説明

シールパッキン

【課題】クリップに組み付けやすく、しかも組み付けた後は外れにくく、また搬送中などに押し潰されることも防止できるシールパッキンを提供する。
【解決手段】クリップが取り付けられるパネルと、このクリップのベース部との間に介在させて取付け孔の周囲をシールするためのシールパッキンであって、パッキン本体30は、その中心孔32にクリップの係止脚を挿通させることで、該クリップのベース部に隣接した状態で組み付けられるとともに、パッキン本体の形状を保持するのに必要な剛性を有する基材34の両面に、パネルおよびクリップのベース部に接触してシール機能を果たすのに必要な柔軟性を有するシール材36が基材34と一体に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として車両におけるドアのインナーパネルにトリムボードを取り付ける場合などに用いられるクリップと組み合わせて使用するシールパッキンに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のパッキンは、例えば特許文献1に開示された技術が既に知られている。この技術では、パッキンがシール性を有する柔軟な素材(ゴムもしくはエラストマー)で成形されている。このパッキンの中心孔にクリップの係止脚を挿通させることで、クリップにパッキンが組み付けられる。そして、クリップの係止脚をパネルの取付け孔に差し込むと、パッキンがパネルとクリップのベース部との間に挟み込まれ、取付け孔の周囲がシールされる。
【特許文献1】特開2000−193090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1のパッキンは、柔軟な素材で成形されていることから、必要なシール性を確保できる反面、その形状を保持する性能が低く、形状の安定性に欠ける。このため、パッキンをクリップに組み付ける作業に手間がかかり、かつ、組み付けられたパッキンがクリップから外れやすい。また、搬送中などにパッキンが押し潰されて変形しやすく、シール性が低下する原因となる。
【0004】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、クリップに組み付けやすく、しかも組み付けた後は外れにくく、また搬送中などに押し潰されることも防止できるシールパッキンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
第1の発明は、パネルの取付け孔にクリップの係止脚を差し込むことで、このクリップをパネルに取り付けるとき、このパネルとクリップのベース部との間に介在させて取付け孔の周囲をシールするためのシールパッキンであって、パッキン本体は、その中心孔にクリップの係止脚を挿通させることで、該クリップのベース部に隣接した状態で組み付けられるとともに、パッキン本体の形状を保持するのに必要な剛性を有する基材の両面に、パネルおよびクリップのベース部に接触してシール機能を果たすのに必要な柔軟性を有するシール材が基材と一体に設けられている。
【0006】
この構成にあっては、パッキン本体がその基材によって本来の形状に保持されていることから、パッキン本体をクリップに組み付けるときの取り扱いが容易で、しかもクリップに一旦組み付けられたパッキン本体が外れにくい、という利点がある。また、搬送中などにパッキン本体が押し潰されてシール材が変形することも防止できる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、パッキン本体における中心孔の内周では、基材をシール材から露出させている。
これにより、パッキン本体の中心孔にクリップの係止脚を挿通させて該パッキン本体をクリップに組み付けるとき、基材とクリップとの接触によって滑りがよく、作業性が向上する。
【0008】
第3の発明は、第1の発明において、基材の両面に設けられているシール材が、少なくともパッキン本体の中心孔に位置する壁によって互いに連続している。
この場合、パッキン本体の中心孔に位置するシール材の壁により、基材とシール材との結合状態が安定するとともに、パッキン本体とその中心孔に挿通させたクリップの係止脚との間のシール機能が高められる。
【0009】
第4の発明は、第1、2又は3の発明において、基材とシール材とが多色成形によって一体化されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて説明する。
まず、本発明における実施の形態1を図1〜図4によって説明する。
クリップ10の使用例を表した図1および図2において、クリップ10は合成樹脂による一体成形品であって、その基部側において板状のベース部12が設けられている。このベース部12の一方側(図面の上側)に係止脚14が位置し、他方側(図面の下側)に取付け部16が位置している。このクリップ10は、それを複数個用いて車両用ドアのドアインナパネルなどのパネル20に、その装着部材であるトリムボード24を装着することができる。
【0011】
クリップ10の係止脚14はパネル20の取付け孔22に挿入可能であり、合成樹脂の弾性によって係止脚14の軸心方向へ撓むことができる複数個の係止片14aを備えている。各係止片14aには、ベース部12の近くにおいて係止肩14bがそれぞれ設けられている。これらの係止肩14bは、取付け孔22に対する係止脚14の挿入が完了したときに、該取付け孔22の周縁に係止可能である。なお、各係止片14aの係止肩14bとベース部12との間は、くびれ形状の嵌合部14cになっている。この嵌合部14cは、取付け孔22に係止脚14の挿入が完了したときに、該取付け孔22内に位置する部分である。
【0012】
クリップ10の取付け部16は、図1および図2で示すようにトリムボード24の座部26に結合するための部分である。この取付け部16は、ベース部12と対向する鍔16aが径の小さい頸部16bを挟んで位置している。そこで、このベース部12と鍔16aとが座部26の上下面に位置するように、頸部16bを座部26の取付け溝28押し入れる。これによって取付け部16が座部26に結合され、結果としてクリップ10がトリムボード24に取り付けられる。
【0013】
クリップ10には、そのベース部12とパネル20との間に介在させて取付け孔22の周囲をシールするためのパッキン本体30が組み付けられている。このパッキン本体30はリング形状をしており、その中心孔32にクリップ10の係止脚14を相対的に挿入することによってクリップ10に組み付けられている。そして、クリップ10に組み付けられたパッキン本体30は、ベース部12で受け止められ、係止脚14の嵌合部14c外周に位置している。
ここで、パッキン本体30について、より詳しく説明すると、パッキン本体30を外観斜視図で表した図3およびパッキン本体30を断面図で表した図4で明らかなように、パッキン本体30は、基材34の上下両面にシール材36(シール材36A,36B)が一体に接合された構成になっている。なお、以降の説明において、基材34の両面に位置するシール材36(シール材36A,36B)を区別する必要がある場合にのみ「シール材36A,36B」と称し、それ以外の場合は「シール材36」として総称する。
【0014】
基材34は、ポリプロピレンなどの硬質樹脂によってリング形状に成形されている。つまり、基材34はパッキン本体30の本来の形状を保持するのに必要な剛性を有する。基材34の内周部34aおよび外周部34bは、共にシール材36から露出している。したがって、基材34の内周部34aはパッキン本体30の中心孔32となっている。
シール材36はエラストマーなどの軟質樹脂を用い、基材34と共に多色成形によって相互に一体化されている。このシール材36は、パッキン本体30に要求されるシール機能を果たすのに必要な柔軟性を有する。
【0015】
また、基材34の両面に位置する個々のシール材36A,36Bには、それぞれの内外周の二箇所において周方向に連続するリップ37,38が成形されている。両シール材36A,36Bにおける内外周のリップ37,38は、それぞれ同心円上に位置している。ただし、両シール材36A,36Bにおける内周側のリップ37は、その先端縁がパッキン本体30の中心方向へ向くように傾斜し、外周側のリップ38は、その先端縁が逆に外方向へ向くように傾斜している。これらのリップ37,38の形状は、パッキン本体30のシール機能を高めるための手段である。
【0016】
パッキン本体30の使用にあたっては、その中心孔32にクリップ10の係止脚14を相対的に挿入することによってパッキン本体30をクリップ10に組み付ける(図1)。このとき、パッキン本体30の形状が基材34によって保持されているため、例えばエラストマーなどの軟質樹脂だけで成形されたパッキンと比べて組み付け作業が容易である。また、パッキン本体30における基材34の内周部34aと係止脚14の表面とは、硬質樹脂同士の接触であることから、相互間の滑りがよく、これによっても作業性が向上する。そして、係止脚14の嵌合部14c外周に組み付けられたパッキン本体30は、基材34による形状の保持機能によってクリップ10から簡単には外れない。
【0017】
つぎに、前述のようにトリムボード24の座部26に取り付けられているクリップ10の係止脚14をパネル20の取付け孔22に差し込む。これにより、係止脚14の各係止片14aが軸心方向へ撓みながら取付け孔22を通過し、係止脚14の挿入が完了したときに各係止片14aの係止肩14bが取付け孔22の周縁に係止する。したがって、クリップ10がパネル20に取り付けられ、このクリップ10を通じてトリムボード24がパネル20に装着される(図2)。
このようにクリップ10がパネル20に取り付けられた状態では、図2で示すようにパッキン本体30がクリップ10のベース部12とパネル20との間に挟み込まれている。したがって、パッキン本体30における基材34の上面に位置するシール材36Aはパネル20に押し付けられ、基材34の下面に位置する36Bはクリップ10のベース部12に押し付けられている。これにより、両シール材36A,36Bにおける内外周のリップ37,38が共に弾性変形してパネル20およびベース部12に密着し、取付け孔22の周囲のシール機能が確保される。
【0018】
つづいて、本発明における実施の形態2〜4を図5〜図7によって説明する。
実施の形態2におけるパッキン本体30を断面図で表した図5においては、基材34の両面に位置する個々のシール材36A,36Bが、パッキン本体30の中心孔32側の壁40によって互いに連続している。この壁40により、基材34に対するシール材36の結合(一体化)状態が安定するとともに、パッキン本体30とクリップ10の係止脚14における嵌合部14cとの間のシール機能が高められる。
【0019】
実施の形態3におけるパッキン本体30を断面図で表した図6においては、基材34の両面に位置する個々のシール材36A,36Bが、実施の形態2とは逆にパッキン本体30の外周側の壁42によって互いに連続している。この場合は、クリップ10にパッキン本体30を組み付ける際の係止脚14の表面と基材34の内周部34aとの滑りの良さは維持したままで、基材34に対するシール材36の結合(一体化)状態が安定する。
実施の形態4におけるパッキン本体30を断面図で表した図7で示すように、実施の形態2,3を組み合わせた構成にすることもできる。すなわち、基材34がシール材36によって包み込まれた状態になるので、相互の結合(一体化)状態がより安定するとともに、パッキン本体30と係止脚14の嵌合部14cとの間のシール機能が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】クリップをパネルに取り付ける前の状態を表した正面図。
【図2】クリップをパネルに取り付けた後の状態を表した正面図。
【図3】パッキンを表した外観斜視図。
【図4】パッキンの左半分を表した断面図。
【図5】実施の形態2におけるパッキンの左半分を表した断面図。
【図6】実施の形態3におけるパッキンの左半分を表した断面図。
【図7】実施の形態4におけるパッキンの左半分を表した断面図。
【符号の説明】
【0021】
10 クリップ
12 ベース部
14 係止脚
20 パネル
22 取付け孔
30 パッキン本体
32 中心孔
34 基材
36 シール材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルの取付け孔にクリップの係止脚を差し込むことで、このクリップをパネルに取り付けるとき、このパネルとクリップのベース部との間に介在させて取付け孔の周囲をシールするためのシールパッキンであって、
パッキン本体は、その中心孔にクリップの係止脚を挿通させることで、該クリップのベース部に隣接した状態で組み付けられるとともに、パッキン本体の形状を保持するのに必要な剛性を有する基材の両面に、パネルおよびクリップのベース部に接触してシール機能を果たすのに必要な柔軟性を有するシール材が基材と一体に設けられているシールパッキン。
【請求項2】
請求項1に記載されたシールパッキンであって、
パッキン本体における中心孔の内周では、基材をシール材から露出させているシールパッキン。
【請求項3】
請求項1に記載されたシールパッキンであって、
基材の両面に設けられているシール材が、少なくともパッキン本体の中心孔に位置する壁によって互いに連続しているシールパッキン。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載されたシールパッキンであって、
基材とシール材とが多色成形によって一体化されているシールパッキン。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−144765(P2009−144765A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320657(P2007−320657)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000208293)大和化成工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】