説明

シール構造及びそれを備えた管継手、ます、パイプ

【課題】一連の配管作業を簡易に行えるようにすると共に、シール性の向上を図る。
【解決手段】外周面に環状の凹状部31が周方向に形成されると共に、管体Xが挿通されるシール体30と、前記シール体30を押圧する押圧面を有し、該押圧面でシール体30を押圧することにより径方向の内方に膨出せしめて前記管体Xの外周面に圧接させるべく、該シール30体の両側に夫々配される第一押圧体23及び第二押圧体23と、を備えたシール構造であって、前記押圧面の径方向の高さが前記凹状部31の深さ以下の寸法に設定されて、該押圧面が前記凹状部31の側方に位置するシール体30の側端面を押圧し得るように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水配管及び排水・下水配管等に幅広く使用されている管継手、ます、及びパイプの接続部の構造及びそれを備えた物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管継手、ます、パイプ等を用いて給水配管、排水・下水配管がなされるが、その接続部は、主として、接着タイプ、ゴム輪タイプ、球形自在タイプ等が知られている。これらは一方の接続部受口に、他方の接続部差口、例えば管継手の差口、ますの差口、あるいはパイプの差口などが接続されて配管がなされている。接着タイプの場合は接着剤を塗布して接合し、ゴム輪受口タイプの場合は滑剤を塗布してこれらの差口を受口に挿入して接合している。以下、管継手の差口、ますの差口、あるいはパイプの差口を総称して「管体」という。また、接着剤や滑剤を塗布しないで接合できるメカニカル式管継手を使用して配管されることもある。この種の管継手のシール構造としては、例えば次のようなものが存在する。即ち、この従来のものは、一端側内周面にテーパ面を有するニップルと、内周面にテーパ面を有するテーパワッシャーが装着された袋ナットと、該テーパワッシャーと前記ニップル間に配されるパッキンとからなっている。また、パッキンの外周面には周方向に溝が形成されている。かかる溝の深さは、前記ニップル及びテーパワッシャーのテーパ面の高さよりも小さく設定されている。
【0003】
これに管体を接続する場合は、テーパワッシャーに管体を挿着した状態で袋ナットをニップルに螺合する。これにより、パッキンはニップル及びテーパワッシャーのテーパ面で押圧され、径方向に縮径して管体の外周面に圧接する。管体はパッキンによりシールが図られた状態で管継手に接続される。
【特許文献1】実開昭55−149686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のものにあっては、パッキンの押圧はニップル及びテーパワッシャーの各テーパ面全体により行われるために、溝の内方に位置する中実部分も押圧されることになる。このため、比較的大きな押圧力を加えてパッキンを膨出させるべく、袋ナットには相当の回転力を加えることが必要となる。これにより、現場での作業が非常に厄介なものとなって、作業性に欠けるという問題点があった。
【0005】
また、各テーパ面の角度は約45°と大きく設定されているので、内方側のテーパ面とパッキンの端面間に形成される間隙幅が大きくなる。このため、管体の挿入時に該管体がパッキンに接触し易く、作業性を低下せしめる一因ともなっていた。
【0006】
それ故に、本発明は上記従来の問題点を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、一連の配管作業を簡易に行えるようにすると共に、シール性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るシール構造は、外周面に環状の凹状部が周方向に形成されると共に、管体が挿通されるシール体と、前記シール体を押圧する押圧面を有し、該押圧面でシール体を押圧することにより径方向の内方に膨出せしめて前記管体の外周面に圧接させるべく、該シール体の両側に夫々配される第一押圧体及び第二押圧体と、を備えたシール構造であって、前記押圧面の径方向の高さが前記凹状部の深さ以下の寸法に設定されて、該押圧面が前記凹状部の側方に位置するシール体の側端面を押圧し得るように構成されたものである。
【0008】
上記シール構造に於いては、先ず配管すべき管体をシール体に挿通した状態で、該シール体を第一押圧体及び第二押圧体で押圧すると、シール体は変形する。この場合、各押圧体の押圧面の径方向の高さをシール体の凹状部の深さ以下の寸法となるように設定しているために、この凹状部の側方に位置する側端面部分のみが押圧されることになる。かかる押圧力を受けて、シール体はその凹状部が閉じるように変形すると共に、径方向の内方に膨出して前記管体の外周面に圧接される。
【0009】
尚、ここにいう「押圧体」とは、後述する第一及び第二押圧体、固定リング、継手本体、接続部材等を含むシール体を押圧する物体であることを意図し、環状であるか、段部を備えているかを問わない。
【0010】
また、本発明に係るシール構造は、前記第一押圧体及び第二押圧体が環状に形成されると共に、内周面にシール体を装着するための段部が設けられ、且つ該段部にシール体を装着した際には、前記第一押圧体及び第二押圧体間に間隙が形成されるように構成されている。
【0011】
上記シール構造に於いては、第一押圧体と第二押圧体の段部にシール体を装着した状態で、配管すべき管体を挿通する。そして、第一押圧体及び第二押圧体でシール体を押圧すると、両押圧体間に形成された間隙が狭まるように接近して前記シール体が押圧力を受けることになる。これにより、シール体はその凹状部が閉じるように変形すると共に、径方向の内方に膨出して前記管体の外周面に圧接される。
【0012】
これら上記各シール構造によると、シール体は径方向の内方へ膨出し易くなり、良好なシール性を得ることができる。しかも、押圧体による押圧力は小さくてすむので、配管作業も容易に行える。
【0013】
また、前記押圧体の段部よりも内方位置に内側の段部を形成し、且つ該内側の段部の側端面を管軸方向に対して略垂直に形成してもよい。
【0014】
これによると、外側の段部に装着したシール体の側端面と、各押圧体に形成した内側の段部の側端面間に形成される間隙を幅狭にすることができる。従って、管体が押圧体やシール体に接触することなく、管体を各押圧体に容易に挿通できる。
【0015】
更に、第一押圧体及び第二押圧体間に形成される間隙幅は、前記凹状部の管軸方向の幅以下に設定しても構わない。
【0016】
このようにすれば、シール体の押圧時に於いて、該シール体が各押圧体の間隙から外方に膨出することがなくなる。よって、かかるシール体の外方への膨出により、配管作業に支障を与えるようなこともない。
【0017】
また、前記各押圧体の押圧面は、該押圧体の軸線方向に対して傾斜するテーパ部を有するように構成してもよい。
【0018】
これによれば、押圧面を各押圧体の軸線方向に対して傾斜するテーパ部を有して構成しているために、シール体の凹状部が狭まるように適切に押圧力が作用する。このため、該シール体の内方への膨出が一層良好なものとなると共に、押圧体による押圧力を更に軽減することができる。
【0019】
更に、前記各押圧体の押圧面により押圧されるシール体の被押圧端面は、各シール体の軸線方向に対して傾斜するテーパ部を有するように構成してもよい。
【0020】
この場合も同様に、シール体の良好な膨出によるシール性の向上、及び押圧体による押圧力の軽減を図ることができる。
【0021】
また、管軸方向に対する前記各押圧体のテーパ部の角度を同一に設定することも可能である。
【0022】
これによると、シール体には各押圧体から略均等の押圧力が作用し得るために、シール体が管軸方向に対して略垂直の内方へ膨出する。その結果、シール体と管体との接触面積を十分に確保することが可能となり、シール性の更なる向上を図ることができる。
【0023】
更に、前記シール体を押圧するための押圧手段を備えさせることもできる。
【0024】
これによると、シール体は押圧手段により押圧されることになる。
【0025】
また、接続部を有する継手本体と、回転動作により該継手本体の接続部に固定される固定リングとを備え、前記第一押圧体及び第二押圧体を該固定リング内に回転自在に嵌合し、該固定リング及び前記継手本体により前記押圧手段を構成してもよい。
【0026】
この場合は、固定リングを回転させると、押圧手段たる継手本体及び固定リングにより第一及び第二押圧体が押圧力を受ける。かかる両押圧体によりシール体は押圧され、径方向の内方に膨出して管体と圧接することになる。
【0027】
更に、接続部を有する継手本体と、回転動作により該継手本体の接続部に固定される固定リングとを備え、前記継手本体の接続部が第一押圧体を兼ねていて、該第一押圧体が継手本体の一部となっており、且つ前記第二押圧体を固定リング内に嵌合させると共に、該固定リング及び前記継手本体により前記押圧手段を構成することもできる。
【0028】
この場合は、固定リングを回転させると、該固定リングにより第二押圧体が押圧力を受ける。この第二押圧体によりシール体は押圧され、該第二押圧体と継手本体の接続部とで圧縮されることとなり、シール体は径方向の内方に膨出して管体と圧接することになる。
【0029】
また、接続部を有する継手本体と、回転動作により該継手本体の接続部に固定される固定リングとを備え、前記固定リングが第二押圧体を兼ねていて、該第二押圧体が固定リングの一部となっており、該固定リング及び前記継手本体により前記押圧手段を構成してもよい。
【0030】
この場合、固定リングを回転させると、該固定リングによりシール体は押圧され、該固定リングと第一押圧体とで圧縮されることとなり、シール体は径方向の内方に膨出して管体と圧接することになる。
【0031】
更に、接続部を有する継手本体と、回転動作により該継手本体の接続部に固定される固定リングとを備え、前記継手本体の接続部が第一押圧体を兼ねていて、該第一押圧体が継手本体の一部となっており、且つ前記固定リングが第二押圧体を兼ねていて、該第二押圧体が固定リングの一部となっており、該固定リング及び前記継手本体により前記押圧手段を構成することも可能である。
【0032】
この場合は、固定リングを回転させると、該固定リングによりシール体は押圧され、該固定リングと継手本体の接続部とで圧縮されることとなり、シール体は径方向の内方に膨出して管体と圧接することになる。
【0033】
更に、本発明に係る管継手、ます、又はパイプは、それぞれの流入側接続部あるいは流出側接続部に前記シール構造又は前記管継手のシール構造を備えたものである。これらのシール構造は接続部に一体的に形成してもよく、また別体で製作した物を取付け一体化させたものでもよい。
【0034】
このことにより、上述した作用効果を奏する管継手、ます、パイプを得ることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、シール体が径方向の内方に好適に膨出するために、管体間との良好なシール性を確実且つ強固に維持できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
<第一実施形態>
以下、本発明に係る管継手のシール構造を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0037】
図1は、本実施形態に係る管継手のシール構造を示す一部断面を含む正面図である。図中の符号1は、直管部2の側面に分岐部3を設けた継手本体で、直管部2及び分岐部3の先端部側には鍔部4を有する接続部5が夫々設けられている。
【0038】
この鍔部4には、図2に示すように所定間隔を有して三個の切欠6が形成されている。また、接続部5の側面には、同図に示すように所定間隔を有して三個の係合溝7が設けられている。かかる係合溝7は、管軸方向に形成した挿入部8と、該挿入部8に直交して周方向に連設した第一直線部9と、後述する固定リング13を前記継手本体1に接近させるべく、該第一直線部9に所定の角度を有して連設した傾斜部10と、該傾斜部10に連設した周方向の第二直線部11とからなっている。該第二直線部11には、曲面状の凸部12が膨出形成されている。図3に示すように、符号40はテーパ面41を有する凸状部である。このテーパ面41は、前記係合溝7の挿入部8の挿入側(図2の下側、図3の右側)に向かって下るように傾斜している。
【0039】
符号13は、継手本体1の接続部5に取付けた固定リングを示す。その一端側内周面には、図3のように、前記継手本体1の係合溝7にスライド自在に係合する三個の係合凸部14が所定間隔を有して設けられている。尚、固定リング13を継手本体1に取付ける場合は、固定リング13の係合凸部14を継手本体1の係合溝7に設けたテーパ面41及び凸状部40を乗り越えるようにして挿入部8内に挿入する。これにより、固定リング13と接続部5との一体性が保たれる。このため、工場等に於いて、予めこの状態にまで製作しておけば、現場への搬送作業や現場に於ける接続作業の簡略化が図れて、作業効率が大幅に向上することになる。また、固定リング13等の各構成部品を紛失するという事態も良好に回避できる。尚、固定リング13は、上述したように必ずしも接続部5から離脱しないように設ける必要はなく、取り外せるように構成してもよい。
【0040】
また、前記挿入部8は管軸方向に形成されているので、かかる挿入部8への係合凸部14の挿入は容易に行える。このため、係合凸部14を第一直線部9に適切に誘導することができて、固定リング13の回転動作が良好に行えることになる。更に、係合凸部14の挿入部8内の移動により、固定リング13の継手本体1側への移動距離を確保することができる。このために、傾斜部10を急角度に設定したり、その長さを必要以上に確保するようなことは必要なくなり、よって継手本体1のコンパクト化が図れる利点がある。
【0041】
尚、前記係合溝7の第一直線部9、傾斜部10及び第二直線部11を固定リング13の係合凸部14が移動する際には、固定リング13は図4に示すように、夫々10°、40°及び10°回転するように設定している。この場合、傾斜部10の傾斜角度を大きく設定すれば、少ない回転動作で固定リング13を継手本体1に固定することができる。一方、傾斜部10の傾斜角度を小さく設定すれば、固定リング13は無理なくスムーズに回転することになる。従って、傾斜部10の傾斜角度を決定するに際しては、このような点が考慮される。本実施形態では、前記係合凸部14が傾斜部10をスライド移動することにより、固定リング13が継手本体1に2.5mm接近するように設定している。傾斜部10の周方向に対する傾斜角度αは約4°である。
【0042】
図5に示すように、符号15は、固定リング13の一端部に設けた鍔部である。該鍔部15には、三個の切欠16が所定間隔を有して形成されている。これら三個の切欠16は、固定リング13の係合凸部14を継手本体1の係合溝7の第二直線部11の終端に移動せしめた際に、該継手本体1の鍔部4の切欠6と一致するような位置に形成されている。符号17は、固定リング13の他端部内周面に内向きに設けた環状凸部である。固定リング13の他端部側外周面は、多角形状に形成されている。
【0043】
図6に示すように、符号18は固定リング13にスライド自在に外嵌したストッパーである。同図のように、環状のストッパー本体19には、所定間隔を有して三個の係止片20が上向きに突設されている。かかる係止片20の個数は変更が可能であり、これに合わせて前記継手本体1及び固定リング13の各切欠6、16の個数も適宜変更すればよい。係止片20の先端部内周面には、係合部21が設けられている。尚、係止片20は固定リング13の切欠16を介して継手本体1の切欠6に係入され、その鍔部4に係合部21が係合して、固定リング13の逆回転を防止する。図5(b)に示すように、符号22は、固定リング13の外周面に接着した目印としてのテープである。この目印22が外部に露出しているか否かに基づいて、前記ストッパー18の係合部21が継手本体1の鍔部4に係合しているか否かを外部から目視で確認することができる。
【0044】
符号23は、固定リング13内に回転自在に嵌合した環状の第一押圧体及び第二押圧体である。各押圧体23の一端側内周面には、図7に示すように、外側の段部24、内側の段部25が設けられている。外側の段部24は、周面部26と各押圧体の軸線方向に対して傾斜するテーパ部27と内壁部28とからなっている。かかるテーパ部27及び内壁部28が、後述のシール体30に直接接触して押圧する押圧面となる。また、各押圧体23の外周面には、二条の環状凸部29が管軸方向に所定間隔を有して設けられている。尚、この環状凸部29の外径寸法は、固定リング13の内径寸法よりも若干小さく設定されている。このため、各押圧体23は固定リング13内に回転自在に嵌合することになる。
【0045】
符号30は、図8に示すように対向配置した両押圧体23で挟持すべく、外側の段部24に嵌合させたゴム製のシール体である。この状態では、両押圧体23間に間隙42が形成される。符号31はシール体30の外周面略中央部に形成した断面略Vの字状の凹状部である。また、前記押圧体23の押圧面により押圧される被押圧端面には、各シール体の軸線方向に対して傾斜するするテーパ部46が形成されている。
【0046】
尚、図9に示すように、シール体30の凹状部31の深さAは、各押圧体23のテーパ部27と内壁部28とを合わせた押圧面の高さBに対して、A>Bとなるように設定している。この場合、A=Bとなるように設定しても構わない。即ち、押圧面は凹状部31の側方に位置するシール体30の端面部分のみを押圧するように構成されている。即ち、凹状部31の底部より上方位置を前記押圧面で両側から押圧する。
【0047】
また、各押圧体23のテーパ部27の管軸方向に対する角度Θは同角度の45°としている。両押圧体23間にシール体30を装着した状態で、対向する押圧体23の端面間の間隙幅Cは、シール体30の凹状部31の幅Dよりも小さくなっている。この場合、C=Dとなるように設定してもよい。
【0048】
更に、シール体30の側端面と、これに対向する押圧体23の側端面となる内側の段部25とが形成する間隙幅Eが極力幅狭となるように、押圧体23の側端面は管軸方向に対して略垂直に形成されている。
【0049】
また、同図の如くシール体30の内径Fは、押圧体23の内径Gよりも若干大きく設定され、該押圧体23の内径Gは、接続すべき管体の外径よりも若干大きく設定されている。また、押圧体23はジュラコン等の合成樹脂からなり、継手本体1及び固定リング13等は塩化ビニル等の合成樹脂で構成している。
【0050】
符号32は、図3に示すように、継手本体1の端面に環状に形成された溝33に装着したOリングである。継手本体1に固定リング13を取付けた際に、内側に位置する第一押圧体23の背面が前記継手本体1の端面に当接してOリング32によりシールが図られることになる(図1も参照)。尚、Oリング32の表面には、潤滑剤が塗布されている。
【0051】
本実施形態は以上のような構成からなる。次に、かかる管継手を使用して給水管や排水管等を配管する場合について説明する。
【0052】
先ず、固定リング13に接続すべき管体Xを挿入する。本実施形態では、シール体30の内径Fを押圧体23の内径Gよりも若干大きく設定すると共に、押圧体23の内径Gを接続すべき管体Xの外径よりも大きく設定しており、しかもシール体30の側端面とこれに対向する押圧体23の側端面となる内側の段部25とが形成する間隙幅Eが極力幅狭となるように設定しているため、管体Xをスムーズに挿入することができる。
【0053】
次に、図10のように、固定リング13を継手本体1側に押圧して、固定リング13の係合凸部14を係合溝7の挿入部8の終端にまで移動させる。その際、外側の第二押圧体23は固定リング13の環状凸部17により押圧されるので、一対の押圧体23及びシール体30は一体となって継手本体1側へと移動し、内側の第一押圧体23の背面が継手本体1の端面に当接することになる。
【0054】
更に、固定リング13を回転すると図11のように、その係合凸部14は係合溝7の第一直線部9、傾斜部10を介して第二直線部11をスライド移動し、該第二直線部11に設けた凸部12を乗り越えてその終端にまで移動することになる。この場合、凸部12は曲面状に形成されてなるために、該凸部12と固定リング13の係合凸部14とを無理なくスムーズに係脱させることができる。また、この係脱状態は固定リング13の回転時の感触により作業者が認識できるので、作業の確実性が向上することになる。
【0055】
かかる係合凸部14が係合溝7の傾斜部10を移動する際には、固定リング13の環状凸部17により外側の第二押圧体23を介してシール体30が押圧される。この際、内側の第一押圧体23は継手本体1によりその移動が規制されているので、シール体30は両側から押圧力を受けて撓み、その内径Fが縮径するように内方に膨出して管体Xの外周面に圧接することになる。以上、説明したように本実施形態では、継手本体1及び固定リング13をシール体30の押圧手段としている。
【0056】
この場合に於いて、シール体30の押圧は、押圧体23の外側の段部24のテーパ部27及び内壁部28からなる押圧面により行われるのであるが、かかる押圧体23のテーパ部27と内壁部28とを合わせた押圧面の高さBは、シール体30の凹状部31の深さAよりも小さく設定されている。そのため、固定リング13を回転させると、同図のようにシール体30の凹状部31が閉じるように押圧力が加わって、シール体30が内方に膨出することとなる。このため、固定リング13にさほど回転力をかけることなく、管体Xを簡易に接続することができる。
【0057】
また、各押圧体23のテーパ部27の管軸方向に対する角度Θは同角度の45°としているために、各押圧体23から略均等に押圧力がシール体30に加わって、偏りが生じることなく内方に膨出することになる。よって、シール体30の管体Xに対する圧接面積を十分に確保できるという利点がある。
【0058】
更に、一対の押圧体23にシール体30を装着した状態で、対向する押圧体23の端面間の間隙幅Cはシール体30の凹状部31の幅Dよりも小さくなっているために、シール体30が押圧体23間から外方へ膨出して固定リング13の内周面に接触するようなことはない。それ故、固定リング13の回転トルクを増大せしめるようなこともない。
【0059】
また、シール体30が管体Xに圧接された後は、かかる圧接によりシール体30と管体Xとが一体化して回転せず、固定リング13と押圧体23との間で回転し得ることになるが、固定リング13は各押圧体23の二条の環状凸部29でのみ接触しており、且つ押圧体23は滑り易いジュラコンで構成しているので、容易に回転させることができる。故に、継手本体1と管体Xとは相対的に回転する。従って、作業がし易くなる。
【0060】
その後、ストッパー18の係止片20を継手本体1側にスライド移動させて、その切欠6に係止片20を係入し、その係合部21を継手本体1の鍔部4に係合させる。その結果、固定リング13に設けた目印22が露出し、ストッパー18が確実に機能していることを外部から目視で確認することができる。これにより、一連の管体Xの接続作業は完了するが、かかる一連の接続作業は極めて簡易に行えるという利点があり、このため作業スペースが制限されるような状況下に於いても作業者に負担をかけることなく、効率的良く一連の接続作業を行うことができる。
【0061】
また、このようにして接続された管体Xは、継手本体1の係合溝7に設けた凸部12と固定リング13の係合凸部14との係止、及びストッパー18の継手本体1の切欠6への係入により逆回転が防止されて、管体Xの接続状態は強固に維持されることになる。従って、固定リング13が不用意に逆回転して流通流体が漏洩したり、管体Xが継手本体1から離脱するような事態を確実に阻止することができるのである。
【0062】
一方、配管した管体Xを管継手から取り外す場合は、ストッパー18を管体X側にスライドして、その係合部21と継手本体1の鍔部4との係合状態を解除すると共に、ストッパー18の係止片20を前記鍔部4の切欠6から離脱させる。これが確実に行われたことは、目印22がストッパー18のストッパー本体19により隠蔽されていることで外部から確認できる。
【0063】
次に、固定リング13を先程とは逆方向に回転させるべく少し強めに回転力を加えると、継手本体1の係合溝7に設けた凸部12は曲面状に形成されているために、該凸部12と固定リング13の係合凸部14との係合状態は解除される。更に、この係合凸部14が係合溝7の挿入部8に設けた凸状部40に相対する位置(元の位置)にまで、固定リング13を回転させる。
【0064】
尚、かかる係合凸部14が係合溝7の傾斜部10を逆方向に移動することにより、外側の押圧体23からの押圧力が除去されるために、シール体30の内径Fは拡径して元の状態に戻る。これにより、管体Xとの圧接状態が解除されるので、管体Xを継手から容易に取り外すことができる。
【0065】
また、この状態に於いては、固定リング13と押圧体23とは回転自在に嵌合させているので、固定リング13及び継手本体1を押圧体23、シール体30及び管体Xに対して回転させることが可能である。
【0066】
従って、配管の施工後にレイアウトの変更等により、給排水機器の設置場所が変更された場合、例えば継手本体1の分岐部3に配管すべき管体Xの配置に変更が生じた場合は、図12に示すように継手本体1の分岐部3を新たに接続すべき管体Xの位置に応じて適宜回転させた後、上述のように分岐部3に新たな管体Xを接続して配管を行えばよい。このようにして、配管の施工後に於けるレイアウトの変更等にも迅速且つ柔軟に対応することができる。尚、継手本体1の直管部2に配管すべき管体Xの配置に変更が生じた場合も同様にして対処することができる。
【0067】
また、本実施形態に係る管継手は、全体が極めて簡易な構成からなるために、その製作も容易に且つ安価に行えるという利点も有している。
【0068】
尚、上記実施形態に於いては、第一及び第二押圧体23を環状に形成した一対の押圧体23で構成しているが、例えば次に説明するように、第一押圧体23を継手本体1で構成することもできる。以下、上記実施形態と共通する部分については、同様の符号を付して、その説明は省略する。即ち、図13に示すように、継手本体1は一端部が固定リング13に接続される接続部47と、該接続部47の他端部に接続される本体側接続部48とからなっている。また、接続部47の一端部の内周面は前記押圧体23と同様の構成からなり、シール体30を装着することが可能である。接続部47と本体側接続部48との間のシールは、該本体側接続部48の外周面に外嵌着したOリング49により図られている。シール体30は押圧手段としての固定リング13及び前記継手本体により押圧される。この場合も上記実施形態と同様のシール効果を得ることができる。
【0069】
また、これとは逆に第二押圧体23を固定リング13で構成することも可能である。更には、第一押圧体23を継手本体1で構成し、且つ第二押圧体23を固定リング13で構成することも可能であり、何れの場合も上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0070】
更に、各押圧体23によるシール体30の押圧は、必ずしも全周で行う必要はなく、一部分で押圧するようにしてもよい。従って、各押圧体23は環状ではなく、例えば半割状や三つ割状等、複数の部材から構成することも可能である。
【0071】
尚、シール体30が管体Xに圧接され、その後ストッパー18が継手本体1に係止された後は、シール体30、管体X、固定リング13、及び接続部47が一体化して回転せず、接続部47と本体側接続部48との間で回転し得ることになる。
【0072】
また、該実施形態では、継手本体1及び固定リング13をシール体30の押圧手段としているが、押圧手段の具体的な構成は決してこれに限定されるものではない。よって、かかる継手本体1や固定リング13は、必ずしも本発明の必須の要件とはならない。
【0073】
更に、上記実施形態では、押圧体23の押圧面をテーパ部27と内壁部28とで構成したが、テーパ部27又は内壁部28の何れか一方を省略して、テーパ部27又は内壁部28のみで押圧面を構成してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、被押圧端面となるシール体30の外周部端面にテーパ部46を設けているが、かかるテーパ部46は必ずしも設ける必要はない。但し、前記押圧体23やシール体30にテーパ部27、46を設けることにより、押圧時に於けるシール体30の膨出が一層良好なものになるという利点がある。
【0075】
更に、上記実施形態のように、各押圧体23のテーパ部27の管軸方向に対する角度Θを同角度の45°にする必要はない。その具体的な角度は問うものではなく、また同一角度にする必要もない。
【0076】
更に、該実施形態では、対向する押圧体23の端面間の間隙幅Cが、シール体30の凹状部31の幅D以下となるようにしたが、これとは逆にC>Dとなるように設定しても構わない。
【0077】
また、上記実施形態では、シール体30の側端面と、これに対向する押圧体23の側端面となる内側の段部25とが形成する間隙幅Eが極力幅狭となるように、押圧体23の側端面を管軸方向に対して略垂直に形成している。しかるに、本発明は決してこれに限定されず、間隙幅Eの具体的な大きさや押圧体23の側端面の形状等は適宜変更が可能である。
【0078】
更に、シール体30の外周面に設けられる凹状部31の断面形状もVの字状に限定されない。例えば、断面略Uの字状に形成してもよい。
【0079】
<第二実施形態>
本発明に係るシール構造は、次のようにますに適用することも可能である。以下、上記シール構造Yを備えたますについて、図14及び図15を参照しつつ説明する。尚、第一実施形態と共通する部分については、同様の符号を付して、その説明は省略する。
【0080】
図14に示すますZは、前記継手本体1の直管部2や分岐部3に対応する、流入部50及び流出部51が形成されたます本体52と、該流入部50及び流出部51に設けられるシール構造Yとからなっている。尚、ます本体52の上部には点検口53が開口形成されている。
【0081】
また、図15に示すますZは、ます本体52の側部に対向させて流入部50及び流出部51が形成されたものであり、これら流入部50及び流出部51にはシール構造Yが夫々設けられている。尚、ます本体52の上部には点検口53が開口形成されている。
【0082】
このように、シール構造Yをますに適用した場合に於いても、上述したと同様の効果を得ることができる。
【0083】
この場合に於いて、ますの形状等の具体的な構成は、上記実施形態の如きもの限定されるものでない。
<第三実施形態>
【0084】
本発明に係るシール構造は、パイプに適用することも可能である。図16に示すようにシール構造Yは上記実施形態と共通するので、その説明は省略する。図16に示す実施形態はシール構造Yを別体で製作してパイプ本体60の端部に接着により一体化してものであり、図17に示す実施形態はシール構造Yを有する別体のものをパイプ本体60の端部に挿入接着したものである。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上説明したように、本発明は、管体に配管接続されるシール構造として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】管体とのシール構造の一実施形態を示す断面図である。
【図2】継手本体の一部を示す正面図である。
【図3】固定リングを継手本体に取付けた状態を示す断面図である。
【図4】継手本体の係合溝を示す正面図である。
【図5】(a)は固定リングの平面図であり、(b)はその断面図である。
【図6】(a)はストッパーの平面図であり、(b)はその正面図である。
【図7】(a)は押圧体の平面図であり、(b)はその断面図である。
【図8】押圧体にシール体を装着した状態を示す断面図である。
【図9】押圧体にシール体を装着した状態を示す断面図である。
【図10】継手に管体を挿入した状態を示す断面図である。
【図11】継手に管体を挿入して固定した状態を示す断面図である。
【図12】継手の使用状態を示す正面図である。
【図13】他の実施形態を示す断面図である。
【図14】ますの一実施形態を示す断面図である。
【図15】ますの他の一実施形態を示す断面図である。
【図16】パイプの一実施形態を示す断面図である。
【図17】パイプの他の一実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0087】
1 継手本体
5 接続部
13 固定リング(第二押圧体)
23 第一押圧体、第二押圧体
24 外側の段部
25 内側の段部
27 テーパ部
30 シール体
31 凹状部
42 間隙
46 テーパ部
47 接続部(第一押圧体)
52 ます本体
60 パイプ本体
X 管体
Y シール構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に環状の凹状部が周方向に形成されると共に、管体が挿通されるシール体と、
前記シール体を押圧する押圧面を有し、該押圧面でシール体を押圧することにより径方向の内方に膨出せしめて前記管体の外周面に圧接させるべく、該シール体の両側に夫々配される第一押圧体及び第二押圧体と、を備えたシール構造であって、
前記押圧面の径方向の高さが前記凹状部の深さ以下の寸法に設定されて、該押圧面が前記凹状部の側方に位置するシール体の側端面を押圧し得るように構成されてなることを特徴とするシール構造。
【請求項2】
前記第一押圧体及び第二押圧体が環状に形成されると共に、内周面にシール体を装着するための段部が設けられ、且つ該段部にシール体を装着した際には、前記第一押圧体及び第二押圧体間に間隙が形成されるように構成されてなる請求項1記載のシール構造。
【請求項3】
前記押圧体の段部よりも内方位置に内側の段部が形成され、且つ該内側の段部の側端面が管軸方向に対して略垂直に形成されてなる請求項2記載のシール構造。
【請求項4】
前記第一押圧体及び第二押圧体間に形成される間隙幅が、前記凹状部の管軸方向の幅以下に設定されてなる請求項2又は3記載のシール構造。
【請求項5】
前記各押圧体の押圧面が該押圧体の軸線方向に対して傾斜するテーパ部を有してなる請求項1乃至4の何れか一つに記載のシール構造。
【請求項6】
前記各押圧体の押圧面により押圧されるシール体の被押圧端面が該シール体の軸線方向に対して傾斜するテーパ部を有してなる請求項5記載のシール構造。
【請求項7】
管軸方向に対する前記各押圧体のテーパ部の角度が同一に設定されてなる請求項5又は6記載のシール構造。
【請求項8】
前記シール体を押圧するための押圧手段を備えてなる請求項1乃至7の何れか一つに記載のシール構造。
【請求項9】
接続部を有する継手本体と、
回転動作により該継手本体の接続部に固定される固定リングと、を備え、
前記第一押圧体及び第二押圧体が該固定リング内に回転自在に嵌合され、該固定リング及び前記継手本体により前記押圧手段を構成してなる請求項8記載のシール構造。
【請求項10】
接続部を有する継手本体と、
回転動作により該継手本体の接続部に固定される固定リングと、を備え、
前記継手本体の接続部が第一押圧体を兼ねていて、該第一押圧体が継手本体の一部となっており、且つ前記第二押圧体が固定リング内に嵌合されると共に、該固定リング及び前記継手本体により前記押圧手段を構成してなる請求項8記載のシール構造。
【請求項11】
接続部を有する継手本体と、
回転動作により該継手本体の接続部に固定される固定リングと、を備え、
前記固定リングが第二押圧体を兼ねていて、該第二押圧体が固定リングの一部となっており、該固定リング及び前記継手本体により前記押圧手段を構成してなる請求項8記載のシール構造。
【請求項12】
接続部を有する継手本体と、
回転動作により該継手本体の接続部に固定される固定リングと、を備え、
前記継手本体の接続部が第一押圧体を兼ねていて、該第一押圧体が継手本体の一部となっており、且つ前記固定リングが第二押圧体を兼ねていて、該第二押圧体が固定リングの一部となっており、該固定リング及び前記継手本体により前記押圧手段を構成してなる請求項8記載のシール構造。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一つに記載のシール構造を備えた管継手。
【請求項14】
請求項1乃至12の何れか一つに記載のシール構造を備えたます。
【請求項15】
請求項1乃至12の何れか一つに記載のシール構造を備えたパイプ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−25226(P2010−25226A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187068(P2008−187068)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】