説明

シーラー吐出装置

【課題】シーラーホースの捩れや、シーラーホースの巻き付きが防止でき、ティーチング工数を低減できるシーラー吐出装置の提供。
【解決手段】シーラー吐出装置Aは、本体hと、クロスローラベアリング18等を介して回動可能にボディ1の後部に取り付けられる基台dとを備え、基台dは、多関節ロボットのアーム先端に固定されている。シーラー吐出装置Aは、本体hが旋回するので、第1、第2エアチューブおよびシーラーホースの捩れや、各エアーチューブの巻き付きが防止でき、ティーチング工数を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板素材の合わせ目にシーラーを塗布する装置に係わり、特に、自動車ボディの継目にシーラーを塗布するのに好適なシーラー吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車ボディは、複数のパネル部品により構成されており、これらパネル部品相互の合わせ目や折り返し部には、防水、防錆、防音等を目的としてシーラーが塗布される。
この塗布作業は、通常、生産性向上のため、多関節ロボットのアーム先端にシーラー吐出ガンを固定したシーラー吐出装置で行っている、なお、多関節ロボットは、マイクロコンピュータにより自動制御されている。
【特許文献1】特開2004−154733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術は、下記に示す課題がある。
例えば、アドヒーシブシーラーは、ワークの略全周に塗布させることが多い。
このため、この様な作業を多関節ロボットにやらせると、シーラーを供給するためのシーラーホースが捩れたり(ホースに無理な力が加わる)、シーラー吐出ガンにシーラーホースが巻き付くといった不具合が発生することがある。従来技術では、これをティーチング(教示作業)の工数を増やして解決していた。
【0004】
本発明の目的は、シーラーホースの捩れや、シーラーホースの巻き付きが防止でき、ティーチング工数を低減できるシーラー吐出装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(請求項1について)
シーラー吐出装置は、ボディの先端取付口に取り付けられ吐出口が円形のノズル、ボディの中央部内に形成した径大のヘッド室、ボディ内部に形成されヘッド室と先端取付口とを連通する軸孔、ヘッド室の前方および後方へ連通する第1、第2空気通路、軸孔先部内へ連通するシーラー供給通路、ロッドとヘッドとを有しロッドが軸孔内で慴動しヘッドがヘッド室内で慴動するピストンからなる本体部分と、旋回機構により回動可能にボディの後部に取り付けられる基台とを備える。
【0006】
基台は、多関節ロボットの回動可能なアーム先端に回動軸が一致する(アームの回動軸と本体部分の回動軸)様に固定されている。
そして、ヘッド室内でヘッドを前後に慴動させるためのヘッド制御エアを供給する第1、第2エアチューブが第1、第2空気通路に接続され、シーラーを供給するためのシーラーホースがシーラー供給通路に接続されている。
【0007】
多関節ロボットは、ティーチングにより、ノズルの吐出口がワークの所定部位に臨む様に指示されているのでアームが三次元的に動く。
加圧されたシーラーがシーラーホースを通りシーラー供給通路を介して軸孔先部内へ送り込まれる。ヘッド制御エアが第1、第2エアチューブを交互に通り、第1、第2空気通路を介して、ヘッド室の前方、後方へ交互に送り込まれるためヘッドが前後に慴動する。 これにより、ノズルの円形の吐出口からシーラーがワークの所定部位に吐出する。
【0008】
多関節ロボットのアーム先端に基台を固定しているが、この基台は、旋回機構により回動可能にボディの後部に取り付けられている。このため、アームが三次元的に動くと、シーラー吐出装置の本体部分は、第1、第2エアチューブおよびシーラーホースが捩れたり、ボディに巻き付いたりしない位置に旋回する。
【0009】
シーラー吐出装置は、旋回機構により本体部分が旋回するので、シーラーホースの捩れや、シーラーホースの巻き付きが防止でき、ティーチング工数を低減できる。
なお、基台は、多関節ロボットの回動可能なアーム先端に回動軸が一致する(アームの回動軸と本体部分の回動軸)様に固定されているので、本体部分が旋回してもノズルの吐出口が位置ずれしない。
【0010】
(請求項2について)
シーラー吐出装置は、ボディの先端取付口に取り付けられ吐出口が円形のノズル、ボディの中央部内に形成した径大のヘッド室、ボディ内部に形成されヘッド室と先端取付口とを連通する軸孔、ヘッド室の前方および後方へ連通する第1、第2空気通路、軸孔先部内へ連通するシーラー供給通路、ロッドとヘッドとを有しロッドが軸孔内で慴動しヘッドがヘッド室内で慴動するピストンからなる本体部分と、ベアリングを介して回動可能にボディの後部に取り付けられる基台とを備える。
【0011】
基台は、多関節ロボットの回動可能なアーム先端に回動軸が一致する(アームの回動軸と本体部分の回動軸)様に固定されている。
そして、ヘッド室内でヘッドを前後に慴動させるためのヘッド制御エアを供給する第1、第2エアチューブが第1、第2空気通路に接続され、シーラーを供給するためのシーラーホースがシーラー供給通路に接続されている。
【0012】
多関節ロボットは、ティーチングにより、ノズルの吐出口がワークの所定部位に臨む様に指示されているのでアームが三次元的に動く。
加圧されたシーラーがシーラーホースを通りシーラー供給通路を介して軸孔先部内へ送り込まれる。ヘッド制御エアが第1、第2エアチューブを交互に通り、第1、第2空気通路を介して、ヘッド室の前方、後方へ交互に送り込まれるためヘッドが前後に慴動する。 これにより、ノズルの円形の吐出口からシーラーがワークの所定部位に吐出する。
【0013】
多関節ロボットのアーム先端に基台を固定しているが、この基台は、ベアリングを介して回動可能にボディの後部に取り付けられている。このため、アームが三次元的に動くと、シーラー吐出装置の本体部分は、第1、第2エアチューブおよびシーラーホースが捩れたり、ボディに巻き付いたりしない位置に回動する。
【0014】
シーラー吐出装置は、ベアリングにより本体部分が回動するので、シーラーホースの捩れや、シーラーホースの巻き付きが防止でき、ティーチング工数を低減できる。
なお、基台は、多関節ロボットの回動可能なアーム先端に回動軸が一致する(アームの回動軸と本体部分の回動軸)様に固定されているので、本体部分が旋回してもノズルの吐出口が位置ずれしない。
【0015】
(請求項3について)
シーラーホースは、シーラーの流動性を維持するため、保温性を高めた二重構造である。このため、重量が重く、且つ、柔軟に曲がらない。
このため、旋回機構やベアリングにより本体部分を回動可能にしたことによる、シーラーホースの捩れ防止効果やシーラーホースの巻き付き防止効果が特に役に立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
シーラー吐出装置は、ボディの先端に形成した円形のシーラー吐出口、ボディの中央部内に形成した径大のヘッド室、ボディ内部に形成され、ヘッド室とシーラー吐出口とを連通する軸孔と、ヘッド室の前方および後方へ連通する第1、第2空気通路、軸孔先部内へ連通するシーラー供給通路、ロッドとヘッドとを有しロッドが軸孔内で慴動しヘッドがヘッド室内で慴動するピストンからなる本体部分と、ベアリングを介して回動可能にボディの後部に取り付けられる基台とを備え、基台は、多関節ロボットのアーム先端に固定されている。
そして、ヘッドを前後に慴動させるためのヘッド制御エアを供給する第1、第2エアチューブが第1、第2空気通路に接続され、シーラーを供給するためのシーラーホースがシーラー供給通路に接続されている。
【0017】
多関節ロボットのアーム先端に基台を固定しているが、この基台は、ベアリングを介して回動可能にボディの後部に取り付けられている。このため、アームが三次元的に動くと、シーラー吐出装置の本体部分は、第1、第2エアチューブおよびシーラーホースが捩れたり、ボディに巻き付いたりしない位置に回動する。
シーラー吐出装置は、ベアリングにより本体部分が回動するので、シーラーホースの捩れや、シーラーホースの巻き付きが防止でき、ティーチング工数を低減できる。
【実施例1】
【0018】
本発明の実施例1(請求項1〜3に対応)を図1〜図3に基づいて説明する。
シーラー吐出装置Aは、本体hと、回動可能に本体後部に取り付けられた基台dとを備え、多関節ロボットRのアームrの先端に設けた配置板r1に基台dを固定している。
ボディ1は、リテーナシート11、シーラーシリンダ12、エアシリンダ13、ハウジング14、およびアウタリテーナ15(どれも金属製)をボルト等を使って水密的に連結して構成される。
【0019】
リテーナシート11の先端取付口11aには吐出口n1の開口面が円形のノズルnが捩じ込まれている。なお、11bはOリング、11cはシート、11dはOリング、11eはスペーサである。
【0020】
シーラーシリンダ12には、先端取付口11aへ連通する軸孔12aが中心軸に沿って形成され、軸孔先部内へ連通するシーラー供給通路12bを内部に形成したソケット12cを突設している。なお、12dはロッドシールパッキン、12eはバックアップリング、12fはスリーブ、12g、12hはOリング、12iはリテーナパッキンである。
また、ソケット12cには、シーラーsの流動性を維持するため、保温性に優れた二重構造のシーラーホースC0が取り付けられている。なお、シーラーホースC0の基端は、供給装置s2のシーラーsを圧送する接続口に接続されている。
【0021】
エアシリンダ13には、径大のヘッド室13aと、軸孔12aへ連通する軸孔13bとが形成されている。
また、13cは操作空気接続口13dとヘッド室13aの前方とを連通させるための第1空気通路、13e、13fはOリング、13gはリテーナOリングである。このエアシリンダ13は、六角ボルト13hによりシーラーシリンダ12に連結されている。
エアシリンダ13の軸孔13bおよびシーラーシリンダ12の軸孔12aにはピストン2のロッド21が慴動可能に嵌挿され、ヘッド室13aにはピストン2のヘッド22が慴動可能に配されている。なお、23はOリングである。
【0022】
ハウジング14の後部にはインナリテーナ16を回動可能に配するための凹所14aが形成されている。また、14bは操作空気接続口14cとヘッド室13aの後方とを連通させるための第2空気通路である。このハウジング14は、六角ボルト14dによりエアシリンダ13に連結されている。
また、操作空気接続口13d、14cには、第1エアチューブC1、第2エアチューブC2が取り付けられている。なお、第1、第2エアチューブC1、C2およびシーラーホースC0の基端は、ヘッド制御エアを圧送する供給装置s2の接続口に接続されている。
【0023】
なお、15はアウタリテーナ、15aはアウタリテーナ15とハウジング14とを連結するための六角ボルト、17はインナリテーナ、18はインナリテーナ16、17、ハウジング14、アウタリテーナ15間に配されるクロスローラベアリング、19はインナリテーナ16とハウジング14との間に配されるニードルベアリング、16aはインナリテーナ16、17どうしを連結するための六角ボルトである。
本体hは、ノズルnを捩じ込んだリテーナシート11、ピストン2を嵌挿したシーラーシリンダ12およびエアシリンダ13、ハウジング14、およびインナリテーナ16、17である。
【0024】
基台dは、六角ボルト17aによりインナリテーナ17に連結されている。また、17bは多関節ロボットRの回動可能なアーム先端に、回動軸が一致する(アームの回動軸と本体部分の回動軸)様にボルト17cを使って取り付けるための取付穴である。
【0025】
本実施例のシーラー吐出装置Aは、下記の利点を有する。
多関節ロボットRは、ティーチングにより、ノズルnの吐出口n1がワークWの所定部位に臨む様に指示されているのでアームrが三次元的に動く。加圧されたシーラーsがシーラーホースC0を通りシーラー供給通路12bを介して軸孔先部内へ送り込まれる。ヘッド制御エアが第1エアチューブC1、第2エアチューブC2を介して交互にヘッド室13aへ送り込まれるためヘッド22が前後に慴動し、円形の吐出口からシーラーsがワークWの所定部位に吐出する。
【0026】
シーラー吐出装置Aは、多関節ロボットRのアームrの先端に設けた配置板r1に基台dを固定しているが、クロスローラベアリング18およびニードルベアリング19により本体hは回動可能(インナリテーナ16、17は除く)である。
よって、アームrが三次元的に動いても、シーラー吐出装置Aの本体h(インナリテーナ16、17は除く)は、第1エアチューブC1、第2エアチューブC2、およびシーラーホースC0に引きずられる様に回動する。
【0027】
シーラー吐出装置Aは、本体hが回動する(インナリテーナ16、17は除く)ので、シーラーホースC0および第1、第2エアチューブC1、C2の捩れや、アームrや本体h等への巻き付きを防止できる。また、捩れや巻き付きを考慮してティーチングする必要がないのでティーチング工数を低減できる。
なお、基台dは、多関節ロボットRのアームrの配置板r1に、回動軸が一致する(アームrの回動軸と本体hの回動軸)様に固定されているので、本体hが旋回してもノズルnの吐出口n1が位置ずれせず、ワークWの所定部位へシーラーsを確実に吐出できる。
【0028】
〔変形例〕
シーラー吐出装置の外形状は、円柱状であっても良い。
シーラーホースは、厚肉の高圧ホースであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1に係るシーラー吐出装置の構造を示す説明図である。
【図2】シーラー吐出装置を配置板に固定する様子を示す説明図である。
【図3】第1、第2エアチューブやシーラーホースが捩れたり巻き付いたりしない原理を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ボディ
2 ピストン
11a 先端取付口
12a、13b 軸孔
12b シーラー供給通路
13a ヘッド室
13c 第1空気通路
14b 第2空気通路
18 クロスローラベアリング(ベアリング)
19 ニードルベアリング(ベアリング)
21 ロッド
22 ヘッド
A シーラー吐出装置
C0 シーラーホース
C1 第1エアチューブ
C2 第2エアチューブ
h 本体(本体部分)
n ノズル
n1 吐出口
R 多関節ロボット
r アーム
r1 配置板(アーム先端)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディの先端取付口に取り付けられ吐出口が円形のノズル、前記ボディの中央部内に形成した径大のヘッド室、ボディ内部に形成され前記ヘッド室と前記先端取付口とを連通する軸孔、前記ヘッド室の前方および後方へ連通する第1、第2空気通路、軸孔先部内へ連通するシーラー供給通路、ロッドとヘッドとを有し前記ロッドが軸孔内で慴動し前記ヘッドが前記ヘッド室内で慴動するピストンからなる本体部分と、
旋回機構により回動可能に前記ボディの後部に取り付けられる基台とを備え、
多関節ロボットの回動可能なアーム先端に回動軸が一致する様に前記基台を固定し、前記ヘッドを前後に慴動させるためのヘッド制御エアを供給する第1、第2エアチューブを前記第1、第2空気通路に接続し、シーラーを供給するためのシーラーホースを前記シーラー供給通路に接続してなるシーラー吐出装置。
【請求項2】
ボディの先端取付口に取り付けられ吐出口が円形のノズル、前記ボディの中央部内に形成した径大のヘッド室、ボディ内部に形成され前記ヘッド室と前記先端取付口とを連通する軸孔、前記ヘッド室の前方および後方へ連通する第1、第2空気通路、軸孔先部内へ連通するシーラー供給通路、ロッドとヘッドとを有し前記ロッドが軸孔内で慴動し前記ヘッドが前記ヘッド室内で慴動するピストンからなる本体部分と、
ベアリングを介して回動可能に前記ボディの後部に取り付けられる基台とを備え、
多関節ロボットの回動可能なアーム先端に回動軸が一致する様に前記基台を固定し、前記ヘッドを前後に慴動させるためのヘッド制御エアを供給する第1、第2エアチューブを前記第1、第2空気通路に接続し、シーラーを供給するためのシーラーホースを前記シーラー供給通路に接続してなるシーラー吐出装置。
【請求項3】
前記シーラーホースは、前記シーラーの流動性を維持するため、保温性を高めた二重構造であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシーラー吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−142657(P2008−142657A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334317(P2006−334317)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(592001403)株式会社IEC (5)
【出願人】(300008634)株式会社ケイ・ジー・ケイ (8)
【Fターム(参考)】