説明

シール部材

【課題】 経年劣化を防止して、シール性を維持、向上及び安定させる。
【解決手段】
容器本体23と蓋体24の間に介在してこれらの間をシールするシール部材である。蓋体24に設けられた嵌合溝29に嵌合するエンドレス部31と、このエンドレス部31から延ばして形成されてその先端部が当接することでその当接部分をシールする突片32とを備えた。上記突片32は、上記容器本体23と蓋体24の当接面23A,24Aにそれぞれ当接してそれらの間をシールする当接片33を備えた。この当接片33は、断面二股形状の2枚のリップ部33A,33Bによって構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、互いに嵌合する嵌合体及び被嵌合体の間をシールするためのシール部材に関し、特に半導体ウエハ、マスクガラス等の、塵埃等の侵入を嫌う薄板を輸送、保管等するために、内部をクリーンな状態に保つ必要のある薄板収納容器に用いて好適なシール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに嵌合する嵌合体及び被嵌合体としては、例えば、半導体ウエハ等の薄板を輸送、保管する際に使用する薄板収納容器がある。このような薄板収納容器としては、例えば特許文献1のように、キャリヤ、容器本体、蓋体、押え部材、シール部材などを備えて構成されたものである。そして、シール部材は、図2に示すように構成されている。
【0003】
このシール部材1は、エンドレス部2と、突片3と、嵌合リブ4と、位置決め用突起5とから構成されている。シール部材1のエンドレス部2は、蓋体6の嵌合保持溝7に嵌合されて支持されている。このエンドレス部2で突片3が容器本体8側へ延出して支持され、突片3の先端が容器本体8に当接して支持されている。
【特許文献1】特開2002−68364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のシール部材1の場合は、エンドレス部2と突片3でシールする構成になっている。具体的には、エンドレス部2の嵌合リブ4が嵌合保持溝7内の内壁面に弾性的に当接することで、嵌合リブ4自身の持つ弾力性によってエンドレス部2が嵌合保持溝7内で支持されている。この状態で、突片3の先端が容器本体8に当接して蓋体6と容器本体8との間がシールされている。このため、エンドレス部2にも嵌合リブ4を設けて、エンドレス部2と嵌合保持溝7との間のシール性を向上させなければならない。
【0005】
しかし、経年劣化や熱等によって嵌合リブ4の弾力性が弱くなると、嵌合リブ4を嵌合保持溝7内に押さえつける力が弱くなり、支持力やシール性が低下してしまうという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、経年劣化等によるシール性の低下を抑えることができるシール部材を提供することを目的とする。特に、エンドレス部にシール機能を持たせる場合は、エンドレス部が嵌合溝に嵌合されて長期間強く圧接されることになるため、突片の弾性力は劣化しやすくなる。一方、突片の容器本体への押圧力は嵌合リブの嵌合保持溝への押圧力よりも弱く、また容器の開閉時には開放されるために、突片の弾性力の経時劣化は嵌合リブの弾性力の経時変化に比べて著しく少なくなる。このため本発明は、突片側の改良によってシール性を維持、向上させたものである。即ち、本発明は、互いに嵌合する嵌合体及び被嵌合体の間に介在してこれらの間をシールするシール部材であって、上記嵌合体又は被嵌合体のいずれか一方に設けられた嵌合溝に嵌合するエンドレス部と、当該エンドレス部から延ばして形成されてその先端部が当接することでその当接部分をシールする突片とを備え、上記突片が、上記嵌合体及び被嵌合体の当接面にそれぞれ当接してそれらの間をシールすることを特徴とする。
【0007】
上記構成により、上記突片が上記嵌合体及び被嵌合体の当接面にそれぞれ当接してそれらの間をシールすることで、上記嵌合溝とエンドレス部との間をシールする必要が無くなる。
【発明の効果】
【0008】
以上詳述したように、上記突片が上記嵌合体及び被嵌合体の当接面にそれぞれ当接してそれらの間をシールすることで、上記嵌合溝とエンドレス部との間をシールする必要が無くなる。このため、従来のようなエンドレス部での経年劣化によるシール性の低下という事態を防止できる。この結果、シール性を維持、向上させることができる。さらに、突片によるシール作用は、突片自体の持つ弾性力に加えて、突片が当接面に当接した状態で作用する外気圧によっても生じるため、シール部材の長寿命化、ひいては容器内に収納される半導体ウエハ等の品質を確実に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。本発明のシール部材は、互いに嵌合する嵌合体及び被嵌合体の間に介在してこれらの間をシールするためのシール部材である。特に、内部をクリーンな状態に保つ必要のある薄板収納容器等に用いて好適なシール部材である。また、薄板収納容器は、半導体ウエハ、記憶ディスク、液晶ガラス基板、マスクガラス等の、塵埃等の侵入を嫌う薄板を収納して、保管、輸送等における使用に供するための容器である。ここでは、半導体ウエハなどの薄板を収納する薄板収納容器に、本発明のシール部材を用いた例を説明する。
【0010】
まず、本発明のシール部材を使用した薄板収納容器について、図1、図3及び図4に基づいて説明する。
【0011】
図3に示すように本実施形態の薄板収納容器21は主に、溝板22、容器本体23、蓋体24、シール部材25を備えて構成されている。
【0012】
溝板22は、容器本体23内に収納された半導体ウエハなどの薄板を両側から支持するための部材である。溝板22は、容器本体23内の対向する側壁にそれぞれ設けられている。この溝板22に並列に多数の半導体ウエハなどの薄板が支持される。
【0013】
容器本体23は、半導体ウエハなどの薄板を複数枚収納するための容器である。この容器本体23内に複数の薄板が収納された状態で内部が密封されて、外部からの塵埃等の侵入が防止される。即ち、容器本体23内に2つの溝板22が取り付けられ、複数の薄板がこれら2つの溝板22間に支持されて容器本体23内に収納された状態で内部が密封されて、外部からの塵埃等の侵入が防止される。なおここでは、溝板22を、容器本体23と分離した別部品として構成しているが、溝板22と容器本体23とを一体的に構成してもよいことはいうまでもない。
【0014】
容器本体23の開口端部には蓋体24が嵌合するための蓋体受け部27が設けられている。この蓋体受け部27は容器本体23の開口端部を、蓋体24の寸法まで広げて形成されている。これにより、蓋体24は、蓋体受け部27の垂直板部27Aの内側に嵌合し、水平板部27Bに当接することで、蓋体受け部27に取り付けられるようになっている。さらに、水平板部27Bには、その全周にシール面(図示せず)が設けられ、蓋体24に取り付けられたシール部材25が当接して薄板収納容器21の内部を密封するようになっている。
【0015】
蓋体24は、容器本体23を塞ぐための部材である。蓋体24は、容器本体23内になどの薄板が収納された状態で、容器本体23を塞いでその内部を密封する。蓋体24内には、蓋体24を容器本体23に固定する簡易着脱機構(図示せず)が設けられている。この簡易着脱機構は、蓋体24の周縁部から突出する蓋体係止爪(図示せず)を備えている。蓋体24の内側面(容器本体23側の面)には、容器本体23内で2つの溝板22内に支持された薄板を蓋体側から支持するための押え部材(図示せず)が設けられている。
【0016】
蓋体24の容器本体23側端部には、その全周に亘って環状の嵌合溝29(図1参照)が設けられている。この嵌合溝29は、蓋体24の下端縁部に全周に亘って設けられ、内側壁29Aと外側壁29Bとを有して構成されている。内側壁29Aと外側壁29Bは、テーパ状に僅かに傾斜させて形成されている。
【0017】
シール部材25は、容器本体23と蓋体24との間に介在してこれらの間をシールすることで容器本体23内を密封するための部材である。このシール部材25は具体的には図1に示すように、蓋体24側の環状の嵌合溝29に嵌合されるエンドレス部31と、エンドレス部31から外方へ延ばして形成されてその先端部が上下の当接面23A,24Aにそれぞれ当接することでその当接部分をシールする突片32とを備えて構成されている。このシール部材25は、合成樹脂等の弾性部材で構成され、全体が柔軟に撓むことができるようになっている。
【0018】
エンドレス部31は、蓋体24側の環状の嵌合溝29に嵌合される環状部材として構成されている。このエンドレス部31は、嵌合溝29と同じ形状に形成されて、嵌合溝29に堅固に嵌まり込むようになっている。このエンドレス部31は嵌合溝29に嵌合して全体を支持することを目的としており、それらエンドレス部31と嵌合溝29との間のシール性については特に考慮していない。
【0019】
突片32は、容器本体23及び蓋体24の当接面23A、24Aにそれぞれ当接してそれらの間をシールするための部分である。突片32は、エンドレス部31に一体的に設けられていると共にエンドレス部31から外方へ延ばして形成されている。突片32の先端部には、各当接面23A、24Aにそれぞれ当接してその当接部分をシールする当接部33が設けられている。この当接部33は、2枚のリップ部33A、33Bによって構成されている。各リップ部33A、33Bは、各当接面23A、24Aにそれぞれ当接するように、断面が二股形状に形成されている。上側のリップ部33Aは、蓋体24側の当接面24Aが無ければその先端部が当接面24Aよりも上方に位置するように(図1中の点線で示した状態のように)形成されている。下側のリップ部33Bは、容器本体23側の当接面23Aが無ければその先端部が当接面23Aよりも下方に位置するように(図1中の点線で示した状態のように)形成されている。各リップ部33A、33Bは、合成樹脂等の弾性部材で構成されているため、容器本体23に蓋体24が取り付けられると、図1の点線のように、各当接面23A、24Aに沿って変形して張り付くようになっている。この状態で、容器内の圧力が高いと、容器内の気体が各リップ部33A、33Bを押し開いて外部に流出し、外気圧が高いと、各リップ部33A、33Bが押されて各当接面23A、24Aに押し付けられて、容器本体23と蓋体24との間が密封されるようになっている。
【0020】
以上のように構成された薄板収納容器21のシール部材25は、次のようにして使用される。
【0021】
まず、シール部材25を蓋体24に取り付ける。具体的には、シール部材25のエンドレス部31を嵌合溝29に押し込む。これにより、突片32の当接部33が各当接面23A、24A側へ延出される。これにより、当接部33の上側のリップ部33Aは蓋体24の当接面24Aに沿って変形して当接する(図1の点線の状態)。
【0022】
この状態で、容器本体23に蓋体24が取り付けられると、当接部33の下側のリップ部33Bは容器本体23の当接面23Aに沿って変形して当接する(図1の点線の状態)。
【0023】
ここでは、互いに嵌合する嵌合体及び被嵌合体が、半導体ウエハを収納する薄板収納容器であるため、半導体ウエハが容器本体23に収納された状態で蓋体24が取り付けられて、内部が密封される。そして、薄板収納容器が搬送される。
【0024】
例えば、飛行機によって薄板収納容器が搬送されると、飛行機が上空を飛行中に外気圧が低下すると、薄板収納容器内の圧力が外気圧よりも高くなって、薄板収納容器内の気体が各リップ部33A、33Bを押し開いて外部に流出する。この状態で、飛行機が空港に着陸して外気圧が容器内の圧力よりも高くなると、各リップ部33A、33Bが外気圧で押圧される。これにより、各リップ部33A、33Bは、各当接面23A、24Aに押し付けられて、容器本体23と蓋体24との間を密封する。これにより、外気が容器本体23内に直接的に流入するのを防止する。なお、外気圧の変化に応じて呼吸して、容器本体23の内圧を調整するフィルタ(図示せず)が、必要に応じて設けられている。
【0025】
以上のように、突片32が、容器本体23及び蓋体24の当接面23A、24Aにそれぞれ当接してそれらの間をシールするようにしたので、従来構造のように、エンドレス部31に改良を加える必要がなくなり、嵌合溝29に強く圧接されるエンドレス部31の部分の経年劣化を考慮する必要がなくなる。
【0026】
上記突片32が、各当接面23A、24Aにそれぞれ当接してシールする、断面が二股形状の2枚のリップ部33A、33Bによって構成された当接部33を備えたので、各リップ部33A、33Bが各当接面23A、24Aにそれぞれ当接して、外気の流入を確実に防止することができる。特に、各リップ部33A、33Bは、それら自身の弾性力、またはそれに加えて外気圧で各当接面23A、24Aに押し付けられるだけなので、経年劣化の問題がなくなり、長期間、良好な状態で容器本体23と蓋体24との間を確実にシールすることができる。この結果、薄板収納容器21内への外気の侵入を確実に防止することができる。また、熱や外界からの何らかの影響によって各リップ部33A、33Bがやわらかくなり過ぎる場合でも、外気圧や自身の弾性力で各リップ部33A、33Bが各当接面23A、24Aに押し付けられるだけなので、蓋体24と容器本体23とで形成される内部空間を外界から確実にシールすることができる。即ち、経年劣化を防止してシール性を維持、向上及び安定させることができる。
【0027】
なお、上記実施形態では、エンドレス部31が嵌合する嵌合溝29を蓋体24側に設けたが、容器本体23側に設けてもよいことは言うまでもない。
【0028】
また、当接部33を2枚のリップ部33A、33Bで構成したが、例えば図5に示すように、各当接面23A、24Aに当接する各リップ部41A、41Bと、各当接面23A、24Aの間に位置してこれら各リップ部41A、41Bを各当接面23A、24Aに当接した状態で支持するリップ支持部42とから構成してもよい。この場合も、上記実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0029】
さらに、突片が当接部を有していない場合、当接部がリップでない場合でもよい。例えば、図6に示すように、リップ部を有さず、支持部43から各当接面23A、24Aに直接に接触する当接部44を設けてもよい。また、突片が当接部を有していない場合としては、図7に示すように、当接部を設けずに、支持部45を各当接面23A、24Aに直接に接触させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のシール部材を示す断面図である。
【図2】従来のシール部材を示す断面図である。
【図3】本発明のシール部材が用いられた薄板収納容器を示す分解斜視図である。
【図4】本発明のシール部材が用いられた薄板収納容器を示す斜視図である。
【図5】第1変形例を示す断面図である。
【図6】第2変形例を示す断面図である。
【図7】第3変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
21:薄板収納容器、22:溝板、23:容器本体、23A,24A:当接面、24:蓋体、25:シール部材、27:蓋体受け部、27A:垂直板部、27B:水平板部、29:嵌合溝、29A:内側壁、29B:外側壁、31:エンドレス部、32:突片、33:当接部、33A,33B:リップ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに嵌合する嵌合体及び被嵌合体の間に介在してこれらの間をシールするシール部材であって、
上記嵌合体又は被嵌合体のいずれか一方に設けられた嵌合溝に嵌合するエンドレス部と、当該エンドレス部から延ばして形成されてその先端部が当接することでその当接部分をシールする突片とを備え、
上記突片が、上記嵌合体及び被嵌合体の当接面にそれぞれ当接してそれらの間をシールすることを特徴とするシール部材。
【請求項2】
請求項1に記載のシール部材であって、
上記突片が、上記嵌合体及び被嵌合体の当接面にそれぞれ当接してシールする当接部を備えて構成されたことを特徴とするシール部材。
【請求項3】
請求項2に記載のシール部材であって、
上記当接部が、上記各当接面にそれぞれ当接する、断面二股形状の2枚のリップ部によって構成されたことを特徴とするシール部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−62804(P2007−62804A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251712(P2005−251712)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000140890)ミライアル株式会社 (74)
【Fターム(参考)】