説明

シール構造及びこれを備えた現像装置、画像形成装置

【課題】強固な磁気ブラシを形成することができ、回転部材軸部の箇所から壁部外側への、磁性を有する現像剤の漏洩を確実に防止することが可能なシール構造を提供する。
【解決手段】現像装置60は、ミキサー64と、これを回転可能にして保持する壁部61aとの間に設けられ、ミキサー64の磁性部91と、磁性部91に対向して壁部61aに設けた磁石部材92との間に発生する磁力線によって磁性を有する現像剤の磁気ブラシを形成し、ミキサー64の軸部64aの箇所から壁部61aの軸線方向外側への現像剤の漏洩を防止するシール構造90を備える。シール構造90は、磁性部91の、その磁石部材92に対する対向面の軸線方向に関する幅W1が、磁性部91に対する磁石部材92の対向面のその幅W2より狭い。これにより、磁性部91と磁石部材92との間で、磁力線をミキサー64の軸線方向に関して集中させ、密度を高めて形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタに代表される画像形成装置の現像装置やクリーニング装置などに適用可能な、磁性を有する現像剤(トナー)のシール構造に関する。また、このシール構造を備えた現像装置、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置においては、像担持体として感光体ドラムが広く用いられている。感光体ドラムを用いた一般的な画像形成動作は以下のようである。感光体ドラムの表面は帯電装置により所定電位で一様に帯電せしめられ、そこに露光装置のLED光等を照射することにより部分的に電位が光減衰して原稿画像の静電潜像が形成される。そして、この静電潜像を現像装置で現像することにより、感光体ドラム表面にトナー像が形成される。このトナー像は、感光体ドラムと転写部材とを接触、或いは近接させて構成した転写領域に用紙を挿通するとき、用紙に転写される。
【0003】
上記のような画像形成動作の主要部である現像装置においては、一般的に、静電潜像の現像方法として、回転部材である現像ローラの表面に現像剤を付着させ、この現像ローラ表面から感光体ドラム表面へと、静電気力により現像剤を移動させるという手法が採用されている。
【0004】
一方、トナー像を用紙に転写させた後には、微量の現像剤が用紙に転写されずに感光体ドラム表面に付着したまま残留してしまうことがある。この感光体ドラム表面に付着した残留現像剤は、次の新たな画像形成の障害となるので、そのクリーニングが必要となる。このような目的で用いられるクリーニング方法としては、感光体ドラム表面に回転部材であるクリーニングローラやクリーニングブラシなどを押し付けることにより、回転部材に残留現像剤を移動させて回収する方法や、感光体ドラム表面にクリーニングブレードを接触させて残留現像剤を掻き取る方法、或いはこれらの方法を組み合わせたクリーニング方法が広く知られている。
【0005】
ここで、画像形成装置内部の汚染防止や好適な画像品質の維持を目的として、現像装置やクリーニング装置において、現像剤が、現像ローラやクリーニングローラなどといった回転部材の軸受部から軸線方向外側に漏れないようにするために、回転部材の軸線方向端部の箇所にシール構造が設けられている。このようなシール構造を現像装置に用いた画像形成装置の一例を、特許文献1に見ることができる。特許文献1に記載された画像形成装置の現像装置では、攪拌搬送手段であるスクリューの回転軸端部から磁性を有する現像剤の漏洩を防止するため、回転軸端部の箇所に磁性体リングを、これに対応する容器側壁に磁石リングを設けることにより、磁気ブラシを利用した磁気シール機構を適用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−69691号公報(第4頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された画像形成装置の現像装置では、回転軸に設けた磁性体リングと、この回転軸を回転可能にして保持する容器側壁に設けた磁石リングとの間に磁力線を発生させ、磁性を有する現像剤による磁気ブラシを利用して現像剤の回転軸軸線方向外側への移動を阻止するという磁気シール機構を採用したシール構造で、現像剤の漏洩を防止している。しかしながら、このシール構造では、磁石リングと磁性体リングとの間で、磁力線が、回転軸軸線方向に関して広く分散して形成される恐れがある。これにより、その磁力線に沿って形成される磁気ブラシが軟弱になることが懸念される。その結果、磁気ブラシによるシール性能を十分に発揮することができず、シール構造の箇所から現像装置外部に、現像剤の漏洩が発生する可能性がある。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、回転部材と、この回転部材を回転可能にして保持する壁部との間に設けられ、磁性を有する現像剤の磁気ブラシを利用して、回転部材軸部の箇所から壁部の回転部材軸線方向外側への、現像剤の漏洩を防止するシール構造において、強固な磁気ブラシを形成することができ、壁部の外側への現像剤の漏洩を確実に防止することが可能なシール構造を提供することを目的とする。また、このようなシール構造を備えることにより、好適な画像品質を維持し続けることが可能な高性能な現像装置、画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、回転部材と、この回転部材を回転可能にして保持する壁部との間に設けられ、回転部材に設けられた磁性部と、この磁性部に対向して壁部に設けられた磁石部材との間に発生する磁力線によって磁性を有する現像剤の磁気ブラシを形成し、回転部材軸部の箇所から壁部の回転部材軸線方向外側への、磁性を有する現像剤の漏洩を防止するシール構造において、前記回転部材の前記磁性部は、その前記磁石部材に対する対向面の、回転部材軸線方向に関する幅が、磁性部に対する磁石部材の対向面のその幅より狭いこととした。
【0010】
また、上記構成のシール構造において、前記磁性部は、前記回転部材に、磁性を有するリング状部材を取り付けることによって形成されていることとした。
【0011】
また、上記構成のシール構造において、前記磁性部及び前記磁石部材の回転部材軸線方向外側に、弾性シール部材を備えることとした。
【0012】
また本発明では、上記シール構造を現像装置に備えることとした。
【0013】
また本発明では、上記シール構造を画像形成装置に備えることとした。
【発明の効果】
【0014】
本発明の構成によれば、回転部材と、この回転部材を回転可能にして保持する壁部との間に設けられ、回転部材に設けられた磁性部と、この磁性部に対向して壁部に設けられた磁石部材との間に発生する磁力線によって磁性を有する現像剤の磁気ブラシを形成し、回転部材軸部の箇所から壁部の回転部材軸線方向外側への、磁性を有する現像剤の漏洩を防止するシール構造において、前記回転部材の前記磁性部は、その前記磁石部材に対する対向面の、回転部材軸線方向に関する幅が、磁性部に対する磁石部材の対向面のその幅より狭いこととしたので、磁性部と磁石部材との間で、磁力線を回転部材軸線方向に関して集中させ、密度を高めて形成することができる。これにより、その磁力線に沿って、磁気ブラシを強固に形成することが可能である。したがって、磁性を有する現像剤に対するシール性能の向上が図られ、壁部の外側への現像剤の漏洩を確実に防止することが可能なシール構造を提供することができる。
【0015】
また、前記磁性部は、前記回転部材に、磁性を有するリング状部材を取り付けることによって形成されていることとしたので、回転部材の磁性部以外の箇所を、非磁性材料にすることができる。これにより、磁性部と磁石部材との間に、さらに密度の高い磁力線を形成することが可能である。したがって、一層強固な磁気ブラシを形成することができ、磁性を有する現像剤に対するシール性能を高めることが可能である。また、回転部材の軸部として、合成樹脂などの金属以外の材料を選択することが可能である。これにより、材料及びその加工に係るコストの低減を図ることができる。したがって、壁部の外側への現像剤の漏洩を防止する効果の向上に加えて、コストアップの抑制が考慮されたシール構造を提供することができる。
【0016】
また、前記磁性部及び前記磁石部材の回転部材軸線方向外側に、弾性シール部材を備えることとしたので、シール性能をより一層向上させることが可能である。その結果、壁部の外側への現像剤の漏洩を防止する効果が、さらに高められたシール構造を提供することができる。
【0017】
また本発明では、上記シール構造を現像装置に備えることとしたので、磁性を有する現像剤による強固な磁気ブラシを形成することにより、装置外部への磁性を有する現像剤の漏洩を確実に防止することができ、好適な画像品質を維持し続けることが可能な高性能な現像装置を得ることができる。
【0018】
また本発明では、上記シール構造を画像形成装置に備えることとしたので、磁性を有する現像剤による強固な磁気ブラシを形成することにより、装置内部における磁性を有する現像剤の漏洩、散乱を確実に防止することができ、好適な画像品質を維持し続けることが可能な高性能な画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るシール構造を備えた画像形成装置を示す模型的垂直断面正面図である。
【図2】図1の画像形成部周辺を示す垂直断面部分拡大正面図である。
【図3】図2の現像装置のミキサー軸受部周辺を示す垂直断面部分側面図である。
【図4】図2のミキサー軸受部周辺を示す部分拡大斜視図である。
【図5】図3に示すシール構造周辺の垂直断面部分拡大側面図である。
【図6】図5に示すシール構造周辺の部分拡大斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るシール構造の箇所を示す垂直断面部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図1〜図7に基づき説明する。なお、この実施形態に係るシール構造は、画像形成装置において、像担持体である感光体ドラム表面に現像剤を供給する現像装置の、回転部材であるミキサー(攪拌搬送部材)に対して備えられているものとする。
【0021】
最初に、本発明の第1の実施形態に係るシール構造を備えた画像形成装置について、図1を用いてその構造の概略を説明しつつ、画像出力動作を説明する。図1は、画像形成装置の模型的垂直断面正面図である。この画像形成装置は、中間転写ベルトを用いてトナー像を用紙に転写するカラー印刷タイプのものである。
【0022】
図1に示すように、画像形成装置1の本体2の内部下方には、給紙カセット3が配置されている。給紙カセット3は、その内部に、印刷前のカットペーパー等の用紙Pを積載して収容している。そして、この用紙Pは、図1において給紙カセット3の左上方に向けて、1枚ずつ分離されて送り出される。給紙カセット3は、本体2の前面側から水平に引き出すことが可能である。
【0023】
本体2の内部であって、給紙カセット3の左方には、第1用紙搬送部4が備えられている。第1用紙搬送部4は、本体2の左側面に沿って略垂直に形設されている。そして、第1用紙搬送部4は、給紙カセット3から送り出された用紙Pを受け取り、本体2の左側面に沿って垂直上方に二次転写部40まで搬送する。
【0024】
給紙カセット3の上方であって、第1用紙搬送部4が形設された本体2の左側面とは反対側の側面である右側面の箇所には、手差し給紙部5が備えられている。手差し給紙部5には、給紙カセット3に入っていないサイズの用紙や、厚紙、OHPシートのように1枚ずつ手で直接送り込みたいものが載置される。
【0025】
手差し給紙部5の左方には、第2用紙搬送部6が備えられている。第2用紙搬送部6は、給紙カセット3のすぐ上方にあって、手差し給紙部5から第1用紙搬送部4まで略水平に延び、第1用紙搬送部4に合流している。そして、第2用紙搬送部6は、手差し給紙部5から送り出された用紙等を受け取り、略水平に第1用紙搬送部4まで搬送する。
【0026】
一方、画像形成装置1は、外部コンピュータ(図示せず)から原稿画像データを受信する。この画像データの情報は、第2用紙搬送部6の上方に配置された露光手段である光走査装置7に送られる。光走査装置7により、画像データに基づいて制御されたレーザ光Lが、画像形成部20に向かって照射される。
【0027】
光走査装置7の上方には計4台の画像形成部20が、さらにそれら各画像形成部20の上方には中間転写体を無端ベルトの形で用いた中間転写ベルト8が備えられている。中間転写ベルト8は、複数のローラに巻き掛けられて支持され、図示しない駆動装置により図1において時計方向に回転する。
【0028】
4台の画像形成部20は、中間転写ベルト8の回転方向に沿って、回転方向上流側から下流側に向けて一列にして配置された所謂タンデム方式である。4台の画像形成部20とは、上流側から順に、マゼンタ用の画像形成部20M、シアン用の画像形成部20C、イエロー用の画像形成部20Y、及びブラック用の画像形成部20Bである。これらの画像形成部20には、各色に対応する現像剤供給容器及び搬送手段(図示せず)により、現像剤(トナー)が補給される。なお、以下の説明において、特に限定する必要がある場合を除き、「M」「C」「Y」「B」の識別記号は省略するものとする。
【0029】
各画像形成部20では、露光手段である光走査装置7によって照射されたレーザ光Lにより原稿画像の静電潜像が形成され、この静電潜像からトナー像が現像される。トナー像は、各画像形成部20の上方に備えられた一次転写部30で、中間転写ベルト8表面に一次転写される。そして、中間転写ベルト8の回転とともに、所定のタイミングで各画像形成部20のトナー像が中間転写ベルト8に転写されることにより、中間転写ベルト8表面にはマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされたカラートナー像が形成される。
【0030】
中間転写ベルト8が用紙搬送路に懸かる箇所には、二次転写ローラ41を備えた二次転写部40が配置されている。中間転写ベルト8表面に一旦担持されたカラートナー像は、第1用紙搬送部4によって同期をとって送られてきた用紙Pに、中間転写ベルト8と二次転写ローラ41とが圧接して形成される二次転写ニップ部にて転写される。
【0031】
二次転写後、中間転写ベルト8表面に残留する現像剤などの付着物は、中間転写ベルト8に対してマゼンタ用の画像形成部20Mの回転方向上流側に設けられた中間転写ベルト8用のクリーニング装置9によってクリーニング、回収される。
【0032】
二次転写部40の上方には、定着部10が備えられている。二次転写部40にて未定着トナー像を担持した用紙Pは、定着部10へと送られ、熱ローラと加圧ローラとによりトナー像が加熱、加圧されて定着される。
【0033】
定着部10の上方には、分岐部11が備えられている。定着部10から排出された用紙Pは、両面印刷を行わない場合、分岐部11から画像形成装置1の上部に設けられた用紙排出部12に排出される。
【0034】
分岐部11から用紙排出部12に向かって用紙Pが排出されるその排出口部分は、スイッチバック部13としての機能を果たす。両面印刷を行う場合には、このスイッチバック部13において、定着部10から排出された用紙Pの搬送方向が切り替えられる。そして、用紙Pは、分岐部11、定着部10の左方、及び二次転写部40の左方を通って下方に送られ、再度第1用紙搬送部4を経て二次転写部40へと送られる。
【0035】
続いて、画像形成装置1の画像形成部20周辺の詳細な構成について、図1に加えて、図2を用いて説明する。図2は、画像形成部周辺を示す垂直断面部分拡大正面図である。なお、4色の各画像形成部20は構造が共通するので、前述のように「M」「C」「Y」「B」の識別記号は省略するものとする。
【0036】
図2に示すように、画像形成部20には、その中心に像担持体である感光体ドラム21が備えられている。そして、感光体ドラム21の近傍には、その回転方向に沿って順に、帯電装置50、現像装置60、除電装置70、及びドラム用のクリーニング装置80が配置されている。一次転写部30は、感光体ドラム21の回転方向に沿って、現像装置60と除電装置70との間に設けられている。
【0037】
感光体ドラム21は、画像形成装置1内の用紙搬送方向と直角をなす用紙幅方向、すなわち図2の紙面奥行き方向に延び、その軸線方向を水平にして配置されている。感光体ドラム21は、アルミニウム等により構成される導電性ローラ状基体の外側に、真空蒸着等によって無機光導電性材料であるアモルファスシリコンの感光層を設けた無機感光体のドラムである。感光体ドラム21は、図示しない駆動装置によって、その周速度が用紙搬送速度(例えば150mm/s)とほぼ同じになるように回転せしめられている。なお、図1に示す4台の画像形成装置20は、モータとギアとを備えた、各々個別の駆動装置によって回転せしめられる。
【0038】
帯電装置50は、そのハウジング51の内部に、感光体ドラム21に接触する帯電ローラ52を備えている。帯電ローラ52は、所定の圧力で感光体ドラム21に圧接し、感光体ドラム21の回転に従って回転する。この帯電ローラ52により、感光体ドラム21の表面が所定の極性及び電位で一様に帯電せしめられる。なお、ハウジング51内には、感光体ドラム21に対して帯電ローラ52を隔てた位置にクリーニングブラシ53が備えられ、このクリーニングブラシ53により帯電ローラ52表面がクリーニングされる。
【0039】
現像装置60は、そのハウジング61の内部に、各々回転部材である現像ローラ62、供給スクリュー63、及びミキサー64を備えている。現像ローラ62は、現像方式が接触、或いは非接触であって、感光体ドラム21の近傍に設けられている。現像ローラ62には、感光体ドラム21の帯電極性と同極性のバイアスが印加される。この現像ローラ62により、現像剤(トナー)が帯電せしめられるとともに、感光体ドラム21の表面の静電潜像に移動せしめられ、静電潜像が現像される。
【0040】
現像装置60は、磁性キャリアと非磁性トナーとを混合してなる二成分系現像剤、或いは磁性トナーからなる一成分系現像剤という、磁性を有する現像剤を使用するタイプのものである。また、感光体ドラム21表面を研磨するようにしてクリーニングするために、微量の酸化チタン、シリカなどの粉末を外添剤として現像剤に混入している。現像剤は、現像剤供給容器(図示せず)に収容され、現像装置60の箇所まで図示しない搬送手段により搬送される。さらに、現像剤は、供給スクリュー63によりハウジング61の内部に補給され、現像ローラ62に向かって、ミキサー64を用いて攪拌されながら、搬送される。
【0041】
一次転写部30には、中間転写ベルト8を介して感光体ドラム21に接触する一次転写ローラ31が設けられている。一次転写ローラ31は、金属軸に所定の厚さでEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)発泡体を設けたローラである。一次転写ローラ31は、駆動装置を有することなく、中間転写ベルト8に接触することによって、中間転写ベルト8の回転に従って回転する。また、一次転写ローラ31には、必要に応じて、感光体ドラム21や現像剤の帯電極性とは異なる極性の一次転写バイアスが印加される。
【0042】
なお、中間転写ベルト8は、図1に示すように、複数のローラに巻き掛けられ、支持されている。中間転写ベルト8は、基材表面に弾性層を積層して設けた弾性無端ベルトである。この中間転写ベルト8の基材にはPVDF(ポリフッ化ビニリデン)樹脂を使用し、その表面には弾性層としてNBRゴム(二トリルゴム)を設けている。さらにその弾性層を、離型層としてPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の薄膜でコーティングしている。
【0043】
そして、図2に示すように、画像形成部20の除電装置70は、感光体ドラム21の回転方向に沿って、一次転写部30の下流側に配置されている。除電装置70は、LED(発光ダイオード)71と、反射板72とで構成されている。LED71は、クリーニング装置80のハウジング81の上面に取り付けられている。LED71の代わりに、EL(エレクトロルミネッセンス)光源、蛍光灯等を用いることもできる。反射板72は、LED71の上方に、LED71をカバーするように設けられている。除電装置70は、LED71の除電光を感光体ドラム21に照射することにより、その表面の帯電電荷を除去し、次回の画像形成動作時における帯電工程のための準備を整える。
【0044】
感光体ドラム21用のクリーニング装置80は、感光体ドラム21の回転方向に沿って、一次転写部30、除電装置70のさらに下流側に配置されている。このドラム用クリーニング装置80は、そのハウジング81の内部に、クリーニングローラ82、クリーニングブレード83、現像剤受け部材84、搬送パドル85、及び排出スクリュー86を備えている。クリーニングローラ82及びクリーニングブレード83は、感光体ドラム21に圧接し、感光体ドラム21表面に残留した現像剤などの付着物を除去してクリーニングする。感光体ドラム21表面から除去された現像剤は、現像剤受け部材84の内側に一旦貯留され、そこから溢れたものが搬送パドル85を介して排出スクリュー86の方へと送られる。こうして、廃棄現像剤は、排出スクリュー86により、クリーニング装置80の外部の図示しない廃棄現像剤回収容器に排出される。
【0045】
以上のような構成の画像形成装置1において、本発明のシール構造は、前述のように、感光体ドラム21表面に現像剤を供給する現像装置60の、回転部材であるミキサー64に対して備えられており、以下、その詳細を説明する。
【0046】
本発明の実施形態に係るシール構造の詳細な構成について、図2に加えて、図3〜図6を用いて説明する。図3は現像装置のミキサー軸受部周辺を示す垂直断面部分側面図、図4はミキサー軸受部周辺を示す部分拡大斜視図、図5はシール構造周辺の垂直断面部分拡大側面図、図6はシール構造周辺の部分拡大斜視図である。なお、図3及び図5においては、ハウジング61の壁部61aに対して、図の左方が現像装置60の内側に、右方が外側になる。また、図6では、ハウジング61の描画を省略している。
【0047】
図2に示す現像装置60に備えられた回転部材であるミキサー64は、両端部がハウジング61に支持され、その軸部64aの一端に設けられたギア65(図3参照)から回転のための動力が伝達される。
【0048】
ミキサー64の軸線方向の一端では、その軸部64aが、図3及び図4に示すように、ハウジング61の壁部61aに対して、軸受66を介して回転可能にして保持されている。この軸受66の箇所に、ミキサー64の軸線方向外側への、磁性を有する現像剤の漏洩を防止するシール構造90が備えられている。
【0049】
シール構造90は、図3に示すように、磁性部91、磁石部材92、及び弾性シール部材93を備えている。
【0050】
磁性部91は、図3及び図5に示すように、ミキサー64の軸部64aの、磁性軸64bに設けられている。磁性軸64bは、ミキサー64の羽根部64cより軸線方向外側の軸受66に対応する箇所に備えられ、例えばステンレス鋼(SUS430)や、快削鋼材(SUM材)にニッケルメッキを施した磁性材料で構成されている。磁性部91は、この磁性軸64bの、壁部61a近傍の箇所に設けられている。磁性部91は、磁性軸64bの周面から径方向外側に突出する、軸線方向の厚さが比較的薄い円盤形状のフランジのような形で構成されている。
【0051】
磁石部材92は、図3〜図5に示すように、壁部61aの内面に貼付される形で配置、固定されている。磁石部材92は、図6に示すように平板リング形状をなし、外径が壁部61aの軸受66の箇所に設けられた穴61b(図5参照)の直径より大きい円形で、内径が磁性部91の外径より大きい円形の穴を有している。磁石部材92は、その円形の穴に、軸部64aの磁性軸64bが軸線を一致させて挿入されている。
【0052】
磁性部91と磁石部材92とは、磁性部91の外周面と磁石部材92の内周面とが対向しあうように、互いの間に間隙を設けて配置されている。そして、図5に示すように、磁性部91の、その磁石部材92に対する対向面である外周面の軸線方向に関する幅W1が、磁性部91に対する磁石部材92の対向面である内周面のその幅W2より狭くなっている。
【0053】
弾性シール部材93は、ゴムなどといった弾性材料で構成され、図3及び図5に示すように、軸受66の箇所の、磁性部91及び磁石部材92より軸線方向外側に備えられている。弾性シール部材93は、磁石部材92と同様にリング形状をなし、その円形の穴にミキサー64の軸部64aが挿入されている。弾性シール部材93の内周面は軸部64aの磁性軸64b外周面に圧接し、外周面は弾性シール保持部材67に圧接している。
【0054】
上記のように、回転部材であるミキサー64と、このミキサー64を回転可能にして保持するハウジング61の壁部61aとの間に設けられ、ミキサー64に設けられた磁性部91と、この磁性部91に対向して壁部61aに設けられた磁石部材92との間に発生する磁力線によって磁性を有する現像剤の磁気ブラシを形成し、ミキサー64の軸部64aの箇所から壁部61aの軸線方向外側への、磁性を有する現像剤の漏洩を防止するシール構造90において、ミキサー64の軸部64aの磁性部91は、その磁石部材92に対する対向面の、ミキサー64の軸線方向に関する幅W1が、磁性部91に対する磁石部材92の対向面のその幅W2より狭いので、磁性部91と磁石部材92との間で、磁力線をミキサー64の軸線方向に関して集中させ、密度を高めて形成することができる。これにより、その磁力線に沿って、磁気ブラシを強固に形成することが可能である。したがって、磁性を有する現像剤に対するシール性能の向上が図られ、壁部61aの外側への現像剤の漏洩を確実に防止することが可能なシール構造90を提供することができる。
【0055】
また、磁性部91及び磁石部材92の、ミキサー64の軸線方向外側に、弾性シール部材93を備えたので、シール性能をより一層向上させることが可能である。その結果、壁部61aの外側への現像剤の漏洩を防止する効果が、さらに高められたシール構造90を提供することができる。
【0056】
また本発明では、上記シール構造90を現像装置60に備えたので、磁性を有する現像剤による強固な磁気ブラシを形成することにより、現像装置60の外部への磁性を有する現像剤の漏洩を確実に防止することができ、好適な画像品質を維持し続けることが可能な高性能な現像装置60を得ることができる。
【0057】
また本発明では、上記シール構造90を画像形成装置1に備えたので、磁性を有する現像剤による強固な磁気ブラシを形成することにより、装置内部における磁性を有する現像剤の漏洩、散乱を確実に防止することができ、好適な画像品質を維持し続けることが可能な高性能な画像形成装置1を得ることができる。
【0058】
次に、本発明の第2の実施形態に係るシール構造の詳細な構成について、図7を用いて説明する。図7は、現像装置のシール構造の箇所を示す垂直断面部分側面図である。なお、この実施形態の基本的な構成は、図1〜図6を用いて説明した前記第1の実施形態と同じであるので、第1の実施形態と共通する構成について、図面の記載、及びその説明を省略するものとする。
【0059】
現像装置60の、第2の実施形態に係るシール構造90は、図7に示すように、磁性を有する平板リング状部材で構成された磁性部94を備えている。磁性部94は、ミキサー64の羽根部64cより軸線方向外側の軸受66の箇所に設けられた樹脂軸64dの、壁部61a近傍の箇所に設けられ、その外周面が、磁石部材92の穴の内周面に対向する形で配置されている。この箇所の樹脂軸64d外周面には、軸線方向と直角をなす周方向にぐるりと刻んで設けられた溝部64eが備えられている。リング状部材の磁性部94は、溝部64eに嵌合する形で取り付けられている。
【0060】
上記のように、磁性部94は、ミキサー64の軸部64aに、磁性を有するリング状部材を取り付けることによって形成されているので、ミキサー64の磁性部94以外の箇所を、非磁性材料にすることができる。これにより、磁性部94と磁石部材92との間に、さらに密度の高い磁力線を形成することが可能である。したがって、一層強固な磁気ブラシを形成することができ、磁性を有する現像剤に対するシール性能を高めることが可能である。また、ミキサー64の軸部64aとして、合成樹脂などの金属以外の材料を選択することが可能である。これにより、材料及びその加工に係るコストの低減を図ることができる。したがって、壁部61aの外側への現像剤の漏洩を防止する効果の向上に加えて、コストアップの抑制が考慮されたシール構造90を提供することができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0062】
例えば、上記実施形態では、本発明のシール構造を現像装置60のミキサー64に対して適用した形態を、一例として掲げたが、他の回転部材に対して適用することも可能である。ミキサー64のほかの例としては、図2に示したような、同じ現像装置60の現像ローラ62及び供給スクリュー63や、クリーニング装置80のクリーニングローラ82、搬送パドル85、及び排出スクリュー86に対しても、本発明のシール構造を適用することができる。
【0063】
また、シール構造90を備えた画像形成装置1は、上記実施形態では中間転写ベルトを用いてトナー像を用紙に転写するカラー印刷用の画像形成装置であるが、このような機種に限定されるわけではなく、中間転写ベルトを用いない画像形成装置や、モノクロ印刷用の画像形成装置であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、磁性を有する現像剤(トナー)の漏洩を防止するシール構造において利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 画像形成装置
2 本体
20 画像形成部
60 現像装置
61 ハウジング
61a 壁部
62 現像ローラ
64 ミキサー(回転部材)
64a 軸部
80 クリーニング装置
90 シール構造
91、94 磁性部
92 磁石部材
93 弾性シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材と、この回転部材を回転可能にして保持する壁部との間に設けられ、回転部材に設けられた磁性部と、この磁性部に対向して壁部に設けられた磁石部材との間に発生する磁力線によって磁性を有する現像剤の磁気ブラシを形成し、回転部材軸部の箇所から壁部の回転部材軸線方向外側への、磁性を有する現像剤の漏洩を防止するシール構造において、
前記回転部材の前記磁性部は、その前記磁石部材に対する対向面の、回転部材軸線方向に関する幅が、磁性部に対する磁石部材の対向面のその幅より狭いことを特徴とするシール構造。
【請求項2】
前記磁性部は、前記回転部材に、磁性を有するリング状部材を取り付けることによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシール構造。
【請求項3】
前記磁性部及び前記磁石部材の回転部材軸線方向外側に、弾性シール部材を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシール構造。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のシール構造を備えたことを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のシール構造を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−237431(P2010−237431A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85153(P2009−85153)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】