説明

シール構造体の製造方法

【課題】携帯電話、ゲーム機、ノート型パソコンなどの電子機器に適用されるシール構造体において、防水性を高める。
【解決手段】ガスケット3とチューブ2とを有するシール構造体1を製造する際に、棒状の中子9を準備し、この中子9を金型にインサートする。次に、この金型のキャビティ内に溶融樹脂を注入して固化させることにより、ガスケット3を成形するとともに、中子9の周囲にチューブ2を成形する。その後、チューブ2から中子9を抜き取る。これにより、チューブ2とガスケット3とが一体成形され、両者の隙間から浸水する事態を回避し、シール構造体1の防水性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、ゲーム機、ノート型パソコンなどの電子機器に適用するに好適なシール構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電子機器としては、2つの筐体がヒンジを介して折り畳み自在に連結された折り畳み式のものが広く普及している。この折り畳み式の電子機器では、2つの筐体間で回路を接続するため、ヒンジにケーブルを配設する必要がある。そして、このような折り畳み式の電子機器においても、近年、防水性に対する要求が強くなってきている。
【0003】
従来、こうした要求に応えるべく、ケーブルが挿入されるチューブを押出成形で形成した後、このチューブにガスケットを取り付けてシール構造体を製造し、このシール構造体を折り畳み式の電子機器に組み込む技術(以下、公知技術1という。)が提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−252059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、公知技術1では、チューブとガスケットがそれぞれ別個に製造された部材であるため、両者の隙間から浸水してシール構造体の防水性が低下しないように工夫を凝らす必要があるという課題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、特別な工夫を凝らすことなく防水性を高めることが可能なシール構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ガスケットとチューブとを有するシール構造体の製造方法であって、棒状の中子を準備する中子準備工程と、前記中子を金型にインサートする中子インサート工程と、前記金型のキャビティ内に溶融樹脂を注入して固化させることにより、前記ガスケットを成形するとともに、前記中子の周囲に前記チューブを成形するチューブ成形工程と、前記チューブから前記中子を抜き取る中子抜き工程とが含まれるシール構造体の製造方法としたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記チューブに挿入されるケーブルを保護する管体を当該チューブ内に設けることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の構成に加え、前記中子準備工程において、表面がテーパ状の中子を準備することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の構成に加え、前記中子準備工程において、表面がスプライン状の中子を準備することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の構成に加え、前記中子準備工程において、表面にはっ水加工が施された中子を準備することを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の構成に加え、前記はっ水加工は、前記中子の表面にフッ素樹脂を塗布する加工であることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の構成に加え、前記中子インサート工程において、前記金型に補強フィルムをインサートすることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の構成に加え、前記中子抜き工程において、前記チューブと前記中子との間に潤滑剤を供給することを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の構成に加え、前記潤滑剤は、アルコール、アセトン、トルエンまたはシリコーンオイルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、インサート成形により、ガスケットとチューブとが一体成形されたシール構造体を得ることができるため、ガスケットとチューブとの隙間から浸水する事態を回避し、シール構造体の防水性を高めることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、チューブ内に挿入されるケーブルの損傷を管体で防ぐことができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、中子の表面およびチューブの内周面がテーパ状であるため、中子をチューブから容易かつ迅速に抜き取ることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、中子の表面およびチューブの内周面がスプライン状であるため、中子をチューブから容易かつ迅速に抜き取ることができる。
【0020】
請求項5、6に記載の発明によれば、中子のはっ水加工(フッ素樹脂を塗布する加工など)により、中子とチューブとの離型性が向上するため、中子をチューブから容易かつ迅速に抜き取ることができる。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、補強フィルムでガスケットの形状が保持されるため、シール構造体のハンドリング性を向上させることができる。
【0022】
請求項8、9に記載の発明によれば、潤滑剤(アルコール、アセトン、トルエンまたはシリコーンオイルなど)の作用により、チューブに対する中子の滑りが良好となるため、中子をチューブから容易かつ迅速に抜き取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1に係るシール構造体を示す平面図である。
【図2】同実施の形態1に係るシール構造体の製造方法を示す工程図であって、(a)はチューブ成形工程図、(b)はバリ取り工程図、(c)は中子抜き工程図、(d)は金属管挿入工程図、(e)は内側カット工程図、(f)は保護シート梱包工程図である。
【図3】同実施の形態1に係る中子を示す図であって、(a)はその正面図、(b)はその平面図、(c)はその底面図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る中子を示す図であって、(a)はその正面図、(b)はその平面図である。
【図5】同実施の形態2に係るチューブの斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係るシール構造体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態1]
【0025】
図1乃至図3には、本発明の実施の形態1を示す。この実施の形態1では、表面がテーパ状の丸棒状の中子9を用いて、内周面がテーパ状のチューブ2を成形する場合について説明する。
【0026】
まず、シール構造体1の構成を説明する。
【0027】
シール構造体1は、図1に示すように、選択接着性シリコーンゴムからなる円筒状のチューブ2を有しており、チューブ2の一端には、選択接着性シリコーンゴムからなる枠状のガスケット3が一体成形されている。チューブ2内には、ガスケット3との結合部に円筒状の金属管5が装着されている。また、ガスケット3の枠内にはポリカーボネート樹脂製の補強フィルム6が、ガスケット3の形状を保持するようにガスケット3と一体成形されている。補強フィルム6には、ガスケット組付用の位置決め孔7が2つ形成されている。
【0028】
なお、選択接着性シリコーンゴムは、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂とは強固に接着するが、金属成形金型とは接着しないという選択的な接着特性を有する。この選択接着シリコーンゴムの具体例としては、信越化学工業(株)製の液状シリコーンゴムKE−2090−40、KE−2090−50、KE−2090−60、X−34−1625、X−30−3511Uなどを挙げることができる。
【0029】
ここで、チューブ2およびガスケット3の素材としては、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、二トリルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴムなどの熱硬化性エラストマーや、スチレン系、エステル系、ウレタン系の熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。但し、日常的に使用される電子機器の防水を目的とするシール構造体1としては、温度変化によるゴム物性の変化が小さく、圧縮永久歪特性や成形性等に優れることが望まれるため、このような観点からは、チューブ2およびガスケット3の素材としてシリコーンゴムを採用することが好ましい。
【0030】
また、チューブ2およびガスケット3のゴム硬度としては、JIS K6253のショアAで、20度以上60度以下であることが好ましく、30度以上50度以下であることが更に好ましい。このゴム硬度が70度以上になると、チューブ2が硬くなって容易に変形しないため、後述するように、シール構造体1を折り畳み式の携帯電話に組み込んでチューブ2をヒンジに配設したときに、ハウジング内でチューブ2が自由に動作し難くなる恐れがある。また、このゴム硬度が70度以上になると、ガスケット3の反発弾性が大きくなるため、後述するように、シール構造体1を携帯電話に組み込んでガスケット3を筐体に取り付けたときに、ハウジングが完全に密閉できなかったり変形しやすくなったりするため、ガスケット3によるシール性が劣る場合がある。一方、このゴム硬度が硬度が20度未満の場合、粘着性が増して異物が付着しやすくなることや、強度不足が生じることから、チューブ2およびガスケット3の取り扱いに注意しなければならなくなる。
【0031】
また、チューブ2の厚さは、0.15mm以上0.6mm未満が好ましい。チューブ2の厚さが0.15mm未満では、チューブ2の成形性に劣るばかりか、後述するように、チューブ2内にケーブル4を挿入するときに、その挿入に困難を伴う。逆に、チューブ2の厚さが0.6mm以上では、チューブ2が硬くなって自在に変形し難くなる。一方、チューブ2とガスケット3との接合部の厚さは、携帯電話の薄型化に対応すべく、0.25mm以下にすることも可能である。これは、チューブ2とガスケット3とは同一素材で一体成形されているため、厚さ0.25mm以下でも所定の強度を保つことができるためである。
【0032】
また、補強フィルム6の素材としては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、PMMA等のアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂などを挙げることができる。但し、フィルム成形性、強度、易接着性、コスト等を考慮すると、特にポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0033】
また、補強フィルム6の厚さは、0.1mm以上0.5mm以下が好ましい。補強フィルム6の厚さが0.1mm未満では、ガスケット3の形状を保持する補強効果が薄れ、シール構造体1のハンドリング性(取り扱い性)が低下してしまう。逆に、補強フィルム6の厚さが0.5mmを超えると、補強フィルム6の剛性が増大するため、ガスケット3によるシール性が低下する恐れがある。
【0034】
以上のような構成を有するシール構造体1の製造方法について、以下に説明する。
【0035】
まず、中子準備工程で、丸棒状(円柱状)の金属製の中子9を準備する。この中子9は、図3に示すように、その表面がテーパ状に加工されており、大径端部9aから小径端部9bに至るまで一定の比率で直径が縮小している。
【0036】
次に、補強フィルム準備工程に移行し、ポリカーボネート樹脂製の補強フィルム6を準備する。この補強フィルム6には、図2(a)に示すように、ガスケット組付用の位置決め孔7の他に、予め成形用の位置決め孔8Aが2つ形成されている。したがって、これらの位置決め孔8Aを利用して、後述する補強フィルム6のインサート作業を高精度に素早く実行することができる。また、補強フィルム6には、予め内側カット用の位置決め孔8Bが2つ形成されている。
【0037】
次いで、中子インサート工程に移行し、中子9および補強フィルム6を金型(図示せず)にインサートする。
【0038】
その後、チューブ成形工程に移行し、図2(a)に示すように、インサート成形により、チューブ2およびガスケット3を一体成形する。それには、中子9および補強フィルム6が金型にインサートされた状態で、この金型のキャビティ内に液状の選択接着性シリコーンゴムを注入して固化させることにより、インサート成形を行った後、金型から離型する。
【0039】
このようなインサート成形を行うと、中子9の周囲にチューブ2が形成されるが、このチューブ2の内周面は、中子9の表面形状(テーパ状)に対応した形でテーパ状になる。
【0040】
また、選択接着性シリコーンゴムを用いるため、補強フィルム6に接着する一方で、金型や中子9には接着しないという選択特性を発揮する。その結果、インサート作業を短時間で行うことができるとともに、金型からの離型作業や、後述する中子9の抜き取り作業を容易に行うことができる。
【0041】
次に、バリ取り工程に移行し、図2(b)に示すように、このインサート成形で生じたバリ10を取り去る。
【0042】
次いで、中子抜き工程に移行し、図2(c)に示すように、チューブ2から中子9を抜き取る。それには、チューブ2の一方の端部(中子9の大径端部9aに対応した端部)をめくり、チューブ2の内周面と中子9の表面との間にアルコールを潤滑剤として供給した後、中子9の大径端部9aを把持してチューブ2から引く抜く。
【0043】
ここで用いるアルコールとしては、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノールなど各種のアルコールを挙げることができる。但し、メタノールは、揮発性が高すぎるため、チューブ2から中子9を抜き取るときの作業性に劣る。また、イソプロパノールは、作業者の安全性があまり高くない。さらに、ブタノールは、揮発性が低いため、チューブ2から中子9を抜き取った後、加熱乾燥または長時間の放置が必要となる。したがって、作業者の安全性および適度な揮発性の有無を考慮して、エタノールを使用するのが最も好ましい。
【0044】
このとき、中子9の表面およびチューブ2の内周面がテーパ状になっているため、中子9がチューブ2から引く抜かれていくに伴い、中子9とチューブ2との隙間が増大し、両者間の摩擦抵抗が減少する。そのため、中子9をチューブ2から容易かつ迅速に抜き取ることができる。しかも、中子9とチューブ2との界面にアルコールが介在しているので、チューブ2に対する中子9の滑りが良好となり、中子9をチューブ2から容易かつ迅速に抜き取ることができる。これらの結果、中子抜き工程の所要時間、ひいてはシール構造体1の製造に要する時間を短縮し、シール構造体1の生産性を向上させることができる。
【0045】
次に、金属管挿入工程に移行し、図2(d)に示すように、チューブ2内に金属管5を挿入し、ガスケット3との結合部に位置決めする。
【0046】
このとき、金属管5の外周面またはチューブ2の内周面にアルコールを潤滑剤として塗布する。すると、チューブ2に対する金属管5の滑りが良好となるため、チューブ2内に金属管5を容易かつ迅速に挿入することができる。
【0047】
ここで用いるアルコールとしては、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノールなど各種のアルコールを挙げることができる。但し、メタノールは、揮発性が高すぎるため、チューブ2内に金属管5を挿入するときの作業性に劣る。また、イソプロパノールは、作業者の安全性があまり高くない。さらに、ブタノールは、揮発性が低いため、チューブ2内に金属管5を挿入した後、加熱乾燥または長時間の放置が必要となる。したがって、作業者の安全性および適度な揮発性の有無を考慮して、エタノールを使用するのが最も好ましい。
【0048】
次いで、内側カット工程に移行し、図2(e)に示すように、ガスケット3の内側にある補強フィルム6の大部分を切り取る。但し、2つのガスケット組付用の位置決め孔7を含む補強フィルム6部分がガスケット3に残るようにする。
【0049】
このとき、2つの内側カット用の位置決め孔8Bを裁断用金型の位置決め部として利用して補強フィルム6を切り取ることにより、補強フィルム6の切取作業を迅速に行うことができる。
【0050】
最後に、ガスケット3の表面に塵埃が静電気で付着するのを防ぐため、保護シート梱包工程に移行し、図2(f)に示すように、ガスケット3および補強フィルム6を保護シート12で梱包する。
【0051】
ここで、シール構造体1の製造が終了する。
【0052】
なお、このシール構造体1を折り畳み式の携帯電話(図示せず)に組み込む際には、この携帯電話の一方の筐体にガスケット3を取り付けて、この筐体を構成する一対のハウジング間をシールするとともに、この携帯電話のヒンジにチューブ2を配設する。そして、2つの筐体間で回路を接続するため、チューブ2内にケーブル4を挿入する。
【0053】
このとき、チューブ2の内周面は、上述したとおり、テーパ状になっているので、チューブ2の大径側の端部からケーブル4を挿入することにより、ケーブル4の挿入動作を容易に実行することができる。
【0054】
このようにしてシール構造体1が組み込まれた携帯電話においては、チューブ2とガスケット3とが一体成形されているので、両者の隙間から浸水する事態を回避し、シール構造体1の防水性を高めることができる。その結果、携帯電話の一方の筐体において、その防水性が向上する。
【0055】
また、チューブ2内には、ガスケット3との結合部、つまり一方の筐体を構成する一対のハウジングで挟み込まれる部位に、剛体である金属管5が設けられている。そのため、携帯電話の一方の筐体にガスケット3を取り付けるときに、この筐体を構成する一対のハウジングからチューブ2に対して、その求心方向(つまり、金属管5側)に加力されても、金属管5がその剛性によって形状を保持する。その結果、チューブ2がハウジングと金属管5とに挟まれて圧縮変形するため、シール構造体1の防水性がますます向上する。これに加えて、金属管5の内部空間がそのまま確保されるので、チューブ2内に挿入されるケーブル4が一対のハウジングの嵌合時に損傷を受ける事態を未然に防ぐことができる。
【0056】
また、ガスケット3には補強フィルム6が設けられているため、枠状のガスケット3の形状を保持することができる。その結果、シール構造体1を携帯電話に組み込む際に、シール構造体1のハンドリング性を向上させ、ひいては所要時間を短縮することができる。
【0057】
また、補強フィルム6にはガスケット組付用の位置決め孔7が2つ形成されているので、シール構造体1を携帯電話に組み込む際に、これらの位置決め孔7を利用してガスケット3の取付作業を高精度に素早く実行することができる。
[発明の実施の形態2]
【0058】
図4および図5には、本発明の実施の形態2を示す。この実施の形態2では、表面がスプライン状の丸棒状の中子9を用いて、内周面がスプライン状のチューブ2を成形する。
【0059】
すなわち、この実施の形態2に係るシール構造体1では、その製造方法における中子準備工程において、表面がテーパ状の中子9に代えて、図4に示すように、表面がスプライン状の中子9を準備する。そのため、中子9の周囲に形成されるチューブ2は、図5に示すように、外周面2aが円形断面であり、かつ内周面2bが歯車形断面である円筒状になる。その他の点(シール構造体1の構成および製造方法)については、上述した実施の形態1と同様である。
【0060】
したがって、この実施の形態2では、上述した実施の形態1と同じ作用効果を奏する。なお、チューブ成形工程において、チューブ2の内周面は、中子9の表面形状(スプライン状)に対応した形でスプライン状になる。したがって、チューブ2内にケーブル4を挿入するとき、ケーブル4とチューブ2の内周面とが接する面積が減少し、ケーブル4がチューブ2から受ける抵抗力が低減するため、ケーブル4の挿入動作を容易に実行することができる。
【0061】
これに加えて、シール構造体1の製造方法における中子抜き工程において、中子9の表面に形成された多数の縦溝をアルコール(潤滑剤)の誘導溝として利用することができる。したがって、チューブ2の内周面と中子9の表面との間にアルコールを供給したときに、このアルコールがすぐに中子9の軸心方向(長さ方向)に流れて中子9とチューブ2との界面全体に行き渡るため、中子9の抜き取り動作がますます容易かつ迅速となる。
[発明の実施の形態3]
【0062】
図6には、本発明の実施の形態3を示す。この実施の形態3では、折り畳み式の携帯電話の2つの筐体に対応して、チューブ2の両端に2つのガスケット3A、3Bが一体成形され、これらのガスケット3A、3Bがチューブ2について略線対称となるように構成されている。
【0063】
すなわち、この実施の形態3に係るシール構造体1は、図6に示すように、選択接着性シリコーンゴムからなる円筒状のチューブ2を有しており、チューブ2の一端には、選択接着性シリコーンゴムからなる枠状の第1のガスケット3Aが一体成形されている。チューブ2内には、第1のガスケット3Aとの結合部に円筒状の第1の金属管5Aが装着されている。また、第1のガスケット3Aの枠内にはポリカーボネート樹脂製の第1の補強フィルム6Aが、第1のガスケット3Aの形状を保持するように第1のガスケット3Aと一体成形されている。第1の補強フィルム6Aには、ガスケット組付用の第1の位置決め孔7Aが2つ形成されている。
【0064】
また、チューブ2の他端には、選択接着性シリコーンゴムからなる枠状の第2のガスケット3Bが一体成形されている。チューブ2内には、第2のガスケット3Bとの結合部に円筒状の第2の金属管5Bが装着されている。また、第2のガスケット3Bの枠内にはポリカーボネート樹脂製の第2の補強フィルム6Bが、第2のガスケット3Bの形状を保持するように第2のガスケット3Bと一体成形されている。第2の補強フィルム6Bには、ガスケット組付用の第2の位置決め孔7Bが2つ形成されている。
【0065】
次に、このシール構造体1の製造方法について説明する。
【0066】
まず、中子準備工程で、上述した実施の形態1、2と同様の手順により、表面がテーパ状またはスプライン状に加工された丸棒状の金属製の中子9を準備する。
【0067】
次に、補強フィルム準備工程に移行し、上述した実施の形態1と同様の手順により、ポリカーボネート樹脂製の第1および第2の補強フィルム6A、6Bを準備する。
【0068】
次いで、中子インサート工程に移行し、上述した実施の形態1と同様の手順により、中子9および第1および第2の補強フィルム6A、6Bを金型(図示せず)にインサートする。
【0069】
その後、チューブ成形工程に移行し、上述した実施の形態1と同様の手順で、インサート成形により、チューブ2および第1および第2のガスケット3A、3Bを一体成形する。このとき、チューブ2の内周面は、中子9の表面形状(テーパ状またはスプライン状)に対応した形でテーパ状またはスプライン状になる。
【0070】
次に、バリ取り工程に移行し、上述した実施の形態1と同様の手順により、このインサート成形で生じたバリを取り去る。
【0071】
次いで、中子抜き工程に移行し、上述した実施の形態1と同様の手順により、チューブ2から中子9を抜き取る。このとき、中子9の表面およびチューブ2の内周面がテーパ状またはスプライン状になっているため、上述した実施の形態1または2と同様、中子9をチューブ2から容易かつ迅速に抜き取ることができる。しかも、中子9とチューブ2との界面にアルコールが介在しているので、上述した実施の形態1と同様、中子9をチューブ2から容易かつ迅速に抜き取ることができる。これらの結果、中子抜き工程の所要時間、ひいてはシール構造体1の製造に要する時間を短縮し、シール構造体1の生産性を向上させることができる。
【0072】
次に、金属管挿入工程に移行し、上述した実施の形態1と同様の手順により、チューブ2内に第1および第2の金属管5A、5Bを挿入し、それぞれ第1および第2のガスケット3A、3Bとの結合部に位置決めする。すると、上述した実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0073】
次いで、内側カット工程に移行し、上述した実施の形態1と同様の手順により、第1および第2のガスケット3A、3Bの内側にある第1および第2の補強フィルム6A、6Bの大部分を切り取る。
【0074】
最後に、第1および第2のガスケット3A、3Bの表面に塵埃が静電気で付着するのを防ぐため、保護シート梱包工程に移行し、上述した実施の形態1と同様の手順により、第1および第2のガスケット3A、3Bおよび第1および第2の補強フィルム6A、6Bをそれぞれ保護シートで梱包する。
【0075】
ここで、シール構造体1の製造が終了する。
【0076】
そして、このシール構造体1を折り畳み式の携帯電話(図示せず)に組み込む際には、この携帯電話の一方の筐体に第1のガスケット3Aを取り付けて、この筐体を構成する一対のハウジング間をシールするとともに、この携帯電話の他方の筐体に第2のガスケット3Bを取り付けて、この筐体を構成する一対のハウジング間をシールし、この携帯電話のヒンジにチューブ2を配設する。そして、2つの筐体間で回路を接続するため、チューブ2内にケーブル4を挿入する。
【0077】
このとき、チューブ2の内周面は、上述したとおり、テーパ状またはスプライン状になっているので、上述した実施の形態1または2と同様、ケーブル4の挿入動作を容易に実行することができる。
【0078】
このようにしてシール構造体1が組み込まれた携帯電話においては、チューブ2と2つのガスケット3A、3Bとが一体成形されているので、両者の隙間から浸水する事態を回避し、シール構造体1の防水性を高めることができる。その結果、携帯電話の両方の筐体において、その防水性が向上する。
【0079】
また、チューブ2内には、第1のガスケット3Aとの結合部、つまり一方の筐体を構成する一対のハウジングで挟み込まれる部位に、剛体である第1の金属管5Aが設けられている。そのため、携帯電話の一方の筐体に第1のガスケット3Aを取り付けるときに、この筐体を構成する一対のハウジングからチューブ2に対して、その求心方向(つまり、第1の金属管5A側)に加力されても、第1の金属管5Aがその剛性によって形状を保持する。その結果、チューブ2がハウジングと第1の金属管5Aとに挟まれて圧縮変形するため、シール構造体1の防水性がますます向上する。これに加えて、第1の金属管5Aの内部空間がそのまま確保されるので、チューブ2内に挿入されるケーブル4が一対のハウジングの嵌合時に損傷を受ける事態を未然に防ぐことができる。
【0080】
同様に、チューブ2内には、第2のガスケット3Bとの結合部、つまり他方の筐体を構成する一対のハウジングで挟み込まれる部位に、剛体である第2の金属管5Bが設けられている。そのため、携帯電話の他方の筐体に第2のガスケット3Bを取り付けるときに、この筐体を構成する一対のハウジングからチューブ2に対して、その求心方向(つまり、第2の金属管5B側)に加力されても、第2の金属管5Bがその剛性によって形状を保持する。その結果、チューブ2がハウジングと第2の金属管5Bとに挟まれて圧縮変形するため、シール構造体1の防水性がますます向上する。これに加えて、第2の金属管5Bの内部空間がそのまま確保されるので、チューブ2内に挿入されるケーブル4が一対のハウジングの嵌合時に損傷を受ける事態を未然に防ぐことができる。
【0081】
また、2つのガスケット3A、3Bにはそれぞれ補強フィルム6A、6Bが設けられているため、枠状のガスケット3A、3Bの形状を保持することができる。その結果、シール構造体1を携帯電話に組み込む際に、シール構造体1のハンドリング性を向上させ、ひいては所要時間を短縮することができる。
【0082】
また、2つの補強フィルム6A、6Bにはそれぞれガスケット組付用の位置決め孔7A、7Bが2つずつ形成されているので、シール構造体1を携帯電話に組み込む際に、これらの位置決め孔7A、7Bを利用して2つのガスケット3A、3Bの取付作業を高精度に素早く実行することができる。
[発明のその他の実施の形態]
【0083】
なお、上述した実施の形態1では、シール構造体1の製造方法における成形工程において、表面がテーパ状の中子9を用いる場合について説明し、上述した実施の形態2では、シール構造体1の製造方法における成形工程において、表面がスプライン状の中子9を用いる場合について説明した。しかし、中子9の表面をテーパ付きのスプライン状にすることで、両方の相乗効果により、中子9の抜き取り動作を一段と容易かつ迅速に行うこともできる。
【0084】
また、上述した実施の形態1〜3では、中子9の抜き取り動作や金属管5の挿入動作を容易かつ迅速に行うべく、中子9の表面形状に工夫を凝らしたり、中子9や金属管5の表面とチューブ2の内周面との間にアルコールを供給したりする場合について説明したが、中子9や金属管5の表面に、はっ水加工を施すようにしても構わない。このはっ水加工の具体例としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂を中子9の表面に塗布する加工などを挙げることができる。この場合、はっ水加工により、中子9や金属管5とチューブ2との間に空気の層が介在して両者の離型性が向上するので、中子9の抜き取り動作や金属管5の挿入動作を容易かつ迅速に行うことができる。
【0085】
また、上述した実施の形態1〜3では、中子9または金属管5とチューブ2との滑りを良好にするための潤滑剤としてアルコールを用いる場合について説明したが、アルコール以外の潤滑剤(例えば、アセトン、トルエン、シリコーンオイルなど)を代用または併用することもできる。但し、アセトンやトルエン等の有機溶剤は、滑り性はあるものの、アルコールに比べてSP値(溶解度パラメータ)が低いため、チューブ2に塗布すると、やや膨潤してチューブ2の内径が小さくなることから、アルコールに比べて挿入性は劣る。これに加えて、アセトンは揮発性が非常に高いため、作業性に劣る場合がある。また、シリコーンオイルについては、一般には膨潤性があり、揮発性が小さいため、中子9の抜取りや金属管5の挿入は容易である。しかし、管の挿入性はです。ただし、チューブ2と金属管5との間のシリコーンオイルが排除されるためには、やや長時間の放置または加熱処理が必要となる。
【0086】
また、上述した実施の形態1〜3では、管体として金属管5、5A、5Bを用いる場合について説明したが、金属管5、5A、5B以外の管体(例えば、硬質樹脂管など)を代用または併用することもできる。
【0087】
また、上述した実施の形態1〜3では、チューブ成形工程において、金型のキャビティ内に注入する溶融樹脂として選択接着性シリコーンゴムを用いる場合について説明した。しかし、この溶融樹脂としては、選択接着性シリコーンゴムに限らず、各種の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂(例えば、紫外線硬化性樹脂など)を用いることができる。
【0088】
また、上述した実施の形態1〜3では、シール構造体1の生産性を向上させることを目的として、選択接着性シリコーンゴムを用いてシール構造体1を製造する場合について説明した。しかし、選択接着性のシリコーンゴムを用いる代わりに、補強フィルム6の所望の部分に予め印刷や塗装などによってプライマー処理を施すことにより、同様の目的を達することも可能である。
【0089】
さらに、上述した実施の形態1では、シール構造体1の製造方法における成形工程において、表面がテーパ状の中子9を用いる場合について説明したが、中子9の大径端部9aに同一外径の円柱部を設けてもよい。この場合、この中子9の円柱部の周囲に形成されるチューブ2部分も同一内径となるため、金属管挿入工程において、金属管5の脱離を防止することができる。或いはまた、中子9の小径端部9bに同一外径の円柱部を設けてもよい。この場合、中子インサート工程において、中子9の金型への位置決め安定性を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、折り畳み式またはスライド式の移動体端末(携帯電話、無線機、PDA(personal digital assistant)など)に限らず、電子手帳、ゲーム機、ノート型パソコン、ビデオカメラ、デジタルカメラその他の電子機器に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1……シール構造体
2……チューブ
2a……外周面
2b……内周面
3……ガスケット
3A……第1のガスケット(ガスケット)
3B……第2のガスケット(ガスケット)
4……ケーブル
5……金属管(管体)
5A……第1の金属管(管体)
5B……第2の金属管(管体)
6……補強フィルム
6A……第1の補強フィルム(補強フィルム)
6B……第2の補強フィルム(補強フィルム)
7……ガスケット組付用の位置決め孔
7A……ガスケット組付用の第1の位置決め孔
7B……ガスケット組付用の第2の位置決め孔
8A……成形用の位置決め孔
8B……内側カット用の位置決め孔
9……中子
9a……大径端部
9b……小径端部
10……バリ
12……保護シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスケットとチューブとを有するシール構造体の製造方法であって、
棒状の中子を準備する中子準備工程と、
前記中子を金型にインサートする中子インサート工程と、
前記金型のキャビティ内に溶融樹脂を注入して固化させることにより、前記ガスケットを成形するとともに、前記中子の周囲に前記チューブを成形するチューブ成形工程と、
前記チューブから前記中子を抜き取る中子抜き工程と
が含まれることを特徴とするシール構造体の製造方法。
【請求項2】
前記チューブに挿入されるケーブルを保護する管体を当該チューブ内に設けることを特徴とする請求項1に記載のシール構造体の製造方法。
【請求項3】
前記中子準備工程において、表面がテーパ状の中子を準備することを特徴とする請求項1または2に記載のシール構造体の製造方法。
【請求項4】
前記中子準備工程において、表面がスプライン状の中子を準備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシール構造体の製造方法。
【請求項5】
前記中子準備工程において、表面にはっ水加工が施された中子を準備することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のシール構造体の製造方法。
【請求項6】
前記はっ水加工は、前記中子の表面にフッ素樹脂を塗布する加工であることを特徴とする請求項5に記載のシール構造体の製造方法。
【請求項7】
前記中子インサート工程において、前記金型に補強フィルムをインサートすることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のシール構造体の製造方法。
【請求項8】
前記中子抜き工程において、前記チューブと前記中子との間に潤滑剤を供給することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のシール構造体の製造方法。
【請求項9】
前記潤滑剤は、アルコール、アセトン、トルエンまたはシリコーンオイルであることを特徴とする請求項8に記載のシール構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−35089(P2011−35089A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178636(P2009−178636)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】