説明

シールキャップ

【課題】シールキャップの引き抜き時に離脱したキャップ部が圧縮機に設けたスタッドボルトと接触しても、圧縮機から確実に離脱させることができるシールキャップの提供にある。
【解決手段】シールキャップ20は、弾性変形可能な材料により形成され、流路孔を塞ぐキャップ部21と、把持可能とする把持部24と、キャップ部21と把持部24とを一体的に連結する連結部26とを備え、連結部26はスタッドボルト15の挿通可能なボルト挿通部23とを有し、把持部24は、ボルト挿通部23よりもキャップ部21側に形成され、連結部26は、ボルト挿通部23のキャップ部側にボルト挿通部23と連通し、シールキャップ20を接続部12から引き抜く時のキャップ部21とスタッドボルト15との接触によりキャップ部21の折り曲げ変形を可能とする切り込み27を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧縮機における冷媒の流路孔である吸入孔や吐出孔を塞ぐシールキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
車両空調用の圧縮機の場合、工場において圧縮機が生産された後、潤滑油を圧縮機内部に封入する。
圧縮機のハウジングにおいて、外部配管と接続される接続部には、吸入孔や吐出孔が形成されている。
潤滑油封入後では、吸入孔や吐出孔にはゴム製や樹脂製のシールキャップが圧入され、吸入孔や吐出孔はシールキャップにより封栓される。
【0003】
従来のシールキャップとしては、例えば、特許文献1に開示された車両用空調装置に用いられる防塵用キャップが存在する。
特許文献1に記載された車両用空調装置には、図10に示すように、冷媒が流通する一組の配管の端部に接続ブロック100が設けられ、一組の配管と連通した第1孔部101および第2孔部102が開口している。
そして、接続ブロック100には、第1孔部101および第2孔部102を通じてエバポレータの内部に塵埃等が進入することを防止する防塵用キャップ103が装着されている。
この防塵用キャップ103は、第1孔部101および第2孔部102を閉塞する第1嵌合部104および第2嵌合部105を備えるボディ106と、ボディ106より突出形成され、ボディ106を接続ブロック100より離脱させる際に引っ張られるフック部107から構成されている。
そして、フック部107が、ボディ106に対して回動自在に形成されている。
【0004】
また、別の従来技術として、例えば、特許文献2に開示された封栓装置を挙げることができる。
この封栓装置は、配管を接続する接続部に吸入孔及び吐出孔が開口され、その近傍のそれぞれに配管接続具固定用のスタッドボルトが固定された圧縮機に用いられ、吸入孔又は吐出孔を封栓する。
封栓装置は、吸入孔又は吐出孔に気密に嵌合する栓体と、スタッドボルトの周囲を覆う筒状体と、これら栓体及び筒状体と一体に形成された取手部とを備え、筒状体の側壁にその根元から軸方向にスリットを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−83747号公報
【特許文献2】登録実用新案第3124207公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図10に示す防塵用キャップは、防塵用キャップ103の引き抜き方向によっては第2嵌合部105が第2孔部102から離脱した後、第2嵌合部105がボルト108と当たって、防塵用キャップ103の圧縮機からの離脱が困難となるという問題がある。
特に、図10に示すように、ボルト108が傾斜する状態で車両用空調装置が車両に取り付けられ、防塵用キャップ103の引き抜き方向が、スペースの関係から制約され、図10に示すようにフック部107を把持して矢印方向に引き抜く場合、2点鎖線で示すように第2嵌合部105を含む防塵用キャップ103がボルト108に引っ掛かって接続ブロック100から離脱することができない。
また、特許文献2に開示された封栓装置についても、特許文献1の場合と同様に、封栓装置の引き抜き方向によっては吸入孔又は吐出孔から離脱した栓体がスタッドボルトに引っ掛かってしまい、封栓装置の圧縮機からの確実な離脱が困難となる。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、シールキャップの引き抜き時に離脱したキャップ部が圧縮機に設けたスタッドボルトと接触しても、圧縮機から確実に離脱させることができるシールキャップの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、流体が流れる配管を接続する接続部と、前記接続部の端面に開口された流路孔と、前記接続部の端面に立設したスタッドボルトと、を備えた圧縮機に用いられ、弾性変形可能な材料により形成され、前記流路孔を塞ぐキャップ部と、把持可能とする把持部と、前記キャップ部と前記把持部とを一体的に連結する連結部とを備え、前記連結部は前記スタッドボルトに挿通可能なボルト挿通部を有するシールキャップであって、前記把持部は、前記ボルト挿通部よりも前記キャップ部側に形成され、前記連結部は、前記ボルト挿通部の前記キャップ部側に、前記ボルト挿通部と連通し、前記シールキャップを前記接続部から引き抜く時の前記キャップ部と前記スタッドボルトとの接触により前記キャップ部の折り曲げ変形を可能とする切り込みを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、圧縮機の接続部に装着したシールキャップを引き抜く際、流路孔から離脱したキャップ部が、スタッドボルトと接触しても、シールキャップを引き抜く力を加えることで、キャップ部が支点部を支点として折れ曲がり、連結部に対して変位する。
キャップ部の連結部に対する変位により、キャップ部がスタッドボルトへの引っ掛かりを回避することができ、さらに、シールキャップを引き抜く力を加えると、シールキャップはスタッドボルトから離脱する。
その結果、シールキャップを圧縮機から確実に離脱させることができる。
【0010】
また、本発明は、上記のシールキャップにおいて、前記切り込みにおいて、前記ボルト挿通部と連通した位置から、前記ボルト挿通部より前記キャップ部側で前記ボルト挿通部から最も離れた位置までの2点間の直線距離が、前記端面から前記スタッドボルトの先端までの長さより長く設定されてもよい。
【0011】
この場合、切り込みは、シールキャップの連結部の内側に形成され、シールキャップの外周縁に達しないため、切り込みからの破断を抑制することができる。
また、シールキャップの引き抜き過程において、切り込みにスタッドボルトを通すことができ、シールキャップの圧縮機からの離脱をより確実とすることができる。
【0012】
また、本発明は、上記のシールキャップにおいて、前記圧縮機は、前記端面に形成された第2の流路孔を備え、前記スタッドボルトは、前記流路孔と前記第2の流路孔との間に立設され、前記第2の流路孔を塞ぐ第2キャップ部が前記連結部を介して一体的に連結されてもよい。
【0013】
この場合、圧縮機の接続部において流路孔と第2の流路孔がスタッドボルトを間にして備えられるが、シールキャップは流路孔および第2の流路孔を塞ぐ。
シールキャップの引き抜き過程では、キャップ部が先に離脱し、キャップ部がスタッドボルトへの引っ掛かりを回避した後に、第2のキャップが第2の流路孔から離脱する。
従って、一つのシールキャップで流路孔と第2の流路孔を塞ぐことができるとともに、シールキャップを圧縮機から確実に離脱することができる。
【0014】
また、本発明によれば、上記のシールキャップにおいて、前記連結部は、前記ボルト挿通部の前記第2のキャップ部側に第2の切り込みを備え、前記第2の切り込みは前記切り込みと連通してもよい。
【0015】
この場合、第2の切り込みが備えられることにより、シールキャップの引き抜き過程において、キャップ部のスタッドボルトへの引っ掛かりを回避した後に、第2のキャップ部を引き抜く力が作用する位置が第2キャップ部側に近くなる。
このため、第2の切り込みが存在しない場合と比較すると、第2のキャップ部を引き抜く力が小さく済み、シールキャップの引き抜きが容易となる。
【0016】
また、本発明よれば、上記のシールキャップにおいて、前記切り込みは、前記連結部の外周縁から前記ボルト挿通部まで形成されてもよい。
【0017】
この場合、切り込みはシールキャップの外周縁に達するから、シールキャップの引き抜き過程において、キャップ部のスタッドボルトへの引っ掛かりを回避した後に、切り込みにスタッドボルトを通す必要がない。
従って、シールキャップの連結部の内側に形成した切り込みと比較して切り込みを短くすることができる。
【0018】
また、本発明によれば、上記のシールキャップにおいて、前記連結部の前記ボルト挿通部に対応する位置には、前記スタッドボルトの外周面を覆うボルト保護部が備えられてもよい。
【0019】
この場合、シールキャップを接続部に装着した状態では、ボルト保護部がスタッドボルトの外周面を覆うから、スタッドボルトを保護することができる。
【0020】
また、本発明によれば、上記のシールキャップにおいて、前記ボルト保護部は前記キャップ部側の面に該ボルト保護部の先端から基部にかけて切り込みを有してもよい。
【0021】
この場合、ボルト保護部に切り込みがない場合と比較して、ボルト保護部のスタッドボルトからの離脱が容易となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、シールキャップの引き抜き時に離脱したキャップ部が圧縮機に設けたスタッドボルトと接触しても、圧縮機から確実に離脱させることができるシールキャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施形態に係るシールキャップを適用する圧縮機の側面図である。
【図2】第1の実施形態に係るシールキャップを適用する圧縮機の正面図である。
【図3】第1の実施形態に係るシールキャップの斜視図である。
【図4】(a)はシールキャップの平面図であり、(b)は一部を破断して示したシールキャップの側面図であり、(c)は把持部により形成される円孔と切り込みが連通されたシールキャップを示す要部平面図である。
【図5】(a)〜(d)はシールキャップの引き抜き過程を説明する説明図である。
【図6】(a)〜(d)は第1の実施形態の変形例1〜4に係るシールキャップの平面図である。
【図7】(a)は第2の実施形態に係るシールキャップの平面図であり、(b)は一部を破断して示した第2の実施形態に係るシールキャップの側面図である。
【図8】(a)は第2の実施形態の変形例1に係るシールキャップの平面図であり、(b)は第2の実施形態の変形例2に係るシールキャップの平面図であり、(c)は一部を破断して示した第2の実施形態の変形例2に係るシールキャップの側面図である。
【図9】(a)は第3の実施形態に係るシールキャップの平面図であり、(b)は一部を破断して示した第3の実施形態に係るシールキャップの側面図である。
【図10】従来技術の要部を一部破断して示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係るシールキャップを図面に基づいて説明する。
図1および図2に示す圧縮機10は、車載用の圧縮機であり、圧縮機10のハウジング11は、主にシリンダブロック、フロントハウジングおよびリヤハウジングにより構成されている。
ハウジング11には流体としての冷媒が流れる配管を接続する接続部12が設けられている。
接続部12には端面12Aが形成され、端面12Aには、流路孔としての吸入孔13と、第2の流路孔としての吐出孔14が開口されている。
端面12Aにおける吸入孔13と吐出孔14の間にスタッドボルト15が立設されている。
スタッドボルト15は接続部12に接続される配管を固定するためのボルトであり、接続部12に設けたねじ孔に螺入されている。
この実施形態では、図1に示すように、圧縮機10の接続部12において、吸入孔13、スタッドボルト15、吐出孔14の各中心が仮想直線L上を通るように配置されている。
図1および図2に示すように、圧縮機10の接続部12が回転軸心Pを中心にして約45度傾斜した位置となるように、圧縮機10が車両のエンジンルーム内に固定される。
【0025】
図3、図4(a)および図4(b)に示すシールキャップ20は、接続部12に装着して吸入孔13と吐出孔14を塞ぐためのものであり、例えば、人力による加圧より弾性変形可能なポリウレタン等の樹脂材料又はゴム系材料により形成されている。
シールキャップ20は、吸入側キャップ部21と、吐出側キャップ部22と、把持部24と、ボルト保護部25を備える。
さらに、シールキャップ20は、吸入側キャップ部21、吐出側キャップ部22、把持部24およびボルト保護部25を一体的に連結する連結部26と、を有している。
また、連結部26はボルト挿通部23を有する。
【0026】
キャップ部としての吸入側キャップ部21は円柱状に形成されており、吸入側キャップ部21の外周面には環状リブ21Aが形成されている。
吸入側キャップ部21の先端側から内側へ入り込むように形成された凹部(図示せず)を備えている。
吸入側キャップ部21の径寸法は、圧入により吸入孔13を塞ぐように吸入孔13の孔径に対応して設定されている。
吐出側キャップ部22は第2のキャップ部に相当し、円柱状に形成されている。
吐出側キャップ部22は外周面に環状リブ22Aを備え、吸入側キャップ部21と同様の凹部(図示せず)を備えている。
吐出側キャップ部22の径寸法は、圧入により吐出孔14を塞ぐように吐出孔14の孔径に対応して設定されている。
【0027】
ボルト挿通部23は、スタッドボルト15の挿通可能な部位であり、吸入側キャップ部21と吐出側キャップ部22との間に位置する。
この実施形態では、連結部26のボルト挿通部23に対応する位置には、ボルト保護部25が円筒状に備えられており、ボルト保護部25の円筒内側はボルト挿通部23に相当する。
シールキャップ20が接続部12に装着された状態では、スタッドボルト15がボルト挿通部23に挿通され、スタッドボルト15の外周面をボルト保護部25が覆う。
【0028】
把持部24は、接続部12に装着されたシールキャップ20を引き抜き易くするためのものであり、この実施形態では、吸入側キャップ部21のボルト挿通部23側と反対側の位置に形成されており、把持部24には円孔24Aが形成され、リング状となっている。
把持部24とボルト挿通部23との間に吸入側キャップ部21が位置する。
把持部24は、ボルト挿通部23よりも吸入側キャップ部21側に位置すればよく、把持部24の形状も特に限定されず、把持可能な形状であればよい。
接続部12に装着されたシールキャップ20を引き抜く際には、把持部24に指を掛けて引き抜き方向へ引っ張ることで、シールキャップ20を引き抜き易くなる。
【0029】
連結部26は、吸入側キャップ部21、吐出側キャップ部22および把持部24を一体的に連結する。
図4(b)に示すように、連結部26には接続部12の端面12Aに当接する当接面26Aを備えているほか、外周縁には肉厚のリブ26Bを形成している。
図3、図4(a)に示すように、この実施形態では、連結部26のリブ26Bに囲まれた内側の範囲において、ボルト挿通部23の吸入側キャップ部21側において形成された吸入側切り込み27と、ボルト挿通部23の吐出側キャップ部22側に吐出側切り込み29が形成されている。
吸入側切り込み27は切り込みに相当し、吐出側切り込み29は第2の切り込みに相当する。
【0030】
図3、図4(a)に示すように、吸入側切り込み27は、吸入側キャップ部21のボルト挿通部23側を横断的に通り、ボルト挿通部23と連通する横断部27Aと、横断部27Aからリブ26Bに沿って把持部24側へ向けて形成される外周部27Bとを備える。
ここで言う「横断的」とは、シールキャップ20の長手方向(把持部24から吐出側キャップ部22へ向かう方向)に対して完全に横切るのではなく、部分的に横切ることを意味する。
吸入側切り込み27の横断部27Aは、吸入側キャップ部21とボルト保護部25との間を横断する方向へ直線的に形成されてボルト挿通部23と連通している。
吸入側切り込み27は複数の端部T1〜T4を備えている。
吸入側切り込み27における外周部27Bの一方の端部T3は、横断部27Aの一方の端部T1と連通しており、外周部27Bはリブ26Bに沿い、把持部24と吸入側キャップ部21との間を通っている。
外周部27Bの他方の端部T4は、連結部26において横断部27Aの他方の端部T2側に位置する。
【0031】
外周部27Bにおいて横断部27Aの中心から最も離れた最遠点Rは、吸入側キャップ部21と把持部24との間に存在する。
ここで、横断部27Aの中心は、吸入側切り込み27において、ボルト挿通部23との連通位置である。また、最遠点Rは、吸入側切り込み27において、ボルト挿通部23より吸入側キャップ部21側でボルト挿通部23から最も離れた位置である。
外周部27Bの最遠点Rと横断部27Aの中心との2点間の直線距離D1は、端面12Aからスタッドボルト15の先端までの長さD2よりも長く設定されている。
この直線距離D1が端面12Aからスタッドボルト15の先端までの長さD2よりも長く設定されていることにより、シールキャップ20の引き抜き時において、スタッドボルト15を吸入側切り込み27へ通すことを可能としている。
【0032】
吸入側切り込み27が連結部26に形成されることにより、連結部26における外周部27Bの他方の端部T2と横断部27Aの他方の端部T4との間には、支点部28(図3および図4(a)では便宜上二点差線にて示す)が形成される。
支点部28は、吸入側キャップ部21を連結部26に対して変位可能とする支点であり、連結部26における吸入側キャップ部21とボルト挿通部23との間から離れた位置に形成されている。
支点部28が連結部26に形成されていることで、シールキャップ20の引き抜き時において、吸入側キャップ部21がスタッドボルト15に接触しても、吸入側キャップ部21は支点部28を支点として折れ曲がり、吸入側キャップ部21のスタッドボルト15への引っ掛かりの回避を可能としている。
なお、図4(c)に示すように、切り込み27を把持部24により形成される円孔24Aと連通させてもよく、この場合はさらにスタッドボルト15を吸入側切り込み27へ通しやすくなる。
【0033】
次に、吐出側切り込み29について説明する。
吐出側切り込み29は、吸入側切り込み27の横断部27Aの両端部T1、T2からリブ26Bに沿って吐出側キャップ部22側へ向けて直線状に切り込んで形成されている。
この実施形態では、吐出側切り込み29の吐出側キャップ部22側の端部T5、T6が、ボルト挿通部23より吐出側キャップ部22に接近している。
吐出側切り込み29の吐出側キャップ部22側の端部T5、T6が、ボルト挿通部23と吐出側キャップ部22の間をより吐出側キャップ部22に接近していることで、吐出側キャップ部22の近くに第2支点部30が形成される。
【0034】
第2支点部30がボルト挿通部23より吐出側キャップ部22の近くに形成されることにより、シールキャップ20の引き抜き時において、吐出側キャップ部22を引き抜く力を吐出側キャップ部22に作用させ易くする。
第2支点部30の位置がボルト挿通部23より吐出側キャップ部22に近くなるにつれて、吐出側キャップ部22を引き抜く力を吐出側キャップ部22に作用させ易くする。
逆に、第2支点部30の位置が吐出側キャップ部22よりボルト挿通部23に近くなるにつれて吐出側キャップ部22を引き抜く力を吐出側キャップ部22に作用させ難くする。
【0035】
なお、この実施形態では、吸入側切り込み27および吐出側切り込み29の幅はそれぞれ1mm程度としているが、両切り込み27、29の幅は特に限定されず、例えば、幅を設けない隙間のない切り込みとしてもよい。
また、各切り込みは、完全に連結部26の表裏に対して切断されない凹溝、もしくは、ミシン目状に形成された切り込みとしてもよい。凹溝やミシン目状の切り込みの場合、シールキャップ20の引き抜き時において、引き抜きの力により連結部26の表裏に対して完全に切断される状態になればよい。
【0036】
次に、この実施形態のシールキャップ20の引き抜き過程について説明する。
圧縮機10は車両のエンジンルーム内に取り付けられており、接続部12に設けたスタッドボルト15が鉛直方向に対して約45度に傾斜する状態にある。
シールキャップ20の吸入側キャップ部21は吸入孔13を塞ぎ、吐出側キャップ部22は吐出孔14を塞いでおり、シールキャップ20は圧縮機10の接続部12に装着されている。
シールキャップ20を引き抜く作業を行う作業者は、まず、把持部24に指を係止させ、係止させた指をスタッドボルト15側に近づけるように上方へ移動する。
これにより、連結部26が反り、シールキャップ20の把持部24側が接続部12の端面12Aから離れ始める。
図5(a)に示すように、さらに把持部24を矢印方向に引き上げることにより、吸入側キャップ部21が吸入孔13から離脱する。なお、図5(a)〜図5(d)において、矢印方向を上方とし、図5(a)、図5(b)、図5(c)、図5(d)の順でシールキャップ20の引き抜きが行われる。
【0037】
さらに、把持部24を引き上げることで、図5(b)に示すように、吸入側キャップ部21がスタッドボルト15と接触する。
そして、把持部24の引き上げを継続することにより、図5(c)に示すように、支点部28を支点として、吸入側キャップ部21が折れ曲がり、シールキャップ20が接続部12の端面12Aからさらに離れる。
吸入側キャップ部21は、折れ曲がった状態のままスタッドボルト15の側方を通って吐出側キャップ部22へ移動する。
このとき、スタッドボルト15はボルト保護部25に覆われた状態で、吸入側切り込み27を通り、変位した吸入側キャップ部21は支点部28側の側方に位置し、スタッドボルト15と吸入側キャップ部21とが引き抜き方向で接触し、スタッドボルト15への吸入側キャップ部21の引っ掛かりを回避する。
【0038】
この状態からさらに上方へ把持部24を引き上げると、図5(d)に示すように、吐出側キャップ部22が吐出孔14から離脱し始めるとともに、ボルト保護部25がスタッドボルト15から抜け始める。
このとき第2支点部30がボルト挿通部23より吐出側キャップ部22の近くに設定されているので、引き抜く力を吐出側キャップ部22に作用させ易く、第2支点部が離れている場合と比較すると、少ない力で吐出側キャップ部22を離脱させることができる。
吐出側キャップ部22が吐出孔14を離脱した後、もしくは、吐出側キャップ部22の離脱と同時に、ボルト保護部25がスタッドボルト15から抜けて、シールキャップ20の引き抜きが完了する。
【0039】
上記の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)圧縮機10の接続部12に装着したシールキャップ20を引き抜く過程において、吸入孔13から離脱した吸入側キャップ部21が、スタッドボルト15に接触しても、シールキャップ20を引き抜く力を加えることで、吸入側キャップ部21が連結部26の支点部28を支点として折れ曲がる。吸入側キャップ部21の折れ曲がりにより、吸入側キャップ部21がスタッドボルト15に対して引き抜き方向で引っ掛かることを回避でき、吸入側キャップ部21はシールキャップ20の引き抜きの妨げにならない。さらに、シールキャップ20を引き抜く力を加えると、シールキャップ20はスタッドボルト15から離脱する。その結果、シールキャップ20を圧縮機10から確実に離脱することができる。
【0040】
(2)吸入側切り込み27は、シールキャップ20の連結部26の内側に形成されているから、シールキャップ20の引き抜き過程において、吸入側切り込み27にスタッドボルト15を通すことができ、シールキャップ20の圧縮機10からの離脱をより確実とすることができる。また、吸入側切り込み27は、シールキャップ20の外周縁に達しないため、シールキャップ20の引き抜き過程において、吸入側キャップ部21を引き抜いた後、端部T5、T6の2点を基準として、ボルト挿通部23および吐出側キャップ部22を離脱させることができる。つまり、ボルト挿通部23および吐出側キャップ部22を引き抜く時は、端部T5、T6に引き抜きの力が分散される。例えば、吸入側切り込み27の端部T2が外周縁まで達している場合、ボルト挿通部23および吐出側キャップ部22を引き抜く時は、端部T5の一点に引き抜きの力が作用することとなる。よって、吸入側切り込み27がシールキャップ20の外周縁に達している場合と比較して、本実施形態はシールキャップ20の引き抜き力に対する強度が強い構造となっている。
(3)圧縮機10の接続部12において吸入孔13と吐出孔14がスタッドボルト15を間にして備えられるが、一つのシールキャップ20で吸入孔13および吐出孔14を塞ぎ、シールキャップ20のボルト挿通部23にスタッドボルト15が挿通される。シールキャップ20の引き抜き過程では、吸入側キャップ部21が先に離脱し、吸入側キャップ部21がスタッドボルト15への引っ掛かりを回避した後に、吐出側キャップ部22が吐出孔14から離脱する。従って、一つのシールキャップ20で吸入孔13と吐出孔14を塞ぐことができるとともに、シールキャップ20を圧縮機10から確実に離脱することができる。
【0041】
(4)吐出側切り込み29が備えられることにより、シールキャップ20の引き抜き過程において、吸入側キャップ部21がスタッドボルト15への引っ掛かりを回避した後に、吐出側キャップ部22を引き抜く力が作用する位置が吐出側キャップ部22側に近づくこととなる。このため、吐出側切り込み29が存在しない場合と比較すると、吐出側キャップ部22の引き抜く力が小さく済み、引き抜きが容易となる。
(5)シールキャップ20を接続部12に装着した状態では、ボルト保護部25がスタッドボルト15を覆うから、シールキャップ20が接続部12に装着されている状態では、スタッドボルト15を保護することができる。
(6)リブ26Bを形成することで、シールキャップ20の引き抜き時の、引き抜き力に対する強度が強い構造となっている。
【0042】
次に、第1の実施形態の変形例1〜4について説明する。
図6(a)に示す変形例1は、吸入側切り込み27の位置が第1の実施形態と異なるシールキャップ20の例であり、横断部27Aの両端部T1、T2から把持部24側へ向けて外周部27B、27Bがそれぞれ形成されている。
外周部27Bの一方の端部T3は、横断部27Aの両端部T1、T2に連通し、外周部27Bの一方の端部T4は最遠点Rとなる。
このため、変形例1のシールキャップ20では、連結部26における支点部28が把持部24と吸入側キャップ部21との間に形成される。
外周部27Bの把持部24側の端部T4と横断部27Aとの間の直線距離は、端面12Aからスタッドボルト15の先端までの長さよりも長く設定されている。
この変形例1ではシールキャップ20の引き抜きの過程では、吸入側キャップ部21はスタッドボルト15の先端側で支点部28を支点として折れ曲がり、吸入側キャップ部21は、折れ曲がった状態のままスタッドボルト15の先端側を通って吐出側キャップ部22へ移動する。吸入側キャップ部21の折れ曲がりにより、吸入側キャップ部21がスタッドボルト15に対して引き抜き方向で引っ掛かることを回避することができる。
【0043】
図6(b)に示す変形例2は、吐出側切り込み29が横断部27Aの一方の端部T1から形成され、横断部27Aの他方の端部T2には形成されていないシールキャップ20の例である。
変形例2の場合、吐出側切り込み29が横断部27Aの一方の端部T1から形成されているのみであるが、第2支点部30を端部T5により形成することができる。
従って、シールキャップ20の引き抜きの過程では、引き抜きの力を吐出側キャップ部22に作用させ易い。
【0044】
図6(c)に示す変形例3は、吸入側切り込み27のみが形成され、吐出側切り込み29が設けられていないシールキャップ20の例である。
変形例3の場合、第1の実施形態および変形例1、2と比較すると、吐出側キャップ部22が離脱しにくい構成であるが、変形例2の場合よりも引き抜く力を大きくすることにより、吐出側キャップ部22を吐出孔14から離脱させることができる。
この場合も、吸入側キャップ部21の折れ曲がりにより、吸入側キャップ部21がスタッドボルト15に対して引き抜き方向で引っ掛かることを回避することができる。
【0045】
図6(d)に示す変形例4は、ボルト保護部25を備えないシールキャップ20の例である。
変形例4では、連結部26はボルト挿通部23を有し、吸入側キャップ部21および把持部24は連結部26により一体的に連結されている。
変形例4の場合、吸入側切り込み27の横断部27Aとボルト挿通部23が連通している。
変形例4のシールキャップ20の場合、ボルト保護部25を備えないため、シールキャップ20が接続部12に装着されても、スタッドボルト15は露出されて保護されない。
シールキャップ20の引き抜きの過程では、ボルト保護部25をスタッドボルト15から離脱させる必要がなく、その分だけシールキャップ20の離脱が容易となる。
【0046】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るシールキャップについて説明する。
第2の実施形態係るシールキャップは、吸入側切り込みが、連結部の外周縁に達している例である。
第1の実施形態と共通する要素については、第1の実施形態の説明を援用し、符号を共通して用いる。
【0047】
図7に示すシールキャップ40の連結部26には吸入側切り込み41が形成されているが、吸入側切り込み41は連結部26の外周縁からボルト挿通部23まで形成されている。
従って、吸入側切り込み41は、連結部26の外周縁からボルト挿通部23まで横断する切り込みであり、ボルト挿通部23よりも吸入側キャップ部21に位置する。
支点部42、43は連結部26において、ボルト挿通部23を挟んで吸入側切り込み41の反対側に設定される。
支点部42は、シールキャップ40の引き抜きの過程で、吸入側キャップ部21がボルト保護部25側へ変位するための支点である。
つまり、把持部24を把持してシールキャップ40をスタッドボルト15の方向へ引き抜く過程で支点部42を支点として折れ曲がり、吸入側キャップ部21が離脱する。
支点部43は、シールキャップ40の引き抜きの過程で、吸入側キャップ部21がスタッドボルト15に接触した状態でスタッドボルト15への引っ掛かりを回避するように変位するための支点である。
支点部43はシールキャップ40の引き抜き過程において、吸入側キャップ部21を変位させスタッドボルト15に対して引っ掛かりを回避させるために必要な支点である。
なお、この実施形態のシールキャップ40では、吐出側切り込みは存在しない。
【0048】
このシールキャップ40によれば、シールキャップ40の引き抜きの過程では、吸入側キャップ部21がスタッドボルト15に当接するまでは、支点部42を支点として折れ曲がり、スタッドボルト15側へ変位する。
そして、吸入側キャップ部21がスタッドボルト15と接触すると、吸入側キャップ部21は支点部43を支点として変位する。
さらに、引き抜きを行うことで、吸入側キャップ部21がスタッドボルト15と当接したまま、支点部43を支点として吸入側キャップ部21が折れ曲がり、スタッドボルト15の支点部43側を通る。
そして、引き抜きを継続することで、吐出側キャップ部22およびボルト保護部25の離脱が行われる。
【0049】
この実施形態では、第1の実施形態の(1)、(3)、(5)、(6)と実質的に同じ作用効果を奏する。
さらに言うと、この実施形態では、吸入側切り込み41はシールキャップ40の外周縁に達するから、シールキャップ40の引き抜き過程において、吸入側キャップ部21がスタッドボルト15への引っ掛かりを回避した後に、吸入側切り込み41にスタッドボルト15を通す必要がない。
従って、第1の実施形態のシールキャップ20における連結部26の内側に形成した吸入側切り込み27と比較して吸入側切り込み41の長さを短くすることができる。
この実施形態では、第1の実施形態と比較して簡素な構造とすることができる。
また、吸入側切り込み41はボルト挿通部23より吸入側キャップ部21側に設けられ、さらに、ボルト挿通部23から吸入側キャップ部21側に近寄るように斜めに切り欠いているため、引き抜き過程において、支点部42を支点として折れ曲がり易くなっている。
【0050】
次に、第2の実施形態の変形例1、2について説明する。
図8(a)に示す変形例1は、吸入側切り込み41のほか、吐出側切り込み44を形成したシールキャップ40の例である。
変形例1の吸入側切り込み41は、吸入側キャップ部21のボルト挿通部23側を横断的に通るように形成され、ボルト挿通部23と連通する。
変形例1の場合、支点部42、43は、吸入側切り込み31の端部側のほぼ同じ位置に形成される。
【0051】
一方、吐出側切り込み44は、連結部26における吸入側キャップ部21の端部からリブ26Bに沿って吐出側キャップ部22へ向けて形成され、さらに、ボルト保護部25と吐出側キャップ部22の間を通るように形成されている。
この変形例1の場合、吐出側切り込み44が形成されていることにより、連結部26において第2支点部45が形成される。
第2支点部45が吐出側キャップ部22の近くに形成されることにより、シールキャップ40の引き抜き時において、吐出側キャップ部22を引き抜く力を吐出側キャップ部22に作用させ易くする。
このため、第2の実施形態のシールキャップ40と比べると、吐出側キャップ部22の離脱が、ボルト保護部25のスタッドボルト15からの離脱よりも先となり、吐出側キャップ部22の離脱が容易となる。
【0052】
図8(b)および図8(c)に示す変形例2は、第2の実施形態のシールキャップ40におけるボルト保護部25に切り込み46を形成したシールキャップ40の例である。
シールキャップ40が備えるボルト保護部25の、吸入側キャップ部21側の面にボルト保護部25の基部25Aから先端25Bへ至る切り込み46が形成されている。
ボルト保護部25に切り込み46が形成されることにより、シールキャップ40の引き抜きの過程では、吸入側キャップ部21が離脱した後、さらに引き抜くことで、ボルト保護部25の切り込み46が開かれて、ボルト保護部25がスタッドボルト15から離脱され、さらに、吐出側キャップ部22が吐出孔14から離脱される。
変形例2の場合、ボルト保護部25に切り込み46がない場合と比較して、ボルト保護部25のスタッドボルト15からの離脱が容易となる。
【0053】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るシールキャップについて説明する。
第3の実施形態は吸入孔のみを塞ぐキャップ部を備えたシールキャップの例である。
図9(a)および図9(b)に示すシールキャップ50は、キャップ部51と把持部54を備えるほか、キャップ部51および把持部54を一体的に形成する連結部56を備えている。
連結部56はボルト挿通部53を備えており、ボルト挿通部53に対応する位置でボルト保護部55を備えている。
【0054】
キャップ部51は吸入孔13を塞ぐものであり円柱状である。
把持部54はシールキャップ50の引き抜き時にシールキャップ50を引き抜き易くするためのものであり、円孔54Aを形成し、第1の実施形態の把持部24と実質的に同じ構成である。
ボルト挿通部53はスタッドボルト15を挿通する部位であり、この実施形態では、連結部56のボルト挿通部53に対応する位置でボルト保護部55が形成されており、ボルト保護部55の内側の通孔はボルト挿通部53に相当する。
連結部56は接続部12の端面12Aと当接する端面56Aと外周縁に沿って形成されたリブ56Bを備える。
この実施形態では、連結部56のリブ56Bに囲まれた内側の範囲において、ボルト挿通部53のキャップ部51側において形成された切り込み57が形成されている。
【0055】
図9(a)に示すように、切り込み57は、キャップ部51のボルト挿通部53側を横断的に通って形成され、ボルト挿通部53と連通する横断部57Aと、横断部57Aからリブ56Bに沿って把持部54側へ形成される外周部57Bとを備える。
切り込み57の横断部57Aは、キャップ部51とボルト保護部55との間にて直線的に形成されてボルト挿通部53と連通している。
切り込み57における外周部57Bの一方の端部T3は、横断部57Aの一方の端部T1と連通しており、外周部57Bはリブ56Bに沿い、把持部54とキャップ部51との間を通っている。
外周部57Bの他方の端部T4は、横断部57Aの他方の端部T2側に位置する。
【0056】
外周部57Bにおいて横断部57Aの中心から最も離れた最遠点Rは、キャップ部51と把持部54との間に存在する。
外周部57Bの最遠点Rと横断部57Aの中心との直線距離は、端面12Aからスタッドボルト15の先端までの長さよりも長く設定されている。
切り込み57が連結部56に形成されることにより、連結部56における外周部57Bの他方の端部T4と横断部57Aの他方の端部T2との間には、支点部58が形成される。
【0057】
この実施形態によれば、圧縮機10の接続部12に装着したシールキャップ50を引き抜く際、吸入孔13から離脱したキャップ部51が、スタッドボルト15と当たっても、キャップ部51が連結部56の支点部58を支点として折れ曲がり、連結部56に対して変位する。
キャップ部51の連結部56に対する変位により、キャップ部51のスタッドボルト15への引っ掛かりを回避することができ、キャップ部51はシールキャップ50の引き抜きの妨げにならない。
なお、切り込み57を把持部54により形成される円孔54Aと連通させてもよく、この場合はさらにスタッドボルト15を通しやすくなる。
吐出孔14についてもシールキャップ50と同じ構成であって吐出孔14に対応したシールキャップを用いてもよい。
【0058】
なお、上記の実施形態に係るシールキャップは、本発明の一実施形態を示すものであり、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、下記のように発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能である。
○ 上記の実施形態では、シールキャップが装着される圧縮機として車載用の圧縮機を例として説明したが、圧縮機の形式は特に限定されない。例えば、圧縮機は、斜板式、スクロール式、ベーン式であってもよく、また、車載用の圧縮機に特に制限されるものではない。
○ 上記の実施形態では、圧縮機のハウジングに形成された接続部にシールキャップが装着される例を示したが、必ずしも接続部はハウジングに形成されるとは限らず、例えば、ハウジングに設けた別の部材に接続部が形成されてもよい。
○ 上記の実施形態では、圧縮機の接続部において吸入孔、スタッドボルト、吐出孔の各中心が仮想直線上を通るように配置されたが、吸入孔、スタッドボルト、吐出孔の各中心が互いに位置ずれしていてもよい。この場合、シールキャップは、吸入孔、スタッドボルト、吐出孔の位置に応じて、吸入側キャップ部、ボルト挿通部、吐出側キャップ部を互いに位置ずれした形状とする。
○ 上記の実施形態では、吸入孔が吐出孔よりも低い位置となるように、圧縮機がエンジンルーム内に固定されたが、吸入孔よりも吐出孔が低い位置になるように固定される圧縮機であってもよい。この場合のシールキャップは、例えば、吐出側キャップ部をキャップ部とし、吸入側キャップ部を第2のキャップ部とし、吐出側キャップ部側に把持部を設けるようにすればよい。
○ 上記の実施形態では、リング状に形成された把持部を示したが、把持部はシールキャップを引き抜く際に作業者が把持し易い形状であればよく、特に形状は限定されない。また、把持部はボルト挿通部よりもキャップ部側に存在するように設けられればよい。
○ 上記の実施形態では、シールキャップの外周縁に沿うようにリブを設けるようにしたが、リブを設けることは必須ではない。例えば、リブを備えないシールキャップであってもよい。
○ 上記の実施形態では、接続部に設けたスタッドボルトが鉛直方向に対して約45度傾斜する状態で圧縮機がエンジンルームに取り付けた例について説明したが、スタッドボルトの方向は特に限定されず自由である。例えば、鉛直方向に対して傾斜しない状態であってもよいし、45度以外の角度にて傾斜するとしてもよい。
○ 上記の実施形態では、切り込みにおいて、ボルト挿通部と連通した位置から、ボルト挿通部よりキャップ部側でボルト挿通部から最も離れた位置(最遠点R)までの2点間の直線距離が、端面からスタッドボルトの先端までの長さより長く設定されているとしたが、シールキャップの材料によってはこの限りではない。シールキャップの材料が十分な伸び代を有する材料、例えば、ゴム系材料である場合、これらの2点間の直線距離が端面からスタッドボルトの先端までの長さより短く設定されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 圧縮機
12 接続部
12A 端面
13 吸入孔(流路孔としての)
14 吐出孔(第2の流路孔としての)
15 スタッドボルト
20、40、50 シールキャップ
21 吸入側キャップ部(キャップ部としての)
22 吐出側キャップ部(第2のキャップ部としての)
23、53 ボルト挿通部
24、54 把持部
25、55 ボルト保護部
26、56 連結部
26A、56A 当接面
26B、56B リブ
27、41、57 吸入側切り込み
27A、57A 横断部
27B、57B 外周部
28、42、43、58 支点部
29、44 吐出側切り込み
30、45 第2支点部
46 切り込み
51 キャップ部
R 最遠点
P 回転軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる配管を接続する接続部と、前記接続部の端面に開口された流路孔と、前記接続部の端面に立設したスタッドボルトと、を備えた圧縮機に用いられ、
弾性変形可能な材料により形成され、
前記流路孔を塞ぐキャップ部と、
把持可能とする把持部と、
前記キャップ部と前記把持部とを一体的に連結する連結部とを備え、
前記連結部は前記スタッドボルトに挿通可能なボルト挿通部を有するシールキャップであって、
前記把持部は、前記ボルト挿通部よりも前記キャップ部側に形成され、
前記連結部は、前記ボルト挿通部の前記キャップ部側に、前記ボルト挿通部と連通し、前記シールキャップを前記接続部から引き抜く時の前記キャップ部と前記スタッドボルトとの接触により前記キャップ部の折り曲げ変形を可能とする切り込みを備えることを特徴とするシールキャップ。
【請求項2】
前記切り込みにおいて、前記ボルト挿通部と連通した位置から、前記ボルト挿通部より前記キャップ部側で前記ボルト挿通部から最も離れた位置までの2点間の直線距離が、前記端面から前記スタッドボルトの先端までの長さより長く設定されていることを特徴とする請求項1記載のシールキャップ。
【請求項3】
前記圧縮機は、前記端面に形成された第2の流路孔を備え、
前記スタッドボルトは、前記流路孔と前記第2の流路孔との間に立設され、
前記第2の流路孔を塞ぐ第2のキャップ部が前記連結部を介して一体的に連結されていることを特徴とする請求項1又は2記載のシールキャップ。
【請求項4】
前記連結部は、前記ボルト挿通部の前記第2のキャップ部側に第2の切り込みを備え、
前記第2の切り込みは前記切り込みと連通することを特徴とする請求項3記載のシールキャップ
【請求項5】
前記切り込みは、前記連結部の外周縁から前記ボルト挿通部まで形成されていることを特徴とする請求項1記載のシールキャップ。
【請求項6】
前記連結部の前記ボルト挿通部に対応する位置には、前記スタッドボルトの外周面を覆うボルト保護部が備えられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のシールキャップ。
【請求項7】
前記ボルト保護部は前記キャップ部側の面に該ボルト保護部の先端から基部にかけて切り込みを有することを特徴とする請求項6記載のシールキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−67648(P2012−67648A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212007(P2010−212007)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】