカウンタNの値が所定値αとなっているかを判断する(S113)。この所定値αは、シートの重ね合せ可能枚数または重ね合せ設定枚数を表しており、この所定値αは坪量によって予め決められた値であっても良いし、ユーザが操作部302に設けられた画面上から入力するようにしても構わない。なお、本実施の形態において、αを3としている。
【0069】
ここで、カウンタNの値が所定値αではない場合(S113のN)、紙有無検知センサ56によりシート収納庫11に次シートが有るか無いかを判断する(S126)。そして、シート収納庫11に次シートが無い場合(S126のN)、吸引シャッタ37を閉じた状態のまま、吸着搬送ベルト21の回転を停止する(S119)。この後、先行シートの後端が通過して引抜センサ43がOFFすると(S120のY)、引抜ローラの回転を停止する(S121)。さらに吸引ファンをOFFする(S122)。また捌きファン420をOFFしてエア捌きを終了する(S123)と共にし、分離ファン430をOFFしてエア吹き付け動作を終了する(S124)。
【0070】
一方、カウンタNの値が所定値αでなく(S113のN)、次シートが有る場合には(S126のY)、所定時間T1経過した後(S127のY)、吸引シャッタ37を開く(S128)。これにより、後続シートは吸着搬送ベルトに、先端が先行シートの後端と所定量(L)重ね合わさるように吸着される。なお、このとき後続シートと吸着搬送ベルト21との距離は図7の(b)に示すようにh2であるので、実際には図8の(b)に示すように先行シートの後端と後続シートの先端との重ね合わせ量はL2となる。
【0071】
この後、先行シートと重ね合わされた2枚目のシートの先端が引抜センサ43を通過すると、図12に示すように引抜センサ43の信号レベルがシート1枚を検知するレベルから上昇する。そして、このように引抜センサ43の信号レベルが上昇すると、CPU1はカウンタNを更新する(S110のY及びS111)。そして、この後、既述したように、Nが1の場合と同じ処理を行う。
【0072】
この後、3枚目のシートの先端が引抜センサ43を通過すると、2枚目のシートと同様、引抜センサ43の信号レベルがシート1枚を検知するレベルから上昇することでカウンタNが更新される。つまり、カウンタNの値は、3枚目のシートが搬送されたことを示す値である3となる。この場合、カウンタNの値が所定値αとなるので(S113のY)、この後、吸着搬送ベルト21にシートを吸着させるタイミングを遅らせるよう所定時間Tαが経過するのを待つ(S114)。
【0073】
ここで、この所定時間Tαは、使用するシートの坪量に応じて、先行するシート群の後端と後続するシート群の先端が、図9の(a)のような距離間隔Mとなるように設定される。ここでは、Tα>T1となる。これにより、次に吸着されるシートを吸着搬送ベルト21との距離がh1となるまで浮上させることができる。なお、このとき吸着搬送ベルト21は動作したままであるが、S113で吸着搬送ベルト21の動作を一時停止し、後述するS117の後に再度動作するように制御しても構わない。
【0074】
次に、所定時間Tαが経過すると(S114のY)、紙有無検知センサ56によりシート収納庫11に次シートが有るか無いかを判断する(S115)。そして、シート収納庫11に次シートが無い場合(S115のN)、既述したS119〜S124の処理を行う。また、シート収納庫11に次シートが残っていれば(S115のY)、後続シート束のシートをカウントするようカウンタNを初期化する(N=0)(S116)。
【0075】
次に、吸引シャッタ37を開き(S117)、後続シート束のシートの吸着を再開する。そして、この後、シート収納庫11に次シートが無くなると(S115のN)、既述したS119〜S124の処理を行い、一連の分割型重ね合わせ給紙を終了する。なお、S114で最上位シートが所望の位置に移動するようにリフターモータ19を制御しても構わない。
【0076】
ところで、このように重ね合わされたシート群は、図1に示す合流搬送部319において1枚毎に分離されて装置本体300へと搬送される。具体的には、シート群の重なり部が搬送ローラ381及び搬送ローラ382の間に達すると、搬送ローラ381の搬送速度を搬送ローラ382の搬送速度よりも速くする先行シートの引離し制御を行う。なお、搬送ローラ381の加速度や加速後の搬送速度に関しては、シートの重なり量やシートサイズなどを考慮して決定する。また、先行シートが後続シートから引離され、先行シートの後端が搬送ローラ381を抜けた後、後続シートの先端が搬送ローラ381へ達する前に、搬送ローラ381の速度を搬送ローラ382の速度に戻すよう制御する。
【0077】
以上説明したように、本実施の形態においては、シートを所定枚数重ね合わせた後、次のシートを吸着する際、吸引シャッタ37の切り換えタイミングを、それまでのタイミングである第1タイミングよりも遅い第2タイミングに変更するようにしている。これにより、最上位シート位置が所望の高さになるまでの復帰時間を作り出すことができるため、重ね合わせ部分のばらつきを吸収することができ、安定した給紙動作が可能となる。つまり、重なりながら搬送されたシートの枚数が所定枚数に達すると、吸引シャッタ37の切り換えタイミングを遅らせて次のシートの吸着を遅らせることにより、シートを重ね合わせて給送する際、重ね合わせ部分のばらつきを低減させることができる。
【0078】
なお、本実施の形態においては、重ね合わせ量のばらつきを低減するため、シートの搬送枚数を検知し、検知枚数が所定値に達すると、吸引シャッタ37の切り換えタイミングを遅らせるように制御したが、本発明は、これに限らない。例えば、シートの吸引完了を検知した回数に応じて吸引シャッタ37の切り換えタイミングを遅らせるように制御するようにしても良い。即ち、連続的にシートを吸着搬送ベルトに吸着させるのではなく、1つのジョブの中で吸着完了センサ58によってシートの吸引完了を検知した回数が所定値に達すると、シートの吸引動作を一定時間停止させるように制御するようにしても良い。
【0079】
また、先行シート束の先端から後端までの距離を引抜センサ43で検出し、検出結果に応じて吸引シャッタ37を開くタイミングを変更しても構わない。例えば、引抜センサ43によって検出された先行シート束の先端から後端までの距離ΔLと設計値(設定値)Lsと比較し、Ls−ΔL>0の場合は、吸引シャッタ37を開くタイミングを早めるように制御する。また、Ls−ΔL<0の場合は、吸引シャッタ37を開くタイミングを遅くするように制御し、Ls=ΔLの場合は、吸引シャッタ37を開くタイミングは最初に設定されている値とする。
【0080】
ところで、これまでの説明においては、先行シート束と後続シート束との間に、使用するシートの坪量に応じた距離間隔Mを設けることにより、重ね合わせ量のばらつきを低減する構成について説明した。しかし、シートの坪量はシートの剛度と比例関係にある。つまり、坪量の小さいシートの場合はシート自体がもつ剛度が小さい。このため、シート同士の端部を重ね合わせて吸着搬送させようとした場合、重ね合わせ量を多くしてしまうと、後続シートの先端部分は、吸着搬送ベルトに直接、吸着されているわけではないため、垂れてしまうことが懸念される。また、坪量が大きいシートは、シート一枚の厚みが200〜300μm程度であるため、分割して重ね合わせ給紙した場合、1セット当たりの重ね合わせ量を多くし過ぎると、既述したように重ね合わせ量がばらついてしまう。
【0081】
そこで、使用するシートの坪量に応じて、重ね合わせ量や1セット当たりの重ね合わせるシートの枚数を変更する必要がある。次に、このように使用するシートの坪量に応じて重ね合わせ量や1セット当たりの重ね合わせシート枚数を変更するようにした本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0082】
図13及び図14は本実施の形態に係るシート給送装置の分割型重ね合わせ給紙制御を説明するフローチャートである。CPU1は給送信号を受信すると、まずCPU1内部にあるカウンタNを初期化する(N=0)(S202)。次に、使用するシートの坪量を判定する(S203)。ここでは、シートの坪量に関する情報の設定は、操作部302から事前に行っても構わない。そして、使用するシートの坪量Dが予め設定された閾値坪量DTHよりも大きい場合は(S203のY)、吸引ファン駆動回路40に制御信号を入力し、吸引ファン36をON(駆動)させる(S204)。次に、捌きファン駆動回路22Aに制御信号を入力し、捌きファン420をON(駆動)させ(S205)、シート先端側にエアを送り込みシートの捌きを開始する。また、分離ファン駆動回路22Bに制御信号を入力し、分離ファン430をON(駆動)させ(S206)、分離エアによりシートを分離する。なお、吸引ファン36、捌きファン420、分離ファン430の起動は同時でも、タイミングをずらしても構わない。
【0083】
次に、吸引シャッタ駆動回路39に制御信号を入力し、吸引シャッタ37を開く(S207)。これにより、分離ファン430からのエアにより分離された先行シートが吸着搬送ベルト21に吸着される。そして、先行シートが吸着搬送ベルト21に吸引され、先行シートの吸着状態を検知する吸着完了センサ58がONすると、すなわち先行シートの吸着が完了すると(S208のY)、吸着搬送ベルト21の回転を開始し(S209)、先行シートを搬送する。また、吸着搬送ベルト21の回転と同時に引抜ローラ対42の回転を開始する(S210)。
【0084】
そして、引抜ローラ対42に達した先行シートの先端を検知して引抜センサ43がONすると(S211のY)、CPU1内部にあるカウンタNが更新される(N=N+1)(S212)。つまり、カウンタNの値は、最初のシートが搬送されたことを示す値である1となる。次に、このように先行シートの先端が検知されると、吸引シャッタ37を閉じる(S213)。そして、このように吸引シャッタ37が閉じられると、吸着完了センサ58はOFFする。
【0085】
この後、CPU1内部にあるカウンタNの値が所定値βとなっているかを判断する(S214)。この所定値βとはシートの重ね合せ可能枚数または重ね合せ設定枚数を表しており、この所定値βは坪量によって予め決められた値である。ここで、カウンタNの値が所定値βではない場合(S214のN)、シート収納庫11に次シートが有るか無いかを判断する(S219)。そして、シート収納庫11に次シートが無い場合(S219のN)、吸引シャッタ37を閉じた状態のまま、吸着搬送ベルト21の回転を停止する(S223)。この後、引抜センサ43がOFFすると(S224のY)、引抜ローラ対42の回転を停止し(S225)、さらに吸引ファンをOFFする(S226)。また、捌きファン420及び分離ファン430をOFFしてエア捌き/エア分離動作を終了し(S227)、エア吹き付け動作が終了する(S228)。
【0086】
一方、カウンタNの値が所定値βでなく(S214のN)、次シートが有る場合には(S219のY)、所定時間Tβ2が経過した後(S220のY)、吸引シャッタ37を開く(S221)。これにより、先行シートの後端と後続シートの先端が所定量(L)重ね合わさるように吸着搬送ベルトに後続シートが吸着される。
【0087】
なお、先行シートの後端と後続シートの先端の重ね合わせ量(L)は、シートの厚みや剛度などの特性によって、給紙不良とならない最適な値となるように検討データを元に決定している。例えば図9の(b)に示すように、超薄紙であれば重ね合わせ量(L)は10mm、超厚紙であれば、重ね合わせ量(L)は50mmとなっている。これは、超薄紙の場合、重ね合わせ量(L)を大きくすると、後続シートの先端が垂れてしまい、給紙不良を引き起こす可能性があるためである。また、超厚紙の場合、シートの腰があるため、重ね合わせ量(L)を大きくしても、後続シートの先端が垂れることはないため、給紙不良を引き起こしにくいためである。
【0088】
一方、カウンタNの値が所定値βとなると(S214のY)、所定時間Tβが経過するのを待ち(S215)、所定時間Tβが経過すると(S215のY)、シート収納庫11に次シートが有るか無いかを判断する(S216)。なお、このTβは、使用するシートの坪量に応じて、先行するシート群の後端と後続するシート群の先端が図9の(a)のような間隔となるように吸引シャッタ37が制御される。この場合、Tβ>Tβ2となる。
【0089】
そして、次シートが無い場合には(S216のN)、既述したS223〜S228の処理を行う。また、次シートが有る場合には(S216のY)、後続シート束のシートをカウントするようカウンタNを初期化する(N=0)(S217)。次に吸引シャッタ37を開き(S218)、シートの吸着を再開する。そして、この後、シート収納庫11に次シートが無くなると(S216のN)、既述したS223〜S228の処理を行い、一連の分割型重ね合わせ給紙を終了する。
【0090】
一方、シートの坪量Dが予め設定された閾値坪量DTHと同じ又は小さい場合は(S203のN)、吸引ファン36を駆動させ(S230)、この後、捌きファン420をON(駆動)させ(S231)、シート先端側にエアを送り込みシートの捌きを開始する。また、分離ファン430をON(駆動)させ(S232)、分離エアによりシートを分離する。
【0091】
次に、吸引シャッタ37を開く(S233)。これにより、分離ファン430からのエアにより分離された先行シートが吸着搬送ベルト21に吸着される。そして、先行シートが吸着搬送ベルト21に吸引され、吸着完了センサ58がONすると、すなわち先行シートの吸着が完了すると(S234のY)、吸着搬送ベルト21の回転を開始し(S235)、先行シートを搬送する。また、吸着搬送ベルト21の回転と同時に引抜ローラ対42の回転を開始する(S236)。
【0092】
そして、引抜ローラ対42に達した先行シートの先端を検知して引抜センサ43がONすると(S237のY)、CPU1内部にあるカウンタNが更新される(N=N+1)(S238)。この後、吸引シャッタ37を閉じる(S239)。そして、このように吸引シャッタ37が閉じられると、吸着完了センサ58はOFFする。次に、CPU1内部にあるカウンタNの値が所定値γとなっているかを判断する(S240)。
【0093】
この所定値γはシートの重ね合せ可能枚数または重ね合せ設定枚数を表しており、この所定値γは坪量によって予め決められた値である。即ち、この所定値γは、シートの坪量Dが予め設定された閾値坪量DTHより大きい場合の所定値βとは異なったものである。なお、この所定値γは坪量によって予め決められた値であっても良いし、ユーザが操作部302から入力するようにしても構わない。
【0094】
ここで、カウンタNの値が所定値γではない場合(S240のN)、シート収納庫11に次シートが有るか無いかを判断する(S245)。そして、シート収納庫11に次シートが有る場合には(S245のY)、所定時間Tγ2経過した後(S246のY)、吸引シャッタ37を開く(S247)。これにより、次シートが、先端が先行シートの後端との所定量(L)で重ね合わされるように吸着搬送ベルトに吸着される。なお、次シートが無い場合(S245のN)、吸引シャッタ37を閉じた状態のまま、吸着搬送ベルト21の回転を停止する(S223)。この後、既述したS224〜S228の処理を行いエア吹き付け動作が終了する。
【0095】
一方、この後、シートが給送され、カウンタNの値が所定値γとなると(S240のY)、所定時間Tγが経過するのを待ち(S241)、所定時間Tγが経過すると(S241のY)、シート収納庫11に次シートが有るか無いかを判断する(S242)。なお、このTγは、使用するシートの坪量に応じて、先行するシート群の後端と後続するシート群の先端が図9の(a)のような間隔となるように吸引シャッタ37が制御される。この場合、Tγ>Tγ2となる。このとき吸着搬送ベルト21は動作したままであるが、S242で吸着搬送ベルト21の動作を一時停止し、S244の後に再度動作するように制御しても構わない。
【0096】
次に、次シートが無い場合には(S242のN)、既述したS223〜S228の処理を行う。また、次シートが有る場合には(S242のY)、カウンタNを初期化する(N=0)(S243)。次に吸引シャッタ37を開き(S244)、シートの吸着を再開する。
【0097】
次に、シートの坪量の大小によって、重ね合わせ枚数(β、γ)、重ね合わせ量を決める所定時間(Tβ2、Tγ2)、先行シート束の後端と後続シート束の先端の距離を決める所定時間(Tβ、Tγ)に関して説明する。既述したように、シートの坪量が大きいと重ね合わせ枚数が増えるにつれて重ね合わせ量がばらつきやすい。このため、β<γとなるように重ね合わせ枚数が設定される。また、重ね合わせ量に関しては、シートの坪量が大きい方が重ね合わせ量を大きくすることができるため、Tβ2>Tγ2となるように重ね合わせ量を決める時間が設定される。
【0098】
先行シート束の後端と後続シート束の先端の間隔(距離)に関しては、シートの坪量が大きい程、最上位シートが所望の位置に達するまでにかかる時間が長いことから、Tβ>Tγとなるように設定される。なお、本実施の形態においては、シートの坪量DがD>DTHまたはD≦DTHであるか判断することで制御フローチャートを説明したが、シートの坪量やマテリアルに関して、DTHを複数個備えていても構わない。
【0099】
以上説明したように、本実施の形態においては、シートの坪量が小さくなるにつれて、シートの重なり量が小さくなるように、吸引シャッタ37を吸着位置に切り換えるタイミングを遅くするようにしている。また、シートの坪量が大きくなるにつれて、重ね合わせ枚数を少なくすると共に、先行シート束の後端と後続シート束の先端の所定間隔を広くするようにしている。これにより、シートを重ね合わせて給送する際、重ね合わせ部分のばらつきを低減させることができる。
【0100】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図15は分割型重ね合わせ給紙の際の、引抜センサ43の信号波形を示す図であり、図15の(a)は、シートを1枚ずつ給送した場合の信号波形である。ここで、シートを1枚ずつ給送する場合、引抜センサ43からの信号に基づきシートの間隔を検知することができる。これに対し、N枚のシートを重ね合わせて1セットとした分割型重ね合わせ給紙の場合、シートの間隔がないため引抜センサ43が検知する信号は図15の(b)に示すようになる。つまり、分割型重ね合わせ給紙の場合、引抜センサ43の信号波形は搬送方向に対する長さが非常に長い一枚のシートを検知することと等価である。
【0101】
先行シートと後続シートを重ね合わせた際の重なり量は、シートを吸着搬送ベルトへ吸着させる際の吸着タイミングで決まる。また、シートを何枚重ね合わせて1セットとするかは使用するシートの坪量やサイズによって決定される。したがって、CPU1は使用するシート情報から引抜センサ43が検知する信号波形がどのようになるか推定できることになる。したがって、引抜センサ43がシートの通過を検知した信号波形がCPU1で推定したものと大きく異なっていた場合、給紙不良、つまりジャムが発生したと判断することができる。
【0102】
そこで、本実施の形態においては、引抜センサ43が検知する信号波形に基づいてシートのジャムを検知するようにしている。次に、本実施の形態に係るシートのジャム検知について図16に示すフローチャートを用いて説明する。
【0103】
シートを給送する場合、まずユーザがシート収納庫11を引き出してシート35をセットする。そして、シート収納庫11を格納すると、図3の(a)に示すようにリフターモータ19によってトレイ12が上昇し、吸着搬送ベルト21と最上位シート35aとの距離がBになる位置で停止する。
【0104】
次に、CPU1は給送信号を受信すると、これと同時にジャム検知フローを開始する。そして、CPU1は、給送信号に基づきシートの給送を開始し(S301)、この後、シートの先端が引抜センサ43に達したかを判断する。そして、シートの先端が引抜センサ43に達して引抜センサ43がONすると(S302のY)、不図示のタイマを作動させ、シートの通過時間を計測する。次に、給送されたシートの後端が通過して引抜センサ43がOFFすると(S303のY)、記憶手段3に検知したセンサON時間(TS)を格納する(S304)。
【0105】
ここで、分割型重ね合せ給紙を行う場合における引抜センサ43の検知時間をTS、引抜センサ43のON時間の規定値である許容上限値をTJ、許容下限値をTKとする。なお、この判断基準となる時間TJ,TKはシートが吸着搬送ベルトに吸着する際の吸着時間のばらつきを考慮して、シートのサイズや坪量ごとに決定されるものである。具体例としてA4の超厚紙を分割型重ね合わせ搬送させる場合の決定手法を以下に示す。条件として、坪量が300g/m紙(超厚紙)、搬送速度が360mm/secとする。また1セット当たりのシートの重ね合わせ枚数を5枚とし、重ね合わせ量を20mmとする。
【0106】
この場合、シート5枚を重ね合わせて1セットとした場合の1枚目のシート先端から5枚目のシート後端部までの長さは970mm(=210+(210−20)×4)と算出できる。また、5枚のシートのうち、どこかのシート2枚が完全に重なり合っているとすると(完全重送)、このユニットの長さは780mm(=210+(210−20)×3)と算出される。
【0107】
正常搬送の場合、シートは搬送速度360mm/secで搬送されているので、引抜センサ43が1枚目のシートの先端を検知し5枚目の後端を検知するまでの通過時間(引抜センサ43のON時間)は2.7sec(≒970÷360sec)と算出される。これに対し、5枚のシートのうち、どこかのシート2枚が完全に重なり合っていたとすると、引抜センサ43が検知する時間は2.2sec(≒780÷360)と算出される。この結果、吸着搬送ベルト21にシートを吸着させる際における吸着時間のばらつき0.2secを考慮しても、TJを2.4secとすることで給紙ジャムの判別ができることになる。
【0108】
また、重ね合わせ量が実際に全て5mmとなってしまった場合、1枚目のシート先端から5枚目のシート後端部までの長さは1010mm(=210+(210−5)×4)と算出できる。この場合の引抜センサ43が検知する時間は2.86sec(≒1030÷360)と算出できる。したがって、TKを2.75secとすることで給紙ジャムの判別ができることになる。
【0109】
そして、この例のように閾値時間TJ及びTKを設定することでシートの給紙不良を判断することが可能となる。即ち、検知時間(通過時間)TSが所定時間範囲内(TK≦TS≦TJ)である場合は(S305のY)、シートは正常に搬送されたと判断し、この後、次シートの有無を検知する(S306)。そして、次シートが有れば(S306のY)、S302〜S306の処理を繰り返す。また、次シートが無ければ(S306のN)、ジャム検知フローは終了する。
【0110】
一方、検知時間TSが所定時間範囲内(TK≦TS≦TJ)にない場合は(S305のN)、エスケープ排紙するか否かを判断する(S310)。なお、エスケープ排紙は、図1において、対象となるシートまたはシート束がエスケープパス390を通過するように制御し、エスケープトレイ101上に排紙することによって、機械の動作を停止させずにジョブを継続することを可能とする機能である。
【0111】
そして、エスケープ排紙することが選択された場合は(S310のY)、対象のシート束がエスケープ排紙するように制御され、ジョブが継続される(S311)。ここで、例えば、S305において、TS<TKの場合は、すなわち通過時間が所定時間範囲を超えている場合はシートの完全重送ジャム、又はシートの重なり量が大きいことによる異常状態と判断できる。したがって、この場合、S310で対象となるシート群がエスケープ排紙された後、ジョブが継続される。なお、エスケープ排紙が選択されない場合は(S310のN)、吸着搬送ベルト21、吸引シャッタ37、引抜ローラ対42、吸引ファン36、捌きファン420、分離ファン430が全て停止するジャム処理が行われる(S312)。
【0112】
また、本実施の形態において、S305においてTS>TJの場合は、すなわち通過時間が所定時間範囲に達していない場合はシートの重なり量が小さいことによる生産性低下となるような異常状態と判断する。この場合は生産性低下ということを表示することで異常状態として処理しないようにする。
【0113】
このように、本実施の形態においては、重なりながら搬送された所定枚数のシートの通過時間を検出することにより、シートを重ね合わせて給送する際、重ね合わせ部分のばらつきを低減させることができると共に、ジャム発生を検知することができる。そして、検出された通過時間が規定値を超えている場合は、エスケープ排紙又はジャム処理を行うことにより、生産性の低下を防ぐことができる。
【0114】
なお、本実施の形態においては、S306で次シートがあれば、TK−TSだけ次のシートの吸着タイミングを遅らせるように制御するようにしても良い。この結果、この後、検知時間TSを所定時間範囲内に収めることができるようになり、エスケープ排紙を無くすことができ、生産性の低下を防ぐことができる。また、S310で対象となるシート群がエスケープ排紙された後、ジョブが継続され(S311)、S306で次シートがあればTS−TJだけ次のシートの吸着タイミングを早めるように制御することで生産性を保つようにしても構わない。
【0115】
さらに、通過時間が所定時間範囲を超えている場合は、吸引シャッタ37を吸着位置に切り換える第1タイミングを早め、通過時間が所定時間範囲に達していない場合は、第1タイミングを遅くするようにして良い。
【符号の説明】
【0116】
1…CPU、2…ASIC、10,11…シート収納庫、12…トレイ、21…吸着搬送ベルト、35…シート、36…吸引ファン、37…吸引シャッタ、42…引抜ローラ対、43…引抜センサ、51,52…吸着搬送ユニット、58…吸着完了センサ、101…エスケープトレイ、150…シート給送機構、151…吸着搬送機構、152…エア吹き付け部、153…紙面検知センサ、300A…画像形成装置、300…画像形成装置本体、301…シート給送ユニット、302…操作部、307…作像部、311,312…シート給送装置、390…エスケープパス、391…搬送パス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを支持する昇降可能なトレイと、前記トレイに支持されたシートの側端にエアを吹き付けてシートを浮上させるエア吹き付け部と、浮上させたシートを吸着して搬送する吸着搬送機構とを備え、エアの吹き付けで浮上したシートを前記吸着搬送機構により吸着して給送するシート給送装置において、
前記吸着搬送機構は、
エアの吹き付けで浮上したシートを吸着して搬送する吸着搬送部と、
前記吸着搬送部にシートを吸着させるための負圧を発生する負圧発生部と、
前記負圧発生部によって発生した負圧によりシートを吸着させる吸着位置及び負圧を遮断する遮断位置に切換可能な吸着切換部と、
前記吸着搬送部に先に吸着された先行シートに後続シートが一部重なりながら搬送されるように前記吸着切換部を前記遮断位置から前記吸着位置に切り換える制御部と、を備え、
前記制御部は、重なりながら搬送されたシートの枚数が所定枚数に達して次のシートを吸着する際、前記吸着切換部を前記吸着位置に切り換えるタイミングを、先行シートに後続シートが重なる第1タイミングよりも遅い第2タイミングに変更し、次のシートの吸着の後、前記第1タイミングに戻すことを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
シートの坪量を設定する設定部を備え、
前記制御部は、前記設定部による設定情報に応じて、シートの坪量が大きくなるにつれて、前記第2タイミングを遅くすることを特徴とする請求項1記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記設定部による設定情報に応じて、シートの坪量が小さくなるにつれて、先行シートと後続シートの重なり量が小さくなるように前記第1タイミングを遅くすることを特徴とする請求項2記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記設定部による設定情報に応じて、シートの坪量が大きくなるにつれて、前記所定枚数を少なくすることを特徴とする請求項2記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記吸着搬送部により搬送されたシートを検知する検知部を備え、
前記制御部は、前記検知部の検知に基づいて重なりながら搬送された所定枚数のシートの通過時間を検出し、検出された通過時間が所定時間範囲を超えている場合は、前記第1タイミングを速くし、通過時間が所定時間範囲に達していない場合は、前記第1タイミングを遅くすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記トレイに支持された最上位シートの紙面位置を検出する紙面検知部を備え、
前記第2タイミングで前記吸着切換部を前記吸着位置に切り換えた際、最上位シートの紙面が前記紙面検知部によって検知されるように前記トレイを上昇させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシート給送装置と、
前記シート給送装置から送り出されるシートに画像を形成する画像形成部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記吸着搬送部により搬送されたシートを検知する検知部と、
シートを前記画像形成部に案内する第1の搬送路と、
シートを前記画像形成部の手前から排出部へ導く第2の搬送路と、を備え、
前記検知部の検知に基づいて重なりながら搬送された所定枚数のシートの通過時間を検出し、検出された通過時間が所定時間範囲内の場合は、所定枚数のシートを前記第1の搬送路へと搬送し、所定時間範囲を超えている場合は、所定枚数のシートを前記第2の搬送路へと搬送することを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−28433(P2013−28433A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165267(P2011−165267)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】